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第13回委員会 概要

職務発明制度に関する調査研究委員会

第13回委員会 議事概要

1. 日時

平成26年1月17日(金曜日)15時00分から17時00分

2. 場所

特許庁16階 特別会議室

3. 委員長

後藤晃 政策研究大学院大学教授

4. 議題

  • (1)委員会の議論を踏まえた企業向けアンケート結果のクロス集計結果の報告
  • (2)研究者向けアンケート調査集計結果(未定稿)の報告

5. 議事概要

議題(1)

  • 前回(第12回)の委員会での議論を踏まえて企業向けアンケート結果のクロス集計を行い、その結果を報告した。
  • 「職務発明に関する運用上の問題点の有無」における企業規模別のクロス集計結果について、大企業が考えている問題点と中小企業が考えている問題点とが必ずしも同じとは限らないことに注意すべきではないか。
  • 発明者に職務発明の実績に応じた報奨金(実績報奨金)を支払う理由について、項目毎にそれぞれ重要度を回答者が選択する質問では、「特許法第35条に定められているから」が重要との回答(重要度4又は5を選択)が約78.9%、「発明者が報奨を受けるのは当然だから」が重要との回答(重要度4又は5を選択)が約30.9%であった。この結果を見ると、特許法第35条が無くなっても報奨金を発明者に払いたいと考える企業は少ないのではないか。
  • 発明者に実績報奨金を支払う理由について、「特許法第35条に定められているから」が重要であると回答した企業の中には、自発的に報奨金を支払っている会社とそうでない会社の両方が含まれているので、その差を利用して特許法35条の効果を分析できるのではないか。
  • 発明者に実績報奨金を支払う理由について、「発明奨励のため」が非常に重要との回答(重要度5を選択)が36.4%、「発明者が報奨を受けるのは当然だから」が非常に重要との回答(重要度5を選択)が13.7%であることからすれば、仮に特許法第35条が無くなっても、発明者に報奨金を支払続ける企業はそれなりにいるのではないか。
  • 35条が法的に実績報奨を強制しているわけではないのに、「対価」の一部として実績報奨がそれを埋めるべきものだと思って支払っているという企業行動が顕れており、重要な問題なのではないか。
  • 仮に特許法第35条が無くなったら、発明者に対して企業は何も支払わなくなるのではないかとの議論があるが、特許法第35条を仮に無くしたとしても、企業が発明者に対して何も処遇しないということには必ずしも結びつかないのではないか。
  • 「職務発明に関する運用上の問題の有無」における出願件数別のクロス集計結果を見ると、年平均50件以上出願している企業においては、問題があると回答した企業が7から8割程度を占めることを示しているのではないか。
  • 現行法に問題があるとすればどこに問題があるのか、そして、どういう方法によってその問題が解決するのかといった点についての分析の基礎となるような資料は、今回のアンケート結果からすぐには出てこないのではないだろうか。
  • 実績報奨金を支払う理由について、「特許法第35条に定められているから」が重要との回答(重要度4又は5を選択)が約78.9%と比較的多い結果となっているが、当方にて労働者側に行ったヒアリングの実感も同じである。ヒアリングでは、特許法第35条の規定があるからこそ各社は実績報奨金を支払っているのであって、法律の根拠が無くなると、実績報奨金の支払が受けられなくなるのではないかとの心配をする声を聞いた。
  • 仮に特許法第35条が無くなったとしても、発明者に対してきちんと報奨をしなければ企業は技術者を維持することはできないということになるので、その点は誤解がないようにお願いしたい。

議題(2)

  • 研究者向けアンケート調査結果(未定稿)の概要を報告した。アンケート送付先は、国内研究者12,640者、海外企業に移った研究者1,817者、及び、海外企業で働く海外在住研究者902者であり、回答数はそれぞれ3,280者、230者、及び、46者であった。全体の回答率は約23.2%である。
  • 国内研究者に関し、組織に大きな利益をもたらす顕著(アウトスタンディング)な発明をした場合に、特別な報奨が必要と考えているとの回答は8割近くの割合であったが、特別な報奨がある代わりに、成果を出せなかったときには何らかのペナルティが課せられるという条件を加えて同じ質問をすれば、異なる結果になった可能性があるのではないだろうか。
  • 国内研究者に関し、所属する機関を移るかどうかを検討するに当たってどのような点を重視するかという質問(三つ以内で選択可能)について、「金銭的な処遇(給与、年収)」を重視との回答が69.4%である一方、「職務発明に対する金銭的な報奨」が5.5%、「職務発明に対する非金銭的な報奨」が0.5%といずれも低い結果となっている。職務発明に対する報奨は、研究者が所属機関を移るかどうかを検討するにあたり、それほど重視されていないと考えられるのではないか。
  • 国内研究者に関し、仮に職務発明についての権利をはじめから企業等のものとした場合の職務発明に対する報奨の在り方について、「職務発明についての報奨は各企業等の自由に委ねるべきであり、金銭的な報奨を法的に強制する必要はない」との回答の割合が48.0%であり、「職務発明についての金銭的な報奨を法的に義務付けるべき」との回答の割合である39.4%より若干多い結果となっている。研究者にとって職務発明に係る報奨の法的義務付けについては、意外とそれほど重視されていないのかもしれない。
  • 年収が3,000万円以上の研究者が回答者に占める比率は、国内研究者向けアンケート調査では約0.3%、海外企業研究者向けアンケート調査では約2.0%であった。収入面でトップクラスにあるこれらの研究者が、職務発明の報奨の在り方についてどのように考えているのかについて把握することは、参考になるかもしれない。
  • 研究開発を行う上で何が重要かを問う質問で、「金銭的な処遇(給与、年収)」よりも、「所属組織の業績の向上」、「知的好奇心を満たす仕事に従事することによる満足感」、「現実的な問題を解決したいと思う願望」といった、いわば研究者としての本望が重要であるとの回答も多いことに注目すべきではないだろうか。
  • 研究者向けアンケート結果から、研究者にとって、知的好奇心を満たす仕事に従事することによる満足感や現実的な問題を解決したいと思う願望といった研究者としての本望も大事である一方、金銭的な処遇や報奨金もあるに越したことはないということが把握でき、研究者の意見として正直なところがアンケート結果に表れているのではないだろうか。

6. 今後のスケジュール

報告書案について議論する予定。

※平成25年度産業財産権制度問題調査研究「企業等における特許法第35条の制度運用に係る課題及びその解決方法に関する調査研究」

[更新日 2014年2月27日]

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