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知財活用企業紹介
金型を製造する下請け企業から、自身で製品を開発するメーカーへと転身。発明好きな創業者(現会長)が残した、「失敗を恐れずチャレンジし続ける」という精神を引き継ぎ、現在も意欲的な製品開発で水事業のメインストリームをひた走り、人々の生活に潤いを与えている。
Company Profile
名称 | 株式会社タカギ |
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本社 | 福岡県北九州市小倉南区石田南 2-4-1 |
資本金 | 9,800万円 |
従業員数 | 788名(2020年11月現在) |
事業内容 | プラスチック家庭日用品、家庭用浄水器の開発・製造・販売、プラスチック射出成型加工、金型事業 |
散水ノズルやシャワーヘッドなど、散水用品の第一人者として知られる株式会社タカギ。
現在は浄水事業においてもヒット製品を生み出していますが、その前身は、金型の製造を請け負う下請け企業であったといいます。事業拡大で新たに工場を広げたタイミングでオイルショックを迎えてしまい、思惑に反して事業を縮小せざるを得なくなります。
その後、1977年に主力製品を家庭日用品に切り替え、受注を必要としない企業形態にシフトすべく、自らがメーカーとして開発・製造・販売を行う株式会社タカギが1979年に設立されました。
タカギとして最初に開発したのは『ポリカンポンプ』という灯油を吸い上げるポンプ。他にもタカギの前身時代に販売していた『バスピッター』と呼ばれるお風呂で水の入れ過ぎを防ぐ蛇口の元栓などは、日常生活におけるロングセラー製品として人気を博しました。振り返れば、起業当初のタカギは、アイデア製品と呼ぶに相応しい製品を主軸としていたことがわかります。
そこで今回は、タカギがアイデア製品のメーカーから散水事業のトップメーカーへと上り詰めた秘訣と、知財に対する意識や取組について伺いました。
「創業者(現会長)が、発明好きな人ですので、設立当初から知財については意識していたようです。特にシンプルな構造のものですと、どうしても類似商品が後を断ちませんから。
私たちは、新製品を販売するに当たって、必ず商標と意匠は出願しますし、特許についても可能な限り出願しています。しかし、知財というものは便利で有効なものではありますが、取得・維持するだけでもお金がかかるものです。大手の企業であれば、自社製品のうち、その類似商品として市場に出回る可能性があるような製品・技術については、軒並み権利を取得するという方法も取れますが、弊社のような中小企業の規模では、なかなか厳しいのが現実。
そこで、特許に関しては、弁理士さんに相談をして、『どんなアプローチで申請するのか?』や『取得した特許をどう活用していくべきなのか?』といったことを戦略的に練る必要があります。
特に特許の出願が想定される製品については、開発段階から先行技術調査を徹底して行い、特許を出願したからには、必ず権利化するということを目標にしているため、2009年以降の審査請求率はほぼ100%です。この高い数値を達成するためには、やはり社としての意識が高くないと難しいですから、弊社は知財に関する教育には、手間やお金は惜しまないという風土が根付いています。」
「弊社の事業は大きくわけると『浄水』『散水』『金型』の3事業に分けられます。
『金型事業』は前身の会社から引き続いている部門で、現在は『散水事業』と『浄水事業』の比率が大きくなっています。特に国内においては『浄水事業』が好調です。
浄水機能付きの蛇口は、弊社の特許技術がいかんなく発揮されている分野といえるでしょう。通常、蛇口というのはヘッド部分に工夫が施されていることが多く、各社との競争が激しいものでした。そこで弊社は、蛇口のパイプ部分に注目したのです。
すると、この部分の開発に力を入れている企業は、それほど多くないことが判明しました。そこで、これまで蛇口の先に取り付けられていた浄水器を、根元に組み込むための開発に着手しました。
この発想の転換によって、弊社の事業は『水』という分野における、大きな分岐点を迎えたと思います。」
「現代の市場は、EC等のオンライン化の進展等により、グローバル化がますます進んでいます。弊社も散水事業においては、海外への展開としてECでの販売が好調です。しかし、それによって新たな問題も浮かび上がってきました。
ご承知のとおり、弊社の製品はアイデアによる付加価値が支持されている側面があります。これらは、実際には単純な工夫によって再現ができてしまうものも、少なくありません。そして、ECでの販売では実際に製品を手にとってご購入いただくわけではないので、品質の差については購入後に初めてわかるものです。ですから、パッケージのデザインや、製品名が似たような類似品が多く出回ってしまうという問題が発生してしまいます。それが国内であれば、知財の活用で対処が可能なのですが、海外で真似をされてしまうと、権利を取っていない、あるいは権利を取っていても、権利行使を行う費用対効果の面やマンパワーの面で対応がむずかしい場合があります。
人気製品であればあるほど、類似製品は次々と登場してくるので、まさにいたちごっこになってしまいます。」
「弊社は幸いにして、主力製品である浄水製品が、季節を問わず売り上げ好調なため、年間を通じて安定した売り上げが見込めますから、今後はどれだけ規模を広げられるかという課題を抱えています。特に浄水事業においては、競合がみな大手ですから、シェアを伸ばすのは簡単なことではありません。
今後は海外への進出も視野に入れていかなければなりませんが、海外は地域ごとに水質や品質に関する基準も異なるため、国内の浄水機能をそのまま展開できるわけではありません。
まずは、目の前の課題を一つずつクリアしていき、少しずつでも規模の拡大を図りたいですね。」