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第9回委員会 概要

職務発明制度に関する調査研究委員会

第9回委員会 議事概要

1. 日時

平成25年11月11日(月曜日)15時00分から17時00分

2. 場所

特許庁16階 特別会議室

3. 委員長

後藤晃 政策研究大学院大学教授

4. 議題

  • (1)海外情報拠点調査結果概要の報告(事務局)
  • (2)委員からの報告

5. 議事概要

議題(1)

海外8か国・地域(米国、イギリス、スイス、ドイツ、フランス、中国、台湾、韓国)を調査対象国として、それぞれ選定した海外情報拠点(海外法律事務所)に対し、職務発明制度とその運用に関する調査を依頼した。今回の委員会では、海外情報拠点から回答が既に得られている5か国・地域(イギリス、スイス、中国、台湾、韓国)について、その概要報告を行った。なお、スイスの職種別賃金構造データの入手など、委員から依頼のあった内容等に基づき、追加調査を行う予定である。

議題(2)

  • 現行法下における相当対価請求訴訟は、裁判所や当事者に過重な訴訟審理・対応負担を課し、かつ、予測可能性欠如と納得感欠如の帰結を当事者に強いるものとなっているのではないか。
  • 職務発明に係る権利の原始帰属先を、従業者等とするかそれとも使用者等とするかは、高度の立法政策と考えられる。また、これらの制度にはいくつかのオプションが考えられるところであり、例えば、使用者原始帰属を原則としつつ、当事者の反対合意がある場合には例外的に従業者原始帰属を肯定するような、両者の中間的な制度も考えられるのではないか。このような特則は、大学等において必要とされる可能性がある。
  • 使用者帰属の制度のうち、例えば報奨規則の制定を使用者等に義務付ける制度について考えた場合、その具体的な内容として様々なパターンが考えられるが、制定が義務付けられる報奨規則については、協議の状況等の手続要件(現行特許法第35条第4項に相当するもの)等を満たすこととする必要があるのではないか。そして、この具体的内容について検討する場合は、日本の国情に合った制度設計として、フリーランサーやスーパー研究者を中心とするよりも、通常のサラリーマン研究者を中心にしたルール作りを考えるべきではないか。
  • 従業者帰属の制度を採った場合に生じる二重譲渡問題について、特許法第34条第1項の改正で足りるのではないかという指摘については、従業者帰属の制度についてはこの他にも、特許を受ける権利の使用者への最終的帰属が脆弱であるという問題や、特許を受ける権利の譲渡代金であることが基調とされているために相当対価額が過剰になっているという問題があって、これらはまとめて解決すべきであるから、二重譲渡問題だけ切り出して解決することは妥当とは言えないのではないか。
  • 対価の額について裁判官の考え方にある程度の幅があるというのは事実であるが、手続的な合理性が担保されれば、勤務規則等に従って定めた対価が「相当の対価」として認められるというのが平成16年改正後の特許法第35条の趣旨であるから、その点からいえば、むしろ問題なのは、特許法第35条第4項に係る手続合理性担保の要件と考えられる。現行法第4項の規定の仕方では予測可能性の点で問題というのであれば、推定規定の形にするなど、第4項自体を改善することを考えれば足りるのではないか。
  • 使用者帰属を前提に、報奨規則の制定を使用者等に義務付ける制度を考える場合、従業者に報奨請求権を認めることを前提とする制度も考えられるのではないか。その際、手続合理性の担保に係る予測可能性を高めるためには、現行特許法第35条第4項に係る手続要件及び第5項に係る実体要件を具体化するガイドラインを策定することが有意義ではないか。また、ガイドライン所定の手続を履行して決定された報奨については、相当性ないし合理性を推定する規定を置くという方法も考えられるのではないか。
  • 発明者帰属から法人帰属に制度を変更すること自体が直ちに憲法上の問題が生じるわけではないだろうが、発明者が職務発明に係る権利や報酬、すなわち自分の行ったことに対する利益を一切取得できないように見える制度が制定された場合には、憲法問題が生じてしまう可能性があるため、その点について検討する必要があるのではないか。
  • 二重譲渡問題に対応する必要があると考えるとしても、職務発明については、発明者が従業者等であれば職務発明に係る権利が使用者等に移っていると推測できることや、あらゆる職務発明について必ずしも特許出願するものでもないといった特質があることに鑑みて、特許法第34条の改正を考えるということもあり得る選択肢ではないか。
  • 法の趣旨や目的にかなった制度設計をする際、使用者等へのインセンティブだけではなく、発明者である従業者等へのインセンティブがバランスよく保たれるとともに、労働の対価として労働者に公正な報酬や利益が与えることかがきちんと担保されていることが重要ではないか。
  • スイスでは、法定の相当対価請求権は無いものの、固定給が高い可能性があるという報告があった。能力給を低く抑えることで従業者間の平等感を維持してきた日本の製造業に、スイスのような制度が本当に通用するのか、また、その場合に現場ではどのように制度が運用されるのか、非常に心配である。

6. 今後のスケジュール

引き続き、職務発明制度の課題を議論する予定。

※平成25年度産業財産権制度問題調査研究「企業等における特許法第35条の制度運用に係る課題及びその解決方法に関する調査研究」

[更新日 2013年12月24日]

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