中山委員長
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本小委員会報告書案につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
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間庭審議室長
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御説明申し上げます。資料1でございます。これまでの御審議と、個別にも御意見を頂戴いたしまして、事務局で報告書案を取りまとめさせていただきました。
まず、1ページ目、開催経緯でございます。開催経緯、委員名簿については説明を割愛させていただきます。
4ページ目は目次でございます。章立ては、大きく三つございます。第1章として弁理士の資質の向上及び量的拡大と責任の明確化、第2章として知的財産権に関する専門職としての多様なユーザーニーズへの対応、第3章としてその他となってございます。
1ページめくっていただきまして、5ページ、はじめにでございます。今回の検討の前提として、知的財産制度の重要性が高まる中、知的財産制度を有効に活用し、事業者等が戦略的に権利を取得し、活用できるように的確にサポートする弁理士の役割の重要性が一層高まっている中、その質的、量的な充実が必要となっています。また、資格制度全体の社会的な信頼の醸成が求められており、資格者の質の確保・向上や専門職種としての懲戒の適正な実施といった資格制度全体の適正化の必要性が指摘されています。このような中、本小委員会におきまして、弁理士制度のあり方について幅広く議論し、今回、このような結果を報告書の格好で取りまとめたものでございます。
最後の段落ですけれども、「政府は、この報告を受け、必要な調整に速やかに着手をし、その結果を踏まえて立法化に向けた措置を含めた適切な措置を講ずることを期待するものである。」という格好になってございます。
次の6ページ目でございますが、改正弁理士法の施行状況でございます。これについては説明を割愛させていただきます。
10ページ目から、制度改正の具体的方向ということで、第1章、弁理士の資質の向上及び量的拡大と責任の明確化ということで、まず弁理士の研修制度について記載してございます。
これにつきましては、11ページ目でございますけれども、対応の方向として、弁理士に対する研修の義務化は必要ということでございまして、二つございます。既登録弁理士の専門能力の維持・向上を図る観点から定期的に行う継続的義務研修、2番目として新人弁理士の実務能力を担保する観点から行う義務研修と、この二つでございます。
まず、既登録弁理士に対する継続的専門研修でございます。この(1)でございますが、11ページ目の最後の段落になりますけれども、資質の維持・向上を図る観点から、弁理士法においてこれを義務づけることが適切ということでございます。
具体的には倫理研修、業務適正化研修、標榜業務研修等を主な内容とし、スクーリングとE-ラーニングを組み合わせつつ、一定期間、例えば5年以内に一定の時間、例えば70時間の研修を受講することを義務づけるということでございます。これについては弁理士登録をされている方が対象となりますことから、日本弁理士会が主体となって実施することが適切ということでございます。
(2)で、新人弁理士に対する義務研修でございます。さまざまな御意見がございましたが、このような格好で取りまとめたわけでございます。
まず研修は義務づけます。そこのところで、検討における基本的考え方ということでまとめております。弁理士倫理ですとか、弁理士としての心構え、あるいは条約ですとか、工業所有権四法にわたる出願手続、書類作成、審査対応、先行技術調査等ができるための基本的な知識を体得し理解することを主な内容とするカリキュラムとします。
新人全員が研修を確実に受講するようなスキームであること、また、これについても、例えば7回程度のスクーリングですとかE-ラーニング研修を行い、期間は3カ月程度までとします。研修の修了認定は、その出席と課題に対するレポートの提出及びそのチェックによって行って、独立した修了考査を行わないということでございます。
また、実務経験を有する新人もおられますので、それに配慮して、研修の一部を免除するような制度を設けることができないかと考えております。また、新たな参入障壁とはならないものという考え方でございます。
1ページめくっていただきまして、13ページ目でございます。これについて、登録前に行うか、登録後に行うかの議論についてまとめたものでございます。登録前研修については、普通に受講すれば修了できるような内容とします。修了考査は、先ほど申し上げましたように、行わず、出席とレポートで基準点を満たせば修了できるようなスキームにすべきという意見がございました。また、合格者がまじめに受講すれば修了できるようなものという意見がございました。
3番目のポツにございますように、基本的には国の管理下で行うべきであると、国が責任をもって制度を設計し、監督を行うべきであるという意見がございました。
登録後研修につきましては、最初のポツにございますように、登録後に研修を受けないで業務を行う人間ですとか、登録後も実務能力が不十分な者を最終的に資格者から排除できないといった可能性があるという御指摘がございました。
14ページ目の一番上の段落でございますが、制度設計に当たりまして、実務能力の最低限の担保を行い、なおかつ、すべての新人弁理士が受講し、かつ参入障壁とならない制度としていくことが必要だと、そのような基本的な考え方を踏まえながら、その具体的な研修の内容ですとか実施時期等々につきまして今後、政府において具体的な制度設計を早急に進めていくことが期待されるということでございます。
なお、(3)の研修の受講歴の公表につきましては、今後、この受講歴というものはユーザーが弁理士を選択する際の重要な情報であるという観点から、任意研修の受講歴についても弁理士会において公表すべきであるということでございます。
次に、弁理士試験制度でございます。試験制度につきましては、14ページ、15ページの問題の所在等は割愛させていただきまして、17ページ目に対応の方向を記載させていただいております。
まず、知的財産専門職大学院及び法科大学院の修了者の扱いでございます。これにつきましては、2段落目にございますように、知的財産専門職大学院につきましては、カリキュラム等によって十分な能力レベルが担保されていると認定できる大学院を対象とし、そのような大学院を修了した者に対して、弁理士試験の短答式試験におきます工業所有権法の部分を免除する制度を設けることが適切と考えられるわけでございます。
法科大学院につきましては、4パラ目になるわけでございますが、法科大学院修了者については今後、その能力レベルを注視しながら、論文提出を要件とすることなども考慮しつつ、弁理士試験の論文式試験について、その一部免除を引き続き検討が必要ということでございます。
次に、(2)の試験の一部について合格された方についての試験免除の拡大についての検討でございます。短答式試験においては知識を問い、論文式試験においては論理力を問うと、そのような試験目的が異なっていることも勘案すれば、18ページ目に書いてございますけれども、短答式試験の方は一度短答式試験に合格して相当の知識を有していることが認められた者につきましては、その所定の年数、公認会計士と同様だとすれば、2年ということでございますけれども、2年程度の短答式試験を免除するということが合理的と考えられるところでございます。
論文式試験につきましても、必須科目と選択科目とで個別に合否を判定しても問題は生じないであろうということでございまして、必須科目については論理力に加えて工業所有権に関する知識を問うていることから、免除というものは所定の年数、これも公認会計士と同様であれば2年程度ということでございます。
また、選択科目については現在でも有資格者に対しては永続的な免除が認められておりますので、既合格者に対する免除についても、これを永続的に認めるのが適当というところでございます。
次に、(3)弁理士試験の範囲でございます。これについては、平成12年の制度見直しの際に、単独での条約科目を論文式試験の対象外とする改正をしたところでございます。これについて御議論いただいたわけでございますが、客観的なデータとして、現在の試験制度における受験者の条約に関する知識あるいは条約の解釈、判断のレベルが旧試験と比較して低下しているとは言えないというところでございますので、今回、論文式試験に単独で条約を復活させることはしないということでございます。
ただ、条約についての知識ですとか、解釈力への配慮が重要であることは事実でございますので、以下の二つの措置ということで、工業所有権法令にかかる論文式試験の中で関連した条約の解釈等もあわせて問うことを明確化するということでございます。2番目として、弁理士会における法定義務研修の中でも条約関連の講義を行うということでございます。
次に、19ページ目に弁理士の懲戒制度等のあり方について記載させていただいております。次の20ページ目に対応の方向を書いております。
対応の方向として、まず懲戒処分制度の考え方の明確化ということでございます。行政庁が公益的な見地から行う懲戒と、弁理士会が自治的な見地から行う処分の考え方を明確に整理した上で、それぞれの措置の運用基準を整備し、公表していくことが必要であろうということでございます。
あわせて、弁理士法上の懲戒事由についても、現在、「弁理士法や同法に基づく命令に違反した場合」という規定となっておるわけでございますけれども、その解釈をより一層明確化するため、他の士業の例にもならいまして、法文上、「故意又は重過失により不適切な業務を行った場合」と、そのような場合についても明示すべきであるということでございます。
また、懲戒制度の厳格な運用を迅速に行い得るように、現在の工業所有権審議会の懲戒部会等を定期的に開催できるように所要の体制整備を行うことが必要ということでございます。
また、弁理士会の処分でございますけれども、そういった処分について、弁理士の行為が出願人等に対して不利益な行為を及ぼした場合の処分については、行政庁による懲戒と併科することもあり得るということを明確にする。また、ウェブサイト等を通じて一般へ公表すべきということでございます。
次に、(2)懲戒の種類の新設でございます。ここについても御意見をいただきました。いろいろ意見があったわけでございますが、懲戒に係る弁理士を代理人とする出願人の手続等に負担が生じないように、現行、「戒告」、「業務の停止」及び「業務の禁止」となってございますが、このほかに「新たな業務の受任の禁止」という懲戒の種類を設けることが適切であるということでございます。
次に、3番目でございますが、業務の停止命令に違反した場合の措置ということでございます。行政庁が行う業務の停止命令に違反した場合の措置につきまして、これは懲戒としての行政命令に違反している場合でありますので、そのような者については直接刑罰の対象とする旨の規定を設けることが適切ということでございます。
次、4.として、弁理士事務所の補助員についての検討でございます。これについて対応の方向でございますが、21ページ目の一番下になります。
弁理士が補助員に独占業務を実質的に行わせることについては、特許庁側としても迅速な審査、事務処理の妨げとなることがございます。実際に審査の現場ではそのような実態が散見されるわけでございます。
このような行為につきまして、22ページ目でございますけれども、弁理士の信用失墜行為として懲戒の対象になり得ます。懲戒の運用基準の整備の中で盛り込んでいくことが必要でありますけれども、特許庁側の対応としても、いま一歩厳格に対応していくべきではないかということでございます。
補助員への対応を見直し、ガイドラインを設置することが必要であるということで、例えば審査官、審判官からの内容等についての連絡の応対は弁理士事務所においては弁理士のみができることとするとか、実際の面接におきまして、弁理士事務所の補助員は説明をすることができないとする等の措置を講ずることが適切と考えられるところでございます。
また、弁理士の名義貸しにつきましては、独占業務を有する資格制度の存在意義を揺るがしかねない大きな問題であり、これについても厳格に対応していく必要があるということで、弁理士法において名義貸しの禁止規定を設けることが適切ということでございます。
次に、23ページ目、第2章として知的財産権に関する専門職としての多様なユーザーニーズへの対応についての取りまとめでございます。
まず、弁理士法に規定する業務についてでございます。1番目に外国出願関連業務ということで、対応の方向として、23ページ目、下の方に書いてございますけれども、弁理士の専門性を生かした外国出願に係る国内での準備支援業務としてこれをとらえ、当該業務を適正に行うべき義務を弁理士に課すためにも、当該業務の範囲を明確にした上で、弁理士法上の標榜業務と規定することが適切ということでございます。
このような規定をする以上、弁理士に対する研修等におきまして、諸外国の工業所有権法令等についての知識と、その業務を遂行する上で必要となる能力を担保するための措置をあわせて検討することが前提となるということでございます。
次に、24ページ目、2番目に特定不正競争の拡大のところでございます。対応の方向として、25ページ目に記載しております。
特定不正競争でございますが、まず第10号、11号の技術的制限手段に対する不正競争行為については、情報処理技術等に関する高度な専門知識が必要でございますので、同行為を弁理士法に規定することに妥当性があるとは考えにくいです。
次に、第13号の原産地等誤認惹起行為でございます。表示の妥当性に関して、現実の商品の性能等について技術論争が行われる場合が多く、技術評価ないし当該技術を表現する表示としての妥当性の判断については、技術に関する知見ですとか、商標に関する専門的知識を有する弁理士の知見が活用できると考えられます。ただし、直接の被害者が消費者であることや、不当景品類及び不当表示防止法など工業所有権法令以外の法律も深くかかわるため、弁理士の業務として特定不正競争の範囲に含めるべきではないという意見もございました。
次に、第14号の競争者営業誹謗行為でございます。工業所有権を侵害していないにもかかわらず、虚偽の事実を流布する行為について、その虚偽性の認定に当たり、その警告の基礎となる特許権等の効力の及ぶ範囲を検討するところで、弁理士の知見が活用できると考えられるところでございますが、他方、権利侵害を警告する旨の告知が同行為に該当するか否かの判断について、具体的事案においては法律判断が求められることから、これを特定不正競争の範囲に含めるべきではないという意見もございました。
第15号の代理等商標無断使用行為でございます。これについても、商標に関する条約ですとか、外国の商標制度について弁理士の知見が活用できると考えられる。他方、商標に関する争点以外にも、代理人であるか否か、正当な理由なく行っているかどうかという判断も含まれるため、これを特定不正競争の範囲に含めるべきではないという意見もございました。
26ページ目でございます。それ以外にも、現状において問題が顕在化していないですとか、法律的素養や法律判断が必要であることから、特定不正競争の範囲をむやみに拡大すべきではないとの意見もございました。
しかしながら、弁理士について、弁護士と共同代理することが前提でございます。その点で弁理士に期待されるのは、主として工業所有権についての知見であって、その点は問題ないのではないかと考えられるところでございます。
以上を踏まえまして、不正競争防止法の第2条第1項第13号、第14号、第15号については、弁理士が取り扱う特定不当競争の範囲に含める方向で検討することが適切であると考えます。第14号については、工業所有権等に関するものに限るわけでございますが、こういったところに規定されております不正競争行為について、弁理士の有する工業所有権に関する専門的知見を有効に活用することができると考えられるところから、弁理士が取り扱う特定不正競争の範囲を、こういった行為についても含める方向で検討することが適切であるということでございます。
次に、特定侵害事件に係る単独訴訟代理権でございます。26ページ目の一番下に対応の方向を書いてございます。弁理士の特定侵害訴訟における訴訟代理制度は、制度開始後、まだ3年しか経過していない。代理の実績も多いとは言えない。現段階で導入を図るのは時期尚早と考えられるところでございまして、今後も弁理士の訴訟代理の状況ですとか、利用者ニーズを注視しながら、引き続き議論を行っていくことが適切であるということでございます。
27ページ目でございます。水際措置における輸入者及び輸出者の代理権の問題でございます。これについて、3.の対応の方向でございます。要は、水際措置における輸入者、輸出者の代理については、その代理業務の内容と弁理士が有する専門性を勘案すれば、現在行っておる権利者の代理と同様、弁理士の知見を生かすことができる。また、アンケートでも、半数近くの者が輸入者の代理を弁理士に依頼したいという要望も示されているところでございます。
ただ、十分な事例が蓄積されていないといった意見ですとか、当事者対立構造を有するような法律手続に非常に類似する手続であるので、弁理士が行うことは望ましくないという意見もございます。
これについては、実際に水際措置にかかわります訴訟等の法律手続となった場合は、弁護士のみが行うことができますので、この点について現行の権利者側の代理と何ら扱いが異なるものではございません。したがいまして、輸入者及び輸出者の代理につきましても、権利者側の代理と同様、弁理士が行うことができるようにすることが適切と考えられます。
次に、Ⅱとしまして、弁理士の情報公開のあり方についてでございます。これについても対応の方向は28ページ目の3.でございます。弁理士情報につきましては、ユーザーが弁理士を適切に選択できるように、必要な情報を公開する責務がある。弁理士会については、ユーザーの視点に立って、適切な情報を収集し、検索しやすい形で会員の情報を広く国民に提供することが求められるわけでございます。
現在、弁理士会が行っております情報開示システムの拡充を図り、例えば次のような方法で依頼内容にふさわしい弁理士を選択できるような環境を整備することが適切ということで、①として、例えば弁理士としての業務の実績、専門分野、研修の受講履歴等々、ユーザーが弁理士を選択する際の情報として、必要な事項について弁理士が日本弁理士会に定期的に報告することを義務化するということが考えられるわけでございます。
29ページ目でございますけれども、②として、日本弁理士会は情報開示に関する苦情や相談に適切かつ迅速に対応できるように、その窓口を設置する。
3番目として、弁理士の誇大広告等に関しまして、弁理士会の会則や会令において設けられている禁止規定を厳格に運用する。そういった方向で、処分についても処分基準の整備の中で明確化を図るということでございます。
次に、Ⅲとしまして、特許業務法人制度についてでございます。これについての対応の方向ですが、30ページ目に記載しております。
まず、指定社員の無限責任制度の導入についてでございます。弁理士については今後、現在から事務所の法人化とか、法人の大規模化を図りまして、総合的サービスの提供を実現することが求められております。ただ、現行の無限責任制度のもとでは、ほかの弁理士の業務責任まで負わされることについて抵抗感が強いということで、特許業務法人化がなかなか進んでいないという現状がございまして、これが合併ですとか大規模化を阻害する大きな要因になっているのではないかという認識でございます。
このような指定社員についての無限責任制度を導入した場合、一般の有限責任制度と異なり、受任した事案について、その社員が引き続き無限責任を及ぼすものになるわけでございます。このこと事態は顧客との関係で大きな変化をもたらすものではないであろうということでございまして、ユーザーの利便性の向上の観点から、指定社員制度を導入することが適切であろうということでございます。
次に、31ページ目、一人法人制度の導入について御検討をいただいたわけでございます。最後の段落になりますけれども、一人法人制度というのは、特許業務法人の本来の趣旨ですとか、現状の弁理士事務所の実態、そういったものを踏まえれば、これは時期尚早であろうということでございます。今後、弁理士事務所の実態とか、他士業の状況も注視しながら、今後の課題として検討していくということでございます。
33ページ目のその他の検討事項でございます。まず、日本弁理士会の強制加入制度についてでございます。これについては、34ページに、対応の方向がございます。
平成12年の法改正においても競争制限的な制度について見直しを図りました。また、平成13年の資格者団体に関する独禁法上のガイドラインも遵守されている。強制加入制度については、引き続き競争制限的な運用とならないことを前提とし、強制加入制度により弁理士の業務の適正性が担保されている限り、これを維持することが適切ということでございます。
次に、知的財産部門の分社化の問題でございます。これについての対応の方向でございますが、35ページ目でございます。対応の方向については、基本的に知的財産管理部門を分社化した場合、これは継続してグループ会社の知的財産関連業務を行うことができるとすることが適切ということで、これについて弁理士法の解釈を明確化して、ガイドラインを定めて広く周知するという方向でございます。
その際、二つの場合分けを行っております。まず、知的財産管理会社に弁理士が在籍する場合でございます。この場合は、本社またはグループ会社の出願業務の代理については、弁理士個人を代理人として記載して、弁理士個人が受任するという対応は可能であると考えられるところでございます。
他方、知的財産管理会社に在籍する弁理士が本社またはグループ会社以外の不特定の企業の特許事務を代理して行うことを認めることとすると、実質的に知的財産管理会社が不特定の企業の出願を取り扱うことになる。こういった場合は、弁理士個人ではなく、知的財産管理会社がグループ外の他社の特許事務の代理を取り扱っているという印象は拭い切れない。そうなると、弁理士法75条の趣旨に反することになる恐れもございます。
こうしたことから、知的財産管理会社に弁理士が在籍する場合であっても、かかる会社の社員である弁理士がその業務を取り扱うことができるグループ会社の範囲を明確にしておくことが必要でございます。その際、個人の弁理士が受任する以上、一定の件数にとどめるということは当然必要となってくるところでございます。
36ページ目、(2)でございます。知的財産管理会社に弁理士が在籍しない場合でございます。その際に、本社またはグループ会社の出願業務の代理または出願書類の作成を行うとなりますと、弁理士法第75条の違反になるおそれがございます。その場合は、あくまで出願業務の支援にとどめることとすべきでございます。
もちろん不特定企業の出願業務の支援を行うとなると、これは第75条の趣旨から好ましくないため、知的財産管理会社が出願業務を支援することができるグループ会社の範囲を明確にしておくことが必要でございます。
その際、(3)グループ会社の範囲でございますが、会社集団の定義として、おおむね一の会社及び当該会社の子会社の集団に属する会社と、その信託業法ですとか、いろんな施行規則の方に規定されておりまして、これと同様とすることが適切である。また、子会社についても、その会社が総株主または総出資者の議決権の過半数を有する他の会社との定義が信託業法等々にございまして、これと同様の基準とすることが適切ではないかということでございます。
Ⅲ、最後に利益相反規定でございます。これについての対応の方向については、37ページ目の3.対応の方向でございます。
当事者対立構造をとる事件を受任する前から、受任している事件の取り扱いについて御検討いただきました。これについては37ページ目、最後の段落に書いてございますように、当事者対立構造をとる事件を受任する場合には、相手方から、従来から受任していた業務については、依頼者の同意がない限り継続することができないとする従来の解釈を維持することが適切と考えられるということでございます。
最後は38ページ目で、当事者対立構造をとらない業務についてでございます。この問題については、これも最後の段落でございますけれども、性質上、弁理士倫理と密接な関係を有するということから、弁理士会において利益相反事件を類型化する等の整理も含めて、現行の例示的な規定しかない弁理士倫理ガイドラインをユーザー側の意見も踏まえながら大幅に見直していただいて、会としての見解を明確にすること、あと紛争を避けるために当事者の同意を得ること、また当事者の同意がある場合にも、守秘義務の厳守を徹底すること等の対応を図っていくことが必要と考えられるというところでございます。
駆け足でございましたが、資料の説明は以上でございます。どうもありがとうございました。
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中山委員長
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ありがとうございました。
ただいまの審議室長の説明を踏まえまして議論に移りたいと思います。御意見ございましたら、御自由にお願いをいたします。
谷委員。
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谷委員
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今日の報告書案が取りまとまるに至ったことに対しまして、委員各位、事務局となられた特許庁、その他関係各位の御尽力に対しまして、心より感謝申し上げます。
日本弁理士会としまして、この報告書案で示された基本的な方向性に沿いまして、弁理士法の見直し、改正が実現されるように特許庁とも協力しながら全力を挙げて取り組んでまいります。この点に関しましては、日本弁理士会では12月6日に臨時総会を開催した際に決議が行われました。この総会決議に関連して少々申し述べさせていただきたいと思います。
特に、外国出願関連業務の弁理士法への明記につきましては、法律改正の対象となる方向が示されたことは、我々弁理士の国際性が高まっていることを端的に現したことと捉え、関係各位の御理解に感謝申し上げますと同時に、義務研修等を通じて会員の研鑽に努めてまいる所存です。
このことと関連しますが、条約の論文試験科目への復活は盛り込まれませんでしたが、この報告書案、18ページ中にも記載がありますように、論文の試験範囲には条約が含まれるのだということを受験生が明確に認識をし、しっかりと条約の勉強をして最低限の知識を身につけてから弁理士になるようにすべきことを、法令上明らかにすることも含めまして、明確化するように取り計らっていただきたいと存じます。
もう一点ですが、本小委員会の目的は弁理士法の見直しということですので、報告書案中では34ページ以降でございますが、知的財産部門の分社化の問題など、必ずしも今回の法改正事項ではないものについても提言がなされております。
そのような問題につきましては、今後、さらに詳細を詰めていく必要もあろうかと思いますので、法改正事項とは切り離し、関係者間で引き続き十分な議論、検討がなされるべきと思います。その場合に、日本弁理士会としても積極的に参加してまいりたいと存じます。関係各位の御協力をよろしくお願い申し上げます。
皆様方の御協力に感謝いたしますと同時に、我々弁理士が身を引き締めて精進してまいりたいと存じますので、これからも一層の御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上です。
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中山委員長
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ありがとうございました。
ほかに御意見ございますか。
三尾委員。
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三尾委員
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この委員会の中ですでにいろいろ意見を述べさせていただきましたので、新規の意見というものではないのですけれども、まず報告書の中の第2章についてです。
同報告書26ページに、訴訟事件については弁護士と共同代理であるということが主な理由として、問題ないのではないかという取りまとめになっておりますけれども、この点については、従前述べましたように、訴訟事件以外にもADR等で特定不正競争が問題になる場合もございます。その点について看過されてはいけないという点をあえて述べさせていただきたいと思います。
さらに、今回、パブリックコメントに関しまして意見を取りまとめていただきましたが、その中で特に弁理士業務の拡大の項目に関連して意見を述べたいと存じます。この項目を拝見しますと、パブリックコメントに対する御意見が余り寄せられなかったことが分かります。この点は、ユーザーの意見を拝見したく注目していた者としては驚きだったのですけれども、これは端的にユーザーがこの項目に対して関心が低いということを示すのではないだろうかと考える次第です。
つまり、逆に言えば、ユーザーニーズが果たしてあるのだろうかということが非常に疑問であると思います。ほかの項目ではかなりのパブリックコメントの意見が出されているということから考えましても、この点はニーズが低いのではないかと思わざるを得ないのではないでしょうか。
さらに、今後も現状以上にユーザーのニーズが拡大することがあるのかという点も考えましたけれども、先般の民事訴訟法の改正によって知財訴訟の裁判管轄が東京、大阪等に集中しまして、さらにロースクールでは理系出身も合格者がかなり出てきているという現状にありますことから、知財訴訟、知財の事件に関して、今後技術的分野に関する専門家が不足するという可能性はかなり低いのではないかと思います。この点は前回の弁理士法の改正の時とは大きく背景事情が異なっているところではないかと考えるわけです。
この状況は、今後もロースクールの合格者が継続的に増加するということを考えますと、変わらないであろうと考えます。
そのような現状を踏まえますと、現段階で弁理士業務の拡大を図ることについては、いささか拙速ではないかと思う次第であります。
今回の改正で、弁理士試験や研修制度、さらには懲戒制度や利益相反等、弁理士の質を高め、また維持発展させるために、制度として種々のインフラ整備をすることとなりなりますので、そのインフラ整備を踏まえた上で、さらにユーザーニーズを掌握して、業務範囲を拡大するかどうかを検討するということであったとしても、遅くはないのではないかと考える次第です。
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中山委員長
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ありがとうございました。
戸田委員。
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戸田委員
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基本的に取りまとめていただきました報告書案に賛成いたします。
特に企業における知財部門の分社化について、こういう形で議論が整理されてガイドラインが出るということは大変望ましいのではないかと思っております。
ここ数年、企業内弁理士は大幅に増加して、かつグループ会社の形態も急激に変化してきておりますので、グループ会社の範囲をきちんと外延を明確にして、経済実態にあわせて弾力的な運用がなされるというのは好ましいことではないかと思います。
先ほど谷会長からご発言がございましたけれども、産業界として、必要に応じてガイドラインに関して話し合いを持つということに関しましては、そのようにさせていただくということで異存はありませんので、よろしくお願いいたします。
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中山委員長
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ありがとうございます。
ほかに御意見ございましたらお願いいたします。
相澤委員。
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相澤委員
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繰り返しになりますけれども、研修のところです。事前研修が参入障壁になることをもう一度申し上げておきたいと思います。
現在、新規登録者について顕著な弊害が出ているということではないので、新規登録者についての研修は予防的措置であろうと理解をすることができます。
そのような状況のなかで、参入障壁となる登録前研修をする必要があるのか、疑問です。登録前の合格者に対して、この研修期間について、経済的補償をどうするかということが問題となります。事前研修をしている制度では、経済的補償が考えられています。事後研修であれば、登録した弁理士として、収入があるということも考えられます。
それから、事後研修であれば、雇用されている弁理士については、雇用している弁理士が研修に協力させる義務というものも課することができます。そういう面からも事後研修がよいのではないかということを繰り返しですが、申し上げたいと思います。
それから、参入障壁の点について付言しますと、本年度は弁理士試験の合格者数が減少していることもあり、こういう状況で、さらに事前研修というような障壁を課すことは、全体として参入障壁を高くする法政策をとろうとしていることを表明することにとなるのではないかという懸念を持っております。
もう一つ、きょうのパブリックコメントの中で、若干気になった点を一つだけ申し上げます。先ほど御指摘のあった知財管理会社に関する点で、きょうのパブリックコメントの18ページ、4のところで、11件ほど知財管理会社と第75条の問題が指摘されています。
この点について、議論があるのであれば、知財管理会社の行為が第75条に違反しないということを明確にしておいた方がいいのではないかと思います。
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中山委員長
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ありがとうございます。
野坂委員。
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野坂委員
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我々の議論を踏まえて、大変よい報告がまとまったと私も考えます。
知財立国のインフラとしての弁理士が質的、量的に充実して、それぞれが責任を果たすことは将来の日本のカギを握っていると私は思います。したがいまして、この報告に沿って弁理士法が改正され、現在の弁理士の方々、また将来、弁理士になろうとされる若者たち、それぞれが仕事に誇りを持って十分に役割を果たしてほしいと考えます。
ただ、パブリックコメントを見ますと、一部いろいろな懸念だとか心配な点も触れられておりますし、我々の報告を踏まえて、将来、フォローアップも必要であろうと考えます。その点については特許庁、そして弁理士会が中心になり、引き続き不十分な点があれば見直していくことが必要であろうと考えます。
以上です。
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中山委員長
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ありがとうございます。
ほかに御意見ございませんでしょうか。
神原委員。
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神原委員
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平成12年の弁理士法の全面改正以来、弁理士を取り巻く環境もいろいろと変化してまいりましたけれども、そういう中で今回、弁理士の能力の面及び倫理、責任の面から、弁理士の質が改めて問われまして、質の向上のために義務研修と責任の明確化といったものについて審議がなされまして、弁理士法の改正につながる方向が見えてきましたのは大変意義が深いと思っております。
それから、弁理士の業務につきましても、いろいろな審議がなされましたけれども、特に外国出願関連業務に関してはその実態、それから我が国の産業競争力の強化のためという観点からの重要性、そして問題点、こういったものについても議論されまして、弁理士法の改正につながる一定の方向が定められましたことは、大変に時宜にかなったことと考えております。
その他いろいろありますけれども、とにかく、これから、この報告書の内容に沿いまして必要な弁理士法の改正がなされることを切望いたしますとともに、そのために微力ながら一生懸命に努力をしていきたいと思っております。
以上です。
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中山委員長
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ありがとうございます。
清水委員。
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清水委員
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お出しいただいた案で基本的には私も賛成しております。
裁判所に一番関係する訴訟代理の点は、今後、弁理士の先生方と弁護士の先生方が共同して、それぞれの能力を生かして侵害訴訟などに対応していただくことを強く希望する次第です。
もう一点、新人研修の問題に関しては、登録後研修ではなぜまずいのかというのは、この報告書を見ても、よくわからないところがあります。既登録者に関しては、受講歴などを公表したりすることで義務づけを積極的にバックアップしていくことが可能だろうとおっしゃっているわけで、それと同じように考えれば、新人に関しても登録後で十分やれるのではないかと思います。登録前でなければいけないというところの理由が、双方の意見を拝見しても、いまひとつよくわからないわけでございます。
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中山委員長
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ありがとうございます。
前田委員。
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前田委員
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本報告書に賛成させていただきます。
大学の知的財産本部、TLOは、人数も少なく、皆さん弱い力でやっています。ですから、弁理士の質に頼るところが大変大きいです。質の高い弁理士を輩出できるような研修制度をぜひ希望します。
また、弁理士の公開ですけれども、誇大広告にならないような、できるだけ客観的データを載せていただければと思います。地方の大学の知財本部などは情報量が少ない状況ですので、きちんとしたデータを見て、その情報から弁理士が選べるような形で公開していただけたらと思います。
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中山委員長
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ありがとうございます。
大渕委員。
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大渕委員
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資料1で示されました弁理士制度小委員会報告書案の基本的な方向性について賛成したいと思います。いろいろ議論があったところでありますけれども、何回にもわたる審議会での議論を通じまして、バランスの取れたところに落ちついたというように私は理解しております。
この審議会の最初にも申し上げましたとおり、弁理士制度というのは我が国の知的財産制度にとって非常に重要なものでありますので、この報告書の方向性に従いまして、さらに弁理士制度が良い制度になっていくことを期待したいと思います。
実際は、新しい制度をつくりましても、それをどうように運用していくかが非常に重要になってくるのではないかと思いますので、その点での関係の皆様方の御努力を期待したいと思います。
以上です。
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中山委員長
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ありがとうございます。
ほかに御意見ございませんでしょうか。
議論も出尽くしたかと思います。義務研修の登録前後の議論を相澤委員と清水委員から頂戴いたしました。業務拡大につきましては三尾委員から議論を頂戴いたしました。報告書としては一応両論書いてございますので、報告書の文章といたしましては、修正なくして、これでよろしいでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕
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中山委員長
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あとは事務局の方でよろしくお願いしたいと思います。
それでは、報告書といたしましては、これをもちまして報告書案の案を取って、報告書とすることにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕
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中山委員長
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ありがとうございます。
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