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あのとき、あの知財
大ヒットの裏側を探る!
90年代後半、女子中高生を中心に若者たちの間に一大ブームを巻き起こした傑作機。「プリクラ」という言葉を生み出したことで、その流行は社会現象にまで発展。
発売:1995年
登録商標 第 3367498号 / 登録商標 第 4174824号 / ほか
ヒットのワケ
当時の若い女性の間で、気に入ったシールを持ち物に貼ることが流行する中、顔写真をシールにして貼るのが面白いのでは?というひらめきから「プリント倶楽部」は誕生しました。“カワイイ”を重視した「プリント倶楽部」は、女子中高生を中心に、友達と遊んだ思い出を残すことができる“プリクラ文化”として広まります。新しい友達と名刺のように交換したり、たくさん集めて手帳に貼ることがブームになりました。
1995年7月に発表された「プリント倶楽部」。ゲームメーカーである当時の「アトラス」営業担当者が、資料を出力している様子を見て、カメラで撮影した写真をシールにすると思いついたのが企画の発端であった。ハンディーカムで撮影した顔写真に、お手製の背景用のイラストを組み合わせて試作品のシールを作成。社内で好評だった為、「アトラス」と「セガ」の共同開発で製品化を目指す流れになった。
わずか2年後の1997年には出荷台数の累積が2万2,000台に達する大ヒット商品となり、プリントシールの代名詞ともなった「プリクラ」は、同社の登録商標である。つまり同社以外のシールを「プリクラ」と称することは間違いなのだが、一般のユーザーは総じて「プリクラ」という言葉を自然に使用しており、その浸透度の高さが伺えるだろう。
機能面ではティーンエイジャー向けということもあり、技術的によく撮れることよりも"カワイイ"を重視した。カメラはあえて高機能のものとせず、画素数を低くすることで肌がキレイに見えるように配慮。さらにプリンターも色味のCMYKからブラックを抜いた3色で表現することにより、黒い髪色がソフトに表現されるなど、後に繋がる"盛り"を意識した仕上がりが、"カワイイ"もの好きの女子中高生の心を捉えた。
しかし、空前のヒット最大の要因は、『プリ帳』と呼ばれるプリクラを貼る手帳がブームになったことであろう。若者にとってプリクラは単なるコミュニケーションツールとしてだけでなく、自身の交友関係を表現するステータスとして浸透した。これはゲームセンターのみならず、商店街などを含めて設置場所を確保するなど地道なプロモーション活動が実を結んだ結果であった。
プリントシール業界において、使われている技術自体はそれほど多いものではないものの、知財となるとかなり細かい部分までを配慮する必要がある。レンズから被写体までの距離を決める立ち位置や、周りを囲うブースの素材やサイズなど、考え得るものはほとんど何かしらの知財が申請されているという。単体での確保ではなく、いかに複合的に知財権を確保できるかが大切なポイントだ。
そんななか、今年は20年ぶりに市場に再参入するセガの最新プリクラ機「fiz」が登場した。20年という月日の経過により、かつての第一人者は新規参入と変わらぬ状況で、再び市場に挑む。
最大の特徴は、写真撮影と同時に、シャッターが下りる前、あるいは下りる前後合計3秒間の動画が記録される「モーメント」という機能だ。3秒という短い動画ながら静止画にはない"カワイイ"を生み出すという。データはSNSへの投稿も可能だ。
初代「プリント倶楽部」が提案した"カワイイ"は、表現の方法が変わりながらも、着実に次世代機へと受け継がれていた。斬新なアイデアを、確かな技術力で実現させる。まさにセガクオリティといえるだろう。