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産業構造審議会 第13回知的財産政策部会 議事録

産業構造審議会 第13回知的財産政策部会 議事録

  1. 日時:平成22年3月9日(火曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁 共用会議室
  3. 出席委員:
    野間口部会長、青山委員、大渕委員、片山委員、鎌田委員、竹中委員、筒井委員、長岡委員、中村委員、野坂委員、濱田委員、林委員、宮川委員、宮城委員、安田委員、山口委員、山本委員
  4. 議題:
    1. 知的財産政策の今後の方向性について
    2. 特許制度小委員会における主な検討事項について

開会

野間口部会長

皆さん、おはようございます。大変お忙しい中、産業構造審議会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
ただいまから産業構造審議会の第13回知的財産政策部会を開催いたします。

委員紹介

野間口部会長

それでは、最初に前回の部会以降、新たに本部会の委員になられた方々について事務局から紹介をお願いいたします。

鎌田審議室長

制度改正審議室長の鎌田でございます。よろしくお願いします。
それでは、交代されました委員の方々を御紹介いたします。
片山英二委員。

片山委員

弁護士の片山でございます。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

大渕哲也委員。

大渕委員

東京大学の大渕でございます。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

鎌田薫委員。

鎌田委員

早稲田大学の鎌田でございます。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

本日は所用により御欠席されておられますが、日本労働組合総連合会総合政策局経済政策局長の川島千裕委員に新たに委員に御就任いただいております。
次に竹中登一委員。

竹中委員

日本知的財産協会並びにアステラス製薬株式会社の竹中でございます。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

筒井大和委員。

筒井委員

日本弁理士会の筒井でございます。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

野坂雅一委員。

野坂委員

読売新聞社の野坂です。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

濵田晴夫委員。

濵田委員

東京電機大学並びにベンチャーをやっております濵田と申します。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

林道晴委員。

林委員

最高裁判所行政局長の林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

宮城勉委員。

宮城委員

日本商工会議所の宮城でございます。よろしくお願いいたします。

鎌田審議室長

以上の各氏に新たに委員となっていただいております。
なお、日本労働組合総連合会の川島委員、先ほど御紹介した方でございます。それから一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の土肥委員、このお二方が本日、所用のため御欠席されております。
また、一橋大学イノベーション研究センター教授の長岡委員は本日、所用のため少し遅れて到着される御予定でございます。
以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございました。

細野特許庁長官挨拶

野間口部会長

それでは、最初に知的財産政策部会の開催に当たりまして、細野特許庁長官より挨拶をお願いいたします。

細野特許庁長官

皆様、おはようございます。特許庁の細野でございます。
お忙しい中、朝早くから御参集賜りまして、ありがとうございます。13回目ということでございますが、これは通し番号でございますので、新しいテーマに基づく検討フォーラムとしては事実上の第1回目だということでございますけれども、この部会のために労を執っていただくことを改めてお礼を申し上げたいと思います。
御案内のとおりでございますが、今年は特許庁の前身ができまして、いわゆる特許制度ができましてから125周年ということで大変エポックメイキングな年でございます。これまで日本がたどってきた道のりにつきましては、改めて私が申し上げるまでもないわけでございますけれども、やはり世界のしかるべき地位を占める経済大国になったその最大の要因はひとえに日本の技術力、イノベーションにあったというところについては異論のないところだと思います。その技術力をインフラとして支えてきたのが知的財産制度だということでございます。
今日におきましても、人口が減るとか、あるいは途上国が追い上げてくるとか、諸々の構造的な課題が我々の前にあるわけでございますけれども、引き続き、新しい持続的な成長を志向していくという中においてイノベーションの役割は決して少なくないものでございます。そのインフラとしての知的財産制度についても不断の見直しをしていかなければいけないというふうに思っております。
折、たまたま現在の状況でございますが、経済状況は非常によろしくないわけでございますけれども、今申し上げたような観点から、政府は新しい経済成長戦略をつくるという動きを始めておりますし、また当経済産業省においても経済構造ビジョン、いわゆる産構ビジョンというものについても新たな装いでこれを模索するという動きが始まっております。こういった中でも知財というものは非常に大きなウエートを持って注目もされ、また期待もされているところでございます。これから皆様方の活発な御議論によってオープン・イノベーションの進展とかグローバル化の進展の中でどういうふうにしたら日本の知財制度がこれからの日本経済、あるいは日本の社会にとって有用なものになっていくかということについて御検討いただけるのは大変ありがたいと思っております。
今日はその新しいディメンジョンでの検討の再スタートということで、後ほど事務局のほうから現在の知財をめぐる状況、取り組み、あるいは課題について御報告を申し上げて皆様の御議論の参考にしていただければと思います。もちろん私どもが御紹介するものがすべてではございません。いろいろな角度からいろいろな御意見を出していただきまして、冒頭申し上げましたような方向でぜひ実のある御議論を、あるいは御意見を賜ればというふうに思います。
知財につきましては、そういうことで日本、あるいは世界にとっても大変重要なインフラだと思っております。ぜひとも活発かつ忌憚のない御意見を賜りますよう改めてお願いを申し上げまして、冒頭の御挨拶にさせていただきます。ありがとうございました。

野間口部会長

ありがとうございました。
本日は先ほど長官の話にもありましたように、事務局のほうから知的財産政策の今後の方向性、それから特許制度小委員会における主な検討事項につきまして報告してもらう予定であります。
それでは、事務局よりまず配付資料の確認をお願いいたします。

鎌田審議室長

それでは、資料の確認をさせていただきます。
本日の配付資料は座席表、議事次第と配付資料一覧が一緒になった一枚紙、委員名簿、資料1「知的財産政策の今後の方向性について」、資料2「特許制度小委員会における主な検討事項について」、資料3「知的財産政策部会のスケジュールについて」、それから参考資料といたしまして、参考資料1、本日御欠席の川島委員から御提出いただいた資料、参考資料2「特許制度に関する論点整理について」ということで、特許庁の特許制度研究会の報告書をお配りしております。
以上、不足等はございませんでしょうか。

野間口部会長

よろしいでしょうか。

知的財産政策の今後の方向性について

野間口部会長

それでは、早速でございますけれども、議題に入りたいと思います。
最初に「知的財産政策の今後の方向性について」、事務局より説明をお願いします。

広実総務課長

総務課長の広実でございます。ただいまから御説明をさせていただきます。
「知的財産政策の今後の方向性について」、資料1でございます。中身に入る前にこの検討の位置づけを簡単に御説明したいと思います。
先ほどの長官の説明にもございましたが、資料3を見ていただければありがたいのですけれども、政府全体で6月ごろをめどに新成長戦略の取りまとめということを今、行っております。それと並行していろいろな政策課題についての検討が行われ、この成長戦略に反映させる作業が行われております。私ども知的財産政策においても本日から5月ぐらいまでに御議論いただいて、本分野の政策課題、今後の具体策について反映をさせたいというふうに考えております。
続きまして、資料1の中身のほうに入らせていただきます。まず知的財産政策をめぐる環境変化、検討の視点ということについて御説明した上、今後の方向性、総論及び各論について御説明したいと思います。
まず知財政策をめぐる環境変化、3ページ目から始まりますが、検討の視点の1としてオープン・イノベーションの進展、こういう現象が起きております。数年前からすでにこの言葉は人口に膾炙しておりますが、製品のライフサイクルの短縮化、技術の高度化・細分化、あるいはITの進展ということによって知財を活用する機会が増加し、企業同士のアライアンスも増えています。そういう意味でオープン・イノベーションの重要性が高まっております。経済のグローバル化の進展、市場ニーズの変化、これに応じて知財の果たすべき役割というものもより重要性が高まり、ここの中程にありますように、知識・技術の流通を円滑化するためのインフラとしての役割が求められております。今後の視点として、さらに知財制度の利便性を高める、予見性を向上させる、さらに取引コスト等のコストを削減していく、こういったことが強く求められているのではないかということでございます。
2つ目の視点でございますが、4ページになります。企業の海外展開の活発化、グローバル化の進展ということでございます。先進国、今までの日欧米の企業だけでなく、アジア各国、新興国、さまざまなプレイヤーが参画したグローバル競争が激化しております。日本人、日本企業の特許の出願先も欧米のみならず、中国、韓国、それ以外への出願が大きく増加しております。我が国企業も国内マーケットだけではなくて、海外マーケットを取り込んでいかないといけない、それを円滑にするためにもそれをサポートする知財制度の幅広いハーモナイゼーションというものが求められているというのが第2の視点でございます。
第3の視点でございますが、これはリーマンショック以降の経済危機の影響、知的財産もこの影響から免れておりません。これは10月から9月という単位で各1年間の数字を追ったグラフを下につけております。出願数で言えば、2007年10月期と2008年10月期を比べると約10%出願が減少しております。審査請求、これは7年から3年に変更されておりますが、3年分だけの比較ということなのですけれども、これも約11%の減少というのが起こっておりますし、審査請求前の出願取り下げというのも2倍に増えている、こういう状況でございます。企業においてもコスト削減の動きの中、特許出願も厳選化が進んでおり、知財制度もコストに見合った利便性の高いものが求められるという点でございます。
6ページ、検討の視点の4番目でございますが、イノベーションの裾野がどんどん拡大しているという点でございます。オープン・イノベーションの下でプレイヤーが増えていく、そのプレイヤーの中には中小企業、大学、こういったプレイヤーも含めた知的財産の総動員が必要となってきております。我が国の中小企業の重要性は言うまでもありませんが、ポテンシャルとしてはまだまだ十分知財を活用するポテンシャルがある、この左側のグラフにもあらわれております。この知財制度を中小企業、大学等に一層利用しやすいものにする、そういう意味でイノベーションの裾野の拡大を促進していくという視点でございます。
以上が検討の視点でございます。
続きまして、知的財産政策の今後の方向性、現状と今後の方向性について御説明したいと思います。
8ページ目に全体のイメージというものが書いております。イノベーションの促進に向けて知財制度についても不断の見直しが不可欠であります。課題の1つということでございますが、今まで保護というものはプロパテント政策の中で累次にわたり法改正を行うなど進めてきたわけですが、やはり取っただけでは権利は意味がない、活用をさらに促進していくというのが課題の1つでございます。それから、先ほどの経済活動のグローバル化に対応して知財制度自身も国際的な制度調和というものが今まで以上に強く求められてきているということでございます。3つ目として、中小企業、大学等幅広いユーザーに使っていただける、利便性が向上できる制度であるべきだという課題でございます。それぞれの課題について政策面の取り組み、あるいは法制上の課題というものがこの下の部分に記載されております。一番最後の4番目として、特許料金の見直し、これについてもやはり不断の見直しが必要であり、今回の課題ということで記載させていただいております。
それでは、各論について詳しく御説明したいと思います。
10ページ「特許活用の現状」でございます。イノベーションのオープン化で流通の利便性・透明性は一層重要になってきているという現状でございますが、今、足下はどうなっているかといいますと、日本国内での特許の数、すでに存在している特許の数というのは約110万ございます。2008年度の調査によりますと、右側のグラフを見ていただければわかりますが、その中で自社で実施、あるいは他者にライセンス許諾しているものが約5割、防衛目的、防護目的で持っているものが3割、未利用部分が約2割、こういうことになっております。そういう意味で、こういう未利用特許をはじめとし、特許の活用を一層促進させていく、こういったことが重要な政策課題ということでございます。
各法制面、政策面の課題についてさらに見ていきますと、11ページ目に1つ目の課題の例として、いろいろな課題があるわけですが、ここでは重要なものを例として挙げさせていただいております。ライセンス制度における課題というものがございます。企業における事業再編、あるいは選択と集中、こういったものを背景に特許権の売買、移転というものも増加しております。これは下の左側の表を見ていただくとわかりますが、相続・合併といった一般承継を除いてもこれだけ特許の移転件数が増えてきています。さらに、イノベーションの変化によって1つの製品について多数の特許が存在し、多数のライセンス契約が締結されるというように、ライセンスの数も増えており、質も重要性が高まってきています。その例としてMPEG、DVDの例を真ん中の表に出させていただいております。動画の圧縮の規格でございますMPEGですが、これについても必須特許の数が800~1000、ライセンサーの数、ライセンシーの数も、ライセンサーがMPEG2であれば24社、ライセンシーは1100社ということで、これに伴ってライセンス契約自体も非常に増えてきています。現行法制度はこの右側の絵にありますように、ライセンス契約のライセンシーの立場というものが、特許が売買されると登録しないと対抗できない、こういう立場にあるのですが、これだけの数のものを1件、1件登録できるだろうか、こういう問題がかねてから指摘されております。こういったことで、やはりライセンス制度というもの自体、この法制度自体も実態に合うような形で変化させていく必要があるのではないか、こういった課題でございます。
12ページ目は紛争における課題、活用が増えるにつれて当然ながら利害関係者間の紛争も増える、紛争処理コストも増大する、アメリカあたりではパテントトロールの活動についても懸念がされてきております。リスクが増大しているということでございます。これはさまざまなコストがあるわけですが、1つの例として、例えば特許の有効、無効を争う場合に特許庁での無効審判、裁判所での侵害訴訟、こういう2つの場で争うことができ、ここの結果の整合性、あるいは不整合、あるいは決着した裁判のやり直し等々、コストアップ要因が今の制度の中にも潜在的に存在しております。こういう意味で紛争処理のコストを下げ、特許権の安定性、予見可能性をさらに向上させていく、このために何を行うべきか、こういった課題でございます。
13ページは特許活用の促進、特に流通面の促進を図っていこうということで、今でもこの真ん中にありますように、企業のベテラン人材を登用した特許流通アドバイザーという方々が地域の企業、中小企業の方々のライセンスの媒介として御活躍いただいております。開放特許のデータベース、あるいは流通アドバイザー制度、さらにはビジネス市の開催等、さまざまな制度の支援策をやっておるところですが、さらなる強化というものを考えていく必要はないのか、こういう点でございます。
続きまして、知財制度の国際的な制度調和の点でございます。
15ページをめくっていただければと思います。グローバル化に対応した知財保護システムの整備に向けた課題と取り組みということで、今まで同様、日米欧の先進国間での制度調和、円滑な特許取得の実現ということとともに、途上国もマーケットとして重要な位置を占めてきておりますので、途上国の知財保護の底上げということも考えていかなければならないということでございます。
16ページ以下に、今のハーモナイゼーションの現状というものを簡単にまとめております。16ページでございますが、制度調和の議論、WIPO(世界知的所有権機関)で制度調和の議論が行われておりますが、ここ数年、10年ぐらいですが、制度調和を図っていきたいという先進国と、従来の枠を越えて環境面の技術移転とか、あるいは遺伝子資源等の保護といった枠を越えた新たな観点から知財をとらえようとし、あるいは技術移転を求める、こういう途上国の対立が激化しておりまして、議論が停滞しております。ここ5年ぐらいは先進国間で制度調和を進めていこうではないかということで包括パッケージといいますか、先進国間の妥協案パッケージに沿って議論が進められております。ただ、まだまだ細かいところで欧州、あるいは日米と対立点がございます。
他方、アメリカのほうは国内で先願主義への移行を含む特許法の改革法案というものが議会に提出され、現在も「特許改革法案2009」というものが上院に提出、議論されているという段階でございます。
細かい具体的な先進国間の議論がある項目というのが17ページでございまして、先願主義、ヒルマードクトリン、グレースピリオド、先使用権等々について日米欧のそれぞれのスタンスがまだまだ開きがある、こういう状況でございます。そういう意味で、制度調和に向けてさらに前進していくために、今、何に重点が置かれているかというと、この一番下の枠囲いにあるように、審査の運用面、審査実務のお互いの信頼感、相互理解・ユーザーの利便性の向上、こういったもののために日本主導で審査運用面の調和・審査協力というものが一昨年あたりから積極的に行われているところでございます。
具体的には18ページにございますPPH(特許審査ハイウェイ)、このネットワークがどんどん拡大しております。これは一言で言えば、例えば日本で先に特許が認められると、その審査資料をアメリカに送れば、アメリカのほうは早期審査の対象にするとともに、日本の審査結果を利用して審査をするということで、時間的なコストというものが非常に削減される、ユーザーからも利便性が高まるというものでございます。
この運用面でのハーモナイズの促進を進めることで各国の信頼、相互理解を進めて制度面のハーモナイゼーションの起爆力、あるいは原動力にしていこうというのがこの制度のねらいでして、こういった努力というものを今後も続ける必要があるということでございます。
途上国における知財制度の整備の必要性というのが19ページでございます。ここにありますように、欧米だけではなく、アジア、BRICsを初めとした新興国への企業進出も進み、特許の出願というものも非常に増えてきております。中国、ブラジル、ロシア、インドにおける外国人の特許出願の各国の内訳で、中国は30数万件ぐらいの出願のうち、今9万件ぐらいが外国人からなのですが、中国では日本勢が多い状況です。ただ、ブラジル、ロシア、インド等では、中国に比べればまだまだ日本勢の状況は不十分であり、こういったアジア諸国、新興国における知財レベルの向上、こういったものが今後必要になってきております。
20ページにありますように、知財を支えるいろいろな柱があります。法令もそうですし、人的資源もそう、さらにはITというものもこういった知財制度を支えていくわけですが、今こういった基盤の各要素を各国で拡充する。それを先進国、日本が支えているわけですが、今後はアジアにおける支援をさらに強化、さらには新興国における支援を拡大ということが重要ではないかということでございます。先週末、広島で行われたAPECの専門家会合でもこの知財の人材育成機関のさらなる共同といったことで議論が進んできております。
続きまして、中小企業、大学といった幅広いユーザーを支援する知財制度の利便性向上という課題でございます。
22ページをごらんになっていただきたいと思います。中小企業、数で言えば420万社あります。全企業・法人数の99%で非常に役割はイノベーションの進展の上で役割は大きいものがあります。ただ、中小企業の出願比率というのはこの左の表にありますように10~12%と横ばいないし減少の状態にございます。知財の活用というのは経営にとって大変有効なのですが、さまざまな問題点、これはアンケート結果でございますが、人材の不足であるとか知財に関する資金の不足であるとか、特に外国出願における費用の不足であるとか、こういった悩みの声というものも出ております。
23ページにございますように、これまでも中小企業の支援というのは大変きめ細かく、特許庁、さらには独立行政法人のINPIT、さらには弁理士会の方々、商工会・商工会議所、こういう方々の努力で非常にきめ細かいセミナーの開催、無料相談の開催というものが制度としては整備し、支援を行ってきております。
しかし、24ページを見ていただきたいのですが、本当にこの支援を必要とされる方々にこういった支援施策がなかなか届きにくいというもどかしさというものが我々のほうからもございますし、ユーザーの方々の声を聞いても、なかなかやはり窓口がわからない、専門の敷居が高いといいますか、専門性が高くて相談しにくい、こういった声が多くございます。では、本当にニーズがないのかと申しますと、昨年12月に政府で知財に限らず経営問題から資金問題から税務までワンストップで中小企業の方々を対象にしたワンストップサービスというものを設けましたところ、全体で1200人ぐらいの方々が相談に来られたのですが、右側の枠囲いに入っておりますけれども、一番多かったのは資金繰り、さらには経営問題だったのですが、3番目に知財の問題の相談が多かった。新商品があるのだけれども、どうやって知財化したらいいのだろうか、あるいは海外とのライセンスをどうやったらいいだろうか、こういう相談が非常に多かったということで、改めて潜在的ニーズが非常に高いということでございます。そういう意味で、こういった方々の悩みにきめ細かく対応できるワンストップサービスに向けてどう充実強化していけばいいか、これが課題ということでございます。海外についても、やはり中小企業の方々も海外マーケットに出ざるを得ない、こういたったときに海外への出願費用というものが翻訳コスト等々さまざまなコストがかかりますが、こういったものについても支援の強化というものが求められているのではないかということでございます。
26ページは大学の状況でございまして、大学もTLOの創設、さらは大学自身の法人化の中で知的財産の体制整備というのは非常に進んできております。特許の出願数、これは26ページの日米比較を見ていただいても出願件数というものは非常に増えてきている。ただ、実施料を見ますと日本のほうは11.6億円、アメリカは20億ドルなので2000億円ぐらいになりますが、まだまだ開きがあり、形は整備されてきたのですが、この中身をさらに充実強化していく、このためにさまざまな支援強化が必要ではないか、こういう論点でございます。
最後がイノベーションの促進に向けた特許料金の見直しということでございます。
28ページ目を見ていただきますと、特許料金の現状ですが、受益者負担の原則のもと、必要な特許の審査等の業務に必要な支出を収支相償で行う、こういう設計でつくられております。右側の表にありますように、出願段階で1万5000円、平均的な請求項の数を前提にすると審査請求料で20万円、それから登録後、特許年金とも言われていますが、存続期間は20年ですので、1年から3年、4年から6年といったごとにそれぞれの料金というものが設定されております。近年の料金の変遷でございますが、業務の効率化等で余剰の発生が見込まれたときというのは料金の引き下げを行っております。これまでの例としては、98年に特許権の累進構造を標準化する、下の表で見ていただくと四角の青いラインが98年以前のラインだったのですが、非常に累進構造、特に特許料をかなり高く取っておりまして、19年目、20年目あたりは120万という料金だったのですが、これをかなり下げました。それから2年前ですが、2008年は特許料を全体で約12%の引き下げというものを行っております。その間、2003年には出願人間の費用負担のバランス改善のためということで、審査請求料を引き上げて特許料金を下げる、全体ではイーブン、こういった改正も行ってきております。
29ページに今の料金、中小企業・大学等に対する特許料金の減免制度といったものがございます。資力の乏しい赤字の法人、例えば研究開発型の中小企業、大学といったものに対して審査請求料、特許料の減免制度というものがそれぞれあり、利用実績も一番下の表に出ておりますように、20年度ですと合わせて1万件ぐらいの実績というものがございます。
30ページ、最後のページでございますが、他方、出願状況を見ますと、先ほど御説明したとおりかなり経済危機の影響を受けております。ユーザーの声もアンケートでいろいろ伺っているわけですが、こういう状況下では審査請求料を高く感じるといった声も出てきております。そういった意味で、我が国全体のイノベーションの促進に役立つ料金のあり方、こういったものについて受益者負担の原則を踏まえながら検討を行うべきではないかということでございます。やはり出願審査、特許時、それぞれ費用がかかっておりまして、それが料金のベースになるわけでございます。これからあまりにかけ離れると出願人間の公平性を損なうということもございますので、こういった原則を踏まえながらどういった検討が可能かということを考える必要があるのではないか。さらに、中小企業・大学の減免制度についても対象の拡大、あるいは手続の簡素化、こういったものを進め、幅広い利用を促進することでイノベーションの裾野の拡大を図るべきではないか、こういったことでございます。
以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に対しまして、委員の皆様より一言ずつ御意見、御質問をいただきたいと思います。
なお、質問に対する回答はすべての委員の方から御発言をいただいた後に、まとめて事務局よりお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
本日、御出席の皆さんの御意見をいただく前に、先ほど紹介がありました欠席の川島委員から事前に資料を提出していただいているということでありますので、まずそれを紹介していただきたいと思います。よろしくお願いします。

鎌田審議室長

それでは、御紹介させていただきます。お手元の参考資料1という紙でございます。
所用により第13回、本日の部会を欠席するため、今回のテーマに関して書面にて考えを述べさせていただきますということでございます。
1.知的財産政策部会における検討課題について
まず、持続的な成長を実現していくうえで「知的財産を国内外において適切に保護・活用していくことが重要である」との課題認識や、検討の視点として「特許の活用強化」、「中小企業等幅広いユーザーの利便性向上」、「国際的な制度調和」を挙げられたことについて賛同します。
現在、政府が検討を行っている「新成長戦略」においては、わが国の企業数の99.7%、常用雇用者数の66.2%を占める中小企業の経営基盤・競争力強化が重要課題の1つであると考えています。当部会において、中小企業の知的財産活動の促進・支援という観点を重視した検討が行われることを要望します。
2.検討の視点について
このような認識のもと、検討の視点について若干意見を述べます。
(1)「特許の活用強化」について
中小企業における特許の活用促進を図るうえで、特許情報活用支援アドバイザーや特許流通アドバイザーの果たす役割は大きく、これらのアドバイザーの人材確保・育成と適切な配置がなされることが重要であると考えます。
(2)「中小企業等幅広いユーザーの利便性向上」について
まず、産学官の連携を強化し、大学から中小企業への技術移転を円滑化させるために、技術移転機関(TLO)を拡充するとともに、コーディネーター役の人材の確保・育成を強化することが重要であると考えます。
また、ユーザーの利便性向上という観点からは、中小企業に対する様々な支援サービス(知的財産活用・保護、製品企画・開発、マーケティング、法務、財務、労務管理など)を身近な場所の1ヵ所で提供する(ワンストップサービスの提供)体制の確立が重要であると考えます。
さらに、金型をはじめとする中小企業の技術が、特許・実用新案・著作権等知的財産権の枠組みで保護されるよう法整備を進めるとともに、外国への特許出願に対する支援策を強化することが重要であると考えます。
(3)「国際的な制度調和」について
国際的な知的財産保護の観点からは、模倣品・海賊版の取締り・拡散防止を強化する必要があると考えます。そのため、政府が進めている国際的な連携の枠組み(模倣品・海賊版拡散防止条約構想)の早期実現が重要であると考えます。
以上でございます。

野間口部会長

それでは、御出席の皆さんから御意見を賜りたいと思いますが、全員の方から御意見を賜りたいと思いますので、お一人3分程度で発言をいただければと思います。
青山委員のほうからどうでしょうか。

青山委員

わかりました。私、社団法人の日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会、大変長い名前ですので、通称NACSとお呼びいただいております。そこの青山でございます。
私はこの知財に関しては全くの素人ということで大変稚拙な発言等々になるかと思うのですけれども、御容赦いただければというふうに思います。他の審議会でも、日本が技術と知財に勝っているにもかかわらず、なぜグローバル市場で勝てないのかというような議論が進められているというふうに思っておりますけれども、今回、まさにこの知財に関しての議論というのは、先ほど座長がおっしゃられましたけれども、非常に重要な審議であるというふうに理解しております。
そういう意味で少しだけ今回の資料について、本当に残念であるというふうに思うところをお話をさせていただきたいと思っております。
まず10ページの話ですが、保有総数が110万件に上ることについて、その50%程度しか積極利用がなされていない。30%というのが消極的活用で20%が未利用となっていますが、これについてはせっかくお取りになった方たちがなぜ活用をできないのかということをやはり後追いといいますか、ぜひトレースをしていただきたいと思います。それで積極的活用をぜひするようにというふうな別途のアドバイザー制度というようなものもおありになるようですから、そういうところでアドバイザーを活用するというふうな方向性も考えるというようなことで、ぜひ特許庁には御指導をいただきたいと思います。
片や、今回も中小企業の方たちはそういう知財を登録したいのだけれども、なかなかそれについての費用等々についていけないというようなことでの説明があり、先ほどワンストップサービスというようなことがありましたけれども、そこで御相談をされた方について、どういうような、ただ聞き置くだけであったのか、その先の進め方等々についても一歩進んだサゼスチョンをなさったのか、ここまで積極的にお問い合わせをいただいている中小企業の方たちに聞き置くだけではもったいない、それをどう生かしていくのかということまでやはり指導力を発揮すべきではないかという気がいたします。
日本の消費者を巡る状況はデフレ状況だ、というように言われていますけれども、やはり消費者というのは価格というよりも暮らしの安心、安全を最優先して、そしてきちんとした消費財といいますか、そういうものを手にしたいと思っております。ぜひ日本のイノベーションというものは非常に効果を発揮するのではないか、そういうところでの日本企業の差別化というのは絶対に図っていけるものだろうというふうに思っております。そのためにも知財というものはインフラ整備にすごく大きな活用ができるのではないかと思うので、ぜひ指導力を発揮していただきたいと思っています。
以上です。

野間口部会長

ありがとうございます。
では、大渕委員、お願いします。

大渕委員

時間も限られておりますのでポイントだけ申し上げますと、資料の8ページのところに非常にきれいにまとめていただいていまして、「目的」とあって、イノベーションは今後の我が国の成長・競争力の鍵等々ということで課題を3つに整理し、問題点と課題を多面的にかつバランスよく整理して、今後の方向性をきれいに示していただいているのではないかと考えておりまして、問題は、今後、このような課題の解決をどうやって実現していくのかという各論の方向になっていこうかと思います。そして、そこでは下にいろいろ法制面の主要な検討項目ということで難しい論点がたくさん並んでおりますけれども、先ほどのような課題を解決していくためには、このような法制面でのアプローチと、それから法制面以外のいろいろな運用面等々のものとをバランスよく組み合わせていくという形で、先ほどの目的ないし課題というものを解決していくということになっていくのではないかと思っております。
それで、この法制面のほうが一番最後の話になりますけれども、ここにも幾つか挙げていただいていますし、先ほども代表例について御説明いただきましたけれども、どれも難問ぞろいであります。もともと、特許制度なり知財制度というのは、本当に高度な精密機械のようなもので非常に複雑に組み上げられておりますし、法制度法体系全体のほとんどすべての主要法分野にも関わってくるような多面的なものでもありますから、精密機械のように1ヵ所少しさわるだけで予想もしないようなところに波及効果が及ぶというような大変複雑で難しいものですので、当該法律問題それ自体だけではなく、そこを1ヵ所動かしたら法制度全体にどういう波及効果があるかについても十分念頭に置いて考える必要もありますし、また、現状としてどういうニーズがあるか等々も総合的に考えながらアプローチして必要もあるといった性質の問題でございます。特に、先ほどのライセンスの登録対抗制度ではない、当然対抗制度などというものは、さらっと書くとこういうことなのですが、ローマ法以来のものとも言われている「売買は賃貸借を破る」という大原則との関係等々の非常に根深い問題と正面から対峙しなければならない問題でありますし、再審の関係も、まさしく民訴法の根幹にかかわるような性格の大変難しい問題でございます。これらの難問については、法制面からの視点と、それ以外の技術やビジネス等の実体からの視点とを総合的有機的に組み合わせながら、何とかしてこれを実態に即して適正妥当に解決していくように努力していく必要があるのではないかと考えております。

野間口部会長

ありがとうございました。
片山委員、お願いします。

片山委員

大渕先生のほうから理論的な話が出ましたので、私は特に中小企業の点について少し考えをお話ししたいと思います。私自身、弁護士でございますが、メーカーの知財部に勤めた経験がございまして、現在、事務所に弁理士さんもある程度おります。そこで中小企業、特にベンチャーの関係では最初は弁理士に対する出願依頼がきます。その後どういう場面で弁護士が関与するかというと、最初に来るのがやはり契約のときですね。共同開発契約をしたいとか、ライセンス契約をしたいというときに事務所の誰か弁護士を紹介してくれというような話が多くございます。中小企業といった場合に大学発で有名になりましたいわゆるベンチャーと、それから伝統的な中小企業の二通りがあろうかと思うのです。ベンチャーのほうは知財の意識、あるいは契約の重要性の意識というのはもともと強いものがありまして、そこを啓蒙とかという話では恐らくはないように思います。
アメリカにおりましたときに経験したことでございますが、企業を起こそうとする発明者、アントレプレナーがおりまして、それでお金を集めるためにまずMBAの方が一人参加します。それからしばらくして知財の弁護士、パテントアトーニーが入っていくといういわゆる三点セットが割と小さい規模のころからあるわけでございますね。これを日本でこんなふうになるのかならないのかということ、あるいはなるにはどうしたらいいかということなのです。お金の出し手、リスクマネーの出し手が少ないというのはこれは構造的な問題があるのはさしおいて、人材の面ですけれども、日本でも弁護士、弁理士はかなり人口が増加しております。なかなか就職も難しいというような、それはそれで難しい局面にあるわけですが、逆に言いますと、こういう不況下、増員下でこういうものに関与していきたいという人は出てくる可能性は結構あるのではないかという気がします。
ただ、少し長い目で見ますと、日本の人材の場合に単機能なのですね。つまり、出願はできるけれども、一般的な法律問題はだめだ、それからファイナンスと言われるとちょっとねというような感じがしますので、長い目で見るとこういう単機能の方を、自分でやられる必要はないと思うのですが、少なくとも内容はわかって、ベンチャーの経営者にこんなところは任せてくださいというふうに言える人が必要なのかなと、そういう方をどちらの方向からどういうふうに育てるかということが問題になるのではないかという気がします。
一方、伝統的な中小企業については23ページのところでうまくまとめられておりますが、さまざまな機関でさまざまな努力がこれまでなされてきたというのはそのとおりであろうと思います。その際に、経験上でワンストップをやると非常に人が集まるとかという御紹介もありましたが、実感からしてそのとおりだろうと思います。日弁連内には知財センターというところがあり、また、日弁連の支援を受けて弁護士知財ネットという組織もございまして、そこでも地方で相談会を設けたりしているわけですけれども、ワンストップで色々相談を受けるという需要はあるのだろうと思います。そういう地道な努力でもって1つ1つ徐々にニーズを汲み上げていって意識を高めていって、それに対応していくというような小さい努力の積み重ね以外には多分なかなか難しいのではなかろうかと思います。したがって、ワンストップでやられるということについては賛成ですし、先ほど御紹介申し上げた弁護士知財ネットも、あるいは日弁連の知財センターも何かをやられるときには恐らくは協力ができるのではないかと思います。
以上でございます。

野間口部会長

鎌田委員、お願いします。

鎌田委員

早稲田大学の鎌田でございます。私も民法学を専門にしておりますので、法制面に関連したことについてだけお話を申し上げます。
全体として知的財産の積極的な活用の中でライセンスをもっと積極的に活用していくべきであるというのは1つの方向性だと思いますけれども、とりわけ中小企業にとりましてはライセンス権をしっかり保護することによって、逆に譲渡、移転を無理強いされることなく知的財産権を活用していくということが可能になるだろうというふうに考えております。近時、事業譲渡とか、あるいは倒産というふうなことも増えてきておりますので、そういう中で実施権の安定強化というのが重要な課題になっているのだろうと思います。同時に、そのことは標準化が進んでいる中でのパテントトロールその他の対策という関係でもライセンス権の保護、強化というのが必要でありますけれども、先ほどの資料の中にありましたけれども、通常実施権の登録率というのは1%そこそこというふうな状況である。こういう中で安心してライセンスを活用していくようにする必要があるということで、実はこれも随分前からそういう主張がされてきたところでありますけれども、この間、包括登録の制度等、若干の歩みはありましたけれども、なかなかそれが実現されてこないということは先ほどの大渕委員のお話にもありましたように、やはり特許制度の活用の側からの必要性というのはありますけれども、伝統的な法律学といいますか、あるいは法律制度の壁というのはそう薄いものではないという中で幅広い理解を得ながら合理的な制度を作っていくことが必要だろうというふうに思っております。
それと同時に、不合理な差止請求について一定の制約を課するという必要性も高いわけでありまして、この問題も同じように長い法律学の伝統の中から言えば幅広い法律家たち、あるいは一般市民に合理的なものだというようなことで納得いただける制度をつくる、透明性のある制度をつくるというのはそう簡単なことではありませんけれども、必要性は極めて高いというように考えておりますので、今後の審議の中で少しでもそういった方向を実現できるために御協力することができればというように考えているところでございます。
以上です。

野間口部会長

ありがとうございます。
竹中委員、お願いします。

竹中委員

私は医薬品産業に勤めておりまして、この8ページは非常によく今回の方向性がまとめられていると思っております。その中で、私ども国際的な規制調和というところに非常に興味を持っておりまして、グローバリゼーションが進展してきていること、また市場も他の産業と同様にエマージング・カントリーズが重要となってきました。私どもの業界ではファーママージング・カントリーなどという言葉までできて注目をしているわけですが、そこに起こる問題点は人道主義の立場に立ちまして、特許の有効性を働かせないようにしようという南北問題、南の国の問題がございます。そうしますと、国際的な調和、すなわちハーモナイゼーションのとれた特許制度を推し進めていかなければいけない、これが非常に今後大事なことだと思っております。これを推し進めるに当たりまして、特許庁さんだけの仕事でいいのか、例えば私どもの業界でありますと、新薬企業・団体でつくっているIFPMAという国際団体を通じて交渉に当たっているわけですが、例えばWHOとかそういう健康機関は通常は医療だけの人道主義を貫きますので反対がいろいろ起こって来る。こういうところの調整に特許庁だけではなくて、例えば外務省あたりの参画が必要なのかどうかという点もまた御判断といいますか、御検討いただけたらと思っております。
それから、先ほど来、未利用の特許の促進の話題が出ておりますが、私どもの業界になりますと、中小企業というよりもバイオベンチャーと言われているところの方は、かえって普通の大手企業よりも特許についてはどん欲であり、かつ勉強しておりまして、そこでは未利用特許が問題となることはあまりないと思います。そして1つそういうときに起こってきていることは、大手企業、あるいはもちろんバイオベンチャーでも自分たちの発明したものが未利用であった場合、特許期間が切れてしまったら何の価値もなくなりますので、それらを交流する場所、これをネットでつくったり、あるいは訪問でフェイス・ツー・フェイスなり、あるいはバイオエクスポのようなところにブースを出したりする交換活動が非常に活発でありまして、バイオベンチャーの中にはリサーチ・アンド・ディベロップメントの「Re」を取って、サーチ・アンド・ディベロップメント、よそがやっている薬を探して、そしてそれを開発して商売にするのだと、こういうタイプの企業が出てまいりまして、日本からでも、もうすでに成功されている方がおります。中には大手企業は製品をここに出して、開発をしてもらってからバイバックする、こういうような形もとっております。
こういうようなシステムが他の中小企業の方々のほうにもどのように伝達するかという点になりますと、中小企業の方が、もし失礼なければ、あまり特許とかそういう勉強をしていないとすれば、これから卒業する修士の方、あるいは大学の理系の方に、やはり大学において特許教育を行うことで役に立つのではないかと。私、今、東大の薬学で3年生と、それから大学院でこうした授業をうちの特許担当者にお願いしてやっていただいておりますが、学生さんは非常に興味を持ってくれます。そしてまた特許庁のほうにも応募したいと言っているぐらいなのですが、そういう教育のところも今後やっていかないと、特に中小企業の方のところにはなかなか浸透しにくい問題ではないかと、このように感じております。
以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございました。
筒井委員、お願いします。

筒井委員

日本弁理士会の筒井でございます。私どもとしましては、今回、大枠の議論として4項目ほど提言させていただきたいと思っております。
1つ目は中小・ベンチャー企業の関係で、いわゆる中小及びベンチャー企業への支援ということでございますけれども、組織力とか人材、資金等に乏しい中小・ベンチャー企業にとりましては知的財産を有効活用して自社事業の優位性の確保とか、資金の調達を有利にするということが重要であるかと思いますので、そのような中小ベンチャー企業の知財活動の支援のために、以下のような支援が必要かというふうに考えます。
1番目は、国家、地方自治体等によるワンストップ知財サービスシステムの構築ということでございます。そのためには国家とか地方自治体等が中心となって産官学に加えて金融の「金」を入れて、産官学金の連絡協議会のような組織をつくる等によりまして、総合的な支援ができるようにすることが1点であります。次に第2点としましては、上記の1の点の実現に当たり、対象となる中小ベンチャー企業とか地域等の集中と選択を行い、当該地域資源を生かした地域産業経済の発展、いわゆる知的財産における地産地消といいますか、そういったことをはかり、それを起点として全国ないし世界展開を目指すということでございます。3番目は中小・ベンチャー企業の知財人材の育成をさらに支援することでございます。4番目は国家とか地方自治体等による知財助成策のさらなる充実と利用促進を図ること、以上の4点が重要かというふうに考えます。
続きまして、この資料の8ページにおける特許活用の促進の項目の中で、1つはいわゆるダブルトラックのテーマでございます。先ほど御説明がありましたように、特許法104条の3の規定により、現在の特許の無効の判断は特許庁の無効審判と裁判所の侵害訴訟とで判断するということになっているわけでございますけれども、技術を十分に理解できる知財人材で構成されている専門技術官庁であり、なおかつ進歩性等の判断に歴史的にも長く、しかも専門的に関与してきている特許庁の無効審判における判断がもっと尊重されるような制度を改めて検討することも必要ではないかというふうに考えます。
3番目は、同じ項目の中で差止請求権の制限というテーマでございます。現在、議論されております差止請求権の制限の議論というのはアメリカにおけるパテントトロール等の実情から提言されていると思いますが、この制度の導入には慎重であるべきではないかというふうに考えております。その理由の1つとしましては、日本では、アメリカのようなパテントトロールの現実は実際にほとんど起きているとは聞いていないというふうに思っております。それから2番目は、日本の法体系ではいわゆる差止請求と損害賠償というのはセットで動いていると思っておりますが、そこにアメリカ型の差止請求権の制限だけを導入いたしますと、メリットよりも特許権の弱体化等のデメリットのほうが大きく、その結果、知財立国政策ないし知財重視政策に反する結果となると、これが懸念されるということでございます。
4番目は、これはどの項目に入れるべきかあれなのですけれども、審査協力制度の検討ということを考えております。別な意味で言いますと、第三者ないしは公衆による審査協力制度の必要性ということであります。その理由といたしましては、1番目に特許権の安定性の向上、2番目が無効審判や侵害訴訟での無効の抗弁で争われるべき事案の厳選化です。3番目は特許成立過程における第三者の関与の機会をふやすということで、これはこの世界における知財人材の育成にも寄与するのではなかろうかというふうに考えております。
以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございました。
長岡委員。

長岡委員

一橋大学イノベーション研究センターの長岡です。私はイノベーションについて経済学的な観点から研究をしておりまして、その観点から3点だけ申し上げたいと思います。
今の筒井先生の御発言とも関係しますけれども、特許権の安定性を確保するためには的確な審査が非常に重要で、そのためにはやはり早い段階で第三者からも含めて情報提供がされるということが非常に重要だと思っております。情報提供制度というものがございまして、産業界の中にはどの程度機能しているかということにつき疑問を持っている方もいらっしゃるように聞いておりますけれども、昨年度の、知財研の研究プロジェクトで研究をする機会がありましたが、情報提供がされた特許はかなりの確度で拒絶される、それか不服審判になっても不服審判は覆されないことが分かりました。それから特許になればかなり重要な出願に情報提供されるということにも明確な証拠があり、情報提供制度審査資源をかなり重要な分野に重点化するという効果も持っているようです。したがって情報提供制度はこうした意味で有効な機能を果たし得ると思っておりまして、そういう観点から一層の制度の改善とかそういったことも考えられていいのではないか。
それからもう一つは異議申立と無効審判ということなのですけれども、異議申立が無効審判に統合されたためにかなり両方を合計した件数が減っているわけですが、その原因を分析してみますと匿名性と締め切り効果の問題が非常に重要である事を示唆しています。異議申立制度自体の復活が必要かどうかは議論が必要だと思いますけれども、紛争になってから先行文献が見つかるようではどうしようもなくて、特許庁に、早い段階で情報が提供されるようないろいろな制度を検討していくというのが非常に重要ではないかというふうに思います。それが第1点です。
2点目は料金のことでありますが、日米の発明者が誰かということを調べますと、やはり100人以下、スタートアップ企業を含めた中小企業の割合が日本と米国では非常に違うというところがありまして、そういう意味でスタートアップ企業とかそういったところに支援をしていくというのは非常に重要だというふうに思います。ただ、中小企業だからという理由だけで支援するというよりは、むしろスタートアップで非常に研究開発をたくさんやっているために現時点で資金制約に直面している企業などをもう少しきめ細かくターゲットにして、しかもそこは全額免除するとか、そういう形のほうがイノベーションを促進するという観点では政策効果が高いのではないかというふうに考えております。
最後は、審査請求料をどうするかということが問題提起をされているように思うのですけれども、現行の審査請求料を決めたときの審議会にも私は参加させていただいているのですが、そのときの基本的な考え方は審査の限界費用をカバーする料金を徴収するという考え方で、私はこれはかなり合理性があるというふうに思っております。また審査料負担があるために審査請求をしないような発明はかなりの部分で実際に審査をされれば拒絶される可能性が非常に強くて、審査の料金が審査に請求される特許の質をスクリーニングしているというところも非常に重要だと思っております。ですから今の特許庁の状況、つまり審査官のキャパシティにかなり制限があるということも考えますと、審査料金を値下げをするというのは必ずしも正しいアプローチではないように私は個人的には考えております。
以上であります。

野間口部会長

ありがとうございました。
中村委員、お願いします。

中村委員

三鷹光器社長の中村勝重です。中小企業の立場でお話ししたいと思います。
技術では勝っているのだけれども、事業では負けているということであります。22ページを見ても中小企業が99%ですけれど、本当に少ない。それはどうしてかというと、この事業は成功しますかということになるときに、中小企業はどこかに相談に行くわけですね。それはどうかといいますと、必ず融資を受けるために銀行と取引するわけです。この事業は成功すると思うので、融資してくださいと。ところが、今、銀行サイドのほうもこの特許の価値、そういった資産価値を全然認めていない。ここが一番の欠点だと思います。ですから、中小の社長も特許なんか取ったってしょうがないという思いがずっと続いております。それから、支援センター、何センター、商工会、そこのところに行くこともしない。ここが一番のことだと思います。事業をやるに当たって、これは後で訴えられないかとか色々なことを考えます。事業は戦略ですから、社長が戦略を立てないというのはおかしな話なので、その知的財産の知識はなくても事業を成功させるにはどうしたらいいか、これは絶対に特許は必要なのです。当社は特許を有利なところに使っております。細かな開発を先にしません。事業が優先なので、まず先に特許です。細かい開発などというのはその次で結構だと思うのです。これは業種にもよると思います、確認しなければいけない実験もありますから。ただ、中小の420万件というのはそんな開発などをするよりは、社長はこの事業をやりたいということは、もうやりたいことがわかっているわけです。それに対して銀行に融資に行くのだったら、銀行の窓口に、そういうことがあるなら支援センターがどこどこにありますよと、そこで教えてあげればいいと思うのですね。その辺のところは一切無料でやるべきだと私は思います。まだ書類も何も動いていないわけですから、社長は自分の考えが成功するか知りたい。三鷹光器は特許をどう使っているかというと、特許を有利な契約をするために使っている。それから、どうしますかというと、事業が優先なのです。技術開発はその次です。本来、技術で負けるなどということは、これは知恵が足りないと、私はそう思います。その一言だけです。

野間口部会長

ありがとうございました。
野坂委員、お願いします。

野坂委員

読売新聞の野坂です。よろしくお願いいたします。
すでに何人かの委員の方がおっしゃられていますけれども、私も基本的にこの知財政策の今後の方向性、賛同したいと思います。今、日本経済は大変行き詰まりの中にある。そういう中でこの壁をぶち破って日本が新たな成長をしていくためにはこのイノベーションは非常に重要である、そういう問題意識はまさにそのとおりだと思います。日本はもう何年も前から知財立国という目標を掲げてきました。私が見る限り、特許庁の御努力などにより、さまざまな制度改革を通じてかなりの成果を上げてきていると思います。ただ、現状を見ますとさらにその上のレベルに行かなければいけない、そのための知財政策が問われているということだと思います。
簡単に3点について申し述べたいと思います。まず第一はポテンシャルという問題であります。先ほどの事務当局の説明を伺っておりますと、審査請求が減っているとか、あるいは未利用があるとか、中小企業の方のいろいろな悩みのアンケートも出ておりました。要するに、今問われているのは日本はオールジャパンで何ができるかということでありますから、埋もれているもの、あるいは生かされていないもの、インセンティブを与えれば引き出せるもの、そういった潜在力をいかに出していくか、ここが問われているのだと思います。
第2点は国際的な制度調和の問題です。今、中国、あるいは韓国の経済力が非常に伸びてきて、日本経済、日本企業は大変苦労している分野もありますけれども、それゆえに国際調和は大事ですが、今一番大事なのはアジアの内需は日本の内需と日本政府は言っておりますように、市場をどうやって取っていくかということだと思うのですね。国際的な制度調和、これも大変重要なのですが、要するに市場を取る、日本企業が発展する、そのベースをどうやって作っていくかということが今問われているわけでありまして、そういった観点から新しい方向性を強く打ち出していかなければいけない。つまり、特許を取ったけれども、市場は取れなかった。先ほど何人かの先生がおっしゃっていますけれども、技術力はあるけれども、勝てないということとかなり似ている部分がありますけれども、特許を生かし、ライセンスビジネスをてこにして市場を取っていくのだ、そういうことが実現できるようなインフラが求められていると思います。
3点目は、これはすべての分野に共通しますけれども、8ページの課題、非常に大きなテーマが並んでいますが、要するに、では目先、この1年、2年で何をやるのか、そして3年、5年、10年と言うとちょっと長いですけれども、やや中長期的なタームで何をやるのか、そこを明確にしていただきたいと思うのです。そうしないと企業の方も事業計画、あるいは今後の戦略を練る上で不都合がありますでしょうし、その行程表をしっかり作って、ともかく日本の成長を目先どうする、そして中長期的にどうするという観点をぜひ示していただきたいと思います。
以上です。

野間口部会長

ありがとうございました。
濵田委員、お願いします。

濵田委員

濵田でございます。大学とベンチャー企業をやっておりまして、両方を行ったり来たりしているという意味で、現場に近いところで少し御意見を申し上げられればと思っております。
まず最初に、もう何人かの委員の先生方から御議論があったと思うのですけれども、中小企業にある程度フォーカスしたようないろいろな施策をやっていただいていらっしゃること、本当にこれは感謝しておりまして、今後もさらに一層の発展をお願いしたい。特に、幾つかポイントがあるかと思うのですが、減免制度であったり、支援策というのが幾つかあるのですけれども、先ほどの先生方の議論にもありましたが、なかなかそれを知る機会というのが結構少のうございます。特に、先ほどの三鷹光器の社長様の御意見にもありましたけれども、今、市場を取り巻く環境は非常に厳しいので、まずどこへ相談に行くかというと、資金繰りであったり、銀行であったり、中小公庫であったり、そういうところに接触するチャンスは非常に多いのですね。だから、そういうところにパンフレットであったり、ワンストップサービスの受け皿の何かきっかけ、キーがあればもう少し窓口は広がるかなと、これは直感的ですけれども、そういうふうに思っております。
もう一つキーワードとしては、中小企業、大学もそうだと思うのですが、キーワードはコストとやはりスピードというのが非常に重要になってきます。コストに関しては今申し上げましたような減免の制度とかありますが、そういうものを活用すればいいのですけれども、そのスピードという点でも、特に外国出願に関しては、今オープン・イノベーションとかということをやると特に問題になってきておりまして、これは私たち日本人の特性かもしれませんが、結構100%求めて出したりするのですけれども、お隣の国であったり、そういうところはもう75%、あるいは60%でもとりあえず出してしまうというところで、先にちょっとやられてしまったみたいなところも結構最近は多いのではないかと思っておりますので、いろいろなハイウェイの構想、実際に実施をしていただいているものも私どもも非常に助かっているのですが、25ページにありますような、特に外国展開におけるPCT出願をやりたい、各国にローカライズしたいといったときの、その辺のやり方というか、教育も含めてそういうところの強化というのが非常に今、中小企業で海外に展開しようとするとまず、まあやればわかるのですが、なかなか知らないというところが一番問題だったりするので、そういうところの支援というのがさらに発展していけば非常にありがたいかなと思っております。
それから、先ほどどなたかの先生の御指摘もあったのですけれども、教育という立場で、昔、私は味なことをやるなと思っていたのですけれども、特許庁から高校生のための副読本というのが出ていまして、あれは結構よくて、大学でも私は使ったりしていたのですけれども、あれを見て、例えば特許の申請の仕方もそうですし、例えば、こういうものが特許になるのだというようなアイデア、例えばゲームに時間軸を入れるみたいな、私は今でも覚えているのですけれども、そういったようなことをやられた活動というのはやはり何年かするときっと芽がフルーツになってくる、そういう活動だと思いますので、これからも非常に大変だと思いますけれども、続けていただければと思います。
最後に、コストに関しては先ほど先生からありましたように、ある程度入り口でフィルタリングするというのはまさに私もそのとおりだと思いますので、それはそれでいいかなと思いますが、最終的には、これはミニマムギャランティみたいなものですので、例えばですが、こういうことを言う人は誰もいないと思うのですけれども、保護してあげましたよ、その結果、何か成果が出たらそのほんのわずかな部分でも国のシステムへ還元するみたいな、そういうものがあっても、経済合理性から考えるといいのではないかというふうにちょっと実は思い始めておりまして、具体的にどうしたらいいかというのは別にしまして、そういうことを考えておりました。
一層、中小企業、大学、今厳しい状況ではありますけれども、こういう取り組みを組織としてやっていただいていることに感謝しております。どうかよろしくお願いいたします。
以上です。

野間口部会長

ありがとうございました。
では、林委員、お願いします。

林委員

裁判所は、知財高裁を中心として、訴訟手続を扱う立場ということになります。そういう意味で、訴訟手続面に対する関心というのは非常に大きいわけですが、実体法の面、特許法がどうなるかという実体法の面に関しても我々としても多大な関心を持っておりますし、そういう意味では今回、資料3が配られていて、当部会の下に特許制度小委員会という別のフォーラムが置かれ、恐らく法制度面についてはここで議論されることになるのだろうと思っておりますが、そういうところにも積極的に参加させていただければと思っております。ただ、どのような制度になったとしても、私どもの司法は、知財制度が社会の重要なインフラであり、さらにそのインフラであるところの訴訟手続を運用する立場として、適切な知的財産、特許権の保護、いわゆる保護されるべき特許をきちんと保護し、保護されるべきものではないものは保護しない、そのスタンスは変わらないのだろうと思います。
そういうスタンスを持ちながら議論に参加させていただきたいと思いますが、ただ1点だけ、例えば特許制度小委員会等の議論においてお願いとして申し上げたいのは、やはり客観的な運用の実態なり統計データというものをベースに、あるべき制度論というものを御議論いただければありがたいと思っているところです。先ほど筒井委員が言及されましたが、資料1で言うと12ページにありますダブルトラックの問題、これは非常に重要な検討課題だというふうに私どもも認識しておるわけでありますが、この前提となっているところの判決と審決の不整合というような記載があります。これは非常にわかりやすいプレゼンテーションかと思いますが、ただ一方で、本日、参考資料として特許制度研究会の報告書が配られているかと思いますが、その議論の過程で出された統計データ等を見ますと、裁判所の判決と審決の判断が齟齬する場面というのはそれほど多くないというような統計データも出ていたかと思います。そういうところを十分踏まえた上でぜひ特許制度小委員会等で議論をしていただければありがたい、私が申し上げたいのはその1点だけです。

野間口部会長

ありがとうございます。
それでは、宮川委員、お願いします。

宮川委員

弁護士の宮川でございます。私の仕事の業務分野の1つといたしまして、日本の企業の皆様が海外に進出する際のサポートというお仕事と、特許権侵害物品、あるいは海賊版、商標権侵害物品等の模倣品対策という仕事に携わらせていただくことが多いということで、その仕事を通じて感じていることを申し述べたいと思います。
まず、最初に国際的な制度の調和という課題が挙げられておりますが、私もこの点は日ごろから実感しております。と申しますのは、日本の企業の皆様はこの経済状況の中で製造拠点をアジア各国に移すという動きが非常に加速しておりますし、拠点を移すということではないにしても、アジアのメーカー、製造企業にライセンス供与をして現地生産をしていただく、あるいは工場に製造委託をするといういろいろな形で大中小企業の方たちがアジアにおける製造を通じて技術情報、ノウハウというものをアジアに移転というか、流出させているという状況がございます。その中で、安心して日本企業の方たちがアジアで技術情報を活用していただくためには、やはり国際的な制度調和のひとつとしてあげられていますように、アジア諸国の知財制度の底上げと申しますか、制度の統一、調和というものを図るということが1つ重要な課題ではないかというように考えております。それに関連しまして、先ほどいただいた資料の中の19ページを拝見しますと、やはり日本では新興国における特許出願の件数がまだまだ少ないということもあります。他の委員からも御指摘がありますように、海外での特許の取得、権利の取得というのはまだまだ情報面、それからアクセス面からハードルが高い面もあるかと思いますので、中小企業の方たちの支援という中に、やはり海外知財展開の支援という点も1つ重要なポイントとして置いていただいて、情報やそれから人材の面でいろいろなサポートを考えていただけたら、非常に海外での日本企業の活躍に資するものがあるのではないかというように考えております。
以上です。

野間口部会長

ありがとうございました。
それでは、宮城委員、お願いします。

宮城委員

日本商工会議所の宮城でございます。中小企業の立場からの発言をいたしたいと思いますが、先ほど中村委員のほうから中小企業全体の知財活用のお話がありましたので、私からは知財を積極的に活用している中小企業からの声をお話をしたいと思っております。
知財を活用している中小企業の実態についてのキーワードはグローバル化だというふうに思っております。それも、グローバル化にうまく対応しているというよりも、知財の面で非常に苦闘をしているという姿でございます。やはり世界市場でニッチの中小企業にとって特許とか商標ですとか意匠ですとかいう工業所有権は生命線であるわけではありますけれども、その日本で認められている特許というものが海外に出ていったときに、実は知財という武器を使えない、特許が認められない例が、例えばアジアで非常に多く見られたり、審査自体がすごく遅いとか膨大な異議申立があって事業展開に支障を来すとか、侵害の実例も多い、かなりアジアで営業活動をするときに守ってくれるはずの知財が逆にいろいろな面で桎梏になって足かせになっているのだということを聞きます。
他方で、これは多分、企業の経営戦略とかあるいは技術の実態で違うのでしょうけれども、今、グローバル化の中で逆に特許出願をすることはリスクだと言う方も非常に多くおられます。もうどうしても取られてはいけない基本特許だけは特許で出して、1年、半年後に情報公開されますけれども、それ以外の実施態様みたいな特許は絶対に出さない。アジアで仕事をするときには、自分が進出できる条件が整ったときに向こう側が模倣という形で逆に阻止できる条件を整えさせるというのは愚の骨頂であるということを言われる、これは知財に極めてマインドの高い中小企業の経営者の方の発想でございます。今、やはり日本国内で知的財産の話を議論する視点と、アジアのマーケットでどうやってそこで営業展開をしていくかという企業に対して、どういう観点で知財を考えるかによって知財政策に対する緊張感というのは大きく違うのではないかという気がいたします。8ページの知財政策の今後の方向性については全く違和感はございません。非常にこれに沿ってきちんと具体的な検討が進められれば、今私が申し上げたような事例に対しても適切な答えが出てくるのではないかというふうに期待をしておりますということでございます。
あと一点、とりわけ、やはり中小企業の方に意見を聞くと、どうしても強く言われるのが最後の特許料金の見直しの話でございます。これで要望がございますのは、1つは、免除の範囲をあまり限定をしないでくださいというものがあります。そして中小企業の範囲というのをどう考えるのかというのがありますけれども、イノベーションというポジティブな面で考えるのであれば、中小企業基本法の中小企業の範囲では小さいと思います。もう少し資本金5億以下の中堅企業、私は日本の研究開発とか技術開発とか、知財で重要なパーツを担っているのは、その中堅企業も含めた中小企業だと思いますので、あまり小さいところ、ベンチャーは別ですけれども、そういうところに視点を置かずに、もう少しイノベーションの活用という観点では中堅中小企業というところのイノベーションで果たす役割というものに注目をしていただきたいというのが1点でございます。
2点目は、全部に認めるわけにはいきませんから何らかの条件はつくのだと思うのですが、中小企業にとってはやはり条件がついたとき、それを証明をする書類が実は負担でございます。得られるお金よりもその手間のほうが大きいというのはおかしなことだと思います。赤字の法人、これは資力がないから当たり前と言えばあれなのですけれども、赤字であることをどう証明するのかとか、研究開発費が3%であることをどう証明するのか、それは税引き後なのか、税前なのか、会計なのか、税法基準なのか、会計基準も正直申し上げて幾つかございます。この手続面については御配慮いただいて、本当に中小企業が喜んでこの減免制度を使うような形での簡素化というものをお願いをしたいと思います。
以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございます。
それでは、安田委員、お願いします。

安田委員

東京電機大学の安田でございます。IT技術の専門で、画像技術が専門です。25年間、大企業の研究部門におりまして、その後、大学13年という経歴で、その中で企業におりましたときにはMPEGの標準化ということも心がけておりました。
先ほど広実課長のほうからそういうお話がありました。MPEGの場合には大体トータルで3000億の収入が、ライセンスアライアンスが入っておりますけれども、そのうちの47%が日本の取り分で、ただし払うほうが27%ありますので、差し引きもうけは20%という議論ではありますけれども、少なくとも具体的にもうかっているという点から言えばそれなりに効果があったというふうに思っておりますけれども、ただ残念ながらそれ以降、あるいはそれ以前、決して標準化と知財とがうまく回っているとは言えません。
ということで、1つの問題は、標準化戦略というものがこれから国力として一層問われる時代に特許というもの、あるいは知財というものがどう関わるかということについて、やや特許庁は標準化に対して引け気味ではないかというふうに見えますので、ぜひ進出をしていただいて、少なくとも特許がどう働いたか、どう失敗したかということが幾つかあるはずですので、その辺のところはぜひ調べていただいて、参考になるようにまとめていただければありがたいと思います。
それから大学に転じまして、産学連携ということをやっております。大学の先生というのはある意味小企業でございまして、中小企業対策の中に入れていただくのは大変結構なことだというふうに思います。ただ、一番の問題は、この小企業は財務部門とかそういったものは持っておりませんので、日ごろ技術開発に専心をしている。ですから、特許を書けとか何とかしろと言われても、何もできないわけですね。ですから、そういう意味において、中小企業対策をやっていただくのは大変ありがたいと思いますが、単に弁理士さん、弁護士さんが出てくるだけではなくて、この特許、あるいはこの考え方が世の中に通用するのか、商売として成り立つのかという、ある意味、大企業経験者、あるいは商売を経験された方々、その方々も一緒になって手助けをしていただけることをしないと大変問題だ。
特に、IT技術が大変進歩しておりまして、逆に言うとウェブの時代にウェブにないものは存在しないということになります。そうしますと、ITは少し進歩して小企業でもウェブに何か情報を出すということはできるようになりつつありますが、一番心配なのは大学の先生もそうでございますけれども、知財、特許を取らないで情報だけ出すという人が多いのですね。ですから、そういう意味で、これを出したら盗まれるよとか、これはちょっと出し過ぎだよとか、そういうサゼスチョンもぜひとも欲しいということなので、その辺のところはぜひ、今度中小企業対策を考えるときに単に弁理士さん、弁護士さんのチームだけではなくて、商売、あるいは研究開発を経験された方も三位一体なそういったサポートチームというものをぜひ作っていただきたいというふうに思っております。
それから今、IT戦略本部の本部員を務めさせていただいています。その中で最も重要なのはソフトだということになっています。ソフトウェアの知財というのは実は曖昧で、特許権でもないし、著作権でもないという、まあ両方なのでしょうけれども、ということで、これまた担当が必ずしも明確ではない。ソフトウェアの知財というものをどうやって守るかということについて、やはり特許庁も大いに関与していただきたいというふうに思います。ということで、特許庁はお名前を変えて「知財保護庁」と変えていただければよろしいのではないかというふうに思っております。
以上です。

野間口部会長

ありがとうございました。
山口委員、お願いします。

山口委員

東京大学の山口でございます。よろしくお願いいたします。
私もこの資料に示されております方向性については極めて適切であるというように考えております。問題はこれを視野に入れつつ、どのように運用面、制度面について改善していくのかという具体策に尽きるだろうというように思っております。
先ほど来すでに御指摘されておりますが、検討の課題になっている法制面についてはいろいろ難しい問題もあろうかというように思います。ほとんどの法制度は利害の調整といいますか、バランスの上に成り立っているものでございまして、それを変えようというわけでございますので、伝統的に妥当であると思われている利害調整の仕方とやはり若干違ったものが出てくるという場面もございます。そういうところでは、あるいは他の制度等との関係でいろいろな調整を要する事態が生ずるかもしれませんし、そのあたりはぜひ工夫をしていただきまして、そしてできるだけ幅広い合意を求めつつ、少しでも前進するような制度改正をお願いしたいというように考えております。
それからもう一つでございますが、私も大学に所属する人間でございますので、制度について、大学にとっての利便性の向上ということについては私としても非常に関心があるところでございます。この点につきましてもいろいろな工夫をしていただいて、少しでも大学にとって使いやすい制度にしていただくということを希望したいというふうに思います。
以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございます。
では、山本委員、お願いします。

山本委員

私もこの資料1の8ページにある方向性としては賛成です。
これを具体的にを進めるために、ぜひ3つの点について御議論いただきたいと思っています。私は東京大学TLOという大学の技術移転を行う立場ですので、産学連携について話をしますと、1点目は、やはり論文出願を認められるようにしていただきたい、日本版仮出願と言うと言いすぎかもしれないので、最初の出願フォーマットの自由化を促進して、論文のままの形式でも出せるようにしていただきたい。2点目は、現在の30条がありますが、どこで発表しても30条適用にしていただきたいということ。3点目は産業革新機構がいいのか、独立行政法人がいいのかいろいろ議論はあると思うのですが、そういったところの活用ができないのかというのが3点目です。
理由を言いますと、まず今まで特許庁がやってこられたPPH、特許審査ハイウェイというのはすばらしいものだと思っております。国際調和という点では非常に貢献度が高くて、海外からも支持されているすばらしいものだと思うのですが、残念ながら欧米や日本がそういう努力をしてもなかなか変わりそうにない。本当は出願ルールがIP5、日米欧と中国と韓国で同じルールになればいいのですが、なかなか同じルールに相手方がなってくれないというのがあるので、それを考えると、どうしても大学の立場で言うとアメリカが有利であると思っています。アメリカは発表と同時に論文のまま出願できるわけなので、権利化と発表の迅速さの両方のメリットを享受できるわけですが、日本はどうしても出願してから発表しなさいとなると、残念ながら発表を待ってくれない先生方が多いと感じております。論文が数多く引用されている日本のある著名な先生は新しい論文だけで、しかも種類の違うものを、年間70件ぐらい論文を発表されていらっしゃいます。でも、特許は2件だけしか出していないのですね。私はその先生にお会いしたことはないのですが、発表を待ってくださいと言うと大変お怒りになられる方のようで、待ってくれないわけです。先生方からすると、特許出願をするよりも、「サイエンス」や「セル」や「ネイチャー」に載るほうが遙かにメリットが高いということがあって、私たちは発表日までに出願準備が間に合わないことが事前にわかるとどうするかというと、今はアメリカの仮出願で出願するしかないのですね。どうせアメリカで仮出願をするのであれば、日本で論文で出願できたほうが日本の弁理士さんの仕事が増える話しにもなりますし、メリットが大きいのではないか。そもそもアメリカの仮出願さえなされずに発表されてしまって、大きな薬になるかもしれなかったような折角のいい発明が特許にもならずに終わってしまっているということを考えると、どちらも救済措置ですが、論文で出願できて、万が一発表されたとしても30条で救済できるというようなことがあれば、かなり大学にとっては使いやすい制度になるのではないかと思っております。
一方で、やはり論文で論文出願をしてしまうと特許は弱くなるというリスクがあることはもちろん承知しておりまして、私たちも時間的余裕があればちゃんと出願をして発表してもらいたいのですが、これはあくまでも、発表を優先したい人のための救済措置であるわけですので、ぜひともそこを緩和すると同時に、特許庁と弁理士会で各全国の大学に勉強会というのでしょうか、論文でも出願はできるけれども、理想を言えばちゃんと出願してから発表されたほうがよいわけですよというような勉強会といった教育活動を促進していただくという観点では、もしこういう制度切り替えをやっていただけるのであれば、よい勉強の機会になるのではないかと思っております。
あと最後に申し上げました産業革新機構とか、あるいは独法の活用というのは何かというと、日本の大学が持っている特許というのは部品みたいな特許が結構あるのですね。今は使われないという特許も結構あります。例えば遺伝子治療などというのは、日本で遺伝治療をやっている会社はないですが、アメリカではやっている会社はあって、多分これからどんどんやられるようになるだろう。各大学でずっと特許を維持し続けているとどこかで諦めて取り下げてしまう、放棄してしまうということが現実に起こって、そうすると日本の産業界にとってのメリットはない。あるいは、光通信みたいな、例えば光スイッチとか、光の増幅だとか、そういう技術は何百とあるのですけれども、どれがデファクトになるかわからないので、各大学でデファクトの可能性があるので、特許を持っておきなさいと言われても、多分どこかで諦めてしまう。そういったものを集約すればどれがデファクトになっても日本が勝てるというような仕組みを例えば産業革新機構なのか、さっきの遺伝治療だったら理研が持っておいたほうがいいのか、産総研なのかといろいろあると思うのですが、そういったところに集約できるようなシステムができれば、どの技術が勝ったとしても日本が競争優位を失わなくて済むということになるのではないか。
最後に1点だけ申し上げますと、先ほど日本ではパテントトロールは起きていないという話がありましたが、そんなことはなくて、アメリカのパテントアグリゲーターと言われるところが日本の大学の技術をどんどん買いあさりに来ています。大学とすれば300件ほど出せば数億円入るので黒字にするのは簡単なのですが、私たち東京大学ではそこに出すことはやらないという方針を決めているのですが、残念ながら全国でもう20の大学では大学の収益がなかなか上がらないので、そういうところに特許を売ってしまっています。そういったところは何をやっているかというと、日本の大企業に行って、私たちは3万件の特許があるので、おたくはどれかの特許を侵害しているかもわからないですね、ところでうちはファンドをつくろうと思うので出資しませんか、出資してくれたら3万件は自由ですよと。昔のパテントトロールというのは、おたくのこの事業がうちのこの特許を侵害していますよと言ってきたのですが、それすら言わないという状況です。ですので、パテントトロールというのは起きているので、それについてちゃんと考えるべきではないかと思っております。

野間口部会長

ありがとうございました。
大変貴重な御意見をたくさん賜りまして、最初に長官からお話がありましたように、イノベーションのインフラとしてこの知財が非常に重要性を増しているというのを、私も長く知財に関わっておりましたけれども、年々感じております。
いろいろ貴重な御意見を賜りましたので、各担当課長から少しずつコメントしていただきたいところなのですが、いただいております時間を少しオーバーしておりますので、総務課長からまとめてコメント、お礼をお願いします。

広実総務課長

活用面、法制面、中小企業・ベンチャー支援、料金政策、各委員の方々から本当に具体性に富んだ貴重な御意見、御提案をいただきまして、ありがとうございました。
本当は1つ1つお答えしたいところなのですが、時間の関係もありますので、次回以降の議論にぜひ今回の御意見を十分反映させていただくとともに、施策のほうにも、今日いただいたような御意見をいただきましたので、新しく動き始めたいと思います。
特に特許庁だけでできることもありますが、それ以外に外務省、あるいは銀行ですと金融庁ですか、あるいは全国銀行協会かもわかりませんが、早速いろいろ話し合いを持ちたいと思いますし、産業革新機構を初めいろいろな政府関係の機関もありますので、早速議論を始めたいと思います。
本当にどうもありがとうございました。

特許制度小委員会における主な検討事項について

野間口部会長

それでは、次の議題であります「特許制度小委員会における主な検討事項について」、事務局より説明をお願いします。

鎌田審議室長

御説明いたします。お手元の資料2「特許制度小委員会における主な検討事項について」という資料を御参照ください。
まず「検討のねらい」でございますけれども、ここは今回の知的財産政策部会の検討の趣旨を書いております。先ほど総務課長から御説明させていただいたことと重複しますので省略をさせていただきますが、ポイントといたしましては、法制的な課題については特許制度小委員会で技術的な面も含めて検討を行っていくということでございます。
2.が「検討の視点と主な検討事項」でございます。1枚めくっていただきまして3つのグループに整理をしております。
1つ目が「特許の活用強化」ということでございまして、近年のオープン・イノベーションの進展により、外部の技術の活用や研究開発における企業間、企業・大学間の連携が活発化している。このような環境変化に対応し、特許の円滑な利用を促進するとともに、特許関係紛争に係るビジネスリスクを低減するような知的財産制度の在り方について検討するということでございます。ここでは具体的な検討項目の例を掲げさせていただいておりますけれども、先ほど総務課長から説明がございましたようなライセンス制度をいかに利便性の高いものにしていくかということですとか、同じように説明がございました特許関係紛争の効率的・適正な解決、これは委員の方からもダブルトラックについて意見をいただきましたけれども、こういった論点でございます。3つ目は差止請求権の在り方ということで、これもパテントトロールとの関係も含め、委員の皆様から御指摘いただいたところでございますけれども、こういった論点について法制的な面から検討するというのが1つ目のグループでございます。
2つ目は「中小企業等幅広いユーザーの利便性向上」ということでございまして、イノベーション創出の裾野を広げていく、こういう問題意識のもとから、中小企業や大学等、幅広いユーザーにとって利便性の高い知的財産制度を検討していこうということでございます。同じように検討項目の例でございますけれども、これも委員から御指摘いただいたところでございますけれども、大学・研究者等にも簡単な出願手続について検討していこうということ、それから手続面の国際調和ということですとか、冒認出願、これは真の権利者以外の者が出願して特許権を取ってしまったというような場合に、真の権利者をいかに救済していくのかといった論点でございます。こういった論点について検討するというのが2つ目のグループでございます。
3つ目は「国際的な制度調和」でございまして、これは先ほども委員の皆様からも御指摘をいただいたところでございますけれども、手続面も含めて国際調和をどんどん進めていこうということでございます。
また、特許制度小委員会の委員長につきましては産業構造審議会運営規程によりまして、野間口部会長から指名する者というふうにされております。すでに野間口部会長からはこの部会のメンバーでもある東京大学大学院法学政治学研究科教授の大渕先生を御指名いただいておりまして、大渕委員にも御内諾をいただいておりますので、大渕委員に特許制度小委員会の委員長をお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

野間口部会長

ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして御意見、御質問等がありましたらお願いします。
大渕先生、何かよろしいでしょうか。

大渕委員

東京大学の大渕でございますが、ただいまこのような非常な難問山積の特許制度小委員会の司会進行役という大役を命ぜられまして、大変、身の引き締まる思いでございます。
それで、先ほどテーマについては御説明いただきましたけれども、これはもう今まで難問が多数特許法関係はありまして、この審議会で検討されてきたわけですが、これはこう言うのもなんなのですけれども、今までに解決できなかった難問中の難問が最後に残って、最後というのはちょっと表現はよくないのですが、残ってしまっていることで、私のような若輩で浅学非才な者には大変な責務でありまして、大変緊張しております。
それで、もう個別の論点は先ほど御説明いただいたとおりでありますが、私は知的財産法を専攻しておりまして最近感じるところなのですが、今までは割と非常に難しい本質論的なものをなるべく実務的には避けながら問題解決していきましょうというのが実務的なアプローチとしては当然あるわけですが、そういう意味では従前は本質論対峙回避の、この「たいじ」というのは成敗するとかそういう意味ではなくて、正面から向き合うのを回避してくるという、そういう状態だったかと思うのですが、もう正面から向き合うのを回避もできずに、先ほどの本質論対峙回避の時代から、今度は本質論対峙の時代へというふうに移りつつあるのではないかと思って、まさしく今回のテーマというのはその変化を象徴するような難問が並んでいるところではないかと思っております。
これらの解決におきましては、先ほど法制度の厚い壁だということで大変厳しい、そう容易なものではないという厳しい御指摘をいただきました。それは全くそのとおりだと思っておりますが、そういうものがあるからここに残ってしまっているというものでありますので、まさしく本質論に正面から向き合って考えていく必要があろうかと思っております。
基本的には非常に高度な立法政策ということになろうかと思いますけれども、私は研究者だから申し上げるわけではないのですが、こういう本質論的な問題を解決するに当たっては政策論ももちろん大切でありますけれども、意外と比較法等の地味な基礎的研究というものが重要な鍵となるのではないかというふうに思っている次第でございます。
挙がっております項目というのは法制的な問題で、法律的な面が中心になろうかと思いますが、先ほども申し上げましたとおり、このような難しい問題を解決するに当たって法律面の細かい話もさることながら、それ以外に関連する技術ですとかあるいは経済、ビジネスというようなところのニーズ、実情、先ほどデータの重要性なども指摘されておりましたけれども、そういうものも踏まえて、実情を踏まえた上で先ほどのような難しい問題を考えていくということとなろうかと思いまして、ここで先ほどいただきました貴重な御意見を踏まえた上で、何が我が国にとってベストな解かというところを考えていく、そのための議論を尽くすということでありまして、そのために微力ながら司会進行役を務めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

野間口部会長

ありがとうございます。
それでは、ちょうど時間も迫ってまいりましたので、今後のスケジュールにつきまして、事務局より説明を最後にお願いします。

鎌田審議室長

それでは、今後のスケジュールにつきまして御説明させていただきます。
お手元の資料3をごらんください。一番下に「<政府全体>新成長戦略」というものがございますけれども、政府全体といたしまして、本年6月ごろに新成長戦略を取りまとめることとしております。この新成長戦略の取りまとめに向けましてさまざまな審議会などの検討が進められているところでございますけれども、本知的財産政策部会におきましてもこの新成長戦略に反映させていくことなども踏まえまして、今後の知的財産政策の今後の方向性につきまして、5月ごろを目途に取りまとめていただきたいというふうに考えております。
次回ですけれども、本日の御議論を踏まえまして、各論点について事務局において検討を進めた上で本部会に報告させていただくということを予定しております。具体的な日程につきましては部会長と御相談の上、追って御連絡させていただきたいと思っております。
なお、法制的課題につきましては今後、特許制度小委員会において詳細な制度設計について御審議いただいた上で本知的財産政策部会のほうに御報告をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。

野間口部会長

ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、産業構造審議会第13回知的財産部会を閉会いたしたいと思います。
大変貴重な御意見をたくさん賜りました。本当にありがとうございました。

閉会

[更新日 2010年5月11日]

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