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ソフトウエア関連発明に関する比較研究について

近年、第4次産業革命を推進するべく、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)及び3Dプリンティングといった技術の研究開発が活発に行われています。これらの技術の中核を成す発明はソフトウエア関連発明であることから、各特許庁のソフトウエア関連発明に対する現在の審査実務を出願人に示すことが重要となっています。

このような状況に鑑みて、ソフトウエア関連発明に特有の審査実務に関する類似点と相違点を明示するべく、欧州特許庁と日本国特許庁はソフトウエア関連発明に関して比較研究を行い、2019年3月に報告書を公表しました。

そして今般、AI関連発明を含むソフトウエア関連発明に対する両特許庁の最新の審査実務を示すべく、新たに記載要件・進歩性に関する6つの事例を追加して比較研究を行い、報告書をアップデートしました。

以下に本比較研究の報告書を公表します。

なお、本比較研究はソフトウエア関連発明に特有の審査実務に焦点を絞っている点にご留意ください。また、本比較研究の結果は、両特許庁に対して法的拘束力を与えるものではありません。

今般のアップデートによる主な変更点

今般のアップデートによる主な変更点は以下のとおりです。

(1)「開示の十分性/実施可能要件」(II,D及びIII,D)に関する事例を新たに追加(事例D-1~D-3)

2019年に公表した報告書にはなかった「開示の十分性/実施可能要件」(II,D及びIII,D)の項目を新たに追加しました。また、新たに追加された事例の比較を通じて、「開示の十分性/実施可能要件」について以下の点が確認されました。

  • JPOとEPOにおける判断結果が類似することが確認されました(事例D-1、D-3参照)。
  • また、採用されるアプローチについて、EPOでは、請求項に係る発明が、明細書で開示される技術情報に基づいて再現可能であるかという基準で判断を行うのに対して、JPOでは、教師データ間の相関関係等が認められるかという基準で判断を行う点で異なります。他方、比較事例においては、教師データ間の相関関係に着目する点で実体的なアプローチが類似することが確認されました(事例D-1、D-3参照)。
  • また、両庁間の相違点として、EPOでは、ビジネス方法のような非技術的なものの単なる自動化については、開示の十分性を判断することなく、進歩性の欠如で拒絶され得ることが確認されました(事例D-2参照)。

(2)「進歩性」(III,C)に関する事例を拡充(事例C-6~C-8)

AI関連発明を中心に「進歩性」(III,C)に関する事例を拡充しました。また、拡充された事例の比較を通じて、AI関連発明の「進歩性」について以下の点が確認されました。

  • JPOとEPOにおいて、ソフトウエア関連発明に対する進歩性評価の判断基準が、AI関連発明に対してどのように適用されるのかが確認されました(事例C-6、C-8参照)。
  • その結果、両庁におけるソフトウエア関連発明に対する進歩性評価のアプローチの差異が、AI関連発明においても存在することが確認されました。
  • すなわち、EPOでは、請求項に係る発明を技術的特徴と非技術的特徴とに分け、最も近い先行技術との相違点が非技術的特徴である場合は進歩性が否定されます。また、AI関連発明に関しては数学的方法と判断される可能性があり、当該数学的方法が技術的効果の創出に貢献しないと判断される場合には、単純な汎用コンピュータにすぎない先行技術から進歩性が否定される可能性があります(事例C-8参照)。これに対して、JPOでは、請求項に係る発明を技術的特徴と非技術的特徴とに分けることはなく、請求項に記載された発明を特定するための事項は原則としてすべて考慮に入れて進歩性が判断されます。

参考

[更新日 2022年2月4日]

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