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第5回知的財産政策部会 議事録

  1. 日時:平成16年1月29日(木曜日)10時00分~11時30分
  2. 場所:特許庁 共用会議室
  3. 出席委員:
    中山部会長、井川委員、小野寺委員、斉藤委員、篠原委員、下坂委員、庄山代理(高橋)、園尾委員、長岡委員、永岡委員、中西委員、松尾委員、三浦委員代理(宗定)、宮川委員、諸石委員、山根委員、山本委員
  4. 議題:今年度の検討の成果について

開会

中山部会長

時間でございますので、ただいまから産業構造審議会第5回知的財産政策部会を開催いたします。
私は、本部会の部会長をしております中山でございます。よろしくお願いいたします。

委員紹介

中山部会長

それでは、まず最初に、前回の部会以降新たに本部会の委員となられた方々につきまして事務局から紹介をお願いいたします。

南技術調査課長

それでは、私から御紹介させていただきます。
まず、井川陽次郎読売新聞社論説委員でございます。
それから、下坂スミ子日本弁理士会会長でございます。
それから、本日御欠席でございますけれども、三浦昭日本知的財産協会会長が新たに委員となっていらっしゃいます。
それからまた、前回御欠席でいらっしゃいましたけれども、園尾隆司最高裁判所事務総局行政局長が本日御出席されております。
以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。

今井特許庁長官挨拶

中山部会長

本日は、本部会に設置されております小委員会、ワーキンググループにつきまして、これまでの検討状況を御報告し、その成果をお諮りするということにしたいと思います。
議事に先立ちまして、今井特許庁長官から一言御挨拶をお願いいたします。

今井特許庁長官

特許庁長官の今井でございます。
先生方には大変お忙しいところ、きょう第5回の部会に御参集いただきまして本当にありがとうございます。
御案内のとおり知財政策をめぐって動きがスピーディーになってきまして、この2年間で基本法ができたり、推進計画ができたりと、非常に早いスピードで動いております。
もとより特許庁というのは権利の設定という非常に慎重を要する、ある意味で受け身の、間違ってはならないという仕事をやっているわけでございますが、その上に立ちましてこういう知財政策に対する世の中からの御希望、御要望、こういうものにこたえるために、過ちなきように先生方の御意見を十分拝聴してこれまでも進めてきたわけでございます。
その上で私どもの本務であります審査の処理の促進ということで、今、26カ月、このままいきますと、それが30になり、35ヶ月になってしまう可能性が高いのでございますが、これを限りなくゼロに戻したいということで、任期付の審査官を採用させていただくだとか、きょう御議論いただきますけれども、審査の迅速化のためのいろんな諸施策を講じていきたいと思っております。
先生方の御意見を十分聞きながら、万遺漏なきを期したいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

中山部会長

ありがとうございました。

特許制度小委員会報告書について

中山部会長

それでは、早速議題に入りたいと思います。
まず最初の議題は、特許制度小委員会報告書でございまして、これにつきまして事務局から説明をお願いいたします。

南技術調査課長

それでは、私の方から御説明させていただきます。
まず、御説明に先立ちまして資料の確認をさせていただきます。本日は非常に資料が多いわけですが、資料1から16まで16点ございます。もし不足があるようでしたら申しつけください。議題中でも不足についてお気づきになりましたら事務局の方に申し出いただければと思います。
それでは、早速特許制度小委員会の報告についてさせていただきたいと思います。
特許制度小委員会の報告書は資料の4にございます。非常に大部でございますので、資料3の方で、A3のものでございますけれども、こちらの方に概要をまとめさせていただいておりますので、こちらを使って御説明させていただきたいと思います。
この特許制度小委員会では、職務発明の在り方について御議論させていただいてきました。この職務発明につきましては、資料3の右下にございますが、2002年7月に策定されました知的財産戦略大綱、あるいはその後に知財本部で策定されました知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画、こちらの方でも検討するようにという指示をいただいております。
当委員会でも特許制度小委員会を2002年9月に立ち上げをいたしまして、2003年12月まで約1年半近くこの議題について議論してまいりました。ようやく昨年の12月に報告書をまとめることができましたので、きょうはその内容を御説明させていただきたいと思います。
まず、資料の左の上でございますけれども、職務発明活性化の重要性ということで、知的財産立国を実現して、日本の産業競争力を高めるためには、まずはイノベーションを生み出す人材の確保とこれを生かすシステムの構築が必要だという認識でございます。
ちなみに、2002年の日本の特許庁に出願されております出願の97%が企業、大学等からのものでございます。この97%が職務発明に基づく発明だということでございますから、この職務発明制度をどのように進めるかというのは非常に知財立国にとっても重要なポイントだということが言えるかと思います。
左の下の方にございますが、そもそもこの職務発明制度の趣旨でございますけれども、これは日本の特許法の目的にもございますけれども、産業の発展のために研究開発活動の奨励とか研究開発投資の増大を目指すための1つの制度でございまして、従業者と使用者の利益を調整を図るということを制度趣旨としております。この職務発明制度は昭和34年からこれまで1度も改正されてこなかったわけでございますけれども、この規定は特許法35条で規定されておりますが、近年この35条に基づく対価の請求の訴訟がふえてまいりました。これは中ほどの表に主なものを挙げさせていただいておりますけれども、近年非常にふえてきているということでございます。
それでは、一体この職務発明制度では何が問題なのかということが下に書かれております。特許法35条3項には、従業者が使用者に発明に関しての特許を受ける権利を承継した場合には、相当の対価を請求することができるという規定になっております。しかし、従業者は多くの場合、これは企業側が一方的に定めた勤務規則の定めに従ってその対価の支払いを受けているというのが現状でございます。
それから、訴訟におきまして対価の決定の手続の合理性を考慮することなく、裁判所においてこの相当の対価の額の算定が行われているということでございます。
したがいまして、改善すべき点といたしましては、この対価の決定に関しまして、従業者の関与を促すことによって、発明者が行った発明評価に対する納得感を高めることが重要ではないかということでございます。
それから、使用者側にとりましても、従業者に支払うべき対価の予測可能性を高めることで研究開発を円滑に促進するような環境の整備をすることが重要ではないかということでございます。それから、もう1点でございますが、特許法の35条4項には、相当の対価の計算の考え方が規定されております。これにつきましては、過去の判例等を見ますと、相当の対価の算定については、発明完成後の事情であります発明品の売り上げとか、ライセンス収入を基準として計算されているわけでございますけれども、その一方で、発明完成後に企業側が行ったような努力、発明の実施に当たって行った改良活動とか、当然売り上げを上げるに当たって行った営業経費や広告宣伝費というのが十分に考慮されていないという問題がございました。
したがいまして、改善すべき点としては、発明に関連するこういった事情が幅広く考慮されるようにこの規定を明確化することが必要ではないかということでございます。
いろいろ議論を行ってきまして、最終的にまとまった制度改正の方向性が右の上に白抜きでまとめられております。
まず、上の丸の囲いでございますけれども、特許法35条1項に職務発明については使用者側に無償の通常実施権を認めるという規定がございます。これは現状のまま維持すべきという結論でございます。
それから、同第2項におきましては、使用者側におきましては、職務発明について予約承継を定める職務発明規定等、契約、勤務規則等という定めを設けることができるという規定になっておりますが、これにつきましてもそのまま維持すべきという結論でございます。
次の丸囲いと点で改正すべき点ということでございますけれども、まず職務発明の対価につきましては、これは原則として両当事者間の自主的な取り決めにゆだねることとするということでございます。これは、産業ごと、あるいは企業ごとにさまざまな対価の支払い方があるということで、そういったものを広く許容するためには一律な規定を設けるということは困難であるということで、これは原則として両当事者間の自主的な取り決めにゆだねましょうということでございます。
それから、対価についての定めがない場合とか、この対価の定めを定める場合について、使用者と従業者の立場の相違にかんがみまして、不合理な対価の決定をされた場合には、現行制度どおり、従業者には相当の対価請求権を認めるべきということでございます。
ただし、この不合理性の判断につきましては、対価の決定の手続面を重視するべきということでございます。
それから、もう1点は相当の対価の算定の方法でございますけれども、これは当該発明に関連する限りは、発明完成後の使用者側の貢献とか、研究開発リスク、発明者に行った処遇、こういったものが幅広く考慮されることを許容すべきというような内容でございます。
この下の3点が今回の35条改正のポイントになります。
駆け足でございますけれども、簡単に御説明させていただきました。

中山部会長

ありがとうございました。
この報告書に関しまして御意見、御質問がございましたらお願いいたします。

三浦委員(代理宗定)

知的財産協会でございます。このたび改正について大変御苦労をかけまして方向づけしていただきましてどうもありがとうございました。
趣旨には我々賛同しております。ただ、若干のあいまいなところがまだ残っているように思いますので、今後、社会の動静を見て、また目指す方向が実現できないような場合にはぜひまた原点に返った議論を速やかにやっていただくようにお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

中山部会長

御意見ありがとうございました。
ほかに。

庄山委員(代理高橋)

経団連の高橋でございます。きょうは、庄山経団連産業技術委員長がやむを得ない事情によって出席できませんので、代理で出席させていただきました。
私から2点申し上げたいと思うんですが、1つは、これに至るまで非常に大変な努力をしてここまでまとめ上げたということで、事務局の努力を多としたいと思います。使用者と従業者が双方の意思を反映した形で契約を結んだ場合は、その契約の内容が尊重されるという形のことを繰り返し繰り返し、いろんなシチュエーションがあると思いますので、明確にしていっていただきたいということが1点でございます。
もう1つは、今後35条の改正ということになると思いますが、その場合もいろんな議論が国会等であろうかと思いますが、ぜひこの職務発明の報告書の趣旨が変わらないようにして、それを生かした形の条文で通していただきたいということをお願いしたいと思います。
以上でございます。

中山部会長

貴重な御意見、ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問ございましたら……。

斎藤委員

ありがとうございます。1点だけお教えいただきたいのでございますが、この自主的な取り決めをどの時点で行うかにもよりますけれども、発明完成後の貢献なども考慮していくということになりますと、時間的にずれますね。後になります。ですから、不確定な要素を含んだ形での自主的な取り決めなのかどうか、取り決めの時点が問題でございます。多分早くおやりになるでしょう。この辺の調整をどうなさるのか。もう少し申しますと、後で調整できることとして2ポツ目、対価についての定めがない場合、それから立場の相違に起因して不合理な対価の決定がなされた場合、この2つだけをもし列挙しているのであれば、予測が外れる場合がありますね。いい意味で外れる場合もございましょうから。こういう場合の調整ということは可能なのかどうか。ここを確認したいと思います。

南技術調査課長

それでは、ただいまの御質問についてお答えさせていただきたいと思います。
まず一般的に多くの企業では職務発明規定を定めて、そこで保証規定を設けているわけでございますけれども、一般的には出願保証、登録保証と、あと、実績保証という規定を設けております。したがいまして、承継自体は予約承継規定によって発明届け出時点で発生しているわけでございますけれども、実際の対価の額につきましては、その後の実績を見ながら支払うというやり方が通常でございます。したがいまして、そういう規定を持っている場合には今のような御懸念はないかと思います。
それから、今回の特徴でございますけれども、自主的な取り決めということですから、承継時に将来の発明の価値を予測して、そこで対価を決めるというやり方も許容されるかと思います。その場合に、当然お互いに契約を結ぶ際に想定されるような範囲といいますか、お互い想定した対価で合意していればその額が尊重されるかと思います。
ただし、その想定を超えるような、場合によっては大化けするような発明が出た場合には、場合によってはその契約が不合理とされる可能性もあるかと思います。

中山部会長

ほかに何かございませんでしょうか。
よろしゅうございましょうか。
それでは、他に意見もないようでございますので、この報告書、職務発明制度の在り方についてを本部会の報告書として決定することを委員の皆様方にお諮りをしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

中山部会長

ありがとうございました。異議がないようでございますので、この報告書、職務発明制度の在り方についてを本部会の報告書とすることと決定いたしました。

特許制度小委員会特許戦略計画関連問題WG中間取りまとめについて

中山部会長

次の議題に進みたいと思います。
特許制度小委員会特許戦略計画関連問題ワーキンググループ中間取りまとめにつきまして事務局から説明をお願いいたします。

高倉調整課長

それでは、お手元の資料5、6、7、この3つを使って御説明いたします。
昨年の9月に特許制度小委員会の下に特許戦略計画関連問題ワーキンググループ、以下では戦略ワーキンググループと略称いたしますが、これが設置されました。現在までに6回の議論を続けておりまして、5回目の議論が昨年の12月に行われました。その段階でこのワーキンググループの中間まとめということで取りまとめて、パブリックコメントに付しました。その後、第6回が今年1月に開かれて、そこで了承されました中間取りまとめを本日この部会の方に報告するというのが全体の経緯であります。
議論の中身でございますが、お手元の資料の6を使いまして御説明をしたいと思いますので、1枚の紙でございますが、開いていただきたいと思っております。
資料6の上の方にこれまでの検討の背景と経緯を書いておりますが、ここで議論いたしましたのは、大きな議論の目標としましては、世界最高レベルの迅速・的確な特許審査の推進。それに向けて具体的にどのようなことを行うべきであるかということについて議論いたしました。さらに具体的に申し上げますと、昨年の7月に策定された特許戦略計画、あるいは知的財産推進計画の中で今後の課題として挙げられたさまざまな議論について9月以降議論してきました。さらに、そのほかに1年前の国会で附帯決議として挙げられた幾つかの事項についても議論してまいりました。その結果がお手元の紙に全体の概要として提示されているところであります。
まず特許の審査の迅速化に関する目標でございます。現在、特許庁は、審査の待ち時間といいますか、審査の請求があって、実際に審査の着手が行われるまで請求人が待っている時間が約26カ月、2年を超えるぐらいの状況でありまして、このまま放置すればさらにこれが長期化することが予測されるところから、何とかこの審査の待ち時間を短縮しようと。理想的には待ち時間をゼロに近づけようと。審査の請求をすれば、一定の事務手続は当然必要ですが、限りなくゼロに近い時間で審査が始まるという状況をつくるべきではなかろうかと。もちろんそのことによって審査の質といいますか、審査のクオリティーがおろそかになるようなことがあってはならないという前提つきではありますが、このワーキンググループの総論としては、審査の待ち時間を限りなくゼロに近づけるべく頑張っていこうではないかということであります。
そのために、中期、長期と申しますか、5年、あるいは10年の計画をそれぞれ策定し、その長期の、あるいは中期の目標の上で来年度一体どのように審査を進めるのか、そういった計画をきっちり特許庁がつくって、対外的にも公表し、その実施計画の実現に向けて努力する。あわせてこれには増員、あるいは出願人における特許の出願や請求の絞り込みといいますか、適正化も必要なわけでありますが、こういったさまざまな措置を講じつつ、審査のスピードアップを図っていくべきだというのが全体の総論でありました。
それを実現するために3つのことを施策として展開すべきだということになっておりまして、1つは、丸1で書いておりますが、審査の処理の促進、丸2といたしまして出願・審査請求構造の適正化、3番目としてこうしたことを実現するインフラ整備、この3つの柱で議論をし、幾つかの施策について提言をいただいております。
再び丸1の審査処理促進に向けての取り組みに戻りますが、ここでは4つのことを議論いたしております。1つは、直接法改正事項ではありませんが、審査官の増員ということであります。通常の審査官を今年度約34名ほど増員しておりますが、こういった通常の審査官は今後ともこの規模のレベルで採用しつつ、あわせて任期付の審査官、すなわち審査を待っている滞貨50万件、ほっておけば80万件ですが、こういったものを一気呵成に片づけるために、現に産業界で活躍されている方々、あるいは弁理士の資格を持っている方々を任期を5年と限り、場合によってはさらに状況次第では延長して5年、合計10年ということもあり得ますが、いずれにしてもこうした任期付の審査官を毎年約100名、これを5年連続して合計500名の方たちを採用し、このことによって審査を待っている滞貨を一気呵成に片づけようではないかという点が1点であります。
それから、2点目ですが、これは現在も既にやっていることなんですが、審査官が行うべき先行技術調査、これを外部の公的な機関にアウトソーシングをしておりまして、審査に必要な、いわば審査の予備調査といいますか、先行技術調査を外注しているわけでありますが、これは現在IPCC、財団法人工業所有権協力センターというところに一元的に発注をいたしております。最近では毎年10数万件の規模で発注しておりますが、公益法人改革、一般の流れの中で、むしろ複数化をすることによって、いい意味の競争状態を醸成し、そのことによってよりよいサーチ外注、量的にも、質的にもそれを拡充していくのがいいのではないかということで、現在工業所有権に関する手続等に関する法律というものがありまして、いわゆる特例法なんですが、この特例法の中では特許庁の先行技術調査のアウトソーシングを受ける機関は公益法人であらねばならぬと、こうなっているのですが、この公益法人要件を削除し、一定の要件を備えたところであれば、民間企業の調査機関もアウトソーシングの受注ができるようにするべきではないかと。このことによって複数化をより進め、アウトソーシングの受け皿機関を拡充するべきではないかという提案をいただいております。
それから、3番目として、審査の基準であります。今般、単一性、新規事項、あるいはクレームと明細書の対応等について新しい基準が公布されておりますが、これらについては、運用の結果、審査の効率アップに寄与する点も多々ありますので、こうした運用が一刻も早く定着するように出願人、あるいは日本弁理士会等の協力を得つつ、徹底をしていきたいということであります。
それから、4番目として弁理士の役割といいますか、弁理士の貢献、審査処理の効率化のための弁理士の貢献ということも提言いただいております。具体的には審査官と弁理士とのコミュニケーション、あるいは担当弁理士の明確化、こういったことを行うことを通じて審査処理の効率アップを図っていきたいということであります。
これが第1の柱に関する施策であります。
2番目、出願・審査請求構造の適正化でありますが、1つは昨年の法改正で実行されておりますが、特許料金体系の見直し。審査の請求料金を実費に近づけ、その分、出願料金、特許料金を値下げするという構造に変えることによって、出願人の側において、より特許性の高い請求に絞り込んでいただくというインセンティブを感ずるような法改正を既にやっておりますが、こうしたことのPR。出願人におけるその徹底ということをお願いしていきたい。
それから、2番目として、企業の、特に経営者層における特許戦略に対する理解を深め、特許戦略を一層展開してもらいたいということで、特許庁は出願上位企業を中心に企業の経営者とコンタクトを続けている。これを一層進めるべしという提言であります。
それから、3番目といたしまして、先ほどサーチ外注の受け皿機関の拡充の話を申し上げましたが、今までは特許庁の審査官が審査をする段階で調査を発注しておりまして、いわば官需といいますか、役所のニーズであったわけなのですが、こうした指定調査機関は特許庁からのサーチ外注を受けるだけではなくて、出願人が審査請求をする前に、事前にこうした指定調査機関に調査を依頼し、その結果を見て、これはもう特許性がないなということであればむだな審査請求をしなくて済むという効果もありますので、出願人がこの指定調査機関を活用できるようにしようではないかというふうに現在考えて、その方向で進めております。
もう少し言葉を言いかえて言いますと、出願人がこの指定調査機関にサーチレポートをつくってもらって、それを添付して審査請求をした場合には料金の減免をするというインセンティブをここで働かせることにしております。特許庁の側から見ますと、サーチ外注ということで、アウトソーシングする部分が節約できますので、料金を減額しても特許の収支に大きな影響はないという考え方からこういった施策についても講じてみようということであります。
それから、同じようにここでも弁理士の役割に対する期待というものが挙げられております。より具体的には中小企業等に対する特許戦略のアドバイスを弁理士さんたちにしていただくことによって、出願構造、審査請求構造の適正化を一層進めてもらいたいということであります。
3番目として、これに関連した基盤整備でありますが、大きく分けて2つありまして、人材の問題と情報インフラの問題であります。
まず人材の問題でありますが、特許庁には研修所というところがあるわけですが、ここは専ら職員に対する研修ということで位置づけられていましたが、今後は特許庁が持っている研修機能を外部の民間人材にも広げていこうではないかと。具体的には先ほど申し上げましたサーチの外注の受注を行う指定調査機関、これが今後手を挙げて、市場参入しやすくするためには、検索者に対する指導というものが必要でございますので、単に法律を変えて公益法人要件を削除するだけでは複数化が簡単に実現できるとは思っておりませんので、そうした市場参入がより促進されるように人材育成に特許庁、国としても、政府としても協力しようと。そのためにこの研修所の機能を変えていこうということであります。
それから、任期付の審査官に対する教育負担、指導負担というのが非常に大きいわけですが、従来のように内部の審査官、ベテラン審査官が毎年100人採用される新しい審査官の研修負担を負うとすれば、審査への影響もまた小さなものではありませんので、任期付の審査官に対する研修も組織的にやっていこうと。
こういうふうに研修所の機能を拡充するためには、現在の特許庁の中の一部の研修所としてとどめることではなくて、現在独立行政法人情報館という組織がありますが、そちらの方に統合し、研修所を独立行政法人化することによって、職員に対する研修だけではなくて、民間に対する研修ということもできるようにしていきたいというのがこの考え方であります。
それから、もう1つの柱であります情報インフラの方ですが、今後IPCC以外に指定調査機関が出てくるわけですが、そうした機関に対しても特許庁が持っている情報インフラを提供し、調査をする情報の環境を構築する必要がありますので、そうしたことにも計画的に取り組むために、情報システムの基盤に関する行政機能も強化していくという方向であります。
これに関連しまして幾つか出てきた議論を申し上げますと、インターネットを使った公報、特に実用新案公報の発行の問題であるとか、あるいは機械翻訳を活用することによって、出願人、あるいは国際的な特許庁間の情報の提供を合理化しようといったような提案もいただいております。
こうした提案のうち、法改正が必要なものにつきましては、今後の特許審査迅速化法案――仮称でございますが、こちらの方に反映し、法的な実現を図り、そうでないものについては予算措置等々によって実現を進めるべく、準備をしております。
いずれにしてもこれは中間取りまとめでございまして、今後この戦略ワーキンググループにおきましては、例えば特許権の効力が及ばない試験・研究の範囲はどの程度であるかということの明確化を行う議論、あるいは補正や分割に関する議論をさらに継続し、できれば4月に最終取りまとめをしたいということで今後とも議論を継続していくことにしております。
以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。
本日は、このワーキンググループの長岡座長にも御出席いただいておりますので、もし何かコメントございましたらお願いします。

長岡委員

特にございません。

中山部会長

よろしいですか。
それでは、この中間取りまとめにつきまして御意見、御質問がございましたらお願いいたします。
御意見ございませんか。

永岡委員

質問なんですが、任期付の審査官というのは、採用できるような――これは新聞にも出ているんですけれども、そういうベース、審査官と同じようなレベルの人は相当いるということでいいんでしょうか。

高倉調整課長

募集に当たりまして、産業界における経験が研究開発、あるいは大学におけるドクターコースのドクターの資格を持っている方ということでもいいんですが、研究開発経験4年以上ということを条件といたしておりますので、こういった方々については技術的な素養は十分ある。それから、別途弁理士資格を有している者ということも募集の要件としておりますが、こうした方たちについては知的財産、特に特許に関する十分な知識があるということを前提に採用しております。
しかし、特許庁に入って、少なくとも2年間の研修を行うわけでありまして、この研修が終わった3年目から本格的な審査官として活躍をしていただく。いずれにしても十分なバックグラウンドは持っていると私たちは思いますが、加えて特許庁における特許の手続を中心、審査基準等々いろいろ研修指導をしなければいけない。先ほど申し上げましたように、ベテランの審査官によるいわゆるフェース・トゥ・フェースのOJT的な研修も行っていく。このことによって十分審査官として活躍していただけるのではないかと思っております。

中山部会長

ほかに御意見ございませんでしょうか。
よろしゅうございますね。
それでは、ほかに御意見もないようでございますので、この中間取りまとめを本部会の中間取りまとめとして決定することを委員の皆様にお諮りしたいと思いますけれども、御異議ございませんでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

中山部会長

ありがとうございました。
異議がないようでございますので、この中間取りまとめを本部会の中間取りまとめとすることと決定いたします。
続きまして、事務局からのこのワーキンググループの今後の予定につきまして説明をお願いいたします。

高倉調整課長

先ほど少し申し上げましたが、今後のスケジュールでありますが、第7回の会合を3月3日に予定しております。そこにおきまして試験・研究の問題、等の問題を議論し、最後は第8回として4月を予定いたしております。
以上であります。

中山部会長

ありがとうございました。

特許制度小委員会実用新案制度WG報告書について

中山部会長

それでは、3番目の議題に進みたいと思います。
特許制度小委員会実用新案制度ワーキンググループ報告書、実用新案制度の魅力向上に向けてにつきまして事務局から説明をお願いいたします。

木村審議室長

それでは、資料8から10まででございますけれども、これに沿いまして御説明申し上げたいと思います。主として資料9を使いまして御説明いたします。
実用新案制度、いわば特許の弟分のような制度でございますけれども、平成5年に抜本的な改正を施しまして、特許とのすみ分けをより明確にする。そういう制度になってございます。ただ、その制度改正以来、利用が減っておりまして、そこで、今回の問題意識といたしましては、ユーザーのためにまずは制度をより魅力のあるものにしようということ。それから、ひいては、実用新案への期待が高まり、あるいはそちらへの出願とが増加して、結果として、特許制度、実用新案制度全体を通じた適正な資源配分が実現されるのではないかということで議論を重ねてまいったわけでございます。
そこで、特許制度小委員会の下に、昨年の5月になりますけれども、実用新案制度ワーキンググループを設置していただき、座長は東京大学の大渕先生にお引き受けいただきまして、5回にわたりまして審議をしてまいったわけでございます。このたび報告書の形でまとまりましたので、それにつきまして簡単に概要を御説明申し上げたいと思います。
まず、「実用新案制度の現状」というところを見ていただきたいのですが、特許と実用新案制度の比較がここに書いてございます。実用新案制度は特許制度と比べまして最大の特徴は実体審査をしていないということでございまして、基礎的要件の審査のみとなっております。
それから、権利期間も出願の日から6年ということで、特許制度は20年の権利期間があるのに対しまして、非常に短いわけでございます。
次に、保護対象でございますけれども、特許制度が発明一般に認められるということでございますが、実用新案は「物品の形状、構造又は組合せに係る自然法則を利用した技術的思想の創作」ということで、形状、構造、組み合わせという、いわゆる形態的な要件が課せられているということでございます。
それから、無審査で登録されるということがございますので、権利行使の際に技術評価書というものを取得していただいて、その提示をした上で警告をしていただくということが義務になっております。特許制度は審査をしておりますので、こういう制度はございません。
加えて、実用新案制度、これも無審査登録ということに起因する制度でございますけれども、現在権利が登録され後に権利範囲を変更したりするようなことは基本的にできない。請求項を削除することしかできないという制度になっておりますが、これに対しまして、特許制度の場合は権利範囲の減縮といった方法も認められているわけでございます。
それから、他制度との関係ということで、実用新案制度から特許制度への乗りかえといいますか、そういうものも制度としては認められているわけでございますけれども、実用新案制度につきましては、審査がございませんので、登録までの期間が非常に短い上に、登録後の変更ができないということで、事実上、実用新案でまずは保護をしておいて、その後、本当に必要であれば特許にもいけるということが事実上はできないという制度に、現在はなっているということでございます。
その右に「出願件数の推移」がございますけれども、新実用新案登録出願は94年からのデータでございますけれども、減っておりまして、現在1万件を割り込む、おおむね9000件弱という数字になっているということでございます。他方、特許出願の方は40万件を超えるレベルで推移しているということで、御承知のとおりの数字になっております。
その右側に出願人・分野の内訳というものがございます。実用新案登録の特徴の1つは、やはり個人の方の御利用が非常に多いということでございます。それから、分野で見ますと、やはり生活用品、雑貨でございますとか、あるいは玩具、こういった分野の御利用が多いということで、両制度、すみ分けはかなりできているということでございますけれども、いかんせん現在はさほど人気のある制度にはなっていないということでございます。
では、どうするかということでございまして、下に移りますが、「制度改正の具体的方向」というところで幾つか改正のポイントを御紹介しております。制度改正のポイントとしては、大きく分けて4つ、議論したテーマはあったんですけれども、それを順番に御紹介申し上げたいと思います。
まず1つは、権利付与対象をどうするかという議論がございました。先ほど御説明申し上げたとおり、実用新案には物品の形態的要件というのが課せられているということでございますので、これを例えばプログラムでございますとか、方法、物質といった、いわゆる考案一般に拡大するというようなアイデアもあったわけでございます。他方、これにつきましては無審査で権利が登録されるということがございますので、プログラムとか物質を付与対象にすることによるいわば弊害といいますか、そういうものに対する懸念というのが示されることになりました。これに対しましては、当然保護すべきだという御意見もあるわけでございますので、その必要性も踏まえながらさらに検討するということで、今回はこれについては手をつけないということでまとまったわけでございます。
それから、2点目でございますが、右側を見ていただきますと、「特許制度との調整の在り方」ということで書いてございます。矢印が真ん中にございますけれども、その上が現状でございます。現在は実用新案の登録の出願をしていただきまして、おおむね5カ月弱ぐらいで登録になるということでございます。登録に至るまでの間でございますと、特許出願への変更ができる。したがいまして、例えばすぐに保護を受けたい、あるいは実施をすぐにしなければいけないというような技術の場合は、まず実用新案登録を受けて、その上で、やはりこれは20年の権利の保護を受けたいというようなこと、あるいは技術の動向が変わって特許を取るべきだという判断に至ったということがありましても、通常既に実用新案として登録がなされておりますので、その場合は右のところに書いてございますけれども、特許出願への変更はできないということになるわけでございます。これでは実用新案を早期の権利保護の仕組みとして使うという上で必ずしも魅力のあるものにはならない。実用新案の魅力がない一因なのではないかという御批判がございまして、今回の制度の見直しに当たりまして、登録がされた後でも変更ができるというような仕組みをつくる。すなわち、実用新案登録、既になされた登録に基づいた特許出願という制度を新たに設けようということで考えてございます。
ただし、この場合、ダブルパテントになることを防がなければいけない。それから、評価請求がなされて、評価書を実用新案についてつくった上でさらに特許としても審査をするということになりますと、同一の発明について2回特許庁として審査のサービスをするということにもなりますので、そのような重複負担を避ける観点からさまざまな制度的な工夫は施しております。そして、その上でけれども、基本的には3年間、これは特許の審査請求権が3年ということで、その制度を潜脱されないための制限でございますけれども、3年間は実用新案で仮に権利が登録されていても、特許の出願がそれを基礎としてできるという仕組みを、今回新たにつくりたいと考えております。
それから、左下をごらんいただきたいんですけれども、「存続期間の在り方」ということで、現在は出願から6年ということでございますけれども、これを10年ということで延長する。あわせまして、10年間権利を仮に持った場合の権利者の御負担を調整するという観点から、登録料の一部軽減ということもあわせて措置をしたいと考えております。
それから、4点目でございますが、「権利範囲の訂正の在り方」。一たん権利になってしまいましても、訂正という手段で、仮にその中に無効理由が含まれているということがわかったような場合には、減縮をしたりして無効理由を取り除くことが特許であればできるわけでございます。他方、実用新案の場合は無審査で登録されているということもございますので、訂正をあまり無制限に認めるということになりますと、いつまでたっても権利が安定しないという問題がございまして、現在は請求項の削除、すなわち権利をなくしてしまうという、そういう訂正しかできないということになっています。
これに対しまして、やはりそれでは使い勝手がいくら何でも悪いのではないかという御批判もございまして、今回訂正を一部認めるという方向がよいのではないか。すなわち、実用新案登録請求の範囲の減縮についての訂正も認めようということ。ただし、何回でも訂正ができるということにするのはやはり妥当ではございませんので、1回に限ってそれができるようにしようという制度がよいのではないかという結論になっております。
それから、訂正の可能な時期につきましても、基本的には一定の期間に限定をしようという制度がよいのではないかという結論をいただいております。
それから、右の上に運用による対応というのがございます。技術評価書につきましては必ずしも的確性、あるいはわかりやすさという面で十分ではないという御批判もございましたので、これにつきましては、技術調査の充実、それから評価請求時の意見表明の機会を付与する。あるいは評価書に審査官のロジックを記載するといったことで、評価書をよりよいものにしていこうと考えております。
それから、出願から登録までの期間を短縮するということで、現在5カ月程度要しておりますけれども、これはできれば2カ月程度まで短縮するということも考えておりますし、それから、実用新案制度の周知、これは濫用的に用いられるという懸念を、周知することによって払拭すべきだというご指摘を受ける面もございますが、それと同時に今回の改正の趣旨、魅力の向上といった面の周知も図っていくべきだということで、これについては特許庁としても努力したいと考えております。
最後に、こういう実用新案制度の魅力の向上を通じまして、迅速化効果が期待できるのではないかということもございます。これはあくまでも仮定の議論でございますけれども、右下の棒グラフが2つあるところを見ていただきますと、仮に特許100件、これが実用新案――実際の数字が100だということを申し上げているわけではございませんけれども、仮に100件の特許出願が実用新案に移ったとすると、おおむね36件程度、36件分の特許審査の迅速化効果というものが得られるのではないかということで、特許審査の全体の効率化、迅速化というものにつきましても一定程度の貢献が見込めるのではないかというふうに考えているわけでございます。
説明は以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。
それでは、この報告書に関しまして、御意見、御質問がございましたらお願いいたします。

斎藤委員

私の認識が誤っているかもしれませんので、お教えいただきたいと思います。
その前に、実用新案制度、かつてのおもかげはないわけでございますが、改めて無審査で、権利化を早めるという、こういう形で固有の道を模索されてきましたということは非常に賢明であるし、妥当であろうと思います。
しかし、実際に活用されていないという点で、1つ外から感想を述べさせていただきますと、技術的評価書の位置づけといいましょうか、その性格が中途半端な面があるのではないかと思うわけであります。技術評価というのは行政処分そのものでもない。しかし、単なる文書でもない。実際におきましては、その提示を義務づけているというわけで、かなり使い勝手の悪い面があるのではないかと、このようにも思うわけでございます。
無審査という非常に画期的なことをおやりになったわけであります。というのは、さながら小学校に新入生を送り出す親ような気持ちで、何となしに子離れしていない、子供の方も親離れしていないのか、そこはよくわかりませんけれども、何となしに技術評価書でつながりを保とうとしている面があるわけでございます。非常に親切でよろしいんでございますが、運用面で何かもう少しよい方法はないのかどうか。お教えいただきたいと思います。

木村審議室長

今の御指摘でございますけれども、確かに技術評価書は単なる書面でないけれども、行政処分でもないというのはおっしゃるとおりだと思います。技術評価書の法的な性格というのは鑑定のようなものだろうと考えております。ただ、無審査制度をとっておりまして、特許庁が責任を持って審査をした権利を世に送り出すということではないわけでございますので、権利者と第三者の間の関係というものもちょうど無審査主義というものを前提に考えていかなければいけないということでございます。第三者との関係、権利行使される側との関係を考えましたときに、やはり何らかの形で、公的な、お墨つきではないかもしれませんけれども、そういうものを何らかの形で証明する、そういうドキュメントがあるということは、むしろ実用新案制度を安心してお使いいただく上で必要なことではないか。少なくとも現時点においては必要ことではないかというふうに考えております。もちろん技術評価書そのものについてより魅力のあるものにする。あるいは使い勝手のいいものにするということは当然必要でございますので、それについては今回法改正に至る問題ではないかもしれませんけれども、措置はさせていただきたいと思っておりますし、あるいは無審査での技術の権利の行使というものがより一般的なものになるといいますか、そういうものも当然権利行使の在り方として一般的だというようなことに仮になれば、そのときは改めて評価書の位置づけというものを見直していくということも、将来的にはあり得るかもしれませんけれども、現時点においてはやはり権利者と第三者との関係というものを整理する上で欠かせない制度ではないかというふうに考えているわけでございます。

中西委員

企業側からしますと、この4点というのは今まで全く魅力がなかったのは、経営資源としてとらえますので、そういうことからしますと、魅力が出てきた。こういうことははっきり言えると思います。
あと、こちらの運用の方でスピードアップということがかなり書いてあります。それから、もう1つは2年間ですが、もう1回行ったり来たりができるというようなことも使いやすいように、取得があれば、もっと活用の魅力ある実用新案になるのではないかなと、こう思っております。

中山部会長

ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問ございましたら……。
よろしゅうございますか。
他の意見もないようでございますので、この報告書、実用新案制度の魅力向上に向けてを本部会の報告書として決定することを委員の皆様方にお諮りしたいと思いますけれども、御異議ございませんでしょうか。
「異議なし」の声あり〕

中山部会長

ありがとうございます。
異議がないようでございますので、この報告書を本部会の報告書とすることを決議いたします。

商標制度小委員会の検討状況について

中山部会長

次の議題に入りたいと思います。商標制度小委員会の検討状況につきまして事務局から説明をお願いいたします。

木村審議室長

それでは、続きまして、資料11に沿いまして検討状況につきまして御説明申し上げたいと思います。
産業構造審議会商標制度小委員会は昨年の6月から開催させていただいておりまして、小委員長には一橋大学の土肥先生に御就任いただいております。
近年ブランド価値ですとか、あるいはブランド戦略というようなことが非常に言われるようになっております。商品あるいはサービスのイメージの総体、それがいわゆるブランドだということで、それもできるだけ動態的にといいますか、ダイナミックにつくり出していくものだというような、そういう認識の変化がある。その中で商標制度というものが、そういう課題を担うためにどういう役割を果たすべきか。ある意味では制度の根本に立ち返るような検討をやってみるべきだということで、この制度小委員会を立ち上げていただいたわけでございます。商標の機能的な側面といいますか、あるいは動態的な側面といいますか、そういうものに着目をしていきたいと考えております。
また、商標法は昭和34年に制定されているわけでございますけれども、その規定ぶりはいろいろとかなり古典的なものになっているのではないというような御批判もございますので、制度改正に向けた検討を進めていきたいと考えております。
具体的な検討事項をここに5つまとめて書くいてございますけれども、例えば1つ目は商標の定義、あるいは商標の使用の定義、あるいは権利の範囲といったもの。例えば商標の定義ですと、商標の基本的な機能は自他の識別ということにあるわけなんですけれども、そういうことが例えば定義の中にきちんと盛り込まれていない。したがって、使いづらいし、またメッセージ性もないというようなこと。あるいは使用の定義も非常に複雑に規定をされているけれども、例えば音声による使用といったものが抜けているといった、そういう問題もございますし、現在、拒絶理由が法律に非常に多岐にわたって規定されているわけでございますけれども、その中には実際市場に出てみないと混同するのか、類似しているのかわからないというようなものもあります。ところが、それをある一定の時点で客観的、抽象的に審査をする。そういう審査の仕方が果たして最適なのかどうか。あるいは商標は実際取ったけれども、使われていないというようなものもかなりの数あると言われていますけれども、やはり商標の資源というものも無限ではございませんので、そういうものについて、一定の使用状況を確認していく。そういうルールの方がいいのではないかというような議論もございます。
それから、例えば(3)のところにも書いてありますけれども、地域産業の活性化、あるいは国際協調といった観点から、団体商標制度の見直し、特に産地表示を認めるといったようなこと、あるいは証明商標制度の導入、そういう可能性についても幅広く検討してはどうかということで御検討いただいているわけでございます。
それから、例えば(4)では小売業の商標というのがございますけれども、現在、小売業は独立したサービス業として、少なくとも商標法の世界では観念されておりませんで、それをサービスマークとして登録することはできないわけでございます。したがいまして、こういうことは常識にもあわないしコストの増大等を招く一因にもなるのではないかということで、小売のサービスマークを認める方向性についても議論をする。
それから、防護標章制度というのが現在ございます。自分では使わないけれども、人に使われたくないというもの、端的に言うとそういうものなんですけれども、そういう制度が例えば不正競争防止法等におきます著名商標の権利保護の在り方と照らして今日的な役割を担い切れているのかということについても幅広く議論していきたいと考えているわけでございます。
検討は、6月に設置していただきまして以来今まで5回行ってきております。第6回をできれば3月の上旬に開催させて頂き、第7回を4月ごろに予定したいというふうに考えておりまして、ここには中間取りまとめと書いてございますけれども、これまでの議論をストックテークするような形にしたい。それ以降、6月以降になりますけれども、さらに個々の論点につきまして掘り下げた検討をしてまいりたいと考えおります。
特に最終的な締めくくりの時期というのは現在特定はしておりませんけれども、引き続きそれぞれの論点につきまして掘り下げた議論をした上で、課題をまとめてまいりたいというふうに考えております。
商標につきましては以上でございます。

中山部会長

こちらの小委員会は現在議論中とということでございますけれども、ただいま説明につきまして何か御意見とか御質問がございましたらお願いいたします。

永岡委員

小売業に使用されている商標というのは例えばどういうことですか。

木村審議室長

一般の小売業、例えばコンビニエンスストアでございますとか、百貨店もそうですし、スーパーも、一般の商店もあるんですけれども、そういうところはサービスのマークとしては現在商標が取れないという仕組みになっています。したがいまして、販売する商品とのセットで、そちらのマークを取るという形になっておりますので、それをそうではなくて、小売業というのが1つの独立したサービスであるということを商標法で正面から認めて、その形での商標を取るということを認めてはどうかという、そういう制度改正に向けた議論でございます。

永岡委員

具体例で言ってほしいんですけれど。勉強不足で、小売業に使用されている商標というのは例えばどんなものですか。

木村審議室長

例えば百貨店では、例えば高島屋とか、あるいはイトーヨーカドーとか、ちょっと実名を出すのがいいのかわかりませんけれど、そういうものです。

中山部会長

よろしゅうございますか。

永岡委員

わかりました。

中山部会長

ほかに何か御質問等ございましたら。
よろしいでしょうか。

経営・市場環境小委員会指針及び流通・流動化小委員会の検討状況について

中山部会長

それでは、最後の議題に進みたいと思います。経営・市場環境小委員会知的財産情報開示指針及び流通・流動化小委員会の検討状況につきまして事務局から説明をお願いいたします。

小宮知的財産政策室長

資料の12から16でございます。12から15までが経営・情報開示小委員会の関係の資料でございます。
まず、資料の12をごらんいただきたいと思います。経営・情報開示小委員会は、ここにございますように、知財推進計画に基づきまして情報開示の指針の策定、知財戦略指標の策定につきまして検討するために開催されているところでございます。
それで、検討経緯のところにございますように、知的財産情報開示指針につきまして鋭意検討を進めまして、一昨日、27日にこの指針の取りまとめを行い、即日経済産業省の名前でこの指針の公表を行ったところでございます。これにつきまして後で御説明いたします。
また、あわせて知的財産戦略指標につきましては今分析を行っているところでございまして、2の(2)にございますように、マクロの観点から国家間比較ができるような指標、ミクロの観点から公開データに基づいた知財経営戦略指標、それから企業内における知財経営戦略指標、3つのレベルに従って分析を進めている最中でございます。
次に、資料の13をごらんいただきたいと思います。これは知的財産情報開示指針の概要でございます。
背景のところにございますように、知財を積極的に、かつ効果的に経営に役立てるということになりますと、事業、研究開発、知財、3つの戦略の三位一体が必要であります。これにつきましては、実は昨年知的財産の取得管理指針というものを既に策定して出しているところでございます。ところが、この背景の2のところにございますように、このような立派な企業が市場から適正な評価を得られ環境の整備が必要であるわけでありますけれども、右側の2にございますように、企業サイドから見ますと、具体的に投資家が何を求めているのか、どのような開示方法をやっていいのかということがよくわからない。他方、マーケットの方から見ますと、企業の知的財産に関連する情報がほとんど開示をされておらず、また、どこまでが企業にとって開示が可能なのかということがよくわからないということでございまして、いわばこのコミュニケーションギャップを埋めるために、相互理解の加速のための橋渡しとしての指針をつくるというのがこの趣旨でございます。
下にまいりまして、開示の考え方でございます。
まず、5原則ございまして、あくまでも任意の開示であるということでございます。我々、特に金融庁というわけではございません。先ほど申し上げたように、相互理解の橋渡しのためにこの指針をつくるということでございます。
2番目は、知財経営をあらわすものであるということでありまして、もともとマーケットが知りたいのは個別の細かな技術情報ではございませんで、むしろ社長の発するコーポレートメッセージが具体的に知財や研究開発の視点からサポートされているかどうか、まさに当該企業が持続的な成長可能性があるかどうかということを知りたいわけでございまして、そういうものがあらわされているものであるということが必要でございます。
3番目は、前提条件となる事項や数量的裏づけを伴うことということでございますけれども、これは例えば昨今既にアニュアルレポートの中で研究開発についてのいろんな開示が行われておりますけれども、マーケットサイドから見ますと、主観的、定性的な開示にとどまっている。したがって、なかなか分析の役に立てることができない。こういうことがございます。したがいまして、やはり数字の裏づけが何らかの形で出していただきたいというマーケットサイドの要望でございます。
4番目は、財務会計が連結かつセグメントベースの開示を行っている関係から、これにあわせた開示を行っていただければ非常に分析がより包括的かつ具体的なものになっていくという趣旨でございます。
5番目は、近ごろ、例えばベンチャー企業が上場する際に出願中もしくは取得した特許を細かく開示している事例というのが出てまいりましたけれども、単に上場するだけではありませんで、引き続き毎年1回こういうものを報告してみたらどうかという趣旨でございます。
開示の媒体が一番下にございますけれども、これはいわばインベスタリー・リレーションズの中で行うものでございますので、組織的な取り組みによって知的財産報告書を作成することが望ましいということになっております。
右側に移りまして、開示の項目でございますけれども、1番から10番の項目がございます。このうち、1番から5番は研究開発と事業の関連について述べたものでございまして、一部の企業では既にアニュアルレポートの中で開示がなされているものでございます。
6番は、昨年当方で作成いたしました3つの指針に関連する企業として知財経営を実践するような仕組みができているかどうかという趣旨でございます。
7番、8番が特許がいかに事業に貢献をしているかというところを示すものでございますけれども、ライセンス収入に頼っている企業は7番を、それから自社実施が中心である企業は8番をより詳しく書いていただくような指針としております。
9番は特許の棚卸をしているかどうか。
10番は、例えば特許侵害訴訟についてしっかり戦っているかどうか、もしくは基本特許か切れる直前にしっかり対策ができているかどうかというような情報を示すものでございます。
それで、今後の期待でございますけれども、我々この指針は出口ではなくて、入り口と考えておりまして、その意味で企業サイドにおかれては、定期的・継続的な情報提供が必要でございますし、他方、マーケットサイドにおかれては、より企業の成長性を見きわめる能力の向上を期待するということでございます。
具体的な指針及び仮想知財報告書というのが資料14、15についてございますので、これは適宜御参照いただければと思います。
それから、資料の16でございます。こちらは流通・流動小委員会でございます。
先ほど申し上げた経営・情報開示小委員会というのは、企業を総体としてとらえて、いかにそこに知的財産が経営に貢献をしているかどうかという観点でございますけれども、資料16の方にあります流通・流動小委員会は、むしろ特許等知的財産の流通や流動化、資金調達がいかにうまくいくようにするかということについて検討する小委員会でございます。
ここにございますように、検討事項は主に4つございます。
まず第1が、制度的支援策の検討でございます。
2番目が、価値評価についての検討でございます。
3番目が、知的財産信託に係る環境整備についての検討でございます。
4番目が、倒産時のライセンス契約の保護の必要性についての検討でございます。
検討経緯にありますように、既に2回開催しておりますが、実は本日午後3回目の小委員会を開催する予定でございまして、とりあえず今年度は価値評価及び政策的支援措置の方を中心に検討を進めているところでございます。
今後、3月以降、次第に先ほど申し上げた、例えば倒産時のライセンス契約の保護、もしくは知的財産信託についての環境整備ということについて検討の中心を移していくというのが今後の予定でございます。
簡単でございますけれども、以上でございます。

中山部会長

この小委員会の長岡委員長、もしコメントがございましたら……。

長岡委員

ございません。

中山部会長

それでは、この知的財産情報開示指針に関しまして御意見、あるいは御質問ございましたらお願いいたします。

庄山委員(代理 高橋)

これは非常に大事なことだと思いますので、あくまでも任意の開示で、知財経営をやっていけば、それが市場から評価されていくことで好循環が生まれて、科学技術創造立国に資するということだと思うんですが、おっしゃっているのは企業の方の努力はよく書かれているのですが、投資家とか市場がどういうふうに評価していくかをどういうふうに判断されているのか、あるいはそこはどういうふうに見きわめるのかというのがちょっとよくわからないんですけれど、お教えいただけますか。

小宮知的財産政策室長

少し具体的な話をいたしますと、私、この作業の過程の中で10数社、機関投資家なる方々を回らせていただいたわけですけれども、予想以上に知的財産についての興味が高まっているという感触がございました。これについて理由が2つあろうかと思いますけれども、1つは、外資系の機関投資家の中心にありますのは、日本の企業を過小評価し過ぎた。その反省をしなければいけない。ところが、何をもって日本の企業の底力というのを見るのかというときに、知的財産というのは非常に重要であるといった発言が複数の外国系機関投資家から出ておりました。
それから、2番目は、もう1つの問題は、今までキャッシュフローということについて余りにも強く言い過ぎたという反省がやはり機関投資家から聞かれております。
特に中長期の投資をする機関投資家においては、本来、中長期の投資をするときに、短期のことばかり見ているのはやはりおかしかったのではないかという反省がありまして、そうすると、中長期の指標として何を見ていくかといっときに知的財産というのはやはり重要である。こういったコメントが出ております。
事実私どもの方で今知的財産情報開示指針に基づいて報告書をつくってくれそうな会社の経営トップの方々をヒアリングに回っている最中でございますけれども、複数の社長さん方々から、近ごろ機関投資家の言う発言の内容が変わってきたと。例えば増資をしようとするときに、今まではキャッシュフローとばかり言っていたのが、このごろは例えば増資をするなら、その分、幾ら研究開発に充てるのか、どの分野に投資するのかと、こういった質問をよく受けるようになってきたということでございまして、そういう意味で、広い意味での知財、つまり研究開発を含めた技術とか知的財産に極めて関心が高くなってきたというのは我々の感触でございます。
そういう意味で、あとはマーケットが正しく知財を判断していただくことを期待しなければいけないわけで、我々の方としても、例えばIT系と素材系では完全に特許の戦略の体系が違うわけでございますので、そのあたりの説明も含めまして積極的にマーケットサイドに呼びかけを行っているというのが今の現状です。
以上です。

中山部会長

よろしいでしょうか。
ほかに御意見、御質問ございましたら。
よろしゅうございましょうか。
それでは、ほかに御意見もないようでございますので、この知的財産情報開示指針を本部会の指針として決定することを委員の皆様にお諮りをしたいと思います。
御異議ございませんでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

中山部会長

ありがとうございます。
異議がないようでございますので、この知的財産情報開示指針を本部会の指針とすることを決議いたします。

その他

中山部会長

本日用意されました議題は以上でございますけれども、本日の議題、または知的財産政策全体に関しまして何か御意見がございましたら、まだ少し時間がございますので、お伺いしたいと思います。

下坂委員

先ほどちょっと言い忘れましたが、資料の6でございます。特許制度小委員会の分でございますけれども、そこの今後の目標のところ、審査処理促進に向けた取り組み1、2、3という下の方でございます。1、2に関しまして、弁理士の貢献が出ております。審査迅速化法には弁理士会といたしましても会員への周知、こちらの方針に沿って進んでまいりたいと思います。
特に3の迅速・的確な権利の付与のための基盤整備というのがございまして、そこに一番上の丸の次の丸ポツのところに「日本弁理士会からの研修要請への対応」ということで、独立行政法人の情報館、日本弁理士会の要請があればそこで開いていただける、研修をやっていただけるというような項目が明記されておりまして、これは大変感謝いたしております。
私ども最近急激な合格者数で、手づくりで研修をいたしているんですけれども、研修、いろいろ種類、義務から先端技術までいたしますので、このままではちょっとしんどくなってくるのではないかと思っておりましたので、これは大変うれしい表現でございまして、ぜひよろしく、特許庁の長官初め皆様にお願いしたいというお願いでございます。
どうもありがとうございました。

中山部会長

ありがとうございました。
ほかに何か全般的なことでも結構でございますが、ございましたら……。
よろしゅうございますか。
特に御意見も出ないようでございますので、本日の議論は終了としたいと思いますけれども、私からも一言お礼を申し上げたいと思います。
現在知的財産制度の改革は、特許庁に限らずあらゆるところで行われておりますけれども、非常に早いスピードで行われているわけです。これは社会の要請で早めざるを得ないということでありますけれども、他方、早いだけが能ではないわけで、内容も大事であります。早くて、変なものをつくったのでは、後世に負の遺産を残すとになりかねません。したがって、早く、かつ立派なものをということが要請されているわけでございまして、この小委員会、あるいはワーキンググループにつきましてもそういった早く、かつ内容の立派なものという、2つの難しいことをお願いしまして、その結果このように立派な報告書をつくっていただいたわけでございます。皆様の御協力に感謝したいと思います。

閉会

中山部会長

それでは、以上をもちまして産業構造審議会第5回知的財産政策部会を閉会といたします。
本日は、長時間御審議いただきましてまことにありがとうございました。

-了-

[更新日 2004年2月26日]

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