1.日時・場所
日時:平成25年9月19日(木曜日) 14時30分から16時30分
場所:特許庁庁舎16階 特別会議室
2.出席者
野間口分科会長、飯田委員、井上委員、城山氏(市毛委員代理)、河野委員、小島委員、櫻井委員、高倉委員、中澤氏(長澤委員代理)、野坂委員、古谷委員、南委員、八木委員
3.審議内容
弁理士制度に関する各団体等の意見について
4.委員からの意見
基礎的な能力の担保
- PCTやマドプロの出願が増えており、論文式試験については条約を単独の試験科目として欲しい。グローバル活動に対応する能力を担保する必要がある。他方、語学力は外国代理人とのやり取りで培われる。
- 合格者をいかに教育するかが重要で、若い弁理士に活躍の機会を設ける必要もあるのではないか。
- 大学が弁理士に頼んで特許を取得後、企業から弱い権利になってしまっていると指摘されることがある。これは弁理士が産業構造をよく理解せずに出願しているため。産業構造について想像力を働かせることのできる研修にする、OJTについては事務所だけでなく企業の知財部でも行うなどの工夫が必要。
- 明細書の書き方が訴訟での勝敗に影響する。優れた発明なのに特許の取り方を間違えている特許を時折見かける。例えば業界での構造や訴訟制度をにらんだ視点等が入れば強い明細書になる。中小企業や素人が強い特許を取得できるかは弁理士の能力に依存する。そのような能力を担保するための多角的な研修が期待される。
- 企業のグローバルな事業展開等、知財を取り巻く環境変化に伴い、弁理士には足腰を鍛えた知財力が求められる。
- 明細書作成については、特許要件をクリアするだけでなく、使う場面とリンクした明細書を書くための広い視野を持つことが期待される。
多様・高度な実務能力の獲得
- 外国制度の知識と実務経験、外国代理人と日本のクライアントとの橋渡しのため、高いコミュニケーション能力が必要。
- 技術内容やクライアントの事業戦略を踏まえて効率的な理論構成を行い、相手方に即座に応酬できるような人材を育成するため、リアルで臨場感のある研修が必要。
- 継続研修は座学やeラーニングが多く、「リアル」な研修でない。今般、弁理士会が弁理士育成塾等によりOJTに注力することは重要。一人事務所が多くOJTの機会が得にくい中、弁理士会が組織的な資質向上の手段を考えることが喫緊の課題。
- 中小企業の経営者にとっては、他の重要事項に比べ、知的財産の優先度は低い。したがって多くの経営者は、知的財産についての知識経験に乏しい。弁理士には、このような現状認識に基づいた知財マネジメントが望まれる。
- 大学と中小企業とが組む場合は初心者同士となる。知財マネジメント能力についても研修制度で強化することが必要。
- 中小企業の海外展開に対応した弁理士が必要。そのために現行制度とは別の国際面に特化した弁理士試験制度をつくるのも一案。
- グローバルネットワーク時代の企業活動を支えるため、(1)知的財産の総合的・戦略的なハンドリング、(2)海外の知財についての精通、(3)中小・ベンチャー企業支援事業の有効活用、(4)技術者・経営者のための知財マネジメント、(5)現地代理人とのネットワーク、これらを強化すべき。
中小企業等の支援に資するきめ細かなサービス
- 日弁連は、弁護士法の規定に加えて、弁護士職務基本規程において共同事務所及び弁護士法人内における複数の弁護士間等に関する自主ルールを定めている。このような施策がとられぬまま利益相反の規制が緩和される点を懸念する。弁護士業務を行っている中で、クライアントが弁護士に求める利益相反行為のレベルは高くなっていると感じるが、そのような中で緩和一方の改正をするのは逆行している。
- イノベーション創出の観点から中小企業における知財マネジメント支援が重要だが、その知財活動が低調なのは気になる。経営者の認識が低いなら、特許庁、INPIT、弁理士会などの公的機関が認識を高める施策を行うべき。認識があるが人的な余裕がないなら、社外弁理士を顧問弁理士として利用する等、活用方法の多様化が必要。
- 大手特許事務所の本音としては、知財部のある大企業のほうが付き合い易いと聞く。一方で中小企業からは、料金が高い、仕組みが分からない等の意見がある。このミスマッチをどう解消するかが大きな課題。一つの手段として、料金の仕組みを明確化し、透明性を高めること、資金繰りを考慮して支払い方法を多様化すること、弁理士事務所にとって安心して引き受けられる仕組みの構築が考えられる。
- 中小企業や大学の多様なニーズに応えるためには、弁理士には総合病院のようなワンストップサービスが求められる。その際、税理士、中小企業診断士、行政書士等の他士業との補完的な協力もあり得る。それを妨げているものがあればこれを除去すべき。そのような観点からも調査、審議してもらいたい。
- 企業からすると、法律全般については弁護士、技術的中身の部分で弁理士と、弁護士と弁理士が連携して戦ってくれるとありがたい。
- 中小・ベンチャー企業への対応として、総合的戦略的な知財管理について同じ弁理士が対応できるよう、業務範囲の見直しが必要。
- 業務範囲拡大については、(1)弁理士制度は当事者対立構造を前提とした職業倫理、懲戒制度等が確立、機能しているか疑問であること、(2)依頼者ニーズがなく、今後依頼したいとのニーズも高くないことから、反対する。
- 相談業務には広い知識経験が必要。場面により、法的整理になった場合どうなるか、勝訴しても相手が無資力だったらどうするか、事業譲渡されてしまったらどうするか、等の点を総合的に判断して、さらに専門的な助言が必要な場合は適切な専門家に振り分ける必要が出てくるが、そのような役割は弁理士に期待されていない。
- 特定不正競争はいわば虫食い状態であるといえ、ユーザーにとって分かりづらい。不正競争防止法はその全般が試験科目になっている。また、すでに弁理士は輸入差止めの代理業務等が可能となっている。
- 特定不正競争が虫食いである、と主張するのは、工業所有権に密接に関連する部分は弁理士業務とすべきとされた改正経緯やその立法事実からすると本末転倒。また、不正競争防止法の関連事件には知的財産以外の法律が密接に絡むことが多い。
弁理士に対するアクセスの改善
- 弁理士ナビは、弁理士側から情報発信する手段としても重要。よりユーザーが使いやすいものにして欲しい。
- 弁理士ナビの表示項目として、大学等における専門分野、業務実績等の登録を表示項目とし、中小企業へのコンサルティング経験も公開されているとありがたい。
制度への信頼の一層の向上
- 弁理士が国家資格として知財を担う中核的存在であることを弁理士法に明記し、国民の共通認識とすることで、弁理士がその社会的役割を果たす原動力になる。
- 弁理士が中小企業支援を積極化し、その元気を引き出す牽引力となるという意識を共有するため、弁理士の使命が不可欠。
- 中小企業からの受任の際、弁理士には減免制度や権利取得にかかる総額等についての説明義務を課すべき。
弁理士のサービスの安定性確保
- 弁理士が一人だけの個人事務所にあっては、個人資産と事務所資産とが混在している状態であり、事務所の継続の簡易化、統廃合の容易化等の理由から、一人法人制度を導入すべきと考えている。
- 秘匿特権について、日弁連は賛否を明らかにしていないが、秘匿特権は民事訴訟のディスカバリーの問題にとどまらない。刑事手続及び独占禁止法や証券取引に関する捜査の際、弁護士との交信の秘密を守れるかという問題になる。このような場面で、少なくとも実務上は弁護士の秘匿特権も機能していない。
その他
- 弁理士というのは依頼者の依頼を受けて仕事をするはずだが、ユーザー側の弁理士・弁理士制度への期待と弁理士会側の視点に、齟齬があるように感じた。
- 産業界のニーズを細かく分析し、現行法の枠内で対応が可能であり、今すぐ対処できる問題と、法改正が必要なものとを区別して議論を深めていく必要がある。
[更新日 2013年10月18日]
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