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世界特許システムの実現に向けた環境整備について
-日米欧の特許庁による会合の結果-
今井康夫特許庁長官、ジェームス・ローガン米国特許商標庁長官(兼商務次官)、インゴー・コバー欧州特許庁長官は、11月7日(金曜日)、東京にて会合を持ち、経済のグローバル化に対応した特許制度の在り方について議論しました。会合では、「特許爆発」とも言える世界的な特許出願の急増(注)を受けて、世界の特許出願の約8割が集中する日米欧の三特許庁が協力して審査を行う体制へ移行することについて意見が一致しました。
具体的には、各特許庁が審査の前段階として個々に行っている技術調査(サーチ)の結果について、相互に利用するためのパイロット・プロジェクトを三庁間で実施しておりましたが、今回、審査負担の軽減効果について確信が得られましたので、相互利用の本格的な運用開始に向けて詳細な検討に着手することとなりました。特に、技術調査結果の交換をネットワークを通じて効率的に行えるよう、三庁が協力して情報システムを開発することとなりました。このような活動は、本年7月に我が国政府が策定した「知的財産推進計画」の着実な実施にも資するものです。
このほか、今回の会合では、世界中のユーザー(出願人)が、1種類のソフトウェアを用いて世界各国の特許庁に電子出願することを可能とする情報システムの開発と普及について、三庁が協力して取り組むことについても、意見が一致しました。
(注)過去5年間の出願件数の伸びは、我が国が1.1倍、米国が1.5倍、欧州が1.2倍となっている。
各庁に共通の出願(グローバル出願)の審査をする際に、他の特許庁の行ったサーチ・審査結果(拒絶理由、引用文献等)を相互に利用し合うことにより審査にかかる負担を軽減することができれば、審査の迅速化に寄与することが期待さます。このような観点から、特許出願の未処理案件(滞貨)の増加という共通課題を抱える日米欧の三庁はパイロット・プロジェクトを実施してきましたが、今回、このプロジェクトの結果を分析したところ、各庁における審査の負担軽減に相当の効果があることが確認されました。
このため、三庁間でのサーチ・審査結果の相互利用の本格的な運用に向けて、各庁が保有する電子化されたサーチ・審査結果に関する情報(電子包袋情報)をネットワークを通じて交換する仕組み(共通のインターフェース基盤)を開発することとなりました。交換される情報は英語をベースとすることを想定しているため、日英の機械翻訳機能の活用を図ることとしています。さらに、現在米国特許商標庁が出願人に課している情報開示義務制度の運用の緩和等、法制面に関する詳細な検討も本格化させることとなりました。
本年7月に我が国政府が策定した「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(知的財産推進計画)」においては、世界特許システムの構築に向けた取組を強化するために、国際的な審査協力を推進するとともに、国際的な審査情報ネットワークを構築することとなっており、日本国特許庁としては、本推進計画を踏まえ、欧米の特許庁との協力を本格化させていきたいと考えております。
1種類のソフトウェアを使って世界中の特許庁に電子出願をすることができれば、グローバル出願を行う世界中の出願人の利便性が飛躍的に高まります。このため、世界に先駆けて電子出願を実現させた日本国特許庁に欧米の二庁を加えた三庁が協力して共通の電子出願ソフトを開発し、三庁で採用するだけではなく、三庁以外の特許庁に対しても積極的に普及させていくことについて意見が一致しました。
電子出願ソフトの普及に当たっては、各特許庁における電子化の状況が異なることに配慮し、複数のオプションを用意することとしました。例えば、日本国特許庁のように既に庁内に完全な情報システムを持っている特許庁向けには、共通した仕様の電子出願を受け付けるような仕組み(共通のインタフェース基盤)を開発し、付加することを想定しております。他方、未だ電子化されていない途上国等の特許庁に対しては、特許庁の業務に必要な全ての機能をパッケージ化したシステムを新たに導入するオプションも提示していくこととなりました。なお、三庁はこれらの取組を精力的に推進するため運営委員会を設置することといたしました。
[更新日 2003年11月12日]
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