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第8回委員会 概要

職務発明制度に関する調査研究委員会

第8回委員会 議事概要

1. 日時

平成25年10月28日(金曜日)13時00分から15時00分

2. 場所

特許庁16階 特別会議室

3. 委員長

後藤晃 政策研究大学院大学教授

4. 議題

  • (1)内閣官房知的財産戦略推進事務局からの報告
  • (2)委員からの報告

5. 議事概要

議題(1)

山本一太知的財産戦略担当大臣のイニシアティブによる「イノベーション推進のための知財政策に関するワーキンググループ」における議論において、職務発明制度の見直す場合には、「1.産業界が発明のインセンティブ確保にしっかり取り組むことを前提として初めて法人帰属ないし当事者の契約に任せるという制度設計が可能となること、2.大学の研究者や企業のスーパー研究者に配慮した柔軟な対応が可能となる視点も必要であること、3.研究者のインセンティブに関する基礎的なデータを収集しこれに基づく検討も必要であること」の3点が明らかになったこと、そして、「職務発明の制度設計の検討に当たっては、上記ワーキンググループでの議論を踏まえて、特許庁において、濃密かつスピーディに検討を進めていただきたい。」との大臣からの所感が報告された。

議題(2)

  • 職務発明に係る特許を受ける権利が従業者等(発明者)に原始帰属するという制度は、あくまで複数ある立法政策のうちの一つにすぎない。従業者原始帰属を当然視するのではなく、発明奨励や産業発達といった特許法の趣旨に立ち帰った本質的な議論が不可欠であり、立法政策的には、一つの可能性として、使用者への原始的帰属もあり得るのではないか。
  • 職務発明を創作した従業員Aが、勤務規則等に基づき勤務先のB社に対して当該発明に係る権利を承継しつつ、他方、第三者Cに対しても当該権利を譲渡した場合、二重譲渡の問題が発生し、特許法第34条第1項の対抗要件に基づき、先に特許出願をした者が確定的に特許を受ける権利を取得する可能性がある。これは、現行法の深刻な脆弱性と考えられるのではないか。
  • 職務発明に係る権利が従業者等(発明者)に原始帰属する現行制度では、たとえばドイツとは異なり、使用者に当該権利が最終帰属するための法的手当てがなされておらず、当該権利が使用者等に最終的に譲渡されたか否かについて争いが生じ得るため、使用者最終帰属に係る脆弱性を有していると考えられるのではないか。
  • 職務発明に係る権利の従業者原始帰属を出発点とする限り、当該権利の譲渡に係る「相当の対価」の性質は譲渡代金と考えるのが自然の流れであるから、使用者の貢献度等による減額はあるものの、対価の額が過剰なものとなりがちとなるのではないか。
  • 仮に職務発明に係る権利を使用者原始帰属とした場合の法制としては、外国の法制度を参考に、例えば、理念型的スイス型(法人帰属で、かつ、法定の相当対価請求権無し)、理念型的英国型(法人帰属で、かつ、顕著な(アウトスタンディング)利益に係る場合に限り法定の相当対価請求権あり)、新日本型(法人帰属で、かつ、法定の相当対価請求権はないものの各企業等に「発明報奨規則」(仮称)の制定を法的に義務付け)など、幾つかの選択肢が可能性として考えられるのではないか。
  • 職務発明に係る権利の二重譲渡の問題については、現行法下においても、背信的悪意者の理論で基本的には十分解決可能であり、特段問題はないのではないか。
  • 職務発明に係る権利を従業者原始帰属とするか使用者原始帰属とするかについては慎重に検討することを前提に、仮に使用者原始帰属について考える場合、本日の委員会で例示された幾つかのオプションの一つである、いわゆる新日本型は、発明報奨規則(仮称)の制定を法的に義務付けるものであり、労働法の立場から見ると、労働法における賃金及び人事考課の規律を、特許法の政策として強化するものとして、合理的な制度と思われる。ただし、法的な相当対価請求権が無いにもかかわらず、発明報奨規則(仮称)を法的に義務付けることを正当化できるかについて、検討が必要ではないか。
  • 使用者原始帰属の場合の選択肢の一つとして、法定の対価請求権を残しつつ、発明報奨規則(仮称)の制定を義務付けるということも考えられるのではないか。この場合、例えば、まず行政が対価の決定に関する手続的・実体的ガイドラインを策定し、裁判所は、各企業等が制定した発明報奨規則(仮称)が、そのガイドラインに適合しているかどうか、及び、対価の額の決定が当該企業の規則に基づいて行われたかどうかのみを審査するという仕組みにすることで、対価の予測不可能性の問題や裁判所の過剰な裁量的判断の問題を予防できるのではないか。
  • 本日の委員会で指摘された、職務発明に係る権利の従業者原始帰属に関する各問題(二重譲渡問題、使用者最終帰属問題、対価額過剰問題)を、別の形で解決できるのであれば、当該権利の法人原始帰属の制度にこだわらなくても良いのではないか。
  • 研究開発に投資をする企業の立場から二重譲渡の問題を考えた場合、発明が従業者の頭の中にある状態では、企業に残るかそれとも外部に出てその発明を活かした仕事をするかという選択肢があることを考えると、従業者(発明者)原始帰属を採用する現行の職務発明制度は脆弱性を有しているのではないか。
  • 研究者に対するインセンティヴの在り方については、金銭に限らず、社内表彰や研究所の設置など、幅広い形で様々な工夫が可能ではないか。
  • 企業の実務家としての現場の感触として、日本でも、オリンパス事件まではおそらくスイス型に近い運用であり、対価については特段気にしていなかったが、それでもイノベーションが生まれて世界に追い付いてきた。法定の対価請求権を無くしたとしてもイノベーションは出てくるのではないか。

6. 今後のスケジュール

引き続き、職務発明制度について委員から報告の予定。

※平成25年度産業財産権制度問題調査研究「企業等における特許法第35条の制度運用に係る課題及びその解決方法に関する調査研究」

[更新日 2013年12月10日]

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