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第2回知的財産政策部会 議事録

特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室

  1. 日時:平成13年12月3日(月曜日) 15時00分~17時00分
  2. 場所:特許庁庁舎16F第1~3共用会議室
  3. 出席者:
    中山委員長、井上委員、大橋委員、北村委員、小池委員、斉藤委員、佐藤委員代理太田、篠原委員、庄山委員代理作田、千葉委員、道垣内委員、中西委員、前田委員代理仲、松尾委員、森下(洋一)委員代理田中、森下(竜一)委員、諸石委員、安田委員、山本委員
  4. 議題
    1. 産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会報告書について
    2. 弁理士への特許権等の侵害訴訟代理権の付与について
    3. 知的財産制度をめぐる国際的動向について
    4. 今後の検討課題について
  5. 議事概要

特許庁長官挨拶

本日は大変御多忙のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本部会につきましては、5月に第1回の会合をさせていただきました。その際3つのテーマを今後の課題として御議論いただきたいということで、お願い申し上げたところでございます。一つは情報化社会に対応した知的財産制度のあり方でございます。2番目は、急増いたします国際的な出願等への対処といたしまして、国際的な課題にどのように対処していくかという点でございます。3番目はペーパーレスシステムということで、世界に先駆けて電子政府の一役を担ってきたわけでございます。これらを踏まえて新しい時代の特許庁の体制整備というものをどうするかというような点を掲げたわけででございます。ただ今申し上げましたように、ネットワーク社会に対応した特許法、商標法の在り方等につきまして御検討いただきたいと思いまして、本日の会合を開いたわけでございます。御案内のとおり、ここ数年、大変厳しい産業界の情勢の中で、知的財産に対する国民の期待が大変強くなっております。それだけに私どもも、様々な観点から色々な御意見を伺いながら、施策に取り組んで行かねばならないと思っている次第でございます。御案内のとおりプロパテント政策ということでこれまで様々な施策を講じてきたわけでございますけれども、その中で特に電子商取引あるいはインターネット等の普及に伴います様々なコンピュータプログラム等が新しい付加価値を持って商品として流通をし、かつ新しいビジネスモデルを提供しているわけでありますが、他方で知財の観点からすると、今の法体系でいいのかどうかという御議論があったわけでございます。おかげざまで、部会の下に法制小委員会を設置していただきまして、この中でも何人かの先生方に委員として参加していただきました。大変活発な御議論をいただきまして、本日その小委員会の結果等についてとりまとめたところを皆様に、また、御討議賜りたいと思っている次第であります。また今一つは司法制度改革審議会の御議論を踏まえまして、弁理士に対する特許権等の侵害訴訟代理権の付与についての御議論がありました。具体的にこれをどうするかということですが、昨年以来研修の在り方、権利付与の具体的な実務等について、特に能力担保措置の在り方について御議論していただいたわけであります。これについてもワーキンググループの意見がまとまったということで、本日御審議を御願いしたいというふうに思っている次第であります。なお、この11月末に大変大きなWTOの会議がドーハで行われました。全く偶然かもしれませんが、同じ週に私はサンフランシスコに行っておりました。一人はドーハに行き、また一人はジュネーブでWIPOの実体ハーモナイゼーション並びにPCTの会議に出席しておりました。そのいずれ3つも大変大きな課題について議論があったわけであります。ドーハは御案内のとおり、エイズ薬に関します強制実施権の問題が大変強く、一種新しい知財面での南北問題が取り上げられるところとなりました。私が出ておりましたサンフランシスコの会議は日米欧、多数の関係者が参加しまして、共通の深刻な問題であります、審査処理問題について議論いたしました。国際出願等々を背景として、急増しております。これまで順調にさばいておりました米国でも2年分以上の処理すべき案件が積み上がっているという状況でありまして、これをどうするかというのが世界共通の課題になっております。他方、ジュネーブの方では御案内のとおり先発明主義等をめぐります問題も含めてどのように国際的ハーモナイゼーションをするか、あるいは今申し上げましたような急増いたします国際出願の中でどのように合理的な国際出願制度を実現するかということが議論となっているわけであります。本日これらの状況についても御報告を申し上げ、御審議いただければと思うわけであります。いずれにいたしましても、大変厳しい日本の産業競争力の状況でございます。この知的財産面からどのような形で貢献すべきか、法律的に新しい時代に対応できる制度を固めつつ、21世紀を乗り切って行かねばならないと思っております。何とぞ、幅広い観点から御審議を賜れればと思います。

審議室長より資料1を用いて説明の後、討議

(部会長)

ありがとうございました。それでは何か御意見ございますでしょうか。もしございませんようでしたら、この法制小委員会の報告書を本部会の決議としまして、本部会の報告書として決定するということにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。御意見がないようですので、この産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会報告書を本部会の報告書とすることに決議いたしました。
それでは次の議題に進みたいと思います。次の議題は弁理士への特許権等の侵害訴訟代理権の付与についてでございますけれども、事務局の方から説明を御願いいたします。】

特許管理企画官より資料2を用いて説明の後、討議

(諸石委員)

産業界の立場から申し上げたいと思います。まず、この報告書は大変レベルの高い、意を尽くしたものであると感銘を受けている次第であります。またその結論にも全面的に賛成するものでございます。将来的なことを考えますと、司法制度改革を目指す大きな流れの中で、特許訴訟というものの重要性はこれからますます大きくなっていくと思いますので、特許庁での手続に関わるものだけでなく、特許訴訟に関与する関係者の人口を増やしていただきたいと思います。弁護士の中で特許訴訟を専門とする弁護士が極めて少ないのが現状であり、数少ない特許専門弁護士についても技術的バックグラウンドを持っていないため、弁護士単独で特許訴訟をできる実情ではありません。一方で、弁理士が従来補佐人として活躍してきたわけですが、それだけでは限度があるということで、今回の措置が講じられようとしているわけです。それでもなお、将来的には一人で技術的素養及び法律知識を両方兼ね備えた人が多数出てくることが理想であります。アメリカ、ヨーロッパ等でいうとパテント・エージェントとアトーニー・アット・ローという両方の資格を持った人がパテント・アトーニーになるわけで、日本の特許弁護士といったものが、弁護士の方からも弁理士の方からも多数出てくるようになるべきであると思います。今後、法科大学院が設置される際、できるだけ特徴を持った法科大学院を作らなければならないという議論がなされております。その中の一つとして注目されているのが、技術系の大学卒業者を選抜し、3年間の研修をした後に、特許を専門とする特許弁護士のようなものが多数輩出されるような法科大学院の設置についてです。また、今後弁理士が訴訟代理権を持つことになると、アメリカ法における秘匿特権による保護が必要になってくると思いますが、アメリカでは弁理士に対し、そのような特権を認めるかどうかが確実ではないという現状があるので、その点の手当もお願いしたいと思います。
将来、法科大学院から、弁理士なり特許弁護士が出てくるような方向での検討を引き続きお願いしたいと思います。この報告書には全く賛成という前提で、中長期的な問題としてご検討いただきたいと思います。

(小池委員)

まず、これまで関係者の方々の大変な御苦労をいただいて新制度を構築することについての御努力については敬意を表したいと思います。弁理士への訴訟代理権の付与は、高く評価された制度改革であると認識しております。まさに今最終段階に至りまして、特許庁でも大変な努力をいただいていることはよく承知しております。こういった重要な制度で今、諸石委員からも御意見いただきましたように、将来的に隣接法律専門職種の活用の中でもとりわけ知的財産分野における侵害訴訟代理の問題については、今後日本が発展していくための、夢のある大きな制度の構築のために最後の御努力をお願いしたいと思います。今後、法制度の構築にあたっては、大きな視点で検討されることを期待したいと思います。そのことが裁判所、日本弁理士会、特許庁を中心とした国策を円滑に実現する上で非常に重要ではないかと思います。

(総務部長)

特許権等の侵害訴訟の担い手となる人材の育成については「能力担保措置ワーキンググループ報告書」(p39)に簡単に掲載しておりますように、今後法曹人口をさらに増やしていくこととされております。御案内のとおり、米国では特許弁護士と言われるパテントアトーニーが1万6000人、いわゆる特許弁理士と言われるパテントエイジェントが約3千人以上おり、日本の弁護士総数に匹敵する人数が特許訴訟にあたっているという状況にあるわけです。日本においては基本的には弁理士、弁護士がそれぞれの能力を生かしながらこれに対応していかなければならないのではないか、と思います。御指摘のあった法科大学院については、平成16年から受け入れをし、平成18年に2年型の終了者が輩出され、さらに平成19年には3年型の修了者が輩出されることになっています。さらに司法試験の方でも合格者を増やしていくことになっています。また、法科大学院の構想の中では、技術系の方々も法曹界に入ってくることが想定されております。さらに、弁理士も、技術的素養を活かして共同で事件を受任し訴訟経験を積むことにより、知的財産分野の訴訟を担う人材が輩出される、ということで弁護士、弁理士の双方から知財訴訟を担う人材を育成していくものでございます。今後、司法改革の流れの中で、一環として、この制度自体も引き続き見直しが必要となる場合もあろうかとは思いますが、今回、弁理士が弁護士と共同で受任して知財訴訟にあたるべきであるという司法制度改革審議会の報告がなされたわけであります。

(道垣内委員)

質問なのですが、資料2-1のp8の「共同受任」についての注の説明で、弁護士が同一依頼者から訴訟代理を委任されている事件であること、とありますが、これは共同受任の説明にはなっていないように思います。といいますのは、依頼者が弁理士にもお願いするという時に、訴訟代理まで委任するのか、訴訟代理は委任しないのかを依頼者が選べるという趣旨なのでしょうか。かつそのことを依頼者に告げて受任しなければならないという趣旨なのかでしょうか。そこははっきり書いていないのですが、要するに「共同受任」というと自動的に弁理士の訴訟代理権まで生じるという趣旨なのか、特に明示して訴訟代理まで委任するということがあってはじめて、共同受任することになるのかということがこの注ではよく分からないので御説明いただきたいと思います。

(総務課長)

当然に、代理人としてお願いしますという(依頼者の)意思表示があってはじめて代理人になるということである。つまり弁理士の関与の仕方としては、補佐人と訴訟代理人のどちらの立場で委任するかについて明らかにした上で、具体的に契約をするということです。

(部会長)

他に何か御意見ございますでしょうか。それではただいまの御意見を踏まえまして若干の修正がございますが、基本的には弁理士への特許権等の侵害訴訟代理権の付与を本部会の決議とさせていただきたいと思いますけれどもよろしゅうございましょうか。(異議なし) ありがとうございました。それでは弁理士の侵害訴訟代理権付与については本部会の決議といたします。

(安田委員)

今回の部会で決議する事項は2件の報告書についてだけと解釈してよいのでしょうか。そうであれば、若干不満があるのですが、両報告書は非常に高いレベルの議論であり、一方では根本的な問題も残っているのではないかと思います。といいますのは、そもそも知的財産権を守り、尊重するという全体の意識レベルを改革しないと、知的財産権政策はうまくいかないのではないでしょうか。法制小委員会では法制の話が主体なのでしょうが、この部会は知的財産政策部会でありますから、この2つの報告書と同時に、国家教育として知的財産をどう考えるかという話を是非取り上げるようにしていただきたいと思います。法律を守らなければいけないということは、確かに小学校の時から教えてもらいますが、知的財産がどれだけ大事かということは、少なくとも今は、教えられていないと思います。知的財産権が重要視されるような時代の流れにあわせて、知的財産権の重要性を小学生の頃から教え、むやみに真似をしてはいけないという意識を植え付けなければならないと思います。また、そうした教育を国際的レベルで進めるよう働きかける、ということも本部会の決議に入れていただきたいと思います。特許権は料金を支払って取得する権利であり、著作権は真似をしてはいけないという権利です。両者には発生時の相違がありますが、それを教えられていないため、よく違いが分からないというのが現状だと思います。ですから、是非、知的財産権教育の重要性ということを特許庁としても明確に打ち出して欲しいと思います。

(特許庁長官)

ありがとうございます。今の御指摘はおっしゃるとおりであると思います。ただ、特許のみならず、著作権も含めた知的財産権に関する考え方で、産業構造審議会で決議いただかなければならない分野は他にも多くあるのではないかと思います。急速に発展する分野でありますから、順次御意見をまとめていただけたところから法律等で具体化していくというステップを踏んでおります。現在御案内のとおり、産業政策局長と私の私的懇談会ということで「産業競争力と知的財産を考える研究会」を開催しておりまして、そこには今まさに御指摘いただいた、知財教育の在り方も一つのテーマとなっております。現在12月時点でようやく論点整理を行える段階であります。それらを踏まえて来年の春以降にもまとめたいと思います。その時点でとりまとめたところを再びこの産業構造審議会知的財産政策部会で決議ないし、あるいは報告ということでとりまとめ、御意見、御審議を賜りたいと思っておりますので、そういう手順であることを御理解いただければと思います。

(部会長)

それでは次の議題に移りたいと思います。知的財産制度をめぐる、国際的動向につきまして、事務局の方から御説明をいただきたいと思います。

国際課長より資料3を用いて説明の後、質疑

質疑なし。

今後の検討課題について審議室長より説明の後、討議

(森下竜一委員)

イノベーション促進は重点を置いて取り組んでいただきたいと思います。昨年度から今年にかけて実はバイオベンチャーと称するものが100社ほど増えております。現状260社ほどで、昨年度150社といわれておりましたから、かなりの勢いで増えているということです。実際にそういったベンチャー関係の審査等をいろいろすることがあるのですが、特許出願中のものは非常に多く、それをベースに仕事をされているのですけれども、従来の特許の概念ですと非常にビジネス化に時間のかかる形態が多いという傾向があります。米国型ですと一般的に治療方法や診断法等というかなり早い段階で、いわゆる金銭的リターンが期待できるものでの審査が可能なのですが、日本の場合はどうしても「財」という概念がありますので、ビジネス化にはかなり遠く、どうしても引き気味になっています。特にバイオテクノロジーに関しては、やはり米国型のビジネス特許にしていかなければ、なかなか大学発の特許の実現は難しいのではないかと思います。是非、バイオに関しては特許制度の範疇を米国型に移行するという検討をしていただけないかと思います。
もう一点として、審査に関してですが、非常に時間がかかっているという印象があります。審査はかなり早くなっているというお話を前回もお聞きしたのですが、米国の場合ですと、宣誓、デクラレーションをかなり活用して、研究者サイドの比較的オリジナルな仕事というのが特許制度の上で反映されるようなシステムがあります。また、そうした形でかなり過去の実績というのが生きてくるという印象を強く持っております。これは、後からのものまね的なものが急に特許を取得することで、以前からその分野に携わっている人々の研究を阻害しないという意味でもやはり重要な問題ではないかと思います。そうした審査の方向性についても少し議論していただければと思います。最後に、我々は米国ではほとんど分割出願という方法でかなり長い間係争するということをしております。日本において、私自身が出願したものはほとんど特許審査に係っていないので、実際どのくらい日本での分割出願というのが動いているのかはわかりませんが、やはり米国のような息の長いバイオ特許のような争いができるというのは実はかなり研究者サイドにとっては利点になりますので、そうした点も少し御議論いただければと思います。

(第三部長)

バイオ関係は私ども審査第三部において審査しております。今御指摘をいただいた点については検討していきたいと思っておりますが、御指摘の中で、審査に時間がかかっているという点ですが、先ほどの資料にもありましたように二十数ヶ月ということで、米国に比べるとややまだ長いのではないかと思っておりますが、できるだけ努力しつつあるということでございます。

(松尾委員)

審判制度については、先ほど御説明ありましたように、特許が無効であることが明白であるときは権利の行使は制限されるというケースがありましたが、この侵害訴訟で無効が争えるとした最高裁判決以降、侵害訴訟では権利侵害の主張の他に、無効の抗弁が常になされているような状況です。それを、初めの段階でなく、後の段階で出すと時機に遅れた攻撃防御ということで却下されるという問題もあり、かなり多くの訴訟で権利濫用の主張をしておりますし、権利侵害であっても、権利濫用であることも併せて理由づけられる判決も多く出ております。従いまして、この審判制度の問題、これを侵害訴訟との関係で、審判と侵害訴訟を別々ではなく、このような問題に限って何か共同で審決するような特別な制度を設けるなど、かなり急いで検討していただきたいと思います。
それから司法制度改革については、特許侵害訴訟制度の強化、この議論も現在司法制度改革審議会で行われておりまして、私共も、よく弁護士会の中で検討しておりますが、これも非常に速いペースで議論が進められておりますので、知的財産関係の専門家として特許庁からもできるだけ早めに具体的意見をまとめていただきたいと思っております。
商標制度についてですが、日本だけでなく世界的に著名商標保護の流れや、登録要件として公序良俗を重視する等の様々な傾向が見られますが、やはり、商標というのはそもそも企業が育ててブランド価値を育み、ブランドを厚く保護することが重要であると思います。しかし、現在はまず権利化する前に拒絶査定が多くみられ、またその査定不服審判、審決取消訴訟が増加しています。一方で、商標権侵害訴訟は少なくなっているということです。良いのか、悪いのかよく分かりませんが、権利侵害の段階でいいますと、不正競争防止法における標識の保護とは要件は異なりますが、考え方は基本的に共通しております。商標法と不正競争防止法の権利侵害について、統一的な法律の創設も考えてよいのではないかと思います。

(審判部長)

御指摘のとおり、キルビー判決以降、無効を認めた判決だけでも20数件出ており、中には進歩性も含めてかなり広範囲で有効、無効が争われているという経緯がございます。そういう中で私どもが持っております、無効審判と、特許権の侵害訴訟の審理を合理的にどのように整理していくかという問題があると思います。これは平成11年度にも知的財産研究所で一度議論したことですが、今年度は課題解決に向けて再度、知的財産研究所で議論しているところであります。やはり専門性の高い問題ですので、我々の能力を利用しつつ、迅速にうまくユーザーが対応できるような制度が必要であるということで、いろいろと検討しています。例えば鑑定嘱託が利用できないか等、いろいろな案を御議論していただくことになるかと思います。それに関連しまして、裁判所、特許庁間の、いわゆる差し戻しの見直しの関係において、訂正審判が絡むと審理が長期化するという制度上の問題もあるため、今後手当すべき事項の検討を進めたいと思います。御指摘の点は十分承知しておりますので、今後とも御意見をいただければと思います。

(審議室長)

知財における民事訴訟上の課題については、法務省の法制審議会で現在検討されております。法務省でも民事訴訟法全般に関わる論点をすべて扱っているので、知財についてどこまで掘り下げる時間的余裕があるかという問題がありますが、私共としましてもできるだけ貢献して、よい案が出るよう努力していきたいと思っております。

(審査業務部長)

商標法と不正競争防止法との関係を不明確にすべき点については同感であります。今後、特許庁としても、不正競争防止法、商標法について幅広く検討することになっておりますので、よろしく御願いいたします。

(千葉委員)

司法制度改革審議会と関連して、証拠収集手続、専門員制度、管轄の集中等については法制審議会で急ピッチで進めております。来年の夏には要綱案を出し、平成15年の通常国会に提出するというスケジュールで行っております。そこでの議論は9月から既に2回会合があったのですが、証拠収集手続、専門員制度とも、特許、商標等の知的財産に特化せず、民事裁判全体の充実強化という観点での議論がなされております。ですから、特許紛争ということについて、どれだけ特殊性のある問題がでてくるかということがポイントだとは思いますが、法制審議会ではそういう議論ではなく、もっと全体的な議論になると思います。法制審議会の方の議論に反映させるため、この部会で審議するというのは少々筋が違う気がします。
侵害訴訟の専属管轄化については最高裁も強く制度化を希望しているところであります。これも管轄の問題ではございますが、すでに民事訴訟法第6条で競合管轄が認められています。もう一段専属管轄化を高めようという件も、この政策部会で議論することではないと思いますので、少しお考えいただいた方がいいのではないかと思います。
キルビー判決をめぐっていろいろ新たな問題が出てきておりますが、侵害訴訟での特許権無効の判断がなされるというのは、実は判決の主文でなく理由中に示された判断でありますので、この理由中の判断にどのような効力を与えていくのか、特許庁として審判手続にどのように反映していくのかということが課題であると思います。事実上、尊重していただくというのが最低限必要になるとは思いますが、それだけで足りるかという問題があると思います。特許庁として今後どのように扱うのかという新しい問題として検討する価値があると思います。

(審議室長)

専門管轄の問題は民事訴訟一般の議論として御検討いただければと思いますが、あくまでユーザーサイドの意見の集約、あるいはそういった観点からの要請、このようなものは私共での検討も可能かと思っております。現に弁理士法改正の際、司法制度改革審議会と工業所有権審議会との役割分担がありまして、当時の中山法制部会長の方から司法制度改革審議会に検討要請がなされ、その結果が今回の弁理士法改正につながっております。もちろん訴訟の専門家の方々の検討結果というのも大変重要だと思いますが、ユーザーサイドの方からの意見という形で私共からも貢献できるのではないかと考えている次第です。

(山本委員)

先端技術分野についての知財政策の将来像を描けないものかと考えております。私共TLOとしては、基礎技術を研究をしているわけですが、当然日本だけのマーケットを考えて出願をすることはありません。海外でのマーケッタビリティを考え、極端な話、米国でのみマーケッタビリティがあっても出願をするというようなことがあるわけです。例えば治療方法等は米国でしかマーケットがないという実情があるわけです。その際におそらく技術分野によって技術の発展系といいますか、知財戦略というのも微妙に異なってくるのではないかと思います。ライフサイエンスであれば、例えば、今のゲノムの情報からCDMA等の方向へ流れていった時の知財戦略は日本はどうあるべきなのか、材料系の技術であれば、世界的に話題となっている機能性材料について先回りをするとすれば、今からどういったことを考慮しなければいけないかというようなことを考えておかないといけないのではないかと思います。何か判決が出てからそれを後追いするという形ではどうしても後手に回るような気がしておりまして、そういった部分を産業構造審議会で議論すべきことかどうかも御議論いただければと思いますが、先端技術分野においてのある程度の将来像を検討し、それに対する知財戦略というものを議論していく必要があるのではないかと思います。

(特許庁長官)

まず、早期に取り組むということについてはおっしゃるとおりなのですが、大学を含むベンチャー企業、中小企業、国際出願に関わるものについては御承知のとおり、早期審査制度を準備しており、審査についての迅速化という面ではおそらく御要望に応じていけると思っております。
ただし、キャパシティには限度がありますので、当然すべての出願を迅速に処理するというわけにはいきませんが、少なくとも大学ベンチャー等にはそういう手段がありますので、是非御利用いただきたいと思います。
米国型の様々な制度のメリットについては私共も感じておりますけれども、これについては、様々なプロパテント政策としてどこまでできるかという御議論がございまして、今先ほど御紹介いたしました、「産業競争力と知的財産を考える研究会」はまさにその問題を真っ向から取り上げようとしているわけです。おっしゃるとおり、先端技術に関して、どのように知財の面から取り組めるかという問題がおそらく最もコアな課題の一つだと思います。少なくとも国は24兆円を投じて、4分野を21世紀の技術の柱とすえるといっているのであるから、その場合知財において何ができるかを早く見つけるよう努力しておりまして、問題意識は委員の方と全く同じだと思います。IT分野については今回の法改正までつなげる御審議をいただけました。バイオに関してはどうも米国の例を見ましても、大学ベンチャーが非常に中心的な役割を果たしているようですので、その方たちから寄せられる御要望に応じた施策を取る必要があろうかと思っております。問題は環境・素材・ナノについてはいったいどのような知財分野の新しいニーズを要求しておられるのかということがまだ明確には見えておりません。この分野は知財の方から働きかけるよりも、技術分野の方からの働きかけにより、知財においてはどうすべきかを明確にしていく方が適切かと思います。まさに技術分野の方々から御注文いただければと思います。

(技術調査課長)

ライフサイエンスのような技術革新の非常に早い分野については、審査の基準といいますか、技術誘導的なものを一刻も早く作成しなければならないと思っております。この点については、今後、産業界、科学者、特許庁と一緒に技術の動向を見据えながら検討を進めていきたいと思っております。ついでながら、明後日、知的財産協会の方で産官学のシンポジウムがありまして、その中でライフサイエンス並びにIT分野の特許政策について、今後の国、研究者、産業界がなすべき事を集中的に議論していくものです。特にタンパク質の立体構造等とも含め、早め早めに基準を打ち出す必要があるということについて議論がなされることになっています。

(道垣内委員)

国際調和については言語の問題がありまして、欧州においても欧州特許まで進めたいという動きがあり、まずは言語の問題が取り上げられています。日本語は相当に言語体系が異なりますから、大きな問題になるのではないかと思います。その事について日本として何か知恵はないのか等、長期的検討課題として取り上げていただきたいと思います。
別件ですが、資料3の修正実体審査についてのお話がありましたが、日本で特許申請をし、特許付与されたものについて出願人が外国に持っていくと原則無審査とする、というお話でしたが、これには翻訳をしなければいけません。これは本人に任せきるのか、あるいは特許庁で正しく同一の特許であることのチェックをしているのか、そこがずれていると大きな問題になりますので、その辺りのことで既に何か動きがあれば教えていただきたいと思います。

(国際課長)

通常、特許庁ではなく、本人が願書とその翻訳文が一致すること宣誓しています。

(総務部長)

修正実体審査を採用する各国によって制度は異なりますが、マレーシアでは宣誓文の署名が出願人本人のサインであることについて、公証人の証明書の添付が必要であり、シンガポールでは、翻訳文と願書が同一であることについて翻訳人の証明が必要だったと記憶しています。基本的には出願人に過度な負担とならないような制度となっています。

(特許庁長官)

言語問題は御指摘のとおり、最後の最後まで非常に大きな問題を残すと思います。今でも外国出願は翻訳して出願しているわけで、翻訳の問題は当面不可避であると考えています。これには2つの問題があると考えており、翻訳のコストと翻訳の時間的な手間であります。手間の方の一つの問題としては先ほど申しました審査を相互に利用する場合、どの程度翻訳の精度を求めるかという議論があります。現在私どもの特許庁が出しております公報は自動翻訳がついておりまして、欧州特許庁などはこの自動翻訳で第一次的なアクセスはほぼ足り、相当Usefulだという評価をいただいております。他方、コストの面では、出願人、特に中小、ベンチャー企業が海外出願をする場合は、大きなコスト負担となりますので、これをどうするかということで、より優れた自動翻訳ができないかということについては三極長官の間でも既に議論はスタートしております。

(部会長)

時間も迫ってまいりましたので、他に何かございましたらお伺いしたいと思います。よろしゅうございましょうか。御意見がございませんようですので、以上を持ちまして、産業構造審議会第2回知的財産政策部会を閉会したいと思います。なお、ただいま頂戴しました御意見は今後、本部会、あるいは法制小委員会におきましても具体的な検討を行っていきたいを思っております。それでは本日は長時間ありがとうございました。

[更新日 2001年12月27日]

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