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第28回三極特許庁長官会合結果概要

欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)、および、米国特許商標庁(USPTO)は、2010年11月19日、バージニア州アレキサンドリアで第28回三極長官会合を開催した。同会合において、三極特許庁の長官は以下の点で一致した。

  • 産業、技術および国際的経済成長の発展をサポートする基本制度としての産業財産権の役割についての共通認識に基づいて、三極協力に尽力すること。
  • 特許出願の増大するワークロードの迅速な処理及び質の高い審査手続が、三極特許庁およびそのユーザー団体の共通目的であることの認識。
  • 協調した三極のアプローチを通して、処理時間の短縮を推進し、不必要な作業の削減または解消することの利益の認識。
  • 日米欧中韓の五庁協力、並びに五庁基礎プロジェクトの重要性の再認識。
  • ユーザー団体との協力関係を強化することの重要性の認識。
  • 特許法および手続きを調和させることの利益の理解。
  • 電子業務システムやサーチツールのための共通のインフラと互換性のあるデータを開発することの利益の再認識。
  • 出願の質を向上させる手段としての特許情報の価値の認識。

また、三極特許庁の今年の共通取組の主要成果として、以下の点が強調された。

  • ワークシェアリングの協力の可能性を拡大し特許協力条約(PCT)を推進することも視野に入れつつ、PCTの成果物を申請の基礎とするPPH試行プログラムを拡大するために、韓国知的財産庁(KIPO)や中華人民共和国国家知識産権局(SIPO)に対し、同プログラムへの参加を提案することに合意したこと。
  • サーチや審査結果の再利用を最大限に活用できるように、業務負担の均衡化及び優先化のための試行プログラムを、三極の枠組みで開始したこと。
  • 関連する出願のサーチ及び公開内容への効率的なアクセスと再利用を促進することを目的として、三極の共通文献リストを用いる試行を開始したこと。
  • 各庁の法律及び実務の類似点や相違点について、審査官によりよい理解を提供することにより、ワークシェアリングを促進するため、異なる実務のカタログをまとめたこと。
  • EPOとUSPTOは、審査官の間の理解と信頼を増し、業務結果の再利用可能性を調べる方法を提供するため、各庁による単一のサーチレポートの作成を可能とする、限定的なPCT協働サーチ・審査の試行を開始したこと。
  • Trinetにおいて新しいIPSec装置への移行が完了したこと。

さらに、三極長官は以下の点についても一致した。

1.ワークシェアリング

三極特許庁は、各庁のサーチ及び審査の効率と効果を向上させるために、他庁の作業結果の再利用を最大化すべく、これまで行ってきた種々のワークシェアリングの取組を更に発展させることを再確認した。三極特許庁は、それらの取組の評価手法について、引き続き検討を行う。

(a)特許審査ハイウェイ(PPH)※1

三極特許庁は、三極のワークシェアリング活動の重要な要素として、また、PCTの強化のために、特許審査ハイウェイ(PPH)への取り組みを継続することに合意した。三極特許庁は、PCT-PPHの試行を継続し、これを五庁での試行に拡大できるよう本試行を評価する。

EPOとUSPTOは、二国間の試行プログラムを2012年1月28日まで延長した。EPOとJPOは2010年に2年間の二国間の試行プログラムを開始した。JPOとUSPTOは2008年1月からPPHの本格実施を行っている。

JPOとUSPTOは普及活動や教育活動における協力を通じてPPHの利用を促進し、他の知的財産庁にPPHプログラムを拡大できるよう働きかけを行う。

※1 特許審査ハイウェイ(PPH):第1庁で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、第2庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。

(b)SHARE (シェア)※2

EPOにとって第1庁出願を優先的に着手することが標準的な運用である一方、JPOはJP-FIRSTを通じてSHAREの概念を実現した。USPTOは、SHAREの概念にしたがって、サーチや審査結果を最大限に活用するべく、業務負担の均衡化及び優先化の可能性をテストするため、FLASHと名づけられた試行プログラムを開始した。

三極特許庁は、共通の内容を含む審査官向けのワークシェアリングのアンケートを、適当な場合に採用し利用することに合意した。このアンケートは本プログラムの利益を測定することを手助けし、処理工程を改善するためのフィードバックを各庁に提供する。

※2 SHARE:第1庁出願を優先的に着手し、第2庁は第1庁のサーチ・審査結果を利用するという枠組み。JPOは2008年4月より「JP-FIRST(JP - Fast Information Release Strategy)」として実施中。

(c)共通文献リスト(CCD)

三極特許庁は、60件の特許査定の行われた出願について、共通文献リスト(CCD)の利用とフォーマットを評価する試験プログラムを行うことに合意した。EPOはCCDのデータのホストを務める。三極特許庁は、適時にかつ充実した引用情報を作るため、内部的な処理手順について深く検討することに合意した。三極特許庁からの利用可能な引用情報を含んだCCDの第一版が、一定期間、三極特許庁および三極ユーザーからのフィードバックを得たあとに、2011年の三極会合で公開される予定である。

2.審査官会合

三極特許庁は、審査官協議プログラムは、三極特許庁の間で互いの信頼を醸成するための効果的な方法であることを確認した。したがって、三極特許庁は、この方針を推し進めリソースをより有効に活用するために、五庁協力を通してこのプロジェクトを継続することに合意した。

3.Eラーニング

三極特許庁は、このプロジェクトを五庁協力に統合し、五庁第三作業部会(WG3)の中で扱うことに合意した。

4.PCTの利用

三極特許庁は、PCT制度を最大限に活用するための努力を継続することの重要性を認識し、PCTロードマップを前進させるための様々な提案を調べ、可能なところではそれを実行し続けていくことに合意した。

三極特許庁は、三極特許庁での国内段階でPCTの成果物を最適に再利用できるよう、PCTの工程の改善に努力することに合意した。

EPOとUSPTOはロードマップの一要素として、限定的なPCT協働国際サーチ及び予備審査の試行を開始した。

5.審査実務と品質

三極特許庁は異なる実務のカタログについて、初回ドラフト版をとりまとめた。三極特許庁は本カタログが、他庁の審査結果を利用する審査官に品質を改善する基礎を提供し、また、出願人にとって価値のあるツールとなる点で、有益であろうと認識している。三極特許庁は、ドラフト版のカタログを三極ユーザーに提供した後、同カタログを五庁基礎プロジェクト9に統合し、五庁の限られた範囲の審査官による評価の後にカタログを一般公開するという前提で、カタログをKIPOとSIPOにも拡大することに合意した。さらに三極特許庁は、カタログに追加する項目について並行して議論を行うことに同意した。

三極特許庁は品質監理を強化し、品質改善のための手法を調査することに合意した。三極特許庁は、2011年11月を完了予定として、国際調査報告の品質について研究を実施し、改善提案を行うことに合意した。この取組の一部として、三極特許庁は品質メトリクスに関するパイロット共同研究に参加することに合意した。この研究は結論を得たあと、五庁に拡大される予定である。

国際的な知的財産コミュニティーに対しする特許品質の重要性を認識しつつ、三極特許庁は統計データおよびステークホルダーの認識に関する情報を含む複合メトリクスの開発について研究することに合意した。

6.情報技術協力の促進

三極特許庁は、ワークシェアリングを支援する五庁基礎プロジェクトを進展させ、支持し続けることで合意した。

三庁は、三極技術データ標準作業部会(TDSA)の作業を2011年末までに完了することを目的として、この作業部会の下で行われていた既存の作業を継続することで合意した。

(a)優先権書類の電子的交換

三極特許庁は、優先権書類の電子的交換(PDX)システムのセキュリティに関する議論を継続することの重要性を再確認した。

三極特許庁は、早ければ今年中に、現行のTDA-PDXスキームのセキュリティを向上する新たな手段を講ずることで合意した。三極特許庁は、世界知的所有権機関(WIPO)デジタルアクセスサービス(DAS)の利便性およびセキュリティの向上のため、WIPOとともに、協力していく。

(b)電子出願、データ標準

三庁のすべてにおけるXMLの利用の実現に向けて、三極特許庁は、XMLに基づく電子出願及び各庁内での処理の促進に関するステータスについて、引き続き情報を交換する。

三極特許庁は、ユーザーに対して共通出願様式(CAF)の利用を推進する。

共通の標準を開発することで得られる効率性を認識して、三極特許庁は、PCT様式に関するXMLフォーマットの標準化に向けた作業を行うこと、データ交換標準のビジネス要件を定義すること、および、それらの要件を満たすための作業を行っていくことで合意した。

三極特許庁は、配列表の記載に関する改訂標準の開発に向けて、2011年末までにWIPOでの採択プロセスの準備が整うように、WIPOと協力して作業を行っていくことで合意した。

(c)紙ゼロ運動

三極特許庁は、WIPO国際事務局の電子化目標を積極的に支援するため、法的・技術的課題について検討を継続する。三極特許庁は、PCT書類を電子的な様式で取り扱う「紙ゼロ運動」を引き続き展開する。

(d)トライネット

三極特許庁は、トライネットセキュリティ管理策のための基準を具現化するため、トライネットの改訂版セキュリティポリシーを採択した。

三極特許庁は、情報を交換するための最善の方法を決定するためには、どのような種類の書類及び情報が交換されるのか、並びにそれぞれの情報の種類が、どの程度のセキュリティを要求するのか、を検証することが重要である点で合意した。よって、三極特許庁は、将来的にすべての知財庁に開かれた安全な情報交換が行えるよう、それぞれのタイプのアプリケーションにとって最も適切なネットワークを利用できるようにするための研究を行う。

7.分類

三極特許庁は、既存のハーモニープロジェクトを継続し、2011年には既存のハーモニープロジェクトを終了する。三極特許庁はハーモニープロジェクトを五庁協力の枠組みの中にスムーズに移行できるよう作業を行う。

8.情報普及

三極特許庁は、「交換された産業財産権情報の電子データの利用に関する三極ポリシー」の改定に合意した。この改定ポリシーの目的は、特許情報ユーザーのコミュニティへの情報普及を改善するために、交換されたデータへのアクセスを向上し拡張することである。

三極特許庁は、三極特許及び外部の顧客の処理上の混乱を最小にするために、交換データのフォーマットや媒体の変更を事前に協議及び通知することに合意した。

三極特許庁は、産業界との議論を継続するとともに、三極協力の活動についての認識を向上させることに合意した。

9.統計

三極特許庁は、KIPOが「三極統計作業部会」の正式メンバーになったことを反映するため、その名称を「四庁統計作業部会」に変更することに合意した。三極特許庁は四庁統計作業部会を五庁の枠組みの中に移行することに向けて作業を行う。

[更新日 2010年12月2日]