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第7回法制小委員会 議事録

特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室

  1. 日時:平成13年10月12日(金曜日) 10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁庁舎16F第1~3共用会議室
  3. 出席者:
    中山委員長、相澤委員、飯村委員、井上委員、太田委員、北村委員、熊谷委員、斎藤委員、澤井委員、白石委員、竹田委員、谷委員、則近委員、橋本委員、牧野委員、松尾委員、丸島委員、水谷委員、森田委員、安田委員、山地委員
  4. 議題1:産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会報告書(案)について
    議題2:今後の予定について
  5. 議事概要

審議室長より資料を用いて説明の後、討議

小委員長

ただいま説明のありました報告書(案)についてこれから御議論いただきたいと思います。この報告書(案)はこの委員会で前回議論しました、「これまでの議論のまとめ」について皆様から頂戴しました意見の内容、あるいはその後各委員から頂戴しました意見を参考に修文し、それに第1章、第2章第4節の「迅速かつ的確な審査と利便性の向上」、第3章の「検討のまとめ」を加えて作成したものであります。今回はこの追加部分も含めまして、皆様の御意見を頂戴したいと思います。どの点でも結構ですので、御意見ございましたら御願いします。

技術屋の間で議論する際にポイントとなるのは、とにかく早く特許査定していただきたいということ、また、わかりやすくしていただきたいということです。p4や、p8の「迅速かつ的確な審査の必要性」というところの記載をもう少し考慮いただければと思います。現在はインターネット、ブロードバンドも含め、非常に技術の進歩、普及が早いため、早く審査していただかないと、物が普及した後に特許権の設定が行われるということになってしまいます。そのことにはどこにも触れられておりません。処理件数が増えるから早くしなければならないのではなく、もともと外部状況が変わってきているということです。
その観点からいいますと、p7に「事件の件数と平均審理期間」という記述がありますが、これは裁判所の話ですので、少なくとも、現在の特許査定の平均期間というデータがあってしかるべきだと思います。一部に先行事例を添付した出願は早く審査が行われているという記載があったかと思いますが、そのような事例を明確に記載していただきたいと思います。
先行技術開示(p46)については賛成ですが、それに付随して、特許庁ではどのくらい審査期間を短くすることが目標なのかということ明確にしていただきたいと思います。これは目標ですから、実際どうなるかはわかりませんが、そうすれば我々もそういうことであれば、先行技術開示をするのは大変だが、努力しようという意識が持てます。
第3章の直ちに取り組むべき課題としては、法改正だけではなくて、努力目標も是非明記していただければと思います。
特許文献のメタデータ化については、世界に対しても積極的に働きかけて頂きたいと思います。この報告書(案)にはそのような記載はありませんが、是非そうしていただきたいと思います。我々が一番困るのは外国の特許が存在しているのに、同様の発明を模索するということです。ですから、いかに早く外国特許の情報をつかむかということも大きな課題ですので、ぜひ外国特許文献の検索と日本特許文献の検索が同じようにできるという体制の整備に、早く取り組むべきであるということを特許庁の方から働きかけていただきたいと思います。

事務局

大きくわけて4つの点について御意見をいただいたわけですが、委員からは最初の「早さ」については審査に限らず、公開期間も含めて特許制度全体を早期化すべきとの意見をいただいていると承知しております。ただ、現在、例えば出願から公開まで18ヶ月というのは国際的フレームで固まっていますので、世界全体への働きかけが必要になっています。21世紀の特許制度がどうあるべきか、技術開発にどう対応していく制度なのかということを踏まえた提案ができるよう、我々も努力していきたいと思います。
二つ目の御指摘である、特許出願の平均審査期間のグラフについては挿入させていただきます。3番目の先行技術開示をすることでどのくらい審査期間を短縮できるのかということですが、これは後で事務局の方からお答えさせていただきます。最後の明細書のメタデータ化や、XML化についてですが、今の特許庁の電子出願システムは極めて早い段階で実施したため、現在、Xファイル形式という極めて特殊なファイル形式で出願していますが、PCT出願様式との統一をあわせてXML化を導入する予定です。これは国際的にも進んでいる方向ですから、データ交換面のインフラの統一は今後進んでいくと思っております。

事務局

第1回の小委員会からスピードについてはずっと御指摘をいただいておりまして、これは法律的な問題より、特許庁の審査のパフォーマンスの問題でありますので、私も御指摘はごもっともと思っております。従いまして、最近の技術革新の早さにあわせた審査というのは必要だと思います。しかし、審査官の数を増やすというのは不可能に近いと思っています。アメリカのように弾力的に審査官の数を調整することはできませんし、御承知のとおり公務員の数はむしろ減らすことで閣議決定されておりまして、新規の採用は前年を上回ってはいけないということになっていますから、減る一方の時代でございます。その点をまず御理解いただきたいと思います。ただ、それでは特許制度自体がますます時代にあわなくなりますので、早期審査の制度をいかにして具体的な技術革新のニーズにあわせていくか、ということを考えざるを得ないのではないかと思いますので、是非お知恵を頂戴したいと思います。他方、業界の方々とも御相談をしているところですが、必ずしも直ちに審査請求をしなくてもいいという出願もかなりございます。その辺も踏まえて本来ならば順番に審査を行うべきでありますが、やはり急ぐ案件から取り組むというように大きく転換せざるを得ないのではないかと思います。

小委員長

では事務局の方から、先行技術開示により、どのくらいの審査期間の短縮を目指しているのか、御説明を御願いします。

事務局

先行技術開示に伴う審査期間の短縮についてですが、定量的に今申し上げられることができないのですが、計画的には出願人の方が周知の技術を提示していただくことで、審査官の先行技術調査の負担が軽減されることを期待し、そのような積み重ねによって、我々としても審査期間の短縮に向けて、総合的な対策を取りながら進めていきたいと思います。

今回の審議会の議題の対象ではなかったのですが、今の「早さ」ということに関連してお聞きしたいのですが、ある業界分野では3~6ヶ月ぐらいで商品寿命が終わってしまう商品があります。そのような商品分野では1年以前、6ヶ月程度で特許査定を頂いているというようなケースがあるようですが、それでもなかなか権利行使を実行できないと聞きます。商品の寿命サイクルが早いものについても実際の権利行使が可能な方策は考えていらっしゃるのでしょうか。

事務局

短いライフサイクルの商品に対してどのような対策をとるのか、ということについては、特許に限らず、デザイン、商標にもいえることです。ひとつには早期審査を行っていくということ、二つめには、例えばそれが商品形態や、商品構造に関わるものであれば実用新案法、あるいは不正競争防止法による対応もあろうかと思います。そのような中で政府全体としても短いライフサイクルの商品にも対応することはここ数年の課題になっております。ただ、今おっしゃられたのはそれでもまだ十分でない分野がまだある、という御指摘でしょうか。

権利は早く獲得しても、権利行使ができないという問題があります。例えば差止請求しても裁判で審理している間に事業が終わってしまい、差し止めができないということがあります。エンドユーザーに商品が渡ってしまったら、業要件が満たされないということで、権利行使ができないという問題があります。権利を早くとるということだけでなく、権利を活用できないという問題があるのではないでしょうか。

事務局

そういう意味では裁判所の問題でもありまして、仮処分という方法もあろうかと思います。2年前の有名な事件でiMACの商品に非常によく似た製品がありましたが、あの件は確か1ヶ月で販売停止の仮処分が出ました。そういう極めて短い期間で仮処分が出ているという動きはあるわけです。そういう意味では権利者側の準備というのも非常に大きな要素だと思います。

もう一点、先行技術開示で特許文献を引用することにより、その特許権につき悪意が推定され、補償金請求権の発生要因となるのではないかとの指摘については、御検討していただけましたでしょうか。

事務局

検討してはみたのですが、引用文献の記載が直ちに補償金請求権の悪意の認定に直結することはないのではないかと思います。

警告がなくてもその技術を知っていたという効果があるのではないか、ということなので、その点を懸念されているのですが。

事務局

本人としては、その文献の存在、内容自体は知った上で、権利侵害していないという判断で特許出願しているわけです。したがって引用文献として記載したことが直ちに補償金請求権の要件である悪意の認定に直結するということはないのではないかと思っております。

かなり前になりますが、特許ハーモ条約の検討をしていたときに、出願公開時にサーチレポートを添付するというような案がありました。それもかなり踏み込んだ案でして、先行技術との対比判断も含めてレポートを提出し、それも特許庁に代わる者が提出するという、かなり大胆な案だったのですが、その後それはどうなったのでしょうか。今回の先行技術開示制度では出願人がその開示手続を担うということですが、それは前回の案の変形なのでしょうか。

事務局

当時の国際交渉の担当をしていた者の一人として、かつての経緯を申し上げます。御指摘のとおり1984年に提案された、最初の特許ハーモ条約の草案の中には、審査は出願の3年以内に開始され、2年以内に終了するということと、公開公報を出す際に、庁あるいは庁が指定する機関がサーチレポートを作成することも条文としてあがっていました。しかし、1995年に特許調和条約交渉の進め方をもう少し実体面でなく、手続面に向けようという方針転換をした際に、このサーチレポートの問題を含む審査処理期間の条項と、先願主義の条項と、グレースピリオドの条項の3つが削除され、いわば棚上げされてしまったわけです。その後にいわゆるPLTの議論が進んで、方式ハーモを中心とした議論ができた、ということです。それで、この後はどうするか、ということで、2,3年前から再度議論が始まったのですが、その中には先願主義の問題や、公開主義の問題は出てくるかもしれませんが、サーチレポートを公開公報発行と同時に作成するという動きは今のところありません。

サーチレポートを公開公報と同時に特許庁が作成するというのは大変な負担ですが、権利の早期化という意味ではかなり大胆な方法かと思います。

前回終わりに申し上げました、商標法の抜本的な見直しは「今後取り組むべき課題」の国際調和の辺りに盛り込まれているということなのだろうと理解します。また、p39の[その他の指摘事項]のところは二つの問題が混在していると思います。一つはネットワーク上では商品と役務を区別する概念が相対化しており、独占禁止法でも商品と役務の区別がないというお話もありました。商品について直接商標をつけないもの、言い換えますと、周辺行為(広告)と言及されていましたが、商品に付すことのできない、ネットワーク上での商品に関する商標の使用というのがあるわけです。これはネットワーク上での商品役務の販売が増えてきたから、このような問題がおきているわけです。商標の使用についても、使用の概念に商品と役務とを特に区別する必要がないのではないか、商品についても、サービスについても包括的に規定してはどうか、という考え方があるわけです。他の関係団体でもそのような意見の方が多いわけです。
それからもう一つ、ネットワーク上での小売業のサービスマークという問題がありますが、小売業というのはネットワーク上だけでなく、現在市場にあるわけです。小売業は、直接商品に商標をつけず、店の名前に商標をつけているということが、特に最近問題になっているのです。そこで、その小売業のサービスマークがあって、この頃さかんになったネットワーク上の小売業、あるいはネットワーク上のカタログ、通信販売、そういうサービス業というのも、米国の登録例をみても非常に増加しています。小売業のサービスマークの問題は国際調和の方からみましても、国際分類の第38類に入れている国もあります。
商品商標やサービス商標の使用の問題と、小売業の問題の、二つの問題がありますので、そこのところを考えていただきたいと思います。

事務局

御意見の趣旨は理解できましたので、御意見を反映できますように、修文したいと思います。

今後の検討課題の中の、発明の定義についてですが、これについてもいろいろ議論がございましたので、このようなまとめ方になるのだろうと思いますが、弾力的運用により「自然法則の利用」の文言が残ってもよいという認識のようですが、これはあくまでも実務というか、特許庁の行政的なものと、出願人の行動形態の中での結果であり、手法的には必ずしも確認されていることではないと思います。そういう意味では実務的にみると、ほんの一抹の不安が残っているのであります。実務家として、法改正にはならなかったけれども、ビジネスモデル関連も含めて、特許されているものについて、発明性の点で後から覆されることのないよう、保証というものはとれないとは思いますが、各員の先生方による論説等があらわれてくることを私自身期待しております。報告書中では、発明の定義規定の在り方については中長期的な検討を継続する、とありますが、直ちに取り組むべき研究テーマとしても残しておいていただきたいと思います。
複数主体における特許権侵害の事例(p57)については、既に積極的誘因や業要件の見直しを有するような具体的事例が日常的に起こっていると思います。従いまして、むしろ法的なコンセンサスが得にくい問題が残っていますが、実体面を含めての調査検討を継続していただきたいと思います。

報告書は全体的によくまとまっており、制度改正の方向性には基本的には賛成です。先行技術開示制度の導入については、出願時で知っている情報に限定する、無効理由にしない、重要性判断までは求めない等、出願人に過度な負担とならないような制度改正と、運営をしていただけると理解しています。実際にはガイドライン等の作成により運営されると思いますので、我々出願人サイドから言いますと、補正との関係はどうなるのかというようなことがありますので、ガイドライン作成についてはいろいろな意見交換を事前にさせて頂きたいと思います。中小企業等につきましてもIPDLを活用すると思いますが、IPDLの使いやすさをより一層よくするなど、制度改正とは別の環境整備もしていただきたいと思います。
今後取り組むべき課題については、御指摘ありましたように、いろいろな課題が残っていますし、国際的枠組みで進めるべきものもありますので、ぜひ国際的な潮流を作り出すよう、日本からも積極的に働きかけていっていただきたいと思います。

報告書案には私も大筋賛成です。実施行為の規定については、今の文言ではやはりネットワークの問題に対応することが難しいので、文言を変更しなければならないだろうという考えが大半でありますし、そのようにする方向は歓迎なのですが、この具体的用語として「拡布」や「供給」「提供」等があげられているのですが、これらをどのようにまとめていくのか非常に関心があります。今後の課題(p57)は発明の定義のあり方にしても複数主体による特許権侵害にしても、他の委員の方からも御指摘ありましたように、継続して審議検討すべきだと思います。ただ、具体的にどのようにして継続的かつ積極的に検討していくのかわかりません。この課題は出願人、特許権者、代理人も含め、多くの議論がある課題だと思うので、ぜひそのような議論ができる場を積極的に提供していただきたいと思います。

事務局

第1点目の具体的な法令用語をどうするかについてはこれから報告書に書いてある方向で、事務局で案を作り、内閣法制局と用語のチェックを受けることになろうかと思います。この件はかなり御関心の高い分野なので私共も調整が終わった段階で前広に皆さんに公表し、御意見をお聞きする機会を設けようと思います。
第2点の発明の定義規定の見直しを中長期的に取り組むことについては、これは現にSPLT(特許実体ハーモ条約)の論点のひとつになっておりまして、WIPOでの議論とも並行して進めていくことになります。具体案については現時点ではコンセンサスができておりませんので、その部分については更に幅広い御意見御議論をいただきたいと思いますので、中長期的という用語を入れさせていただいております。そういう意味で今後とも積極的に取り組んでいきたいと思います。

開示すべき先行技術の範囲については出願時において出願人が知っていたものに限る、ということですから、新たなサーチ作業は必要ないということです。全く記載がなければ指令を出し、指令を受けても出願人が先行技術を知らなければ書かなくてもよい、ということになっています。ですから、誠実な出願人とそうでない出願人との差をつけなくてはならないということと、本当に知らない出願人との調和をどのようにとるのか、具体的にどうなさろうとしているのかについて、この文面であると明確ではない気がします。

事務局

今回は誠実に記載していただくことを目標としているのですが、法律上の構成としては、とにかく知っている先行技術を記載してもらい、本当に知らないのであれば知らないと記載していただければよい、ということです。それが真実か否かまでを特許庁で追及することまでは考えておりません。

先行技術開示については昨年知的財産研究所で調査したのですが、結果としては米国型を採らずドイツ型を採用し、何らかのサンクションは必要であるけれども、それは拒絶理由であり、無効理由にまではしないとのことでした。そのあたりのことについては前回皆さんの同意が得られたかと思います。ただ2点言及しておきたいことがあります。
1つは、結局は特許法第36条に規定することになるのでしょうが、当該規定は出願人が証明責任を負う、最も重要な規定でありまして、いわゆる拒絶理由にはなるが、無効理由にはならないという規定を設けるということが全体的な整合性という観点から問題はないのか、ということがあります。法律の条文というのはそれが成立してしまえば一人歩きしてしまうものですので、特許行政が今後どのように運用されるかによって変わってくるわけです。そこのところの制度的担保はないであろうと思います。ですから、もっと厳しく運営されることもあるということを踏まえて立法されることを承知した上で、賛成しないといけないと思います。

事務局

先行技術開示制度を導入することが、法制的整合性の面から問題はないのか、という御質問ですが、法制局と調整の上、工夫して規定したいと思います。基本的には当小委員会で話し合われたことをストレートに規定したいと考えていますし、運用上も先行技術文献の記載を第一の目標として考えたいと思います。今の段階ではそれ以外にどうするか、ということについての具体的案はございません。今後ガイドライン作成についてはユーザーの方々と協議していかなければならないので、そのあたりで御懸念がある場合は御意見をいただければと思います。いずれにしても、ユーザーの方々の理解と協力なしにはこの制度はうまくいかないので、御理解のいただけるような運用を目指していきたいと思います。

先行技術開示についての理解と協力は非常に大事だと思いますが、報告書には出願人に多大な負担を課さないようにする、とあります。先行技術開示内容を、データベースでのアクセスや、公報に載せるなどして、出願人の便宜に供するようにしていただきたい、との意見があったと思います。そのようなお考えが具体的にあるのであれば、本報告書にも明記していただければ、協力も得やすいのではないかと思います。

事務局

平成15年7月以降はXMLを用い、開示頂いた先行技術のところにタグによる印がつき、IPDL、CD-ROM公報での検索は便利になるものと期待しております。

先行技術開示の制度がどのように作られていくかについて、心配なところがないわけではありませんが、この制度は出願人と特許庁の信頼関係に根ざしており、特許庁側でも逐条解説等に法制化の意図を明記するなどし、今回議論された趣旨がわかるようにし、かつ法改正がなされた後にその趣旨を逸脱して、誤った運用がなされることのないようにして頂きたいと思います。

先ほど御意見がありましたように、技術進歩の急速な進展を考え、先行技術開示に伴う審理期間の短縮目標等の記述があってもよいと思います。ただ、その処置の方法としては、人員増員が困難であればアウトソーシング増加等他の方法もあると思うので、是非今後の課題として設定して頂きたいと思います。
報告書案p20の生産方法発明の成果物に無体物を含むべきかどうかは、「物」「方法」以外の第三カテゴリを設けても生じる問題であり、記述の仕方がやや不適当ではないかと思います。
また、先ほど御発言ありましたように、報告書p39の[その他の指摘事項]には、商品と役務の近接化と小売サービスの問題が混在していますので、整理をしていただきたいと思います。
最後の商標法の見直しは、国際ハーモとの関係から制度のあり方の検討を進めることが必要と記述されています(p57)が、それとは別に、使用概念が今のままでよいかどうかについては、課題になると思います。
P46の先行技術開示制度にはどのようなメリットがあるか、という議論が若干ありましたが、これについては社会的負担をどうするのか、ということが問題ですので、特許庁の負担を大きくすれば、それだけ社会的コストが高くなるわけですから、出願人も協力する価値があると思います。
p57の「自然法則を利用した技術的思想の創作」という現行法の発明の定義は、ソフトウエア関連発明の特許適格性(発明の成立性)を認める上での制約要因となっていない、との記述について、現行のままで全く問題がないのかどうか、また、現行のガイドラインで記述されている、発明になるものとならないものの区別についてもうまくできているのかどうかについては疑問があります。
国境をまたがる事業活動への対応(p57)についてですが、「国内法の適用の可否」とは海外の行為にも日本法を適用させるということを念頭においているのか、それとも準拠法のこと言っているのか、明確にしていただきたいと思います。

事務局

P8の技術進歩に対応した審査期間の短縮をもっと強調すべきではないか、との御意見についてはそのような方向で工夫したいと思います。P20の「物」を生産する方法の発明についての問題は、第3カテゴリを設けても同じ問題があることは承知していますが、簡潔に書き過ぎたようですので、誤解の起きないよう修正したいと思います。p39の「その他の指摘事項」については御指摘のとおり、正確に修正いたします。発明の定義の議論はかなり深く行い、結果としてはp14の具体的方向性で考えていく、ということです。その中でも、現行の判断基準の問題点についても指摘していますので、今後も継続的に取り組んでいくべき課題として認識しております。国内法の適用の可否については、これもやや正確性を欠いているかもしれませんが、日本の特許法上、違法と評価できるのかどうかということを念頭においております。より正確な言葉がありましたら、そちらに変更したいと思います。

先ほどご質問のあった報告書p28の民法719条の趣旨についてですが、「複数の者が共同行為の認識を有し」というのは、他人の行為を自己の行為として利用する意思を持って、という意味だと解されます。このような主観的関連共同性がある場合には719条の要件を満たすということについて異論がないという記述については問題ないと思います。同ページの「複数主体が共同して特許発明を実施する場合」の記述の方がむしろ難しい問題が含まれておりまして、「全ての主体及び行為について差止を請求し得ると考えられる」ということの根拠が「刑法上の共犯理論や民法上の共同不法行為の考え方と同様」とありますが、この点について若干補足させていただきます。民法719条は損害賠償責任を負うかどうかに係る条文でありまして、その要件として行為の一体性ということを要求していますが、差止請求の場合に民法719条のような考え方がどういう意味をもつのかについては、民法の領域では必ずしも十分な議論がないところだと思います。特に共同実施の場合は各人の行為が特許請求の範囲のすべてを満たすわけではないので、各人の行為を個別に見ると、特許権侵害とはいえないが、それらが一体となると特許権侵害が認められるということになります。このような場合に、各人の行為に関連共同性があれば差止対象になるという考え方を、民法や刑法と同様の考え方から特許法の分野でもできる、というのがこの記述の趣旨だと思います。私も結論としてはそれで良いと考えますが、この点が何の異論もなく承認されているわけではないと思います。719条の場合にも差止を念頭においた議論が十分に深まっておりませんので、民法の考え方がどこまで応用がきくのか、というところは民法、特許法それぞれの面から検討する必要があると思います。ただ、結論としてはこの記述でよろしいかと思います。

先ほど委員から御発言ありましたように、私も幇助、教唆についての具体的ケースは既に起きていると思います。前にこの審議会で議論したときに、要件、効果については民法の方に任せると事務局から御意見があったかと思います。私は民法の方の不法行為関係の文献を探しましたが、公害、製造物責任、名誉毀損等についてはいろいろ議論がありますが、特許と民法の関係について民法学者により議論された論文等は特に見あたらないと思います。特許法で共同不法行為をどうとらえ、どういう責任、効果を課するかということになりますと、特許関係者と民法関係者の深い議論が必要であり、今後の課題として、積極的に会合を設けて議論の場を設けて欲しいと思います。

事務局

知的財産研究所等を利用して、このような問題についても議論を進めたいと思います。

発明の定義の「自然法則を利用した」という文言が制約要因となっているものではないという記述は、要約的表現のためそのような記述になっているとのことでしたが、「自然法則を利用した」と書いてある以上、当該定義は制約要因だと思います。ただし、それは必ずしも悪い意味での制約ではなく、単なるアイデア等を排除するリーズナブルな制約要因となっていると思いますので、そのようなこと示唆する表現上の工夫がいただければ、と思います。

先行技術開示について一言申し上げます。先ほどからの議論ですと、出願人は知っている技術を開示すればよいのであって、それ以上の調査義務を課すものではないとの御説明があり、それは理解しました。さらに、その先行技術を開示した場合には平成15年以降は、XML化することにより、先行技術にタグがついて検索が容易になるとのことです。その場合に先行技術情報というのは、特許文献の場合は問題はないのでしょうけれど、非特許文献については、著作権法上の無断複製、無断の公衆送信等の問題があって、現実には非特許文献には容易にアクセスできないという問題があるのではないかと思います。
実際特許庁の方で行っているコンピュータソフトウエア関係の、非特許文献のデータベース(CSDB)がありますが、第3者がアクセスし、調査しようとする場合も著作権法上の問題があって、特許庁の方では格別オープンにしないという趣旨ではないにもかかわらず、著作権法上の問題があって慎重にならざるを得ないと伺っています。先行技術開示は出願人に新たな調査義務を課すものではないという前提にたったとしても、明細書中に先行技術を記載いただくということですから、少なくとも従来に比べ、出願人側に負担が増加していると思います。仮にそうであるならば庁の方からも情報利用を容易化していただくと言いますか、行政サービスを高めていく必要があると思います。その関係で著作権法上のいろいろな問題があるならば、行政手続上アクセスするという、限られた範囲でのことですので、一般的に著作権者に多くの負担を課すということではないのですから、著作権法上の改正も一方で考えていただくことが、出願人に対して新たな負担を課すこととの引き替えといいますか、情報へのアクセスを容易にするということになるのではないかと思います。そのようなことが、新しい制度に対する出願人の協力を促す要因になると思います。

事務局

この件は以前も御指摘いただきましたが、今回は文献名だけですので、複製を明細書に添付していただく必要はないのですが、いずれにしても非特許文献にアクセスする際に著作権法上の問題が出てくることは間違いないと思います。この点について、来年の著作権法上の改正も予定されていると伺っておりますので、私どもの方から、文化庁著作権課に改正要望をしていきたいと思います。

p30の積極的誘引に関する記述中には賛否両論ありますが、否定説の中に「正当なビジネスへの萎縮的作用を及ぼす可能性があること」、「実際の問題が、特許や商標の関連分野ではまだ生じていない」(p31)という記述があります。しかし、今日の議論では既に実例はあるとの指摘もありました。もし、既に事件が起きているならばこの「生じていない」という記述は削除していただきたいと思います。また、賛否両論のうち、どちらにポイントがあるかというと、否定説にウエイトが高いように思えます。それを前提に今後検討するといってもあまり熱が入らないような気がしますので、むしろ、肯定説を重視した書きぶりにしていただきたいと思います。

事務局

具体的事件が既に起きているかどうかについてですが、米国では既に著作権に関しては事件がありますが、特許・商標については具体的事件が起きていないということです。委員の方々の御意見をここに記述したのですが、発言者の方も、積極的反対というよりはむしろ様子をみるべきとの御意見だったかと思います。事務局としては、別段否定説にウエイトを置いて、今後の議論の芽をつぶそうという意見はございませんので、可能であれば、もう少しにニュートラルな表現に工夫したいと思います。

小委員長

積極的誘引について特に否定説だけを強調しているということはないと思いますが、記述の分量の不均衡があるため、分量を考慮するなどの修文を考えさせていただきたいと思います。

事務局

小委員会全体としては現在のところ積極的誘引の規定の導入は静観するとの方向と理解しましたので、このような表現にさせていただいております。

現状で実例はないかもしれませんが、今後は規制事実があってから取り組むのでは遅すぎるのではないかと思います。十分予測できることなのですから、事例があるかないか、だけではなく、検討を早めるべきではないかと思います。

事務局

直ちにアクティブなインデュースという趣旨の用語で日本の実定法としての案とはなり得ないと思いますので、どのような案があるかを検討し、具体案を掘り下げるための検討課題として我々も継続して取り組んでいきたいと思います。

p31の個人ユーザーがクレームの書き方を工夫する、というところで、「多少技巧的な嫌い」はあるが、との記載があります。侵害問題を扱う実務家としては、どこまでがその特許発明の要件かということは非常に大きな問題です。やはり、技巧というよりも、発明がどこまでかを、正確に把握して明細書を書けばよいので、「技巧的な嫌い」というのは削除してもよいのではないかと思います。

小委員長

他に何か御意見ありますでしょうか。それでは今後の予定について事務局から御説明願います。

事務局

今日、全体について御検討いただき、報告書の御意見もいただきましたので、今後修文の調整をさせていただきたいと思います。その後、委員長にお諮りし、1ヶ月弱になりますが、パブリックコメントを募集致します。ホームページ、法律雑誌等の媒体を利用し、広くパブリックコメントを募集したいと思います。また、説明会も積極的に開くことを予定しております。パブリックコメントをとりまとめた後に、必要があれば適宜修正することになりますが、大幅な修正を除いた個別具体的なことにつきましては小委員長の方に御一任いただければと思います。
パブリックコメントのとりまとめ結果、修正の有無については事務局から全員の委員の方に御連絡致します。その後11月の下旬以降にこの法制小委員会の上部機関であります、知的財産政策部会を開催しまして、この法制小委員会の報告を行う予定であります。

小委員長

ただいまの御説明につきまして御質問ありませんでしょうか。それではこの報告書案につきましては本日の議論と来週から行われますパブリックコメントを参考にしまして、若干の修文を行いたいと思います。今事務局から御説明ありましたように、大幅な改正にならない限りは私に御一任いただきたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
それでは最後に及川長官より御挨拶いただきたいと思います。

特許庁長官

最後まで大変活発な御議論をいただきまして、厚く御礼申し上げたいと思います。本年5月に産業構造審議会知的財産政策部会の下に、この法制小委員会が設置されたわけであります。急速なインターネット等の発展に伴うコンピュータプログラムの流通という、新たな保護対象の登場もございますし、また、電子商取引等をはじめとします、ネットワーク上の経済活動がますます発展するという時代の中で、どのように特許法、商標法といった知的財産法の整備をすべきか、という大変難しい課題に直面する中で御議論賜ったわけでございます。爾来7回にわたりまして集中的に御審議いただいた結果、本日、大変充実した中身の報告書案をとりまとめていただくことができたかと思います。委員の皆様、特に中山小委員長には心から御礼を申し上げたいと思います。なお、本日いただきました御意見を参考にし、引き続きパブリックコメントを踏まえて検討し、次期通常国会に提出したいと思います。
今回の焦点はIT化への対応を中心として、必要な論点を総点検をしていただいたわけでございますが、他方、本日も様々な御意見がありましたようにIT化以外の観点につきましても、知的財産制度をめぐっては様々な御議論が提起されているわけでございます。司法制度改革との関連では次期通常国会への改正法案への提出へ向けて検討をしております弁理士法に加えて、より強力かつ迅速な権利行使を可能にするため、引き続き検討する必要があるのではないかと思っております。本日もたびたび議論がでましたが、国際動向如何によりましては、より広範な観点からの改正を行うべき時期というのが遠くないのではないかということも踏まえなくてはならないと思っております。これらの課題につきましては庁内の体制を十分に整えて臨む所存であります。
いずれにしましても、特許制度は大変めまぐるしく変動します経済社会に適合する制度でございます。常にスピードが大事であるという御指摘もいただきました。それを十分踏まえて対応しなければならないと思っております。生きた知的財産制度として今後も経済社会の発展に資するよう、今後も特許庁として取り組んでいきたいと思っております。委員の皆様につきましては今後とも御指導、御鞭撻いただきたいと思います。
なお、引き続き様々な面で御協力賜ることになろうかと思いますが、今回の報告書をひとつの区切りとして、さらなる前進を図りたいと思っておりますので、よろしく御願い申し上げ、心から感謝を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。

小委員長

全7回にわたり、活発な御議論をいただき、ありがとうございました。私もいろいろな審議会に参加しておりますが、この審議会はかなり活発かつ実質的で有意義な御意見を頂戴できたのではないかと思いまして、心から御礼申し上げます。小委員会としてはこれで終了ですが、これから庁として大変な作業が待っているわけでありまして、特に、室長をはじめ、皆様には体に気をつけてがんばっていただきたいと思います。長官のお話にございましたとおり、ITであるとか、ネットワーク関係を中心とし、クロスボーダーの問題ですとか、検討しなければならない案件がこれ以外にも山積しているわけでありまして、今後とも委員の皆様方にはよろしく御願いしたいと思います。それでは以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会の法制小委員会を閉会させていただきたいと思います。長時間、ありがとうございました。

以上

[更新日 2001年11月27日]

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