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特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室
委員長 |
それでは議事に先立ちまして、本小委員会の公開について皆様にお諮りしたいと思います。産業構造審議会は部会や小委員会を含め、原則公開となっております。本委員会におきましては各位委員の率直かつ自由な意見交換を確保するというために会議自体は非公開とし、議事要旨及び議事録を発言者名を記載せずに公開させていただきたいと考えておりますけれども、いかがでございましょうか。(異議なし) 資料1「IT革命の急速な進行」、資料2「ITの進展に対応した法制整備」については事務局より、資料3「今後のIT関連技術の展開」については安田委員より説明。 |
委員長 |
ただいまの御説明に関して何か御質問等はありませんでしょうか。 コンテンツに「顔」(ID)をつけるということですが、コンテンツには映像、テキストなど性格が異なるものがあります。特にテキストについては「顔」をつけるということは簡単にできるのでしょうか。 本当の意味で電子的なテキストに「顔」をつけるということはかなり難しいことは事実です。紙などの媒体になるといろいろと対策が考えられますが、コンピュータの中にあるテキストについて「顔」をつけるというのは非常に難しいので、暗号化するかヘッダーを付けるなどが考えられます。しかし、そうした場合「顔」ではなく、防止対策程度のものに止まってしまうのが現状であります。 デジタルコンテンツで固体概念というのが導入されるということですが、5年後などを考えた場合のデジタルコンテンツの取引流通というのは、先ほどのIDがついたものが主流になっていて、今のように簡単に複製ができて、出所がわからないものの複製というものはもうネットワーク上ではかなり困難になっていると考えてよろしいのでしょうか。 困難にしなければならない、という問題ですね。仮に一度IDを付けても取ってしまうと意味がありません。少なくとも人々の共通の認識としてはIDを付け、一度IDをつけたら取らないというのが主流になっていると思われます。そうするとIDを付けないような非常識な人間は数が少ないので捕まえられるのではないか、ということであります。今はそうしたIDがほとんどついてませんので、そういうことはできませんが、ここ5年でそのように変えていかなければならないということであります。 IDを付けなければならない時代が近づいてきているということでしょうけれども、このような事実の標準化といいますか、いろいろな技術が進んでいって、最終的に一本に収斂されるということでしょうか。 今世界中でそうした問題に取り組んでおり、日本でもコンテンツIDフォーラムというものがあります。そこでもいろいろな議論をさせていただいておりまして、それなりに世界的にも認知されてきています。IDの形態、つまり、どのような番号をつけるかという基本の部分と、どうやって付けるかという部分とに分けて考えています。どういう番号をつけるかということについては徐々に合意ができつつあります。一方どうやって付けるかということについてはビジネスに関わることであるから、一様にはできないという認識になっております。ただ、そこのところがどの程度収斂するかは今後の努力にかかっております。とりあえずはここ2年ほどで大体収斂するだろうという予測は立っております。ただその時に日本からはどのように意見し、世界と協調するかということについては未確定ですが、そうした動きは大きくなっています。 |
委員長 |
御質問もないようなので、引き続き事務局より「法制小委員会の課題」について御説明をお願いいたします。 発明の定義の立法上の意義を再確認するということですが、これは検討して見直すということなのでしょうか、それとも現状を確認するということなのでしょうか。 |
事務局 |
この部分については既に様々な御議論をいただき、また、意見もでてきておりますので、その意見ついて産業界、ユーザーの皆様の声を伺いつつ、皆様に御検討いただきたい、ということであります。 今事務局が提案された検討課題というのはこれからのテクノロジーの発達で解決できないのでしょうか。例えばプログラムをコピーできないようにする技術などがありますが、ここにあげられた検討課題というのは今後1,2年の間で技術的に解決できないものでしょうか。 基本的にコピーできなくする技術は存在しないと考えております。そういう意味でどれだけ技術が進歩したとしても守る側は大変弱いものであります。一方攻める側は技術次第でどれだけでも攻められるわけですから、先ほど申しましたように道徳的問題にもおおいになりうると考えております。 検討課題に挙げられた5つの課題とスケジュールとの関係をお伺いしたいのですが、あげられた4つのテーマすべてを第7回の小委員会までにまとめたいのか、あるいは優先順位があって数個のテーマにつき集中的に議論をして、残りのテーマは持ち越すということになってもやむを得ないという考えなのでしょうか。 |
事務局 |
今申しました1から4の課題のうち、特に第4の課題は現段階だけで完結するものではないと考えております。また第2課題の「ITに対応した適切な保護」は昨年来、ユーザーより早急な検討の要望があり、速やかに方向性をまとめていきたいと思っております。第3課題(第三者の責任)については、先ほど申しましたように総務省の方で一般的な仲介者の責任を免責にする法案を検討中であり、こちらも勘案しつつ、御議論いただきたいと考えております。 第5の課題(その他の課題)の具体的な内容はあるのでしょうか。 |
事務局 |
事務局として用意しましたのは第1から第4の課題でありますが、これに関連しまして論点として検討していく課題も他にあるのではないかと思っております。例えば、発明のカテゴリの見直しに関連して、一つの出願でどのような特許を出せるかという、専門用語で言いますと「発明の単一性」の議論にも波及するのではないかと思っております。本委員会の議論の方向性も考えつつ、適宜、新しい検討項目も取り入れて参りたいと考えております。今回ここに「その他の欄」を設けましたのは、むしろ、事務局で把握していない論点もあるのではないかという趣旨です。 先程の技術によるコピープロテクトには限界があるという説明は、一定の期間保護することは可能だが、無限に保護することはできないという趣旨です。セキュリティの技術を例にとると、セキュリティの技術というのはプライバシーを守るという場合と、悪意の者から守るという場合の二つの考え方があります。プライバシーを守るというのは万人に必要なことです。ところがセキュリティの技術というのは中身を明らかにしてはいけないものであり、もしプライバシーを守るセキュリティ技術について特許を取るならば、インプットとアウトプットのみ明確に記載し、その中間の技術はわからないというようにインターフェイスを規定した形にしていただかないと特許にはならないわけです。それでは違うインプットをしても同じインターフェイスになるものは特許侵害になるではないか、ということになりますとそれはやむを得ないことです。そうしますと今の特許をどれだけの費用でなんのために守るかという経済的バランスが時代にあっているかどうかという議論もしていかなければならないと思っています。 |
委員長 |
本論に近くなってきましたので、本日の議題でありますIT社会に対応した法制上の課題についての議論をしていただきたいと思います。本日は第1回目でありますので、その目的はこれから検討すべき法的論点をもれなく指摘していただくと共に、検討の方向性につきましても御議論していただきたいと考えております。何かございますでしょうか。 知的財産権訴訟も司法制度改革との関係で視野に入れるという話でありましたが、これも本小委員会の検討課題なのでしょうか。このスケジュールをみるとかなり時間的にタイトな気がするのですが。 |
事務局 |
知財政策部会からは、電子商取引の発展とITの形成に対応した法制の見直しの必要性についてと、知的財産権の紛争解決の迅速化について検討する必要があるとの御指摘を受けております。後者については、本年6月予定の司法制度改革審の報告も踏まえ、御議論いただければと考えておりますが、これをどういう形で法的に整理していくかについては今のところ事務局としても未定であります。どのタイミングでこの件を本小委員会にお諮りするかについては引き続き検討させていただきたいと思います。仮に次期通常国会での対処が必要であれば、本小委員会で御議論していただく必要性も高まると思っております。 知財政策部会からは本小委員会に託された議題というのはIT関連と紛争解決迅速化であり、ある程度土俵が決まっているようですが、それ以外は審理できないのしょうか。 |
事務局 |
時間の制約もありますので、事務局としてはまずIT関係を優先的に御議論いただきたいと思っておりますが、併せてその他の問題も議論する必要があるのであれば、広く御議論いただきたいということであります。 趣旨はわかりますが、小委員会の日程を見るとその他の論点についての議論は第5回の会合のみのようですので、実際に議論できることは限られている気がします。まずこの法制小委員会が今度の改正に取り組む姿勢について、是非そうあってほしいという希望がありますので、一言述べさせていただきます。私は省庁再編前の工業所有権審議会のころから特許法改正に関与させていただいておりましたが、平成10年の改正法以前はいわば国際的ハーモナイゼーションを視点にした改正が行われておりまして、平成10年、11年の改正ではいわゆるプロパテント政策を踏まえた強い知的財産権の保護ということを視点として裁判制度を中心に訴訟手続を含めての改正が行われてきたわけです。今回は視点が変わってIT革命の急速な進展に対応した法改正が議論の中心となるとのことですが、それについては私も重要な課題と認識しております。ただし、今後の技術進展のスピードは想像できない部分もあり、法改正を考えるときにどこまで対応していけるものかということが課題であると思います。比較法の見地から、アメリカや欧州特許条約の規定がどうなっているかということにとらわれますと、将来の情報社会の発展に対応した法改正がなかなか行われにくいのではないでしょうか。その意味では、先ほど申しましたこれまでの法改正では、日本だけが制度的に海外に遅れないように、あるいは突出しすぎないようにとの趣旨で法改正を行ってきたわけですが、今回はそういった視点を離れて、本当に日本の産業社会の発展のためにはどうすべきかを考えて、法改正に向けての議論をすべきなのではないでしょうか。 インターネット上を流通するソフトウエアに対する新しい審査基準については各団体からパブリックコメントとして文書で特許庁に意見を提出してきました。例えばカテゴリの問題については法律改正が必要と思われるとの見解は多くあると思います。その議論をここで再びいたしますのも時間の無駄でありますので、パブリックコメントを募集した後、特許庁としてはそれを踏まえてどのような議論を重ねて本年の1月10日以降の出願について、法改正をせずに審査基準の改訂で対応したのかを御説明いただきたいと思います。それによって相当議論の節約ができるのではないでしょうか。 |
事務局 |
昨年末の段階で、特許庁としても考え方を整理しておりますが、詳細については、次回以降の委員会で説明させていただきたいと思います。 先日の部会に出席した時から考えておりましたが、ITに対応して知的財産を総合的に保護するためには、特許・商標法のみを考えるのではなく不正競争防止法の関係分野も検討する必要があると思います。時間的制約もあるでしょうけれども、少なくともこの分野について不正競争防止法ではどのように対応していくのかを総合的に検討しなくては片手落ちといいますか、バランスがとれないと思います。 |
委員長 |
おそらく不正競争防止法だけでなく、著作権への配慮も必要ではないかと思います。 |
事務局 |
不正競争防止法については、まず、受け身的な話ではありますが、商標法と同じ文言を用いている部分があるので、仮に商標法を改正する場合に不正競争防止法はどうするかという検討は必要と考えております。その他にも、時間的制約はありますが、不正競争防止法のあり方につき必要に応じて御議論いただくのはありがたいことと存じます。 プログラムとは何なのかを定義すると、技術の進歩に追い付くことができない等の問題があると思いますが、システムLSIの設計資産(IP)は、外見はプログラム的なのですが、著作権法におけるプログラムには該当しないため、著作権による保護は受けられないとされています。プログラムをどう捉えるかということは保護範囲にも関係してくると思われますので、プログラムとは何かについても検討する必要があるのではないかと思います。 今まででてきた問題なのですが、確認させていただきたいことがあります。少なくともここに掲げた3つのこと(資料4・検討課題1~3)についてはこのスケジュールで議論し、それ以外のことは検討項目をここで議論し、実際の議論はこのスケジュール外の次回に繰り越すということでよいのでしょうか。 |
事務局 |
今日お配りのスケジュールは検討の目安でありまして、案としては秋口ぐらいまでに意見をまとめたいということであります。この法制小委員会は臨時的に秋まで開催されるというものではなく、基本的に産業構造審議会知的財産政策部会の下にほぼ常設的に活動できる小委員会であると考えておりますので、これ以外の課題については緊急に対処すべき問題があれば、時間的制約に関わらず御指摘いただければと思っております。 先ほどプログラムについての御説明を聞いておりましても、やはりその定義といいますか、属性が不明確であり、同じプログラムという言葉の理解が人によって違っているようですので、発明の新たなカテゴリを設けるにしても、実施行為をどう見るかというようなことにしても、その意識あわせをしっかりやっておく必要があると思います。また、プログラムについて、これまで特許庁ではどのような議論がなされてきたかについて予め資料をいただければ、我々はユーザーサイドの視点からそれに対して意見を述べるというように、もう少しかみ合った議論が効率的にできるのではないかと思います。また、今回はどのようにプログラムを保護するかという観点から議論をする予定のようですが、IT社会の中である種のものが流通しますと権利行使の観点だけでなく利便性の観点から、ある程度強制的に実施権を確保することが必要な場面が出てくるかもしれません。そのような強制実施権制度のあり方について議論をする予定はあるのでしょうか。 |
事務局 |
御指摘のあったこれまでの議論の内容については、事実の分析も行い、効率的な御検討が可能となるよう我々事務局も全力をあげて取り組みたいと思っております。強制実施権についてはこの検討課題の中で早急に議論が必要な問題としては受け止めておりません。 |
事務局 |
今御指摘のありました強制実施権については、本委員会に提示できるほどの考え方の整理はまだございませんので、これにつきましては本年度、財団法人知的財産研究所での研究課題としてあげられております。その中でネットワーク化についてだけでなく、他の先端科学技術を念頭に置きながら、その公益も含めて検討していきたいと思っております。 日本の産業活性化といいますと二つの柱がありまして、まず一つはIT化の問題、もう一つはバイオ産業育成の問題があると思います。本日のお話はほとんどITに関することのみでしたが、バイオ産業の方についても議論することは非常に重要であると思います。時間的制限から秋までにすべてを議論するのは難しいとは思いますが、バイオの方も重要なテーマとしてスケジュールを組んでいただきたいと思います。 |
事務局 |
今御指摘にありましたバイオあるいはライフサイエンスの問題はやはり医療分野に関わってきますので、知的財産権として除外されてきた分野ということで馴染みがないということがあります。そのようなことを踏まえて慎重に議論を進めて参りたいと思います。先ほどの強制実施権も当然この分野に関わるわけですが、バイオについても考え方を提示できるほど議論が整理されておりません。昨年の財団法人知的財産研究所での調査を基に、さらに広範に有識者のヒアリングを行い、その中で今後の方向性を打出したところで皆様にお諮りできればと思います。 内容のことではありませんが、ここへ来てはじめて資料を見るのではまとまった意見も申しあえげられませんので、予め資料を送付していただければと思います。 |
事務局 |
ご要望にお応えできるよう努力したいと思っております。 やや具体的な問題になりますけれども、具体的な規定の改正という点に当たりましては、将来も見据えた、柔軟な対応が必要だと思います。規定の改正の仕方によっては既存の特許の解釈に大きく影響を与えるということもあります。裁判所の解釈によって既存の特許権が享受しうる保護を減少するということがないように、ぜひ柔軟な対応をお願いしたいと思います。 この分野はさきほどハーモナイゼーションを意識しすぎないように、日本の産業の発展を考えて対処すべきだという御意見がありましたが、ビジネスモデル特許問題のときに感じたことですが、アメリカではどんどん判例がでていってしまうわけです。なかなか特許庁に聞きましても一部の人は知っているのですが、全体としての見解がまとまってくるのはかなり遅いわけです。これはかなりリアルタイムに判例が出てきていると思うので、この会議で検討する際にできるだけ事前にアメリカの事例などを渡してくれればと思います。このような問題は最終的には三極やWTOとかの問題になるわけですから、いくら日本で独自に取り組んでもしょうがないと思うわけです。今後安田先生にもお聞きしていかなければならないことですが、アメリカの動向をはじめ、その辺の事例が相当必要なのではないかということです。単に日本の商標法や不正競争防止法なそを検討するだけでは不充分ではないかと私は思っているので、その辺の資料を是非事務局に期待したいと思っております。 |
委員長 |
他に何かございますでしょうか。それでは活発な御議論ありがとうございました。本日はIT社会に対応した法制上の課題につきまして各委員からの御意見を頂戴いたしました。これを一旦事務局の方で整理した上で、次回以降、具体的審議をしてまいりたいと思います。それでは以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第1回法制小委員会を閉会させていただきます。 |
[更新日 2001年6月19日]
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