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特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室
小委員長 |
ありがとうございました。それでは議題1につきまして御議論を頂戴したいと思います。御意見、御質問を御自由にお願いします。 前回、「ソフトウエア発明と間接侵害」という資料にもとづき、現行法上、対処しきれないという類型があるという御説明がありました。モジュールの下請製造、および共同で侵害する場合という二つの類型があったかと思います。そのうち幇助のことから申しますと、基本的に現行の専用品の提供だけでは済まない場合がでてきたのではないかという認識を持っております。具体的には専用品の提供だけではなく、侵害のための情報の提供と言いますか、「物」の提供以外にまで効力を及ぼす規定を明確化することが好ましいのではないかと思います。主観的要件というのは難しいですけれども、特許権の存在までは知らなくとも責任を問うことはできるのではないかと思います。現在は特許の発明の生産のためのみと限定していますが、それは少し窮屈なので実施一般に広げたらどうかと思います。一方、提供行為については逆に広すぎるという意見を持っております。手段の提供あるいは拡布といった形で絞っていくというのはいかがかと思います。いずれにしましても現代の状況を踏まえ、特許侵害の幇助に対する差止めを認めてもよいと規定すべきではないか、という印象をもっております。一方、共同侵害につきましては立法して確認することは無意味とはいいませんが、あまり必要性がないのではないかと思っています。 資料中の主観的要件を間接侵害の中に入れた場合、間接侵害の供給品にプログラム等が含まれることを確認すれば、ナップスター型の侵害に対応し得るとはどういうことでしょうか。主観要件が必要とされる場合、個々の侵害について間接侵害の成立を認めることは困難ではないでしょうか。 |
事務局 |
間接侵害の規定は、「物」の発明にあってはその「物」の生産にのみ使用する「物」の生産、販売等を規制しております。部品供給の場合は、その部品のことを今の101条では「物」と書いてあります。「物」というからには有体物の供給ではないかという議論があったのではないかと思いますが、今回は、この間接侵害における「物」の生産・供給というところが有体物だけではなくて、ソフトウエア、コンピュータプログラムのモジュールとしての提供もカバーできるようにするということであれば、ナップスターのような「music share」の無償頒布のケースも間接侵害の規定で対応できるのではないかという趣旨で申しあげたわけです。 発明の本質的要素や発明の重要な構成要素を主観的要件に入れたとしても間接侵害で対応するのは難しいのではないかと思います。 |
事務局 |
そこはおっしゃるとおりであり、新たな間接侵害規定ですべて対応できるというわけではなく、一定のケースにおいて間接侵害が成立する場合もあるということです。間接侵害規定を導入することでこの問題がすべて解決するということではないということは事務局としても理解しております。 資料中、「現行規定に主観的要件を追加する。」とありますが、それは客観的要件か主観的要件のどちらかが規定されていればよい、ということですか。 |
事務局 |
今は「のみ」という規定しかないのですが、立法技術としてはまず「のみ」をすべて削り、悪意、即ち「~を知りながら」という条文にすべて置きかえるというパターンがまずひとつあります。そうしますと今までの「のみ」という客観的要件でカバーしていた範囲が逆に主観的要件が入ることで狭くなる可能性があるのではないかと思います。 そういう時は客観的要件は規定せず、主観的要件だけ規定するということですか。 |
事務局 |
いえ、客観的要件も維持することも可能です。例えば、「のみ」という規定は残したまま、その次の号に「発明の実施をすることを知りながら」という悪意の条文を作るということにすれば、今までの「のみ」という条文と判例を生かしながら、足りない部分を補充するというアプローチも可能なのではないか、ということです。 それでは「のみ」という客観的要件を満たす場合には主観的成立要件が推定されるとありますが、結局どういう行為を考えているのでしょうか。 |
事務局 |
この場合はまず主観的要件の条文を原則で作り、「のみ品」の場合は悪意で推定されるということです。 それでは教唆とはどのように捉えるのでしょうか。 |
事務局 |
これはあくまで間接侵害の話で教唆の話とは全く別です。そこで、今、教唆については、まさにどうすべきかを御議論いただいているところです。 大阪地裁の判決は特許権の実施になることを予測して中性品を提供した、というケースで、侵害にもならないし、侵害のおそれもないとされた判決です。そういうこともありますので、どの辺りのところまで教唆というふうに捉えていらっしゃるのでしょうか。 |
事務局 |
そのあたりは非常に難しく、無形的幇助と、教唆を概念的に区別することは重要だと思いますが、実態的に区別することはあまり必要ないのではないでしょうか。 |
小委員長 |
他に何かありますでしょうか。 確認という意味でお聞きしますが、侵害の「共同性」という時に、これが客観的なものでよいのか、あるいは共同性という意思をもってという主観的なものとするのかという点も整理しておきませんと、民法719条の問題でもありますが、やはり特許法上も問題になると思います。別途単独の行為では侵害は発生しないという行為、これがいくつか組み合わされると侵害行為になるという場合があります。それぞれの製造過程では別々である場合に、組合わせられて、損害の発生に繋がるということもあろうかと思います。共同不法行為の考えを持ちこむ時には、連帯して責任を負うという積極的効果はありますが、もうひとつ、加害行為と損害との因果関係については、共同性からその因果関係を推定するなどの解釈がありうると思います。共同性については、主観要件が必要なら推定規定、客観要件ならみなし規定となりますが、どちらに考えるのか整理が必要だと思います。 |
事務局 |
今おっしゃられた点については、民法の本を見まして、様々な学説があることも我々は承知しているのですが、特許法のときにどのように考えるかについては、まず、その点をこの場で決めるということ自体適切なのかどうか疑問が残ります。民法上の共同不法行為についてはいろいろ学説があるのですが、少なくとも主観的要件の共同まであるようなケースについては、民法第719条が適用されて一部行為者が全部責任を負うこともあるということを資料では記述しています。確かに客観的共同関連性、あるいは共同の対象はどういう行為なのかなど様々な問題はあります。それを整理した方がいいとは思いますが、基本的には判例に委ね、今回の議論の中で厳密に整理する必要性はあまりないのではないかと思っております。「少なくとも」ということを前提にしながら今回の議論をお願いしているということです。 |
小委員長 |
おそらく特許法上問題となるのは民法上でいえば709条の損害賠償の方が原則です。これはどちらかというと差止めでありますから、そちらの方をむしろ議論しておくべきかと思います。共同不法行為の議論は深入りしても条文には書けません。議論としてはおおいにやっておくべきだとは思いますが。 間接侵害をすべて共同不法行為の類型で捉えられるかというと、疑問があります。一応共同不法行為の場合には不法行為が成立することが前提です。独立説をとった場合には侵害行為自体がおこなわれているかどうか、つまり侵害がなくても間接侵害を認めているという解釈を行っているわけであって、必ずしもその点はオーバーラップしているわけではないということを注意しておくべきだと思います。 |
事務局 |
まず欧州の方の、meansというところに情報の提供が含まれるかということですが、欧州特許条約のコンメンタールではありませんが、条約と同じ文言のドイツ法の解説書では、やはり有形的なものを前提としており、情報提供のような無形的支援は入らないような書き振りになっています。 今、なぜ申し上げたかと言いますと、情報の提供の場合にはそういうものを業として実施することもできるし、あるいは個人が実施することもできます。そういうものについて言うと、単に情報提供しているというものをどういうふうにここではお考えになっているのかということです。つまり、米国法と日本法ではactive inducementの前提となっている侵害の立て方も異なっているのでそういうところはどうなのか、ということです。「物」の製造技術であれば個人であるということを前提としているとは言えないと思うのですが、ソフトウェアであると個人として家庭でも使え、会社でも業務として使えるので、このようなものをどう考えるのか、ということです。 |
事務局 |
そういうものを助長するものをどうするのか、ということを先に考えるのではなく、まず、特許法というのは業者対業者の問題を対処していけばおおよそ良かったわけです。ところがネットという問題がでてきた場合に業としてという権利構成で本当にいいのかということから先に御議論いただければいいのかと思います。 主観要件の内容について、中性品を含めた間接侵害において侵害事実の認識のみで足りるとするのは酷ではないでしょうか。最終実施者=第三者の行為内容について、それが特許に抵触するかどうかということを調べる義務を追わせるのは酷ではないか、ということがひとつと、もうひとつはプログラムの提供と特許の成立のタイミングの問題というのがあります。プログラムをつくるのが早くて特許が後から出てくるというケースが多く出てくると思います。プログラムを開発した側から言いますと、開発したときだけ存在する特許を調べればいいということではなく、継続的にずっと調査を常にやっていないといつ侵害になってしまうかわからないということになってしまいます。 構成要件の中に、A、B、C、Dがあり、AとBが共同不法行為者、Cが個人ユーザー、Dが個人でなく、かつ悪意を持たずに業としてサーバを持ち、サービスを提供している場合も全体としてA、Bだけで負うことになるのでしょうか。 |
事務局 |
特許権A、B、C、Dが実現されていれば、AとBの共同不法行為を認めることは可能だとは思います。具体的な事実にもよると思いますが。 サービスプロバイダーのDが構成要件、例えば一般的なプログラムを開放していて、誰がそれを取りに来ているのかわからないが、とりあえず開放していたとします。それをとってきたA,Bがひとつの侵害行為を構成するという場合のことだと思います。そうした場合に不法行為を認めるのは難しいとは思いますが、Dに対して「あなたがそのようなプログラムを提供していることが特許権の侵害に結びつきます。」という警告状を送り、Dがその内容を知った場合は、Dを間接侵害と認められるのでしょうか。 |
事務局 |
Dを間接侵害者と認められるのかということですが、Dは一般的なディスクを提供しているだけであり、「のみ」品の規定を削除したとはいえ、汎用品としてのディスクの提供があるならば、間接侵害を問うのは難しいのではないでしょうか。 今の問題について先に私の意見を申し上げます。個人ユーザーが介入してきて、これが特許クレームに加わっている以上は特許権侵害を認めるのは無理だろうと思います。間接侵害の規定を適用して、という問題がありますが、それも独立説を取るかどうかという問題も関わってくると思うので、なかなか個人ユーザーが入ってしまうようなクレームにすると実際上の解決の方法はありません。今さらにDが入ってきた場合、やたらに警告をすると不正競争防止法上の虚偽の責任を負わなくてはならないという問題も生じてきます。結局実際問題としては、現実にもそうしているのですが、このような問題が生じてからは一般的に個人ユーザーのところまではクレームしないということで実際上は対応しているのだろうと思います。それでは対応しきれず、大きな問題があるというのであれば検討する余地はあると思います。そうでないかぎりはあまり検討の必要性はないのではないかと思います。 資料に、教唆の例として侵害品の製造方法をネット上で不特定多数者に公開した場合とありますが、この不特定多数者というのは当業者以外のことを指すと理解したのですが、よろしいでしょうか。当業者には実施方法がわかるように懇切丁寧に明細書を書くのが特許法の精神だと思います。しかし当業者以外の個人は業として実施することにはなりませんから、個人に教えても良いと言えなくはないと思います。しかし結局はその個人は違法のプログラム特許侵害物を作成し、ビジネスをする人ではないか、と思います。したがって個人への情報提供は、教唆たり得ないのではないでしょうか。 |
事務局 |
もちろん今想定しているケースは特許権侵害を惹起するような情報提供、インストラクションと言いますか、指導、指示という類型についてです。当然その特許権侵害を惹起できるのは当業者でしかありえません。そういうことを念頭において資料中では議論しているわけです。ここで参考にしたのは米国のactive inducementですが、特許侵害の詳しいインストラクションというのがactive inducementのひとつの類型としてあがっております。ドイツの特許法では方法の特許を譲渡すると言いますか、第3者に教えるということが特許権侵害になるのだという条文もあったものですから、そいうこともひとつ念頭において御議論いただければと思います。 |
小委員長 |
例えば、クレーム自体のノウハウではなくて、クレームを使って製品を作るときに当然必要なノウハウなど、いろいろなノウハウがあると思います。製品ができなければおそらく特許権侵害も起きないわけですから、やはり全体としてinduceしている場合をいうのではないかと私は思うのですが。 先ほどの当業者でない個人への教唆の件については、資料としては米国のactive inducementを参考にしたまで、ということで理解しましたが、やはり私も当業者でない個人への教唆の点は気になるところです。 |
事務局 |
そこで、今御議論いただきたいのはそういった行為が特許法として違法と評価するまでもないのかどうか、ということです。問題ないということであれば今回の論点というのは消極的帰結で我々も全く問題はありません。事務局としてactive inducementの規定を積極的に導入したいというわけではありません。こういう想定もあるという前提です。 不特定多数に対する情報提供がactive inducementになるという判例が米国にあったのでしょうか。そのあたりを確認させていただきたいのですが。 |
事務局 |
インターネット上の情報提供というのは米国の判例上、特に例はなかったと思います。あったのはやはり特許侵害品の詳しい設計方法なりを特定の業者に提供する行為というのが実際にあった事例だと思います。 不特定多数者に対する情報提供ではなく、特定の者が実施しようとするときに、具体的に情報提供したという事例ととらえるべきだと思います。 現在特許法の分野で教唆、幇助の差止めを認めない場合に困ることがあるのか、あるいは将来予測される困ることがあるのかどうかについて具体的な事例があれば、それについて具体的なメリット、デメリットを検討できるかと思います。著作権の場合にはナップスター事件の例があり、それについて差止めを認めないと困る場合も考えられなくはないのですが、およそ特許の分野でそういうことがありうるのかどうか、です。例えば利用発明ですと、基礎となる特許を使わないと実施できない場合もあるわけです。そういう利用が成立し、そのような利用発明に係る技術を提供することは問題ないとされています。利用者が基礎となる発明の特許権者から承諾を受けていれば全く問題がありません。したがって、利用発明に係る技術を提供する者が、ただちに幇助者になるわけではありませんし、禁止されるべきではないことになります。 |
事務局 |
今おっしゃられたとおり、現時点で、特許、商標についてそのような問題があるかというと、具体的に問題となったケースというのはまだありません。今後5年以内を考えた場合、このような新たなケースを想定して現時点で検討する必要があるか、ということについて、御意見をいただければと思います。 ビジネス方法特許の場合、国境をまたがって実施されるケースが非常に多いと思います。米国特許法では、サーバが外国にある場合でも、active inducementで特許侵害とすることができると聞いています。ドイツでもそのような規定があり、日本にもあれば、将来国際間の実施が増えた際の議論がしやすいのではないでしょうか。 私個人としては意識の相違があります。特許法の精神というのは特許を守ってくれて、技術革新を進めようというものだと思うのです。ただし、保護するというのは、クレームに書いてないことまで保護してくれとはいってないわけです。技術屋の立場から逆にいうと、特許破りというのはおおいに奨励したいものです。特許破りがあるからこそ技術は進歩します。一番よい例は光ファイバーだと思います。初期の段階で基本特許が取られていなかったために研究が進み、現在では日本は世界の6割のシェアを持つようになれたわけです。ですから技術者としては、とりあえずクレームして、早く権利化したい、ネットワークの世界では特にそうですが、押さえられないものが出たら仕方がないと割り切るべきではないかと思います。 幇助や教唆に関して差止請求を認めるということについて、この際積極的に考えていった方がいいのではないか、また、それが知的財産法の進展に働くだろうと思います。その要件をどうするかということはかなり難しいだろうとは思いますが。 業要件については残すべきだと思います。あと、幇助、教唆のところはネットワーク特有の話ではなく、一般論としてどうなのかというところも議論すべきだと思います。また、現在具体的事例があるのかということについては、実際のところまだ具体的事例がなく、詰めて議論ができないのだと思います。 |
事務局 |
そのあたりはケースバイケースであって、直接侵害が成立しないから作らざるを得ない類型というのもあるわけです。個人によるテレビの組立の場合の部品の供給のような例がありますが、そのような場合は独立説的になります。 間接侵害があるからには直接侵害もあるのだろうという原則もあると思うので必ずしもあてはまらないケースもあるでしょうから、そのような場合をどのように救済できるのかという意味で質問させていただきました。 差止めについてはやはり明記していった方がいいと思います。ただ、現時点で行った方がよいかどうかは多少疑問があります。現在特許になっているクレームでは主体が明記していなかったケースが多かったと思うのですが、そのような規定ができたために既存の特許権の侵害の可能性がでてくることになります。急激に新しい規定を作ることで既存の秩序はどうなるのか、ということが気になります。 私も無形的教唆・幇助に対する一般的差止までを認めるのは少し早すぎるような気がします。特に判例も古いもので差止請求権を否定したものが一件あるだけです。教唆、幇助については民法でも共同不法行為における客観的因果関係、共同の意思についての非常に細かい議論がなされています。先ほどこの民法における一般不法行為の議論より深い話はしないという御意見がありましたが、特許侵害というのは構成要件すべてを充足しなければ構成要件にならないというのが大前提ですから、やはりそのような特許法に限定した教唆、幇助というのは何かということを徹底してから差止請求について議論しなくてはいけないのではないでしょうか。 |
小委員長 |
仲介者責任については、殆どがプライバシー侵害と名誉毀損の事件で、著作権の問題でありますので、特許ではまだ具体的事例がありません。また、基本的には総務省での法律の検討状況を待つべき問題でもありますので、特許・商標に特有の意見は少ないと思いますが、何かあれば意見をお願いします。 ネット上で特許について問題となった事例は知りませんが、インターネット上で商標が勝手に用いられている事例は非常に多いです。そのような時にそれはだれが使用しているのか権利者は全くわかりませんので、まずプロバイダーに連絡したこともあります。そのときは協力していただけたのですが、一般にそのようなことが期待できるかということは別だと思います。今総務省が取り組んでいるのは仲介者の責任の免責についてです。ですから特許権や商標権者の保護をしようという趣旨とは少々違うのではないかと思います。ただし発信者情報の開示を可能とする手続を創設するということについては、特許法や商標法中にもひとつ規定があってもよいと思います。 ホスティングの例で、故意・過失を欠くので責任がないとありますが、特許侵害、商標侵害は故意・過失は要らないということになっていますので、議論の仕方としては、共同不法行為しか成り立たないのか、サーバの中に特許権侵害、商標権侵害になるものが含まれているのにプロバイダは直接侵害は成立しないのかという疑問があります。仲介者に故意・過失が無ければ、損害賠償の責任は無いという議論はわかりますが、そこから差止請求はないという議論に直接いけるのかということです。そのような問題があるので、今御指摘ありましたように、特許権,商標権侵害について免責といいますか、権利を制限するための規定を置く理由がないわけでもありません。そういう権利を制限するための条件として発信者情報の開示を認めるという、いわゆるNotice& Take Downを行うのも考えられます。権利者側としては実際の侵害者はわかりませんので、プロバイダでおさえなければ実際の権利行使はできません。私がプロバイダに義務を課してもよいと思う理由としては、プロバイダはお金をもらって場所貸しをしているわけですから、場所貸しをしている人が特許権侵害、あるいは商標権侵害をしているかもしれないとすると、監視をするのは無理でも通知を受けた場合に何らかの行動をとる義務を課すことは可能なのではないかと思います。 この件に関しては「裁判所等の介在などが必要である」と資料中にはありますが、この「等」というのが問題です。総務省の取組みでは「送信者情報開示機関指定法人」というのを置くとありますが、これはかなり自体を複雑にすると思います。まず開示機関の性格の考え方にも大きな議論があると思いますし、手続に非常に時間がかかるのではないかという懸念もあります。ここの検討はぜひ慎重に行っていただきたいと思います。 指定機関というのは、一定の場合にプロバイダー等の授権に基づいて訴訟追行するという任意的訴訟担当の性格をもつもので、発信者情報の開示の判断自体は裁判所が行うという方向で検討されていると思います。 紛争処理機関の仕組みづくりがポイントとなりそうですので、是非迅速な検討を期待したいと思います。 仲介者責任に関しては、総務省で一般法的アプローチが行われているのでその状況を見守るのもひとつの手だろうと思います。ただし、並行して特許・商標に固有の問題がないか検討する価値もあると思います。 ネット上の情報については、特許や指定区分を伴った商標といった個別の権利としてではなく、コンテンツそのものとしてとらえる必要があると思います。 |
事務局 |
それでは今頂きました御意見の中で、総務省で検討しておりますような制度について御意見御要望がありましたので、それは私どもの方からできるかぎりお伝えしたいと思います。 |
小委員長 |
以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第5回法制小委員会を閉会させていただきます。本日は長時間ありがとうございました。 |
[更新日 2001年10月9日]
お問い合わせ |
特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室 |