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行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく 特許庁長官の処分に係る審査基準等について
平成13年4月1日
20010329特許001
改正 平成15年6月1日
20030526特許007
改正 平成18年3月31日
20060323特許007
改正 平成25年4月1日
20130321特許11
特許庁長官 太田 信一郎
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「法」という。)に基づく特許庁長官の処分に係る、行政手続法(平成5年法律第88号)第5条第1項の規定による審査基準等については次のとおりとする。
.審査基準
1.法第5条の規定に基づく行政文書の開示
法第5条の規定により、特許庁長官は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に不開示情報のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならないが、この際に考慮すべき事項は以下のとおりとする。
(1)開示・不開示の基本的考え方
本法は、国民主権の理念にのっとり、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とするものであることから、行政情報は原則開示との考え方に立っている。しかしながら、一方で、個人、法人等の権利利益や、国の安全、公共の利益等も適切に保護すべき必要があり、開示することの利益と開示しないことの利益とを適切に比較衡量する必要がある。
このため、開示しないことに合理的な理由がある情報を不開示情報としてできる限り明確かつ合理的に定め、この不開示情報が記録されていない限り、開示請求に係る行政文書を開示しなければならない。
(2)開示の実施の方法との関係
本法でいう「開示」とは、行政文書の内容をあるがままに示し、見せることであり、開示・不開示の判断は、専ら開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されているかどうかによって行われ、開示の実施の方法によって開示・不開示の判断が異なることはない。ただし、開示決定された行政文書の開示の実施に当たり、行政文書の保存、技術上の観点から、原本での閲覧を認めることが困難である場合など一定の制約はある。
(3)不開示情報の類型
法第5条各号の不開示情報は、保護すべき利益に着目して分類したものであり、ある情報が各号の複数の不開示情報に該当する場合があり得る。また、例えば、ある個人に関する情報について、第1号のただし書の情報に該当するため同号の不開示情報には該当しない場合であっても、他の号の不開示情報に該当し不開示となることはあり得る。
したがって、ある情報を開示する場合は、本条の各号の不開示情報のいずれにも該当しないことを確認することが必要である。
(4)法第5条各号の「公にすること」
法第5条各号で用いられている「公にすること」とは、秘密にせず、何人にも知り得る状態におくことを意味する。本法では、何人も、請求の理由や利用の目的を問われずに開示請求ができることから、開示請求者に開示するに当たっては、何人に対しても開示を行うことが可能であり、また、開示請求者における当該請求をした事情を考慮することなく開示を行うことが可能であるかどうかという観点から検討することを要するため、法第5条各号で「公にすること」と規定されているものと考えることができる。
(5)不開示情報該当性の判断の時点
不開示情報該当性は、時の経過、社会情勢の変化、当該情報に係る事務・事業の進行の状況等の事情の変更に伴って変化するものであり、開示請求があった都度判断しなければならない。一般的には、ある時点において不開示情報に該当する情報が、別の時点においても当然に不開示情報に該当するわけではない。なお、個々の開示請求における不開示情報該当性の判断の時点は、開示決定等の時点(当該開示請求ごとの開示決定等の判断の時点)である。
2.不開示情報
法第5条に掲げる不開示情報の該当性を判断するに当たって考慮すべき事項は以下のとおりとする。
(1-1)解釈
法第5条に掲げる不開示情報のうち、個人に関する情報については、同条第1号の規定に基づき判断することとする。個人に関する情報は、一度開示されると当該個人に対して回復し難い損害を与えることがあることから、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の観点から十分な検討を行う。なお、同号の各規定の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとし、特定の個人を識別することができることとなる記述等以外の部分は個人の権利利益を害するおそれがない限り、法第5条第1号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱うことになる。したがって、他の不開示情報の規定に該当しない限り、当該部分は法第6条第2項の規定により開示されることになる。
法第5条第1号本文
1)「個人に関する情報」
「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別性のある情報を一般的に不開示とし、個人情報の判断に当たり、原則として、公務員等に関する情報と非公務員に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、行政機関における公務員の職務遂行に係る情報に含まれる当該職員の氏名ついては、「行政機関における公務員の氏名の取扱いについて」(平成17年8月3日情報公開に関する連絡会議申合せ)(以下「連絡会議申合せ」という。)により、特段の支障が生ずるおそれがある場合を除き、公にするものとするとされている。
「個人」には、外国に居住している者も含まれ、国籍を問うものではない。また、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれ、生前に本号により不開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適当である。
2)「事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く」
「営む」とは、同種の行為の反復継続的行為をいい、対価を得てなされるかどうかを問わない。
なお、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外されている。また、事業者としてのものではない氏名、住所等の情報は本号で取り扱い、また、事業者としてのものと明らかではない氏名、住所等の情報も「事業を営む個人の当該事業に関する情報」ではないと判断されるのであれば本号で取り扱うことになる。
3)「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」
「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報の全体である。
「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等が挙げられる。氏名以外の記述等単独では、必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、例えば、年齢、性別、印影、履歴、振込金融機関名等、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することができることとなる場合も多い。
なお、「記述等」には、例えば映像なども含まれる。
4)「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」
照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれる。なお、このことは、情報の性質、内容等に応じて、個別に適切な判断が必要であるが、個人のセンシティブな情報については、行政機関として通常考慮すべき情報を挙げているものであり、判断に当たり、特別の調査をすれば入手し得るかも知れないような情報についてまで、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はない。ここで、特別の調査とは、例えば、行政文書の開示を受けた者が、開示文書の個人を特定するために、一般には入手困難な情報を特別に得るために調査活動を行うことが考えられ、この場合も情報の性質、内容等に応じて個別に適切に判断する必要がある。
また、識別可能性の判断に当たっては、厳密には特定の個々人を識別することができる情報ではないが、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合があり得る。このように、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得る。例えば、病歴の情報等センシティブな情報であって、その集団が少人数の場合には、当該情報を開示してもその集団のうち誰であるか厳密に特定できない場合であっても、特定の個人の権利利益の侵害のおそれを問うまでもなく、個人識別性があるものと取り扱って良い。
5)「特定の個人を識別することができないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」
個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるもの等、特定の個人を識別できない個人情報であっても、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがある場合については不開示情報に該当する。例えば、匿名の作文や、無記名の個人の著作物(個人の研究成果の発言等の録音テープも含まれる)等がこれに該当する。
法第5条第1号イ
1)「法令の規定により」
「法令の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は、「公にされている情報」には該当しない。なお、「法令の規定」には、訓令その他の命令は、一般的には法規としての性質を持たないものであり、含まれない。また、法令の規定により期間を限定して行政文書(当該文書に個人情報が記載されているもの)の閲覧のみ許可している場合は、当該期間中は何人でも閲覧できるのであれば、少なくとも当該期間中においては、公にされている情報に該当する。
2)「慣行として」
公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。
当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらず、例えば、取材等でたまたま明らかになっているものであれば、一般的には「慣行として」には該当しない。
3)「公にされ」
当該情報が、現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に公知(周知)の事実である必要はない。なお、誤ってそのような状態に置かれている場合や、他人の故意又は過失によりそのような状態に置かれている場合はこれに含まれない。また、過去に公にされたものであっても、時の経過により、開示請求の時点では公にされているとは見られない場合があり得る。
4)「公にすることが予定されている情報」
将来的に公にする予定の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上通例公にされるものも含まれ、例えば、ある事業についての報告書を毎年公表している慣行があって、同種の新規事業に着手し、同様に報告書を作成したが、当該報告書の事項も同様で特に異なった取扱いをする必要がない場合などがある。換言すれば、同種の新規事業であっても、作成された報告書の事項が異なり、同種と判断されないのであれば、同種情報とはならない。
なお、「公にすることが予定されている」には具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含まれ、また、この「予定している」については、あらかじめ意思決定をしておくことは必ずしも必要ない。
法第5条第1号ロ
1)「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」
不開示情報該当性の判断に当たっては、開示することの利益と開示されないことの利益との調和を図ることが重要であり、個人情報についても、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、当該個人情報を開示する必要性と正当性が認められる。また、現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、そのような蓋然性が高いか否かの事実認定は、特に調査等を行うことまで求められるものではなく、通常知り得る範囲内で判断することとなる。
この比較衡量に当たっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要であるが、例えば、人の生命等の保護の達成のために当該情報を開示する以外の代替的方法があることだけをもって、当該情報を開示しないことにはならない。
なお、人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(法第7条)により判断することとなる。
法第5条第1号ハ
1)「当該個人が公務員等である場合において」
「公務員等」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方の氏名等公務員等以外の個人情報である場合がある。このように一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに不開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての不開示情報該当性と他の個人にとっての不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいずれかに該当すれば、当該部分は不開示となる。
「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、公務員であった者が当然に含まれるものではないが、当該者が公務員であった当時の情報については、本規定は適用される。さらに、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)の対象法人(以下「独立行政法人等」という。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員及び職員を含む。
2)「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき」
「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の機関の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。
また、本規定は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とし、例えば、公務員等の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報、人事査定・評価情報、給与等情報等は管理される職員の個人情報として保護される必要があり、本規定の対象となる情報ではない。なお、人事査定・評価情報や給与等情報は法第5条第6号の不開示情報にも該当し得ることに留意が必要である。
3)「当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
本人からの開示請求
本法の開示請求権制度は、何人に対しても、請求の目的の如何を問わず請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、特定の個人が識別される情報であれば、本号のイからハ又は公益上の理由による裁量的開示(法第7条)に該当しない限り、不開示となる。
なお、平成17年4月1日より行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)が施行され、行政機関の保有する個人情報について、本人が自己情報を開示請求することが可能となり、同法第14条各号の不開示情報に該当しない場合には自己情報が開示されることとなっている。
(1-2)具体例
本号の不開示情報に該当し、不開示となる可能性がある情報の例は、以下のとおりである。ただし、本例は一般的な例を想定したものに過ぎず、実際の運用に当たっては、個々の開示決定等の時点において、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質等、個別の事情を総合的に勘案し、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条の規定等の趣旨に沿って慎重に判断するものとする。
また、職務遂行に係る情報に含まれる行政機関の職員の氏名については、連絡会議申合せにより、特段の支障が生ずるおそれがある場合を除き、本号のハとともに、イが重畳的に適用され、個人情報としては不開示とならない。
なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報に該当するものや他の不開示情報にも重複的に該当するもの等が存在する点に留意することが必要である。
1)当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
2)特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの
また、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなる」情報における「他の情報」に該当する可能性が高い情報の例は、以下のとおりである。
なお、行政機関における会議等の開催に関する会計文書と職員の勤務状況に関する文書の2類型の行政文書に関し、主として本号及び第2号に関する開示・不開示の取扱いについて、個々の文書におけるその作成目的、内容等が特殊な場合を捨象した一般的な例を想定したものは、別添のとおりである。
(2-1)解釈
法第5条に掲げる不開示情報のうち、法人等に関する情報については、同条第2号の規定に基づき判断することとする。なお、同号の各規定の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとする。
法第5条第2号本文
1)「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)に関する情報」
「法人その他の団体」には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、特殊法人及び認可法人、政治団体、外国法人や法人ではないが権利能力なき社団等、外国政府(これに準じるものを含む。)、国際機関(国際会議その他国際的な協調に係る枠組みの事務局等を含む。)も含まれる。また、倒産や廃業、解散等により現時点で存在していない法人等についても、一般的には権利利益が継承された法人等の問題としてその正当な利益等を判断することになるが、個別の事案の内容によっては、「法人その他の団体」に含まれ得る。
一方、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立法人については、その公的性格に鑑み、法人等とは異なる開示・不開示の基準を適用すべきであるので、本号から除き、その事務又は事業に係る不開示情報は第6号等において規定している。
「法人その他の団体に関する情報」は、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人の権利利益に関する情報等法人と何らかの関連性を有する情報を指し、例えば、事業活動を行う上での内部管理に属する経営方針、経理、人事等に関する情報、生産、技術、営業、販売、運営その他の事業活動に関する情報、名誉、社会的信用、社会的活動の自由など法人の権利利益に関する情報等も当然含まれる。また、個別の事案の内容によるが、複数の法人等に関する情報を合算した数値が、当該数値に関連する諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして、特定の法人等又は特定の業界団体に関する情報と認められるのであれば、本号の情報に含まれる場合がある。
なお、法人の構成員に関する情報は、法人に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。
2)「ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」
当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならない。情報の内容や法人等の類型によって法人の正当な利益等には様々な場合が想定されるが、例えば、法人等の類型だけを根拠に、おのずから本号のただし書の適用関係が決まるものではない。
現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。また、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり、例えば、毒性のある物質により人の生命、健康が損なわれているような急迫した事態が生じた場合に、当該物質に発生と具体的な発生源について明確な因果関係が証明されていなくとも何らかの因果関係があると推測される場合がこれに該当する。
法第5条第2号イ
1)「権利、競争上の地位その他正当な利益」
「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を指す。
「競争上の地位」とは法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指し、具体的には、製造、販売等において他社に優る地位など、様々なものがある。
「その他正当な利益」とは、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含む。なお、具体的に正当性を判断するに当たり、法令上又は社会通念上保護されることが相当である当該法人等又は事業を営む個人の利益を指し、公表を伴う行政処分の対象となった違法事実に関する情報はこれに含まれない。
2)「害するおそれ」
「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係、競争事情等を十分考慮して適切に判断する必要がある。
なお、複数の法人等又は事業を営む個人に関する情報について、同様の事情があり、同様の理由が成り立つのであれば、いずれか一の法人等又は事業を営む個人について、「正当な利益等を害するおそれ」が認められれば、当該情報全体(当該複数の法人等又は事業を営む個人にとって)について不開示となる。
また、許認可等の申請における却下、拒否の事実や申告制度に基づく苦情等については、たとえ事実であったとしても、通常公にされず、公になると当該法人等の社会的信用などが侵害され法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害するおそれがあるものであると判断し得る場合には、「正当な利益等を害するおそれ」があるとして、不開示となる。
さらに、公にされる情報自体からは法人等の権利等が害されるおそれはないが、「他の情報と照合することにより」その可能性が生じる場合には、「害するおそれ」があるものと判断することになる。
なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。
法第5条第2号ロ
1)「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」
行政機関の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、行政機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、行政機関が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には含まれ得る。なお、この合理的な理由はその都度変わるものであり、一度受諾したからといって同種又は類似の情報の提供に関して開示請求の度に必ず認められるものではなく、個別的な事情や時期、社会的背景等を勘案し、その都度判断する必要がある。また、提供後であっても近接した時点において、「法人等の側から非公開の条件が提示され、行政機関が合理的な理由があるとしてこれを受諾した」場合には、例外的に、その時点から「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」に該当するものとなる。
「要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、特許庁長官等が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。
「公にしない」とは、本法に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三者に対して当該情報を提供しない意味である。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。「条件」については、行政機関の側から公にしないとの条件で情報を提供してほしいと申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から行政機関の要請があったので情報は提供するが公にしないでほしいと申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立するものである。
また、条件を設ける方法については、一般的には文書による方がその存在の立証において容易であるが、黙示的なものも排除するものではなく、例えば、口頭の場合や、文書によって条件が付されたものではないが、当該情報の性質、当時の状況等に照らして公にしないとの条件が付されたものと合理的に認められる場合なども含まれる。
「提供され」る方法は、書面によるとはされていないところであり、例えば法人等から口頭で提供された情報であって、行政機関の職員側で文書等に記録したものも含まれる。
なお、本号は行政機関への情報提供者の信頼と期待を基本的に保護しようとするものであり、行政機関の情報収集能力の保護は、別途、第六号等の不開示情報の規定によって判断されることとなる。
2)「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」
「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界(業界に準じて考えられるものを含む。)における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。公にしないとの条件を付すことの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の変化も考慮する必要がある。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、本号には当たらない。
(2-2)具体例
本号イの不開示情報に該当し、不開示となる可能性がある情報の例は、以下のとおりである。ただし、本例は一般的な例を想定したものに過ぎず、実際の運用に当たっては、個々の開示決定等の時点において、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質等、個別の事情を総合的に勘案し、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条の規定等の趣旨に沿って慎重に判断するものとする。
なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報に該当するものや他の不開示情報にも重複的に該当するもの等が存在する点に留意することが必要である。
1)生産、技術、営業、販売、運営その他の事業活動に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
i)生産、技術等に関する情報
ii)営業、販売、運営等に関する情報
2)事業活動を行う上で内部管理に属する経営方針、経理、人事等に関する以下の情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
3)名誉、社会的評価、社会的活動の自由等法人等の権利利益に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
なお、会議等の開催に関する会計文書と職員の勤務状況に関する文書の2類型の行政文書に関し、主として本号及び第1号に関する開示・不開示の取扱いについて、個々の文書におけるその作成目的、内容等が特殊な場合を捨象した一般的な例を想定したものは、別添のとおりである。
(3-1)解釈
法第5条に掲げる不開示情報のうち、国の安全等に関する情報については、同条第3号の規定に基づき判断することとする。なお、同号の各規定の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとする。
1)「国の安全」
「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていることなどがこれに当たる。
「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。
2)「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」
「他国若しくは国際機関」には、我が国が承認していない地域、政府機関その他これに準ずるもの(各国の中央銀行等のほか、民族解放団体、自主的に外交関係を処理できる能力を有する国営企業体等の団体も含む。)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織(アジア太平洋経済協力会議、国際刑事警察機構等)の事務局等(国際機関における「総会、理事会、事務局」のような固有の常設機関が完全には形成されていない国際的な組織(国際フォーラム)や、通常兵器や核物質の拡散防止等のために自発的に国家間で形成された国際協調のための組織なども含む。)が含まれる(以下「他国等」という。)。
「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」とは、例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなる、他国等の意思に一方的に反することとなる、他国等に不当に不利益を与えることとなるなど、他国等との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすようなおそれをいう。
3)「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」
他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望むような交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下するなどのおそれをいう。例えば、交渉に関する情報(交渉に関して取られた措置や交渉の対処方針の検討過程の資料などについても含まれる。)であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が執ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当する。
4)「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」
公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は国際交渉上不利益を被るおそれがある情報については、一般の行政運営に関する情報とは異なり、その性質上、開示・不開示の判断に高度の政策的判断を伴うこと、我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められる。
この種の判断については、司法審査の場においては、裁判所は、本号に規定する情報に該当するかどうかについて行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)どうかを審理・判断することが適当と考えられることから、このような規定としたところである。
本号の該当性の判断においては、行政機関の長は、「おそれ」を認定する前提となる事実を認定し、これを不開示情報の要件に当てはめ、これに該当すると認定(評価)することとなるが、このような認定を行うに当たっては、高度の政策的判断や将来予測としての専門的・技術的判断を伴う。裁判所では行政機関の長の第一次的判断(認定)を尊重し、これが合理的な許容限度内であるか否かという観点から審理・判断されることになる。
(3-2)具体例
本号の不開示情報に該当し、不開示となる可能性がある情報の例は、以下のとおりである。ただし、本例は一般的な例を想定したものに過ぎず、実際の運用に当たっては、個々の開示決定等の時点において、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質等、個別の事情を総合的に勘案し、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条の規定等の趣旨に沿って慎重に判断するものとする。
なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報に該当するものや他の不開示情報にも重複的に該当するもの等が存在する点に留意することが必要である。
1)公にすることにより、国の安全が害されるおそれがあると認めることにつき相当の理由がある情報
2)公にすることにより他国等との信頼関係が損なわれるおそれがあると認めることにつき相当の理由がある情報
3)公にすることにより、他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると認めることにつき相当の理由がある情報
(4-1)解釈
法第5条に掲げる不開示情報のうち、公共の安全等に関する情報については、同条第4号の規定に基づき判断することとする。なお、同号の各規定の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとする。
1)「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他公共の安全と秩序の維持」
2)「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」
公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報については、その性質上、開示・不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められることから、国の安全等に関する情報と同様、司法審査の場においては、裁判所が本号に規定する情報に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かについて審理・判断するのが適当であり、このような規定振りとしているものである。
(4-2)具体例
本号の不開示情報に該当し、不開示となる可能性がある情報の例は、以下のとおりである。ただし、本例は一般的な例を想定したものに過ぎず、実際の運用に当たっては、個々の開示決定等の時点において、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質等、個別の事情を総合的に勘案し、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条の規定等の趣旨に沿って慎重に判断するものとする。
なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報に該当するものや他の不開示情報にも重複的に該当するもの等が存在する点に留意することが必要である。
(5-1)解釈
法第5条に掲げる不開示情報のうち、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間の審議、検討等情報については、同条第5号の規定に基づき判断することとする。なお、同号の規定の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとする。
法第5条第5号
1)「国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間」
「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院(これらに属する機関を含む。)を指し、これらの機関、地方公共団体及び地方独立行政法人について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間の意味である。
2)「審議、検討又は協議に関する情報」
国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開催する有識者、関係法人等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報をいう。また、審議、検討又は協議の体制や進め方についての情報も、当該情報が記録された行政文書として作成、取得されていれば、「審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報」に含まれ、結果的に意思決定に至らなかった審議、検討等の内容等も本号に含まれる。
なお、これらの「審議、検討又は協議に関する情報」の例としては、以下のようなものも含まれる。
3)「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」
公にすることにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合をいい、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。
例えば、審議、検討等の場における発言内容が公になると、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれがある場合(例えば、利害関係の対立の激しい事項についての審議等を行う審議会等において、特定の意見を主張する者に対して、その反対派や利害関係者から、当該発言者やその家族に対し無言電話や嫌がらせが行われるような場合など)には、法第5条第4号等の他の不開示情報に該当する可能性もあるが、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」が生じたり、また、行政機関内部の政策の検討がまだ十分でない情報が公になり、外部からの圧力により当該政策に不当な影響を受けるおそれがあり、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」が生じたりすることを指す。ここでいう「外部からの圧力」とは、有形無形にかかわらず、直接的なものだけでなく間接的なものも含め、圧力により「不当な」影響を受けるのであれば該当し得る。
4)「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」
未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が公にされることによる国民(地域住民等一定の地域コミュニティや高齢者、労働者等一定の社会階層に限られる場合も含む。)への不当な影響が生じないようにするものである。
例えば、特定の物資が将来不足することが見込まれることから、政府として取引の規制が検討されている段階で、その検討情報を公にすれば、買い占め、売り惜しみ等が起こるおそれがある場合がこれに該当する。
なお、行政機関の審査等を経た後、公表される予定となっている文書であっても、審査期間中においては、内容の確定していない文書を公にすることにより不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ等があり得ることから、審査終了までの間の請求については本号に該当するものとして不開示となる場合がある。
5)「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」
尚早な時期に事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合をいう。4)と同様に、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにするものである。ここで、「特定の者」については、具体的に個人又は法人等が確定していることまでは求められず、ある程度の蓋然性をもってその存在が認められることをもって足りる。また、「利益」又は「不利益」には、経済的なものに限らず、精神的苦痛や社会的信用も含まれ得る。
例えば、施設等の建設計画の検討状況に関する情報が開示されたために、土地の買い占めが行われて土地が高騰し、開示を受けた者や、それ以外の利害関係を有する者等が不当な利益を得たり、違法行為の事実関係についての調査中の情報が開示されたために、結果的に違法・不当な行為を行っていなかった者が不利益を被ったりするおそれがある場合がこれに該当する。
6)「不当に」
上記3)、4)及び5)のおそれの「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益、すなわち政府の説明責任を全うする観点から意思形成過程を明らかにすることの利益と、不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で個別に判断することとなる。
意思決定後の取扱い等
審議、検討等に関する情報については、行政機関としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるが、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等、審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は他の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が必要である。また、当該審議、検討等に関する情報が公になると、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合等があれば、本号に該当する。例えば、選択されなかった選択肢が公になると将来の審議、検討等の際の選択肢を狭め、将来の審議、検討等に影響する場合がある。
なお、審議、検討等に関する情報の中に、調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実やこれに基づく分析等を記録したもの(当該データに対する評価、評価を推測させるもの等、客観的・科学的事実でないものを除く。)であれば、一般的に本号に該当する可能性が低いものと考えられる。
(5-2)具体例
本号の不開示情報に該当し、不開示となる可能性がある情報の例は、以下のとおりである。ただし、本例は一般的な例を想定したものに過ぎず、実際の運用に当たっては、個々の開示決定等の時点において、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質等、個別の事情を総合的に勘案し、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条の規定等の趣旨に沿って慎重に判断するものとする。
なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報に該当するものや他の不開示情報にも重複的に該当するもの等が存在する点に留意することが必要である。
1)公にすることにより、率直な意見交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある情報
2)公にすることにより、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報
3)公にすることにより、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある情報
(6-1)解釈
法第5条に掲げる不開示情報のうち、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報については、同条第6号の規定に基づき判断することとする。なお、同号の各規定の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとする。
法第5条第6号本文
1)「次に掲げるおそれ」
「次に掲げるおそれ」として本号イからホまでに掲げたものは、各機関共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることにより、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を挙げたものである。
これらの事務又は事業の外にも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のあるものがある。
なお、例えば、記者発表など、一定期間後に一斉に公表される予定となっている文書については、公表日前に公にすることにより当該事務又は事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断されるのであれば、本号に該当する。
2)「当該事務又は事業の性質上」
当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断することを指す。
3)「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」
本規定においては、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務又は事業がその根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での「適正な遂行」と言えるものである必要がある。
「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。
法第5条第6号イ
1)「監査、検査、取締り、試験又租税の賦課若しくは徴収に係る事務」
「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいい、行政が適切に行われているかを確認するという見地から行う監察もこれに含まれる。
「検査」とは、法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。
「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止、又は制限について適法、適正な状態で確保することをいう。
「試験」とは、人の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。
「租税の賦課若しくは徴収」とは、国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入を取ることをいう。
2)「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」
上記の監査等に係る事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項、監査の手法等の詳細な情報や、試験問題等のように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがあるものがあり、このような情報は不開示となる。また、事後であっても、例えば、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは不開示情報に該当する。
法第5条第6号ロ
1)「契約、交渉又は争訟」
「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。例えば、行政機関の事務中、「交渉」に係る事務として想定している類型としては、補償交渉、土地売買交渉、組合団体交渉等が考えられる。
「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立てその他の法令に基づく不服申立てがある。
2)「国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」
国、独立行政法人等又は地方公共団体が一方の当事者となる上記の契約等に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を公にすることにより公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉や争訟等の対処方針等(交渉結果や要求・陳情書も該当する場合がある。)を公にすることにより、当事者として認められるべき地位(当事者の地位を含む。)を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示となる。
法第5条第6号ハ
調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、知的財産権に関する情報、調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、
試行錯誤の段階のものについて、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報は不開示となる。
なお、各種統計調査においては、当該調査の実施機関、目的、調査対象、調査手法、周期・期日、調査事項等が公にされているところではあるが、具体の調査対象企業名等のように、それが公にされることにより当該法人に不利益を及ぼすおそれや事後の協力を得られなくなることから事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものに該当する場合がある。
法第5条第6号二
人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は不開示となる。
法第5条第6号ホ
独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第2条の適用を受ける企業をいう。)又は地方独立行政法人に係る事業については、企業経営という事業の性質上、第2号の法人等に関する情報と同様な考え方で、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは不開示となる。例えば、生産技術上のノウハウ、販売及び営業に関する情報、信用上不利益を与える情報等が該当し、また、当該企業に係る監査、契約、争訟、調査研究、人事管理等の事務についても本号ホの該当性を検討する必要がある。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その開示の範囲は第2号の法人等とでは当然異なり、地方公共団体が経営する企業又は独立行政法人に係る事業に関する情報の不開示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。
(6-2)具体例
本号の不開示情報に該当し、不開示となる可能性がある情報の例は、以下のとおりである。ただし、本例は一般的な例を想定したものに過ぎず、実際の運用に当たっては、個々の開示決定等の時点において、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質等、個別の事情を総合的に勘案し、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条の規定等の趣旨に沿って慎重に判断するものとする。
なお、個別の情報の具体的な内容等によって、他の不開示情報に該当するものや他の不開示情報にも重複的に該当するもの等が存在する点に留意することが必要である。
1)公にすることにより、監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがある情報
2)公にすることにより、契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれがある情報
3)公にすることにより、調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある情報
4)公にすることにより、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報
5)公にすることにより、独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれがある情報
.その他
本法の開示請求の対象となる「行政文書」の範囲は、法第2条第2項に規定されているが、同項の解釈に当たっては、以下の点に留意するものとする。
1)「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した」
行政機関の職員が当該職員に割り当てられた仕事を遂行する立場、すなわち公的立場において作成し、又は取得したことをいい、作成したこと及び取得したことについて、文書管理のための帳簿に記載すること、収受印があること等の手続的な要件を満たすことを要するものではない。
2)「文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)」
「文書、図画」は、人の思想等を文字・記号又は象形を用いて有体物に可視的状態で表現したものを指し、紙の文書のほか、図面、写真、これらを写したマイクロフィルム等が含まれる。
「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によって認識することができない方式で作られた記録を指し、電子計算機による情報処理の用に供されるいわゆる電子情報の記録だけでなく、録音テープ、ビデオテープ等の内容の確認に再生用の専用機器を用いる必要のある記録も含まれる。また、電子計算機による情報処理のためのプログラムについても、法第2条第2項ただし書に該当するものを除き、「電磁的記録」に該当する。なお、「電磁的記録」には、ディスプレイに情報を表示するため一時的にメモリに蓄積される情報や、ハードディスク上に一時的に生成されるテンポラリファイル等は含まれない。
3)「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」
「組織的に用いる」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において、業務上必要なものとして、利用又は保存されている状態のものを意味する。
したがって、
職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないもの(自己研鑚のための研究資料、備忘録等)、
職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し、
職員の個人的な検討段階に留まるもの(決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書等。なお、担当職員が原案の検討過程で作成する文書であっても、組織において業務上必要なものとして保存されているものは除く。)
などは、組織的に用いるものには該当しない。
作成又は取得された文書が、どのような状態にあれば組織的に用いるものと言えるかについては、
文書の作成又は取得の状況(職員個人の便宜のためにのみ作成又は取得するものであるかどうか、直接的又は間接的に管理監督者の指示等の関与があったものであるかどうか)、
当該文書の利用の状況(業務上必要として他の職員又は部外に配付されたものであるかどうか、他の職員がその職務上利用しているものであるかどうか)、
保存又は廃棄の状況(専ら当該職員の判断で処理できる性質の文書であるかどうか、組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか)
などを総合的に考慮して実質的な判断を行うこととなる。
また、どの段階から組織として共用文書たる実質を備えた状態になるかについては、当該組織における文書の利用又は保存の実態により判断されることとなるが、例えば、
決裁を要するものについては起案文書が作成され、稟議に付された時点
会議に提出した時点、
申請書等が行政機関の事務所に到達した時点、、
組織として管理している職員共用の保存場所に保存した時点
等が一つの目安となる。
4)「当該行政機関が保有しているもの」
「保有しているもの」とは、所持している文書をいう。この「所持」は、物を事実上支配している状態をいい、当該文書を書庫等で保管し、又は倉庫業者等をして保管させている場合にも、当該文書を事実上支配(当該文書の作成、保存、閲覧・提供、移管・廃棄等の取扱いを判断する権限を有していることをいう。なお、例えば、法律に基づく調査権限により関係人に対し帳簿書類を提出させこれを留め置く場合に、当該行政文書については返還することとなり、廃棄はできないなど、法令の定めにまた、一時的に文書を借用している場合や預かっている場合など、当該文書を支配していると認められない場合には、保有しているとはいえない。
5)「官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」(法第2条第2項第1号)
「不特定多数の者に販売することを目的として発行される」文書には、紙媒体のものに限るものではなく、インターネット上で不特定多数の者への有償頒布を目的として発行される新聞、雑誌、書籍等も含まれる。
また、行政機関が公表資料等の情報提供を行っているものは、本号に該当せず、開示請求の対象となる。これは、このような情報提供については、その内容、期間、方法等が行政機関の裁量に委ねられており、例えば、特定の期間や地域に限って提供されるものがあることから、一律に対象から除くことは適当ではないことによるものである。
2.部分開示
法第6条の規定に基づいて部分開示を行う場合には、同規定の解釈として以下の点に留意するものとする。
(1)不開示情報が記録されている場合の部分開示(法第6条第1項)(ただし、個人識別情報が記録されている場合には(2)参照)
1)「開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合」
一件の行政文書に複数の情報が記録されている場合に、各情報ごとに、法第5条各号に規定する不開示情報に該当するかどうかを審査した結果、不開示情報に該当する情報がある場合を意味する。
開示請求は、行政文書単位に行われるものであるため、法第5条では行政文書に全く不開示情報が記録されていない場合の開示義務を定めているが、本項の規定により、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合には、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。
2)「容易に区分して除くことができるとき」
3)「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」
4)「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。」
(2)個人識別情報が記録されている場合の部分開示(法第6条第2項)
1)「開示請求に係る行政文書に前条第1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合」
2)「当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるとき」
個人を識別させる要素を除去することにより誰の情報であるかが分からなくなれば、残りの部分については、通常、個人情報としての保護の必要性は乏しくなるが、個人識別性のある部分を除いても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、カルテ、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未公表の研究論文等開示すると個人の権利利益を害するおそれがあるものが該当し、私人の経済活動に関する情報についても、個人のプライバシーに係る情報であれば人格権に密接に関連し、これに含まれる。
このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、公にしても、個人の権利利益を害するおそれがないものに限り、部分開示の規定を適用することになる。
3)「当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」
第1項の規定により、部分開示の範囲を決定するに当たっては、個人識別情報のうち、特定の個人を識別することができることとなる記述等以外の部分は、個人の権利利益を害するおそれがない限り、法第5条第1号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱う。したがって、他の不開示情報の規定に該当しない限り、当該部分は開示することになる。
また、第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合には、当該個人に関する情報は全体として不開示となる。
なお、個人を識別することができる要素は、法第5条第1号イからハまでのいずれかに該当しない限り、部分開示の対象とならない。
法第7条の規定に基づき、公益上の理由から不開示情報の裁量的開示を行う場合には、同規定の解釈として以下の点に注意するものとする。
1)「公益上特に必要があると認めるとき」
法第5条各号の不開示情報の規定に該当する情報であるが、高度の行政的な判断により、公にすることに、当該保護すべき利益を上回る公益上の必要性があると認められる場合を意味する。
当該規定により保護する利益と当該情報を公にすることの公益上の必要性との比較衡量は、第5条各号においても行われる場合があるが、法第7条では、法第5条の規定を適用した場合に不開示となる場合であっても、なお公にすることに公益上の必要性があると認められる場合には、開示することができるとするものである。なお、公益上の必要性については、具体的開示請求について、その時点における諸般の事情を考慮して判断することが適当であるが、緊急事態、特殊事情もこの比較衡量の際の考慮要素になり得る。
法第8条の規定に基づき、行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する場合には、同規定の解釈として以下の点に留意するものとする。
1)「開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」
開示請求に係る行政文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された行政文書の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をいう。開示請求に含まれる情報と不開示情報該当性とが結合することにより、当該行政文書の存否を回答できない場合もある。例えば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された文書の開示請求があった場合、当該行政文書に記録されている情報は不開示情報に該当するので、不開示であると答えるだけで、当該個人の病歴の存在が明らかになってしまう。このような特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求は、法第5条各号の不開示情報の類型すべてについて生じ得るものであり、例えば、次のようなものがある。
特定の個人の病歴に関する情報(第1号)
先端技術に関する特定企業の設備投資計画に関する情報(第2号)
情報交換の存在を明らかにしない約束で他国等との間で交換された情報(第3号)
犯罪の内偵捜査に関する情報(第4号)
買い占めを招くなど国民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある特定の物質に関する政策決定の検討状況の情報(第5号)
特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報(第6号)
2)「当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる」
行政文書の存否を明らかにしないで、開示請求を拒否する決定も、申請に対する処分であることから、行政手続法第8条に基づき、処分の理由を示す必要がある。提示すべき理由の程度としては、開示請求者が拒否の理由を明確に認識し得るもの(個々の開示請求者が明確に認識し得る必要はないが、一般人を基準とした者が明確に認識し得るもの。)であることが必要である。また、個別具体的な理由提示の程度については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった行政文書の存否を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示することになる。
また、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否することが必要であり、例えば、行政文書が存在しない場合に不存在と答えて、行政文書が存在する場合にのみ存否を明らかにしないで拒否したのでは、開示請求者に当該行政文書の存在を類推させることになる。
附則(平成13年4月1日 20010329特許 1)
1.本審査基準等は、平成13年4月1日から施行する。
2.本本審査基準等については、本法に基づく開示決定等、情報公開審査会の答申並びに情報公開訴訟の判例等の状況について検討が加えられ、その結果に基づいて適宜適切な見直しが行われるものとする。
附則(平成15年6月1日 20030526特許007)
1.本審査基準等は、平成15年6月1日から施行する。
附則(平成18年3月31日 20060323特許007)
1.本審査基準等は、平成18年3月31日から施行する。
附則(平成25年4月1日 20130321特許)
1.本審査基準等は、平成25年4月1日から施行する。
行政文書における類型的な情報に関し、個々の文書におけるその作成目的、内容等が特殊な場合を捨象した一般的な例を想定したものは、以下のとおりである。その運用に当たっては、開示請求に係る行政文書に記載されている個々の情報の内容、性質を踏まえ、画一的、一律的にならないよう留意し、法第5条各号の規定等の趣旨に沿って個々に判断する必要がある。
(1)該当する文書
各行政機関において日常的に開催されている会議等(各行政機関の部内の会議、
他の行政機関、地方公共団体、民間団体等の職員を交えた連絡、協議、打合せ会議、
審議会等又は行政運営上の懇談会等)の開催に関する会議費、諸謝金、借料及び旅費の支出に係る書類(決裁伺い、支出負担行為即支出決定決議書、証拠書類(確認書、業者からの請求書、諸謝金支給調書、旅費請求書等))
(2)記載情報ごとの開示・不開示の取扱い
記載情報ごとの開示・不開示の取扱いについては、一般的に次のように整理することができる。
ただし、に該当する場合にあっても、例えば、情報収集、協議、交渉等のための会議等であって、会議名、開催の目的、開催の日時、場所等の情報を公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすこととなるなど、個別の事情により不開示情報に該当するような場合には、個別具体的に判断する必要がある。
一般的に法第5条各号の不開示情報には該当せず、開示可能と考えられるもの
個別ケースにより開示と不開示について慎重な判断が必要なもの
参考)以下のような場合は、開示されることとなる。
一般的に法第5条第1号又は第2号に該当し、不開示と考えられるもの
(1)該当する文書
出勤簿、旅行命令簿、休暇簿、超過勤務命令簿
なお、一般的な職務につき共通的に作成されるものを想定しており、職務の性質等が特殊なものを除く。
(2)記載情報ごとの開示・不開示の取扱い
記載情報ごとの開示・不開示の取扱いについては、一般的に次のように整理することができる。
ただし、に該当する場合にあっても、例えば、用務、用務先等を公にすることにより事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすこととなるなど、個別の事情により不開示情報に該当するような場合には、個別具体的に判断する必要がある。
一般的に法第5条各号の不開示情報には該当せず、開示可能と考えられるもの
一般的に、法第5条第1号に該当すると考えられ、不開示と考えられるもの
その他の行政文書における類型的な情報の開示・不開示の判断については、一般的に次のように整理することができる。ただし、個別の事情を勘案して個別具体的に判断する必要がある。
[更新日 2013年4月1日]