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第7回委員会 概要

職務発明制度に関する調査研究委員会

第7回委員会 議事概要

1. 日時

平成25年10月11日(金曜日)10時00分から12時00分

2. 場所

特許庁16階 特別会議室

3. 委員長

後藤晃 政策研究大学院大学教授

4. 議題

  • (1)委員からの報告1
  • (2)委員からの報告2

5. 議事概要

議題(1)

  • 職務発明に関する権利を発明者である従業者に認めつつ、その権利の使用者への承継を契約一般に委ねる制度の当否を検討する場合には、民法の観点から、権利承継の規制と対価設定の規制の2つの問題について、同法の改正動向も踏まえつつ検討することが有益であると思われる。
  • 権利承継については、個別合意により行う場合と勤務規則により行う場合を考えることができる。個別合意による場合、権利を移転する旨の明確な合意があれば原則として有効であるが、例外的に、錯誤や詐欺等の意思表示の瑕疵等により無効となり得る。他方、勤務規則により権利を承継する場合には、民法の合意原則から、従業者は勤務規則の内容・存在が従業者に事前に開示され、周知徹底されていることが必要と考えられる。
  • 権利承継を契約一般に委ねたとしても、対価設定に係る規制が完全に無くなるということはなく、契約自由を原則としつつ、例外的に公序良俗・暴利行為といった民法による内容規制が及ぶことになる。その場合、対価の額が低ければ低いほど、従業者の具体的・真摯な同意が必要となり、対価の額が高ければ高いほど、従業者の意思決定の程度は低くても足りると考えられる。ただし、これらの民法による規制はあくまで一般条項であるため、結果の予測可能性が低くなる点が懸念される。
  • 平成16年特許法改正前の判例では、相当の対価は客観的に求められるとするものであったが、改正法(現行特許法第35条)では、対価については当事者間の手続を重視するという点で、判断の仕組みは大きく変わっていると思われる。改正法下での裁判例は実質的にまだ出ていないものの、相当の対価の判断については、手続重視という面を考慮すると、対価の考え方は従来と同じようにはならないのではないか。

議題(2)

  • 発明とは、自然人である発明者による技術的思想の創作であり、それが職務に関するものであっても、その発明に係る権利は発明者に帰属し、企業はその権利移転を受ける必要があるのではないか。発明の完成時からその権利が企業に帰属することは立法政策としては採りうるとしても、それは法による擬制にすぎず、その発明が職務としてなされたことに起因して企業は発明者から特許を受ける権利を承継するというのが、発明の本質に依拠したごく自然な法制度と考えられる。
  • 現行特許法第35条第4項は、使用者と従業者とが協議を経ることにより対価を決定する基準を策定することとしており、同条のもつ労働法的性格に適合している点において、優れた制度と考えられる。ただし、現行規定では、具体的にどのような手続を踏めば合理性が担保されるのか不明確という指摘があり、企業が安心して事業を展開できるよう、十分な予測可能性を有する規定を検討する必要があるのではないか。
  • 立法政策として仮に法人帰属の制度を採用する場合には、法人が発明者に対して報酬あるいは相当の処遇を付与することに関する規定、及び、報酬を定める際の従業者との協議に関する規定についても、検討する必要があるのではないか。その場合、少なくとも補償金額の算定基準あるいは相当な処遇の内容は規則事項とするか、ガイドラインにより指針を示す必要があるのではないか。
  • ドイツには対価の算定に関する詳細なガイドラインがあるが、ドイツにおいても紛争の解決に長期間を要するケースがあり、単にガイドラインを作れば対価に係る訴訟の問題が解決するわけではないのではないか。
  • 労働の成果物は使用者に帰属するという考え方や、特許法の目的である発明の奨励・産業の振興といった観点を考慮すると、職務発明に係る権利の帰属がどうあるべきかについて、立法政策の観点から検討すべきではないか。
  • 労働者への報酬が十分か否かという点や企業が終身雇用の安定性というリスクを負っている点も考慮して対価を算出するという考え方について、検討してもよいのではないか。
  • 法人帰属の考え方として、発明者が発明者として尊重されること自体は全く否定しておらず、あくまで、従業員が生み出した成果(職務発明に係る権利)を企業は自由に使いたいということであって、その成果が素晴らしいものであれば、企業は発明者に対して適切な処遇を当然行うと思われる。
  • 従業者が優れた職務発明を生み出し、それにより企業が多額の利益を得た場合に、現行特許法第35条では発明者にのみ対価請求権が与えられることから、発明者以外の貢献した従業者との格差が生じるとの意見があるが、制度的な問題として、特許法35条の規定の在り方を検討することで解決するのはあくまで特許法の問題であり、従業者の格差の問題については、たとえば企業経営の在り方等、特許法とは別の問題として扱うべきではないか。

6. 今後のスケジュール

引き続き、職務発明制度について委員から報告の予定。

※平成25年度産業財産権制度問題調査研究「企業等における特許法第35条の制度運用に係る課題及びその解決方法に関する調査研究」

[更新日 2013年11月8日]

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