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Vol.54
広報誌「とっきょ」2022年10月11日発行

注目のあの話題を徹底解説!

知財TOPICS

特許や意匠、商標など知的財産にまつわる注目の最新ニュースを東北大学特任教授の稲穂健市先生がわかりやすく解説!
今回は近年新たに保護対象に加わった「内装」の意匠にまつわる話題です。

私が解説します
稲穂健市氏のプロフィール写真

稲穂いなほ健市けんいち先生

東北大学特任教授、弁理士、米国公認会計士(デラウェア州Certificate)。知財を楽しく分かりやすく伝える知財啓発に取り組む。著書は『楽しく学べる「知財」入門』(講談社現代新書)、『ロボジョ!杉本麻衣のパテント・ウォーズ』(楽工社)など。

TOPIC
楽天モバイルショップの「内装」がモバイル業界では初めて意匠登録

国内の電気通信事業用店舗としては初めて、楽天モバイル恵比寿店・京都四条通店の内装が意匠として登録された。意匠権の保護対象はもともと物品に限られていたが、2020年4月の意匠法改正により建築物・内装のデザインも保護対象に。同店の意匠登録も、この保護対象の拡大を受けてのこととなる。サービス業を営む企業にとって、顧客との接点となる店舗デザインの独自性を意匠権で守ることは、自社のブランド形成への貢献が期待される。

楽天モバイルショップ
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FOCUS
「こだわり抜いたデザインを守りたい」同社知財部の思いが、意匠出願のきっかけに

恵比寿店・京都四条通店で共通するデザインコンセプトは、楽天モバイル社内外連携のデザインプロジェクトで誕生。携帯電話ショップにおける「ユーザー体験」を一新するために、楽天のロゴデザインも手掛けたクリエイティブディレクター・佐藤可士和氏が監修を行った。コンセプトは「Simple・Digital・Flexible」。来店客の自由な店内回遊を可能にする空間デザインが特徴だ。「自社デザイナーが考え抜いたデザインを守りたい。多くの方に楽天モバイルショップのこだわりを知ってもらうきっかけになれば」との同社知財部の思いをもとに、出願が進められたという。

恵比寿店・京都四条通店の内装
稲穂先生解説
2020年4月施行の意匠法改正で、建築物や内装のデザインも保護対象に

意匠法の保護対象は長らく「物品」に限定されていましたが、2020年4月施行の法改正により、保護対象が大きく拡大。画像デザインの保護が拡充された他、新たに建築物や内装のデザインも保護されるようになりました。

店舗の外観や内装に特徴的な工夫を凝らしてサービスや商品の提供を行う例や、特徴的なオフィスデザインを設計して顧客に提供する例などが増えており、これらに関連するイノベーション創出やブランド構築の促進のため法改正が行われたのです。

2022年8月1日時点で、出願件数は建築物790件、内装579件、登録件数は建築物431件、内装251件となっています(特許庁HPより)。

もちろん意匠登録されるためには、新規性をはじめ一定の要件が必要です。

建築物については、土地に定着する人工構造物(土木構造物を含む)であることが必要で、店舗、住宅、学校、病院、工場、競技場、橋りょう、電波塔などが該当します。『とっきょ』(Vol.51)の特集で取り上げた桜珈琲の店舗の外観も登録事例の一つです。

内装については、家具や什器の組合せや配置等、内装を構成する物品、建築物または画像に係る意匠が、内装全体として統一的な美感を起こさせる必要があります。必ずしも建築物の内装である必要はなく、旅客機、客船などの内装も含まれます。カルチュア・コンビニエンス・クラブの「羽田空港 蔦屋書店」が登録第一号の一つです。

このように多様なデザイン保護が可能となったことでビジネス上のチャンスも増えました。しかしその一方で、他人から意匠権侵害の警告を受けるリスクも増し、これまで意匠法とは無縁だった業界においても、契約上の手当や侵害予防調査が重要になっていくものと考えられます。

(上)カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の羽田空港 蔦屋書店(下)株式会社桜珈琲の松原店
(上)カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の羽田空港 蔦屋書店(下)株式会社桜珈琲の松原店

株式会社桜珈琲の意匠に関するエピソードはとっきょVol.51をチェック!
 https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol51/02_page1.html

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