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第29回三極特許庁長官会合結果概要

欧州特許庁(EPO)、日本特許庁(JPO)及び米国特許商標庁(USPTO)は、2011年11月10日、フランスのパリにおいて第29回三極長官会合を開催した。同会合において、三極特許庁の長官は以下の点で一致した。

  • 産業財産権には産業、技術、国際的経済成長の発展をサポートする基本制度としての役割があるという共通認識に基づき、三極協力に尽力することを再確認。
  • 特許出願の増大するワークロードの適時な処理及び質の高い審査手続が、三極特許庁及び三極ユーザー団体の共通目的であることを確認。
  • 三極の協調アプローチを通じて、出願の処理時間の縮減を推進し、重複作業の削減または解消することの利益を認識。
  • 各庁のワークロードを削減する手段として、出願の質の向上を推進することの利益を認識。
  • 五庁協力と五庁基礎プロジェクトの重要性を再確認。
  • 三極ユーザー団体との協力関係を強化することの重要性に留意。
  • 特許法及び手続の調和により得られる利益を理解。
  • 電子業務システムとサーチツールのための共通インフラと互換性のあるデータを開発することの利益を認識。
  • 特許出願の質を向上させる手段としての特許情報の価値を再確認。

また、三極特許庁の今年の共通取組の主要成果として、以下の点が強調された。

  • 共通引用文献のプラットフォームに関し、三極特許庁間で必要となる引用情報の交換とともに、サービス開始に向けての開発段階の全作業が完了したこと。
  • FLASH及びJP-FIRSTに関し、ワークシェアリングの取組の結果を評価したこと。
  • 三極における主な分類調和プロジェクトの完了を受け、今後の分類調和は五庁分類作業部会(WG1)に委任すること。
  • 国際調査報告書の品質研究のフェーズ1と2を完了したこと。
  • 各庁よりXML標準に関する現況が発表された。これに基づき今後のロードマップを作成すること。
  • 特許法及び手続の調和に向けた国際的議論に対し今後もさらに貢献していくこと。

上記に加え、三極長官は以下の点についても一致した。

1.ワークシェアリング

三極特許庁は、各庁のサーチ及び審査の効率と効果の向上を目指し、各庁作業成果物の再利用を最大化するために種々ワークシェアリングの取組をさらに推進するということを再確認した。そのための可能な方法論を引き続き模索していく。

(a)特許審査ハイウェイ※1

三極特許庁は、三極のワークシェアリング活動の重要な要素として、また、PCTの強化をはかるために、PCT成果物に基づくPPH試行プログラムを拡大することに合意した。個別のPPHプログラムに関して、EPOは、JPOとUSPTOがそれぞれMOTTAINAIとPPH2.0の試行プログラムを含む二国間PPH試行プログラムを拡大することに賛同した。PPH試行プログラムの品質メトリクスに関する共同研究の実施が予定されている。

※1 特許審査ハイウェイ(PPH):第1庁で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、第2庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。

(b)第一庁出願の優先化

EPOは第一庁出願を優先的に着手することが標準的な運用である一方、JPOは、JP-FIRSTを通じてSHARE※2の概念を実現した。USPTOは、FLASHと名づけられた試行プログラムに着手し、SHAREの概念に従ってサーチ及び審査結果を最大限に活用するために、業務負担の均衡化及び優先化の実行可能性を検証している。

三極特許庁は、将来的にはワークシェアリング活動に必要な情報提供を自動化できるよう、第一歩を踏み出すことに合意した。

※2 SHARE:第1庁出願を優先的に着手し、第2庁は第1庁のサーチ・審査結果を利用するという枠組み。JPOは2008年4月より「JP-FIRST(JP-Fast Information Release Strategy)」として実施中。

(c)共通引用文献

三極特許庁は、共通引用文献(CCD)のウェブサービス第1版の提供を承認した。USPTOは、CCDのためにオフィスアクションからの引用情報の交換を開始し、JPOもそのようなデータ交換を継続する意図を確認した。三極特許庁は、可能であれば、CCDのためにより充実したデータを提供する意志のあることを確認した。

2.審査官会合

審査官協議は、官庁間の三極特許庁間における信頼構築のためには有効な手段であるとの昨年の合意を継承した。そして、三極特許庁は、この方針を推し進め、リソースをさらに有効利用するために、五庁協力を通じて今後もこの活動を継続していくことに合意した。

3.PCTの利用

三極特許庁は、PCT制度を最大限に活用するための努力を継続することの重要性を認識し、今後もPCTロードマップを前進させるために様々な提案を探求し、実現可能であればそれらを実行していくことで合意した。

PCT出願のサーチ及び審査の品質を、各庁の国内/地域出願の標準的な品質と同レベルとなるようにすることを含め、三極特許庁の国内段階においてPCT成果物の再利用を最適化するために、PCTプロセスの改善に向けて努力するとした昨年の合意を継承した。

EPOとUSPTOは、PCTロードマップに定められたプロジェクトの1つとして、韓国知的財産庁(KIPO)とともに限定的なPCT協働国際サーチ及び予備審査の試行プログラムを実施している。この試行プログラムは、適当であると判断されれば、五庁枠に拡大することが望まれる。さらにEPOは、PCTロードマップに定められた2番目の要素として、PCT国内予備審査段階における第二の意見書の送達を実施している。

4.審査実務と品質

三極特許庁は、異なる実務のカタログが、他庁の審査結果を利用する審査官に対し有益であり、品質改善のための基礎を提供し、出願人にとっては貴重なツールとなる点を認識した。この観点から、三極の専門家及び三極ユーザー代表によるカタログ評価が実施された。ワークシェアリングに関する取組におけるカタログの有用性向上のため、及び、ユーザーにとって参考資料として、各庁間における制度調和・運用の調和の基礎資料としての、カタログの利便性向上のため、その評価結果が用いられる。このカタログは、KIPOと中華人民共和国国家知識産権局(SIPO)からの情報を加えて三極ウェブサイトにおいて公開される予定である。

三極特許庁は、品質メトリクスの共同研究の完成に向けて引き続き努力することで合意した。本研究は、国際調査報告書が国内段階でも利用されるよう改善することを目的としている。

5.情報技術協力の促進

三極特許庁は、ワークシェアリングを目指す五庁基礎プロジェクトを引き続き推進し、支援するとした先の合意を継承した。

(a)優先権書類の電子的交換

三極特許庁は、世界知的所有権機関(WIPO)のデジタルアクセスサービス(DAS)の利便性と安全性を向上させるために引き続きWIPOと協働し、現在の優先権書類の交換を改善するためのセキュリティ対策を継続して実施するとした先の合意を継承した。

(b)電子出願、データ標準

三極特許庁におけるXML標準の利用の実現に向けて、三極特許庁は、XMLフォーマットによる電子出願及び各庁内の処理の促進に関する情報交換を今後も継続するとした先の合意を継承した。

三極特許庁は、ユーザーに対し引き続き共通出願様式の利用を促進する。

共通標準を開発することで得られる効率性を認識して、三極特許庁は、PCT様式のXMLフォーマットの標準化に向けた作業を行うこと、データ交換標準のビジネス要件を満たすための作業を行っていくこととした先の合意を継承した。

三極特許庁はXML標準化に対する各庁の現況を発表した。これを基に今後、既存の各標準の充実のための関連するWIPOの標準ワーキンググループの支援、及び、三極特許庁のビジネス要件を満たすためのデータ交換用新標準の開発を含むXMLロードマップを作成する。

三極特許庁は、既存の標準との相互運用性を確保する新しい標準を検討し、また、見解書及び特許出願の法的状況に関するデータ交換のために既存の標準の改善を支援することで合意した。

三極特許庁は、配列表をXML様式で記載するための改訂標準について今後も作業を継続し、2012年内にWIPOでの標準の採択のプロセスに向けて合意された状況となるよう、作業することで合意した。

(c)紙ゼロ運動

三極特許庁は、WIPO国際事務局が掲げる電子化目標を積極的に支援するために、法的・技術的問題を引き続き検討する。三極特許庁は、PCT書類を電子的な様式で取り扱う「ePCT」プロジェクトを今後も支援する。

(d)トライネット

三極特許庁は、将来多くの知財庁と安全なデータ交換ができるよう、ネットワーク経由でのデータ交換に好ましい方法をそれぞれのタイプのアプリケーション毎に決定していくことを確認した。

三極特許庁は、ISO 27002に準拠する共通管理策の第1版を含め、トライネットセキュリティポリシーの実装計画に合意し、実装作業に向けた取組を開始することとした。

三極特許庁間において安全なデータ交換を実現するための代替策をさらに調査していくことも合意された。

(e)PCT書類のDTD

三極特許庁は、WIPOとともに、PCT実施細則Annex Fに基づくPCT書類のDTDの変更提案(PFC)に合意した。

6.分類

三極特許庁は三極間での主な分類調和プロジェクトを全て完了し、五庁枠組みへのスムーズな移行への準備が整えられた。これらプロジェクトは、IPCへの統合のためIPCコミュニティへと引き渡される。

2011年10月14日、ハーグにて三極分類作業部会が開催された。今後の分類共同作業は、五庁WG1(分類関連作業部会)に引き継がれる。

三極特許庁は、CPCとFIを統合するため、CHCプログラムの加速化に関する研究を行うワーキンググループを(2012年から)立ち上げることに合意した。2013年、又は、可能な限り早期に、三極特許庁はCHCプロジェクトに必要なリソースを割く。

7.情報普及

三極特許庁は、情報の自由な流れの三極情報普及ポリシー改訂版の戦略的な重要性を再確認した。活動の重複を最小化することの重要性を認識しつつ、三極特許庁は、特定の特許情報活動を五庁協力の枠組みに移行すること、特に、前記三極情報普及ポリシーを五庁枠組みへの拡大を促進することで合意した。

三極特許庁は、より広範なユーザーコミュニティーへのアクセスを高め、拡張するために、普及ポリシー及び実務を検証し続けることに注力する。

8.統計

三極特許庁とKIPOは、2011年11月に四庁統計報告書を公表した。五庁統計報告書は、SIPOの協力を得て2012年に公表されることが期待される。

三極特許庁は、SIPOが、新たに設立される「五庁統計作業部会」の正式メンバーとなるよう努力を今後も継続していく。この件に関して予想される進歩を考慮した上で、三極特許庁は、一旦、四庁統計作業部会の活動が五庁協力の枠組みに移行されたならば、四庁統計作業部会を解散させるよう準備を行っている。要件が整えば、五庁の枠組みの中で作業が実施されるという前提の下に四庁統計作業部会は解散する。

[更新日 2011年12月7日]