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Vol.46
広報誌「とっきょ」2020年11月25日発行号

あのとき、あの知財
大ヒットの裏側を探る!

アタック
(花王株式会社)

「わずかスプーン1杯で驚きの白さに」
飽和状態であった洗濯洗剤市場の中で、置き場所を選ばないコンパクトな洗剤で新たなニーズを掘り起こしたヒット商品。

アタックの写真

発売:1987年
登録商標 第 1929596号 / 第 1318158号 / ほか

 
イメージ画像

ヒットのワケ

「お徳用」な特大サイズの箱入り洗剤が主流であった当時に、あえて「場所を取らない」「運びやすい」というメリットを掲げたコンパクト洗剤を発表しました。従来の1/4ほどの容量でありながら、しっかりと汚れを落とす洗浄力の高さを伝えるために生まれたのが「スプーン1杯で驚きの白さに」です。
アタックの実力を、とてもわかりやすくアピールできたことで、より多くの方に商品を知っていただけたと思います。

コンパクト化という新しい価値を提案しグローバルスタンダードへ引き上げた

花王の「アタック」が発売されたのは1987年。当時の洗濯洗剤市場は、既に飽和状態にあり、他社製品との差別化は困難を極める状態だった。
オイルショックの影響をうけ、お得用特大サイズの洗濯洗剤が好まれていたなか、花王はあえて少量でも高い洗浄力を併せ持つ世界初のコンパクト洗濯洗剤「アタック」を発売。一つで自転車かごをいっぱいにしてしまうくらい場所を取っていた洗濯洗剤を次のステージへと進めた。
コンパクトかつ、高い洗浄力を両立できた背景には「高密度化造粒技術」と、酵素として「アルカリセルラーゼ」を実用化したことが背景にある。
「高密度化造粒技術」は、洗剤の粒の中空部分を圧密化する技術である。当時、洗剤の粒は製造の過程で粒子内部に中空が発生してしまい、これが洗濯洗剤パッケージが巨大化する原因だった。高密度化造粒技術により内部の中空を減らしたことで、パッケージのサイズは従来の約4分の1になった。
「アルカリセルラーゼ」は、綿繊維の奥に閉じ込められたミクロの汚れまで溶かしだす酵素だ。当時、弱アルカリ性を示す洗剤溶液の中でも機能するセルラーゼは存在しなかった。そのため、耐アルカリ性を持つセルラーゼを探し出し、それを生産する技術を確立する必要があった。
様々な試行錯誤により生まれた「アタック」は、その製造方法だけでなく、容器やスプーンに至るまで特許をはじめとした知財で保護されているが、実は、高密度化造粒技術は、元々プリンターのトナーを製造する技術を転用したものであったという。花王には、各部署の研究成果を共有する文化があり、異なる分野の技術が積極的に組み合わされてきた。技術を独占せず皆で活用する姿勢が優れた新商品を作り出してきたのだろう。
今や、アタックは日本だけでなく、様々な国でも販売されている。衣類を手洗いする文化が残り、水の硬度が日本とは異なる東南アジアの一部地域では、洗濯環境に合わせた洗浄技術を投入し、常にアップデートしつづけてきた。実は、「アタック」という商品には明確な定義がない。時代や国に合わせて、そのとき花王が提供できる最適解とした洗剤に「アタック」の名が冠されているのだ。

高密度化製造技術によって製造された洗剤粒の詳細写真
「高密度化造粒技術」によって製造された洗剤粒。内部の中空が圧密化されているため、かさばりにくくなった。
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