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商標法に関するシンガポール条約(STLT)の採択について

改正商標法条約を採択するための外交会議(以下、「外交会議」という。)が、2006年3月12日から3月27日までシンガポールにおいて開催され、新条約は、「商標法に関するシンガポール条約」(Singapore Treaty on the Law of Trademarks;STLT)として、同月27日に採択されました(詳細はTLT/R/DC/30(外部サイトへリンク))。

STLTは、基本的に商標法条約(Trademark Law Treaty;TLT)の内容を取り込んだ上で、①出願手法の多様化への対応(書面による出願に加え、電子的手段による出願にも対応)、②商標出願手続の更なる簡素化及び調和(商標ライセンス(使用権)等の登録手続の共通化)、③商標出願に関連する手続の期間を守れなかった場合の救済措置などが加えられました。そして、STLTは、TLTから独立したものとなりました。

※STLTについての最新情報は、以下の特許庁ホームページを御覧ください。

1. 採択までの経緯

経緯

1994年10月

ジュネーブにおいてTLT採択のための外交会議が開催され、TLTが採択されました。

2002年5月

TLT改正の議論は、世界知的所有権機関(WIPO)の商標法等常設委員会(SCT)において検討が開始されました。

2005年4月

2005年4月のSCT第14回会合において、2006年3月の外交会議へ向け最後の議論が行われ、基本提案について合意されました。

2006年3月

シンガポールにおいて外交会議が開催され、3月27日にSTLTが採択されました。

2. 採択されたシンガポール条約の主な内容

採択されたSTLTの主な内容は以下のとおりです(詳細は条約及び規則をご参照下さい)。

(1)電子出願(第8条)

締約国は、提出物の送付手段について、郵送等の物理的手段又は、電子的送信等の電子的手段を自由に選択することが可能です。

(2)手続期間を守れなかった場合の救済(第14条)

出願人又は名義人等が一定の手続期間を守れなかった場合の救済措置を規定しています。締約国は、出願人又は名義人等に対し救済措置として、①満了後の期間の延長、②満了後の処理の継続、又は③満了後の権利の回復の三つのうち、少なくとも一つを規定しなければならないこととなっています。

①満了後の期間の延長:出願人等は、期間満了の日から一定期間(2月以上)に期間延長申請書を提出すれば、手続期間を守れなかった手続の期間の延長が認められます。

②満了後の処理の継続:出願人等は、手続期間を守れなかった手続について、一定期間(2月以上)、処理の継続が認められます。

③満了後の権利の回復:出願人等は、相当な注意を払ったにもかかわらず期間を守れなかった場合、一定の要件の下、出願又は登録に関する出願人等の権利の回復が認められます。

(3)商標ライセンス(専用使用権、通常使用権)(第17条~第20条)

商標ライセンスの登録申請手続の簡素化・調和を図るため、ライセンスの記録の申請の要件、及びライセンスの記録の修正又は取消の申請の要件を規定しています。また、ライセンスの未記録の効果等について規定しています。

(4)総会の設立(第23条)

規則等の修正については、外交会議を招集することなく総会で修正できるよう一連の管理・最終規定を整備することとしています。

3. 出願人にとってのメリット

STLTに加盟する国が増えることにより、各国での商標権取得・行使に関する手続の一層の共通化が達成され、我が国企業等出願人が世界各国で商標権取得・行使を容易に行うことができるものと考えております。
新たにもたらされる具体的なメリットは、以下のとおりです。

  • (1)条約とともに採択された附帯決議等により、より多くの国々が、TLTとほぼ同様の規定を有する本条約に加盟することが可能となるように配慮されており、特に、市場として今後期待される開発途上国や後発開発途上国などの本条約への加盟が促進されると思われます。
  • (2)出願人等は、本条約に加盟した各国において、統一された手続要件により、商標ライセンスの登録手続等を行うことができます。
  • (3)出願人等は、本条約に加盟した国における商標出願に関連する手続に関して、官庁に対する手続期間を守れなかった場合でも、一定の救済が認められます。

4. シンガポール条約の概要表

概要表

条文

タイトル

規定の概要

第1条
(修正)

略称

条約及び規則で用いられる用語の定義を規定。
「提出物」、「ライセンス」、「総会」等が追加された。

第2条
(修正)

この条約が適用される標章

条約が適用される標章(商標)を規定。
ホログラム標章、音、におい等の標章について、シンガポール条約では締約国の国内法令に従って適用できることとなった(TLTでは適用対象外)。

第3条
(修正)

出願

商標登録出願の願書に記載する項目及び添付書類を規定。
ホログラム標章、音、におい等の標章についての願書記載方法等が追加された。

第4条
(修正)

代理及び送達のためのあて先

代理人の要件及び代理の手続を規定。
締約国は代理人の要件として、(1)手続をする権能を有することや締約国内に代理人の宛先を有することを要求することができる旨及び、(2)代理人の行為は出願人の行為としての効力を有する旨が追加された。

第5条

出願日

出願日の認定に必要な要件を規定。

第6条

2以上の類に属する商品又はサービスに係る単一の登録

1つの商標登録出願において、ニース国際分類の2以上の類に属する商品又はサービスを記載することができること等を規定。

第7条

出願及び登録の分割

複数の商品又はサービスを有する1つの出願を2つ以上の出願又は登録に分割することができることを規定。

第8条
(新規)

提出物

出願人、名義人等から官庁への提出物の要件を規定。
新たに(1)締約国の書面か電子かによる書類の提出形態・手段の選択、(2)提出する書類に関する言語の要件、(3)署名の要件、(4)電子的手段による提出物の要件、(5)モデル国際様式等について規定された。

第9条

商品又はサービスの分類

ニース国際分類に従って類別された商品又はサービスを表示すること等を規定。

第10条

氏名・名称又は住所の変更

出願人、名義人等の氏名、住所等の変更に関して規定。

第11条

権利の移転

商標登録出願及び商標登録に係る権利の移転に関して規定。

第12条

誤りの訂正

商標登録出願の願書等に誤りがあった場合の訂正に関して規定。

第13条

登録の存続期間及び更新

商標登録の更新についての手続並びにその登録の更新に際して実体審査をすることができないこと、及び登録の最初の存続期間並びに各更新の存続期間を10年とすることを規定。

第14条
(新規)

期間非遵守の場合の救済処置

出願人、名義人等が、出願又は登録に関し、官庁に対する手続をするための期間を遵守できなかった場合の救済措置を規定。

第15条

パリ条約を遵守する義務

締約国はパリ条約の標章に関する規定を遵守することを規定。

第16条

サービスマーク

締約国はサービスマークを登録し、パリ条約の標章に関する規定をサービスマークについて適用することを規定。

第17条
(新規)

ライセンスの記録のための申請

ライセンスの記録のための申請に関する規定。ライセンスの種類、商品・役務の範囲、期間的又は地域的範囲等の申請事項とともに、その裏付資料を要求できるというもの(なお、対価の額等については要求できない)。

第18条
(新規)

ライセンスの記録の修正・取消のための申請

ライセンスの記録の修正・取消の申請に関する規定。修正又は取消に係るライセンスの範囲等の申請事項とともに、その裏付資料を要求できるというもの。

第19条
(新規)

ライセンスの未記録の効果

(1)ライセンス登録されているか否かについては、商標権そのものの有効性に影響を与えないこと、(2)ライセンス登録されていなくとも、使用権者は名義人の損害賠償請求に参加できること、(3)使用権者の使用を名義人の使用とみなすために、ライセンスの記録を要求することはできないことを規定。

第20条
(新規)

ライセンスの表示

締約国の法令が、当該標章がライセンスに基づく使用である旨の表示を要求する場合、標章の有効性又は標章の保護に影響を及ぼさない旨の規定。

第21条
(新規)

却下又は拒絶しようとする場合の意見

商標登録出願又は条約に規定する申請に関して却下前に必ず意見を述べる機会を与えなくてはならないとする規定。

第22条
(新規)

規則

規則で定められる事項を規定し、規則にはモデル国際様式も含めることを明記。
規則の修正についての条件が追加された。

第23条
(新規)

総会

総会における規則修正等の任務の他、総会の構成等を規定。

第24条
(新規)

国際事務局

国際事務局が行う業務及び事務局長の職務等について規定。

第25条
(新規)

改正及び修正

条約が外交会議で改正できることを規定。

第26条

締約国となるための手続

締約国となることができる国及び政府間機関について、締約国となるための条件と合わせて規定。

第27条
(新規)

商標法条約及び本条約の適用

TLT及び本条約の加盟国間の適用関係について規定。

第28条
(修正)

効力の発生;批准及び加入の効力発生日

本条約は10の国等が批准書等を寄託した後3月で効力を生ずること、条約発効後に批准書等を寄託した国等は寄託後3箇月で条約に拘束されることを規定(TLTが「5の国が批准等」としていたところ「10の国又は政府間機関が批准等」と変更された)。

第29条
(修正)

留保

留保を付することにより、防護標章等について特定の規定を適用しない旨の宣言ができる等の留保規定。
締約国の適用法令が、商品の多区分登録及びサービスの多区分登録を規定している場合についての留保等が追加された。

第30条

条約の廃棄

締約国における条約の廃棄及びその効力の発生について規定。

第31条

条約の言語及び署名

条約の正文と公定訳文、及び署名期間を規定。

第32条

寄託者

本条約の寄託者を事務局長とする規定。

※条文の項の「修正」「新規」は、TLTからの変更箇所について表示しています。

[更新日 2016年4月15日]

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