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三極知財・環境問題シンポジウムの結果について

2022年3月31日

2022年3月17日、日本国特許庁(JPO)主催の下、欧州特許庁(EPO)及び米国特許商標庁(USPTO)との共催で、「三極知財・環境問題シンポジウム~カーボンニュートラル達成に向けた特許制度の貢献~」をオンライン会議形式で開催しました。

本シンポジウムの開催にあたっては、世界知的所有権機関(WIPO)並びに日米欧のユーザー団体である日本知的財産協会(JIPA)、ビジネス・ヨーロッパ(BE)、米国知的財産権法協会(AIPLA)及び米国知的財産権者協会(IPO)に後援いただきました。

三極特許庁共催で、環境問題に関するシンポジウムが開催されるのは初であり、本シンポジウムは、カーボンニュートラル社会の実現に向け、特許制度を戦略的に活用してカーボンニュートラル技術が開発・普及された事例を紹介するとともに、知財のカーボンニュートラル達成への貢献について議論することを目的として開催されました。また、本シンポジウムの結果を受け、三極特許庁による環境問題に関する初の共同声明の採択を行いました。

知的財産と環境問題に関する三極共同声明の本文(外部サイトへリンク)(PDF:135KB)

1.開催者挨拶

(1)森 清 長官(JPO)

脱炭素社会を実現するためには、イノベーションによってカーボンニュートラル技術を社会に実装していくことが重要であり、知財制度がカーボンニュートラル技術の開発・普及に貢献できることについて述べました。そして、環境問題に関連するJPOの取組として、気候変動対策技術を俯瞰できる技術区分表である「Green Transformation Technologies Inventory(GXTI)」を作成中であることや、2022年度に実施予定の気候変動対策技術を俯瞰した特許動向調査、及び、WIPOの取組であるWIPO GREENへのJPOの支援等について紹介しました。

(2)スティーブン・ローワン 副長官(EPO)

SDGs達成のため中小企業への働きかけが必要であり、「特許情報センター(PATLIB)」のネットワークの改善に注力していることについてお話しいただきました。また、EPOの審査体制をSDGsと同調した14の技術コミュニティーに再構築したことや、特許領域においてトレンド・開発に関するデータ重視の議論をサポートすべく本年「特許・イノベーション監視部門」の設立が検討されていること等について紹介いただきました。

(3)ドリュー・ハーシュフェルド 長官代行(USPTO)

持続可能性に関する検討を行う庁内ワーキンググループを昨年立ち上げたことに加え、環境技術に特化した優先審査プログラム、ライセンス可能な環境技術特許レポジトリ、サステイナビリティに関する特許に対する表彰プログラムを構想中であること等を紹介いただきました。

2.基調講演

WIPOダレン・タン事務局長より、知財がグリーンイノベーションを支える重要な要素であることについてお話しいただきました。また、気候変動に対するWIPOの取組として、環境技術の活用を促進するためのプラットフォームであるWIPO GREENや、環境技術の推進を支援するための新たなプロジェクトであるIPO GREEN等について紹介がありました。

3.トピック1(日本の事例)

日本から、株式会社ユーグレナの社長・創業者である出雲充氏が登壇しました。ミドリムシ(ユーグレナ)を用いた次世代再生可能ディーゼルバイオ燃料が紹介されるとともに、基礎特許を単独で取得した上で共同研究を実施するという知財戦略についてお話しいただきました。

4.トピック2(欧州の事例)

欧州から、オーカンエナジー社のCTO・共同創業者であるアンドレアス・シュスター氏が登壇しました。廃熱利用発電プラントを販売する上で、170件の特許からなる知財ポートフォリオが鍵になったことについてお話しいただき、資金調達、パートナーとの交渉、国際的な事業展開において、特許が果たす重要な役割が強調されました。

5.トピック3(米国の事例)

米国から、ノケロ社のCEO・創業者であるスティーブ・カトサロス氏が登壇しました。低コストかつ低環境負荷の太陽光発電LEDの紹介があり、特許と意匠の両方で製品を保護するという知財戦略についてお話しいただきました。

6.パネルディスカッション

以下のモデレーター・パネリストが登壇し、3.~5.で言及されたテーマについて更なる知見が共有されました。

モデレーター

  • WIPO: エドワード・クワクワ 事務局長補

三極ユーザー団体代表パネリスト

  • JIPA:別宮 智徳 理事長
    自動車メーカーと電池メーカーとが知財を持ち寄ることで技術的ブレイクスルーを果たし、電気自動車用バッテリーを実用化した例等を紹介いただきました。
  • BE:ジャック・バウヴァー氏
    基礎的な特許を取得した上で早期に市場へ参入することや、様々な側面からの保護を検討し、知財戦略を自らデザインすることが重要であるという知見等を共有いただきました。
  • AIPLA:フィリップ・ペティ氏
    グリーンイノベーションへの投資を促進するためには、強力な特許ポートフォリオを構築することが重要であること等についてお話しいただきました。
  • IPO:サン・ヤング・ブローディ氏
    コンソーシアムを立ち上げたり、技術標準を策定する委員会へ参加したり、政府から補助金を獲得したりする際には、知財に関する議論が常に行われることが重要であるという知見等を共有いただきました。

三極特許庁代表パネリスト

  • JPO:福田 聡 国際政策課長
    環境問題を解決する上でスタートアップの力が重要であることを述べ、知財ポータルサイトである「IP BASE」や、知財アクセラレーションプログラム(IPAS)を紹介しました。
  • EPO:ヤン・メニエール チーフエコノミスト
    脱炭素技術としては、エネルギーの需要・供給に関するものに加え、バッテリーや送電、二酸化炭素回収、水素といった第三のカテゴリーと呼ばれる技術も重要であること等についてお話しいただきました。
  • USPTO:アンドリュー・トゥール チーフエコノミスト
    USPTOが知財集約産業に関する「知的財産と米国経済(第3版)」のレポートを公表することについて紹介いただき、知財が米国の雇用等に大きく貢献していること等についてお話しいただきました。

7.閉会挨拶

森長官から、本シンポジウムを通じて、知財制度がカーボンニュートラルの達成に資するものであると再認識できたことに言及し、本シンポジウムを締めくくりました。

日本国特許庁は、今後も欧州特許庁と米国特許商標庁と連携しながら、さらに、WIPOや日米欧のユーザー団体等の協力を得つつ、知財制度を通じた環境問題の解決に努めてまいります。

アーカイブ

本シンポジウムのアーカイブ動画を特許庁YouTubeチャンネル上で、公開しております。

(画像)会議のスクリーンショット
開催者挨拶と基調講演の様子
(左上:JPO森長官、
右上:EPOローワン副長官、
左下:USPTOハーシュフェルド長官代行、
右下:WIPOタン事務局長)

(画像)会議のスクリーンショット
日米欧の代表発表者
(左:株式会社ユーグレナ 出雲社長(日本)、
中央:オーカンエナジー社 シュスターCTO(欧州)、
右:ノケロ社 カトサロスCEO(米国))

(画像)会議のスクリーンショット
パネルディスカッションの様子
(上段左から別宮理事長(JIPA)、バウヴァー氏(BE)、ペティ氏(AIPLA)、ブローディ氏(IPO)
下段左から福田課長(JPO)、メニエール氏(EPO)、トゥール氏(USPTO)、クワクワ事務局長補(WIPO))

(写真)感謝レターを手に記念撮影
JPO森長官より出雲社長へ感謝レターの贈呈

[更新日 2024年2月19日]

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