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第2回知的財産分科会議事要旨

1.日時・場所

日時:平成25年10月28日(月曜日) 10時00分から12時00分

場所:特許庁庁舎16階共用会議室

2.出席者

野間口分科会長、青山委員、大渕委員、片山委員、君嶋委員、小林委員、末永委員代理土井氏、高山委員、中鉢委員、土肥委員、長岡委員、永野委員、中村委員、野坂委員、林委員、古谷委員、間塚委員、宮川委員、宮城委員、宮島委員、安田委員、山本委員

3.議題

  • (1)グローバルな企業活動を支える知的財産制度のあり方について(討議)
  • (2)「『イノベーション推進のための知財政策に関する検討ワーキンググループ』のこれまでの議論を経た所感」(平成25年10月25日 山本知的財産戦略担当大臣)について(報告)

4.議事概要

オープンイノベーション

イノベーションが進むほど、頭脳流出と頭脳還流が、トレードオフの関係になる。研究者の流動性とオープンイノベーションは密接なつながりを持つので、このような観点からも検討が必要。

意匠・商標

  • グローバルな企業活動においては、意匠・商標は制度が違うのだから、特許と異なる課題があり、検討するべき。
  • 中小企業は海外進出すると4割は模倣被害に遭い、そのうち、7割が中国での模倣である。中国では、特許、商標では権利化して事業を守るが、意匠については、既に意匠権が取得されているという理由で撤退する例がある。中国の意匠の無審査制度への対応など、意匠の重要性を指摘したい。

実用新案

  • 日本の実用新案制度はあまり使われていない。中小企業に活力を与える方策として、実体審査制度にしつつ、進歩性判断を軽くし、権利取得し易く、金額も安い、新実用新案制度を構築されてはどうか。
  • 実用新案制度は、むしろ廃止し、中国も廃止させる方向にもっていくべきではないか。

知財とその活用

  • 権利活用の実態を実証的に把握・分析すること(資料4)には賛成。訴訟の件数のみならず、社会での紛争件数、解決プロセス及び解決したか未解決かといった、実証的な分析が重要。
  • 日本では特許権者の勝訴率が低いとされるが、和解・取下が5割を占め、和解については勝訴的なものが多く含まれている点を考慮する必要がある。
  • 米国と違い、日本は海外からの出願が少ない点を踏まえ、訴訟件数の少なさについても分析する必要がある。
  • 裁判外紛争解決がどの程度行われているのか、市場構造や企業の態度なども含めて総合的に分析するべき。
  • 企業は知財に多額の費用を投じているが、知財が企業の役に立っているのかという問に対して具体的に答えるのは難しい。例えば、勝ち取れる損害賠償額が多くない。司法はバランスをとるという性質のあるものだが、特許権の権利強化について、立法当初に想定された効果が出ていないのではないか。
  • 侵害訴訟について、和解を考慮しても、勝訴率は他国より低い。特許権は、合法的に独占できる唯一の方法であるから、権利を行使しやすい制度にするよう、検討をお願いしたい。
  • 民事における損害賠償については、履行を確保できない可能性があるので、効果的な違法行為の抑止のために刑事制裁の強化も視野に入れるべき。日本は諸外国と比べて、違法に獲得した収益の剥奪について遅れている。日本においても、脱税、金融商品取引法違反、組織犯罪については、収益の収奪は実現できているが、知財においては遅れている。
  • 民事訴訟制度一般に言えることであるが、実際に要した弁護士費用をそのままを損害に含めて請求することはできない。損害賠償を勝ち取っても、弁護士費用が回収できないのは問題であるから、民法、民事訴訟と連携をとって検討してほしい。
  • 中国では日本企業が多額の賠償金を支払っており、もし三倍賠償制度が導入後であれば、10億円を超えることになっていた。日本において、三倍賠償制度の導入が難しいことは重々承知しているが、このままでは知財権の侵害の損害を高額に算定するグローバルな流れに乗り遅れてしまう。
  • 日本の侵害に対する救済は、差止請求権と損害賠償がセット。特定の分野であっても、差止請求だけを制限すると特許全体の力が弱くなるので、損害賠償額を上げるなどを含めて、トータルで考えなければならない。
  • 米国の裁判官の一部は、中国や途上国に赴き、その国の裁判官と親交を深めている。日本の裁判官が有する日本の経済成長段階における経験をそれらの国々に共有することに意味があり、現状のように個人任せではなく、日本も組織的に動けないか。
  • 標準必須特許について差止請求権を認めないのが世界の趨勢であるが、それに合わせて、日本においても法改正の必要性を検討すべき。
  • FA11達成後は権利取得した後のコスト・ベネフィットについて検討する必要がある。利活用の実態把握を急いでほしい。

制度調和

  • 各国の異なる知財制度に対応しつつ、日本企業が戦うのはハードルが高い。国ごとの戦略を明確にしなければならない。政府が企業をサポートし、環境づくりを行うため、日本が主導的な役割を担って、制度調和をしなければならない。TPPに限らず、日本が制度調和に向けて、攻めの姿勢が問われている。
  • 制度間競争については、最終的に日本のユーザーがASEANなど世界で権利取得しやすくなるように、働きかけを強化すべき。
  • グレースピリオドについて欧州を日米に近づけていく等、日米欧でせめて出願ルールは統一する必要がある。

ITシステム

東京オリンピックが開催されることを踏まえて2つポイントがある。1つは、日本がハッカーから狙われる対象となるため、セキュリティ対策に万全を期すこと。もう一つは、自治体等における英語化の促進。ただし、英語化するとさらに狙われやすくなるので、注意が必要。

中国文献

  • 急増する中国文献の情報提供について、JPOにおいて新たなシステム構築をしていると思うが、既にあるインフラの活用も含めて、早急に対応すべき。
  • 中国にどういった権利が存在しているかを調べられる環境を整備して欲しい。日本の有力な中小企業が中国に進出しているが、中国で権利化をした者が、そういう中小企業を待ちかまえ、訴える事例が増えていくのではないか。

司法試験の選択科目

新司法試験の試験科目から知的財産法を含む選択科目が除外される動きがある。試験科目かどうかで知識理解等の量に大きな差が出るため、知財が科目に残らなければ法曹界における知財人材が育たない。

審査官増員

  • 世界最高の迅速・的確な特許審査のためには、大幅な審査官の増員が必要ということをこの場で発信していく必要がある。米中だけでなく、インドも審査官を増やそうとしている。
  • 日米では同様の制度目標を掲げながら審査体制について大きな差がある。審査官のマインドだけではどうしようもない。体制を整える必要がある。
  • 審査体制を増強していかなければならない一方で、公務員の定員や予算の問題があるため、国民や政治家に必要性を理解してもらわなければならないが、一般人に知財の理解が届いていない。
  • 定員増加は全ての基盤になり、ASEANの支援について考えても重要。

知財の広報活動

  • TPPに関する報道においても、米と新興国において議論に食い違いがあることしか報道できず、残念。交渉中の難しさはあるが、日本が米とどういう点で一致し、新興国にどういう点で歩み寄れるのか、など日本にとっての重要性を伝える報道ができれば、知財を知ってもらうチャンスになる。
  • 知財リテラシーについて、どのように情報を伝えるか、広報活動を厚くしてほしい。情報の時間管理と重みづけについて、例えば、情報を早く出すべき産業もあれば、そうでない分野もあるという点についてどう考えているのか。

職務発明

  • 職務発明制度については、日本のイノベーションを阻害しないようにすること、グローバルに遅れないようにすること、が問われている。
  • 権利や営業秘密を企業に帰属させ、企業が管理することは企業にとっては重要であるが、日本全体のイノベーションからみると、仮に企業が営業秘密を利用しない、特許出願もしないとなると、重点分野ではない技術は死蔵されてしまう。従業者帰属の場合、使用者企業の下では死蔵された技術が従業者とともに流出して起業や新規事業につながる可能性がある。企業で重視されない技術が動かないこと自体が良いかは検討を要する。
  • 職務発明における調査において、研究者へのアンケートで99%の声は拾えても、1%のスーパー研究者の声は数としては拾えないので、ヒアリングを活用してほしい。
  • 職務発明制度について、政府内での議論が進んでいることは歓迎。法人帰属になったとしても、研究者のインセンティブ確保を進めていきたい。
  • 若い人は、色々ものを考える動機を持っているから、職務発明制度が若い人が発明するインセンティブを与えるような制度設計をしてほしい。
  • 職務発明制度については、本質論に関して根拠があるかを検証することにより、これまで漫然と常識と思っていたことに根拠がなかったということがわかり、ドグマを突破すれば議論が大きく進むように思う。
  • 職務発明制度について議論がなされているが、平成16年改正は、産業界・労働界から意見がある中でまとめた結果であり、未だ判例蓄積な状態である点を踏まえて検討してほしい。

発明等の定義/自社の強み/政府による貪欲な取組み

  • 日本の産業財産権制度を強化するには、発明、考案、意匠、商標の定義にメスを入れ、概念を広げるべきではないか。審査基準の改訂では限界がある。
  • 企業が自社の強みに気付いていないことがある。例えば、製造者側は壊れにくいことを重視しているが、消費者のニーズは、デザインなど別のところにあったりする。大企業においてもあてはまるが、中小企業はそこまで目が向いていない可能性が高く、アドバイスなど、働きかけをお願いしたい。
  • グローバルな知財活動においては、官民一体の推進が必要である。中韓は貪欲で、各国における知財訴訟の状況、その国の弁護士の勝率・費用などを情報収集して企業に提供している。また、国が政府間のチャンネルを利用して紛争解決の支援をしている。

[更新日 2013年12月10日]

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