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今回は、「G7知財庁長官級会談をメタバース空間上で開催」という取組について、運営を担当した国際政策課が紹介します。
2023年12月15日、同年のG7サミット議長国として日本国特許庁(JPO)の主催でG7知財庁長官級会談が行われた。2021年に第1回が開催された同会談は、仏・米・英・独・日・伊・加のG7知財庁(7カ国9機関)の長官級および、オブザーバーとして世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長がオンライン上で一堂に会し、知財に関するグローバルな問題を議論するもの。第3回となる今回は、新たな試みとしてメタバース空間上で会合を開催し、包括性・多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)を広げるための知財普及啓発活動や、メタバースなどデジタル領域における知財の課題について議論するとともに、G7知財庁による共同声明の採択が行われた。
[URL] G7知財庁長官級会談開催の詳細はこちら
メタバースは知的財産分野において国際的に関心が高いテーマで、2023年に入ってからも、世界でメタバース関連の技術動向への関心の広がりや、関連するガイドラインの公表等がみられ、メタバース関連の訴訟が注目を集めるなどの動きもありました。今回、G7知財庁長官級会談を主催するに当たり、メタバースは「知財制度に関する大局的な意見交換の場にふさわしいトピック」と考え、早くから関連事例の情報収集を進めていました。
今回の会談の一番の特色はやはり、会談自体をメタバース空間上で開催したという先進性です。また、各国の長官級にメタバースを実際に体感してもらうことで、メタバースで問題となり得る事象についての理解を深めてもらう狙いもありました。会談に当たっては、会議室と、G7サミット開催地となった広島県の嚴島神社を再現した2つのメタバース空間を用意。特に会議室の設計には国際課担当者のこだわりを詰め込み、「知財」と書かれた掛け軸を床の間にかけたり机上に和菓子を置いたりして、和の雰囲気をリアルに感じてもらえるよう知恵を絞りました。
今回の成果のひとつとして、通常のオンライン会議では得られない「没入感」を、各国の長官級に体感してもらえたことが挙げられます。会議に臨んだ参加者の方々は、自身に似せたアバターから生み出される豊かな表情や躍動感ある動きを楽しんだ様子でした。特に、会談の最後に嚴島神社を再現したメタバース空間で写真撮影を行った際は、手を差し伸べて握手を交わすといった、インタラクティブなコミュニケーションを実現することができ、各参加者同士の信頼関係構築に結びつけられました。また、今回の会談を通して、「知財の最先端のトピックを議論する」というG7知財庁長官級会談の大きな価値をお互いに確認できたことも有意義だったと思います。今後、ハード面やコスト面での進展がかなえば、メタバース会合が、通常のオンライン会議のように当たり前のものとなることも夢ではありません。その先駆けとして、今回の会談は、国際会議の新しいかたち、あり方について、将来に期待を抱かせる試みだったのではないでしょうか。
特許庁総務部国際政策課
「米・欧・オセアニア」「中国・韓国」「ASEAN全体」「WIPO」「経済連携交渉」など、地域や専門分野ごとの班に分かれて、庁内の各種国際施策を担当。各国知財庁や海外事務所との接点も多く、G7知財庁長官級会談のような国際会議の運営も受け持つ。