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知財が創る未来
FILE#01 合同会社良品店
福島発の木造建築構法「タテログ」が、いま注目を集めています。タテログ推進協議会の中核を担う、合同会社良品店代表社員の渡邉洋一さんに話を聞きました。
「タテログは、木材(ログ)を縦に並べてビスで固定したパネルです。接着剤不使用で人体や環境に優しく、リサイクルも容易。工期短縮やコスト削減といった利点のほか、専門的な技能を必要としないため地元の工務店でも自由に施工できます」
誕生の経緯もうかがいます。
「東日本大震災の時、〈寄付された角材をつなげてパネルにすれば建材になる〉という発想から生まれた製品です。芳賀沼氏(はりゅうウッドスタジオ)が発案し、当社が研究開発を重ねて、当社とも関係が深い株式会社芳賀沼製作が普及を進めていましたが(芳賀沼製作及びはりゅうウッドスタジオは「縦ログ」、良品店は「パネルログ」で商標取得)、2023年のタテログ推進協議会設立以後は、〈タテログ〉の統一ブランドで展開しています。私たちが実現したいのは、国内の林業の振興。木材を多く使用すれば資源サイクルを促進できますし、原木・加工・生産・施工までつながる事業モデルは、森林資源の豊かな福島県はもちろん、地域活性化の枠組みとして全国で応用可能だと考えています」
研究開発では、福島イノベーション・コースト構想推進機構の支援制度などを活用。
「加工機械の開発や技術検証など、手厚い伴走支援を受けることができました。また、知的財産の基本的知識から実践的な活用まで助言をいただき、優れた弁理士も紹介してもらえました」
2021年には福島県浜通りの復興の拠点となる富岡産業団地に進出、工場などを設置しています。福島を元気にする産業創出の旗手に、期待が高まります。
タテログ推進協議会には全国の工務店や設計事務所から関心が寄せられており、日本全国、さらに海外への展開が今後のテーマ。リーズナブルな価格のライセンス契約でネットワークを広げる展望です。手軽に使えることを重視した構法ゆえ、品質の担保やビジネス展開には知財戦略が不可欠と渡邉さんは語ります。また、大きな可能性を秘めるプロジェクトが、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)。現在、パネル下の農地に太陽光を均等に当てる仕組みの実証実験中です。従来の営農型太陽光発電施設では、パネル下の光量が乏しくなり、作物が育ちにくいケースもありましたが、成功すれば、作物の種類やパネルの設置面積に広がりが出ると期待されます。