職務発明制度に関する調査研究委員会 第3回委員会 議事概要
職務発明制度に関する調査研究委員会※
第3回委員会 概要
1. 日時
平成25年7月30日(火曜日)10時00分から12時15分
2. 場所
特許庁16階 共用会議室
3. 委員長
後藤晃 政策研究大学院大学教授
4. 議題
- (1)委員からの報告1
- (2)委員からの報告2
- (3)全体討議
5. 議事概要
議題(1)及び(2)
- 研究者・技術者を対象とする調査結果から、専門職である研究者・技術者は、事務職、製造職などの非専門職と比較して、自己の専門性を重視して組織にとどまることに固執しない傾向があるが、実際に転職する者は非常に少ない。専門職の雇用流動性を国際比較すると、日本では低く、米国では高い。
- 企業内で評価の悪かった研究者が特許法第35条に係る対価請求訴訟を起こす場合があるという点について、企業における研究者マネジメントの在り方についてどのように考えるべきかという視点もある。これまでは国内に外部労働市場が十分に発達していなかったため、内部に留まる者が多かったが、海外での研究経験が得られるよう若手研究者支援政策が実施されていることもあり、今後は国外の事情を知る人々が増えることを想定し、研究者・技術者の志向、社会的環境を理解したR&Dマネジメントが重要である。
- 発明者に対する調査結果から、発明者の大半は研究開発部門に勤務している点、及び、発明者が発明する動機としては、金銭的な報酬よりも、現実的な問題を解決したいという願望など内在的動機の方が大きい点が把握できる。
- 発明をなしたことによる発明者の金銭的処遇の変化について、発明者に対する調査結果を見ると、日本、ドイツ、米国いずれの国においても、特許出願時や登録時に発明者に対して報酬を支払う割合の方が、発明が実際に商業目的で使用された場合での報酬の支払の割合よりも高い。
- 発明が実際に商業目的で使用された場合における発明者への報酬の支払の割合について、調査結果に基づき国際比較すると、ドイツは日本より高いのに対し、米国は日本より低い。
議題(3)
- 発明が商業目的で使用されたことを条件にした発明者に対する報酬の支払の割合が、ドイツは高く、米国は低いという調査結果について、この理由は、ドイツには職務発明制度が存在し、米国にはないからなのか。報酬の支払の割合の差がイノベーションにどう影響を与えているのか、難しい問題だが、興味がある。
- 特許法第35条における「相当の対価」の性質として、職務発明に係る権利の譲渡に対する代金であるのか、それとも賃金であるのか、検討すべき論点である。代金と考えれば、億単位の額も対価として算定され得るが、賃金だとすると、億単位の額はまず算定されないのではないか。
- 特許法第35条は、「法人の役員」も「従業者等」に含めているため、労働法とは適用範囲が異なっており、その意味では、労働法以外の要素も含まれているといえるのではないか。職務発明制度について議論する場合には、労働法の考え方をそのまま持ち込むだけでは十分な検討が出来ないのではないか。
- 特許法35条の対価は要するに、最低賃金の保証など労働法による保護にプラスアルファで上乗せされているもの、いわゆる「労働法プラス」と考えることができるのではないか。この上乗せ部分に関しては、使用者と従業者の契約に委ねるのか、それとも、法が介入して決定するのか、議論すべき。
- たとえばドイツでは、法律により、職務発明に係る権利が使用者側に自動的に承継される。職務発明に係る権利の帰属や承継について、幅広の議論が必要。
- 特許法第35条の法的性質について時間をかけて議論を深めることも重要だが、これまでの立法経緯や現行制度の運用状況などを前提として立法政策の議論を進めることも可能ではないか。
6. 今後のスケジュール
諸外国の職務発明制度に関する情報収集案等について、議論を行う予定。
※平成25年度産業財産権制度問題調査研究「企業等における特許法第35条の制度運用に係る課題及びその解決方法に関する調査研究」
[更新日 2013年8月22日]
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