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欧州特許庁(EPO)、日本特許庁(JPO)および米国特許商標庁(USPTO)は、2012年11月16日、日本の京都において第30回三極長官会合を開催し、三極協力30周年を祝った。同会合において、三極特許庁の長官は以下の点で一致した。
また、三極特許庁の今年の共通取組の主要成果として、以下の点が強調された。
上記に加え、三極長官は以下の点についても一致した。
三極特許庁は、三極協力開始以来の進化と業績を説明する30周年記念パンフレットを作成してこれを広範に配布し、三極協力ならびに世界の特許制度の開発において同協力が果たした役割を周知した。
三極特許庁は、1983年に始まる三極協力の長い歴史を考慮し、本覚書きに添付した三極協力30周年宣言を採択した。
三極特許庁は、各庁のサーチおよび審査過程の効率と効果の向上を目指し、各庁作業成果物の再利用を最大化するために種々のワークシェアリング取組をさらに推進するという決意を再確認した。そのための可能な方法論を引き続き模索していく。
三極特許庁は、特許審査ハイウェイが、三極間のワークシェアリング活動の重要な要素であることを再確認し、特許審査ハイウェイの効率と効果を強化する方法についてさらに議論を重ねることで合意した。とりわけ、PLPPHの包括的枠組みを構築するため、PPH2.0およびPPH-MOTTAINAIに取り組むことが確認された。三極特許庁はまた、PPH手続の合理化の重要性を踏まえ、官庁が中期的に取り組むべき実践的手法は共通ガイドラインの開発であることを確認した。
※1 特許審査ハイウェイ(PPH):第1庁で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、第2庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。
JPOはJP-FIRST※2構想において、迅速性に関する解決策を実現した。USPTOはFLASH※3と呼ばれるパイロットプロジェクトを実施し、サーチと審査の結果を最大限に再利用するためのワークロードの均衡化と優先順位付けの実現可能性を評価した。
※2 JP-FIRST:パリ優先権の主張の基礎となる特許出願のうち、出願日から2年以内に審査請求されたものについて、出願公開日又は審査請求日のうち遅い方から6ヶ月以内を目安に一次審査の着手を行うもの。平成20年4月から実施。
※3 FLASH:第1庁出願を優先的に着手し、第2庁は第1庁のサーチ・審査結果を利用するという枠組みであるSHARE(第1庁優先着手)を米国特許商標庁において実現する枠組み。米国に第1庁に出願された案件を優先着手する。
三極特許庁は、OPD(One Portal Dossier) ※4などの手段によって、三極特許庁間におけるサーチと審査の結果のアクセシビリティを最大化することは、他官庁の業務成果の多くを活用するために、ワークシェアリングを推進する重要な一要素であることを確認した。
※4 OPD(One Portal Dossier):現在、五庁間で技術仕様などの調整が行われており、関連する出願の五庁各庁における審査関連情報(Dossier:ドシエ)を簡単に取得することができるシステム。また、取得した情報を審査官の画面に一斉に表示することができる。
審査官協議は、官庁間の三極特許庁間における信頼構築と相互理解の促進のためには有効な手段であるとの先の合意を継承した。従って、三極特許庁は、この方針を推し進め、リソースをさらに有効利用するために、五庁協力を通じて今後もこのプロジェクトを継続していくことに合意した。
三極特許庁は、PCT制度を最大限に活用するための努力を強化することの重要性を再認識し、今後もPCTロードマップを前進させるために様々な提案を調べ、実現可能であれば実行していくことで合意した。
三極特許庁は、それぞれPCTを改善するための提案を行い、またこれらの提案をさらに緻密化し、実現可能であれば実行することで合意した。
PCTのサーチおよび審査の品質に関して、各庁の国内/地域出願の標準と同レベルとなるようにすると共に、三極特許庁の国内段階においてPCT成果物の再利用を最適化するために、PCTプロセスの改善に向けて努力するとした先の合意を継承した。
EPOとUSPTOは、ロードマップに定められたプロジェクトの1つとして、KIPOとの間でPCT協働国際サーチおよび予備審査の試行プログラムを実施している。この試行プログラムは、適当であると判断されれば、他の五庁枠に拡大することが企図されている。JPOはユーザーと協議しつつ、同パイロットプラグラムへの参加を検討する予定である。
三極特許庁は、国内段階において国際調査報告書を再利用しやすくする観点から、国際調査報告書および国内/地域審査過程の品質を評価するための品質メトリクスの重要性を再確認した。EPOおよびJPOは、メトリクスに関する共同研究のフェーズ3を開始することで合意した。EPOは、PCT品質メトリクス枠組みを五庁に提示し、品質メトリクスの更なる開発を進めることを提案した。
三極特許庁は、ワークシェアリングを目指す五庁基礎プロジェクトを引き続き推進し、支援するとした先の合意を継承した。
三極特許庁は、世界知的所有権機関(WIPO)のデジタルアクセスサービス(DAS 2.0)を早期に実用化し、準備が整い次第、現在の二者間でのPDX(Priority Document Exchange)交換からDASに移行する旨の合意を継承した。
三極特許庁は、五庁基礎プロジェクトの1つである共通出願様式(CAF)プロジェクトの終了を確認したが、同プロジェクト終了後もユーザーによるCAFの使用の普及を継続することで合意した。
三極特許庁におけるXML標準の実用化に向けて、XML様式による電子出願および出願処理を強化するための方法について、情報交換を今後も継続するとした先の合意を継承した。
三極特許庁は、意見書ならびに特許出願の法的状況に関するデータの交換に用いられる既存様式の強化を継続する一方で、新規の標準を検討し、両者の相互運用性を確保することで合意した。
三極特許庁は、配列リストをXML様式で表示するための改訂版標準についての提案を、2014年におけるCWSの採用までにまとめることで合意し、ST.25からST.26への移行方法に関する議論を継続する重要性を強調した。
三極特許庁は、必要な互換性の確保ならびにST.36などの他の既存標準の維持に関するCWS会合の第3回セッションにおいて、付属文書を含むWIPO標準ST.96を全面的に採用できるよう、WIPOとの協力を継続することで合意した。
三極特許庁は、WIPO国際事務局が掲げる電子化目標を積極的に支援するために、法的・技術的問題を引き続き検討する。三極特許庁は、PCT文書を電子様式で処理する「ePCT」プロジェクトを今後も支援する。
三極特許庁は、将来多くのIP庁と安全なデータ交換ができるよう、ネットワーク経由でデータ交換をするにはどの方法が好ましいか、出願種類別に決定することを再確認した。
三極特許庁は、TrinetにSIPOを加えることで合意し、SIPOの参加について歓迎の意を表明した。
三極特許庁は、ISO 27002共通コントロール(改訂前バージョン)を含むTrinetセキュリティポリシーの実装計画について合意し、実際に作業に取り掛かるための計画着手に合意した。
三極特許庁間において、安全なデータ交換を実現するための代替策をさらに調査して行くことも合意された。
三極特許庁は、官庁、ユーザーおよび特許過程におけるその他の利害関係人の様々な協力方法を強化し統合するための構想として、グローバルドシエ構想が重要であるとの認識を共有した。
三極特許庁は、2013年にEPOで開催される第一回グローバルドシエ・タスクフォース会合の準備を含め、グローバルドシエに関する活動を推進することで合意した。
三極特許庁は、三極の産業からのフィードバックを反映して共通引用文献(CCD)の申請書を改良し、2012年4月に改訂版を発表しており、年末にも発表する予定である。
三極特許庁は、CCDに関してこの他にも進展があったことを確認した。これには、USPTOによる引用データの迅速な提供、JPOによるメディアレスデータ交換の準備、五庁が開始したCCD改善の構想が含まれる。また、USPTOは2013年末を目処に豊富な引用文献の提供を開始する。
三極特許庁は、五庁内でCCDを推進することで合意し、また豊富な引用データを随時提供し、CCDを支援する用意があることを再確認した。
三極特許庁は、情報の自由な流れの三極情報普及ポリシー改訂版の戦略的な重要性を再確認した。三極特許庁は、特定の特許情報活動を五庁協力の枠組みに移行する。
三極特許庁は、より広範なユーザーコミュニティへのアクセスを高め、拡張するために、普及ポリシーおよび実務を検証し続けることに注力する。
三極特許庁およびKIPO(四庁)ならびにSIPOは、五庁統計作業部会の創設に向け、SIPOが統計作業部会の正式メンバーとなれるよう協力した。五庁統計作業部会の権限文書は、2011年12月に開催された第3回五庁作業部会で採択され、SIPOは同統計作業部会への加入を歓迎された。この件に関して予想される進歩を考慮した上で、業務が五庁の下で実施されるようになることを前提に、四庁統計作業部会は解散した。
[更新日 2013年1月9日]