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結果概要については、三極特許庁によって採択された「第24回三極特許庁会合の結果概要」(下記)を御参照下さい。
左より、EPOポンピドー長官、JPO中嶋長官、USPTOデュダス長官
欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)および米国特許商標庁(USPTO)は、2006年11月17日に日本の東京で行なわれた第24回三極特許庁会合に集った。
三極特許庁は、
以下の通り了解する:
三極特許庁は、特許庁間の重複作業を避け、特許庁のワークロードとユーザーの手続的、金銭的な負担を軽減するための、より強化され、かつ、具体的な手法の必要性を認識する。
これらの問題に対処するため、プロジェクトWM1(作業結果の効率的なアクセスと利用)のマンデートを拡張して、他庁のサーチ・審査結果の相互利用を、実際的に最大限可能な範囲までより一層強化発展させるための活動を取り扱うプロジェクトとし、それを「ワークシェアリングの発展作業部会」と名付けることが決定された。
戦略作業部会は、この作業部会の活動を監督する。戦略作業部会は、2007年春の会合で、ワークシェアリングの発展作業部会に上記で合意された活動範囲に整合するマンデートを与える。
(a)特許審査ハイウェイ
三極特許庁は、特許審査ハイウェイが、ユーザーに対する海外での迅速かつ早期権利取得支援となり、また、特許庁に対して審査負担の軽減の利益をもたらし得ることを確認した。JPOとUSPTOは、2006年7月より試行プログラムを実施している。EPOは、JPOとUSPTOの間で行われている試行プログラムの結果を踏まえて試行プログラムへの参加を前向きに検討する。
三極特許庁は、試行プログラムの現況を評価し、ユーザーからの意見や利用性を高めるための特許審査ハイウェイの枠組みの修正の検討を続ける。
また、三極特許庁は、三極の枠を超えて他の特許庁とも特許審査ハイウェイの実施を検討する。
(b)トライウェイ
三極特許庁は、出願人の選択により、三極特許庁が限られた期間内に順にサーチすることにより、各庁が各自の文献に重点をおいたサーチで相互に補完し合うUSPTOの三極サーチシェアリング提案に関して、質の高いサーチを得たいと望む出願人へのオプションとして有益であることを確認した。
三極特許庁は、ワークロード低減やユーザーのニーズといった観点から議論を進め、試行に向けて引き続き検討を行う。
(c)ワークシェアリングの最大化
USPTOは、各庁が自庁への第1国出願に重点を置き、第2国出願については第1庁からのサーチ・審査の情報が利用可能な場合のみ着手するという新たなワークシェアリングの提案を、今後の検討と議論のために発表した。EPOとJPOは、この提案の可能性についての研究に積極的な貢献を行う。
(d)共通のサーチテンプレート
三極特許庁は、サーチ手法や審査官が利用したデータベースの情報を交換することの有用性の評価について検討を進めている。今後は、三極で協力の基盤が構築されている特定の技術分野を選択し、共通のサーチテンプレートを作成していくパイロットプロジェクトの立ち上げを検討していく。
(e)審査官による三極書類アクセスシステムの利用
三極特許庁は、サーチ・審査結果の相互利用を促進するため、審査官が他庁の特許出願包袋の内容に電子的にアクセス及び閲覧することを可能にする三極書類アクセスシステム(TDA)の開発を行っている。
三極特許庁は、TDAやWeb方式の特許出願包袋に電子的にアクセス及び閲覧するシステムの審査官からの有用性について評価を報告し、それらのシステムが他庁のサーチ・審査結果の利用に非常に有用であることを確認した。また、今後も庁内での利用性を高め、利用の普及を図ることが重要であることも確認した。
三極特許庁は、書類アクセスシステムの利用状況、審査官からのフィードバックが他庁のサーチ・審査結果の利用の現状・課題分析にも重要な指標となり得ることを確認し、今後も継続的に、審査官による利用状況等の情報を共有しシステムの改善を図っていく。
(f)インポート・ガイドライン
他庁の特許出願包袋の内容に電子的にアクセスするシステムによって他庁の書類を自庁の書類の一部に取り込むインポートについて、三極特許庁は議論を行っている。三極特許庁は、2005年の会合において公開後の出願の(1)出願当初の書類一式(願書、特許請求の範囲、明細書、図面他)、(2)引用文献のリスト、(3)審査官が引用した文献自体、(4)サーチ・レポートのインポートを可能にするガイドラインを採択した。
三極特許庁は、ユーザーのメリット、サーチ・審査結果の相互利用の観点から、三極でインポート可能な書類の拡大に向けたインポート・ガイドラインの議論を継続することを確認した。
これに関して、JPOとUSPTOは、米国のIDS義務の遵守を容易にするさまざまな手段の検討を継続する。
三極特許庁は、2006年5月のUSPTOでの審査官会合、および、10月のEPOでの審査官会合の報告に基づき、三極審査官会合が他庁の制度の理解と相互の信頼感の醸成に非常に有意義であることを確認した。
三極特許庁は、他庁の制度の理解と相互の信頼感は、サーチ・審査結果の相互利用の促進のベースになることを確認した。さらに、三極特許庁は、三極審査官会合がサーチテンプレートや分類調和などの三極プロジェクトの試行または検証の場としても非常に有意義であるとの共通の認識を得た。
以前の会合から得られた結果を考慮して、三極特許庁は2007年春にJPOで行われる次回の会合の準備を進める。
三極特許庁は現在のラウンドが終わった後も三極審査官会合を継続する。
三極特許庁は三極審査官会合の次回のラウンドは2007年秋にUSPTOから開始することを確認した。
三極特許庁は、ナノテク分野における審査の運用に関する比較研究、及びナノテクの定義や分類についての情報交換に向けて、USPTOの提案について議論を継続することを確認した。
(a)三極書類アクセスシステム(TDA)
三極特許庁は、TDAの包袋書類アクセスに関するサービスレベルアグリーメントに合意した。また、TDAの仕様更新管理に関しては、USPTOの提案をもとに、三極特許庁で手続きの試行を行う。
USPTOとJPOの優先権書類交換プロジェクトや引用文献の取り扱いに関するTDAの次期仕様への変更は、この試行とともに実現を図る。
(b)三極ネット
三極特許庁間をネットワークで結ぶ三極ネットのプロジェクトの現状と未来について議論するため、三極特許庁は、1月に専門家作業部会をEPOにおいて開催することに合意した。
(c)情報システムの互換性
三極特許庁は、世界知的所有権機関(WIPO)の電子手続きに関する標準であるANNEX Fの内容について、技術の進展に応じて変更する必要性と、変更する際には、相互利用性、秘匿性、一貫性、信頼性の原則を維持することの重要性について確認した。
さらに、ANNEX Fを変更する際には、必ず、変更提案の手続きを踏まなければならないことを確認した。
また、三極特許庁は、相互利用性の強化を図るための管理体制を構築するための議論を続けることに合意した。
(d)特許協力条約(PCT)出願における段落補正
三極特許庁とWIPOは、本件について、今後も、三極会合で議論していくこと、及び、この議論をWIPOがリードでしていくことを確認した。
三極特許庁は、本件に関する多大な技術的貢献と、そのサポートの必要性について確認した。
EPOとUSPTOは、2007年1月に電子的な優先権書類の交換を開始する。また、JPOとUSPTOは電子的な優先権書類の交換を2007年7月に開始することに合意した。
さらに、三極特許庁はWIPOと三極特許庁間の電子的な優先権書類の交換について、議論を開始する。
三極特許庁はデジタルライブラリ実現のため、共通のアプローチを用いることに合意した。2月に予定されているWIPOの作業部会に向け、詳細な提案を完成させる。
三極共通のデータベースおよび検索ツールの実現をめざし、三極特許庁は、各庁のサーチ環境のコストを調査し、共通のプラットフォームがもたらし得る利益を今後評価する。三極サーチガイドブックの改訂を通じて、三極特許庁とって、有用なデータベースおよびツールの特定を行う。
三極特許庁は、2006年5月に完成した三極サーチガイドブックについて、三極共通のサーチツール及びデータベースに関する情報を外部ユーザーに2007年春に公表することを確認した。
三極特許庁は、この分野における協力が出願人・審査官にとって非常に有意義であることを再確認し、サーチに関連する情報を交換するなど、今後も協力体制を継続していく。
三極特許庁は、サーチ・審査結果の相互利用促進に関する非特許文献の活用についての推進を図るため、2006年に非特許文献作業部会の活動を再開した。
三極特許庁は、著作権の問題を生じることなく三極特許庁間で審査官が引用した非特許文献を簡便に交換できるよう、契約による手段や、Digital Object Identifier (DOI)の利用について、今後検討していく。三極特許庁は、これらの問題に対する基本的なアプローチに関する、この作業部会の提案について確認した。
三極特許庁は、DVDのような媒体を用いないデータ交換を可能とする「媒体レスデータ交換」に関するUSPTOからの提案を満場一致で了承した。
特許庁間の「データ交換」及びこうしたデータの第三者への提供に関する条件の観点から、三極特許庁は三極データ交換ポリシーの想定される修正の議論を開始することを合意した。
三極特許庁はJPOのシステムに対する翻訳フィードバック協力を継続して行くことに合意した。三極特許庁は、機械翻訳を用いた多言語文献データベースのサーチシステムの研究について情報交換していくことの重要性を確認した。
三極特許庁は、三極調和分類をIPCアドバンストレベル分類とすることでユーザーが1つの検索キーで世界中の文献にアクセスできる分類調和の有用性についての認識を共有した。三極分類調和の加速のためには審査官分類協議が非常に有効であり、今後も継続すべきであることを確認した。三極特許庁は分類調和を加速する必要があると判断し、作業部会に分類調和に適切なアクションを取ることを指示した。
三極特許庁は、三極統計レポートの改善をしていくために努力を継続していく。特に、技術分野別・出願人国籍別の登録データの交換、及び当該データを利用した統計を三極統計レポートに掲載することを検討する。
(a)広報活動
三極特許庁は、共同参加の機会を持つことは、三極協力活動の成果をユーザーに対して迅速かつ幅広く宣伝する機会が得られる点で重要であることを確認した。また、三極特許庁が協力して作成した三極特許庁協力を概説する三極共通のパンフレットは、これらのイベントをサポートするものとして完成された。2007年も三極の各地域におけるフェアやイベントのサポートを継続していく。
(b)情報普及政策
三極特許庁は、情報普及ポリシーの戦略的重要性を強調した。特に、三極特許庁は情報普及が出願人や一般にとって必要なものになってきているとの認識で一致した。
マージナルコストで(特許)情報を自由流通させるという三極ポリシーの重要性と相互主義を前提として係るポリシーを他国にも適用していこうという立場が尊重されるものであることを三庁は再確認した。
(a)出願明細書様式の統一
三極特許庁は、ユーザーニーズに応えるため、2006年に3回の作業部会を開催して集中的に議論を行い、出願明細書の統一様式について合意した。2007年に三極特許庁とユーザーとで協力して、試行プロジェクトを実施することを合意した。三極特許庁は2月又は3月に開催される次回会合において、ユーザーから選定された者とともに統一様式について議論することを合意した。
出願明細書様式の統一によって、出願人が三極特許庁に対して出願する際のコストを削減するとともに、三極特許庁での出願処理コストを低減する。
(b)新ルート提案
三極特許庁は、EPOの留保に留意しつつ、ユーザーの選択肢を積極的に開拓することの重要性を確認し、JPOの提案する新ルートを継続して議論していく。
三極特許庁は、新ルートの枠組みの利点を評価するための、新ルートの模擬的な試行案について議論した。JPOは、三極特許庁がさらに研究を行うために、USPTOからのコメントを考慮しつつ、試行案を洗練する。
(c)PCTの発展
三極特許庁は、PCTが三極のユーザーによって非常に多く利用されている現状に鑑み、PCTの魅力を向上させるため、積極的に貢献すべきであることを確認した。
三極特許庁は、PCTの事務処理効率化のためのプロジェクトを立ち上げ、このプロジェクトを日本国特許庁がリードしていくことを確認した。次のステップとして、三極特許庁は、電子化された環境におけるPCTの手続き全体における書類の流れについて、例えば、文字コード化された書類の流れ等の研究を行う。現状の分析を行った後、研究結果を次の三極会合で議論する。
三極特許庁は、この試みが、PCT近代化への第一歩であることを確認した。
三極特許庁は、PCTに関する事項について包括的に議論するための作業部会の設立に合意した。また、その作業部会の詳細なマンデートについては、次回の3月に開催される戦略作業部会で議論することを確認した。
(d)比較研究
三極特許庁は、効率的な審査実務に寄与する質の高い出願書類作成を支援するため、第一段階として開示要件と、第二段階として進歩性/非自明性要件について、仮想事例を用いて三極特許庁の審査実務を比較研究することが重要であることを認識した。また、その結果を出願人や代理人に周知することを検討することを合意した。
三極特許庁は今後直ちに実事例または仮想事例を収集し、2007年3月の戦略作業部会に向けて、各国の法律や実務を検討して、マンデートを作成することを合意した。
三極特許庁は、技術協力に関する情報交換の継続が重要であること確認した。また、三極特許庁は、庁のニーズやユーザーのニーズを踏まえ、協力可能な分野について検討していく意向を確認し、特に2006年に実施した三極特許庁共催セミナーの経験を踏まえ、今後も効果的な協力のあり方について検討することを確認した。
三極特許庁は、審査官及び公衆が中国文献へアクセスすることの戦略的重要性を認識している。
EPOは、JPOとUSPTOに対し、(1)各庁における現在の、又は、計画中の中国文献サーチ環境、及び、(2)中国国家知識産権局 (SIPO)から各庁に送付されている情報についての項目を含む、中国文献データベースに関する質問票を送る。EPOは次回戦略作業部会の前に回答のとりまとめを行う。
三極特許庁は、各庁の法制、基準、検索ツールなどに関する相互の理解を深めるため、Eラーニングコンテンツを共同で作成している。2006年に各庁は試行として2テーマの教材を作成する。
Eラーニングのコンテンツは、三極審査官会合の事前トレーニング教材としての活用を図るものであるが、今後外部へも提供していくことを目指している。
三極特許庁は、2007年以降もテーマの選定やすでにあるコンテンツの共用などの点で協力して、Eラーニングプロジェクトを進めていくことを確認した。三極特許庁は、また、実質的に三極で統合されたEラーニングシステムの確立の可能性を検討することを確認した。
三極特許庁は、特許の経済上の重要さが増していることを認識した。三極特許庁は、ワークロードの変動要因としての諸費用の役割に関する研究を進めることで合意した。
[更新日 2006年11月17日]
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