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第4回弁理士制度小委員会 議事録

開会

中山委員長

それでは、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会の第4回弁理士制度小委員会を開催いたします。
早速審議に移りたいと思います。
これまで第2回及び第3回の本委員会におきまして、すべての検討項目について一通り御議論をちょうだいいたしました。また、追加の意見がある場合には事務局へ御提出をいただくようお願いしておりまして、日本弁理士会から意見提出が出ております。これにつきましては事前に各委員にお配りしているところでございます。
これらを踏まえまして、今回と次回の2回に分けて検討項目の論点整理を行っていきたいと思います。
本日は、1弁理士試験制度の在り方について、2弁理士研修制度の在り方について、3弁理士法に規定する業務について、それぞれのテーマの論点整理と、前回、相澤委員から御提案のございました、4弁理士の懲戒制度等の在り方についても御議論いただきたいと思います。

配布資料の確認

中山委員長

それでは、まず事務局より配布資料の説明をお願いいたします。

小林弁理士室長

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
まず、議事次第。配布資料一覧が一番上にございます。
1枚めくっていただきまして、資料1でございます。「弁理士試験・研修制度の在り方について(論点整理)」でございます。参考資料をつけてございます。参考資料1-1「各士業の研修制度について」、参考資料1-2「参考条文」でございます。
それから、資料2でございます。「弁理士法に規定する業務について(論点整理)」。
続きまして、資料3でございます。「弁理士の懲戒制度等の在り方について」、こちらも参考資料をつけてございます。参考資料3-1「弁理士に係る懲戒制度と処分制度の比較」、参考資料3-2「行政庁の懲戒実績及び懲戒事由」、参考資料3-3「日本弁理士会処分実績」、参考資料3-4「日本弁理士会の処分事由」、参考資料3-5「行政庁及び士業団体による懲戒及び処分実績」、参考資料3-6「行政庁による士業の懲戒比較表」、参考資料3-7「士業団体による会員の処分比較表」、参考資料3-8「参考条文」、参考資料3-9「規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に関する中間答申」、平成18年7月31日版よりの抜粋でございます。
また、日本弁理士会より3つのテーマに関しまして意見の提出がなされておりますので、配布しております。
資料4「弁理士試験・研修制度についての意見」。
次に、資料5「外国出願関連業務についての意見」。
最後が、資料6「「特定不正競争」と弁理士業務との関係についての意見」でございます。
一番下の方にフローチャートがつけてございますが、こちらは、日本弁理士会から本日提出のあった「日本弁理士会会則等に基づく会員の処分等手続フローチャート」でございます。
以上、19点の資料を配布してございます。

中山委員長

過不足等、ございませんでしょうか。
よろしいですね。

弁理士試験制度の在り方について(論点整理)

中山委員長

それでは、早速、議事に入ります。
最初に、「弁理士試験制度の在り方について(論点整理)」の資料に基づきまして事務局から説明をお願いいたします。

稲垣秘書課長

それでは、資料1に基づきまして、資料1の1ページ目から6ページ目でございますが、弁理士試験制度の在り方について御説明をさせていただきたいと思います。
まず1ページの1でございますが、弁理士試験は、御案内のように短答式、論文式、口述式の3つの試験から構成されております。平成12年の試験制度の見直しによりまして、短答式試験で考査しております条約につきましては、単独では論文式試験には出題されないということになっております。また、同じく12年の改正によりまして、特に論文式試験の選択科目の分野でございますが、さまざまな免除に関する規定ができております。
論点でございますが、3にございますように、(1)「弁理士試験の範囲について」につきましては、2ページ目にございますように、5年前にやめました条約についての論文式試験、これを復活させることは適切か否か。
(2)から(5)までが広い意味での免除関係でございますが、知的財産専門職大学院についての試験免除、法科大学院についての試験免除、それから短答式試験合格者に対する一部試験免除、そして論文式試験における科目別の合格制度でございます。
3ページ目にまいりまして、今までの議論の整理でございます。
まず弁理士試験の範囲、すなわち条約を論文式試験に復活させるか否かにつきましては、ここにございますように、否定的な御意見と一部肯定的な御意見もございます。
それから、(2)の知的財産専門職大学院及び法科大学院に係る試験免除につきましては、ここにございますように、論文式試験の免除はやはり不適切だといったような意見が大勢を占めております。
4ページは5、対応の方向でございます。
まず(1)弁理士試験の範囲でございますが、ここにございますように、平成12年の改正時には、受験生の負担軽減の観点と、さらに条約の解釈・判断につきましては、その他の工業所有権法令の範囲内であわせて考査をするということをすればいいのではないかということで対象外とする改正をしたところでございます。
さらに、客観的なデータといたしましては、第2回の本委員会でも資料を御提示してございますけれども、データとしては現在の試験制度におけます受験者の条約に関する知識、条約の解釈・判断のレベルが旧試験として比較して低下しているという結果は出ておりません。
こういったことを総合的に勘案いたしますと、平成12年、5年前の改正時の考え方を変えるような大きな状況変化がその後生じているとは考えにくいのではないかということで、今回論文式試験に条約科目を復活させる必要性は十分であるとは言えないのではないかというふうに考えられると思います。
したがって、5ページ目にまいりますが、条約の解釈・判断につきましては、従来のとおり、工業所有権法令に係る論文試験の中であわせて考査するという現在の運用は維持しつつ、必要に応じて日本弁理士会における条約に関する研修の強化等を含めて検討していくことが必要ではないかというふうに考えられるのではないかと考えております。
次に、(2)知的財産専門職大学院についての試験免除でございますが、知的財産専門職大学院は弁理士資格制度との関係を念頭に置いて設置されたものではございませんが、その修了者につきましては、工業所有権四法を中心に、知的財産に関して相当程度の知識を有しているということが期待できるというふうに考えられます。
ただ、まだこの大学院を修了した者は現在のところおりませんので、全体的な能力レベルはまだ未知の状況でございます。今後、知的財産専門職大学院につきましては、その修了者の能力レベルを見ながら、必要に応じて弁理士試験の一部免除を検討していくということでございますが、仮に免除制度を導入する場合には、十分な能力レベルを維持していると認められる大学院のみを対象として短答式試験における工業所有権法関連の部分のみを免除対象とするということが妥当ではないかと考えております。
なお、これは当然ながら十分なレベルが維持できない場合には指定を取り消すことも考えられます。例えば論文式試験において、他の受験者を比較して合格率が悪い場合とか、そういう場合には取り消すということを指定の条件にしておくことが必要ではないかというふうに考えております。
(3)の法科大学院でございますけれども、法科大学院におきましては、民法、民事訴訟法等について履修をし、相当程度の知識があるということが期待できるわけでございます。6ページ目にまいります。しかしながら、法科大学院は、他の大学院と比較いたしまして、論文提出が修了の必須要件とはなっておりません。したがって、例えば修了論文を提出した場合には、当該科目については普通の大学院と同じように論文式試験についての一部免除を検討していくといったようなことも考えられるのではないかというふうに考えております。
(4)でございますが、短答式試験及び論文式試験の合格者に対する次回以降の試験免除でございます。
他士業の動きを見ますと、公認会計士、あるいは税理士等において短答式試験合格者に対する次年度以降の試験の免除、あるいは論文式試験についての科目別合格制度が導入されております。短答式試験につきましては、基本的には知識を問い、論文式試験において論理力を問うということでございますので、例えば短答式試験につきましては、いったん合格すれば所定の年数、例としては公認会計士では2年間でございますけれども、短答式試験を免除するということも合理的ではないかと考えられます。
論文式試験については、工業所有権法に関する必須科目と技術又は法律に関する選択科目がございますが、問う内容が異なる、また選択科目については既に免除制度があるということを考慮いたしますと、例えば必須科目については論理力に加えて知識も問うていることから、所定の年数の免除、選択科目については既に永続的な免除が認められているということを考えますと、永続的な既合格者に対する免除ということも考えられるのではないかというふうに考えております。
以上でございます。

中山委員長

ありがとうございました。
ただいまの説明並びに日本弁理士会からの意見に対する御質問、あるいは御意見等がございましたらお願いいたします。
相澤委員、どうぞ。

相澤委員

論文式試験の科目としての条約に関しては、現実に条約に関する知識が不足しているという点について十分な検証がなされていないという状況で、現在の試験を変更する理由はなく、条約を新たに論文式試験の科目として加える理由はないと思います。
知的財産専門職大学院に係る試験免除については、会計専門職大学院で行われているところでありまして、例があり、理由の無いものではないと思います。ただ、会計専門職大学院について指摘されている問題点というものを検討することが必要であると思います。
それから、会計専門職大学院については、その専門職大学院設置認可のときに、公認会計士試験の試験科目の一部免除を前提として大学院の設置認可をするという過程がとられていました。既に、設置認可をされた大学院について、どのようにして、免除の対象となる大学院を指定するかという問題があると思います。
先ほど、秘書課長さんから指摘がありましたが、免除の対象となる大学院をどうやって指定するということを考えなければいけません。これは難しい問題でして、指定の要件ばかりでなく、指定した後の大学院の点検というのも問題になります。一度指定をした大学院を取り消すとなると、その大学院の経営に大きな影響を与えることになりますので、容易なことではないと思います。さらに、卒業者はどうするのか、在学生はどうするのかとかという難しい問題が生じてきます。
それから、一部免除をしますと、それを目的とする知的財産専門職大学院というものが設立されるということも予想されます。知的財産専門職大学院における教育が重要であるということを否定するわけではありませんけれども、この点は慎重に検討する必要があるのではないかと思います。
法科大学院における試験免除につきましては、法科大学院以外に専門職大学院というのが他にありまして、現在は免除を受けておりません。法科大学院について試験科目、あるいは選択科目の免除を考えるのであれば、他の専門職大学院についても免除を考えていただいかないとバランスが悪いのではないかと思っています。
なお、現在の選択科目についても問題があります。これについても見直しをしていただきたい。例えば数学を研究して修士を取っても、選択科目に数学がないので、免除になりません。しかしながら、暗号というのは整数論の延長線上にあるものでありますから、その基礎となる数学はならないというのはおかしいのです。そういう問題もありますので、理科系の科目も含めてきちんと整理をしていただきたいと思います。
短答式試験、論文式試験の合格者の次回以降の試験免除につきましては、これを考慮することについては合理的ではないかと思います。

中山委員長

ありがとうございました。
他に御意見ございましたら。
吉田委員、どうそ。

吉田委員

ただいまの事務局の論点整理を伺いまして、全体的に言えばほぼ妥当な整理がされていると思いました。
ただ、いずれの論点につきましても十分に議論がここで行われてしまって、方向性が確かめられたという点までは至っていないと思います。相澤委員がおっしゃったように、それぞれの論点につきまして、かなりいろいろな問題が残っている。例えば専門職大学院を卒業される方々の能力レベルについては、まだ今のところわからないような問題もありますので、にわかにそれについての結論を得るようなことは難しい話であろうかと思います。
でありますので、いずれの論点につきましても必要に応じてこれからワーキンググループのようなものをつくって子細に御検討いただく必要があろうと思います。そして、その結果、制度的には非常に望ましいものができたといたしましても、私はその試験を実施する立場にありますので、そういう点から考えますと、今や1万人を超える受験者ということになりまして、数が多いということだけから生ずるような問題もいろいろあります。ですから、設計図だけがうまくできても、実施がうまくいくためのまた別途の観点からの検討も十分必要であろうと思います。そういった観点も含めまして、これからまた慎重な、あるいはもっと幅広く、深い審議といいましょうか、検討が必要かと思います。
以上です。

中山委員長

ありがとうございました。
他には。
どうぞ、野坂委員。

野坂委員

私も事務局の案を見まして概ね妥当だと考えました。
平成12年の改正、改革は、若い人材に幅広く弁理士になってもらおうという趣旨でございますから、その趣旨に立てば、やはり過重な負担を新たに加えるということは好ましくないと私は考えます。そういう意味でこの条約についての問題、現行のままでいいのかなと思います。
ただし、現在では条約に関する知識、解釈のレベルが特に低下が見られないということでありますけれども、やはり今後推移をよく見なければいけない。低下するようなことが起きる事態というのは好ましくない。したがって、そのレベルを維持していくための、後で議論があるかとは思いますけれども、研修も含めて、そのレベルを維持していくということをあくまで前提として上で、現行のままでいいのではないかと私は考えます。
それから、試験の免除等についてですけれども、こちらに公認会計士のケースとして2年という例示がございました。これは事務局の案として、弁理士も2年ということを示唆しているのかどうかわかりませんけれども、この年数が適当かどうかも含めて慎重に議論すべきだと考えます。
以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
他に。
どうぞ、坪田委員。

坪田委員

私もこのまとめで方向性はいいと思います。
日本商工会議所も検定試験をやっています。それで、科目免除をとっているような種目があります。受験生が少ないときにはいいんですけれども、だんだん多くなってくるとその管理が非常に厳しく、もともとこの試験自体が非常に複雑といいますか、口頭があって、選択があって、また免除があって、さらにまた合格免除があるという、そこら辺を十分実務的にクリアできるような方向で対処してほしいと思います。

中山委員長

ありがとうございます。
他に。
では、大渕委員、どうぞ。

大渕委員

まず弁理士試験の範囲、条約関係ですが、以前意見を申し述べたように、条約が重要であることは間違いないのですが、それをどのような形で試験するかという方法論についてはいろいろな可能性があるわけでありまして、以前に申し上げましたような論文式試験の性質という観点からいたしますと、これを論文式試験科目として行うのが妥当かという点については、やはり慎重に考える必要かあるのではないかと考えております。
それから、資料1の5、6ページの(2)(3)あたりの試験免除に関しましても先ほど出ているとおりでありまして、新しい制度でありますし、このようなことを行うについては様々な波及効果等もありますので、やはり諸事情を見つつ、慎重に対処する必要があるのではないかと思っております。
以上です。

中山委員長

ありがとうございました。
それでは、戸田委員、どうぞ。

戸田委員

私も基本的に事務局の案には賛成です。
今回のいろいろな方向を見ていると、科目免除の拡充ですとか、従来は一斉に用意ドンだったのが、人それぞれで評価が変わってくるということですので、ぜひ試験の透明化を図っていただきたいと思います。具体的に言うと、各年毎に科目の難易に差が出てきたりすると、それぞれ何点で合格するのか、何で私は今回50点で落とされたのだとか、そういったことが出てくるような気がしますので、試験の透明化、例えば、科目別の基準点の公表も含めてお願いしたいと思っています。
もう1点、これは直接関係ないのですけれど、知的財産専門職大学院のレベル差はあると思いますが、こういった形で弁理士試験に何らかの免除が導入されるのであれば、ぜひ大学側に技術と法律の専門家たる弁理士試験の科目免除が得られるぐらいのレベルが高い教育を行ってほしいということが注文でございます。
以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
他に。
神原委員、どうぞ。

神原委員

御説明いただきました点について基本的には異存ございませんが、一点だけもう少し詳細なデータがもしいただければと思うところがあります。それは、受験生の条約の解釈・判断レベルの問題なんですが、現在、第2回の小委員会の資料のとおり、それらが低下しているという結果は出ていないということなのですが、第2回の資料では平成17年度の商標の問題を取り上げて、その採点結果から他の科目と遜色がないということで低下はないというふうに結論づけられています。しかし、平成17年度の商標の問題を見てみますと、設問が3つございまして、設問1、2はまず条約には関係ないということが言えると思います。設問3に、並行輸入の問題が出てきまして、並行輸入と商標権の侵害の問題が出てまいります。そこで恐らく各国商標権の独立性の問題ですとか、あるいは属地主義の原則ですとか、そういった観点で条約が絡んでくるのであろうと思います。条約とはパリ条約ですが、もしそうであれば、採点に当たってそういったパリ条約の判断、あるいは解釈がどういうふうに反映されたのか、あるいは設問3の採点結果が他の設問に対してどうだったのか、そのあたりの比較が必要ではないかなと思います。ですから、いきなり商標問題全体の採点結果からこういった結論ということは多少飛躍があり過ぎるのかなというふうに懸念しております。

中山委員長

ありがとうございます。
他に。
どうぞ、澤井委員。

澤井委員

これは若干お願いめいた話なのですけれど、今回、試験、研修の話をまとめて論点整理いただいたのですけれども、多分一番大事な前提は、弁理士とはどういうふうにあるべきかという理念的なことを整理して認識しておくべき点だと思います。その文脈の中で試験、研修、あるいは試験の免除等についてきちんと論を起こしていただいた方がいろんな意味で社会に対しても説明できるのではないかと思います。それに若干絡むのですけれど、いろいろ論理の展開を見ていると、例えば公認会計士制度がこういう試験や試験免除の設計になっているから、弁理士制度の中でもそのやり方を導入してもよいのではないかといったようなトーンで書いてあるのです。しかし、弁理士そのものが本来持っている職性あるいは使命または制度意義といった基本的な部分が、公認会計士制度が拠って立つ基本的な部分と違うところがあるので、同じ士業だからというだけであまりごちゃ混ぜにした議論にしない方がよいと思います。単に他の士業でやっているというだけの理由ではなくて、本来もっと弁理士の基本の姿についての議論をきちんと整理して、最終まとめのときには書き起こしていただきたい、というのがお願いでございます。

中山委員長

ありがとうございます。
他に御意見ございますでしょうか。
概ね事務局の案に御賛同いただけたというふうに理解いたしますけれども、他に御意見がございませんようでしたら、次の議事に移りたいと思います。よろしいでしょうか。

配布資料の確認弁理士研修制度の在り方について(論点整理)

中山委員長

次は、「弁理士研修制度の在り方について(論点整理)」の資料に基づきまして事務局から説明をお願いいたします。

稲垣秘書課長

それでは、引き続きまして、同じ資料1でございますが、7ページ目から御説明させていただきます。
まず問題の所在でございますが、弁理士の実務能力につきましては、近年の弁理士試験の合格者数の増加に伴って、特許事務所や企業に勤務する機会が相対的に減少したことにより、合格者の資質の水準自体は従来と同様であっても、いわゆるOJTにより合格者が実務能力を習得する機会が相対的に減ってきているのではないかと、したがって、実務能力が乏しい弁理士が増加しているのではないかという懸念が指摘されております。
他方、現在日本弁理士会が新規登録者に対していわゆる新人研修を行っておりますが、このデータは資料5、弁理士会から出していただいた資料の中でデータが載っておりますけれども、現在受講義務がないために、合格者全体のうち受講する人は全体の7割程度、修了する人は全体の5割ぐらいという状況にございます。
また、現在の制度では、いったん弁理士資格を取得すれば資格は永続的に有効であり、資格取得後の資質の維持・向上についての義務的な措置は存在しないというのが今の状況でございます。
論点といたしましては、大きく分けて2つでございますが、新人弁理士に対する研修、それから既登録弁理士、有資格者に対する継続的研修について、それぞれ義務的な研修を課す必要があるのかどうか。
それから、(2)として、仮に義務研修を設ける場合、特に新人弁理士については弁理士登録前、すなわち登録要件とするのか、あるいは弁理士登録直後とするのか、どちらが適切か。
それから、いずれにしても義務化するとした場合に、義務の不履行者に対する措置についてどう考えるのかというのが論点でございます。
また、8ページ目の(4)になりますが、いずれにしても任意研修というのは今後とも存続するわけでございますが、その受講を促すために、例えば弁理士の研修受講歴の公表を義務づけるといったようなことが必要なのかどうかということでございます。
4、議論の整理でございますが、まず研修について義務的研修を課す必要性があるか否かでございますが、今までの御議論では概ね研修が重要であり、また何らかの形で義務化をしていくというのがよいのではないかといったような御意見が多かったかと思います。
それから、9ページ目の(2)に飛びますが、仮に新人弁理士の実務能力の担保のための義務研修を設ける場合、弁理士登録前とするか、すなわち登録要件とするか、弁理士登録直後とするか、どちらが適切かということについては今までの御意見では両論ございまして、登録前の義務研修を行うと、研修の修了認定を厳しくする等のことにより、未修了者が弁理士登録できなくなるということで、参入規制となり得るのではないかといったような御議論もございますし、逆に10ページ目の方にまいりまして、むしろきちんと登録前の義務研修をすべきだといったような御意見もございます。
それから、義務化された研修の不履行についてはどう考えるかについては、例えば研修の受講について勧告し続けても未受講の場合には、例えば業務停止処分になるということも考えられるのではないかといったような御意見もございました。
10ページの5、対応の方向でございますが、弁理士に対する研修につきましては、今までの御議論において研修の強化自体については肯定的な御意見が多かった。また、日本弁理士会が行う自主研修の充実による対応の限界、さらに資格者の専門能力向上のための仕組みが必要という、後ほど御紹介しますが、規制改革会議等からの御指摘等を踏まえると、基本的に弁理士に対する研修の義務化自体は必要ではないかというふうに考えております。
研修の種類としては、(1)新人弁理士の実務能力を担保する観点から行う義務研修、(2)既登録弁理士の専門能力の維持・向上を図る観点からの継続的義務研修の二つが考えられるわけでございます。
もちろん社会的には(2)の方が先ほど申し上げた規制改革会議等で指摘されているわけでございますが、順番に議論させていただきますと、まず(1)の新人弁理士に対する義務研修でございます。これについてはまる1まる2、すなわち登録要件としての登録前義務研修と登録直後の義務研修、新人研修という両案があり得るわけでございますが、それぞれについてさらに十分議論を今後していかなければいけない点が幾つもあろうかと考えております。
それはまる1の下に順番にマルで書いてございますが、以下のような検討事項が考えられるということでございますが、まずそもそも弁理士試験の合格者は8割程度が従来から特許事務所や企業勤務。これは次のページの表1にデータがついてございますが、合格後も95%の方は特許事務所や企業勤務ということで、登録直後に1人で事務所を開設する者はほとんどいないという現状において、実際に出願人が事務所を介さずに新人弁理士に直接業務を依頼してどの程度問題が生じているのかどうか。すなわち、問題も生じていないのに、登録前というのは仕組みによってはかなり厳しい規制になるわけでございますが、そういうことをする必要があるのかどうか。
仮に登録前ということになりますと、これは資格要件でございますので、試験と同程度の強い要件ということでございますから、試験と同様に基本的には国の管理のもとで行うべきではないかと考えられるわけですが、これをどう考えるか。
それから、弁理士試験の受験者は、先ほど申し上げたように、特許事務所や企業に勤務している者が8割でございますので、義務研修はそれらの者に対して時間的な負担を強いるわけでございまして、参入障壁にならないためにどういう工夫ができるのか。現在の弁理士会の新人研修でも2カ月ないし3カ月、e-ラーニング等を含め、やっているわけでございますが、そういうこととの関係をどう考えるのか。
さらに研修自体の内容、あるいは修了考査の内容など、修了考査を行うかどうかも含め、あるわけでございますが、研修の運用次第によっても参入障壁となり得るわけでございますが、これをどう考えるか。
次に、免除制度も考えられるわけでございますが、登録要件と仮にしたとすると、やはり免除の認定の際は、相当客観的に実務能力を証明させて、不公平感が生じないようにしなければいけないのではないかと思われるわけですが、どうするのか。
それから、12ページの方にまいりまして、登録要件としてやることになりますと、既登録者についても本来は同レベルの能力が資格維持のためには必要ということになるわけでございますが、一体これについてどう考えていくのかといったようなことが具体的な論点になろうかと思います。
表1、表2は、先ほど申し上げましたように、従来から合格者については、特許事務所勤務者、企業勤務者が大体、70数%から80%ぐらいということで変わっていない。
また、試験合格者は大体特許事務所、あるいは企業に勤めているわけでございまして、いきなり自分で事務所を開く方はほとんどいらっしゃらないといったようなデータを御紹介しております。
次に、それでは登録直後の新人義務研修ということにしたらどうかということでございますが、これは多くの論点はまる1の登録前とダブりますので、そこは同じであるという前提で、登録後である固有の論点について特に御紹介しておりますが、12ページの一番下にございますように、どうしても登録後ということにいたしますと、研修を受講せずに業務を行う者、あるいは中途半端な受講のままで実務能力が不十分な者というのが残るわけでございますが、これらの方が弁理士業務をそのまま行うことについてどう考えるのか。
それから、13ページの方にまいりまして、このような研修未受講者に対する措置としてどういう措置が適切か。とりあえずは氏名の公表等をするのだと思いますが、それ以上、一体どうしていくのか、また実際できるのかといったようなことをきちん詰める必要があると思われます。
次に、(2)の既登録弁理士に対する継続的専門研修でございます。
これにつきましては、別添が15ページにつけてございますが、これはいわゆる規制改革会議からの中間答申、今年の7月末に出たものでございます。これは建築士、あるいは公認会計士等でいろんな社会的問題が起きておりますことを背景といたしまして、特に業務独占資格につきましては、いったん資格を取ったらおしまいということではなくて、資格者の知識、技能の向上を図る仕組みが必要で、受講の義務づけ等をすることが必要なのではないかということです。それから、受講の義務づけや、必要に応じて免許の更新制の導入なども検討すべきだということ。それから、後ほどの議論とも関係いたしますが、質の確保と同時に資格者についての情報公開、あるいは懲戒処分等についてもきちんとしていくことが必要なのではないかといったようなことを指摘しております。
こういったようなことも踏まえ、既登録弁理士について専門能力の継続的維持・向上及び法令改正等の環境変化、あるいはさまざまな問題事例が弁理士の方でも出ているわけでございますが、倫理的な問題を含めてそういったような問題ケースの具体的ケースについても、こんなことがある、こういうことをしてはいけないといったようなことも含め、既登録弁理士に対する継続的な義務研修が必要なのではないかということでございます。
その際、不履行者をどうするかということでございますが、法令に基づいて不履行者、受講しない方の氏名の公表を行って、ユーザーに周知、認知していただくとともに、正当な理由なく、義務不履行を続けた弁理士に対しては、例えば新規業務の受任停止といったような処分を行うといったようなことも検討できるのではないかというふうに考えております。
それから、14ページの(3)でございますが、日本弁理士会ではそもそも会則によりまして、会員の研修受講歴を公表することとなっておりますが、実際にはほとんどされていない現状を踏まえて、やはり今後は、全てではないにしても、任意研修についても基本的には受講歴を公表していくといったようなことが必要なのではないかというふうに考えております。
以上でございます。

中山委員長

ありがとうございました。
ただいまの説明並びに日本弁理士会からの意見に対する御意見、御質問がございましたらお願いいたします。
谷委員、どうぞ。

谷委員

日本弁理士会としましては、質の担保という点から研修の義務化ということにつきましては賛成します。これにつきまして義務化ということはやはり義務の履行との関係から、会の中でのきちんとした処分等をすべきだというように考えております。公表、戒告、業務停止等いろいろな段階があると思いますけれども、これについてはまた後に検討していただくとしましても、義務化と処分の問題、会の処分の問題とは必ず表裏一体で検討すべきだろうと思っております。
もう1点です。登録する新人の研修ですけれども、登録前の義務研修ということですと、この説明にもありましたように、やはりこれは国の管理のもとできちんと国が設計、監督を行うべきものだと思っております。もし登録後の義務研修となる場合は、前提としましては弁理士会が強制加入というものを維持した上で、きちんと研修の義務化に対する履行、処分等を行うべきであると思っています。
義務化に対しては我々としては賛成しますが、その後の登録前か後かという点、また既登録者についても義務とする点については皆さんの御意見をさらに伺いたいと思っております。
以上です。

中山委員長

ありがとうございました。
他にございませんでしょうか。
どうぞ、前田委員。

前田委員

研修が必要という意味では全く同意見です。
ただ、谷委員もおっしゃいましたように、登録前なのか、登録後なのかに関しては、参入規制という問題もあろうかと思いますので、個人的意見としては、直後で、任意研修であるけれど、日本弁理士会における受講歴の公表の義務づけ等で図っていくのがいいのではないかと思います。
8割以上の方が特許事務所勤務、企業勤務ということでありましたが、特許事務所においてどのような業務をしているかとか、企業において特許のところの仕事をしているかということが明確にわかりませんので、免除においては、例えば免除してほしい科目において試験を受けて、試験であるラインに達した者は研修を受けなくていいというような一定の基準を設けておいた方が客観的な判断になるのではないかなと思います。

中山委員長

ありがとうございました。
どうぞ、野坂委員。

野坂委員

私も研修の義務化には賛成です。
ただし、研修は登録前ではなくて、後の方がいいと考えます。理由は幾つかありますけれど、大きく言うと2つあります。
まず1点目は、やはり難しい試験をパスした後で、また登録前に義務的な研修があるというのは大きなハードルになってしまうということで、参入障壁となるということであれば、やはり認められない、好ましくないと考えます。
2点目としては、先ほど谷委員からも話がありましたけれども、登録前ということであれば、国が行わなければいけないという話がございました。今の流れは官から民へということで、できるだけ官はいろいろな意味で民に権限を移譲しようという流れがありますから、そういった流れから考えても登録前に研修を義務づけ、国が行うというのは好ましくないと考えるからです。
以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
他にございませんでしょうか。
それでは、神原委員、どうぞ。

神原委員

谷委員からも発言がございましたけれども、私ども日本弁理士会といたしましても既登録弁理士の義務研修と新人弁理士の義務研修、これらをいわばセットで行うというシステムをつくっていくことには賛成しております。これはぜひともお願いしたいと思っております。
新人弁理士につきまして、登録前か後かという問題なのですが、日本弁理士会としては登録前が望ましいと考えており、もし仮に登録後、登録直後ということであれば、どうしても研修を受けない者が出てくることが予想されますので、もう弁理士ですけれども、そういった者に対して名前の公表ということもございますけれども、最終的には業務停止、そこまでが、それほど時間と手間がかからない形で行えるようなシステムをあわせて考える必要があると思います。

中山委員長

ありがとうございます。
それでは、相澤委員。

相澤委員

先ほど来お話がありますように、登録前で義務研修をして、さらに修了考査をすることになりますと、短答式試験をやって、論文式試験をやって、口述試験をやった上で、さらに研修を受けて、修了考査をすることになります。これは、試験の段階がもう1段増えるということになりますので、参入制限的な効果も強く、問題も多いのではないかと思います。
登録後の研修につきましては、日本弁理士会が、強制加入団体としての責任と自覚においてきちんとされるべきものであると考えます。ただ、現行法上、義務研修について、日本弁理士会の法律上の権限が不明確であるというならば、明確にすることはよろしいのではないかと思います。もちろん、その内容等についても、あるいは免除等についても、日本弁理士会が強制加入団体であるということを踏まえて、きちっと外へ説明できる透明かつ明確な基準でやっていただく必要があると思います。

中山委員長

ありがとうございます。
では、大渕委員、どうぞ。

大渕委員

まず先ほど弁理士会からもセットで云々というお話が出ておりましたけれども、事務局から冒頭説明がありましたとおり、研修としてはいわゆる新人研修と継続研修との2つがあるわけですが、これは2つとも重要でありまして、この双方を対象として、つまり、継続研修の方につきましてもこの審議会で具体的な内容について十分議論する必要があるのではないかとまず考えております。
それから、次に新人研修に関してですが、これについては研修が重要であることは誰もが認めるところでありまして、あとはその研修を、参入障壁にならないような形でどうやって実現していくかというところに尽きているわけであります。その関係では時期が事前か事後か等々いろいろ問題となり得ますが、とりわけ義務化される研修の内容、特に負担等の関係が重要になってまいります。多分皆さんも、負担にならないような研修ということを念頭に置かれているかとは思いますけれども、例えば期間が余りに長期になるものは負担にもなりますし、参入障壁にもなりかねないということと、この期間の点とまた別に、修了認定をどのようにしていくかというところは義務化との関係では非常に重要な点でありまして、厳しい修了認定ということになりますと、どうしても参入障壁の点が問題となってきますので、このあたりも総合的に考えた上で、登録前とするか登録後とするかを判断していく必要があるのではないかと思っております。
以上です。

中山委員長

ありがとうございました。
他に。
それでは、戸田委員。

戸田委員

私も義務化には賛成なのですけれど、登録前か後かというのは、個人的には登録前の方がいいと思っています。しかし、今の研修をそのまま義務化するといろいろ問題があると思っていまして、1つは、大渕委員も言われた期間の問題です。ずるずると2カ月も3カ月も続くと、ここに書いてあるように、多くは企業や特許事務所に勤めていますので、何でそんなずるずるやっているのだという話が職場から必ず出てきます。研修に出していく立場から言いますと、ある程度短期に集中的にやっていただいた方が出しやすいですし、その方が力もつくのではないかと思います。
内容についても何でもかんでも詰め込むというのではなくて、実務的なものに絞ってやっていただきたいと思います。
以上です。

中山委員長

ありがとうございました。
谷委員、どうぞ。

谷委員

試験が難しいかどうかという話ですけれども、今回は先ほどの話ですと、試験は今よりももっと易しくなるわけですから、易しくなったところで免除は増えるわけで、やりやすくなる。その中で、現状よりも易しい、やりやすくなった状態で登録前の研修があっても仕組みを工夫すれば参入障壁にはならないのではないかというのが1つ。
もう1つは、登録前にして、国がすべてに対して費用から設計、監督も責任を持つということは、これはひとえに知財立国に対する国の考え方との関連であるかと思います。1つ例を挙げますと、隣の韓国では任意加入のときでも国がすべて研修を行っておりました。つまり、試験に合格した後1年間の研修を経て、初めて弁理士の登録をする。それは任意加入のとき、それから今年6月から強制加入に戻ってからも変わっていません。そして、韓国では近々に知財立国構想を立てているわけです。このような状況を考えますと、やはり日本の場合も試験制度、特に研修制度、この両方を一体にして質のいい弁理士を生み出していこうということ、これはまさに知財立国との関係からきていると思います。これは強制加入、任意加入に関係なく、いずれでも登録前であればそういうことが可能になるかと思います。
一方、登録後になりますと、これは任意加入と強制加入のどちらでも可能ではありますけれども、強制加入になりますと、どのようにして義務化をしていくのか、これは非常にまた問題になる。登録後の義務研修という場合はやはり強制加入という制度をきちんと守っていく前提のもとでの話になろうかと思います。
以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
他に御意見ございませんでしょうか。
相澤委員。

相澤委員

今の点ですが、任意加入にすると、会で研修を義務づけても意義がなくなるので、任意加入の場合は、行うのなら国が行うべきであるということになると思います。私は、登録後に日本弁理士会がその責任と自覚において研修を行うことが良いと言っていることの背景は、強制加入を前提としての議論です。強制加入制度を維持しつつ、その中できちんとやっていただくということがいいのではないかと思います。
もう1つは、現状で、登録前の研修を必要とするほどの問題が生じているのかという疑問があります。例えば、新人の弁理士さんが事件を担当して、マルプラクティスがあるということで、懲戒をした事例はないようです。そうすると、経験のない弁理士の行為による問題の発生ということは明らかではないということだと思います。ただ、能力を高めたいということで、研修を強化するという方針には一理ありますから、それについては事後研修で対応していただくのがいいのではないかと思います。事前研修を要求するならば、顕著な問題事例が明らかになっていないと、本当に問題があるのかが明確ではないと思います。

中山委員長

ありがとうございます。
どうぞ、坪田委員。

坪田委員

ユーザーの立場からすると、優秀な弁理士さんが出てくる方がいい。厳しければ厳しい方がいいんですけれども、私自身、個人としては入り口を厳しくすることに意味があるのかどうか、ちょっと疑問を持ちます。実際問題、谷委員が言われたように、知財立国を目指すなら、より厳しい試験と研修をセットにした資格をつくるべきだという御意見もありますけれども、むしろ知財立国を目指すならば、知財マインドを持った人間を増やすという意味からも、より身近な弁理士試験という、そういうことを目指すような人たちができるだけ多く出てくるような観点も必要ではないかと思っています。そういう意味からしますと、やっぱり日本弁理士会において責任を持って、管理、監督できるような、登録後の研修制度みたいな、そういった体制整備を、環境整備を図っていただく方が現実的になじんでいるような気がいたします。

中山委員長

ありがとうございます。
他に御意見ございますか。
どうぞ、澤井委員。

澤井委員

私も基本的には義務研修は賛成です。ちょっと教えてほしいんですけれど、研修を義務化するというところは、先ほど相澤委員もおっしゃった強制加入と研修義務化というのはセットで法律の中につくり込むという話になるというふうな理解でよろしいのでしょうか。

稲垣秘書課長

どういう形かは別にして、法律に規定をするということを考えています。

中山委員長

よろしいでしょうか。
他に御意見ございましたら。
どうぞ、吉田委員。

吉田委員

私は個人的には事前の研修が望ましいと思っておりますけれども、先ほど谷委員から日本弁理士会としては、事前の研修でもかまわないというお考えがあるようなお話を伺いました。ただ、多くの方が懸念されているのは、それが参入障壁、参入規制にならないかということのようですが、その点についてはもう少しよく検討してみる必要があるのではないかと。もう少し本当にそうなのかどうか、何となくそうなる可能性もありそうだというのは私もわかりますけれども、もう少しきっちりした検討を踏まえて、その上で事前、事後の研修の在り方を考える必要があるように思います。

中山委員長

ありがとうございます。
他に御意見ございませんでしょうか。
どうぞ、谷委員。

谷委員

今の吉田委員からの御発言に関してですが、日本弁理士会の基本的スタンスは登録前の義務研修ということでして、ただし、両方を考えた場合に、登録後の義務研修の場合には強制加入との関係が出てくるということを指摘したということです。
以上です。

中山委員長

どうぞ。

吉田委員

私は個人的には事前の研修が望ましいのではないかと申し上げたつもりですけれども、ただ、皆さんの懸念が参入障壁とかといった点にあるのであれば、その点をもう少しきちんと掘り下げて検討するべきではないかということを申し上げました。

中山委員長

ありがとうございます。
他に何かございませんでしょうか。

相澤委員

研修をして、修了考査をするということは客観的に参入障壁になることだけは明らかだと思います。三段階の上にもう一段階を課されるのですから、これが参入障壁にならないということはないと思います。

中山委員長

他にございませんでしょうか。
それでは、一通り御議論いただきましたので、次の議題に移りたいと思います。

弁理士法に規定する業務について(論点整理)

中山委員長

次は、「弁理士法に規定する業務について(論点整理)」の資料に基づきまして事務局から説明をお願いいたします。

稲垣秘書課長

それでは、資料2に基づきまして御説明させていただきます。
弁理士法の規定する業務につきまして大きく分けて4点ございます。
1点目がいわゆる外国出願関連業務ということでございますが、1現行制度の概要にございますように、現在日本の出願人が外国の有資格者、弁理士さんを介して外国の特許庁へ出願する際の出願書類の翻訳文及びドラフトの作成業務、あるいはそういったような外国の有資格者への媒介、これを外国出願関連業務と称しているわけでございますが、これはだれでも行うことが可能な業務ということで、弁理士法にも特段の規定はございません。
これをどうしていくかということでございますが、3論点にございますように、いずれにしてもこれは専権業務とするという議論はございませんで、例えば弁理士法の中に今コンサルティング等が弁理士の名前において行える業務ということで標榜業務ということになっているわけでございますが、これと同じような標榜業務として規定をし、明確化をする必要があるのかどうか。
それから、外国の弁理士さんに対するある意味の補助的な業務を我が国の弁理士法に規定することが妥当なのかどうか。
それから、弁理士法の目的との関係。
2ページ目にまいりまして、(4)にございますように、能力担保、すなわち仮に弁理士法上の業務として位置づける場合には、例えば弁理士会で諸外国の工業所有権法令についての研修の強化等を行う等、これをどう考えるのか。
こういったようなことについて議論していく必要があろうかと思っております。
今までの委員会での御議論では両論あったかと思いますが、こんなことまで規定する必要はないのではないかという御意見と、きちんと書いて質の向上につなげていくべきではないかという議論と両論あったかと思います。
3ページ目の5、対応の方向でございますが、近年、経済のグローバル化、あるいは企業の海外活動の拡大によりまして、海外においても戦略的に知的財産を権利化・活用していくことが重要となっております。したがって、外国出願関連業務についてはそういったような取り組みを支援する重要な業務であるという位置づけはできるかと思います。
現在、先ほど申し上げたように、弁理士としてではなく、個人として業務を行っているという建前になっておりまして、さまざまな規制、あるいは日本弁理士会による指導・監督が及ばないといったような問題が生じ得る状況であろうかと思います。
また、実際は誰でも行える業務なのですが、実態上はその専門性に期待して弁理士に依頼をしているという場合が多いという現状がございます。
こういったことを踏まえますと、当該業務を適正に行うべき義務を弁理士に課するという観点から、弁理士法上の業務として規定するということも一案であろうかと思われます。
他方、一体どこまで標榜業務として書くのかというのは、ある意味でこれは絶対書かなければいけないということでもありませんし、また書いてはいけないというものでもないのですが、一体どこまで書くのか。弁理士法上の指導・監督が及ばないことによる具体的な問題も生じていない現状において、直ちにこれをすべきなのかといったような論点もあろうかと思われます。
いずれにしましても、仮に標榜業務とする場合には、先ほどございましたような能力担保についてどうするかということはあわせて検討することが必要であろうかと思われます。
次に、特定不正競争の拡大でございますが、現行、弁理士が取り扱うことができます不正競争防止法に関する業務は特定不正競争ということで、工業所有権に密接に関連するものや技術的性格を有するもののみを弁理士法第2条4項において規定しております。
こういったような特定不正競争に係る弁理士業務につきましては、裁判外紛争解決手続についての代理、裁判所における補佐人、営業上の利益の侵害に係る訴訟の、これは弁護士と共同でございますけれども、代理の業務を行うことができるということでございます。
5ページ目の最後から6ページ目のところで、従来の御議論でございますけれども、拡大の必要はない、あるいは現時点ではそんなにニーズがないのではないかといったような御意見、それから工業所有権に密接に関連するものとして幾つかのものは拡大をしてもいいのではないかという御意見と両論ございました。
対応の方向でございますが、今含まれていないもの、まず6ページ目の5、下の方でございますけれども、不正競争防止法の2条の10号、11号の技術的制限手段に対する不正競争については、これは情報処理技術等に関する高度な専門知識が必要でございますが、必ずしも工業所有権についての知識と関連するものではないというふうに考えられます。
他方、13号の原産地等誤認惹起行為、14号の競争者営業誹謗行為、ただし、これは特許権を侵害している等の知的財産に関わるものに限るかと思われますが、15号の代理人等商標無断使用行為については、工業所有権に関する知見が必要であるという主張も一定程度理解できるものと思われます。
他方、こういったような不正競争についてのさまざまな業務についてはまだ導入から数年でございまして、実績件数が多いとは言えない。また、こういうことができないことによる問題は特段顕在化しているわけでもないといったような状況にあるのも事実でございます。
それから、本問題につきましては、次のIIIで検討いたします特定侵害事件に係る訴訟代理権、つまり今は弁護士と共同代理でございますが、これに対し、単独代理を認めるのかどうかといったようなところとも密接に関連するというふうに考えております。すなわち、訴訟事件についての弁護士との共同代理を維持するのであれば、もちろん一定程度の訴訟業務についての知見を有することは前提とはなりますが、弁理士に期待されるのは、主として工業所有権についての知見ということなので、特定不正競争の範囲をその場合には拡大することも一案ではないかというふうに考えられるものと思われます。
次に、IIIの特定侵害事件に係る訴訟代理権でございます。
これは平成14年の弁理士法改正におきまして、一定の条件のもとで特許権等侵害訴訟における訴訟代理権が弁理士に対して認められたわけでございますが、これは弁理士さんに対して、特定侵害訴訟代理業務試験という民事訴訟法、その他、訴訟における代理を行えるだけのいろんな法律的な、あるいは裁判に関するいろんな素養を試す試験でございますが、それに合格し、かつ、その旨の付記を受けたときは特定侵害訴訟に関して、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、行える共同代理ということでございますけれども、弁理士さんも訴訟代理人となることができるという規定になっております。
これにつきましては、弁護士、弁理士双方、つまり共同代理ですと双方の代理費用の負担が依頼者に発生するという問題がありますので、一定の範囲では弁理士の単独出廷を認めるように改正すべきではないかという御意見もございます。
8ページ目にまいりまして、これにつきましては4、まる1でございますが、委員の皆様の御意見は時期尚早ではないか。それから、ほとんどの弁理士が1度は共同代理を経験してみた上でないと、拡大は難しいのではないか。共同代理において、実際やってみるとまだまだ弁理士の訴訟的な観点での理解が不十分ではないのかと感じられることもあるということで、時期尚早あるという御意見が多数でございました。
5の対応の方向でございますが、こういったような委員の御意見を踏まえますと、まだ制度開始から3年ということで、代理の実績も多いとは言えない中では、やはり現段階では導入は時期尚早なのではないか。今後とも引き続き弁理士の訴訟代理の状況、あるいは利用者のニーズ、確かに両方にお金を払うのはツーマッチだという御意見も理解できますので、こういったようなものを十分に踏まえた上で将来的な課題として引き続き議論を行っていくということが適切なのではないかというふうに考えられるのではないかと思います。
それから、9ページ目のIVでございますが、水際措置における輸入者側の代理権についてということでございます。
現行制度では平成12年の弁理士法改正によりまして、水際でのいわゆる知的財産侵害物品の排除のために、権利者側、つまり輸入しようとする者が誰かの権利を侵害しているという場合には、権利者側の手続代理を弁理士が行えるという規定になっております。しかしながら、輸入者側と権利者側とでは類似する手続も関税法上多く、さらに結局輸入品が侵害しているかどうかの判断においては、輸入者の業務においても弁理士の知見を生かせるということで、輸入者側についても弁理士の業務に含ませるべきではないかという御意見がございます。
なお、これにつきましては、来年の1月から知的財産侵害物品の輸出についても差し止めるという規定が関税法上導入されることになっておりますので、輸出者側についても同じような議論がございます。
委員の意見につきましては、水際手続は単なる行政手続というよりは法律手続に近いのではないか、まだ実績は蓄積されていないのではないかといったような御意見がございます。
対応の方向でございますが、水際措置における輸入者側代理につきましては、結局当該物品が侵害しているかどうかというところを判断するというのが一番重要な部分ございまして、この部分では弁理士の知見を生かせるのではないか。また、アンケートによりましても6割の方は輸入者側の代理を弁理士に依頼したいという要望を示しております。もちろん輸入差し止めの後、訴訟等の法律的手続になった場合には、当該手続の代理は弁護士が行うということでありまして、これについては現行の輸入者側代理において何ら扱いが異なるものではないということでございます。
他方、実はこれは通関士の行う業務ともなっているということもございまして、こういったような通関士とのいわゆる士業間の業務についてどう考えるかという問題もございますので、そういったことも踏まえて今後検討していくべきではないかというふうに考えられると思います。
以上でございます。

中山委員長

ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして御意見、あるいは御質問がございましたらお願いいたします。
どうぞ、三尾委員。

三尾委員

まず業務に関しまして、前回既に書面で意見を出しておりますので、詳細に述べるところではありませんが、特定不正競争に係る弁理士業務について付け加えさせていただきたいと思います。特定不正競争というのは、そもそも当事者対立構造を前提として、民法の不法行為にかなり似ている色彩を有する紛争であるということを看過すべきでないと思います。
前回の改正では、特定不正競争は、昨今の技術の進歩や多様化に伴って弁理士の知見を必要とするということから、制限的に弁理士の業務として加えられたという経緯がございます。しかし、本来は、不正競争行為に関する紛争を適正に解決するためには、民法や民事訴訟法の素養が必要であるということは既に述べたとおりです。現況では先ほどから議論がありましたように、弁理士試験の制度や研修制度におきまして現段階では十分な民法や民事訴訟法の研修や能力担保がなされているとは言いがたいという状態にあるかと思います。
さらに、方向性としては、研修や試験制度についてもどちらかというと、緩和する方向に向かっていくのではないかということも考えられますので、将来的にはこの分野につきまして特に十分な研修等がなされない限りは、現段階で業務を拡大するということに関して妥当ではないというふうに考えております。これはあくまで弁護士として、弁理士の業務の拡大を阻止するというような個人的というか、業界的な利己によるわけではなくて、最終的には国民やユーザーの方々の利益を害する懸念があるということから申し上げている次第であるわけです。
先ほど澤井委員の方からも御意見もありましたように、弁理士としてそもそもどうあるべきなのかという点をまず念頭に考えていかなければいけない。これは、弁護士も当然そうなんでちょっと口幅ったいのですが。弁護士と弁理士というのは本当にいいパートナーであります。個人的にもそう思っておりますし、他の弁護士の方々もそんなふうにおっしゃっていまして、弁理士さんがいなければ知財訴訟等はやっていけないということはあるかと思います。弁護士として弁理士さんに期待するのは、あくまで弁護士にはない技術のサポート、技術のエキスパートであるということで、それを第1に考えていただければと思うわけです。そうすることによって、弁護士と弁理士はうまくパートナーシップを組んでやっていけるのではないか。最終的にはユーザーや国民の方々に十分なサービスを提供できるのではないではないかというふうに考える次第であるわけです。
長くなってしまうのですが、各論について申し上げますと、まず10号、11号については、コンテンツの取引に関する契約の効力や著作権や不正競争防止法等の補完的役割というところなど法律論がかなり絡む領域であるわけです。ですので、一概にコンテンツ、技術的であるというふうには言い切れないという分野かと思います。
さらに、13号については、商標権と絡んでいるという御意見がありますけれども、これについては、原産地、品質、内容など、それだけ単独で見ると、弁理士さんになじみ深いというふうに見えますが、実は直接の被害者は需要者、特に消費者であるわけです。ですので、特許庁に対する出願業務等とは全く異なっている業務であるということになるわけであって、さらに言えば、不当景品類及び不当表示防止法や食品衛生法、その他の法律にも深く絡んでいるという分野になっているわけです。ですので、そう簡単に商標に似通っているから業務に入れるということは好ましくないというふうに考えるわけです。
14号につきましては、従前申し上げたとおりでございます。
15号についても同じように、これは代理人等が正当な理由なく、同盟国商標権者の承諾を得ることなく、同じような商標と同一又は類似の商標を使うということが不正競争行為に当たるという条項であるわけですので、検討すべき点は商標そのものということではなく、代理人であるか否かとか、正当な理由なく行っているかどうかというような判断でございまして、一概に商標に関係するからということで業務に入れるべきではないというふうに考えております。
輸入者代理に関しましても、従前述べたとおりでございまして、訴訟代理の単独受任についても従前のとおりというふうに申し上げたいと思います。
最後に、細かくなりましたけれども、あくまで弁護士は弁理士さんと共同して、いいサービスを皆様にサービスしていきたいということを念頭に願っておりまして、弁理士さんとしてはあくまで本来業務のエキスパートとしての領域をさらに深めていただきたいというふうに考える次第であります。
以上です。

中山委員長

ありがとうございました。
他に御意見ございますか。
では、谷委員、どうぞ。

谷委員

最初に外国出願関連業務についてですけれども、今の推進計画においても、弁理士として期待されるのは国際競争力のある弁理士であるということです。日本弁理士会としても国際的な研修は以前から力を入れておりまして、新人研修においても外国の出願実務等についての研修も既に行っておりますし、他に継続研修といいますか、既登録の者に対してもいろいろな面で、例えばアメリカの特許法とか、ヨーロッパ、中国、韓国等の法律についても研修を行いまして、非常に多数の弁理士が研修に参加しております。
ぜひ外国出願関連業務につきましては、標榜業務として認めていただきたいと思います。それにより、日本弁理士会が十分に指導・監督ができるということも我々としては考えておりますので、研修とあわせてこれについては適切に対応していこうと思っています。
また、外国出願関連業務という表現があまり法律上ふさわしくないというのであれば、中身をとった形でぜひ検討していきたいと思っております。これについてはぜひ実現していただきたいと強く要望します。

中山委員長

ありがとうございます。
それでは、相澤委員、どうぞ。

相澤委員

前回の改正で、弁理士がいわゆる産業財産権四法以外の業務もできるようになったということが1つ前提としてあると思います。前回の改正以前であれば、産業財産権四法以外の法令については業務をすることができなかったわけでありますから、その前提であれば三尾先生がおっしゃったことはそのとおりだろうと思いますが、前回の改正におきまして四法以外の業務も可ということになったわけで、事情が異なるのではないかと思います。
1つお伺いしたいのですが、これによって弊害というものが生じているのでしょうか。弁理士が特定不正競争等に関する業務を行ったことによってマルプラクティスの問題が生じているのかどうかをお聞きしたいと思います。もしマルプラクティスの問題が生じているならば、これ以上業務を広げるより、むしろ業務は見直すべきということになるのだと思います。そうでないとするならば、さらに規制を緩和するということも1つの考え方ではないかと思います。
ここに掲げられている業務につきましては、三尾先生のご指摘があるわけでありますけれども、現に四法以外の部分にも広げられているわけでありますから、関連がある分野としてこれを業務に加えるということも一理あるのではないかと思います。
それから、水際については、前回の改正のときは、輸入差し止めの申立ての代理人しかありませんでした。手続が変わったので、現行の制度のまま維持するというのも何かちょっと変な形になってしまいました。これはバランスをとっていいのではないかというふうに思います。

中山委員長

それでは、三尾委員。

三尾委員

先ほどの点で、まず問題が生じているのかという問い合わせなのですけれども、具体的にどうかということに関しましては、取り立てて大きな問題になっているというようなことまではちょっと把握しきれていない状態です。
ただ、不正競争の範囲を広げるということにしますと、事務局がおまとめいただきました論点整理の最初のところで特定不正競争の4ページの2なんですが、弁理士さんは裁判外紛争解決手続、いわゆるADRで単独代理ができるということになっているんですね。現状でそれほどADRは盛んになっていないと聞いておりますので、具体的な問題は発生していないかもしれませんけれども、事務局がおまとめいただいた、共同訴訟代理だから大丈夫だろうというような考えはADRに関しましてはちょっと当たらないのではないかというふうに思うわけです。そして、ADRはこれから推進していこうという方向にあるわけですので、その際に十分な準備をしないで特定不正競争の範囲を拡大してしまうことについては、将来的に問題が発生する可能性があるのではないかというふうに考えております。
また、輸入者代理ですが、これもさまざまな意見があろうかと思います。私の個人的な意見としては、将来的にも絶対だめだという考えは持っておりません。ただ、現段階では、水際手続に関してかなり手続的に流動的な状態ではないかと思うんです。今般税関や経産省の有識者会議で弁護士が参加していろいろ意見を述べる機会が得られまして、私自身も参加させていただいたのですけれども、十分な事例の蓄積がないことから制度としてまだ確立しておらず、流動的なのではないだろうかというふうに思います。ですので、もう少し様子を見てからでもいいのでと思う次第であり、ちょっと時期尚早ではないかというような個人的な意見を持っております。

中山委員長

ありがとうございます。
それでは、前田委員。

前田委員

外国出願関連業務についてですが、現在も業務として行っているので、あえて加える必要はないのではないかという意見もありますが、標榜業務にしたことによる大きなデメリットがないのであれば、標榜業務にすることによるメリットというものは確実にあると思いますので、私は標榜業務にしていただいた方がいいと思います。ユーザー側としてはこれから外国出願がどんどん増えていきます。標榜業務にすることによって、弁理士会さんの方で研修が増えたり、質の担保をしていただくということがどんどん増えていくことが予想されますので、大きなデメリットがないのであれば、ぜひとも標榜業務にしていただいて、質を高くしていただくということにしていただけたらと思います。

中山委員長

ありがとうございます。
戸田委員、どうぞ。

戸田委員

同じく外国出願関連業務ですけれど、外国出願という表現が適切かどうかという議論があると思います。地域や共同体への出願もあるわけで、この場合、どう定義するかというのは難しいのでしょうけれども、工夫の余地があると思います。弁理士の方でやっておられる仕事というのは単なる補助者ではなくて、我が国で生まれた知的財産を国外できちんと権利化していくための非常に質の高い、付加価値の高い仕事です。
資料の中に弁理士法上の指導・監督が及ばないことによる具体的な問題が生じていないと書かれているのですが、ユーザーから見ると、幾つか問題はあると思っています。特許事務所がやった方が費用が高いとか、質が悪い、要するに国外の法律や手続に通じていない事務所や弁理士の先生がいるということで、ユーザーの一部には不満があります。そういう意味では、日本弁理士会にミニマムの指導・監督をしていただいた方がむしろ私は良いのではないか、標榜業務に書いていただいた方がいいのではないかと思っています。
それから、必ずしも当該業務が国内の出願に基づいて行う業務ではないと書かれていますけれども、実態としては90%以上国内の出願に基づいてなされている業務ではないのかなと思います。言い方を変えれば優先権主張なしで日本人の出願人が直接弁理士に頼んで国外の代理人に何か手続を依頼するということはほとんど考えられないわけですので、実態から見ても私は標榜業務にしていただいた方が良いのかなと思います。
それから、特定不正競争の問題、輸入者代理の問題等は時期が早いかなという気はいたしますけれども、他の法律とのバランスからいって、もし広げても良いのであれば広げても良いのではないかなと思います。
以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
では、神原委員。

神原委員

まず外国出願関連業務なんですが、この言葉につきましては、以前も申し上げましたように、非常にわかりにくいところもございますし、また適切でないと思われますので、何か別の言葉に置きかえたいという意向を持っております。
それから、名前だけでなく、その実体も相当不明確なところがございますので、今戸田委員がおっしゃられたような形で、国内出願、すなわち特許とか実用新案とか意匠とか商標とか、そういう出願を基礎とするパリ条約に従った出願に関連する書類の作成とか、あるいはPCTの国際出願というのがございますけれども、それによって指定された締約国における手続に関連する書類の作成とか、その程度まで絞り込んだ議論をしていただくこともよろしいのではないかと思っております。
それから、特定不正競争なんですが、細かいところは、私ども日本弁理士会がまとめました資料6を見ていただきたいのですが、まず1つ、弁理士法上で弁理士が特定不正競争に関与できる場面、これは限られておりまして、まず1つがADRの代理です。ただし、このADRは、特定の指定された機関でのADRでございますので、一般的なADRとは多少違っているというふうに思います。それから、補佐人としての役割を果たす場合の裁判所での業務です。それから、もう1つが、特定侵害訴訟における弁護士さんと一緒に行う訴訟代理です。この3つの場面に限られておりますので、いずれも弁護士さんもおられる状況と思います。ADRは確かに文言上は弁理士の単独代理ということが考えられますけれども、実態的には、恐らく弁護士さんもいらっしゃる場合がほとんどだろうと思います。
それから、補佐人の場合もそうでして、本人の補佐人ということもございますけれども、まず代理人としての弁護士さんがいらっしゃるケースで、そこに入って一緒にやるということかと思います。
特定侵害訴訟に関しましては、これは言うまでもなく、弁護士さんと一緒にやる、そういう場面でございます。こういったところで弁理士としての知見が十分発揮できる、そういった方が望ましいのではないかというふうに考えおります。

中山委員長

ありがとうございます。
どうぞ、坪田委員。

坪田委員

外国出願関連業務ですが、これはだれでも行うことが可能な業務で、それを弁理士法に標榜業務として掲げる。標榜業務として掲げる程度ならば、その他の人たちが行うことに影響を与えないのであれば、メリットが大きさそうなので、できれば標榜業務として入れていただいた方がいいのではないかと思います。

中山委員長

谷委員、どうぞ。

谷委員

特定侵害事件に係る訴訟代理権についてですが、私も現状でこの話は時期尚早だろうと思っております。これから裁判所で、今裁量で単独出廷も認められる状況ですけれども、そういう弁理士が増えたり、社会がやはり弁理士が単独で代理すべきであるとか、弁護士さんもそういうことに対して十分理解があるというふうに、弁理士が十分な経験を持った上でそういう話が出るならばいいと思います。我々としてはもちろんこういう夢は持ちますけれども、現状では時期尚早だろうと考えております。

中山委員長

それでは、清水委員、どうぞ。

清水委員

今、谷委員がおっしゃられたことと同じですけれども、特定侵害訴訟の単独代理という問題については、現状では難しいという御意見のとおりだと思っております。
ただ、将来どうなるのかということに関しましては、弁理士さんたちの業務というのは,本来,訴訟に出られることではない出願の部分が非常に大きなウエートを占めていると思いますので、将来であっても,多くの皆さんが共同代理として訴訟を経験されるという事態が本当に来るのかということを考えなければいけないと思います。法廷に出たことのない弁護士さんというのは今までの現状ではほとんどあり得なかったわけですけれども、法廷に出ない弁理士さんというのは当然たくさんいらっしゃるわけで、7~8割の方が出るような状態というのは、なかなか実現が難しいのではないでしょうか。そうすると、もう1つの方法として,いわゆる付記弁理士のときと同じように、更にもう1つの資格制限を設ける、あるいは能力担保試験制度を設けて、単独代理を検討して行くのかなどと考えております。
特定不正競争の範囲の拡大の問題については、相澤先生が実際にどんな弊害が出ているのかとおっしゃられましたけれども、そもそも件数が非常に少ないので、現実の訴訟に関しましては弊害もないだろうと思います。私どものところでも,恐らく年間に営業上の利益侵害の不正競争では、数十人の弁理士さんしか担当されていないと思います。日本全国まとめましても大差ないでしょう。ですから、現状でやっていらっしゃらない不正競争行為に関して更に増やしていく必要性が本当にあるのかと疑問に思っております。ただ14号につきましては、侵害訴訟の警告に対するカウンターパートとしてこの訴訟が先に提起されるということがありますので、その部分に限って言えば、弁理士さんが関与される必要性があることは私どもも承知しております。
あと、個人的には,4の輸入の水際規制への業務拡大は賛成でございますし、国際出願関連業務についても、これは、戸田委員などがおっしゃられたように、うまい書き方があれば標榜業務としては入れることも十分可能ではないかと思っております。

中山委員長

ありがとうございます。
澤井委員、どうぞ。

澤井委員

私は外国出願を標榜業務にする件については、規定するようにした方がいいのではないかという感じがいたします。これは多分皆さんの御意見と一緒です。
この一連の議論を聞いていても、多分弁理士さんの数が増えて、その質をどうやってきちんと上げて、弁理士に仕事を依頼するユーザーサイドにどれだけ安心して使える専門家を増やすかという観点に立っているのだと思います。そうだとすると、標榜業務と明確に指定することによって、さっき谷委員がおっしゃったように、日本弁理士会としての指導・監督がきちんと目が届くようにして、クライアントが安心して仕事をお願いできるような環境整備はしておいた方がいいと思います。
この議論が出たときに、弁理士会が仕事を広げるためにこういうことを言っているのではないかという観点で懸念を言われる方もいますので、今言ったような標榜業務を規定することによりクライアントにも安心の度合いが広がるのだといったような理由をわかりやすく皆さんに説明することが大事ではないかなと思っています。
以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
他に御意見ございませんでしょうか。
相澤委員。

相澤委員

外国出願関連業務については、反対というわけではないんですが、外国出願関連業務を日本の弁理士法に規定するというというのは、法令上他に例がなく、それには理由があると思われるので、それは避けていただきたいと思います。先ほど、神原委員から御提案がありましたように、現行法の枠内で規定していただければ良いのではないかと思っています。

中山委員長

ありがとうございます。
他にはよろしゅうございましょうか。

弁理士の懲戒制度等の在り方について

中山委員長

それでは、この3つのテーマの論点整理につきましてはここで一通り終了させていただきまして、次に、前回御提案のございました「弁理士の懲戒制度等の在り方について」の資料に基づきまして事務局から説明をお願いいたします。

稲垣秘書課長

それでは、資料3に基づきまして簡単に御説明いたします。
まず、弁理士の懲戒制度、広い意味での懲戒ということでございますが、現行制度の概要でございますけれども、2種類ございます。
1ページ目の(1)にございますように、弁理士法上は行政庁、すなわち経済産業大臣が行う懲戒というものが法律上規定されております。これは弁理士が弁理士法や同法に基づく命令、これは下の注にございますように、弁理士法に基づく政省令のことでございますけれども、そういうものに違反した場合には行政処分として懲戒を行うということで、懲戒は戒告、2年以内の業務の停止、それから業務の禁止でございます。
なお、業務の禁止処分を受けた場合には弁理士資格を剥奪するということが法律上書かれております。
何人も弁理士に懲戒事由に該当する事実があると思料するときは、大臣に対し、懲戒請求ができる。また、日本弁理士会は、その会員に懲戒事由に該当する事実があると認めたときは、大臣に対し、その事実を報告するということになっております。
懲戒の効果でございますが、そこに書いてございますように、それぞれの効果がございます。
2ページ目の④でございますが、懲戒の実績でございますけれども、12年の改正法以来、大臣の懲戒については2件。1件が戒告、1件が業務の禁止を行っております。
資料3-5をごらんいただければと思いますが、他の士業と比べますと、大臣の行う懲戒、あるいは弁理士会の行う処分、後ほど御説明いたしますが、それぞれ弁理士さんの人数が他の士業と比べて相対的に少ないことを勘案いたしましても相当少ない状況になっております。
一番上が弁理士でございますが、大臣による懲戒がこの5年で2件。それから、弁理士会による処分が例えば平成17年度で4件でございますが、その下の弁護士の場合には行政庁による懲戒はございませんけれども、各弁護士会による懲戒が平成17年62件。公認会計士以下は大臣による法律上の懲戒と士業団体による処分とが並立しているわけでございますけれども、公認会計士の場合には例えば17年度行政庁による懲戒が10件、税理士の場合には単年度22件、司法書士36件等々。これは大臣、具体的には特許庁でやっているわけですが、これが十分に、ワークしていないのかもしれない。それから、士業団体による処分につきましても他の団体と比べて日本弁理士会による処分は非常少ないというのが実態でございます。
2ページに戻りまして、懲戒事由でございます。⑤のaでございますが、他士業における懲戒事由の規定を見ますと、弁理士法のように法令違反以外に、故意又は重過失により不適切な業務を行ったとき等の懲戒事由が入っておりまして、これが弁理士法と違う部分でございます。なお、他士業でも懲戒の種類は大体弁理士法と同じでございます。
3ページ目の(2)でございますが、弁理士会が行う処分でございます。これは弁理士法57条1項9号の規定、会員の品位保持に関する規定を会則に定めるべきということを受けまして、日本弁理士会の会則におきまして会員が法令又は会則等に違反した場合において、本会、日本弁理士会の秩序又は信用を害したときは処分することができると、会則49条でございます。処分の種類は戒告、会員に与えられた権利の2年を限度とする停止、大臣に対する懲戒の請求、退会ということでございます。
4ページ目の上の方のdでございますが、日本弁理士会が会員に対して退会処分を執行する。これは実際は、会費未納入というのか大部分ですけれども、その場合には大臣の認可が必要ということでございます。
④の処分の実績は、先ほど申し上げたように、日本弁理士会による処分も相当実績は少ないということでございます。
5ページ目の2、問題の所在でございますが、(1)懲戒及び処分、大臣による懲戒及び弁理士会による処分の併存ということで、これは他の士業でも併存しているわけでございますが、弁理士の場合には必ずしもこの2つの制度が明確に整理された考え方に基づいた運用が従来されてきていないということが問題だろうかと思われます。
したがって、(2)にございますように、これは規制改革会議等からも指摘を受けているわけでございますけれども、どういったような場合に懲戒にするのかということについて明確化が今後必要ではないかということでございます。
また、日本弁理士会においては、会員の処分については機関誌には掲載しますが、ユーザーには公表していないということで、出願人等に不利益を及ぼした場合にはユーザーに対しても公表すべきではないかということでございます。
それから、懲戒の種類なんですが、現在業務の停止又は業務の禁止を受けますと、既にその弁理士を使っている出願人は新たな代理人を選任しなければいけないということで、なかなか業務の停止、業務の禁止処分を行いにくい実態がございます。したがいまして、6ページ目にございますように、いわゆる新規業務の受任禁止ということで、懲戒の時点で既に受任しているものについては引き続きできるけれども、新規については一定期間受任できないといったような新たな懲戒の種類も必要ではないかということでございます。
基本的な考え方でございますが、(1)懲戒制度と処分制度の考え方の明確化ということで、先ほど御説明いたしましたように、それぞれの措置についてどういったような基準でどういう処分を発動するのかということについてあらかじめ明確化をして、公表しておく。なおかつ、懲戒と日本弁理士会の処分は制度的には重複するものではございませんので、1つの違反行為に対してそれぞれの制度の観点から両方行うことも可能であるということを明確化しておくべきではないかと思われます。
行政庁が行う懲戒については、公益的見地から行う制裁措置ということで、先ほど御説明しましたように、懲戒の対象も解釈を明確にするために他士業に倣いまして、法令違反だけではなく、て、故意又は重過失により不適切な業務を行ったことというのも追加して明確化すべきではないかということでございます。
それから、7ページ目の方にまいりまして、例えば懲戒部会、これは審議会で議論が必要なわけですが、体制整備を行うといったようなことについても検討が必要ではないかと考えております。
他方、日本弁理士会が行う処分につきましても会費滞納や選挙違反といったようなbでございますけれども、自治の観点では、それはそれでいいわけでございますけれども、弁理士の行為が出願人等に対して不利益を及ぼした場合につきましては、行政庁に事実を報告するだけではなくて、それが自治的見地からも問題である場合には、会の処分とあわせて行政庁への報告ということを行うべきではないかと考えられます。
運用体制の整備といたしまして、先ほど申し上げましたように、運用基準の整備、公表と、ユーザー保護の観点から出願人等に対して不利益な行為を及ぼした場合の処分については公表すべきではないかということでございます。
(2)は先ほど申し上げた新規業務の受任停止というカテゴリーを懲戒制度として設けるべきではないかということでございます。
(3)でございますが、業務の停止命令に違反した場合のいわゆる処罰の規定が現行法上ございません。これは恐らく業務の停止命令に違反した場合にはさらにもう1回懲戒部会を開いて業務の禁止をして、弁理士資格を剥奪するということかと思われますが、それも非常に迂遠なので、場合によっては業務の停止命令を受けてもなおかつ業務をしたような場合には直接刑罰の対象とするということもあり得るのではないかということで、今後要検討だろうかと考えております。
以上でございます。

中山委員長

ありがとうございました。
ただいまの説明につきましては何か御意見、御質問ございましたらお願いいたします。
どうぞ、谷委員。

谷委員

日本弁理士会の方から会員の処分等の手続のフローチャートを本日緊急でお配りしていただきましたけれども、これはお時間をいただいて説明した方がよろしいでしょうか。それともこのフローチャートだけでよろしいですか。

中山委員長

時間がないので、見ればわかるのではないかと思いますけれど、特に説明すべき点がございますか。

谷委員

一番上に「紛議調停の請求」「苦情の申立て」「処分の請求」とありまして、それに対応するために紛議調停の委員会、それから綱紀委員会、さらに審査委員会、こういうものがありましたけれども、本年度からコンプライアンス委員会というものを設置しまして、問題に対して迅速に的確に対応しようとしております。それから、もう1つは、不服審議委員会ですけれども、これを本年度設けまして、不服申し立てをできるようにしております。
簡単に申し上げますと、以上です。

中山委員長

ありがとうございます。
それでは、これは後で皆さん十分御覧いただければと思います。
他に何か御意見、御質問ございますか。
どうぞ、澤井委員。

澤井委員

データでよくわからないところがあるのですけれど、例えば2ページの懲戒の実績のところで、他の士業に比べて懲戒の実績が著しく少なくて、実際にはもっとあるのではないかといったようなニュアンスを割と断定的に書いているような感じがします。しかし、仕事の性質上、懲戒すべきなのはもともとこの程度でしかるべきだとか、そういう見方はないんですか。ちょっとそこのデータの読み方がわからないのです。数字上は確かに違うというのはわかるんですけれど。

稲垣秘書課長

厳密に言えば、おっしゃるとおりだと思います。ただ、これは役所自身の反省も含めて、それぞれ各士業ごとにもちろん行っている業務が違うのですけれども、弁理士だけ懲戒に当たる事由が他のすべての士業と比べて圧倒的に少ないとも思えないんですね。したがって、やはり少ないのではないかなということでございます。

澤井委員

ここに書けない事情で、何かある程度実際にいろんな案件で日本弁理士会さんの中で議論している案件があるのだけれど、最終的にここに言っているのが少ないということか、何かそういう前提で書かれているんですか。

稲垣秘書課長

1つは、例えば参考資料の3-4を御覧いただくと、戒告11件というのがございますけれども、日本弁理士会の処分事由ですね。これは中を御覧いただくと、特に上の方は本当にこれは戒告でいいんだろうかなというふうに普通の人は思うと思うんですね。これが戒告で済んでいるということは、具体的には言えませんけれども、これは手前の事案は何も処分されないわけです。これは役所でも同じで、先ほどから申し上げているように、他の士業であれば一般的には処分に値するようなことも、今までいろんな事情の中で必ずしもやられてこなかったのではないかなという部分もございますので、きちんと基準を明確化して公表しましょうということでございます。

澤井委員

わかりました。

中山委員長

他に何か。
相澤委員、どうぞ。

相澤委員

平成16年の戒告まで特許庁による処分は何年間なかったんでしたか。

稲垣秘書課長

50年ぐらいです。

相澤委員

これは他の士業に比べて明らかに少ないと思います。そういう問題がなかったかというと、新聞紙上に出た問題もありましたので、処分が行われてこなかったということになるのだと思います。これは適正化した方がいいということで、平成16年、18年に処分が行われたということだと思います。法を遵守していこうという趣旨ではないかと思います。

中山委員長

ありがとうございます。
どうぞ、野坂委員。

野坂委員

他士業に比べて不正行為が少ないというのは大変喜ばしいことだと思いますけれども、先ほど秘書課長の話で若干気になったのはワークしていないかもしれないという御発言がございましたけれども、そういうような懸念は役所側も何か認識されているのですか。

稲垣秘書課長

非常に答えにくい御質問なのですが、やはり懲戒制度ですので、審議会における懲戒部会というのを何回か開かなければいけないわけです。したがって、あらかじめ先ほど申し上げたように、もう少しそういうのを円滑に開けるような体制整備する。あるいは役所側でもやはり基準をあらかじめ明確化しておかないと、不利益処分である以上、あらかじめ出している基準に違反したから不利益処分をしますよというのはわかりやすいのですが、基準も出さずにやるのは、なかなかやりにくいので、その体制の整備が必ずしもきちんとできていなかったのではないかという反省点はございます。

野坂委員

それに関連してですけれど、やはり不正行為に対する処分というのは明確であること、そしてまた一罰百戒ではないけれども、ユーザーにもわかりやすく示すもの、そして再発防止に役立てる。そういう側面もあると思います。今課長がおっしゃられたように、やはり基準は明確にして、オープンにしていく。これが非常に重要なことだと思います。
それともう1点は、今不正の処分を受けた者の氏名が日本弁理士会の方で公表されていないということですが、これはやはりしっかりと公表するべきであろうと私は考えます。先ほどの一連の議論で弁理士とは何なのかというそもそも論の話がありましたけれども、やはり社会的にも立派な士業でありますから、その一方で何か不正があれば、しっかり処分し、その氏名を公表していくということが大事だと私は考えます。

中山委員長

ありがとうございます。
三尾委員、弁護士会の方は処分は公表するのでしょうか。

三尾委員

そうですね。弁護士会の方は日弁連が出しています機関誌があるのですが、そこに必ず懲戒実績が載ります。懲戒された事案の概要とその理由についても載りまして、それが毎月送られてくるのですけれども、一番最初にそこを見るというのが大体弁護士の実情です。
この程度でこの処分か、みたいなことで、個々の弁護士が、懲戒に関する基準をなんとか把握しようと努めている状態です。

中山委員長

ありがとうございます。
他にございますか。
どうぞ、神原委員。

神原委員

懲戒の種類の新設なんですが、私も現在の懲戒の種類にさらに別途のものを増やすことに必ずしも反対ではございませんが、ただ、その原因となりますのが、業務の停止、あるいは業務の禁止というところに至るに当たっては、やはり法令違反でございます。これは相当重大な違反でございますので、それをきちんと処罰することがまず第1だろうと思います。
確かに出願人に対する不利益なことが生じてくるのですけれども、だからといって、それを和らげるために、別途の、比較的軽い懲戒でいいのかという問題があろうかと思います。
ですから、出願人に対する不利益が生じた場合の救済は、また別途の手段で何か考えられるのではないかというふうに思います。例えば期間がきてしまうというような場合もございますので、その場合には多少の期間延長を特例的に認めるとか、そういった手法も行政的な措置としてあろうかと思います。出願人の影響だけを考えて、少し軽い懲戒処分というのは、余りなじまないのではないかという気がしております。

中山委員長

どうぞ、相澤委員。

相澤委員

実際には処分を決定する委員会におきましては、出願人に対する影響ということを全く考えないというわけにはいかないということです。私が提案申し上げた理由は、詳細な分科会の内容は非公開ですけれども、適正な処分をするために必要ではないかということです。業務停止と戒告しかないという二者択一になると、一定期間の業務停止にすべきなのだが、出願人がみんな困ると言っているのに、どうするのだということが実際は議論になってきます。そこで、けしからんことをしたんだから処分はするけれども、今いる出願人が困らないようにしてくださいということも考えてあげなければいけないのではないかと思います。

中山委員長

ありがとうございます。
テクニカルにはいろいろあり得ると思います。即、業務停止ではなくて、例えば2カ月後に停止とかですね。今度の監査法人の処分などはそうですが、いろんなことが考えられると思います。他に御意見ございますか。
澤井委員、どうぞ。

澤井委員

三尾委員に御質問ですけれど、弁護士会の場合には懲戒を弁護士会の中でやるとき、ある種の基準なり、運用みたいなものはオープンになっているんですか。

三尾委員

オープンにはなっていないです。今まで積み上げた事例や基準というのはなかなか難しくて、明確な基準が立っているわけではなくて、個々の事案で判断しているという状態です。ただ、似たような事案で実績として積み上げたものがありますので、それを整理して、公表はしなければいけないなというような認識はありますので、今作業中というようなことなのではないかと思います。

澤井委員

それに絡むのですけれど、先ほど処分を受けた人は弁護士会の会報では見られるけれど、我々一般ユーザーは見られないというか、知り得る手だてはないんですかね。先ほど5ページのところにも会員の処分については日本弁理士会も既に機関誌には掲載しているとありますが、多分一般ユーザーが知る手立てはないのでしょう。ユーザーから見ると、そのような情報を知りたいと思うことがあります。例えば、私の経験でも、売り込みに来た弁理士さんと称する人がいて、実はその方が処分を受けていたというのが後でいろいろ調べてみたらわかったということがありました。そのような情報を知るルートが全然ない場合に、そういうものをここのまる2に書いてあるように、例えば処分を受けた内容を知ることができれば、メリットはあると思います。処分の内容は、これはひどい弁理士だなというのと、たまたま会費未納で軽微だなとか、多分いろいろ種類があると思うんですよね。一般の方がそれを知ることができて、新しい弁理士さんに仕事をお願いするときの1つのメルクマールになるような形になっている方がやっぱりいいだろうなという感じがしたので、そういう意味での御質問です。
以上です。

三尾委員

現段階では官報に載るということもありませんし、ホームページ上で公開しているということもありません。一般ユーザーには公表されていませんが、問い合わせをすれば教えてもらえるのではないでしょうか。ただ自動的に公表するということにはなっていないかと思います。

中山委員長

どうぞ、清水委員。

清水委員

裁判所が一般のユーザーと言えるのかどうかわかりませんが、私どもも必要がありまして、日弁連の機関誌「自由と正義」の懲戒処分の欄を拝見しているのですが、処分が終了した過去の履歴になりますと、弁護士会に電話をして尋ねても個人情報との関係で教えてもらえないという扱いだと思います。ですから,自分たちのデータベースでもつくらないと,過去の懲戒歴はわからないわけです。
それから、弁護士会の綱紀委員会の方には,裁判所からも人を出させていただいて、参加しているのがたしか現状だと思います。

中山委員長

ありがとうございます。
「JPAA」というのは、これは何ですか。

谷委員

会員向けに「JPAAジャーナル」というものがありまして、その話だと思います。もう1つ、「パテント」という雑誌があります。これは一般の方も購読できるのですが、それではなくて、会員向けの機関紙の「JPAAジャーナル」というものだと思います。

中山委員長

他に御意見ございませんでしょうか。
それでは、御意見も出尽くしたようでございますので、また時間も迫ってまいりましたので、本日の議論はこの程度にしたいと思います。
その他

中山委員長

それでは、最後に中嶋長官から一言お願いいたします。

中嶋長官

まだ議論の途中ですから、締めてということではありませんので、今回も前回同様大変充実した活発な御意見をいただきましたので、こういう御意見も踏まえながら次回以降だんだん全体の方向性を出していくように努めたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

中山委員長

ありがとうございました。
今後の委員会開催のスケジュールにつきまして事務局から説明をお願いいたします。

小林弁理士室長

次回の委員会でございますが、事前に委員の皆様にスケジュールを伺っておりまして、次回は10月20日の金曜日、午前10時から開催させていただきたいと思います。
以上でございます。

中山委員長

今の説明でよろしゅうございましょうか。
御質問ございませんでしょうか。
では、10月20日の午前10時に次回を行いたいと思います。
他に質問、御意見等がなければ、今度のスケジュールについては事務局からの御提案どおりとしていきたいと思いますけれども、事務局としてはただいまのいろいろ出ました御意見を次回までに取りまとめていただきたいと思います。
次回も残りのテーマにつきましては論点整理を進めていきたいと思っておりますのでよろしく御協力をお願いいたしたいと思います。

閉会

中山委員長

以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会の第4回弁理士小委員会を閉会とさせていただきます。
長時間ありがとうございました。

[更新日2006年10月11日]

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