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ビジネス方法関連発明の三極共同サーチ・プロジェクト報告書の概要

1.経緯

2000年6月の三極専門家会合(東京)において採択した「ビジネス方法関連発明に関する比較研究」の結果、仮想事例に対する一連の審査結果はUSPTOとJPOとで総体的には一致し、むしろ、この分野で質の高いサーチを如何にして行うか、という課題が提起されたといえることから、三庁は、次のステップとして、三極協力の枠組みの中でこの分野での先行文献調査に関する協力に焦点を当てるべく「共同サーチ・プロジェクト」を開始することで合意した。

2.プロジェクトの概要

USPTOに出願されたビジネス方法関連分野の20件のPCT出願について、三庁の各審査官は、独立に先行文献サーチを行い、サーチ終了後、サーチ戦略(使用したサーチ・ソースや検索式、それらの優先順位等)や発見した先行文献等のサーチ結果を予め用意した質問票に記入する。同質問票に基づき、三庁のサーチ結果を分析することにより、三極協力の枠組みの中でのサーチの質の改善の可能性を検討する。

3.共同サーチの結果

(1)サーチ対象について

USPTOは、全出願の全クレームを本プロジェクトのためのサーチ対象としたが、JPOは一件の出願の一部のクレームを、EPOは、四件の出願の全クレームと三件の出願の一部のクレームを、サーチ対象としなかった(注1)。(注1)PCT規則では、「事業活動」に該当する場合には、サーチを要しないと定められている。また、EPOでは、事業活動をありふれた手法で実現したものにすぎず、有意義な調査を行うことができない、と判断してサーチを行ってない場合がある。

なお、JPOとEPOでは、公式の国際調査であれば調査対象としないような出願、クレームについて、各庁のサーチ戦略等の分析という本プロジェクトの目的を考慮してサーチ対象としたケースもある。

(2)関連のある先行文献が提示されたクレーム数等

各庁は、サーチ対象とした全ての出願に対して、また、殆どのクレームに対して、X/Y文献を発見した(注2)

クレーム数

 

USPTO

JPO

EPO

「X/Y文献」が提示
されたクレーム数

357(357クレーム中)

309(347クレーム中)

252(273クレーム中)

また、三庁全てが共通にサーチ対象としたクレームは263クレームであったが、三庁全てが、そのうちの92%以上のクレームに対して、X/Y文献を発見した。 (注2)「X文献」、「Y文献」は、それぞれ、調査を行った庁が、調査報告作成時に、当該文献の開示のみ、或いは、当該文献を含む複数の文献の開示の組合わせにより請求項に係る発明の新規性/進歩性を否定し得る、と判断した文献をいう。出願人の抗弁等を考慮した最終の判断ではない。また、「X/Y文献」が提示されなかったクレームは、必ずしも発明の成立性や明細書の記載要件を満足しているとは限らないため、そのまま特許性があると判断されるわけではない。なお、ある庁で「X/Y文献」と判断された文献が、他庁で必ずしも同様に判断されるとは限らない。(3)サーチ戦略/提示した先行文献種別

JPO

【サーチ戦略】

(1)庁内サーチシステムを用いて、FI/Fターム等を用いたインデキシング検索、テキスト検索により、JP特許文献をサーチ。また、CSDBを用いて、CSタームを用いたインデキシング検索やテキスト検索により非特許文献(NPL)をサーチ。必要な場合、商用DB、インターネット上のサーチ・エンジンを用いてNPLをサーチ。

(2)必要な場合、更に、US特許、EP公開文献を、それぞれ、USC(米国特許分類)、ECLA(欧州特許分類)等を用いたインデキシング検索、テキスト検索によりサーチ。他の外国特許文献(WO公開文献等)のサーチには、WPIを主に使用。

【提示した主な先行文献種別】

JP特許文献が半数以上(53%)。外国特許文献の殆どはUS特許文献。NPLについては、提示数、割合共に、他庁を上回る。

USPTO

【サーチ戦略】

(1)庁内サーチシステムを用いて、USCを用いたインデキシング検索、テキスト検索により、US特許文献をサーチ。

(2)必要な場合、DIALOG、STN、インターネット上のサーチ・エンジンを主に使用して非特許文献(NPL)をサーチ。

(3)また、EP公開文献、PAJ(JP特許文献の英文抄録)等を含む複数の特許文献の英文テキストDBを一度に指定して外国特許文献をサーチ。

【提示した主な先行文献種別】

US特許文献の割合は80%以上。WO公開文献等の外国特許文献は、主にDIALOGやSTNを利用して発見。

EPO

【サーチ戦略】

(1)特許文献サーチは、EP公開、US特許、PAJ(JP特許文献の英文抄録)、WO公開等の特許文献の英文テキストDBを一度に指定して、テキスト検索を行う。EP公開文献のサーチは、ECLA等を用いたインデキシング検索とテキスト検索とを組み合わせて行う場合が多い。

(2)必要な場合、更に、INSPEC、インターネット上のサーチ・エンジンを用いて、非特許文献(NPL)をサーチ。

【提示した主な先行文献種別】

US特許文献(50%)とWO公開文献(36%)の割合が他の文献種別より高い。NPLの一部はインターネットを用いて発見。

【表1】各庁が提示した先行文献の文献種別毎の提示数と割合

【表1】各庁が提示した先行文献の文献種別毎の提示数と割合

 

特許文献

非特許文献
(NPL)

合計

JP

US

EP

WO

その他

JPO

提示数

34

14

1

1

1

13

64

割合

53%

22%

2%

2%

2%

20%

 

USPTO

提示数

0

48

0

4

0

5

57

割合

0%

84%

0%

8%

0%

9%

 

EPO

提示数

0

21

1

15

0

5

42

割合

0%

50%

2%

36%

0%

12%

 

三庁

合計

34

78

2

20

1

23

158

割合

22%

49%

1%

13%

1%

15%

 

加えて、以下の点も指摘される。

  • 各庁が提示した文献数の合計の半数近くがUS特許文献。
  • WO公開文献の提示割合も比較的高い(出願人の殆どが米国籍)。
  • JP特許文献の提示割合はUS特許文献に次いで高いが、JPO以外は提示していない。
  • 二庁又は三庁が共通して提示した文献の数はきわめて少ない。
  • 非特許文献(NPL)のサーチに際して用いる商用DBやサーチ・エンジンの種類、その利用法に関する三庁共通の戦略は見いだせない。

4.結論

  • (1)各庁は、サーチツールやサーチ戦略は異なるものの、サーチ対象とした全ての出願、殆どのクレーム対して関連する先行技術文献を発見した。三庁のこの分野でのサーチ能力は、現時点において、基本的に満足のいくものであることが確認できた。
  • (2)各庁が提示した文献数の合計中、JP特許文献の提示割合22%に対し、US特許文献が49%、WO+EP公開文献が14%を占めることから、JP特許文献以外の特許文献から先行技術文献が発見される可能性は高い。したがって、JPOについては、他庁のサーチツール(USC/ECLAやその運用)に関する情報やサーチ戦略(インデキシング検索、テキスト検索のノウハウ)に関する情報を蓄積しておくことは、サーチの質の向上に有効。特に、日本語文献に先行技術文献が発見できなかった場合には、このような情報が有用。
  • (3)他方、JP特許文献の提示割合も22%と高く、先行技術文献が発見される可能性は高いにもかかわらず、JPO以外の他の二庁はPAJも含めJP特許文献を提示していない。したがって、他の二庁としても、JPOのサーチツール(FI/Fタームやその運用)に関する情報やサーチ戦略に関する情報を蓄積しておくことは、サーチの質の向上に有効。特に、日本特有の商慣行を背景とした出願の審査に際しては、他の二庁としてもこのような情報が有用。
  • (4)非特許文献(NPL)の提示割合は、特許文献と比較して高くなかったが、商用DBやサーチ・エンジンを利用するための共通したサーチ戦略は見いだせなかったことから、更なる情報交換がNPLのサーチの質の向上に有効。

5.今後の取り組み

本共同サーチ・プロジェクトを通じ、ビジネス方法関連発明の先行技術文献のサーチ能力は、各庁ともにほぼ満足のいくものであることが確認できた。
他方、ビジネス方法関連分野においても、関連のある先行技術文献が、内外国の特許文献(US特許、WO公開、JP特許文献等)から発見される可能性が高いことが確認されたことから、三庁は、非特許文献(NPL)のサーチの質の向上のために、有用な又は新規に導入したデータベースやサーチ・エンジンに関する情報交換を行うことに加え、特許文献のサーチの質の向上のために、サーチツール(USC/ECLA、FI/Fタームやその運用)等に関する情報交換を行うことに合意した。

[更新日 2002年1月4日]

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