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第3回弁理士制度小委員会 議事要旨

1.日時・場所

日時:平成25年10月23日(水曜日) 15時00分から16時50分

場所:特許庁庁舎9階 庁議室

2.出席者

相澤委員長、蘆立委員、飯田委員、井上委員、市毛委員、河野委員、小島委員、高倉委員、長澤委員、野坂委員、古谷委員、南委員、八木委員

3.審議内容

  • (1)弁理士制度見直しの方向性について(総論整理)
  • (2)弁理士の社会的使命について
  • (3)特許事務所・特許業務法人の在り方について(1)
  • (4)弁理士業務の充実について
  • (5)秘匿特権に関する取組の推進について

4.委員からの意見

弁理士法見直しの方向性

  • 特段の意見はなく、検討の方向性について了承された。

弁理士への期待に対する日本弁理士会の考え方

  • 第一に、しっかりしたグローバル対応のため、試験制度見直しと研修制度見直しが必須の二本の柱になる。前者については条約を論文科目にすることが必要。後者については条約、外国法、諸外国との交流などの点で強化する。「国際弁理士」資格については、自己研鑽による対応で御了解いただけると考える。
  • 第二に、地域・中小企業への対応については、中小企業が知的財産を確保しやすい環境整備に尽力したい。そのために弁理士会の行う各種支援事業の更なる拡充を図るとともに、国・自治体による各種支援策の強化を働きかけたい。また、弁理士ナビの情報も充実させる。
  • 第三に、実務能力の向上については、明細書作成などの実践的能力の向上のため、OJTの機会を拡充する。弁理士が企業、大学、研究機関等で知財戦略を学ぶ機会の増加を図るため、協力をお願いしたい。
  • 第四に、弁理士の活動範囲については、ユーザーの利便性向上のために行っていただきたい。現状で、弁護士とは、ADRや特定侵害訴訟の場面において協力する関係にあるが、これからも対立でなく協働する関係でいきたい。
  • 第五に、弁理士の使命について。今指摘した全てのことは弁理士の使命につながる。弁理士が一丸となってこれらを実現するには、弁理士が現在以上に役割を認識し、その認識を共有する必要がある。そのための宣言が使命条項の新設である。

弁理士の社会的使命

  • 弁理士法には「使命及び職責に鑑み~しなければならない」(第56条第2項)とある。しかし、職責を定める規定はあるが(第3条)、使命についての規定がなく、片手落ちな状況。一万人超の弁理士が、グローバル対応、中小企業支援といった国の方向性に前向きになるためには、使命感が不可欠。5から10年先の知的財産制度を担う一人として弁理士制度を考えてもらいたい。
  • 弁護士の使命は、基本的人権の尊重と社会正義の実現を重要な要素として成り立っている。権力に服しない正しい行動をとるため、完全な自治が認められている。そのための研鑽なども責任を持って行っている。弁理士についても明確化された使命に基づき研鑽に励むならよいこと。ただし、弁護士は知財についても法律事務を専権としている。弁理士の固有の業務について使命としてもらいたい。
  • 大半の弁護士や税理士は職責を全うしている。しかし、使命条項がありながら、これら士業には不祥事も多い。したがって、使命条項だけでは十分でない。これに対し、弁理士については、今のところ世間を騒がすような不祥事はないので、弁理士は頑張っていると評価できるのではないか。使命の導入に異存はないが、使命条項が入ったからといって一万人の弁理士が一つに纏まるわけではないことに留意が必要。最も重要なのは弁理士各自の自覚であり、弁理士会はこの期待に添うように活動することを期待する。
  • 使命の導入に賛成。弁理士の役割は社会の認知が十分ではないが、イノベーションを支える重要な職業。そのことを弁理士が自覚し、これを社会に発信するものとして使命は重要。
  • 使命の導入に賛成。当初、あってもなくてもよいと考えていたが、今の時期に入れることが重要と考える。高い使命を掲げるのであれば、それを実現する具体的手段として、弁理士会の自治に基づく処分スキーム、中小企業や地方における苦情処理を整備する重要性を指摘したい。
  • クライアントとしては、弁理士のモチベーションが向上するなら反対する理由はない。ただし、他の条項に影響があるなら議論が必要。使命についてこのメンバーでこれ以上議論するのは時間がもったいない。問題のないワーディングを検討してもらえばそれでよい。

特許事務所・特許業務法人の在り方(1)

  • 弁護士では、情報の遮断措置を事務所内で確立することが前提条件。これは法人だけでなく、事務所であっても、依頼者との信頼関係のための当然の前提となっている。法律事務所の場合、過去に所属した事務所でも情報遮断措置が構築されていて、自分が担当していない事件の情報にはアクセスできない、といったクライアントに対する守秘義務遵守が徹底されている。過去に所属した事務所における情報管理が徹底していない現状があるなら、その点を正すのが見直しの前提条件となる。
  • どちらかというとポジティブ。近年、IT技術の発展に伴い、事件を起こす相手が、ビジネス上は競合でなくても知的財産上競合することが多々ある。利益相反による制約が課されると、クライアント側からは弁理士選択についての裁量の幅が狭くなりかねない。守秘義務徹底やチャイニーズ・ウォールの構築が前提であれば、事務局案に賛成。
  • 弁理士が活躍しやすい環境の整備は必要であるが、事務所の中で情報の遮断がされているかどうかの懸念が払拭しない限り、前に進めない。したがって事務局の対応の方向性は妥当と考える。
  • 特許事務所では高度な技術情報を取り扱う。そのためコンフリクトや情報漏えいには当然気を遣っている。チャイニーズ・ウォール等の明確化については弁理士会の指針がある。私も経営者として厳しく規律を行っている。ただ、現状で十分であるということではなく、更なる改善改革をしたいが、前に進めて欲しい。
  • ルールを作ればよいというわけではなく、それが遵守されている実態が伴うのであれば、了解する。
  • 事務所の集約化は重要であり、そこに軸足を置いて議論すべき。権利化からエンフォースメントまで含めたワンストップサービスが中小企業には必要との議論があるが、全てをこなせる一人のスーパーマンのような弁理士を望むことは不可能。そのため、総合病院型の事務所が必要であり、方向性としてはこれで行くしかない。大体の弁理士は意識が高いが、不十分な層があるかもしれないので、弁理士会において徹底するようお願いしたい。改正については積極的にやって欲しい。

弁理士業務の充実

  • 発明発掘に関する相談業務の明確化については、社会的ニーズも高く、賛成。しかし、知的財産全般の相談と特定不正競争の拡大については賛成し難い。日弁連において中小企業等から弁護士へのアクセスを改善するための調査を行ったところ、アクセスを妨げる原因は、精神的な敷居が高い、料金体系が不明確、料金が高い、どこに行ったらいいのか分からない、ということであった。そこで、中小企業支援センターを設立。相談者が統一の相談窓口であるひまわりほっとダイアルに掛けると、各地域の単位会に自動的に転送され、そこで相談できる仕組み。当然、知的財産に関する相談も受けている。52単位会中42会が初回相談を無料としている。また、日弁連は任意団体として弁護士知財ネットを立ち上げている。このように、弁護士も中小企業からのアクセス改善に努力している。弁理士とも連携体制を強めたい。弁理士活動が制約されているとのことだが、連携を推進することと業務範囲の拡大とはロジカルに関連しない。業務拡大でなく、連携強化の方向でこの問題に対処して欲しい。
  • 知的財産全般の相談に関しては、弁理士試験には不正競争防止法・著作権法科目が存在し、継続研修では種苗法も実施している。知財協に対するアンケート結果については、知財協全体を対象としているので、相談をしたことがないという回答が多いのが当然。民事訴訟法については、弁理士試験論文試験の選択科目であり、付記弁理士のための受験科目にもなっている。ワンストップサービスの実現のため、弁理士も相談ができることが望ましい。
  • 方向性については賛成。発明発掘の相談は、専権業務である4条1項の「に関する」とあるので、出願に至る前の相談も読めると考えていた。そうでないなら、明確化することには賛成。ただ、標榜業務としていいのかは要検討。企業戦略の重点は、特許を取ることから、研究開発し、権利を保護活用することに移っている。それを支える弁理士の役割も知的財産創造サイクル全体への関与になる。この点を明確にするため、出願前の関与を含めることには賛成。
  • 確かに、中小ベンチャー支援のニーズは高いと思われるが、あまりこの観点に拘る必要はない。アンケート結果において「発明、意匠の発掘や創出に関する相談」については大企業もニーズが高い。つまり、弁理士が知的財産創造サイクル全般に関わることへのニーズは、企業規模を問わず高いと考えられる。資料1における方向性との対応関係を硬直化しないように、大きな3つの課題全体に対応する位置付けとしたほうが、総合的で意味のある課題検討になると思う。資料1の整理の仕方についても検討したほうがよい。
  • 発明発掘の相談については既に弁理士に行っている。この点は弁理士業務に含まれていると解釈していた。逆に明文化することで、弁理士以外の者ができなくなるならNG。中小企業診断士や、弁護士にも知見がある人がいる。専権業務としないなら反対する理由はないが、そうすると外国関連業務や先行技術調査も書かなければならないのではないか。
  • 知財全般の相談について。知財関連業務は複雑化している。まず業界の状況や、各国における知財法以外の法制度を含めたトレンドを知り、自他の技術を深く知らなければならない。その上で戦略を作る。その次の段階としてどのような知財権をとるかを検討する。これらのことを中小企業は全て行わねばならず、なかなか単独ではできない。弁護士には、少なくとも技術に深く精通した人がいないことを考えると、技術に関係する部分は弁理士の業務範囲を広げてもよいと思う。
  • 発明発掘の相談を専権で読めるとするのは良くない。社内に発明発掘のできる部隊がない企業や大学では、弁理士がその業務を積極的に行えばいい知財が生まれる。産業競争力を高める上で技術が基軸になっていく中で、弁理士と深い付き合いをするほど多くのことを相談したくなるが、限られた時間とコストで、この先は弁理士以外に頼まなければならない、というのは非常に大変。弁理士にいろんなことを頼める環境に障害があるなら排除すべき。なお、アンケートについて、知財部のない企業では、不正競争防止法についての知識がそもそもないのが一般的。
  • 発明発掘と事業戦略とは異なる。事業戦略には、特許についての知識だけでなく、ビジネスや産業構造に関する理解が必要。したがって、これを弁理士業務に含めるなら、研修等でその素養を身につける努力をしなければ難しい。実際、大学のなかで弁理士に相談すると、必ずしも適切な回答がもらえないことがある。この点も併せて検討していただきたい。
  • 基本的に事務局案に賛成。発明発掘については、出願を業務とする弁理士が行う業務としてふさわしい。ただし、これを専権業務とすることには賛同しかねる。一方、知的財産全般の相談は弁理士の業務としては広すぎ、他士業の業務範囲と衝突する。きちんと切り分け、弁護士をはじめとする他の士業と仲良く連携してもらいたい。特定不正競争については、弁護士業務を分析して何が適切かを検討して切り分けてきた経緯がある。改めて検討したところ弁理士にふさわしい業務があるというなら別だが、断片的だから拡大するというのは理屈にならない。
  • 事務局案に賛成。しかし知的財産全般の相談については、著作権が含まれることを考えると無理がある。確かに、著作権法は弁理士試験や研修に含まれているが、業界としてはかなり異なっている。弁理士が知的財産全般の相談をできるとなると、相談者としては、弁理士への期待が大きくなりすぎてしまう。したがって、この点についてはなお検討が必要。
  • 資格制度とは何か。何のための資格で、資格者として職責を全うするためどのような制度的担保があるのかを考えるべき。ニーズがあるかどうかという議論もあるだろうが、それも10%程度と高くなく、士業間の連携で対応が可能。むしろ、弁理士制度は出願業務を主要業務として資格制度が成り立っており、能力担保措置もそれを前提に成立している。当事者対立構造を前提とする紛争解決業務とは、資格制度の立て付けが根本的に異なる。業界の線引きではなく、ユーザーに対する責任が果たされるかどうか。実際、他士業者が弁護士業務について先走ってしまい、エンフォースメントに関する証拠収集等において適切なアドバイスを受けられなかったために不利益を被ったユーザーがかなり存在する。その時点で弁護士に相談しても手遅れ。単独ですべてを受けるのではなく、相談の早い段階から弁護士と連携することが、ユーザーの利益となる。
  • 弁理士と弁護士との業務範囲をめぐる対立は、ユーザー目線で考えるべき。知的財産全般の相談については、それぞれの士業が得意分野を出しながら他士業と連携することが重要。弁理士には足下をしっかり固めてもらい、できる範囲で日本の知的財産を支えるインフラとして活躍してもらいたい。
  • 発明発掘の相談について異論はない。知的財産全般の相談については、士業間の微妙な問題があるので、何とも言い難いが、ユーザーにとっていい方向での解決ができればよい。
  • 知的財産全般の相談に関しては、依頼者としてはどの法律かを意識せずに相談することが多い。入り口で断られるのは良くないと思うが、相談を受けた際、弁理士の中で解決すべき問題なのか、他の専門家に持って行くのか、という2つの方向があり、後者の方向性が難しいということであれば、業務範囲拡大も説得力が出るのではないか。

秘匿特権

  • 自分の知る限り、WIPOその他での議論は膠着状態にある。そのような中で、我が国企業が米国訴訟に巻き込まれる状況にあるなら、国益という観点から見逃せない問題だと思っている。弁理士法でくくって、議論を進めてもらいたい。
  • 我が国企業は米国のディスカバリーに相当なコストをかけ、苦労している現状。特許の技術的な内容で、パテントクリアランスを行い、クレームの解釈を行い、特許に無効理由の有無を検討するなどやっているが、この文献は特許に有害だ、といった相談に弁理士が絡むことも多いので、その関係者に秘匿特権が認められれば非常にありがたい。ただ、この場で議論すべきかは疑問。
  • ものすごく深い問題であることは確か。日本の弁護士、弁理士にも認められれば理想的。しかし、米国法の問題であることは紛れもない事実であり、法令に書いたから膠着状態を打破できるわけではない。むしろ国レベルの話し合いが効果的と考える。また、法令に書くことには反対。大企業ならまだいいが、中小企業は弁理士に頼めば全て秘匿特権が認められるとの勘違いする可能性が極めて高い。この点に知見がない人をミスリードすべきでない。

[更新日 2013年11月6日]

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