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世界知的所有権機関(WIPO)や独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携した国際協力

日本国特許庁(JPO)は、途上国における知財権の保護強化を通じた日本企業の進出支援を目的として、世界知的所有権機関(WIPO)や独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力しながら、人材育成や技術協力等を積極的に支援しています。 以下では、各機関と連携した途上国協力について紹介します。

世界知的所有権機関(WIPO)との協力

Funds-in-Turst Japan Industrial Property Global (FIT Japan IP Global)について

日本は、1987年からWIPOに対して任意拠出金を支出しており、この拠出金を基に信託基金「Funds-in-Trust Japan Industrial Property Global(FIT Japan IP Global)」を設置しています。創設当時、アジア・太平洋地域に限定されていた支援対象は、2008年にはアフリカ地域に拡大され、さらに2019年には地域の限定をなくした「グローバルファンド」として刷新され、現在に至ります。同ファンドは、創設以来38年間で、総額約120億円を拠出し、120か国以上に支援を行い、途上国における知財制度の整備に貢献し、制度を担う人材の育成に注力しています。

FIT Japan IP Globalが目指す4つの目的

  1. 自律的な知財エコシステムの構築:途上国発のイノベーションが適切に知財として保護・商業化される世界を実現すること
  2. グローバルな知財ネットワークの形成:世界各国の知財に関する制度、人材、情報をつなげること
  3. 知財の役割拡大と理解促進:専門家以外の人々の知財への理解を深め、経済発展に貢献すること
  4. SDGsの達成への貢献:知財を通じて革新的技術の普及を促進し、地球規模課題の解決に取組むこと

(図)FIT Japan IP Globalの紹介ビデオ(WIPOウェブサイトへリンク)
FIT Japan IP Globalの紹介ビデオ(WIPOウェブサイトへリンク)

FIT Japan IP Globalによる具体的な取組

多年にわたるFIT Japan IP Globalを通じた各国・地域に対する支援は、1. 知財活用支援、2. 専門家派遣、3. 人材育成、4. 情報化支援、5. その他支援、という5つの観点から様々な取組が行われています。

1. 知的財産活用支援

(1) 中小企業・スタートアップ・ベンチャー支援

2024年2月に濱野特許庁長官(当時)とダレン・タン(Daren Tang)WIPO事務局長が署名した「中小企業・スタートアップ・起業家への支援分野における協力声明」に基づき、FIT Japan IP Globalを通じた知財分野での途上国支援において、WIPOと特許庁が連携して、途上国の中小企業・スタートアップ・起業家への支援への協力を強化しています。

これまで、知財マネジメント戦略の策定や専門家のハンズオン支援を提供する「知財マネジメントクリニック」や知財の商用化を促進するためのトレーニングを提供する「Scale Up Your IP Program」を通じた支援を行っています。また、特定のテーマを設けた地域会合も開催しており、会合参加者の中から選出してフォローアップ(コーチング・メンタリング)した結果、ジンバブエの女性起業家であるMs. Peserverance Muzeya氏のように、知財がビジネスの成長を促進する可能性を認識できる事例も見られるようになりました。

これらの支援を含めて、2026年の国連が定めた「中小企業の日」(2026年6月27日)までに627者の中小企業、スタートアップ、起業家を支援し、最終的には合計1,000者への支援を目指しており、途上国でのイノベーション促進や知財制度の整備が進み、我が国企業にとっても、途上国でのビジネス展開が促進されるよう取り組んでいます。

(2) 技術・イノベーション支援センター(TISC:Technology and Innovation Support Center)

技術・イノベーション支援センター(TISC:Technology and Innovation Support Center)は、技術情報、科学及び技術文献、サーチツールやデータベースの利用促進を通じて、途上国におけるイノベーションや技術移転を支援するために設置された機関です。93か国で約1,500箇所の拠点(知財庁、大学、研究センター、テクノロジーパーク等)に設置され、特許及び非特許データベースへのアクセス及びそのサポート、先行技術調査のサポート、商業化と技術移転のサポート等のサービスが利用者に提供されています。

FIT Japan IP Globalは、各地域におけるTISCのネットワーク形成やTISC職員のスキル向上に向けた取組を支援しており、各TISCの代表者はベストプラクティスや知見を共有し、TISCのサービス向上に向けて連携を深めています。

2. 専門家派遣

FIT Japan IP Globalの事業として、特許協力条約、意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定、マドリッド協定議定書(国際登録出願手続条約)への加盟促進や運用の向上を目的としたワークショップやセミナーが開催されており、JPOは、職員をこれらのワークショップ等の講師として派遣することで、条約加盟国として条約加盟時の対応や運用整備に関する知見を共有することにも力を入れています。1987年からアジア・太平洋地域、2009年からアフリカ地域への専門家派遣を開始し、2024年度までに約400名の専門家を途上国に派遣しました。また、条約以外のテーマでは、デジタルサービスに関する活動やDX、審査におけるAI活用の取組等、各国のニーズを踏まえた研修やワークショップの開催をFIT Japan IP Globalで支援し、JPOの知見・経験等を共有しています。

3. 人材育成(途上国・女性・若者向け)

途上国における人材育成を目的として、知財の側面から国の経済政策や科学技術政策を担う未来のリーダーの育成を目的として、WIPO Academyが知財修士プログラム(Master’s degree in Intellectual Property(MIP)プログラム)を実施しており、MIPプログラムの一部のプログラムにおいてFIT Japan IP Globalは奨学金制度を提供しています。

また、若者向け・女性向けといった視点からの人材育成も重視しており、地域会合やプレゼンテーションコンテストの開催、先住民族や地域社会のコミュニティにおける女性の経済的自立を促し、コミュニティ内で弱い立場に置かれやすい女性の地位向上を実現させることを目的とした、同地域の企業による知財関連プロジェクトを支援しています。

4. 情報化支援

途上国における審査の効率化と質の向上を目的として、途上国のITインフラ整備も支援しています。 具体的には、(1)出願書類等の電子化支援、(2)知財庁の事務処理システムであるWIPO-IPAS、ASEAN各庁の公報データを一括で参照できるASEAN知財情報ポータルであるASEAN PATENTSCOPE等のITシステムの開発・データ収載支援、(3)特許の出願・審査情報(ドシエ情報)の共有システムであるWIPO-CASEの開発・普及支援、(4)IT人材育成のための途上国向けIT研修・ワークショップの開催支援等を実施しています。WIPO-CASEの開発支援は2013年から、ASEAN PATENTSCOPEの開発支援は2015年から実施しています。ASEAN PATENTSCOPEは、FIT Japan IP Global による支援も経て、2023年にASEAN IP Registerへと移行しました。

5. その他の支援

日本企業等の途上国におけるビジネス活動を知財の面でサポートすることを目的として、様々な取り組みを実施しています。

独立行政法人国際協力機構(JICA)との協力

JICAと協力し、JPO職員を知財制度に関する専門家として途上国に派遣することで、途上国での知財法の制度整備や人材育成を直接支援しています。

1.インドネシアへの支援

現地の知財制度整備の支援、人材育成協力、普及啓発活動を目的として、1993年度からJPO職員を長期専門家としてインドネシア知的財産総局へ派遣し、インハウスの形式で支援を行っています。現在は特許審査官1名を派遣し、特許審査実務の運用の向上、特許・意匠・商標審査官の能力向上、特許審査の品質管理体制の確立、地方の大学や中小企業への知財普及促進等を実現するためのセミナーやワークショップの開催や翻訳資料の作成等を実施しており、現地のビジネス・投資環境の整備・改善に寄与しています。

(写真6-1-1)インドネシアにおけるJICA長期専門家の活動の様子
インドネシアにおけるJICA長期専門家の活動の様子

2.ベトナムへの支援

2024年4月から「ベトナム国家知的財産庁における特許・商標審査能力強化プロジェクト」が開始され、長期専門家としてJPOから特許審査官1名をベトナム国家知的財産庁へ派遣し、インハウスの形式で支援を行っています。主な活動として、特許審査業務の管理手法に関する改善の検討・試行、先端技術(バイオテクノロジー、医薬等)に関する特許審査ガイドラインを作成、並びに、先端技術の特許審査官の能力・スキル向上を目的としたセミナーやワークショップの開催等を実施しており、現地のビジネス・投資環境の整備・改善に寄与しています。

(写真6-2-1)ベトナムにおけるJICA長期専門家の活動の様子
ベトナムにおけるJICA長期専門家の活動の様子

[更新日 2025年9月18日]

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特許庁総務部国際協力課海外協力班

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