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Vol.47
広報誌「とっきょ」2021年2月5日発行号

知財活用企業紹介

株式会社ミラック光学

メイド・イン・ジャパンにこだわった高い品質が他社との差別化を生み出す

先進的な光学機器を輩出し続ける業界のカリスマ企業。グローバルスタンダードを作り出したにもかかわらず、特許の取得をしていなかった過去の失敗から、現在は知財に関しても先進的な考え方をもつ企業へと変貌を遂げた。

ミラック光学の社名

Company Profile

名称 株式会社ミラック光学
本社 東京都八王子市松木34-24
資本金 1,000万円
従業員数 社員:30名
事業内容 顕微鏡及び光学関連機器の設計・製造、精密機械工具の設計・製造、位置決め摺動ステージの設計・製造、人工知能ソフトウェアの研究・開発、その他上記に関連する周辺機器・特殊品の設計・製造
   
幻の特許となったミラック光学のダハプリズム
ミラック光学の製品画像1

1963年に創業し、精密機器・光学機器の分野で多数の特許を取得している株式会社ミラック光学。創業者から受け継がれた『高精度で、ずっと使い続けられるものを』というポリシーの下、工業用精密部品の開発を手掛け、近年ではAIを含む周辺ソフトといった他分野における開発へとその幅を広げています。

創業当初のミラック光学は、被写体の上下左右が反転した逆像で映るのが普通であった単眼顕微鏡に、反転せず正立正像で映すことができるレンズ『ダハプリズム』を組み込むという新しい技術を開発しました。しかし、その技術の特許を取得しなかったため競合メーカーに模造品を製作され、事業拡大のチャンスを活かしきれなかったという過去があります。
それ以降、同社では、知財を『中小企業にとっての無形の財産であり、大企業に対抗し得る大きな武器である』と捉え、事業戦略の柱としているそうです。自社で作り上げたものが、適切に自社へ利益還元されなかったという苦い経験があるからこそ、自社プロダクトの知的財産権を守ることに力をいれ、先行者として劣化版が市場に出回ることがないよう取り組んでいるのでしょう。

過去の失敗から学んだ知的財産権に対する意識
株式会社ミラック光学の代表取締役 村松 洋明氏 の写真
株式会社ミラック光学の代表取締役 村松 洋明氏。
企業HPでブログも公開中。「JAPAN WAYな社長ブログ」
「JAPAN WAYな社長ブログ(外部サイトへリンク)

「先代(創業者)の時代に、自社製品の権利を守ることができなかったのは、現在のミラック光学の知財に対する姿勢を形作る大きなきっかけでした。今は知財に関する担当は開発・製造の4名体制で、弁理士さんとタッグを組んで臨んでいます。 そもそも弊社が扱う製品は、とてもシンプルな構造のものが多いので、単体で特許を取得するのは、ハードルが高いという特徴があります。 さらに、かつてはレンズが主力製品でしたが、現在はアリ溝式ステージがメインの製品です。主力の移り変わりを経て、意識すべき知財にも変化が生じていました。

ですから、正攻法というか真正面から特許を取得するのではなく、複合的なアプローチによって知財権の獲得を基本としています。

知財権を取得していることで、わかりやすく恩恵を受けるのは国内市場で他社の粗悪品を防げるという点です。
弊社のような専門的な機器を扱う市場というのは限りなくクローズドに近い状態ですので、広告や宣伝の機会は、展示会くらいしかありません。つまり、同業他社の動向も展示会で把握することができるのです。ある年、展示会で弊社とほぼ同じ製品が展示されているのを発見しました。資料を読んでみると、仕様もほぼ同じ。しかし、展示されているサンプルを拝見すると、贔屓目に見ても品質が高いとは言い難いものでした。資料と実物を確認した結果、弊社の知財権を侵害していることを確信しましたので、すぐに抗議して、該当製品の展示を取りやめてもらいました。
その企業は、翌年も同じように弊社の知財権を侵害した製品を展示していましたが、強めの抗議をしたことで翌々年からは、その製品はラインナップから外されています。このように、知財権を確保しているからこそ避けられる機会の損失は、決して少なくありません。
先ほどの展示会の例は極端ですが、どの業界においても模倣品や粗悪品の問題は付き纏います。弊社は製品がシンプルなだけに、品質にこだわったものばかりです。そこに見た目は同じだけれど、低品質のコピー商品が市場に出回ってしまうと、パッと見だけで判断されたとき、非常に不利な状況に陥ってしまいます。
しかし、特許を取得している、知財権を獲得しているということは、権利を守るという直接的な効果だけでなく、知財権を取れるだけの実力がある企業という、信用も勝ち取れるのです。同じような製品であれば、ちゃんとしたものを購入していただいた方が、長い目で見れば価値があるはず。そう思っていただけるための努力は惜しみません。」

オープンイノベーションへの意識改革のきっかけ

「弊社は現在、大学発ベンチャーの別会社を立ち上げ、一緒にAIの領域の開発も手掛けていますが、このきっかけも、品質問題からきたものです。
弊社は少し前から汎用的な画像処理技術を利用した『部品の自動判別装置』のレンズを手掛けていました。これまで目視で検査していたものを、画像光学系と解析ソフトによって自動化したものです。
ところが、その装置を利用されている企業から『判別の精度が低い』という意見をいただきました。
私たちは自社の製品に自信を持っていますから、とにかく原因を追及しようと。 その結果、レンズの品質が問題なのではなく、画像を解析するソフトが脆弱であったため、満足な精度が出せなかったという結論にいたります。
そこで、精度を上げるための根本的な解決方法として、ソフトのプログラムを強化することに目を付けました。
しかし、弊社はあくまで精密機器メーカーで、AIの分野は正に専門外です。それならば『餅は餅屋に』ということで、AI技術に強いエンジニアと共同開発を行おうということになったのです。 市場のことを考慮すれば、今後はAI分野の需要は増えてくるでしょうから、もしかすると、大きな事業の柱となるかもしれません。
創業当時とは主力製品も移り変わり、社員の知財に対する意識も大きく変わりましたが、ひとつだけ変わらないのは、「ものづくり」に対する姿勢です。
あくまで日本ならではの品質を保つため『メイド・イン・ジャパン』というこだわりは、捨てられません。」

AIハヤブサ 人工知能検査システム
ジャンルの異なるAIの領域においても、自社製品の高品質を証明すべく開発を進めた結果、次代を担う分野の開発に成功した。
「アリ溝式ステージ」の画像
現在の主力製品である「アリ溝式ステージ」。ニッチなジャンルで競合が少ないからこそ、高い品質を武器に市場で圧倒的なシェアを誇っている。
「メジャースコープ」の画像
ミラック光学の根幹ともいうべき、メジャースコープ。多彩なカスタマイズが人気。
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