中山部会長
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それでは時間でございますので、ただいまから産業構造審議会第3回知的財産政策部会を開催いたします。本日はご多忙中、ありがとうございます。
それではまず最初に、前回の部会以降、新たに本部会の委員になられました方々につきまして、事務局から紹介をお願いいたします。
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及川特許庁長官
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それではご紹介を申し上げます。
まず、本日ご欠席でございますけれども、NTT労働組合の東日本本部執行委員長の小野寺良委員が新しく入られました。それから日本弁理士会会長の笹島富二雄委員が新しく入られました。まだちょっとおくれておられるようでございますけれども、一橋大学イノベーション研究センター教授の長岡貞男委員が同じく新しく入られております。それから、TMI総合法律事務所の弁護士でいらっしゃいます宮川美津子委員でございます。東京大学大学院法学政治学研究科・山口厚教授でございます。それから、ちょっとおくれておられるようでございますけれども、政策研究大学院大学教授の山根裕子委員でございます。
また当方側も、実は大分異動がございまして、配付いたしました名簿によりまして、紹介にかえさせていただきたいと存じます。以上でございます。
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中山部会長
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ありがとうございました。
それでは議題に入ります前に、及川特許庁長官からごあいさつをお願いしたいと思います。
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及川特許庁長官
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本日は本当にお忙しいところ、また大変暑い中、お集まりをいただきまして、まことにありがとうございます。第3回の知的財産政策部会ということでごあいさつを申し上げたいと存ずる次第でございます。
昨年の12月に第2回の会合を開催させていただきまして、そのときは、主としてネットワーク社会に対応いたしました特許法、商標法のあり方、2番目に弁理士の方々への訴訟代理権付与のあり方、そして3点目に知的財産権制度の国際調和につきまして、ご議論をいただき、ご報告をちょうだいしたわけでございます。当省では、ご報告を踏まえまして、この通常国会におきまして、特許法及び商標法の一部を改正する法律案並びに弁理士法の一部を改正する法律案を提出させていただきまして、去る4月11日に無事、成立をいたしたところでございます。貴重なご意見を賜りました委員の皆様方に心から御礼を申し上げます。
ご案内のとおり、知的財産に関します重要性という認識は、昨今急速に国民の方々に広くご認識をいただいているところでございまして、政府の部内でもさまざまな会議において検討を進めてまいったところでございます。ご存じかと存じますけれども、去る7月3日には、総理のもとに3月20日以来開催されてまいりました知的財産戦略会議が、知的財産立国の実現に向けました政府の基本的な構想ということで、知的財産戦略大綱を策定し、総理に御報告をしていただいたところでございます。この委員の皆様方の中にも、部会長の中山先生、そして松尾先生に入っていただいたところでございます。また、総合科学技術会議の知的財産戦略専門調査会におかれましても、6月13日に中間とりまとめが公表されております。また私どもで、これらに先立ちまして、この部会の委員の方にも大勢入っていただきましたけれども、経済産業政策局と特許庁との共催によります産業競争力と知的財産を考える研究会を実施してまいりまして、6月5日に最終報告をとりまとめさせていただいたところでございます。
本日は、まずこれらの成果を含めまして、知的財産政策をめぐります内外の最近の動向について、ご報告をさせていただければと存じます。委員の皆様方におかれましては、この報告の内容を含めまして、経済産業省におきまして、今後、取り組むべき事項について、ご自由にご議論をいただければと存じております。
なお、私ども特許庁に関する課題といたしまして、事務局として、特にご議論いただければありがたいと思っておりますのが、幾つかございます。まず1つは、知的財産戦略大綱におきまして、特許審査の質を維持しながら審査期間の長期化を防ぎ、でき得れば短縮化を図るための総合的な計画を策定することになっております。審査体制は、現在、これは日本のみならず欧米いずれもそうでございますけれども、大変危機的な状況になっているわけでございます。これにつきまして、制度改革が必要な事項を中心にご議論いただければと思います。
2番目でございますけれども、審判制度につきましても、次期通常国会への法案提出ということがスケジュール化されているわけでございまして、審判制度の簡素化、合理化、しかし機能の充実を図るために、異議申立と無効審判との関係、あるいは審判制度等侵害訴訟との適切な連携のあり方につきまして、戦略大綱の課題となっておりますので、ご議論いただければと思います。
ただ、この点につきましては、既に5月末から本部会のもとに紛争処理小委員会を設置いただきまして、検討を進めているところでございます。後ほど、この内容についてもご報告をさせていただければと思っております。今後の紛争処理制度のあるべき姿というものについて、これもたくさん、さまざまな角度からご審議をいただかなければならない課題ではないかと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
次に、知的財産をめぐる国際的な動向でございますけれども、先ほど申し上げましたように、日米欧、いずれも急増いたします出願に対応ができないという深刻な事態にたち至っております。その中で、特許審査に必要なサーチ結果等の相互利用に向けました検討の開始につきまして、先般米国と合意をいたしたところでございます。ただ、これにつきましては、どのような特許制度等の国際調和を目指すかという、かなり中長期的な課題と同時に、あわせて二国間の審査結果、あるいはサーチ結果の利用というのがどういう形で可能かという、かなり実務的ではありますけれども、一方で極めて成果の多い、長期的には世界特許への道の第一歩をどのように進めていくかという大きな課題ではないかと考えている次第でございます。
それから、特に国際的な課題では、本日、松下の森下の会長もおみえでいらっしゃいますけれども、国際知的財産保護フォーラムの座長になっていただきました。模倣品問題につきましては、どこにまいりましても、昨今、極めて深刻な事態についてのご報告をいただくところでございまして、官民挙げた対策の強化が必要だろうという、この点につきましては、ほぼ共通の認識ではないかと思っております。この辺につきましても、ぜひ貴重なご意見を賜れればと思っております。
いずれにいたしましても、知財を取り巻く状況が大きく動き出しつつあるわけでございまして、数多くの課題をいただいているわけでございます。政府としては、これに的確に対処いたしますとともに、いよいよ具体的な措置を立案し、実施に移さねばならない段階になっております。日本の実状に即しました知財重視の基盤、風土をどうやってつくっていくかということが極めて重要だろうと存じておりまして、委員の皆様方におかれましても、産業競争力が非常に弱体化している中、我が国におきまして知的財産政策の果たすべき役割は何か、ぜひ忌憚のないご意見をちょうだいいたしたいと存じます。活発な議論を重ねてお願い申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
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中山部会長
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どうもありがとうございました。
続きまして、桑田経済産業政策局審議官からごあいさつをいただく予定でおりましたけれども、所用で到着がおくれておられますので、後ほどお願いすることにいたしまして、早速第1の議題に入りたいと思います。
まず最初の議題であります知的財産政策をめぐる最近の動向につきまして、事務局の方から説明をお願いいたします。
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平井総務部長
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座ったまま失礼いたします。総務部長の平井でございます。資料3をごらんください。資料3に、クロノロジカルに昨年の秋以降の一連の動きが書いてございます。先ほど及川長官が概略申し上げましたとおりでございますが、ご案内のとおり、昨年の秋以降、産業競争力に対する懸念という観点から、経済産業省、特許庁におきまして、研究会が発足しました。相呼応するがごときでございますが、本年の2月の初めに総理の施政方針演説に知的財産戦略会議の開催ということがうたわれました。総合科学技術会議、内閣府にございますが、その中でも専門調査会が設置されたという一連の動きがございます。一方、与党の中でも、例えば自民党の知的財産関連の合同会議が頻度多く開かれるようになりました。この4月には模倣品対策ということで国際知的財産保護フォーラムの発足、あるいは、弁理士法改正、特許法改正も4月に成立したわけでございます。5月に至りまして、先ほどの日米の特許の調査、審査に関する長官合意、また自民党からの知的財産基本法の制定という提言もされたわけでございます。それらを集約する形で、7月3日の第5回の内閣の戦略会議で大綱がまとめられたということでございます。
この大綱は、基本的には起草委員会形式をとりまして、起草委員長は部会長の中山先生にお願いしたわけでございますが、およそ 100項目にわたり担当する各省、作業の各年限、全部書いてございます。中身については後ほどご説明いたします。知的財産基本法準備室(7月5日発足)でございますが、これにつきましては、7月3日の第5回の会議でも小泉総理みずから、基本法の準備室を発足させるということの表明がございました。現在、6省庁11名からなりますスタッフで、この準備室が発足して、可能であれば、できるだけ早い時期に基本法を提案、制定を企画している状況となってございます。
概略、以上でございます。
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南技術調査課長
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それでは引き続きまして、私の方から大綱のご説明をさせていただきたいと思います。起草委員長を前に僭越ではございますけれども、私からさせていただきます。お手元の資料の4、5をごらんになっていただきたいと思います。
資料5が知的財産戦略大綱そのものでございます。まずこちらをごらんになっていただければと思いますが、目次をめくっていただきまして、「はじめに」というのが、第1ページになってございます。ここでは、加工組立型、大量生産型の従来のものづくりに最適化したシステムを変革して、付加価値の高い無形資産の創造にも適応した経済、社会システムを有する知的財産立国とすることが必要だということがうたってございます。
続きまして4ページでございますけれども、第1章「現状と課題」という項目がございます。ここでは、近年の我が国の産業競争力の低下への懸念について触れておりまして、今後、我が国の産業競争力を強化するためには、情報であるがゆえに模倣されやすいという性格をもっております知的財産を豊富に創造して、これを保護し、活用すること、つまり知的創造サイクルの高循環が必要であるということがうたわれてございます。
続きまして7ページ以降が第2章「基本的方向」でございますけれども、こちらでは、先ほど触れました知的創造サイクルのそれぞれの局面におきます知的財産の創造、保護、活用、それとこれらを支えます人的基盤の充実、この4つの分野に分けて戦略が整理されております。
ちょっと飛びまして17ページ以降でございますが、第3章「具体的行動計画」というのがございます。こちらでは、先ほど述べました4つの分野それぞれにつきまして、具体的な行動計画が記載されております。この行動計画は目次で数えまして55ございますが、より細かなレベルでは100余りの項目からなっております。ごらんになっていただきますとわかりますように、各項目ごとに可能な限り関係省庁と目標時期が明記されております。本日は、これらの具体的項目を1つ1つご説明する時間がございませんので、もう1つ、お手元の資料の4というポンチ絵の方でご説明させていただきたいと思います。
ポンチ絵の2ページ目をごらんになっていただければと思います。「知的財産立国に向けた基本的方向」というものであります。右側の枠をごらんになっていただければと思いますが、ここに具体的行動計画が、先ほどの4つのカテゴリーで概略、項目が並べられております。最初の「知的財産の創造の推進」では、知的財産の創出として、まず従来、知的財産への保護の視点が若干欠けていたと思われます大学、公的研究機関について、研究開発強化における知的財産の活用、研究者へのインセンティブの付与等についてが挙げられております。それから企業につきましても、職務発明規定の見直しや、日本版バイ・ドール制度の適用の拡大等について書かれております。また、創造性を育む教育・研究人材の充実として、研究人材の養成及び流動性、それから多様性の向上、知的財産教育の充実等が挙げられております。
次に「知的財産の保護の強化」の項目でございますけれども、知的財産創造のインセンティブを確保するために、その適切な保護は不可欠であるということから、迅速かつ的確な審査、審判、それから実質的な特許裁判所機能の創出、模倣品・海賊版対策の強化、国際的な制度調和と協力の促進等々、それぞれについての具体的行動計画が挙げられております。
3番目の「知的財産の活用の促進」という項目の中で、具体的に大学等からの技術移転の促進といたしまして、米国に比べて大幅におくれております大学からの技術のライセンシング、それから特許取得を改善すべく、大学等による機関一元管理の導入、それからTLO等の活動の強化等の具体的な行動計画がここで挙げられております。また企業につきましても、知的財産に十分な関心をもたない経営トップの意識を改革するために、知的財産の経営戦略化に資する指針の策定、適切な経済的評価の手法の確立等の具体的行動計画が挙げられております。
4番目の「人的基盤の充実」では、知的財産創造の担い手を養成することに加えて、その権利化や紛争処理、知的財産ライセンス契約などの高度な専門サービスを提供する専門家の養成が急務であり、そのために知的財産法を中心としたビジネスロー重視の法科大学院の出現を促す、それから法科大学院設置基準や新司法試験のあり方を含めた環境整備等の具体的な行動計画が挙げられております。
それから、この具体的行動計画の最後のページになりますけれども、これらを一刻も早く行動に移すべきとして、このポンチ絵の左側に書いてございますが、先ほどもちょっとご紹介いたしました知的財産基本法の制定というのがうたわれております。これらの具体的行動計画につきましては、政府一体となって、2005年度までに集中的、計画的に遂行すべきということになっております。
それから今、簡単にご紹介しました具体的行動計画のうちで、特に重要と考えております6つの項目につきましてが、この資料の3ページ目に抜き出してございますので、そちらでもう少し具体的にご説明したいと思います。
まず1つ目でございますけれども、世界特許に向けた取り組みの強化といたしまして、経済産業省は2002年中に、日米両国に出願された特許について、調査結果、審査結果の相互利用に関する検討を開始するとともに、2002年度中に迅速・的確な特許審査のための計画を策定するということにしております。この背景につきましては、皆さん、ご案内のとおりでございますけれども、経済のグローバル化に伴いまして、知的財産に関する出願等もグローバル化してまいってきておりまして、外国出願が急増しているわけでございます。一説によれば、外国出願のもととなる、基礎となる出願は18万件ございますけれども、これが各国に出願されまして、延べ数で 510万件になるといわれております。これはPCTの指定国のカウントも入っているわけでございますけれども、そうしますと、各国重複した審査、あるいは出願人におかれましては、各国それぞれに対して手続をしないといけないというようなワークロードがふえるということでございまして、こういったものをいかに解決していくかということで、この1番目の調査結果等の相互利用について検討を開始すべきという提言がなされたわけでございます。
2番目の迅速・的確な特許審査の計画策定につきましては、今後、知的財産への関心の高まりに伴いまして出願もふえてくると考えておりますし、請求期間の短縮、7年から3年に短縮したことによる審査請求件数の増加等々が予測されておりまして、こういった状況を踏まえても、迅速、的確な審査はさらに進めていかなければいけないということで、とりあえず2005年度までに、先ほど長官のあいさつの中でも触れましたが、総合的な対策を含めた計画を策定すべきというような提言がなされたところでございます。
次、2番目でございますけれども、実質的な特許裁判所機能の創出といたしまして、司法制度改革推進本部及び法務省ですが、2003年通常国会において、特許等に関連する裁判を東京、大阪地裁に集中するための法案を提出すべきというようにされております。現在、知的財産関連の訴訟、特に特許、それから回路配置利用権、プログラム著作権につきましては、競合管轄といたしまして、東京、大阪地裁に集中することができるような規定になってございますけれども、より専門性の高い裁判所での判断を求めている産業界の声が強いということで、これを東京、大阪に集中すべきと。専属管轄化すべきというような提言がなされているわけでございます。
3番目でございますけれども、模倣品・海賊版等の対策の強化といたしまして、これは多省庁にまたがっておりますが、警察庁、総務省、外務省、文部科学省、経済産業省は連携いたしまして、海外で生産された模倣品、海賊版を水際で効果的に阻止できるよう、遅くとも2004年度までに法制面及び運用面を改善する。それから2002年度以降、二国間交渉やWTO、TRIPS等を通じまして、模倣品、海賊版製造国に対して働きかけを強化するというような提言となっております。この水際につきましては、現在、輸入禁製品としては、工業所有権4法、著作権、著作隣接権等のものが入っているわけでございますけれども、実際上はTRIPS準拠ということで関税定率法上、商標権、著作権、著作隣接権についてのみ、申し立てによって差しとめできるという規定になっておりまして、特許、意匠につきましては、職権でのみ行うことができると。実際上、非常に技術的な事項でございますので、なかなかやはり取り締まりができていないというのが実情でございまして、このあたりを、特許、意匠にについても差しとめができるような改善を図ると。それから、現在、この輸入禁製品の中に種苗法の関係ですけれども、育成者権については含まれておりませんので、これを含めるべく検討を進めるということになっております。
それから4番目でございますけれども、営業秘密の保護強化ということですが、これは昨今の、人材がどんどん流動化してきているということ、それから情報のネットワーク化によりまして、必ずしもものを介在しないで情報がどんどん流出してしまうような環境が進んできておりまして、営業秘密の保護を、従来にも増して強化していかないといけないという認識のもとに、営業秘密の不正取得等に対する民事上の救済措置の強化、それから罰則、刑事罰の導入を図るべく検討を進めるということで、2003年通常国会に、不正競争防止法の改正案を提出するということにしております。
5番目でございますけれども、大学の知的財産の創出、管理機能の強化といたしまして、総合科学技術会議、それから文部科学省等が2003年度までに、大学等におきまして、企業の参加を得て戦略的に知的財産を創出する研究開発制度を構築すると。同じく2003年度までに全国数十箇所の主要な国公私立大学に知的財産の創造等を総合的に支援し、あるいはTLOと連携をとって技術移転を促進するような知的財産本部を整備するということにしております。
最後の6点目でございますけれども、知的財産専門人材の養成といたしまして、司法制度改革推進本部及び文部省は、2004年度から学生の受け入れを開始予定でございます法科大学院におきまして、知的財産教育を行い得る制度設計をすることとしております。
以上、簡単でございますけれども、大綱のご紹介をさせていただきました。
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小宮知的財産
政策室長
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それでは続きまして、産業競争力と知的財産を考える研究会につきまして、簡単にご報告をさせていただきたいと思います。お手元に資料6という冊子があるかと思います。冊子の中、最初はA3の1枚紙、それから概要版、そのあと本文という形で続いてございます。本文の一番最初のところに委員名簿がございますので、そこをお開きいただきたいと思います。この研究会は昨年、10月19日に、まさに産業競争力と知的財産を考えるために発足をいたしまして、先ほど長官から申し上げましたように、6月5日にとりまとめを行ったところでございます。途中、12月に中間の整理を行いまして、あわせまして、模倣品対策に関する特別提言も提出をしたところでございます。
委員名簿をみていただきますとわかりますように、先ほど触れられました総理の知的財産戦略会議との関係では、阿部委員長、中山委員長代理、それから小池委員、松尾委員と4名、戦略会議にも入っておりまして、そういう意味では、当省としての考え方を、まさにこの研究会でご議論いただきまして、これを大綱に取り込んでいただいたというものでございます。
もう1つ特徴といたしましては、その次、ワーキンググループを3つ設置いたしました。企業、それから大学、海外と3つの視点に基づきまして、非常に突っ込んだご議論をいただきました。結果といたしまして、後で本文をご参照いただきたいと思いますけれども、個別の論点につきまして、どのような論戦があったのかというのがわかるような形で報告書をとりまとめさせていただいております。そういう意味で、ここに至るまで相当程度、昨年より政策的な議論が戦わされたというところをご報告したいと思います。
内容的には、先ほど南課長からご報告のありました知財大綱と細部重複いたしますので、詳細は避けますけれども、このA3の1枚紙に大きな所がございますように、若干整理の仕方は違いますが、人的基盤、大学、企業、海外といった4つの視点からあるべき姿、政策をとりまとめていただいたところでございます。そういう意味で、大綱とあわせまして、この審議会における議論のご参照としていただければと思う次第でございます。
短いですが、以上でございます。
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中山部会長
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ありがとうございました。
私は知的財産戦略会議のメンバーとして、起草委員長として大綱の作成に関与してまいりました。この大綱は、現在考えられるほとんどを網羅しているのではないかと考えております。具体的内容は先ほど南課長からお話しございましたし、もっと詳細は大綱をみていただきたいのですけれども、特徴的なのは、2005年までに各官庁の行動を、期限を付して明確に示したと。これが従来の審議会の報告書等とは違って非常に大きな意味があるところだろうと思っております。したがって、今後はここに書いてある、この大綱の内容がいかに実施されるか、それにかかっているかと思われます。
先ほどご紹介がございましたとおり、平井総務部長が事実上のヘッドになりまして、知的財産基本法をこれから作成するわけでございます。基本法の中には、恐らく知的財産戦略本部を設置されるということが記載されると予想されまして、今後、この推進本部がきちんとした司令塔となって大綱を実施してくれるように、切に希望をしているわけでございます。同じく戦略会議のメンバーとしてご参加いただきました松尾委員から、もし何かコメントがあれば、お願いしたいと思います。
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松尾委員
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今までのところで十分でございます。
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中山部会長
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よろしいですか。
それでは、ただいままでの説明につきまして、何かご意見、あるいはご質問がございましたら、お願いいたします。どうぞ。
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松尾委員
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この知的財産戦略の大綱について、委員の中から、これは最低の基準であるというような発言があったと思います。私も確かにそうだろうと思っております。ここでは時間的な余裕もありませんので発言しませんでしたが、後から考えますと、デザインとか商標についても一言、入れていただけばよかったと思っております。現在、商標法の改正についても、いろいろと知財研等で討論がなされておりますけれども、そういうことも、この知財の全体的な戦略を考える上で、これが最低だということで、必要なものはぜひ加えていっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
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中山部会長
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戦略大綱の24ページには、一応書いてあるのですけれども、余り踏み込んでは書いていない。確かに松尾先生、おっしゃるとおり、創作法と標識法、これは両輪でありますから、当然、標識法も努力をしていかなければならないということはいうまでもないと思います。ありがとうございます。
ほかにご意見、あるいはご質問がございましたら……。よろしゅうございましょうか。
それでは次の議題に進みたいと思います。知的財産戦略大綱における本部会関連事項及び小委員会の活動予定につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
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南技術調査課長
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それでは、各小委員会の議題に移る前に、先ほどちょっとご紹介いたしました戦略大綱の具体的行動計画を整理した資料7というものがございますが、そちらで簡単にご説明したいと思います。この資料7は、先ほどの具体的行動計画の中で経済産業省に関係あるもの、なおかつ具体的な目標、日時等が設定されているものを抜粋して表にしたものでございます。左側が大綱の掲載ページでございまして、項目名と、それぞれの項目につきまして、どういう結論を導き出すべきかということで具体的な実施内容が書いてございます。結論を出せというものは結論とございますし、あるいは計画をつくれというものは計画策定と、具体的に何をすべきかというのがここに書いてございます。それから右側の目標時期でございますけれども、白丸がいつから開始すべきという目印でございます。黒丸がいつまでにこれを行えという期限となる年度ということでございます。この具体的な表の中で、今後、小委員会でご検討いただく項目が抜き出され、この後、ご説明いたします小委員会の発足について、ご審議いただきたいと思っております。
以上でございます。
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木村審議室長
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それでは続きましてご説明申し上げます。特許庁制度改正審議室長の木村でございます。
本部会には4つの小委員会を設置、もしくは設置のご議論をしていただければと考えてございます。その4つと申しますのは、紛争処理小委員会及び不正競争防止小委員会、これは既に設置をされておりまして、審議が開始されております。それに加えまして、本日の部会で設置をご了承いただきたい、特許制度小委員会及び経営・市場環境小委員会、その4つでございます。
まず資料8、紛争処理小委員会、及び資料9でございますけれども、特許制度小委員会につきまして私の方からご説明を申し上げ、その後、不正競争防止小委員会、経営・市場環境小委員会につきましては、小宮の方から説明をさせていただければと考えております。
まず資料8でございますけれども、紛争処理小委員会でございます。近年、産業財産権、工業所有権に対します意識の高まりを背景にいたしまして、権利の有効性を争う紛争がふえているわけでございます。現行制度のもとでは、権利の有効性判断、あるいは権利範囲の訂正は、原則特許庁におきまして、異議申立、ないしは審判の形で処理をしておりまして、ますます増加し、かつ複雑化しております紛争処理の迅速かつ的確な処理のために、こういった制度の見直しというのが求められてきているわけでございます。この趣旨から、知的財産戦略大綱26ページでございますけれども、ここにも「審判制度を簡素化・合理化するとともに機能の充実を図るため、異議申立制度と無効審判制度の関係、訂正審判制度のあり方、審判と審決取消訴訟との関係等について検討し、2003年の通常国会に所要の法案を提出する」ということが明記をされております。
こうした要請に対応するために、知的財産政策部会委員の、これは書面でのご決議をいただきまして、知的財産政策部会のもとに紛争処理小委員会を、本年5月に設置をさせていただきました。委員長には、大渕哲也東京大学先端科学技術研究センター教授にご就任いただきまして、16名の委員の参加を仰ぎ、既に5月28日、6月27日と2回の開催を行っております。第1回の小委員会では事務局から、現行の特許等にかかわる紛争処理制度の概要、現行制度に至るまでの経緯、それから現行制度に対し提出されている意見等をご紹介申し上げ、各委員から検討に盛り込むべき事項について自由に意見をいただいたところでございます。各委員からは、迅速性と的確性のバランス、あるいは一事件の解決と紛争全体の解決のバランスを視野に入れて議論をすべきといったご指摘をいただいております。また特許庁における異議申立や審判のみならず、これらと訴訟との関係についても十分に留意して検討を進めるべきであるというご指摘もいただいております。
第2回小委員会では、特許等の有効性の有無を判断する制度として、現在、異議申立と無効審判、2つあるわけでございますけれども、これを一本化して新たな制度を設けるべきか否か、その場合、制度の基本骨格というのはどのように考えるべきかということにつきましてご議論をいただいておりまして、一本化につきましては、これにご賛同をいただく委員が多数を占めたと認識いたしております。
今後、10月の中旬までを目途に合計6回ぐらい審議を行わせていただきまして、残された論点、特許の訂正制度と審決取消訴訟制度の関係、いわゆるキャッチボールの問題、それから新たに設けられます権利有効性判断のための制度、そういうものが仮に設けられれば、それと審議会訴訟の連携のあり方ですとか、あるいは判定制度、そういったものを含む裁判外紛争処理制度のあり方等につきましてもご議論をいただきたいと考えてございます。最終的には報告書としてとりまとめ、本部会にご提出申し上げるということになると思います。
それから、今回、新たに設置をお諮り申し上げたい特許制度小委員会の案でございます。資料9でございます。近年、世界的な特許出願が急増しておりまして、米国、欧州と並びまして、日本においても審査期間の長期化というのが非常に懸念される状況になっております。こういう中で、迅速かつ的確な権利付与を維持するために、特許制度全般にわたる包括的な見直しというものが必要になってきております。この趣旨から、知的財産戦略大綱10ページ、26ページといったところで、審査の質を維持しつつ、審査期間の長期化を防ぎ、短縮化に向けた取り組みを推進するということが明記されておりまして、直ちに審査請求期間の短縮に伴う審査請求件数の急増が予想される2005年度までの計画を策定するということにしております。その際には、より一層の効率化を図りつつ、必要な審査官の確保、先行技術調査の外部発注や専門性を備えた審査補助職員の積極的な活用等による審査体制の整備、加えて企業啓発等による我が国の出願審査請求構造の改革等総合的な施策を講じるということが明記をされているわけでございます。
この計画策定に向けまして、特に制度改正が必要な事項について検討するために、新たに知的財産政策部会のもとに特許制度小委員会を設置していただけないだろうかというご提案でございます。特許庁といたしましては、小委員会での審議結果を踏まえまして、包括的な計画を策定いたしたいと考えております。
主な検討事項でございますけれども、順番に申し上げますと、まず最適な特許審査に向けた特許制度のあり方についてご審議をいただければと考えております。欧州や米国の状況も参考にしながら、特に出願・審査請求構造の改革の方向性につきまして、包括的に審議をしたいということでございます。
第2に、多様化する権利保護のニーズに対応いたしまして、実用新案制度のあり方について検討をしてはいかがかということでございます。実用新案制度につきましては、平成5年の法改正以降、急速に出願が減少しております。新たな技術を保護する制度として、多様な選択肢があった方がいいのではないかと、そういう状況に対応すべく、早期登録制度である実用新案制度の見直し、拡充についてもご検討いただければと考えております。
第3に、先端技術分野における特許についてもご審議をいただければと考えております。再生医療ですとか、遺伝子治療関連技術の特許法における扱いを明確化するということで制度整備についての検討も行う。これは大綱にも明記がなされておりまして、特許法における取り扱いを明確化すべく、2002年度中に法改正及び審査基準改定の必要性について検討し、結論を得るということが書かれてございまして、とりわけ先端医療技術、生命倫理等について、専門的な検討が必要になることが予想されますために、小委員会の設置がご了承いただけましたら、さらにその下に特別のワーキンググループを設置して、専門家にお集まりいただいて集中的に検討を行ってはいかがと考えております。
それから第4でございますけれども、発明者のインセンティブを確保する制度について審議をいただければと思っております。現行、職務発明規定がございますけれども、これにつきましても大綱上、改正の是非及び改正する場合には、その方向性について検討を行い、2003年度中に結論を得るという記載がなされておりまして、経営者側、技術者側から、さまざまな見直しに向けた提案がなされております。企業における実態、あるいは従業者層の意識、諸外国の制度等の調査を行いまして、その結果を踏まえて、法改正の是非を含めた制度のあり方について検討ができればと考えております。
本日、設置をご了承いただけましたら、直ちに委員の人選を進めさせていただきまして、9月上旬を目途に第1回、法改正を要するものにつきましては12月を目途に結論を得たいということで審議をお願いできればと考えております。法改正を特に必要としない事項、あるいは年内に結論が得られないという事項につきましては、引き続き年度末を目途に検討をいただければということでございます。
私からは以上でございます。
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小宮知的財産
政策室長
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それでは続きまして、不正競争防止小委員会及び経営・市場環境小委員会につきまして、ご説明を申し上げます。
不正競争防止小委員会でございますけれども、これは不正競争防止法の改正を議論するための小委員会でございます。もともと不正競争防止法と申しますのは、昭和9年、条約実施法として、著名表示の誤認混同、もしくは原産地虚偽表示、こういったものを防止をするためにスタートしたわけでございますけれども、平成2年、営業秘密の保護というのを入れて以降、条約実施法のみならず、あらゆる角度から不正競争を防止するという法律に変わってきているわけでございまして、つい先般では、昨年、ドメインネームの保護のための改正を行ったところでございます。
ところが、資料10にございますように、1つは、やはり原告の救済措置を強化する必要があるのではないかと。すなわち、工業所有権4法につきましては、平成10年、11年に、いわゆるプロパテント政策の一環といたしまして、被害の立証容易化、もしくは損害額の立証容易化という改正を行ったところでございますけれども、残念ながら不正競争防止法は、この際には改正をいたしませんでした。これを、やはり工業所有権4法と同等の規定を盛り込むべきではないかという議論がございます。
2番目が営業秘密の保護強化でございます。先ほど南課長の方からご説明のありました知的財産戦略大綱の11ページは総論でございますし、31ページは各論でございますが、それぞれ営業秘密の民事及び刑事に当たる保護強化につきまして検討して、来年の通常国会に法案を提出するということが記されてございまして、こういう観点から検討を行う必要がございます。
3番目は、インターネット化に対応した概念規定の見直しでございます。実は、この知的財産政策部会、昨年、特許法及び商標法についてご議論いただきまして、プログラムの保護の明確化、それから画面で表示される商標の保護といった改正を行ったところでございますけれども、実は不正競争防止法、その工業所有権4法と若干対になっているようなところがございまして、そういう意味で、例えば不正競争防止法の中に存在しております商品、譲渡、仕様といった概念につきまして、インターネットを前提とした明確化を行うべきではないかという議論が提起をされているわけでございます。
したがいまして、今、申し上げた3点につきまして、ここにございますスケジュールに基づきまして、今年末を目途に検討を進めていくということでございます。既に書面によりまして小委員会は設置をされてありまして、去る6月26日に第1回を開催済みでございます。ここでは全体の問題意識についてご説明申し上げ、ざっくばらんなご議論をいただいたところでございますけれども、次回以降、個別の論点に沿った形での集中的な議論を行っていくという予定でございます。
次に資料11でございます。これにつきましては、若干大綱のご説明をしなければいけないのですけれども、大綱のまず31ページに営業秘密の保護強化、31ページの一番下でございますが、参考となるべき指針を作成するというくだりがございます。次に36ページでございますけれども、36ページの一番上に知的財産の経営戦略化というところで、ここについても参考となるべき指針を策定をすると。それからノウハウの流出防止のところにも同様の、参考となるべき指針を公表するということで、まず2002年度中につくらなければいけない指針が3つございます。あわせまして、36ページ中段下のところですけれども、知的財産の情報開示ということで来年度中には情報開示の指針を策定すると。さらには37ページの上段でございますけれども、知的財産の価値評価の確立ということで、特許等の流動化について、制度、または運用の改善を含め、検討を開始して、遅くとも2005年度までに結論を得るというようになっているところでございまして、このようなところを幅広くご検討いただくための小委員会がやはり必要だということにあいなったわけでございます。
したがいまして、まだメンバー等々は未定でございますし、我々としては9月以降、メンバーを選定した上で、この小委員会を開始したいと思っておりますけれども、とりあえず本日の部会におかれましては、経営・市場環境小委員会の設置につきまして、ご了承をいただければ幸いでございます。
以上でございます。
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中山部会長
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ありがとうございました。
本日は、紛争処理小委員会の大渕委員長にも出席をいただいておりますので、大渕委員長からコメントがあればお願いいたします。
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大渕委員長
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ただいまご紹介いただきました大渕でございます。紛争処理小委員会につきましては、先ほど事務局の方から詳細なご説明がございましたので、特に付け加えることはございません。紛争処理小委員会のテーマと申しますのは、本日配付の資料8にもありますとおり、審判、訴訟等に関する複雑困難な多岐にわたる論点を含むものでありますが、限られた時間の中でスケジュールに沿って鋭意審議を進めているところでございます。
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中山部会長
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ありがとうございました。
それでは、以上の事務局の説明につきまして何かご意見、あるいはご質問がございましたら、お願いいたします。
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松尾委員
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ちょっと質問したいのですが、特許制度小委員会に、検討事項として4つ挙がっております。これは時間的な順序ではないのだろうと思いますが、④のところに「発明者のインセンティブを確保する制度について」ということで、この中で従業者の意識とかも含めて実態等の調査を行い、その結果を踏まえるとありますので、とにかくアンケート調査か何かなさるのだろうと思います。その関係なのですけれども、時間的にどうなるかわかりませんが、不正競争防止法小委員会では営業秘密の保護についていろいろ検討しておりますので、もしこの調査で、どういうことを考えていらっしゃるのか、もし、従業者層の意識とか職務発明に関係することで、営業秘密の保護の検討で役に立つような資料が出るのではなかろうかという気がするのですが、いかがなものなのでしょうか。
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南技術審査課長
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ただいまのご質問でございますけれども、職務発明制度のあり方について検討を行うためのアンケート調査でございますが、既にもう実施をして、今、集計作業中でございます。全国の発明者約6,000人余りですか、を対象にアンケート調査をいたしまして、現在、その集計作業をしておりまして、その結果を小委員会に反映できればと思っております。その具体的な項目の中で、不競法の検討に役立つものがあるかどうかについては、我々の方でも見直してみますけれども、若干観点が違うものですから、必ずしもお役に立てないかもしれません。
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中山部会長
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ほかにご意見、ご質問ございましたら……。
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森下(竜)委員
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特許制度小委員会についてお聞きしたいのですけれども、先ほどの4番のところ、発明者のインセンティブの話です。ここでは企業に関してのみ、書かれているように思いますが、知的財産戦略大綱の中では大学からの知的財産に関してもインセンティブを図るといったような趣旨のことがあったと思います。その点に関しては、こちらの方の委員会では議論しないということでしょうか。
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南技術調査課長
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一番議論の焦点になっておりますのは、ご案内のとおり、特許法の35条の職務発明の規定でございますけれども、この規定につきましては企業、それから大学研究者等、特に分け隔てなく従業者と使用者との関係が規定されておりまして、基本的に我々、特に企業とか大学とかというカテゴリー分けしたような検討を行う予定ではございません。大学における研究につきましては、昭和52年の答申と53年の通達がございますけれども、文部科学省の方で35条に則した範囲内での取り扱いというのが独自にございますので、そちらの方との連携をとりながら議論していくことになるかと思います。
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森下(竜)委員
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これはぜひ、大学に関しても、こちらの方で取り上げてあげればと思います。今、恐らく一番難しい問題で、特に独立行政法人の話が出ておりますので、そこのところもこの委員会で議論していただければ、かなり今回の知的財産戦略大綱の内容に沿った答申になるのではないかと期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
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及川特許庁長官
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ちょっと一言。ご承知のとおり、この大綱の19ページに今のご指摘の点はあるわけでありますけれども、19ページの「研究者へのインセティブの付与」というところでございますが、担当省庁は総合科技会議、文部科学省、経済産業省、関係府省となっております。森下先生のご指摘はごもっともでありますので、我々、検討することはやぶさかではないでのですが、基本的には、恐らく経済産業省は産総研のような所管の研究所の研究成果に対する、どういう、一種の職務発明規定を行うかということで、実はこれはもう既に、産総研は収入の25%を与えるというのを出しておりまして、逆に企業から強くお叱りを受けているところであります。ですから、それが1つの相場感に、少なくとも公的施設に関してはなりつつあるかなという感じがしておりまして、こういった1つの相場に対し、文部科学省さんとしてどのようにお考えになるかというのを、我々としては注目しているということです。ですから、ご議論はできますが、基本的にはやはり文部科学省の方でなさるのではないかと思います。
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中山部会長
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ちなみに文部科学省の方ではもう審議会で、この問題は議論を始めております。大学は、また企業とは違った特殊な事情もありますので、35条の枠内ではありますけれども、向こうの方では恐らくもっと詰めた議論がなされるのだろうと思っております。
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庄山委員代理(丸島)
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特許制度処理委員会の4番について、ちょっと質問させていただきたいのですが、調査項目として、企業における実態、従業者層の意識ということで、対象がちょっと違っているように感ずるのです。これは同じような、企業における意識というか、職務発明に対する考え方もぜひアンケートの中に入れていただきたいと思うのですが、入っているのでしょうか。大綱では、「企業の特許管理コストやリスクの軽減等の観点から、社会環境の変化を踏まえつつ、法改正の是非を含めた」といっておりますので、従業者層の意識だけではなくて、企業の方も含めていただきたいなという感じがするのですが、企業はただ実態だけ調べるのかと。
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南技術調査課長
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ここは特に大意はございませんで、それぞれの実態、それぞれの意識を踏まえて検討してまいります。
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中山部会長
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ほかに……。どうぞ。
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北村委員
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特に紛争処理小委員会にかかわることかと思いますけれども、審判制度と侵害訴訟との関係というと、法務省関係の検討との関係がどうなるのか。ここで決めれば物事が片づくのか、そういう他省庁との関係をちょっと教えていただきたいということがあります。
それと、特許制度小委員会の方で検討される先端技術分野における特許ということでいうと、かねてよくいわれていますように、省庁縦割の弊害で、これも厚生労働省にかかわる部分があろうかと思うのですけれども、そのあたりの扱いをどう考えておられるのか。
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及川特許庁長官
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おっしゃるとおりでありまして、裁判制度そのものを私どもが議論することはできませんので、大綱にもありますように、司法制度改革推進本部がメインになると思います。2004年までというようになっておりますのは、まさに本部が存続いたします期間内には結論を出すということでありますので、最終的にはあちらの方で決めていただくことになると思うのですけれども、ただ、まさに審判は一方で私どもの制度でありますので、私どもとしてどうするか等を、それなりにまとめて、それが最終結論になるかどうかは別にいたしましても、その辺のご議論をしていただければありがたいと、こういうことだと思います。
それから医療についても全く同じでありまして、ここは厚生労働省の方ともよくコンタクトをとりながら進めなければいけない問題であります。ただ、どこかがやるだろうと思って待っていますとなかなか進まないという面がありますので、ご指摘をいただいた分、特に最後は審査基準に入ってまいりますので、そういう点で、どうしても我が方は避けるべきではないという観点から取り上げてみたわけで、限界にぶつかれば、厚生労働省によくお伺いをしていきたいと、このように思っております。
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中山部会長
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ほかに。
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山本委員
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総合科学技術会議でも特許の信託化について議論させていただいているのですが、これは特許制度小委員会で議論されることなのか、ちょっと目的をお読みしますと、審査の短縮化ということとは直接的ではないものですので、どこでご議論をさせていただければというように思ったのですが……。
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小宮知的財産
政策室長
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特許の信託につきましては、経営・市場環境小委員会の方で取り扱うことになると思います。今、特許の流動化といいますと、証券化と信託と2つあるわけです。信託については、実はいろいろな、いわゆる抽象的なニーズというのは問題提起が既に大学のTLOだけではなくて、産業界でも、例えば持ち株会社をした場合に、いわゆる特許管理会社をつくるべきではないかと、こういったような議論が出ているのですが、ただ、残念ながら、まだ、今の金融庁のもっている制度をこのように変えてくれというところまで煮詰まっていないのも事実でありまして、そういうところも含めまして、この経営・市場環境小委員会の方でいろいろな議論をやっていきたいと思っております。
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中山部会長
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ほかにご意見、ご質問、ございましたら……。よろしゅうございますか。
それではほかに意見がないようでございますので、特許制度小委員会の設置及び経営・市場環境小委員会の設置を本部会の決議とさせていただくことにつきまして、各委員の皆様にお諮りをしたいと思いますけれども、ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
ありがとうございます。異議ないようでございますので、特許制度小委員会及び経営・市場環境小委員会の設置を本部会の決議といたします。
それでは桑田審議官がご到着でありますので、ごあいさつをお願いいたします。
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桑田審議官
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経済産業政策局の審議官をしております桑田でございます。おくれてまいりまして、まことに申しわけございません。
先ほど来、既にご審議を賜っておりますけれども、知的財産戦略大綱がこの7月にできまして、振り返りますと、昨年秋から、私ども経済産業政策局並びに特許庁長官の研究会というところで産業競争力強化のためにやはり知的財産、いわゆる無形資産を活用していかなければ、今後、中国の追い上げにも対抗し、さらに欧米企業とも戦っていくという上では、これからの経済モデルはやはり無形資産の創造に重点を置いたシステムに変えていくべきだというところから始まったように思いますし、それが国全体として100項目にわたるアクションプランが先般決まったわけでございますので、私どもといたしましては、これをともかく各省に先んじて一刻も早く実現の方向にもっていきたいと思っております。そういう意味では、不正競争小委員会並びに経営・市場小委員会は企業経営の知的財産の活用、さらに保護といった面では非常に重要な点ではなかろうかと思っておりますし、私どもなりに一生懸命準備をさせていただきますので、今後とも引き続き審議の方、それからいろいろなご提言、よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
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中山部会長
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ありがとうございました。
それでは次の議題に進みたいと思います。知的財産をめぐる国際的動向につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
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櫻井国際課長
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国際課長でございます。お手元の資料12に従いましてご説明申し上げます。この資料、既にみられたような方もいらっしゃるかと思いますが、昨年12月3日に開催されました第2回の知的財産政策部会の際にご説明申し上げた資料、これと基本的に変わっておりません。その後の、約半年間の動きを中心に若干手を加えたものでございます。変化のあったところを中心に簡単にご説明を申し上げたいと思います。
1ページ目でございます。ここは、要するに今、世界でこの知的財産の分野における問題意識というものを簡単にまとめたものでございますが、まさに知財大綱の30ページに書かれているものでございます。文章で書くと大網の30ページのもの、それのキーワードを拾い出して並べると、この資料の1ページのような図になるわけでございます。再三ご説明がございましたが、特許出願が各国で急増しております。そうすることによりまして、出願人の方での手続負担とかコストの増大がある。他方、特許庁においては業務量の増大があるということで、3つくらいの柱で今、世界的に動きがあるわけでございます。
1枚めくっていただきまして、それぞれについて簡単にご説明申し上げます。1つは、特許制度実体調和でございます。これは2000年の10月から、もう既に4回のSCP会合が開催されております。この中では、各国の特許付与要件の深い調和を目的といたしまして、実体特許法条約、SPLTと呼んでおりますが、これについての検討が行われているわけでございます。新規性とか進歩性、かなり突っ込んだところまで議論いたしまして、それによりまして出願人さんの負担軽減と特許取得における予見性の向上、さらには庁間重複業務の削減まで図れるように考えているところでございます。
もう1つの柱がPCTのリフォームでございます。これはここにありますように、PCTでの出願制度の簡素化、手続の合理化を目指して検討を開始されたものでございますけれども、既に1つ成果が上がっておりまして、昨年9月のPCT同盟総会で国内移行期限の一律30カ月、これが全会一致で決定されました。我が国におきましても関係法令の改正法案が今国会で審議されまして、本年の9月に施行される予定となっております。それからもう1つ、その下にありますように、現在、国際調査の拡充、これは調査報告書でございますけれども、これに審査官の見解を付するような形での拡充、それから全締約国、今はPCT出願する国を1つずつ選ぶような形でありますが、全加盟国を指定してしまうというみなし指定、こういったものが、今月、第2回のPCTリフォーム委員会が開かれましたけれども、そこで検討されて、その委員会での決定をみているところでございます。
3つ目が特許庁間のバイ・マルチの協力でございます。これは既に冒頭、及川長官、あるいは技術調査課長の方からも言及がございましたけれども、他庁のサーチ、審査結果の相互利用を図ることによって、重複した業務を排除していこうということでございます。とりわけ、その真ん中の黒ポツにありますように、日米間におきましては、この5月に検討プロジェクトを立ち上げることについて合意がなされました。これは今年中、2002年中に検討プロジェクトを立ち上げまして、遅くとも2003年末までに2004年以降の将来計画を決定するということでございまして、具体的にどういう形でこのプロジェクトを進めていくかにつきましては、今、担当ベースでも議論が始まったところでございます。
それから最後にありますが、3極特許庁会合、昨年の11月にサンフランシスコで開催されましたけれども、この中でもワークロード削減に対処するために2つワーキンググループを設置することが合意されました。本年5月に3極専門家会合が開催されましたけれども、その場では、ワーキンググループのキックオフがなされております。その中では、各庁の今、抱えております問題につきまして情報交換がなされまして、引き続き3極で共同歩調をとってやっていけるような政策があれば、そこで議論するということで合意がなされております。
3ページ目は、これは1つ、この知的財産における世界的なフォーラムの1つでありますTRIPS関連の件でございます。昨年のドーハの会合が非常に象徴的だったものですから、タイトルをそのままにしておりますけれども、これについても鋭意、今、TRIPS理事会の方で検討がなされております。特に一番上にありますTRIPS協定と公衆衛生に関する閣僚宣言、これはエイズに代表されるような医薬品アクセスの問題が途上国から提起されておりまして、今年中に何らかの解決策をみるということを、そのときに合意がされたわけでありますけれども、それについても議論がいろいろ進められているところでございます。
それから4ページでございますが、途上国における権利取得の容易化。これは産業競争力と知的財産を考える研究会の報告書の39ページに掲載されている中身でございます。1つは、我が国特許庁の修正実体審査対象庁化ということでございます。既にクロアチアにつきましては、2001年6月に実現しておりますけれども、シンガポールに関しましては、日・シンガポール新時代経済連携協定、ことしの1月に小泉首相がシンガポールを訪問されたときに調印されております。今通常国会で承認が得られておりますけれども、この中で、シンガポールにおいて日本特許庁を対象庁化するということが合意事項として盛り込まれております。この協定の発効、この秋の予定でございます。これが発効されると実現するという運びになっております。
最後、5ページ目でございますが、模倣品等権利侵害品への取り組み。これも研究会の報告書であるとか、あるいは大綱の28ページにも大きく取り上げられているわけでございます。1つの大きな柱になっておりますけれども、これについても今まで同様、鋭意我々として取り組んできているところでございます。2つ目の四角囲い、国際フォーラにおける取り組みの中でWTOについて書かれておりますけれども、6月に開催されましたTRIPS理事会の中で、中国、台湾に関して法令レビューをこの9月から開始するということが決定されました。これに向けて、今、我々として中国、台湾に対してどのような質問を行いながら、またレビューを行っていくのかというところを、担当レベルで検討を始めているところでございます。
それから下から3つ目の四角囲い、産業界との連携強化というのがございます。これも各種報告書等で触れられておりますけれども、国際知的財産保護フォーラムというものが設置されました。そういうところをもって、我々として民間の方々と連携しながら、模倣品問題について取り組んでいく所存でございます。私からの説明は以上でございます。
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中山部会長
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ただいまの説明に関しまして、国際知的財産保護フォーラムの座長をしておられます森下委員から何かコメントがございましたら、お願いいたします。
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森下(洋)委員
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冒頭、及川長官からのお話の中に、国際知的財産保護フォーラムの設置の話がございました。私がその座長を仰せつかった関係上、ちょっと背景とか、現在取り組んでいる状況を報告させていただきたいと思います。
ご承知のとおり、国際知的財産保護フォーラムというのは、従来でございましたら、個々の企業とか業界団体単位で取り組んでおりましたけれども、昨今の情勢をみますと、模倣品問題の対応がボリューム的に非常に大きくなりまして、限界があるというような関係から、産業界の枠を超えて連携をして、そして我が国の政府とともに協力しながら効果的な対策を打っていくのがいいのではないかという形で、本年4月16日に発足をいたしたというような経緯でございます。まだ発足して間もございませんけれども、現在、67団体、86の企業を含む153の企業・団体の加盟をされまして、先ほどの資料にも出ておりましたけれども、4つのプロジェクトが今、スタートいたしております。
その1つは、この8月末をめどに、模倣品問題に関する、産業界から我が国政府への提言をまずとりまとめるということでございます。2つ目には、その提言を踏まえて、10月に予定をされております侵害国への官民合同ミッションにおいて、相手国政府に模倣品対策の強化を要請するというのであります。3つ目が、産業界におきまして模倣品問題に関する情報交換を図ろうと。4つ目には、政府と協力しながら侵害国におけるIP人材の育成強化を図っていこうと、このようなことで今、4つのプロジェクトがスタートいたしております。こうした活動を通じまして、海外における知的財産権の保護強化を図って、我が国の産業の国際的な競争力を強化していこうというのが一番の狙いであります。
また、海賊版問題を抱えております著作関連団体やコンテンツ産業についても、コンテンツ海外流通促進機構を結成してフォーラムに参加をする予定と伺っておりまして、そういうフォーラム活動分野を広めていきまして、今、現在の課題になっているものに何とか対応していくと、こういうことでスタートいたしておりますので、関係省庁、また皆さん方にも、今後とも一層またご支援をいただきたいと、報告にかえさせていただきます。
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中山部会長
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ありがとうございました。
以上の説明に関しまして、ご意見、あるいはご質問、ございましたら、お願いいたします。
――よろしいでしょうか。本日の議題は以上でございますけれども、それでは時間もございますので、今の議題だけではなくて、本日のすべての議題、あるいは知的財産政策全般に関しまして、何かご意見、あるいはご質問、ございましたら、遠慮なくお願いしたいと思いますけれども、ご発言はございませんでしょうか。
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安田委員
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東京大学の安田です。本文ではないのでよろしいかと思うのですけれども、この知的財産戦略大綱のポイントという資料4の知的財産立国の実現というところです。
「『知的財産立国』とは、知的財産をもとに製品やサービスの高付加価値化を進め」と書いてありますけれども、知的財産そのものも大事な話だと思うので、単にこれをもとに製品やサービスがどうなるということよりも、知的財産も含めてという表現だと思うのです。本文はそうなっていて、そのように随分やったと思いますので、これ自身がどうなるかはわかりませんけれども、お願いします。
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平井総務部長
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これは表をつくるのに立国というのを、貿易立国とか、立国とは何ぞやという議論があったので、知的財産を大事にするという、情報技術とかブランドとかデザインとか、そういったものを尊重する社会、それを大事にすることによる社会をという、立国に説明の重点を置いたものでございますから、そうご理解いただければと思います
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中山部会長
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ほかに何かご意見、ご質問、ございましたら……。どうぞ。
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松尾委員
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マドリッドプロトコルの商標の出願の件ですが、外国から日本を指定して入ってくる数は、数字は忘れましたが結構多いのですが、日本国の特許庁を通して日本の企業がマドプロで出願するのが非常に少ないのです。考えてみるとマドプロについての、特許庁の役割というのは何度か説明を受けておりますけれども、日本の企業にとってマドプロをどうやって利用したらいいのかという式の勉強といいますか、研究というのか、そういう情報が余りにも今まで少なかったようです。イギリスにしてもドイツにしてもアメリカにしても、マドプロ出願というのを随分利用しているのに、それに比べて日本では少ないというのは、やはり私はマドプロのことについて、日本の企業、日本の代理人が知識を十分もっていないのではないかと、そのように感じたわけです。それで、やはり商標についてもう少し力を入れる必要があるのではなかろうかと思いました。
それからもう1つは私自身が久しぶりに、ある日本の企業同士が合併をして、商号も新しくなり、ハウスマーク、シンボルマーク、全部新しくして、世界各国に出願しましたので、それを担当してみました。そうしたら、今、ニース協定でのサービスや商品の統一化条約がありますけれども、役務などの書き方が非常に難しくて、例えば損害保険などというのをどうやってほかの国の言葉で表現するのか非常に難しくて、ノン・ライフ・インシュアランスということで通る国もあるし、全然だめな国もありますし、役務の表示にしても4~5行で済むところと十何行も書かせられるところとか、いろいろあって、大変難しいものだなということを感じました。
それやこれやで、日本の企業が外国で営業活動をするときに当然、マークを使っていかなければいけないので、日本の企業が外国で営業するときの、外国の制度1つ1つではなく、日本の企業がどうすべきかということについて、やはり特許庁も民間と一緒に取り組んでいただかないと困るのではなかろうかと思いましたので、ぜひお願いしたいと思います。
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平井総務部長
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商標につきまして、先ほど部会長も、24ページと36ページと2カ所に書いてありまして、商標の方も大事だということは認識しております。例えば先ほど森下委員のご説明のあった中国などでも、模倣品だ何だといって商標の問題があるのですが、実は、日本の企業の中国における商標出願というのは少ないのです。アメリカは断トツに多くて何倍も多いとか、そういう企業戦略もいろいろ、国際的にもあると思いますが、今後の課題として十分研究していくつもりです。
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松尾委員
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お願いいたします。ここですと、ブランドやデザインの活用という方が中心なのです。私にすれば、そのもっと前の段階の基礎的な制度のことについて、もう少しお互いに勉強すべきではなかろうかと思います。よろしくお願いします。
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及川特許庁長官
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おっしゃるとおりマドプロは日本に入りまして、実は業務量としては猛烈な増大なのです。ですから、私どもの商標課はかなり苦労はしておりますが、おっしゃるとおり、パーセンテージではまだ非常に低い。そのアンケートをしますと、やはりアメリカとヨーロッパ、OHIMが入っていないから、まだ使ってもしようがないというご意見が結構多いようではございます。したがって、昨年来、3極の特許庁長官ではなく、商標庁の長官会合というのも始めておりまして、何とかヨーロッパ、アメリカも入ってくれないかと。そうしないと、せっかくのマドプロが十分活用できないというのは訴えているつもりであります。ただ、やはりなかなかアメリカでは議会を通りませんし、OHIMはどうも入る気がないというか、制度的になかなか難しいというような……
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松尾委員
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私、実はけさ、OHIMとマドリッドのドッキングが近いのではなかろうかという情報がありましたもので、そういうことも含めて少し我々、情報不足ではないかと思いましたので、よろしくお願いします。
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中山部会長
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どうぞ。
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庄山委員代理(丸島)
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研究会のワーキンググループで、国境をまたがる特許権の侵害の問題、これは別のところで検討しているので、その結果、何か特許的な問題があればワーキンググループで検討するという流れでスタートしたように記憶しているのですが、最終報告が出るまで、検討結果というのは報告されなかったように記憶しているのです。そういう意味で、現在、大綱の中に漏れている点として、国境をまたがる侵害の問題について、どうもっていくのか。管轄の問題にはちょっと触れていますけれども、それから著作権の問題、コンテンツの問題は触れているのですが、肝心の国境をまたがる特許の侵害そのものをどう扱うかということについては触れられていないように私、思うのです。先ほどもちょっとお話がありましたように、大綱になくてもご検討の中に含めていただきたいという感じがするのですが、いかがでしょう。
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中山部会長
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今の国境をまたがる問題はもちろん極めて大事な問題であって議論もしましたけれども、なかなか解がないのです。ですから、2005年まで具体的行動としてはめどが立たない。非常に難しい問題ですし、恐らく日本だけではなくて世界じゅう、どこでも難しい難問だと。しかし難問だからといってやらないというわけにはいきませんので、当然やらなければいけないわけですけれども、2005年までのアクションプランとしてはちょっと扱いにくかったと、そういう議論をした記憶があります。
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庄山委員代理(丸島)
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失礼ですが、2005年までに達成できないようなことも大分入っているのではないでしょうか。
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中山部会長
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それは、2005年になって、いろいろとご意見をちょうだいしたいと思います。小宮さん、何かお返事はありますか。
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小宮知的財産
政策室長
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いや、これは特許庁でしょう。
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平井総務部長
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多分、丸島委員のおっしゃるのは、広い意味での特許の全般的な侵害、特にこの情報化社会のITを経由するものを含めた全体の話だと思うのです。確かに戦略大綱では、日本版ITC?がどうだとかという議論、実は当初、ありました。ただ、やはり部会長のおっしゃる点で、2005年まででできることということで、できないこともとおっしゃいましたが、できることを書いたつもりで、やる所存でございます。将来的には日本版ITCというのは、どこまで書き込めるかというので、強いて29ページに模倣品・海賊版という水際措置だけでちょっと触れて、「等を参考にしつつ」という形で表現をあいまいにしているのでございますが、精神においてはだれも失っておりませんので、そこのところはまた引き続き研究させてください。
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中山部会長
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森下委員、どうぞ。
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森下(洋)委員
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このメンバーの中では比較的産業界から出ている人は少ないかと思うのですが、先日、知的財産戦略大綱が出され、又一方先の産業競争力戦略会議では、R&Dの戦略をまず縛ろうという方向が打ち出されました。これで知的財産権に関して2つ看板が出来まして、私はこれらが、これからの21世紀の日本の産業競争力を上げていくための大きな柱になってくると思うのです。これに成功しないと日本は、特に製造業は勝っていけないという状態でありますから、非常にいいタイミングだと思います。それぞれの企業において、それぞれコアがあり、そこに重心をおいて取り組んでいることから、私はR&Dと知的財産権重視の思想は非常に浸透していっているのではないかと実感しております。当社の場合は、まことにこの2つを企業経営の基本に置いて、今、進めており、非常に時宜を得たものと思います。
ただ、日本の場合も当社の場合もいえるのですけれども、知的財産権の登録とか公開件数は、結構日本は多いのです。きょうは表をもっておりませんけれども、例えばアメリカで登録されている特許のベストテンをみますと、大体7社ぐらいが日本です。アメリカにおいても、公開されている順位からいえば、日本企業はよく入っているのです。そういう意味では、もっともっとそれを戦略的に使っていくことと、それをもとにして事業を創出していくことの、両方が要ると思うのです。国全体の国際収支の中で技術特許の収支をみますと、今現在、日本はまだ支払いの方が多いのです。あれだけ公開されているのに、なぜ収支がまだ赤になるのか不思議です。貿易収支は断然世界一の黒字になっているけれども、技術収支はまだ赤であります。当社の内部を比較しますと、日本の傾向と似ています。技術の特許の収支だけみますとマイナス、払いの方が大きい。しかし当社の場合は海外に工場をいろいろ展開していますから、工場に対するロイヤリティーが入り、そういうロイヤリティーを入れますと、トータルとして黒字になります。しかし、そのことは別にして、あくまでもそういう特許料の収支を早く黒にするということが、科学技術立国を支える企業であるという証明かと思います。そうあれかしと、社内では随分とハッパをかけて今、やっているような現状です。それが1つの報告です。
もう1点は、今、中国の問題がいろいろ出ておりますけれども、中国ではまだ出願のレベルしか統計がとれないのです。公開とか登録とかというようなことでは、向こうもWTOに入ったところでありますから、まだその統計制度がない。だから、早く国際ルールの中で登録とか公開とか、こういう形にしてしまわないと、出願だけでは非常に心もとないという感じがいたします。中国での出願は今、日本企業勢が多く出しており、私どもが一番多く出していますけれども、最近の傾向をみますと、日本勢が多かったところへ、欧州勢が非常な勢いで上位を占めてきている。いずれもこれ、公開ではなしに出願のベースですから、早く中国を世界レベルで、少なくとも登録とか公開レベルにもっていくようなことが必要です。これは国同士の交渉になろうかと思いますが、これも早晩、大きなテーマとしてとらえていかないといけないのではないかという思いを強くもっていますので、この点についてはまた制度の関係の方々もよくサポートしていただきたいと思います。
以上でございます。
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中山部会長
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ありがとうございます。
ほかにご意見ございましたら……。よろしいでしょうか。まだ時間は若干ございますけれども、意見もございませんようですので、以上をもちまして、産業構造審議会第3回知的財産政策部会を閉会といたします。本日は貴重なご意見をありがとうございました。
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