• 用語解説

ここから本文です。

第5回弁理士制度小委員会 議事要旨

平成18年10月
特許庁

1.開催日時

10月20日(金曜日)午前10時00分~12時00分

2.審議内容

  • (1)特許業務法人制度について(論点整理)
  • (2)弁理士事務所の補助員について(論点整理)
  • (3)弁理士情報の公開について(論点整理)
  • (4)日本弁理士会への強制加入制度について(論点整理)
  • (5)知的財産部門の分社化について(論点整理)
  • (6)利益相反規定(法第31条)について(論点整理)
  • (7)弁理士の懲戒制度等の在り方について(論点整理)
  • (8)弁理士研修制度の在り方について(論点の再整理)
  • (9)弁理士試験免除に関する要望書について

3.委員からの意見

(1) 特許業務法人制度について

  • 指定社員無限責任制度は非常にいいことだと考えるが、法人名とともに、指定社員名をきちんと明記するということを徹底した方が顧客にも安心感を与えることになる。代理人弁理士の人数が多い場合は、本当に代理しているのが誰なのかがわかるよう、運用できちんとコントロールした方が好ましいと考える。
  • 現在の法人数は少ないので、指定社員制度に改善して、特許業務法人が増えるようなことが望ましい。また、今後この数が増えていくのかどうか当然モニタリングしなければいけないと考える。
  • 指定社員制度の導入については、賛成を考えている。ただ、その際に、弁護士法のように、指定社員制度を導入した上で、個人の弁理士の名前にして、なおかつ、必要な範囲で責任も限定していく方向で、他の利益相反規定等の条項についてもあわせて改善していった方がいいのではないか。
  • 一人法人については、法人制度全体の設立要件等が緩和されている現状において、そういった全体状況も踏まえて判断されるべきではないか。

(2) 弁理士事務所の補助者について

  • 弁理士法上において名義貸し禁止規定を設けるとともに、ガイドラインを整備するという考え方は大変好ましい。
  • 名義貸しの禁止は、明確に法律に書くことが時代の要請と考える。
  • 弁理士事務所の補助員については、総論としては非常にいいことだと思うが、出願人の知財スタッフの扱いに関しては、弁理士の事務所の補助員とは同列に論じられないところもあるため、運用に当たっては産業界の意見を聞いて運用を決めた方がいいのではないか。

(3) 弁理士情報の公開について

  • ユーザーの立場からすると、情報公開は非常に意義のあることだと考える。ただ、情報の信頼性を高めるためにも義務違反や、虚偽、誇大情報に対してはしっかりとした処分ができるような措置をお願いしたい。
  • ユーザー側から見て、件数だけを提示されて、それで専門分野の実績と把握できるのかどうか、また、弁理士を選別する重要な情報としてとらえられるかどうか疑問を感じる。この件数は、絶えず変化するものであり、この件数をどうとらえるのか、共通のしっかりしたルールづくりが必要であると考える。専門分野の実績は、件数ではなく、各弁理士が関与した公開公報の番号を開示して、その内容が見られるようにすることも考えられる。また、外国出願関連業務の件数の場合は、標榜業務となったとしても、各弁理士が外国出願関連業務として認識しているもの全部が標榜化されるとも限らないため、例えば、外国出願関連業務は標榜化業務の範囲に限る等の区切りが必要だと考える。
  • 件数のところは年度ごとなのか、累計なのか、非常に煩雑な点があることと、出願について何人かで代理しているような場合、その全員の氏名を書くのか、担当の方1人を書くのか、事務所としての取り扱い件数を出すのか、個人として出すのか、公表すべき項目についてはさらなる議論が必要である。
  • 件数は、例えば、年度ごとと累計の両方を明示することが可能かどうか、検討するのはどうか。ユーザーからすれば、いろんな形で弁理士を判断するために、件数は1つの判断材料になると思う。ルールづくりを明確にした形で弁理士ナビ等に載せていただきたい。
  • 日本弁理士会においては、煩雑であるからと情報公開に消極的になることなく、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい。
  • 事務所からの件数の数字を出すというのはかなり難しいような気がする。特許庁において、ある程度データが取れるのであれば、それを公表すべきで、例えば特許業務法人という名前で出願しているものはどうするのか等、実際にデータをとるのはかなり大変だと思うので、慎重によく議論した方がいい。
  • 義務的な情報の開示は、弁理士が扱える分野のバックグラウンド程度のものにとどめて、あとは任意的で、件数の話は、いろいろな形での検討を進めた方がいいのではないかと考える。

(4) 日本弁理士会への強制加入制度について

  • ユーザーの立場からすると、維持する方向で考えた方がいいのではないか。
  • 強制加入は、弁理士数の量的拡大ということで、競争制限的効果というものを減らしていくという前提で強制加入制度が維持されたという前回の改正の経緯があり、義務研修も含めて強制加入制度を維持する前提を十分に考えるべきである。

(5) 知的財産部門の分社化について

  • 基本的には事務局案に賛成だが、分社内の弁理士に代理をさせると、弁理士事務所の補助者の問題と同様に、1人の弁理士が年間に何百件もということも容易に想定されるため、名義貸しの問題が生じるのではないか。したがって、何らかの形でそういった事態を防止できるような注意書きのようなものを入れた方がいいのではないか。
  • 基本的に知的財産部門の分社化については事務局案に賛成だが、企業グループの業務しか代理はできないというのはきちんと堅持すべきである。

(6) 利益相反規定(法第31条)について

  • 利益相反については、基本的には事務局案に賛成する。ただ、弁護士法の第25条を参考にした上で、実質的に利益相反にならない指定社員の存在というのも想定して、可能であれば、あわせて検討するのがよいと考える。
  • 利益相反については、当事者対立構造をとらない業務についても日本弁理士会がきちんと措置することを希望する。

(7) 弁理士の懲戒制度等の在り方について

  • 新たな業務の受任の禁止という場合に、その期間をどれぐらいにするかということが、運用面で非常に重要なポイントではないか。
  • 新規業務の受任の禁止は、例えば、ある事件で弁理士が不祥事を起こして、新規業務の受任の禁止になった場合、不祥事を起こした当該事件そのものについては、全ての業務を継続的に行えることになると思われるので、その妥当性に疑義がある。出願人、あるいはユーザーの利益保護ということからすると、業務の停止を全部もしくは一部というような形にすれば、そこで出願人保護の道が開けると考える。
  • 弁理士の懲戒制度は弁理士の規律を維持することもあるが、それはひいては出願人の適切な出願が行われるようにするためであり、特許などには期日があることから、期日が切迫している場合に業務を停止してしまうと、代理人がいなくなってしまうという問題がある。新たな受任ができなくなるということは、かなりの抑止力にはなるのではないか。
  • 本来は処分しなければいけないのに、クライアントの保護のために躊躇して踏み切れないことがあるなら、今後厳正な懲戒処分をきちんと行っていこうという方向性からすると、一工夫した方がよいと考える。

(8) 弁理士研修制度の在り方について

  • 日本弁理士会は、既登録弁理士の継続研修については、弁理士法に義務化の根拠規定を置き、それを受けて日本弁理士会が責任を持って研修を行う。登録前の新人の義務研修は、必要最小限の研修にとどめ、弁理士試験合格発表後3カ月という最短のコースで実施を行い、かつ、翌年の3月には補修も含めて行うことによって、ほぼ全部の合格者が新年度4月から弁理士業務を行えるように努力する。また、受講者の負担を軽減するために、E-ラーニングとスクーリングの組み合わせによる研修として、働きながらも受講できる体制を整える。参入規制に該当しないよう最大限の配慮をするために、修了考査を行わず、レポート提出とする。
  • 今後具体的な検討を進めるに当たっては、試験制度の方の改正の議論の方向、その内容を常時視野に入れながら検討する必要があるのではないか。試験制度についてもいろいろと問題点、検討すべき点等が指摘されているが、どれ1つをとってもなかなか一筋縄ではいかないような問題が多く、改善されたとしても、試験に受かったらそれだけで一人前の弁理士として十分な活動ができるわけではない。試験でカバーできないような点を補完できるような研修であるべきである。
  • 弁理士に対する継続研修については、社会的ニーズも非常にあると思う。また、新人研修を法律上義務づけることとのバランスからしても、主体は日本弁理士会であることを法律でもきちんと位置づけた上で、倫理研修や業務適正化のための研修等をしっかりやっていくことが社会的に見て意義のあることではないか。参入障壁的に働くのではないかという観点からは登録後の方が望ましいという見方もあるが、研修の具体的内容が参入障壁的に働かないということが確保できるのであれば、登録前ということもあり得るのではないか。
  • 知的財産推進計画及び規制緩和の観点から、弁理士数の増大が要求されている状況の中で、今年度の論文式試験の合格者の数が減っているという状況であり、登録前の義務研修を行うことは、より参入制限的であると受けとられるおそれがあるため、登録後研修にするべきであると考える。研修は日本弁理士会が事後的に行うとするのがよいのではないか。
  • 研修内容等に、参入障壁について細心の注意を払うことを前提として考え、実際に新人研修をやると、おそらく2、3年行えば改善点が出てくると思う。今後の推移を見て、改善すべきところは大いに改善していくということで、また具体的に詰めて検討するというのがよいのではないか。新人以上に既登録者の問題の方が大きいことが一連の資料で浮き彫りになっており、継続研修の在り方が大きな課題ではないかと考える。
  • 3カ月間にスクーリングを7回、全国9カ所ぐらいでやるというのは、受講者にかなりの負担になるので、何か工夫が必要ではないか。
  • 学生の場合、提示された案のような日程で研修を組まれた場合には、ほとんど参加できないという人が出てくるのではないか。特に、学生は無職・無収入であると思われることから、奨学金制度もないところでどうにかして捻出させるというのは、負担が重いのではないかという懸念がある。
  • 受験生から見ると、本格的に弁理士をやる前にこれだけの内容のものを集中的に受講できるという面でメリットがあると思う。また、学生、無職の方等については、費用の負担があると思うが、日本弁理士会が例えば貸与制度や授講料の手当等、融通できる制度を考えている。
  • 7回のスクーリングが、学生の卒論、修士論文等との兼ね合いでどのぐらいの負担になるのかは、まだわからないが、それほどの負担にならないような形で実施すべきではないか。
  • 実際の研修を企画する際には、ユーザーサイドの意見も入れるような工夫をした方がよいのではないか。この研修は基本的に実務の最低限の基本を教えるということなので、基本的には例外なく全員に受けさせるという方向でやるべきではないか。
  • 研修は、今までの新人の任意研修の内容をそのままシフトするのではなく、内容の充実を行い、弁理士試験を受けるインセンティブとなるような研修にしてほしい。また、7回スクーリングを行うというのは、全国数カ所で行うにしても非常に大変だと思われるため、例えば集中的に数日で受講できるような工夫や配慮があれば、より魅力のあるものになるのではないか。
  • 事後研修であれば、免除は日本弁理士会で明確な基準をつくってやるようにすればいいと思うが、事前研修だと、法令で定められた義務の免除ということになるため、きちんとしなければならない。

(9) 知財専門職大学院からの弁理士試験免除に関する要望書について

  • 短答式試験の免除をするのであれば、短答式試験の合格者に対する翌年度以降の試験の免除ということが議論にのっていると思われるため、そのバランスを十分に考慮していただきたい。

(10) その他

  • 日本弁理士会としては、外国出願関連業務は、今後の我が国の知財に関する国際活動を推進する上で極めて重要であり、弁理士の国際性を担保する上でも、条約科目の試験については単に知識を問うだけではなく、論理的な思考についても保証するような制度にしていただきたいと要望する。

(11) 今後のすすめ方について

  • 2回にわたる論点整理での各委員の御意見を踏まえ、対応の方向を整理し、その後、パブリックコメントの案及び報告書の案を作成する。
    11月にパブリックコメントを行い、最終報告書案は次回12月の委員会で審議の予定。パブコメ案及び報告書案に何を盛り込むかという部分については、委員長に御一任いただき、各委員に諮って御了解をいただくものとする。

[更新日 2006年10月31日]

お問い合わせ

特許庁総務部秘書課弁理士室
電話: 03-3581-1101 内線2111
FAX: 03-3592-5222
E-mail: PA0113@jpo.go.jp