第20回知的財産分科会 議事要旨
1.日時・場所
日時:令和7年3月5日(水曜日)10時00分から12時00分
場所:特許庁16階特別会議室(オンライン併催)
2.出席委員
益分科会長、井上委員、加藤委員、鬼頭委員、小松委員、下川原委員、鈴木委員、髙木委員、竹中委員、玉井委員、田村委員、中村委員、廣田委員、藤木委員、藤原委員、増島委員、松山委員、山田委員、和田委員
3.議題
- イノベーション創出のための特許庁の取組
- 各小委員会の報告
4.議事内容
- 事務局より、資料を基に説明をした後、各論点について御議論いただいた。
主な意見は以下のとおり。
イノベーション創出のための特許庁の取組[議題1関係]
- 日本企業も米国企業等のように、商標・意匠・顧客認知度といったブランド力を含む無形資産を数値化して、株主や投資家にアピールしていただきたい。
- 日本企業はクローズドイノベーションが組織の中にしみついてしまっており、オープンイノベーションは経験が浅く、組織的な学習がまだできていないという認識からスタートして、知財政策を考えていただきたい。
- 省庁が縦割りであるため、担当省庁が複数にわたる事業を行うとたらい回しに合ってしまい、イノベーションを起こすための省庁の横軸が足りないと感じる。
- 特許庁が出している知財経営に関する事例集、ガイドブックを参考にすることで、知財部と経営層との連携が進み、知財部出身の経営層が増えるとよい。事例集等の認知度を確認し、必要があればより一層の周知をするとよいのではないか。
- 知財経営について、知財や無形資産がまだ経営と結びついておらず、さらにそれが投資家の方々に評価されないという構図になっている。単に量、質を見せるだけではなくて、経営・事業戦略と知財、無形資産がどのように関わっているのが良いか、あるいは企業を評価するときにどういう形で評価するのが適切か、日本企業が知財と無形資産で高く評価される方向へ導いていただきたい。
- 中堅企業は経営リソースや体制がある程度整っているため、単なる補助ではなく、成果を意識した施策、めり張りの利いた支援をお願いしたい。
- 地方の中堅企業において、知財の議論というのが非常に少ないように感じる。知財の重要性の議論をより活発にしていくことが地方創生にもつながっていくので、さらにネットワークを広げていく努力をしていただきたい。
- ビジネスデザインの観点では、技術だけではなくて、独自性のあるビジネスのつくり方、そしてブランド力を上げていくという認識がなければ、企業を持続させることは難しい。長い歴史のある中堅企業であっても、ブランド力はBtoBにおいて勝つために必要で、そこにデザインの発想を入れると大企業へ効率よくスケールできる可能性があるのではないか。
- 知財経営支援ネットワークについて、地域の実情に合った説明を意識して進めていく必要があるのではないか。
- 地方の中小企業においては、事業の中にR&Dという機能があるということから認識していただかないと知財戦略につながっていかないので、何らかの指導が必要ではないか。
- 中小企業の中でも、知財を活用している企業から、全く関心のない企業まで様々あるので、それぞれのステージに応じた支援がそれぞれ効果を発揮しているのか、経時変化を分析すべきである。
- 製造業において、末端の製造現場ではDXが全然進んでおらず、保守保全の分野では熟練工が退職する厳しい状況の中、製造ノウハウやプロセスに対する暗黙知の形式知化が非常に遅れている。特に中小企業・中堅企業に関しては、資金的支援や知財戦略支援に加え、今あるものの見える化、効率化、DX化推進というサービスも提供していただきたい。
- 企業にとって、大学、スタートアップとの連携が喫緊の課題である。IPランドスケープが非常に役に立つと思うので、国が大学やスタートアップを支援する際には、お互いの資産をどう見せていくか、どう見つけてもらうかという観点の指導を含めていただきたい。
- AI、ソフトウエアの時代は横連携が非常に重要であるが、人材の流動性が低い日本は苦手としている。大企業、大学、ベンチャーそれぞれ必要な知財が異なるが、組織を超えての連携が今求められていると思う。
- スタートアップは、海外との連携を前提に知財戦略を考えていかなければいけない。知財に関する法律や制度の調和に関して、諸外国との連携を進めていただきたい。
- 海外権利化支援事業は、大学から特許がライセンスされるスタートアップの負担が実質的に軽減されるので重要であるが、申請する権利者側の大学において多くの作業が必要となっているので、使い勝手を改善していただきたい。
- イノベーションスキームが変わっているということを知財の観点からいろいろなところに啓発していくことが重要。日本はGDPが伸びていないから、GDPで規格化した分析が必要であると思う。
- 日米の大学のライセンス収入格差について、特許訴訟に関する考え方、特許制度の違いによる米国大学の強硬なライセンス活動、多くが共有の特許になっていることなどが影響している可能性がある。欧州等との比較も重要。
- 地方大学は、知財に関するリテラシーや学習、ライセンシング戦略が十分ではない。どのように地方大学の知財の社会実装を進めていくべきか、どのようなバックグラウンドの人を派遣して支援すべきか等を含めて検討していただきたい。
- 都内の大学の予算規模と地方の国立大学の予算規模は、理工系でも10倍以上異なる。そのため、地方の研究を活性化するためには、個別の大学ではなく、幾つかを連携した形で支援していく必要がある。
- AIを活用して、審査の効率化をしていただきたい。AIの活用に関して、他国に遅れることがないよう、各国の議論や動向を把握して対応を素早く取っていただきたい。
- 知的財産関係でいろいろな計画を立てて実施をしていくなかで、そもそも標準化、国際標準をどのようにするのかを考えて技術開発を行うことができていない。
- 日本は標準規格をつくるところまでの支援はあるが、ビジネス戦略を立ち上げる支援策は弱いため、稼げる標準化を進めるべきである。
- 市場で価格競争になってしまうと、全体的に痩せ細ってしまうため、新しい市場をつくる必要がある。新しい技術をつくって、それを提案するように発想を変えていくことに対して支援していただきたい。
- 知財人材の底上げが必要。イノベーターの育成について、中長期的に我々社会でイノベーターを増やしていくことが重要。
- 多様性がイノベーションの種であるという考え方を浸透させてほしい。
[更新日 2025年4月2日]
お問い合わせ
|
特許庁総務部企画調査課
電話:03-3581-1101 内線2152

|