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特集2 株式会社アトリエMay
ヨシの新しい可能性を模索する中、専門家の協力を得てヨシを繊維化し綿と混紡した「ヨシ糸」の事業化に着手しました。「世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト」を立ち上げて、2021年3月にクラウドファンディングを実施した支援金や自治体の補助金で、交野市に工場機能を持つヨシ繊維研究所を設立しました。現在、ヨシ繊維を製造する工程をアトリエMayが担い、それを活用して地元企業がTシャツ、ストール、靴下などの商品を作っています。ヨシ糸は「reed yarn®」の商標を登録しており、他にも、I-OPENプロジェクト(※2)で協力してもらった弁理士やINPIT(※3)に、色々と知財活動の相談に乗ってもらっています。
ヨシは二酸化炭素を吸い込んで体内に閉じ込める能力が高く温暖化抑制に貢献する他、水中や土中の窒素やリンを根から吸い上げて川の水質を浄化する環境植物です。ヨシが群生する湿地帯全体が、水質浄化システムを形成し、かつ生物多様性を実現する場所として、SDGsの観点からさらに注目されていくと思います。
ヨシ繊維事業の今後の大きなテーマは量産。ただしヨシ原から離れた場所に巨大な工場を作っても輸送コストがかさむため、ヨシ原の周辺で、地元の人手や設備を活用して製造するのが適切なスタイルです。地域雇用の創出もSDGsの一環ですね。現在、その趣旨に賛同し協力して下さる会社が現れて、三重県の工場にてヨシ繊維量産化を準備中です。岡山県でも児島湖の水質改善や周辺のヨシ保全と連動させてヨシでデニムを作るというプロジェクトが始まっています。各地のヨシ原で地域単位のサプライチェーンが構築され、それが緩やかに連携してヨシ産業全体の振興とヨシ原の保全を支えるのがベストだと思うので、全国の産地が知財ノウハウやヨシの情報データベースを共有できるように、社団法人ヨシオープンイノベーション協議会を8月に立ち上げたところです。その中で鵜殿ヨシ原の地域ブランド戦略も、事例として参考にしてもらえればと願っています。
※2 知財を活用して社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業、非営利法人や個人事業主などと、その活動をサポートする専門家が一つのチームを結成する、特許庁の伴走支援プログラム
※3 独立行政法人工業所有権情報・研修館
地産地消と環境保護の一体化スキーム
写真提供:株式会社アトリエMay