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第26回三極特許庁長官会合結果概要

欧州特許庁(EPO)、日本特許庁(JPO)、及び米国特許商標庁(USPTO)は、2008年11月14日、オランダ国、ライスワイクにおいて行われた第26回三極特許庁会合に集った。

三極特許庁は、

  • -産業、技術、及び国際的な経済成長の発展を支援する基本システムとしての産業財産権の役割に対する共通認識に基づいて、三極協力を行うという責務を再確認し、
  • -特許出願に関する増加したワークロードのタイムリーな処理及び質の高い審査手続を、三極特許庁及びそのユーザー団体の共通の目標として認識し、
  • -協調した三極アプローチを通じて、処理時間の削減及び冗長な作業の削減又は解消を促進することの利益を認識し、
  • -各庁のワークロードを削減するための手段として、出願の質の向上を促進することの利益を認識し、
  • -五庁協力、そのビジョン、目標、基礎プロジェクトの重要性を認識し、
  • -特許法及び特許付与手続を調和させることの利益を理解し、
  • -e-ビジネス・システム及びサーチツールに関する共通インフラ及び互換性のあるデータを開発することの利益を認識し、
  • -出願の質を向上させる手段として、特許情報の有用性を認識し、
  • -三極特許庁の今年の共通努力の主要成果として以下を示す。
    • 三極協力及び五庁協力をお互い協力的に進める
    • PCT発展のために多くの提案を検討する
    • ワークシェアリングに関する様々な試行的または恒久的取組を実施:
      SHARE(必要に応じて、FOCUSアプローチを用いる)
      トライウエイ
      JPO/USPTO間の恒久的なPPHの実施、及び、EPO/USPTO間の類似PPHの試行
    • 2009年に、共通出願様式による出願を受け付ける
    • 2009年に、WIPO DAS(Digital Access Service)を支援して優先権書類の電子的交換を拡張する
    • 2009年に、利用可能な全てのEラーニングモジュ-ルの基盤を各庁間に構築し、審査官に関連したモジュールを三極ウェブサイトの非公開部分を経由して利用可能とする。更なるモジュ-ルについても検討する
    • 技術援助協力に関する共同作業を進展させる際の共通アプローチを実施する

さらに、以下の通り了解する。

五庁協力を支える三極の協力

三極特許庁は五庁協力をサポートするための協力を進めることに合意し、ワークシェアリング及び基礎プロジェクトを中心に活動を体系化した。

三極特許庁は、KIPO及びSIPOを加えるために、分類作業部会を拡大することに合意した。三極特許庁は更に、三極統計作業部会を、KIPOを加えて拡大すること及びSIPOが同部会の正式メンバーとなるために行う努力を支援することに合意し、現在の三極統計報告書を2009年から四庁統計報告書に代え、三極特許庁及びKIPOにより共同出版することに合意した。

三極特許庁は、以下の基礎プロジェクトを推進するために、2009年度第1四半期に一定のアクション及び専門家会合を開催することに合意した。

  • 共通文献データベース
  • ハイブリッド分類への共通アプローチ
  • サーチ戦略の共有化と文書化に向けた共通アプローチ
  • 共通のサーチ及び審査支援ツール
  • サーチ及び審査結果への共通アクセス

ワークシェアリング

本年、ワークシェアリングの分野において幾つかの試行プロジェクトが実施された、又は実施されることとなった。これらの試行プロジェクトは、三極特許庁が他庁のサーチ・審査結果を活用するための信頼感の醸成や、ワークシェアリングの実効性を向上するために更に構築・実施されるべきツール及びプロセスを特定することを可能とする。

試行プロジェクト:

  • -適切な場合にはFOCUSアプローチ※1を用いることとして、A61B(診断、手術、個人識別)及びB60R(他に分類されない車両、車両付属具、または車両部品)の技術分野において、本年9月にSHARE※2プロジェクトの試行が開始された。三極特許庁は、進行状況を監視し、評価のためのデータを取得し、他の技術分野への拡大を検討する。
    ※1 FOCUSアプローチ:いくつかの三極プロジェクトを限定された技術分野で、必要な範囲において最大限に実施するという方法論。
    ※2 SHARE:第1庁出願を優先的に着手し、第2庁は第1庁のサーチ・審査結果を利用するという枠組み。
  • -トライウェイ※3が7月に開始された。三極特許庁は、進行状況を監視し、評価のためのデータを取得する。
    ※3 トライウェイ:所定期間内に三極特許庁のサーチ結果が出揃うようにする枠組み。ユーザーからの要請 に基づいて2005年にUSPTOが提案。

他に二つのワークシェアリングの取り組みが二庁間で実施された。

  • -USPTO及びJPOは、2008年1月に新ルート※4模擬的試行プロジェクトを開始した。試行期間は1年間である。両庁は、次のステップを決定するために、試行の結果を評価する。
  • -特許審査ハイウェイ(PPH)※5類似プログラムの試行がEPOとUSPTOとの間で開始された。
    ※4 新ルート:パリルートにおいても、1つの出願で相手国の出願日も確保でき、30月までに第1庁が審査を行い、その結果を利用して30月後に第2庁が審査を行うという枠組み。パリルートにおいてもPCT出願と同等の利益が得られることを目的として、2005年にJPOが提唱。
    ※5 特許審査ハイウェイ(PPH):第1庁で特許可能と判断された出願について、出願人の請求により、第2庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。

更に、欧州特許庁及び日本国特許庁は、PPH類似試行プログラムを2009年に開始することについて議論を継続する。

加えて、JPOとUSPTOとは、特許審査ハイウェイを三極以外の特許庁へと拡大した。USPTOは、JPOからの提案であるプルリラテラルPPHフレームワークを議論することに関心を有する特許庁間の会合の開催を支持した。欧州特許庁は、この点に関して、内部的な検討を行う。

PCTの発展

三極特許庁は、PCTが既にワークシェアリングの2つの重要な側面である審査の迅速化と質を扱うことを認識しており、この状況にあってPCTを発展させることに貢献するような様々な提案を更に検討する。

各庁は、PCT改革へ向けて継続的に努力していくことの重要性を認識し、2009年にこの目的を達すべく更に専門的会合を一回または複数回開催する。

各庁は、この状況にあって、ISA/IPEAの処理作業に基づくワークシェアリング基本構想を探索することに合意。EPOは今年末までに提案を作成する。

法的問題

三極特許庁は、2009年初旬までに共通出願様式の受付を開始する。三極特許庁は、2008年5月のPCT作業部会において、共通出願様式の合意事項をPCT実施細則に反映させるための改正提案を行った。ユーザーからの要望に応じて、三極特許庁は、ユーザーによって提起された、関連する法的問題についての議論を三極の枠組の中で継続している。

審査官会合

三極特許庁は、昨年の11月(長官会合)から2回の審査官会合を実施した。
直近の三極審査官会合では、B60Rの「車載式故障診断システム」の技術分野においてフォーカス/包括的アプローチが実施された。2009年の審査官会合は、審査官レベルの協働プロジェクトの試験台として継続して実施される。

E-ラーニング

三極特許庁は2009年前半にe-learningプランを作成することに同意した。

機械翻訳

三極特許庁での機械翻訳システム改善のため、IPCに対応した英語句の情報を交換することについて議論された。

分類調和

三極特許庁は、五庁で共有されるハイブリッド分類システムの発展に向けて、五庁間の対話を強化することに合意した。三極特許庁は、現在の分類調和プロジェクトの選考過程と現在の分類調和プロジェクトに、中国特許庁及び韓国特許庁を組み入れることに合意した。

国際協力

三極はその技術支援協力における共同活動の展開をすすめていく。共同活動の主たる目的は以下の通り。

  • -特許保護の強化、特許権の管理を容易にするために、他の国又は地域の知的財産庁に対して提供される特許に関する技術協力を拡大する。
  • -知的財産を保護強化することによる利点への認識を高める。
  • -他地域や他国での知財の政府職員との知的財産に関する人材育成を必要に応じて調整する。
  • -特許情報の普及によって利用可能なサービス等についての情報を提供する。
  • -エンフォースメントに関連する情報を共有する。

情報普及活動

三極特許庁は、ユーザーへの特許情報普及の重要性、及び特許情報の普及が出願の品質改善に資することを確認し、今年開催したユーザーとのラウンドテーブル会議の結果を評価した。当該ディスカッションは、効率的にユーザーニーズを吸い上げることができ、各特許庁が提供する特許情報施策決定を支援するものである。また、三極特許庁は、日米欧で行う特許情報フェアを支援することとした。

品質監理

三極は、品質監理システム(QMS)の検討を始めた。今年末までに具体的な提案を行う。

審査実務の比較研究

三極特許庁は、質の高い出願書類作成を促進する上で、開示要件及びクレームの記載要件に関する比較研究、及び、進歩性/非自明性に関する比較研究は重要であることを認識した。三極特許庁は、三極ウェブサイトに掲載することによって、これらの研究の結果を公開した。三極特許庁は、新規性及び用途発明の比較研究を進める予定である。

ナノテクノロジー

ナノテクノロジー作業部会は、この分野での比較研究を完了し、ナノテクノロジーに関する国際特許分類(IPC)に導入される共通の分類を作成した。三極特許庁は、定期的に情報交換を継続していくこととする。

三極ドキュメント・アクセス

WIPOが提供するDAS(デジタル・アクセス・サービス)※6優先権交換をサポートし、現在の包袋情報参照機能を強化するために、三極のドキュメント・アクセス・システムを拡張しているところ。三極特許庁は、将来のテキスト(XML)ベースでの書類交換の重要性について認識した。

※6 DAS(デジタル・アクセス・サービス):各国特許庁が世界知的所有権機関(WIPO)と優先権書類の電子的交換を行うネットワークを構築することで、WIPOを仲介して世界各国の特許庁と優先権書類の交換を可能とするサービス。

優先権書類の電子的交換

日本特許庁と欧州特許庁との間、及び、日本特許庁と米国特許商標庁との間で、三極特許庁に出願され、かつ、他庁で発行された優先権書類の電子的交換を可能とすることに同意した。

非特許文献

効率化及びコスト軽減のために、日欧間及び日米間で、国際調査報告に引用された特定の文献を交換することを中止し、各庁は基本的に自助努力を通じてこれらの文献を入手することとした。

出願の電子化

三極特許庁は、XML形式による出願という原則を前提とした上で、ウェブ・ブラウザーによる出願を許容するように、PCTの電子出願に関する標準(Annex F)を改訂することについて同意した。

トライネット

三極特許庁は、トライネット※7の基本設計概念(アーキテクチャ)及びセキュリティについて再検討し、新暗号化技術を実装するために、現在のシステムを拡張することに合意した。

※7 トライネット:三極特許庁間で他庁審査経過書類等を交換するためのネットワーク。

[更新日 2008年12月12日]