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第7回知的財産政策部会 議事録

  1. 日時:平成18年2月15日(水曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁 共用会議室
  3. 出席委員:
    中山部会長、青山委員、齊藤委員、高橋委員、長岡委員、中西委員、松尾委員、宮川委員、諸石委員、安田委員、山口委員、山根委員、山本委員
  4. オブザーバー:大渕意匠制度小委員会・委員長
  5. 議題:今年度の成果について

開会

中山部会長

ただいまから、産業構造審議会第7回知的財産政策部会を開催いたします。
本日は、ご多忙中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

委員紹介

中山部会長

まず、最初に、前回の部会以降新たに本部会の委員になられた方々につきまして、事務局から紹介をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、ご紹介をさせていただきます。
青山理恵子社団法人日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会常務理事。

青山委員

青山でございます。

田川審議室長

それから、本日ご欠席でございますが、日本弁理士会会長の佐藤辰彦会長。

佐藤委員代理(谷)

代理の谷でございます。

田川審議室長

それから、本日ご欠席でございますが、吉野浩行日本知的財産協会会長の各氏が新たに委員となっていらっしゃいます。

中山部会長

ありがとうございました。
本日は、本部会に設置されております小委員会等におけるこれまでの検討状況のご報告を中心に、今年度の成果をお諮りしたいと思います。

中嶋特許庁長官挨拶

中山部会長

議事に先立ちまして、中嶋特許庁長官から、一言ご挨拶をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いします。

中嶋長官

おはようございます。中嶋でございます。
この部会でご挨拶をさせていただくのはこれが初めてかと思いますけれども、いきなり最初から私的なことで申しわけございませんけれども、17年ぐらい前になりましょうか、当時通産省で知的財産政策室というのをつくって、たしかそのときも知的財産部会だか委員会だかつくったことを覚えておりますけれども、そのときは当時一番話題になりましたトレードシークレット営業秘密の保護をどうするかと。不正競争防止法をめぐる議論だったのでございますけれども、それが10数年たって、今政府全体で知的財産を、いわば国家戦略として取り上げるようになっているということで、大変感慨深く思っております。
それで、委員の皆様方には、大変この部会で貴重なご意見をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げます。特に、平成14年2月以降、今の小泉内閣で総理の施政方針演説に毎回触れると。この知的財産の話に毎回触れるということで、この4年間、知財立国の実現に向けてさまざまなことを実現してきたと思っております。この部会の関係では、特許審査迅速化法であるとか、あるいは昨年ですと、地域ブランドの関係で商標法の改正であるとかということでございまして、これもひとえに委員の皆様方のご支援、ご協力の賜物ということで、この場を借りて改めて御礼を申し上げたいと存じます。
今回は、そういう一連の政府の推進計画の一環として、意匠法、特許法、商標法あるいは不正競争防止法等について見直しをして、より時代の変化に対応して知的財産の保護がしやすいように、あるいは模倣品対策においてもより実効が上がるようにというような観点からご検討をいただいております。
私も、昨年来それぞれの小委員会にもできるだけ参加をさせていただきましたけれども、その小委員会の結果をご報告申し上げるとともに、さらにもう一つの議題といたしまして、弁理士法の関係で、平成12年に改正したわけですけれども、5年後に施行状況を見直していくということになっておりますので、その関係でも新たに弁理士制度の小委員会の設置をさせていただきたいということでございます。
その他、最近の特許審査迅速化・効率化のための行動計画であるとか、あるいは国際動向等についての報告をさせていただきたいと思っております。
本日のご議論あるいは先ほどの小委員会の報告を踏まえまして、今回の国会で意匠法等の法律改正の作業を、政府部内、それから与党とも調整をしながら進めて、来月の上旬には閣議決定をして、国会に提出したいと思っております。
今後とも、折に触れまして委員の皆様方からはいろいろなご教示、あるいはご協力を賜れればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

中山部会長

ありがとうございました。
それでは、早速議事に入りたいと思います。
まず、事務局より配布資料の説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
大部になっておりますが、まず、資料1といたしまして委員名簿。それから、資料2が、意匠制度小委員会の報告書、概要と本体でございます。資料3-1、2といたしまして、特許制度小委員会の概要及び報告書でございます。資料4-1、2といたしまして、特許制度小委員会の概要と報告書でございます。そのほか、資料5、不正競争防止法の見直し、資料6といたしまして、営業秘密管理指針の改定。資料7といたしまして、弁理士制度小委員会(仮称)の設置。資料8-1といたしまして特許審査迅速化・効率化のための行動計画、その2といたしまして概要。資料9といたしまして、知的財産をめぐる国際的な動向と対応。参考といたしまして、地域団体商標制度の施行についてでございます。
以上でございます。

中山部会長

よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。

意匠制度小委員会報告書、特許制度小委員会報告書、商標制度小委員会報告書
及び不正競争防止法の見直しについて

中山部会長

それでは、最初の議題であります意匠制度小委員会報告書についてから、不正競争防止法の見直しについてまで、特許庁において次期通常国会への提出を予定しております意匠法等改正法案関係ということで、一続きとして事務局から説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、ご説明をいたします。
意匠制度小委員会につきましては、大渕小委員長のもとに平成16年9月以降10回に及ぶ審議を経て、この1月に報告書が取りまとめられたところでございます。その中身につきまして、概要に沿いましてご説明をいたします。
まず、意匠権の強化といたしまして、権利期間の延長を行うということでございます。魅力的なデザインというのは、長期間にわたって使用されるということがございます。具体的な事例でも、非常に長く使用される定番商品であるとか、あるいはブームが再度来るリバイバル商品のようなものがございます。こうしたものを模倣から守るという観点も踏まえまして、現在、設定登録の日から15年とされている存続期間をさらに延ばすべきではないかということでございます。
検討をいただきました結果、意匠権の存続期間について、登録の日から15年、これを登録の日から20年に延長するということが適切という結論をいただいております。
登録料の設定につきましては、権利期間の延長による費用負担が過重にならないように、合理的なものとするということでございます。
なお、意匠権の存続期間につきましては、現在、15年目の存続率というのが16%でございます。特許権の15年目の存続率が4%ということからも、長期にわたって権利が有効に活用されているということでございます。
続きまして、刑事罰の強化でございます。意匠権侵害に対する抑止効果を高めるという観点から、刑事罰を厳格化することが必要であるということでございます。このため、現在、意匠権の侵害罪につきましては、3年以下の懲役または300万円以下の罰金というふうになっておりますが、これを5年以下の懲役または500万円以下の罰金に引き上げることが適切であるという結論をいただいております。
そのほか、現在、懲役刑、罰金刑につきましては、併科をされていないということがございます。したがいまして、例えば悪質なものについては懲役刑のみということで罰金刑が科されないということもございますので、これを併科を設ける、それから、法人重課につきましても、現在、1億円となっております罰金を3億円以下の罰金にするということで引き上げることが適切であるということでございます。
続きまして、意匠権の効力範囲の拡大でございます。第1点として、輸出の追加についてご議論いただきました。ご承知のとおり、模倣品・海賊版の被害というものが、これが国際的に問題になっております。我が国も模倣品・海賊版の国際的な流通というものを阻止するために、輸出あるいは通過を規制するといった内容の模倣品・海賊版防止条約というものの実現を目指しております。
また、昨年のサミットにおきましても、小泉総理が、模倣品・海賊版の被害を防止するために国際的な取り組みをすることが必要であるということを強く強調されたところでございます。
さらに、現在、意匠法におきましては「輸出」が侵害行為として規定をされていないということがございますので、例えば模倣品というものが輸出される段階で見つかったという場合でも、これを差しとめることができないということがございます。そのほか、模倣品が国際的な流通といたしまして、例えば日本において積み替えられて、日本から再度輸出をされるというようなケース、こういう場合には原産地を偽るようなケースがございまして、こうした通過の一形態について水際で取り締まるということが必要ではないかと言われているところでございます。
こうしたことから、この意匠権者の製造・譲渡等を独占的に行うという経済的な利益を保護するため、「輸出」を侵害行為に追加することが必要であるということでございます。
また、現在、水際の規制がないということからも、「輸出」を侵害行為に追加することが必要でございます。
あわせまして、輸出の前段階である「輸出を目的とした所持」を侵害とみなす行為とするということであります。
また、先ほどご説明をいたしました通過につきましても、我が国を仕向地として、一たん日本に輸出あるいは日本に輸入されて、それが再度日本から積み出しをされるというような場合には、これは「輸出」に該当する侵害行為というふうに考えられるところでございます。
続きまして、「譲渡等を目的とした所持」の追加でございます。現在の規程では、譲渡等を目的とした所持というものはございません。これは、商標法におきましては、譲渡等を目的とした所持というものが入っておりまして、先日も偽ブランド品の摘発で譲渡等を目的とした所持ということで、取り締りが行われたところでございます。そうしたことを踏まえまして、より効果的な模倣品対策のために、「譲渡等を目的とした所持」というものを追加することが適当ということでございます。
IIIの論点でございますが、意匠の類似範囲の明確化でございます。意匠の類似という概念につきましては、意匠の登録段階、あるいは実際の権利範囲を規定をするというものでございます。意匠権につきましては、その権利範囲というものは、「登録意匠と同一または類似の意匠に及ぶ」というふうにされております。しかしながら、この類似の範囲の判断というのが明確ではないという、そういうご指摘もあるところでありまして、その判断手法、基準を明確にするということによって、意匠権の活用につなげるべきだというご主張があるところであります。
こうしたご指摘を踏まえまして、意匠権の類似範囲を統一をもって判断をされると。その基礎を与えるものといたしまして類似の概念をきちんと明確にしようということでございます。
3番目でございますけれども、この意匠の類似というものにつきましては、最高裁判例等において、取引者、需要者から見た意匠の美感の類否であるということになっております。この点をきちんと明確にするということでございます。
さらに、特許庁における審査基準の見直しをいたしまして、この類否の判断について取引者・需要者の視点を踏まえたものということで、その明確化を行っていくということが適当であるという結論をいただいております。
次に、IVの税関における部品の取り外しでございますが、これにつきましては、典型的な例でございますと、オートバイの模倣品が日本国内に入るときに、その例えば風洞部分を取り外しをしまして国内に輸入をするというケースがございます。その後に市場で流通している部品を再度つけることによりまして復元をするという、そういう脱法行為が以前から指摘をされているところでございます。これにつきましては、現在でも意匠権者の侵害のおそれがあるということでその予防を請求することができるということもございますし、また、国内の未完成の段階の製品の譲渡等も間接侵害になる可能性もあるということもございます。
こうしたことを踏まえまして、これにつきましては改めて検討を行うことが適切という結論をいただいております。
続きまして、物品間の転用の拡張でございます。これは、例えば自動車のデザインをミニカーに転用するといったことについてどう考えるかということでございます。これにつきましては、まず、デザインの転用ということについて意匠権というのが、創作を保護するということでございます。若干転用ということになりますと、そこは信用・評価を保護するということになり、少し制度趣旨には合致しないということもございますし、さらにある程度物品分野を基礎にした現在の意匠法の体系からいたしますと、どこから権利行使が及ぶかわからないという不安定性についての慎重な意見もございまして、これについてもさらに慎重な検討が必要という結論をいただいております。
第3といたしまして、意匠権の保護範囲の拡大でございます。画面デザインへの保護対象の拡大ということでございまして、画面デザイン、現在、いろいろな情報機器で使われております。これは現行の商標法におきましても、一部限定的ではございますが保護されております。しかしながら、全体としてみますともう少し保護を拡大する必要があるのではないかということでございます。
こうしたことから、画面デザインにつきまして、ソフトウェアの特殊性、例えば一つのソフトウェアについて一つの画面がある侵害をしたときに、その全体のソフトウェアに権利行使が及び得るということもございまして、有体物としての物品を基礎とした保護を考えていこうということでございます。このため、物品の部分意匠としての考え方を基本として、画面デザインを保護をしていこうということであります。
具体的には、現在、保護しております物品の成立性に照らして不可欠な画面、例えば機器の一番最初の画面、最初のその画面がないと操作が始まらないといった機器の初期画面、これを加えまして、もう少し幅広く画面のデザイン、初期画面以外の機器のデザインを追加をすると。あるいは物品の、例えばDVDプレーヤーのようなものにつきましては、外部のディスプレーに表示をされるといったケースにつきましても、保護の対象と考えることが適切であるということでございます。
ただし、ソフトウェアの特殊性等にかんがみまして、パソコンにインストールされましたアプリケーションでありますとか、インターネットを通じて表示されるものにつきましては、さらに慎重に検討していくべきであるという結論をいただいております。
続きまして、意匠制度の枠組みといたしまして、ダブルトラック化の議論をいただいております。これは、現在の審査制度というのは非常に安定した権利を付与することができるということでございますが、例えば早い段階で模倣品が生じるような商品分野、または非常にたくさんの商品を取り扱うような分野、そういった分野については早い期間でかつ迅速に保護できる仕組みが必要ではないかということで、現在の仕組みと、それから無審査制度というものを合わせたダブルトラック化というものをご審議いただいたところでございます。
結論といたしましては、無審査制度については、やはり現在のユーザーの方々の意見を聞きますと、安定した権利というものがまず一義的には重要であると。無審査制度についてはいろいろな濫用の懸念、あるいは監視負担の懸念というものもあるということでございますので、今後さらに環境の整備をしていくと。早期の保護が必要になるような場合に改めてその是非を検討しようということになっております。
そのほか、関連意匠制度の見直し、あるいは部分意匠制度の見直しといった項目についてもご審議をいただいております。
関連意匠制度につきましては、これはデザインのバリエーションを保護する制度でございます。これは、現在、出願と同時に出願されたものにしか認められないということがございます。これを公報の発行まで緩和して、もう少し幅を持たせようという制度改正でございます。
部分意匠につきましても、例えば自動車の本体のデザインと部分のデザインというものにつきまして、これを同日の出願によって出願された場合に両方が保護の対象になると。それでは、例えば全体が先に決まって、部分が後で決まるという実態に即していないということから、これも公報発行までの期間について、その登録ができるように時期的制限を緩和しようということでございます。
秘密意匠、それから新規性喪失の例外規定につきましても、手続事項でございますが、それぞれ緩和をすることが適当ということでございます。秘密意匠につきましては、現在、出願のときに秘密意匠の申請をしなければならないと。これを、最初の登録料の納付時も可能にするということでございます。新規性喪失の例外につきましては、現在14日以内という規定を、30日以内というふうに改めることが適当というふうになっております。
続きまして、特許でございます。まず、大きな論点といたしまして、分割、それから補正の見直し、それから輸出の追加等ございます。主な項目についてのみご説明をさせていただきます。
まず、分割制度でございますが、これは一つの出願に複数の出願が含まれているときに、その一部の出願を新たな出願とすることができる制度でございます。現行の制度につきましては、この審査が終了した段階ではこれを分割することができない。例えば、審査をして、審査の結果を見まして、例えば特許請求項には入っていないけれども、実は特許になり得るようなものがある場合、この場合に新たに特許になる道がないということで、特許査定後及び拒絶査定後一定期間、分割を可能にすることが適当であるという結論をいただいております。
それから、その分割を緩和をいたしますと、その制度の濫用が助長されるということが懸念されるところでございます。例えば、典型的には同じ出願を何度も繰り返すというようなことも考えられるところでございますので、もとの出願の審査において通知をされた拒絶理由を解消していない場合には、これは最後の拒絶理由通知と同様の補正の制限、下にございますように、非常に厳しい補正の制限がかかるようにすることによりまして、この濫用を防止していこうということでございます。
続きまして、一部継続出願、国内優先権制度につきましては、これは説明を省略させていただきます。結論といたしましては、国際的な制度調和にかかわる事項もございまして、国際的なハーモの中で今後きちんと検討していくことが適当という結論をいただいております。
続きまして、補正制度の見直しでございます。補正制度につきましては、請願主義のもとで最初から完全な出願書類というものを求めることができないと、それは酷であるということで、出願書類を最初に出願をされた特許請求の範囲及び明細書といった書類の範囲で認めている制度でございます。
現行制度におきましては、審査の対象となる発明を大きくする補正がこれを許容されております。欧米では、このあたりの運用が日本よりも厳しくなっているということでございます。例えば、2つの異なる分野の発明があったといたしますと、一方の審査を行った後に、それが拒絶をされた後に、もう一つの技術分野が違うものを例えばクレームアップするというようなケース。こういった場合には、一つの出願で実質的に2回の審査を受けるということになります。そういったことになりますと、出願間の公平等の問題もございますので、国際的な観点から、こうしたシフト補正を禁止するということが適当であるということでございます。
輸出につきましては、第2の侵害への対応の強化ということで、第1に「輸出」の追加でございます。論点といたしましては意匠と同様でございます。意匠権者と同様特許権者も生産譲渡等、国内で行う活動を独占的に保護するということでは、最終的な「輸出」のところも侵害行為に追加をすることが必要であると。または水際の取り締りの実効性を上げるということも必要であるということから、特許の実施行為に「輸出」を追加をするということでございます。譲渡目的の所持は、先ほどの意匠と同様でございます。
刑事罰の強化でございますが、これにつきましては、実用新案の刑事罰というものが3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっております。これを、特許商標との横並びを冠して、5年以下の懲役、500万円以下の罰金に引き上げると。それから、併科を導入をすると。あるいは法人重課についても3億円以下の罰金に引き上げることが適当であるという結論をいただいているところでございます。
続きまして、第3でございますが、先使用権のあり方でございます。先使用権制度につきましては、これはある特許権者が出願をする段階におきまして、既に実施または実施の準備をしているという先使用者、これに例外的な救済措置として法定の通常実施権を与えるというものでございます。
現行の先使用権が認められる範囲につきまして、解釈に起因する不明確さというものが指摘をされているということもございます。一方で、法改正を行ったとしてもなかなか一義的にその個別事案について判断をするというものも難しいということ。あるいは、想定されていないほかの問題も生じ得ると。また、法律改正によりまして、先使用権者と特許権者のバランスが変更されるおそれもあるということもございます。
産業界におきましても、制度の明確化のために、ガイドラインによる制度の明確化を望む声が大きいということで、現状におきましてはガイドラインを作成をいたしまして、例えばどういう場合に先使用権制度のいろいろな要件が認められているかといった判例の調査であるとか、あるいは立証等につきましての事例というものを蓄積をし、それをガイドラインとするということで、制度の明確化を図ることが適切であるという結論をいただいております。
立証の容易化につきましても、判例、学説等を合わせて、実例も参考にして、立証の明確化を図ることが適切ということでございます。
それから、国際的な調和といたしまして、先使用権の制度が各国によって少し異なるということもございますので、これについて各国への働きかけを行っていくことが必要であるという結論をいただいております。
そのほかの論点といたしまして、フランスのいわゆる先発明実施権と言われるような制度がございます。これは、フランス等におきましては発明の所有の要件によって通常実施権を認めているというものでございます。しかし、こういう制度につきましては、特許権の大きな例外を設けるといことから慎重な意見もあるということでございます。また、国際的な制度調和にも反するということから、適切ではないというご指摘をいただいております。
そのほか、特許制度の利便性の向上といたしまして、外国語書面の翻訳文の提出期間を、国内・国外とも出願日から1年1カ月以内に統一をすると。それから、拒絶理由通知の応答期間についても運用の改善を行う。新規性喪失の例外の証明手続についても、その書類についての見直しを行うといった措置を講ずるということにしております。
第5といたしまして、判定制度とADR機関との役割でございますが、これにつきましては、現在、特許庁の判定制度とADR機関の判定とは、機能あるいは役割が異なると。ユーザーも異なるということで、現段階で廃止をすることは適当ではないということにしておりますが、一方で民間型のADR機関を活性化するということは、これは非常に重要だということもございます。その定着状況を見極めて、特許庁との判定制度との関係については改めて検討を行うことが適切であるという結論をいただいております。
続きまして、商標につきましてでございます。
まず、大きな論点といたしましては、小売業等の商標の保護のあり方でございます。現在、小売業・卸売業の行います、例えば品ぞろえだとか陳列といった小売業等のサービス活動、これは商品の販売に付随したサービスであるということになっております。したがいまして、現在、「商標」の定義については、「業としては商品を生産し、証明し、譲渡する者がその商品について使用するもの」ということになっておりまして、この「商品の譲渡」というところで読まれるということになっておりまして、商標法上はサービスマークの対象にはなっていないということでございます。
一方で、小売活動、小売サービスというものは、それ自体で商品の譲渡を超えたブランド価値もあるということがございますので、それを一つの保護すべき価値として認めることが適当ではないかということでございます。
国際的な動向を見ましても、この商品のあるいは商品または役務の区分を定めますニース国際分類におきまして、小売店あるいは卸売店といったものの行いますサービスが、これがサービスマークの対象であるということが明確化されることになっております。また、海外の事例を見ましても、役務商標として保護するという実例が非常に多くなっているということがございます。このために、小売業・卸売業の提供するサービスについての商標というものは、現在の商品としての商標に加えまして、役務としても保護することができるということが適切であるというふうに結論をいただいております。
また、審査上の取り扱いでございますが、まず、小売サービスの間の類似の問題でございます。これにつきましては、小売サービスの中で例えば一律で小売サービスすべてが類似範囲の中に入るとするということもございますけれども、そこは実態を見て、例えば取引実情によって、あるいは取引商品分野によって混同が生じるもの、こういったものを類似の範囲としてやっていこうということが適切であるということになっております。
また、小売サービスと商品との間の審査につきましても、取り扱う商品内容が出所の混同を生じるといったおそれがあることを前提にいたしまして、可能な限り合理的な範囲で類似の審査を行う枠組みを行うことが適切であるということでございます。
また、この措置の導入に当たりましては、きちんとした経過措置を行うということで、特にその際には、これまで蓄積されてきた実績、あるいは既存の取引実情にも配慮をして、サービスマーク登録制度を導入したときのような出願日の特例であるとか、あるいは継続的に使用する権利といったところを念頭に置いて措置をすることが適当であるということでございます。
そのほか、「輸出」の追加につきましては、これは商標、意匠、それから特許と同じ考え方でございます。
刑事罰の強化につきましては、懲役刑あるいは罰金刑の併科を設ける。それから、法人重課について、3億円以下の罰金に引き上げることが適切であるという結論をいただいております。
そのほか、今回制度改正事項にはつながりませんが、著名商標の保護のあり方、それから審査のあり方としてコンセント制度、そのほか商標の定義の問題につきましては、今後さらに国際的な動向も見ながら検討を進めていくことが適当であるということでございます。
以上でございます。

由良知的財産政策室長

続きまして、知的財産政策室から、資料5のご説明をさせていただきます。
今回、特許、意匠、登録商標等について種々ご検討をいただいた中で、それに類する不正競争の防止についても取り組みの強化が必要であるというふうに考えておりまして、2番の平成18年度見直しの概要のところをごらんいただきますと、主に罰則の関係の強化の論点を提示をさせていただいております。
意匠法等で罰則の強化というご議論をいただいておりますので、商品形態模倣行為罪について、意匠権侵害罪と罰則の均衡を図る必要があるというふうに考えておりまして、意匠法で保護するのがいいか、不正競争防止法の商品形態模倣行為罪で保護するのがいいか。ほぼ均等の扱いではないかということで、罰則の強化を考えております。
同様に、営業秘密の保護について不正競争防止法で処罰をしておりますけれども、特許の侵害と同等の重要な技術上の秘密の侵害というのが考えられることから、同様の罰則の強化を考えていきたいというふうに考えております。
それから、(4)でございますが、「輸出」の禁止を今回特許等で取り組んでいくということになっておりますが、同様の考え方に基づいて、不正競争防止法で言っております商品形態模倣の行為等についても、同様に輸出の取り締りを強化をしていきたいということで、関税法に取り入れていただくという方向で議論をさせていただいております。
以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。
それでは、この3つの報告書及び不正競争防止法の見直しに関しまして、ご意見あるいはご質問がありましたらちょうだいをしたいと思います。何かご意見あるいはご質問ございませんでしょうか。

田川審議室長

では、現在の法案の作成状況等につきまして補足をさせていただきますと、ただいまご報告をいたしました小委員会の報告の内容を踏まえまして、産業財産権4法、それから不正競争防止法の内容を具体的に固めるべく、現在、作業を進めておりまして、政府部内、与党との調整も行っているところでございます。
恐らく、来月早い時期までに成案を得まして、国会に提出するということになるのではないかというふうに考えております。
そうした項目の1つとして、刑事罰の問題もございます。刑事罰の引き上げにつきましては、各報告書におきまして、意匠権及び実用新案の侵害につきまして、懲役5年以下、罰金500万以下に引き上げる方向で取りまとめをいただいているところでございます。
一方で、近年の知的財産の重要性、あるいは模倣されやすいという知的財産の性格等を踏まえまして、知的財産全般について懲役刑を含めて引き上げるべきではないかというご意見もあるところでございます。
現在の懲役刑というのは、これは明治42年に定められているということもございまして、これを10年にできないかということでございます。私どもといたしましては、現在の報告書のご意見をベースに、こうした意見もあることも踏まえまして調整を行っております。最終的にはこの報告書と結果において少し異なることがあり得るということについてはご理解いただければと思っております。

中山部会長

ただいまの点も含めまして、何かご意見あるいはご質問がございましたら。
どうぞ、松尾委員。

松尾委員

最後にご説明された罰則の点ですけれども、意匠、商標、特許の制度の報告書については、パブリックコメントを経ているのだと思います。
今の罰則の強化の問題ですけれども、例えば、特許制度の資料3-2を見ますと、32ページから33ページにかけて、「(懲役刑)の上限を10年へ引き上げることについては、特許権侵害罪の取り締りの動向を注視しつつ、慎重に検討を行うことが適当である」ということで、全般的に刑事罰についても、ほかの報告書にもございますけれども、5年に引き上げるということで落ち着いていて、それでパブリックコメントがなされているわけですが、それにもかかわらず、これと別に10年ということをご検討なさるおつもりでしょうか。そして、それがパブリックコメントはどういうふうになるのか、ご説明いただきたいと思います。

中山部会長

はい、その点について。

田川審議室長

現在での報告書の考え方については、パブリックコメント等でもご意見をいただいてまとめたところでございます。
今申し上げた点につきましては、今後、政府部内の調整によって最終的には決まって行くプロセスの中であり得るということでございます。
以上でございます。

中山部会長

どうぞ。

松尾委員

私、日弁連の考え方、正式になっておりませんけれども、みんなの考え方は大体感じ取っているのですけれども、例えば懲役刑10年ということについては、非常に強い反対があると思います。そういうものの意見を聴取されるような機会は与えられないのでしょうか。

田川審議室長

その点については、具体的なプロセスの中で、少し検討できるかどうかということについて、勉強してみたいと思っております。

中山部会長

ほかにご意見ございましたら、あるいはご質問がございましたら。
はい、どうぞ、山本委員。

山本委員

特許のところで、一部継続出願、国内優先権制度のところでございますが、これは今回検討を行うというところではないと思いますが、私自身も国際ハーモの中で考えるというのは賛成なのですが、現状で申しますとやはり非常に米国に有利なルールで運用されているというのが実態でございまして、そういったところで言えば、この委員会ではどのようなことが議論されたのかということを、もう少し詳しくご説明いただければと思いまして……。お願いいたします。

井上審査基準室長

調整課審査基準室の井上です。
一部継続出願制度につきましては、このアメリカの制度を日本に導入すべきか、というところを検討いたしました。これについては、別途知的財産研究所でも研究しておりまして、実際にアンケート調査を行っております。その結果、第三者負担が増加するといった理由から、それほど強いニーズはなく、今後国際調和の中で議論していこうという結論に落ち着いております。
あと、国内優先権制度の方ですが、こちらも国内優先権の期間を延長するべきかという議論をしていました。実際にどこまで延長できるかといいますと、出願公開のための準備がありますので、延長できる期間は6カ月より短くなり、現状どおりが適当との結論になっております。
なお、一部継続出願を導入する場合、例えばアメリカのグレースピリオド、すなわち、自分の公開公報からは拒絶されないというような制度を導入しないとメリットは限定的になります。グレースピリオドについては、国際的な議論がなされている最中でございますので、そちらの動向を見つつ検討すべきではないかということで議論がなされております。
以上です。

中山部会長

よろしいですか。
ほかにご意見やご質問がございましたら。
よろしゅうございましょうか。ほかに意見もないようでございますので、3つの報告書の決議に移りたいと思います。
初めに、意匠制度小委員会報告書、「意匠制度のあり方について」を、本部会の報告書として決定することを委員の皆様にお諮りをしたいと思います。
ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

中山部会長

ありがとうございます。
異議がないようですので、この報告書を本部会の報告書にすることに決議いたします。
次に、特許制度小委員会報告書、「特許制度のあり方について」を、本部会の報告書として決定することを諮りたいと思いますけれども、ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

中山部会長

ありがとうございます。
異議がないようでございますので、この報告書を本部会の報告書とすることを決議いたします。
続きまして、商標制度小委員会報告書、「商標制度のあり方について」を本部会の報告書として決定することをお諮りしたいと思いますけれども、この点につきましてもご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

中山部会長

ありがとうございます。
異議がないようですので、この報告書を本部会の報告書とすることに決議いたします。

「営業秘密管理指針」の改訂について

中山部会長

次いで、次の議事に移りたいと思います。
営業秘密管理指針の改定につきまして、説明をお願いいたします。

由良知的財産政策室長

引き続きまして、資料6でご説明をさせていただきます。
営業秘密管理指針、平成15年につくっておりますが、営業秘密という格好でノウハウを保護する場合に、特許のように公開をして公の権利として認めてもらうというのと違う、隠して守るということで、実務上どういうふうにしていくのがいいのかというところを企業の皆さんの側に立ってご説明をした指針でございます。
平成17年に不正競争防止法、昨年改正をしていただいております関係で、昨年不正競争防止法小委員会の方で議論をいただいた際に、幾つか法律の改正に伴う論点、あるいは法律には盛り込まないけれども明確にしていった方が、企業実務として望ましいという論点が出てまいりました。
具体的には、1.改訂の背景の「一方、」というところでございますが、企業における退職者等との間で締結される秘密保持契約のあり方。これは、営業秘密の保護を、特に退職者が持って出て営業秘密を暴露してしまうといったことについて、昨年秘密保護の強化の観点から罰則の取り入れでございますとか、類型の充実をいたしておりますので、そういった場合に退職者等とどういう格好で営業秘密を特定をしていったらいいのかというところは、実務の指針になるような方針を示した方がいいというご指摘。
それから、法人の選任監督義務の内容についてでございますが、これは営業秘密の管理について、罰則の面で両罰規程がございまして、営業秘密を盗んだ個人に加えて、その個人が属している企業にも重い罰金がかかりますので、その盗んだと言われた会社が自分の社員に対してどういうことまで言っておけば、その個人は仮に罰せられたとしても会社としては免責されるという関係になるのかといったところが論点になってまいりますので、そういったところを指針として出す必要があるのではないかというご指示をいただきました。
この際でございますので、そういった指摘をいただいた点に加えまして、最近の判例の動向ですとか実務の動向に照らしまして、大幅な改訂に取り組んだというところでございます。
改訂の概要のところでございますが、営業秘密の管理に関する基本的な考え方を随所に記載をした。それから、営業秘密の定義、特に秘密管理性の要件について具体的な例を書いたところでございます。後で、6-2の本文の方をざっとごらんいただくことにいたしますが、営業秘密の管理について、秘密管理性があること、それから資料6-2の6ページをごらんいただいたらよろしいかと思いますが、営業秘密の定義として、秘密として管理されていること、有用な情報であること、それから公然と知られていないことの3つの要件を満たすものが営業秘密であるというふうに考えております。
特に、そのうちの、秘密として管理するというのはどういうことなのかというところについていろいろ議論がございまして、比較的しっかり管理したものだけが営業秘密だというふうに実務上考えられておりますので、「しっかり管理」というところについては、よく皆さんの理解を共通にしておく必要があるだろうということで、そこを具体例をいろいろ書いたというのが6-1の資料の2の部分でございます。
それから、3でございますが、平成15年以降の法律改正を踏まえて、いろいろな保護の方法について解説をいたしました。それから、最近の裁判例を踏まえて、特に秘密管理性のところが中心でございますが、ミニマムでどういうことをやらないといけないのか。それから、望ましい秘密管理としてはどの程度のことをやった方がいいのかというようなことを書きました。
それから、5として、特に退職者との関係の、先ほどの論点、ご指示をいただきましたので、営業秘密の管理契約に盛り込むべき内容とかについて記載を充実いたしました。
それから、組織的管理の部分について整理をいたしました。
資料6-2の方の体系を改めてごらんいただきますと、今ごらんいただきました6ページのところで営業秘密の定義が書いてございますが、申し上げたように3つのポイントがございます。それから、9ページ以降、営業秘密の具体的な保護のされ方について、類型を分けてご説明をしておりますが、概略申し上げますと、10ページの絵のところにありますように、営業秘密を管理をしておる保有者から、第一次取得者が不正の手段をもって取得をした場合、あるいは絵の下の部分では、第一次取得者は正当であった場合であるけれども、右の方に矢印が出て、利益を図る目的、加害目的で使用したり開示をしたり、あるいは不正開示について悪意を持って第二次取得者に開示をしたりといったことが、それぞれ営業秘密の暴露ということで民事訴訟における差しとめや損害賠償ができるというふうになっております。
それから、13ページ以降、営業秘密の刑事的保護ということで、少し限定をしておりますけれども、営業秘密を不正に取得、あるいは不正に使用した場合に罰則がついてくるということをご説明をいたしております。
それから、18ページから営業秘密の管理の部分について改めて詳細に書いてございますが、19ページを見ていただきますと、秘密管理性の要件として大きく判例で3つの論点が提示をさせておりまして、A、B、Cとございます。
まず、Aとして、アクセスできる人が限定され、権限のない者によるアクセスを防ぐような手段がとられていると。これは人的な管理というふうに呼ばれている要件でございます。それから、Bとして、アクセスした人が管理の対象になっている情報をそれと認識し、秘密として管理することについて意識をしっかり持っているということで人的な管理。それと、Cとして、組織として何らかの仕組みを持っているということで組織的管理という3つの要件がございます。
そういったことについて、21ページ以降、まず物理的な管理のあり方、判例の動向と望ましい水準について、それぞれ書いております。判例の動向として、最低限どういう管理をしないといけないかということを、判例の例示を中心にご説明をし、23ページ以降のところでは、望ましい水準として、それを踏まえた管理のあり方を説明をしております。
同様な考え方で、26ページ以降、技術的な管理、あるいは29ページ以降は人的管理といったことについても、2つの水準に分けてご説明をしております。
それから、38ページ以降が退職者の関係を特記をしたパートでございまして、退職者との適切な秘密保持契約、対象となる情報の範囲ですとか秘密保持の期間をどうするかといったところを、あるべき姿として提示をいたしております。
それから、最後でございますが、45ページ以降、組織的な管理ということで、先ほど申し上げました両罰規定との関係で、従業員をどういうふうに管理をしていくかという観点での論点整理をいたしております。
項目だけご紹介ということで、大変雑駁でございますが、以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。
ただいまの営業秘密管理指針の説明につきまして、何か質問がございましたらお願いいたします。よろしゅうございましょうか。
それでは、ご意見もないようですので、次の議題に進みたいと思います。

弁理士制度小委員会(仮称)の設置について

中山部会長

次は、弁理士制度小委員会(仮称)の設置につきまして、事務局より設置趣旨についての説明をお願いいたします。

稲垣秘書課長

特許庁秘書課長の稲垣でございます。
次の、弁理士制度小委員会(仮称)の設置につきましては、資料7に基づきまして、私の方からご説明をさせていただきます。
弁理士法につきましては、平成12年に従来の片仮名法から全面改正をいたしまして、平成13年1月6日から施行してございます。この新しい弁理士法の附則の13条でございますけれども、資料2ページ目につけてございますが、「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」という規定が置かれてございます。
平成18年が、ちょうどその施行から5年でございますので、今般この弁理士法の施行状況に関し幅広い観点から何らかの措置が必要かどうかということを検討するということで、産業構造審議会運営規程に基づき、この知的財産政策部会の下に弁理士制度小委員会を設置させていただき今年の4月ぐらいから年末にかけいろいろご議論をいただきたいという趣旨でございます。
主な検討事項につきましては、これは主として日本弁理士会の方から出されている項目でございますけれども、例えば今弁理士試験に合格いたしますと弁理士登録ができるわけでございますが、弁理士試験に受かった後に実務研修を行い、それを終了した者にのみ弁理士資格を付与するように変えることが適当かどうか。
あるいは、業務範囲につきましても、例えば外国、アメリカへの出願については、もちろんアメリカの弁理士が担当するわけですが、その前提としてのさまざまな技術書類等を、実態としては今日本の弁理士がつくっているわけでございますけれども、そういったようなものを弁理士としての業務範囲に取り組むことが適当かどうか。
あるいは、特許業務法人制度につきましても、今、無限責任ということになっているわけでございますが、これにつきまして、例えば有限責任に変えることが適当かどうか等々、幾つか項目がございますが、こういった点につきまして、有識者の方からいろいろご検討をいただければということでございます。
小委員長につきましては、部会長に兼任をしていただきたくお願いいたしたいというふうに考えております。また、委員につきましては、資料の2.にございますように、各方面から10名強程度の方にお願いをしたいと考えておりますが、具体的な人選につきましては、小委員長にご一任をいただければというふうに考えております。
私からは以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。
この点についてご質問がございましたら。よろしゅうございましょうか。
どうぞ。

佐藤委員代理(谷)

質問ではないのですけれども、一番の当事者であります弁理士会、また弁理士としまして、まずこの小委員会の設置をありがとうございます。
それから、平成12年改正法以来、弁理士試験合格者が非常に増えてきておりまして、その急激な量的拡大、それに伴いいかに質を担保するかということが、今、重要な課題だと思っております。特に、質と申しましても、最高の弁理士ということではなくて、少なくともミニマムの実務能力をある程度担保できるということをぜひ考えていきたいと思っております。
昨年12月に弁理士会の総会がございまして、そのときの決議において、弁理士というものは、「技術と法律の素養を備えた国際性のある知的財産専門家である」というくくり方をしまして、そのような弁理士を育成するために、弁理士試験制度を充実させるとともに、ともかく登録前研修の義務化を含む新しい弁理士試験・研修制度の実現をぜひお願いしたいと考えております。
特に、近年各国で知財立国が叫ばれている中、各国の弁理士のレベルも上がってきているところでございますが、日本の弁理士が各国の弁理士に伍して、それ以上に力を発揮できる、つまり国際性、国際的競争力のある弁理士を多数輩出できるように、新しい弁理士試験・研修制度をぜひお考えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

中山部会長

ほかにご意見やご質問がございましたら。よろしいでしょうか。
それでは、ただいま秘書課長よりご説明がございましたが、私の小委員長就任も含めまして、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)

中山部会長

ありがとうございます。
異議がないようですので、弁理士制度小委員会の設置につきましては、ご承認いただいたものとして扱いたいと思います。

「特許審査迅速化・効率化のための行動計画」について

中山部会長

次の議題に進みたいと思います。
特許審査迅速化・効率化のための行動計画につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

南調整課長

特許庁調整課長の南でございます。私の方から、本年1月に経済産業省で取りまとめました、特許審査迅速化・効率化のための行動計画についてご紹介をさせていただきたいと思います。
お手元の資料8-1と8-2でございますけれども、8-1が大部でございますので、8-2の概要ペーパーを用いてご説明をさせていただきたいと思います。
まず、お手元の資料の左上でございますけれども、この行動計画を策定するに至った背景、経緯を簡単にご紹介したいと思います。これはもう言わずもがなでございますけれども、研究開発の効率化や重複研究の排除、それから独創的発明早期事業化の容易化をするに当たって、発明の早期権利化というのが極めて重要で、これによって国際競争力の向上を図るということで、我々これまでも特許審査の迅速化に努めてきたわけでございます。
昨年取りまとめられました知的財産推進計画の中で、この迅速化の中長期の目標が設定されております。具体的には、平成20年に30カ月未満、これは今後まだしばらく審査待ち期間が長期化する中で、30カ月未満にとどめるといった趣旨でございます。そのピークを過ぎた平成25年には、世界最高水準の11カ月を実現するという目標設定をしております。
ところが、近年、2001年10月に審査請求期間の短縮を行った関係もありまして、予想以上に審査請求件数が増加してきておりまして、今年度末には審査待ち件数が80万件にも達するような状況になってきております。
こういった状況を踏まえまして、昨年12月22日に二階経済産業大臣を座長とします特許審査迅速化推進本部を設置をいたしまして、今年の1月17日にこの行動計画を取りまとめたところでございます。この行動計画の中では、当然ながら我が特許庁のなすべき目標として、その下にございます目標を設定しております。
まず、迅速化の目標としまして、一次審査件数につきましては、本年の24万件を2割以上上回る29万件を達成すると。それによりまして、本年度審査順番待ち期間27カ月でございますけれども、その上昇を来年度28カ月にとどめるというのが迅速化の目標でございます。
あわせまして、我々特許審査の効率化も進めていかなければならないということで、効率化目標を3点設定をさせていただいております。一つは審査官1人当たりの年間処理件数でございます。ただし、出願ごとに請求項が年々増加している中で、件数ベースでの効率化の目標というのは必ずしも適切ではないということで、審査官が審査をします請求項ベースでこの目標は設定をさせていただいております。具体的には、今年度審査官1人当たり約1100項の発明を審査することになりますけれども、5年後の22年度には3割増の1400項でございます。
それから、アウトソーシングの拡充ということで、今年度19万件、先行技術調査のアウトソーシングを実施しているわけでございますけれども、これを5年後には24万件まで拡大すると。
それから、審査にかかる直接コストでございますけれども、今年度は1請求項当たり約2.8万円かかっているところでございますが、これを5年後には2.2万円まで引き下げるという効率化の目標もあわせて設定をさせていただいております。
それで、こういった目標を達成する上で、具体的な取り組み、これは政府だけではなくて、民間の方々のご協力もいただかないといけないということで、官民挙げた取り組みをまとめさせていただいております。
まず、特許庁としての取り組みでございますが、ただいまご説明したとおり、我々の処理能力を最大限拡充していかないといけないということで、我々の審査の効率化等を図ることによって、審査時間の拡大を図るということや、2年前から実施をしております任期付審査官、これは5年で500人を我々は目標としておりますが、これの着実な確保といったことを進めていきたいと思っております。
それから、2番目が、そういった審査能力を最大限効率的に活用するために、先行技術調査の民間外注、アウトソーシングの規模を拡大していこうというふうに考えております。
それから、あわせまして、近年各国特許庁でもワークロードが非常に問題になっておる中で、グローバルに出願されている出願について、お互いに審査を協力していこうということで、外国特許庁との協力というのを進めていこうと思っております。現実に、現在、三極特許庁間では、お互いの審査状況がリアルタイムで見えるようなシステムを既に構築して利用しているところでございます。
それから、2番目でございますけれども、産業界による取り組み、これはあくまで要請事項ではありますけれども、この点につきましてはまず世界視野での出願戦略ということで、これはグローバル出願3割ということを挙げさせていただいています。
これは、具体的には、我が国の出願構造は欧米と比べまして、国内偏重でございます。ちなみに、2002年の数値でいきますと、我が国に出願されている内国人の出願で、海外にも出願されている割合は18%、アメリカでは44%、欧州では60%強というような数値になっております。これによりまして、当然特許制度というのは公開が前提でございますので、我が国にしか出願されていないものについては海外では保護されないわけですので、技術情報の垂れ流しというような懸念もあるわけでございます。
それから、2番目、出願内容の事前チェックの徹底ということで、「黒星2割カット」と書いておりますが、これにつきましては、現在、特許審査を進めて、結果として特許になるもの、拒絶になるもの、ほぼ半々でございます。欧米の特許率というのはもう少し高いわけでございますが、より審査のリソースをより特許になるような重要な発明に注力するために、個々の審査請求についての事前チェックを徹底していただいて、特許率を2割ぐらい上がるような審査請求の厳選をお願いしたいということでございます。
それから、そういった知財戦略について、一元的に管理をするような社内責任者というのを設置していただいたらどうかということでございます。
これらにつきましては、当然ながら特許審査の迅速化に非常に有効であるわけでございますけれども、これらは企業自身、技術情報の垂れ流しの防止、あるいは研究開発投資の重複とかむだの回避、こういったことにも資するわけでございまして、企業の真の知財戦略を改めてご検討いただければということでご提案をさせていただいているところでございます。
それから、このグローバル出願3割、2割、それから黒星2割カットといった、こういった数値目標でございますけれども、当然ながら各業界あるいは企業によって、その業態も変わればこういった数値も変わるわけでございますので、それぞれ業種に応じた目標を設定をしていただければと思っております。この数値自体は、一律の強制ではございません。
それから、4点目でございますけれども、直近の、先ほどご紹介した知的財産推進計画の平成20年・30月未満にとどめるということでございますが、平成20年に審査する案件というのは、ほとんど既に出願されている案件、先ほどご紹介した80万件の滞貨でございます。この中をもう一度見直しをいただいて、既に事業性のなくなっているものとか、あるいは特許性がもう低いとわかるものについては、取り下げをしていただきたいと、こういった協力要請を進めていきたいと思っております。あわせまして、こういった企業の知財戦略に、弁理士の方々も有効な助言をしていただければというふうに考えております。
それから、3ポツでございますけれども、こういった産業界あるいは弁理士会の皆さんに要請をするわけでございますが、それについての我々としてもさまざまな支援を進めていきたいというふうに考えておりまして、企業の方々に先行技術調査を徹底していただくというために、民間の、これは具体的には企業、産業界の皆さんでございますけれども、先行技術調査の能力向上のためのさまざまな研修とか、それから特許庁で提供しております特許電子図書館の機能向上、こういったものを進めていきたいというふうに考えております。
それから、先ほどご紹介した、既に審査請求されている案件の見直しについて、インセンティブが働くように、現在、審査請求済みのものを取り下げると半額を返還する制度がございますが、この返還の割合をふやすといったような、返還制度の利用の拡充を図るべく、今施策を検討しているところでございます。
それから、主要企業・代理人の特許取得状況といったものを情報提供することによって、より的確な特許管理に向けてのインセンティブが働くようなことを今後進めていきたいと思っておりますが、これについては関係者とも今後調整を進めていきたいと思っております。
それから、当面は審査迅速化を進める中でも、しばらくは審査期間が長期化する状況でございますので、中小企業についてはさまざまな支援策を進めていきたいと思っております。(1)の中小企業向けの特例措置でございますが、現在既に中小企業については早期審査の対象にするなり、それから先行技術調査については助成制度を設けているわけでございますが、これについて必ずしも利用が活発ではないということでございますので、こういったものについてのPRを一層強化をしていきたいと思っております。
それから、その他具体的な支援策として、中小企業庁で来年度から実施をいたします「知財駆け込み寺」の設置、それからあと特許庁でもさまざまな相談会を実施しておりますが、これについても倍増する等、中小企業向けの支援を進めていきたいと思っております。
こういったさまざまな取り組みでございますけれども、単に取り組みを進めていくということだけではなかなか実施が伴わないということもございますので、こういった取り組みの実行に当たって、フォローアップの期間として、仮称でございますが、特許審査迅速化推進協議会というようなものを設置をして、このメンバーとして産業界、あるいは中小企業関連団体、あるいは弁理士会の方々、それから経済産業省、特許庁のメンバーを構成員とした協議会を設けて、進捗等についてのフォローアップをしていきたいというふうに考えております。
私の方からの説明は以上でございます。

中山部会長

ありがとうございました。
ただいまの説明に関しまして、ご質問ございましたらお願いいたします。
どうぞ、齊藤委員。

齊藤委員

プリミティブな質問でございますが、この審査請求の期間を短縮したことは、早期権利化を図るということでございました。今お話を聞いていますと、短縮の前と比較しまして、審査件数があるいは多くなってしまった、あるいはもう少し言いかえますと質的にはさほどでもないものまで審査請求をしてくるようになったと。こういう面があるのかどうか。
その前は、審査請求の期間が我が国は特に長かったかと思いますが、我が国の場合企業のメンタリティーとして、その最終年、ぎりぎりのところで審査請求してくるという傾向がございましたから、権利化を早める意味で短くしたと。しかし、我が国の場合、企業のメンタリティーの関係で、じっくり吟味して審査請求するという面があるいはあったかもしれませんし、この辺いかがでございますか。トータルでお考えになっていかがでしょうか。

南調整課長

我々もこの行動計画を策定するに当たって、審査請求件数が非常に増加したことについて分析をいたしました。そうしますと、7年請求のころですと、出願されて最終的に審査請求される割合が56%でしたが、3年請求の制度下の最終請求率が66%、約10ポイント上がっております。
請求動向としては、7年請求時代、7年目が非常に多かったわけですが、当然ながら3年目の請求が多くなっています。ただ、まだ現在過渡期でございますので、請求の動向というのはちょっと不確定なところもございますが、恐らく3年目が一番高くなるのではないかと思っています。
今後、3年請求のものがこれから審査をされるわけですので、その中身がどうかというのは一概には言えないわけでございますけれども、過去の請求動向等を見た結果、恐らく最終請求率が上がってはいますけれども、結果的には特許率は今後低下していく可能性が非常に高いのではないかと思っています。
そういった関係で、7年請求で請求率が上がっているわけですが、企業におかれましては、請求前の先行技術調査をより進めていただくことによって、ある程度請求を絞り込むということは可能ではないかと思っています。
そういったことで、発明の早期権利化が進めば、これによって、冒頭でご紹介しました早期権利化が進むことによって、研究開発の効率化とかそういったことも図られるのではないかということで、ご協力を要請している次第でございます。

中山部会長

ほかにご質問がございましたら。
では、安田委員。

安田委員

ちょっと妙なことを申し上げるかもしれませんけれども、この資料全体としてみると、組織からの出願ということをどうするかというふうに読めるわけですね。
私、大学に来ていろいろ考えてみますと、決して組織だけの出願ではない。個人からの出願というのも非常に多くあるわけです。しかも、最近のITとかそういう状況から見ますと、若い人がいろいろいいことを考えているということは間違いない。ただし、大学院になりますと、いろいろ研究室のしがらみがあってなかなか出願できないとかいろいろあるのです。しかし、大学以下ですとそういう問題が全くありませんので、自由に出願できるはずなのですが、今度は知識とお金がないという問題になる。
私は、具体的支援策に、「知財駆け込み寺」とありますけれども、こういうところで若い人たちが出願をするのをうまく助けてもらうような、端的に言えば1回ぐらい無料で相談に乗ってもらえると。そういうようなことをもっともっとやっていただいて、かつ宣伝をしていただきたいというふうに思っています。
そういう格好にして、若い人が知財に対して関心を持つ仕組みというのをぜひつくっていただけると、知財立国としては10年ぐらいたつとかなりよくなるのではないかというふうに思っているのですけれども、ぜひそういうことをお考えいただきたいと思います。

南調整課長

若い人、全く個人で出願されるような方々に向けての無料相談会というのは、全国各地で展開をしておりますが、まだそういったもののPRが足りないようであれば、我々、一層PRをしていきたいと思っております。
それから、個人の方々についての支援策というのは、この中小企業と同様に、料金の減免制度とか、早期審査制度とか、そういったものも用意しておりますので、これについてもあわせてPRを進めたいと思っております。

中山部会長

それでは、作田さん。

庄山委員代理(作田)

日本経団連から代理出席しております作田でございます。
「特許審査の迅速化・効率化のための行動計画」につきましては、既に特許庁さんから経団連で詳細をご説明をいただきまして、意見交換をさせていただきましたとおりでございまして、業種とか会社の出願の規模によっていろいろな意見があるということは申し上げさせていただいたとおりでございます。
すなわち、行動計画に示されているような画一的な施策ないし特許管理行動計画の策定並びに、これ等の公表等につきましては、相当意見が異なっております。
産業界といたしましては、この80万件の未処理案件の解消のためには、もっと具体的にできることを官民挙げてやっていくことは吝かではございません。例えば審査促進のための審査協力、あるいは出願前ないしは審査請求前の調査の強化等は、会社によってできる範囲は異なりますが、個別具体的に協力ないし努力をさせていただきたいと思います。
中期的には出願の構造改革が必要であることは、私もよく理解できます。いろいろな意見がある中で、もう少し経団連の中で議論をさせていただきまして、提言をさせていただきたいと考えております。

南調整課長

最初におっしゃられた、各業種あるいは企業によって状況が異なるということは、私も説明の中で申し上げたとおり、我々も認識しておりますので、今後もそれぞれの企業あるいは業界ごとにいろいろご相談させていただきたいと思います。
それから、今後のこの取り組みですけれども、これは我々だけでは達成できないわけで、官民挙げて協力しながら進めていきたいと思いますので、引き続きご相談をさせていただきながらやっていきたいと思います。

中山部会長

では、谷委員。

佐藤委員代理(谷)

弁理士会としましても、やはりこの80万件という審査待ちの件数は非常に問題であると思いますし、我々としてもできるだけ協力しながら滞貨を減らすようにやっていきたいと思っております。ですから、協議会にも出席して提案をさせていただきたいと思っております。
基本的に、弁理士は特許をいかにとるかが仕事でありまして、とれるかとれないかぎりぎりのところで頑張って特許にする、これが一つの大きい仕事であるわけですから、ばさっと全部審査請求後に取り下げなどということではなく、個別に必要な特許や、戦略的に必要な特許はとれるようにやっていきたいと思っております。
ただ、審査を迅速に行うためのいろいろな方策、例えば一括審査であるとか、面接を行うとか、拒絶に対してなるべく早く応答するとか、個別に考えることもありますが、その辺ではぜひ協力していきたいと思っております。よろしくお願いします。

中山部会長

どうぞ、中西委員。

中西委員

この中で、重複研究、要するに研究してそれの成果がこの知的財産権というところであらわれてくるわけですね。だから、先行的にやはり3年なり5年なりじっくりやっていくわけです。我々研究開発企業からすると、やはり一番大事な先行の技術調査というところを、もう少し機能また質の面で従来より拡大していくというようなところが、非常に我々としては重複もなくなれば、それから出願件数も質のいいもので件数も少なくなる。いろいろな面でメリットがあると思うのです。
だから、合理化に向けて、この先行の技術調査能力の拡大がベースになるのではないかと。ぜひその辺、ご考慮をいただきたいと思います。

中山部会長

ありがとうございます。
ほかに。
どうぞ、長岡委員。

長岡委員

長岡です。
質問です。先ほど特許審査効率化目標では、請求項ベースということでやっていらっしゃるのですけれども、確かに一つ当たりの発明の請求項の数が90年代の初頭から現在3倍ぐらいになっており、特にアメリカ等の状況を見ると、これがかなり今後も拡大していくということが考えられると思います。審査にかかる請求項当たりのコストが2.2万円ということになっているのですが、料金の改定をしたわけですが、請求項当たりの審査料金と実際のコストとの関係はどうなっているのでしょうか。もし非常に大きな差がありますと、請求項数がどんどん今後ふえていくことで、特許件数はふえなくても、やはり審査請求への実質的な負担は非常に大きくなるということが懸念されると思います。それはいかがでしょうか。

南調整課長

今のご質問のような詳細な分析はしておりませんけれども、一昨年の料金改定をさせていただいた際に、我々庁内に監査法人を入れて、実費を調査をしております。そのときのでいくと、大体出願1件当たり20万円から、今後30万円ぐらいまでになるだろうというところで、料金改定はその下限の20万円と。1件当たりの審査請求ですから平均請求項で大体20万円というふうに設定をさせていただいたわけでございます。
そういった中で、確かに今後も請求項がどんどん上がっていくことによって、むしろ1件当たりの請求料金はだんだん割安になっていく可能性はあるかと思いますけれども、まだ大体年間1項までは上昇率はそれほどないので、今のペースで行けばそれほど料金というのが問題になることはないのではないかと思っていますが、そこはご指摘はありがたく、我々も今後注視をしていきたいと思います。

中山部会長

ほかに何か。
それでは、長官、どうぞ。

中嶋長官

この部会は、そうしょっちゅうやっている部会でもないものですから、せっかくの会ですからちょっと私の方から、ご報告がてら補足させていただきたいのですが……。
大きく言うと2つあって、今の行動計画というのは、基本的にはまず政府、特に実際の担当の特許庁として、できるだけのことをやって審査を早期化というか効率化していこうというのが基本でございます。
もう一つは、この際に産業界とご一緒に、企業の真の知的財産戦略を考えたいということもあって、それで全体として大臣をヘッドにする経済産業省としての本部という形になったのです。
まず、その第1点目の方なのですが、実は日米欧の特許庁の共通の課題として、滞貨を減らしていくとか、あるいは審査を迅速化していくというのが今ございます。これが10数年前ですと、専ら日本の特許庁が遅いんじゃないかといったようなふうにとられた時期もあったのですが、今は日米欧共通の課題になっておりまして、ちなみにこの日米欧の三極だけで、年間100万件ぐらい。世界全体が約130万件ぐらいですから、世界全体の8割強、85%ぐらいでしょうか、がこの日米欧だと。
やはり、それぞれみんな20カ月以上待ち時間があって、日本は実際始まりますと6カ月で審査を終わります。アメリカの場合は審査が始まってからたしか8カ月ぐらい、ヨーロッパは20カ月ぐらい待ってさらに審査の時間が1年半以上かかるとか、ばらつきがありますけれども、どうやったらその三極で協力し合ってこれを、ロードを減らしながら、結果として出願人の方にも早くその権利をとっていただくかということを今考えておるわけです。
例えば、その一環として、お互いに日米欧の中で出願し合っているのが約20万件あるのです。ですから、その20万件について全部それぞれの特許庁で一からサーチをして審査するのは、余りにもロードがダブっていますから、それはまず最初に受けた第1庁の保護のサーチ結果とか審査結果を利用して、第2庁で優先的早期に審査をしてもらおうと。こういう仕組みをまずとりあえず今年日米間で近々にスタートをします。
ただ、この前提は、双方の特許庁からちゃんと利用し合えるような結果が出てくることが前提ですから、アメリカの方からどんどん審査の結果が出てくるけれども、日本の特許庁からは全然審査の結果が遅くて出てこないというのでは、これは一方通行になってしまいますから。
そういう意味で、海外の特許庁との協力関係ということが、これからますます日米欧に限らず、アジアとの関係でも出てくると思うのです。ちなみに韓国とも、ちょっと来年にスタートがずれ込むかもしれませんけれども、そういった審査結果の相互利用のプロジェクトを始めていこうというのがございます。
それで、実はそういう中にあって、日本の特許庁というのは今まで世界の中では非常に効率的なパフォーマンスが出ております。これはご案内の方についてはくどくなるかもしれませんけれども、今の特許庁の審査官、日本は約1,300余人おりますけれども、アメリカですとこれが3,600人とか、欧州特許庁もたしか3,300人でございます。
ただ、1人当たりの年間処理件数にすると、日本は200件強、アメリカが約80件、ヨーロッパが四、五十件ですから、これだけ見るとヨーロッパとかアメリカの2倍から四、五倍ぐらいの件数を処理していますと。
ただ、これにはもちろん理由がありまして、大きく言うと2つ。一つはサーチをアウトソーシングしているわけですね。これは日米欧の中では日本だけであります。日本は、今、3つの機関に先行技術のアウトソースをお願いしておりまして、この民間のサーチャーの方がやはり1,300人ぐらいいらっしゃるのです。そういう意味では、今はやりの言葉で言えば、民でできるものは民ということでございまして、最終的な審査とか審判、これはもう各国どこでも政府が公務員のステータスで責任を持ってやっているわけですけれども、先行技術のサーチのような民間の能力のあるところにお願いできるところは、日本は率先してお願いをしておると。
今のところ欧米は、それぞれの審査官の数自体をひたすらふやしているのですけれども、さすがのアメリカも今年あたりから、民間のサーチについて試行的にやってみようというようなことを今考えているようでございます。
もう一つの背景というのは、もう20数年やってきましたペーパーレス計画なのです。いわゆるオンライン出願。これも日本は今特許について言うと97%オンライン出願でして、アメリカは驚くなかれ1.5%と。ヨーロッパもたしか3割ぐらいでありまして。これは実は、アメリカもオンライン出願というのを過去にトライしたのですけれども、失敗したのですね。結果としてアウトソースとかオンライン出願ということもあって、日本の特許庁のパフォーマンスがよくなっているということであります。
ただ、そういう中にあっても、やはり世界一の出願大国なものですから、さらに今の審査請求のうねりと言いますか、これにどう対応していくかということについて、先ほどご説明した行動計画をつくったということであります。
もともと審査請求の期間を7年から3年にしたというのも、少しでも国際的にも権利関係を安定化するとか、あるいは世界の大きな流れとか、さっき申し上げた国際間の協力関係ということもあるのですけれども、そういう中で、ある程度当然想定はされておりましたけれども、この際さらに任期付審査官とかアウトソースを一層進めるとかいうことを徹底してやろうというのが一つでございます。
ちなみに、またくどくあれですけれども、昨年の末にかけて、政府の中で特別会計の見直しという議論がありまして、一番有名なのは道路特会とか雇用保険特会とかいうものでございますけれども、殊に特許も、出願人の方からいただいた審査の手数料等を区分経理をして毎年度末繰り越してやっておりますので、その関係で見直しの議論がございました。
その結論として、やはりこれはきちんと区分経理をしてやっていくのが適当であると。ただし、効率化の目標をつくってやっていくべきだという指摘がございました。そういう指摘もございましたので、先ほどご説明した、中期的な数値的な目標もこの際つくってやっていこうということになったわけでございます。
それから、もう一つの点でございますけれども、先ほどからちょっとご議論になっていた、民間での例えば特許の歩どまり率といいましょうか、あるいはグローバル出願率の向上という点なのですが、この点は今私ども経済産業省として新経済成長戦略という、要するに今、世の中構造改革ということを盛んに言っているけれども、その結果として、これからどういった成長のありようを目指していくのかという議論を、この同じ産業構造審議会の別の部会でご議論をいただいています。
そういう中でもちろんこの知的財産ということも位置づけられるのですが、恐らく10数年前の、世の中に初めて知的財産とか知的財産政策というのが議論されたときは、とにかく少しでもそういうことを量的に一生懸命やっていくという意識があったと思いますが、最近の例えば中国とかいろいろな様子を見ますと、実はきょうも中国の調査団がこの建物の中に来ていまして、日本の知的財産推進計画をじっくり、AからZまで徹底的に勉強して、それを参考にして、中国としての知的財産推進計画を今年中につくろうとされておりますけれども、いずれ中国も自国民の特許出願が爆発的にふえてくると思うのです。
そういう中にあって、本当にどうやったら日本の企業というか産業が、知的財産で国内で持続的なイノベーションを続けていくかと――これはもちろん大学とかも含めてでございますけれども――というときに、多分特許でとった方がいいもの、特許をとるからにはちゃんと、それが国際的に競争する分野であれば、強い特許をとっておいた方がいいもの。あるいは、特許というのは宿命としてというか、性格上必ず公表・公開されますから、むしろさっきございましたけれども、営業秘密として管理をしておいた方がいいものとか、あるいは先使用権という形でイビデンスをしっかり残しておいた方がいいものとか、いろいろな仕分けがあると思うのです。
ですから、これはもう企業の方にとっては釈迦に説法になってしまいますけれども、そういったそれぞれの業種とか企業の実態に応じて、どういうポートフォリオを組んでいくか。どういう形でいろいろな制度を利用していくかというのが、今のまさに21世紀の日本の企業なり産業の知的財産戦略だと思うのです。
そういう意味で、私どものところにもいろいろ特許関係の、あるいはそのほかのデータもあるものですから、そういうのをフィードバックしながら、この3割、2割というのは、日本全体のややシンボリックな数字になっているのですけれども、それぞれの業種ごとに、それぞれの企業ごとに、そういった真の意味での知的財産戦略を考えていく機会にしていただきたい。そのために私どももいろいろな情報を提供をしようと思っていますし、あるいは弁理士会の方にもそういう視点も含めてご協力をいただきたいというのが趣旨でございます。
ご理解をいただければと思います。ありがとうございました。

中山部会長

ありがとうございました。

最近の国際問題に対する取組について

中山部会長

それでは、次の議題に進みたいと思います。
最近の国際問題に対する取り組みについて、事務局から説明をお願いいたします。

小林国際課長

国際課長の小林と申します。私の方から、最近の国際問題に対する取り組みということでご説明をさせていただきます。資料9をごらんいただけますでしょうか。
資料9で、主に4つほどの問題につきまして、かいつまんでご説明をいたします。1番目は、世界特許システム構築に向けた動きでございます。2番目は、そのページの下の方に書いてございますが、2ポツとして対途上国政策。それから3番目でございますが、次のページ真ん中やや下でございますが、模倣品対策の問題。それから、4番目としまして、3ページ目でございますが、その他の知財関連問題に関する動向ということで、4つほどにくくりましてご説明をしたいと思います。
一番最初の、世界特許システムの構築ということでございますけれども、世界特許システムというきちんとした定義があるわけではないのですけれども、我々としては2つのエレメントが大事だと考えております。
一つは、サーチ結果、審査結果を各国の間で相互に利用していく。その先には相互承認ということがあるのかもしれませんけれども、そういった相互利用系の話。それが1ポツの(1)、(2)の話でございます。
それから、もう一つは、各国の特許法、知財法がそれぞれあるということを前提とした上で、それぞれの法制度運用というものをあわせていく、調和していく。いわゆるハーモ系の話。これが(3)、(4)でございます。
まず、(1)の特許審査ハイウェイでございますが、これは先ほど中嶋長官からも言及がありました話でございます。特許審査ハイウェイと言いますのは、一つの国で特許になった出願につきまして、その審査結果を相手国に提出するということによりまして、その相手国で簡易な手続で早期審査が受けられるようにするという構想でございまして、日本特許庁が提案をしているものでございます。
これにつきましては、まず、真っ先にやりましたのが昨年11月でございますが、アメリカとの間ではトライアルベースで開始するということで既に合意をしております。ヨーロッパ・EPOにつきましても、そのときは合意できなかったのですが、今年の三極会合、今年の11月になろうかと思いますが、そこでの合意を目指して議論しているところでございます。
また、これも言及がありましたが、韓国につきましても、昨年11月の日韓長官会合におきまして、このハイウェイ構想について合意をしております。恐らく来年の4月までには、韓国で所要の手当ができて開始できるようになろうかと思っております。
中国につきましては、まだまだ審査の運用というところで完全ではないので、直ちに特許審査ハイウェイに参加できるかどうかというのはあるのですけれども、中国もやはり大きな滞貨には困っている状況でございまして、将来的な参加に向けたロードマップというものをつくるという点では合意をしております。
その他、審査主義をとっておる主要国というのは、海外にもいっぱいあるわけですけれども、こういう国につきましても、いろいろな場を通じて働きかけをして、拡大ができるかどうかという可能性を検討していくというようなことをしております。
(2)に書いてございますのは、相互利用、相互承認に向けたもう一つの方策でございますけれども、国際的な法的枠組みというものを日本で提案しております。具体的には、自分の国への国内出願をもって外国にも出願されたものとみなすというのが1点。それから、審査の順番を決める国際分業のあり方をルール化するということでございますが、最初に自分の国で早期にサーチ、あるいは審査を行い、次いで第二国でその結果を利用できるような、審査のタイムフレームですね。こういったものを国際的に制度化できないかという提案でございます。
これにつきましても、昨年の11月の日米欧三極会合で日本より提案しまして、その後そのほかの主要国とも議論を進めているところでございます。
それから、3番目が、いわゆる実体調和の問題でございますけれども、かねてよりWIPOにおきまして、実体特許法条約(SPLT)というのが議論をされていたわけでございますが、後から申し上げますけれども、南北対立の激化等々によりまして、WIPOでの議論がなかなか進まないというような状況がございます。したがいまして、このSPLTの対象を、先行技術に関する4項目と言っておりますけれども、新規性ですとか進歩性ですとか、グレースピリオドですとか、そういった先行技術にまつわる、とりわけサーチ審査結果の相互利用の観点から重要な4項目ほどに絞りまして、先進国の間だけでまずは議論しようということになっております。
幸いにも、今年は日本がホスト国になっておりまして、3回ないしは4回の先進国会合が開かれますので、その中で議論をしていこうとしております。
そのハーモの流れとも合致すると思うのですけれども、今米国では特許法の改正案の審議が開始されております。その内容はこのハーモ条約で議論されていることとほぼ一致しておりますので、その方向で実現できるように、日本としてもあらゆる場をつかって働きかけをするということを考えております。
それから、途上国政策でございますが、これも先ほど長官より言及がございましたけれども、今までともするとステレオタイプな見方で、途上国は知財保護に消極的だというような見方があるわけでございますが、実は仔細に見ますと途上国も非常に変わっている。自分の国の経済発展のために、積極的に知財制度を使おうという方向に動いているという機運が見られます。
とりわけ中国につきましては、先ほど言及がありましたように、知財国家戦略をつくろうというふうに本気になって動いておりまして、これは共産党の指令にも書いてありますし、それから呉儀副総理をヘッドにした国を挙げた政府横断的なグループというものがつくられております。その流れで特許法等の改正も今検討をされております。
そういった機運が盛り上がっている中ですので、この好機をとらえまして、日本の産業界の要望がきちんとした形で通るような、そういった中国の制度運用になるように要請をしていくとともに、キャパシティビルディング等の協力というのもまた欠かせませんので、協力と要請というのを両輪にして進めていくということをしてございます。
そのほか、東南アジアも当然従来から重視しておるわけですが、とりわけ最近ではインドというのが無視できない非常に大きなマーケットでもあり、関心国でもあるようになってきているわけでございます。このインドにおきましても、実は特許庁が商工省の管轄に管轄換えされたということもございまして、今、インド自体の経済発展のために知財制度を活用するのだ、というふうな政府方針が既に決定をされているという報告もございます。ここもまた中国と同じようなことになるかもしれませんけれども、制度運用の整備が、日本の産業界にとっても有利な形になるように働きかけをしていくということでございます。
EPA交渉の場では、今まで途上国との間で経済連携協定をやっておるわけでございまして、もう既にシンガポール、マレーシアについては調印、大筋合意をしているのがフィリピン、タイ、それから交渉中の国としてインドネシアとかASEANというのがあるわけでございますが、こういったところを通じまして、知財の保護の確保、それから透明性の向上、模倣品・海賊版対策ということを5カ年交渉項目としていくということをしてございます。
あと、(3)の途上協力の着実な実施ということで、今まで96年から数えますと、もう2,000人を超える人材を受け入れて協力をしているという実績もございます。今後も途上国のニーズもさることながら、我が国産業界がどういう関心をその途上国において持っているかということも踏まえつつ、きめ細かに効率的な協力を実施していきたいと思っております。とりわけ、中国、インド、ASEAN諸国というのは重要になろうかと思います。
それから、日本の貢献という点で言いますと、(4)でございますが、日本の特許審査の結果を発信するということも重要でございまして、もう既にインフラは整っております。AIPNと呼ばれるシステムで、英語で日本の審査結果が見られるようなものがもう既にできております。これが23の国または機関でアクセスの登録がございます。こういったものを活用していきたいと考えております。
それから、模倣品対策でございますが、模倣品多発国政府にまず要請することが必要でございまして、これはもちろん二国間でというのがございますけれども、最近では日本とアメリカ、あるいは日本とEUというような形で、連携をしてその途上国に申し入れをしていくというようなこともやっております。
多国間の方で言いますと、昨年のAPEC貿易大臣会合では、模倣品・海賊版対策のモデルガイドラインが採択されております。そういった場を通じまして、申し入れを今後もしていくということでございます。
それから、(2)でございますが、官民連携の申し入れというのも重要でございまして、具体的には国際知的財産保護フォーラム、民間団体でございますが、こういうところと合同の、官民合同のミッションを、とりわけ中国に対して派遣をして、いろいろな模倣品対策の申し入れをしてございます。
具体的な成果も上がっておりまして、例えばですが、侵害の場合の刑事訴追の基準というのがありまして、ある一定額の被害額以上でないと刑事訴追を受け付けてくれないのですけれども、その基準を引き下げるというような成果も得られております。
それから、国内問題になるかもしれませんが、あるいは日系企業対策ということになるかもしれませんが、いろいろなマニュアルとか事例集等を現地の日系企業に周知する。あるいは、国内の消費者に対する普及啓発活動ということでキャンペーンをやっております。
それから、4ポツでございますが、最近世界的に話題になっていることを2つ掲げてございます。一つは、医薬品アクセスの問題です。これはメインにWTOの場で議論になっていたことでございます。背景にはエイズとか、最近で言いますと鳥インフルエンザというのもございますが、その対象医薬と言いますか薬ですが、それが普通は特許の対象になっているわけでございまして、特許があるので薬が高いと。薬が高いとだれも買えなくて、エイズの人が死んでしまうではないかと、こういうふうな途上国側のロジックの主張がかねてよりされていたわけでございます。
実態から見ますと、特許があるから薬が高いということは、必ずしも事実ではない部分がかなりあるのですけれども、そういった途上国側の懸念が非常に強かったということもあり、最初に行われましたのは、TRIPS協定上、国家緊急事態というのが強制実施権発動の要件になっているのですが、その解釈を明確化したということで、当然エイズで非常にひどい被害があるというのは、国家緊急事態に相当し得るのだという合意がされたというのが1点ございます。
ただ、それでは実はおさまりませんで、強制実施権を発動したとしても、そもそも自分の国に製造能力がなければ、薬を製造することもできないではないかという議論が次にございまして、その点につきましても、製造能力のある他国で強制実施権のもと製造した薬を、そのもともとの製造能力のない途上国に輸出をしてあげるということもまた、TRIPS上問題がないのだという合意が次にできております。
この2番目の合意につきましては、昨年の12月のWТОのTRIPS理事会におきましてTRIPS協定の改正、これはTRIPSができてから初めての改正でございますが、という形で合意がされております。
2番目の遺伝資源の問題につきましては、生物多様性条約との関係があるのですけれども、途上国は主にいろいろな植物やら微生物やらというものを非常にたくさん資源として持っている国なわけでございますが、そういった国々から生物とか微生物、植物等々を使った特許からの利益を、途上国にも配分すべきだというような議論がございます。
これにつきましても、実は先進国の主張と相容れない部分がございまして、南北対立ということになっておるわけでございます。それが実はWIPOの先ほど申し上げたハーモ条約の方の議論にまで波及をして、ある種のブロックといいますか、議論がストップしているような状況がございます。これにつきましても、必ずしもハーモ条約を進めるためというだけの目的ではないのですけれども、世界全体として途上国にも満足ができる、先進国にも満足ができるというふうな解を探るべく、WIPO、WТО、CBD等々の会合で対処をしているというところでございます。
以上でございます。

中山部会長

ただいまの説明につきまして、ご質問がございましたらお願いいたします。
よろしゅうございましょうか。
本日、予定されております議事は以上でございますけれども、本日の議論全体に通じて、あるいはまた知的財産政策全体に通じまして、何か特にご発言がございましたらお願いいたします。
何か、特別なご発言はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ちょうど時間となりましたので、本日の議論は以上で終了したいと思います。
以上をもちまして、産業構造審議会第7回知的財産政策部会を閉会といたします。
本日は、長時間のご審議ありがとうございました。

閉会

[更新日 2006年3月22日]

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