• 用語解説

ホーム> お知らせ> 国際的な取組> 三極(日米欧)> 第27回三極特許庁長官会合結果概要

ここから本文です。

第27回三極特許庁長官会合結果概要

欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)および米国特許商標庁(USPTO)は、2009年11月13日、京都において行われた第27回三極長官会合に集まった。

三極特許庁は、

  • 産業、技術および国際的経済成長の発展をサポートする基本制度としての産業財産権の役割についての共通認識に基づいて、三極協力に尽力することを再確認し、
  • 三極特許庁およびそのユーザー団体の共通目的として、特許出願の増大するワークロードの迅速な処理及び質の高い審査手続を認識し、
  • 協調した三極のアプローチを通して、処理時間の短縮を推進し、冗長な作業の削減または解消することの利益を認識し、
  • 各庁のワークロードを削減する手段として出願の質の向上を推進することの利益を認識し、
  • 五庁協力と基礎プロジェクトの重要性を再認識し、
  • ユーザー団体との協力関係を強化することの重要性を認識し、
  • 特許法および手続きを調和させることの利益を理解し、
  • 共通インフラ(基盤)および電子事業システムと検索ツールのための互換性のあるデータを開発することの利益を認識し、
  • 出願の質を向上させる手段としての特許情報の価値を認識し、

三極特許庁の今年の共通取組の主要成果として以下の点を強調する。

  • 2010年より、それぞれのPPH試行プログラムの中で、PPH申請の基礎としてPCT成果物の利用を開始することに合意した。
  • 三極のSHARE⁄JP-FIRSTを発展させる目的で、JP-FIRSTの試行プロジェクトの結果を評価した。また、そのプロジェクトを継続することに合意した。
  • PCTロードマップを推進するための様々な提案を探求することに合意した。
  • Eラーニングポータルサイトを開設した。
  • 新規性及び用途発明に関する比較研究を実施した。
  • 審査実務の相違を整理したマニュアルを作成することに合意した。
  • 共通出願様式による出願の受付を開始した。
  • JPOとUSPTOはWIPOのDASを介した優先権書類交換を実施した。また、EPOは実施を検討する。
  • 韓国特許庁の統計データを含む、最初の四庁統計報告書を公表した。

さらに、次の通り理解する。

1.ワークシェアリング

三極特許庁は、これまで行ってきた種々のワークシェアリングの取組を更に発展させることを再確認した。三極特許庁は、それらの取組の評価手法について、引き続き検討を行う。

(a)特許審査ハイウェイ(PPH)※1

三極特許庁は、2010年1月29日より、PPH申請の基礎として、PCT成果物の利用を試行的に開始することに合意した。三極特許庁は、PCT成果物に基づくPPHが、WIPO(世界知的所有権機関)の進めるPCTを改善するためのロードマップの進展に貢献するものであるとの認識を共有した。

個別のPPHプログラムについて、EPOとUSPTOは、2010年9月まで試行を延長した。EPOとJPOは、2010年1月29日に試行を開始することに合意した。JPOとUSPTOは、2008年1月から本格実施している。

※1 特許審査ハイウェイ(PPH):第1庁で特許可能と判断された出願について、出願人の請求により、第2庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。

(b)SHARE (シェア)※2

EPOにとって第1庁出願を優先的に着手することが標準的な運用である一方、JPOはJP-FIRSTを通じてSHAREの概念を実現した。USPTOは、ステークホルダーと相談し、法律や規則と整合するように、SHAREの概念にしたがって第1庁出願の優先的着手を実施する。

※2 SHARE:第1庁出願を優先的に着手し、第2庁は第1庁のサーチ・審査結果を利用するという枠組み。JPOは2008年4月より「JP-FIRST(JP - Fast Information Release Strategy)」として実施中。

(c)トライウェイ※3

三極特許庁は、2008年7月から1年間、トライウェイの試行を行った。USPTOは試行結果について分析を行い、三極特許庁は、2010年中に、このプロジェクトの評価を行う。

※3 トライウェイ:所定期間内に三極特許庁のサーチ結果が出揃うようにする枠組み。ユーザーからの要請に基づいて2005年にUSPTOが提案。

(d)新ルート※4

JPOとUSPTOは、2008年1月から1年間、新ルートの模擬的試行を行った。三極特許庁は、この新ルートの経験を、他のワークシェアリングの取組に生かしていく。

※4 新ルート:パリルートにおいても、1つの出願で相手国の出願日も確保でき、30月までに第1庁が審査を行い、その結果を利用して30月後に第2庁が審査を行うという枠組み。パリルートにおいてもPCT出願と同等の利益が得られることを目的として、2005年にJPOが提唱。

2.審査官会合

三極特許庁は、2008年12月に、東京で三極審査官会合を開催し、三極で行っているワークシェアリングの取り組みにおけるワークシェアリング効果を計測した。

次回の審査官協議は、2010年2月にアレキサンドリアで開催される。

3.Eラーニング

三極特許庁は、Eラーニングポータルサイトを開設した。このサイトを利用することで、審査官が他庁の法令や審査実務について学習することが容易になる。

三極特許庁は、EラーニングWGに韓国特許庁(KIPO)と中国知識産権局(SIPO)を招待することに合意した。

4.PCTの発展

三極特許庁は、PCT改革の実現に向けて継続的に努力していくことの重要性を認識し、PCTロードマップを進めるために様々な提案を探求することに合意した。

三極特許庁は、PCTの協働国際調査及び協働国際予備審査の試行について議論することに合意した。

5.審査実務と品質

(a)審査実務の比較研究

三極特許庁は、新規性と用途発明について比較研究を行い、その結果を三極ウェブサイトに近く公開予定。

(b)品質

三極特許庁は、各庁の審査実務の相違を整理したマニュアルを作成することに合意した。三極特許庁は、このマニュアルが、審査官が他庁の結果を利用する際に有益となりうるものであることを確認した。

三極特許庁は、品質に関する考え方の相互理解を進め、品質監理を進展させ、品質向上のために手段について議論を行うことで合意した。

6.情報技術協力の促進

(a)サーチツール

三極特許庁は、全ての審査官が同様の結果を得られるサーチ環境を共有することの長期的なメリットやコストベネフィットを考慮し、より慎重に検討したうえで、パイロットプロジェクトに着手することが必要であることを確認した。また、将来的な共有サーチ環境は、各庁の既存のシステムを最大限利用すべきであることを確認した。

(b)サーチ戦略

三極特許庁は、審査の効率性や審査におけるサーチ記録の作成負担、ワークシェアリングへの効果を踏まえつつ、交換すべき有用な情報が何であるかを検討することを合意した。

かかる検討を行う上で、サーチにおける言語や環境の差異が少ない分野であるDNA検索や化学構造式検索に対しパイロットプロジェクトを試行することで合意した。また、五庁が現在保存している既存のサーチ記録を交換・研究するために、他のパイロットプロジェクトが検討されること、具体的に記録すべき内容や審査官の作成負担について調査すべきであることを確認した。

(c)優先権書類の電子的交換

三極特許庁は、WIPOデジタル・アクセス・サービス(DAS)※5を利用可能とするために、三極書類アクセスに関するサービスレベル合意の修正について合意した。そして、2009年4月にはJPO及びUSPTOが、DASの利用を開始した。

三極特許庁は、WIPOデジタル・アクセス・サービスの利用促進に関し、国際事務局に対して、主導的な取り組みを求めていくことを合意した。

5 DAS(デジタル・アクセス・サービス):各国特許庁が世界知的所有権機関(WIPO)と優先権書類の電子的交換を行うネットワークを構築することで、WIPOを仲介して世界各国の特許庁と優先権書類の交換を可能とするサービス。

(d)ドシエアクセス

三極特許庁は、ワンポータルドシエの重要性、及び、このプロジェクトを6月の五庁副長官級会合で合意されたロードマップに沿って推進するために協力することを合意した。

三極特許庁は、ロードマップの第一段階においては、TDAシステムやEPOの管理するオープン・パテント・サービス(OPS)など、既存のリソースを可能な限り活用することに合意した。

(e)電子出願、データ標準

各庁におけるXML標準の利用の実現に向けて、三極特許庁およびWIPO国際事務局は、各庁のXMLによる電子化の重要性について確認し、庁内及び庁間におけるXML標準の利用状況について引き続き情報交換を行うことを確認した。この目的を達成するために、USPTOはXML形式のデータを用いた内部の事務処理を開始し、出願人にXMLに基づく電子出願を奨励するためのツールを開発する。

PCT実施細則付属書Fの再構築について、三極特許庁は緊急の必要性がないとの共通の認識を持ち、その修正が必要となるまで待つことに合意した。また、三極特許庁は、付属書Fの再構築について検討を行うに際しては、相互運用性、秘匿性、完全性及び認証等の原則が担保されるよう、2006年三極合意事項を最大限尊重することを改めて確認した。

(f)紙ゼロ運動

三極特許庁は、WIPO国際事務局の電子化に向けた中期目標や三極各庁が進めるe2eの取り組みを支持しつつ、PCT実施細則の修正を含めた法的課題やXML標準化も含めた技術的課題について検討を進めることを合意した。三極特許庁は、PCT書類を可能な限り電子化する「紙ゼロ運動」を率先して実現する。

(g)トライネット※6

三極特許庁及びメンバーオフィスは、新しい技術の導入による三極ネットワーク構築を合意し、必要な機器の導入を行った。また、三極特許庁は三極ネットワークを利用したアプリケーションを、2010年3月までのなるべく早い段階で新しいネットワークに移行させるために協力を引き続き行うことで合意した。三極特許庁はまた、三極ネットワークのサービスレベル合意に合意した。

※6 トライネット:三極特許庁間で他庁審査経過書類等を交換するための暗号化通信ネットワーク。

7.分類

三極分類ワーキンググループは、五庁の対応するファウンデーションプロジェクトを進めるために、KIPOに拡張された。SIPOは、このワーキンググループに引き続きオブザーバとして参加する。三極特許庁は、既存のハーモニープロジェクトを、2011年までに終了させる。

8.バイオテクノロジー

三極特許庁は、バイオテクノロジーワーキンググループが活動を終了し、クローズされることを確認した。バイオテクノロジーに関する新たな検討事項については、三極の他の適切なWGで取り扱う。

9.共通出願様式(CAF)

三極特許庁は、2009年1月から、共通出願様式に従った出願の受付を開始した。また、三極特許庁は、ホームページ等を活用してCAFの利用促進に取り組むことに合意した。

10.情報普及

三極特許庁は、グローバルな特許制度をよりよくするために、ユーザーとの協力関係を強化することの重要性を再認識した。この点で、三極特許庁が共同参加する機会は可能な限り活用されるべきである。

三極特許庁は、2009年の6月と11月の2回、日本でユーザー三極との会合を開催した。また、11月には、大学と協力して、三極特許庁の活動の認知度を高めるためのシンポジウムを開催した。

三極特許庁は、2008年に開催されたラウンドテーブルの結果について評価し、今後も必要に応じてラウンドテーブルを開催していくことで合意した。

三極特許庁は、ユーザーに対する将来のアウトリーチをサポートするために、承認されたコミュニケーションプランを用いる。

三極特許庁は、情報の自由な流れの三極情報普及ポリシーの戦略的な重要性を再確認した。三極特許庁は、ユーザーコミュニティへのアクセスを高め、拡張するために、普及ポリシー及び普及実務を確認し続けることに注力する。

11.統計

三極特許庁とKIPOは、四庁統計報告書を2009年11月に公表した。三極特許庁は、三極統計WGの正式メンバーとしてKIPOを招待し、本WGは四庁の正式参加に拡大した。

12.技術協力活動

JPO、USPTO、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)は、2009年6月に、SIPOと協力して、中国の順徳にて三極共同意匠セミナーを開催した。

[更新日 2009年12月2日]