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注目のあの話題を徹底解説!
特許や意匠、商標など知財にまつわる注目の最新ニュースについて、弁理士の青木博通先生が分かりやすく解説! 今回は、株式会社明治の人気ヨーグルト商品にまつわるトピックについて解説します。
青木博通先生
弁理士、一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻非常勤講師。個人からグローバル企業まで、さまざまなビジネス分野の商標、意匠の権利形成、紛争事案を扱う。著書に『新しい商標と商標権侵害』(青林書院)など。
株式会社明治のヨーグルトブランド「明治プロビオヨーグルト」で商品名に使用されている「R-1」「LG21」の2点が文字商標として登録された。一般的に、ローマ字や数字の極めて簡単な組合せからなる商標は登録することが難しく、今回は例外が適用された形となる。実際の使用例などの証拠を基に審査され、全国的な知名度が認められたため、2022年7月28日付で登録に至った。
「明治プロビオヨーグルト」の「R-1」および「LG21」。それぞれ発売以来プロバイオティクスヨーグルトのパイオニアとして、体調管理に気遣う多くの消費者から支持を集めている。同社の例外適用はこれだけでなく、過去「きのこの山」「たけのこの里」が商品の形状のみの立体商標として登録された。いずれも、商品の著名性を鍵に証拠資料の提出など厳しい道のりを経て権利化を達成。同社のブランド保護への熱い姿勢がうかがえる事例となった。
ローマ字や数字の簡単な組合せは、①生来的に出所識別力がなく商標として機能を果たしえないため(出所識別機能の欠如)、また、②何人も使用を欲するものであり独占に適さないため(独占適応性の欠如)、原則、商標登録が認められません。
ただしこれには例外があり、長年の使用(他者が使用していない)により、出所識別力を獲得した場合には、登録が認められます。
「R-1」は、当初、商品の種別、品番を示すものであり、出所識別力がないとして拒絶されました。しかしながら、「R-1」は2009年から使用され、その商品は全国約3000店の特約店を通じ約250万家庭に宅配され、2018年には販売額400億円(シェア23.3%で1位)※1に達していたため、出所識別力を獲得したとして登録が認められました。全国紙への広告や全国放送のCMも強力な証拠となりました。
「LG21」も、当初、LG21乳酸菌を使用した商品を示すものであり、出所識別力がないとして拒絶されました。しかしながら、「LG21」を付した商品は2000年から全国的に販売され、2018年には販売額113億円(シェア6.6%で5位)※1に達していたため、出所識別力を獲得したとして登録が認められました。
この他にも、「ランチパック」「一番搾り」「GEORGIA」などの文字商標が、長年の使用により、出所識別力を獲得したとして登録されています。長年の使用により、出所識別力が認められて登録された商標は800件以上もあります※2。
出所識別力がない商標でも、記憶に残りやすい魅力的な商標であれば、登録を諦めるのではなく、長年の使用を立証することにより、積極的に登録を獲得するブランド戦略が事業を伸ばすためには必要です。
※1 出典:株式会社富士経済「2019年食品マーケティング便覧」
※2 出典:インフォソナー株式会社「商標資料館」WEBページ