• 用語解説

ここから本文です。

第1回紛争処理小委員会 議事録

特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室

  1. 日時:平成14年5月28日(火曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁庁舎 特別会議室
  3. 出席者:大渕委員長、中山委員、秋元委員、伊藤委員、斎藤委員、作田委員、佐藤委員、竹田委員、中西委員、松尾委員、丸島委員、諸石委員、山下委員、
  4. 議題:特許権等に係る紛争処理の現状と課題について

議事録

議事録

広実審議室長

それでは、定刻でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第1回紛争処理小委員会を開催いたします。
本小委員会につきましては、本年4月に産業構造審議会知的財産政策部会委員各位に書面にて御審議いただき、審判制度等を中心とした工業所有権に関する紛争処理制度のあり方につき検討するということで、当小委員会の設置が決定されております。
委員長につきましては、運営規定によりまして、部会長が指名するものとされております。本小委員会では、中山信弘部会長により東京大学先端科学技術研究センター教授の大渕委員をご推薦いただいております。ご本人にもご内諾をいただいておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、委員長、一言ごあいさつをお願いします

大渕委員長

おはようございます。この紛争処理小委員会の司会役を仰せつかりました大渕でございます。
この小委員会のテーマであります特許権等に係る紛争処理というのは、権利としての特許権等の実効性に文字どおり直結するものでありまして、まさしく特許制度の要の一つともいうべき重要な制度であることは申すまでもないことかと存じます。紛争処理につきましては、具体的内容として審判、異議、審決取消訴訟、侵害訴訟のいずれに関しましても、特許権自体の重要性が非常に高まってきているということに伴いまして、これらの手続についても重要性が高まってきているわけであります。
これらの手続というのは、申すまでもございませんが、いろいろと複雑な性質を有しておりまして、民事法ないし私法的な側面もあり、行政法ないし公法的な側面もあり、また三権分立の観点からいたしましても、行政と司法の両方にまたがる、そういう意味で法的にも複雑困難な問題をいろいろと有しております。そして、先ほど申しましたような諸手続におきましては、実現すべき大きな目標といたしましては、もちろん適正な処理、迅速な処理、ユーザーにとっての利便性という3つが非常に重要な要請ですが、これらの要請についてのバランスを図っていくというのが究極的には重要なことになっていくのではないかと思っております。
今申し上げましたような特許権に関する紛争処理につきましてあるべき姿を考えていきますには、関係各界の様々なバックグラウンドや専門的知見をお持ちの委員の先生方のいろいろな視点からの徹底的な議論というものが不可欠になってくるかと存じます。限られた審議の時間の中ではございますが、できる限りいろいろな視点からの掘り下げた徹底的な議論をいただいて、特許権等に関する紛争処理のよりよい制度の立法的提言を目指してまいりたいと存じます。このような議論のスムーズな進行のために、司会役として微力ながら努力してまいりたいと存じます。
以上をもちまして、簡単ではございますが私のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

広実審議室長

ありがとうございました。
では、以降の議事の進行を大渕委員長にお願いいたします。

大渕委員長

承知いたしました。
それでは、本日は第1回の委員会でございますので、事務局から委員の皆様のご紹介をお願いいたします。

【事務局より委員の紹介】

大渕委員長

ありがとうございました。
皆様よろしくお願いいたします。
議事に入ります前に、及川特許庁長官及び大森特許技監から一言ごあいさつをお願いいたします。よろしくお願いします。

及川特許庁長官

特許庁長官の及川でございます。本日は、委員の皆様方におかれましてはご多用のところをご参集いただきまして、まことにありがとうございます。第1回の会合でございますので、一言ごあいさつをさせていただきたいと存じます。
ことしの4月、おかげさまをもちまして、2年近くにわたって産構審でご議論いただいてまいりました特許法あるいは弁理士法の改正法案が成立をいたしました。既に公布をされておりまして、その施行の準備を現在いたしているところでございます。この国会審議等を通じましても、さまざまな課題が、なお知財関係に関しては討議の中でもございました。
そのうちの一つが、本日以降ご議論をいただくことになろうかと存じますいわゆる紛争処理の問題でございます。当然のことながらプロパテント政策の遂行に当たりましては、強い司法あるいはエンフォースメントというものが重要でございますけれども、アメリカに比べますと、なお、さまざまな点で日本には課題があるのではないかというご指摘もございますし、特に現在、産業界の方から審判と訴訟を巡ります問題等についての鋭いご指摘をいただいているところでございます。
今回、おかげさまで総理の下でも知財戦略会議が発足いたしておりますし、また、総合科学技術会議においても知財の専門調査会の議論がされるなど、知財を巡る大変大きな国民的関心の中でさまざまな議論がなされているわけでございますけれども、いずれにしろ、その多くの議論というのは、最終的には、私どもの所管いたします特許法、商標法、意匠法あるいは不正競争防止法等の改正につながっていくことになります。それだけに我々としては、多くの議論を踏まえながら、予めさまざまな形での論点整理をし、方向性を出していただき、遅滞なく法改正につなげていかなければならないという使命を持っているわけでございます。
ぜひ皆様方のすぐれた知見をお示しいただきまして、できれば来年にも私ども所要の法改正をいたしたいと考えておりますので、ご審議のほどをよろしくお願いを申し上げたいと思います。大渕委員長以下、大変お忙しい中恐縮でございますけれども、よろしくお願いを申し上げます。

大渕委員長

ありがとうございました。
引き続きまして、大森特許技監にごあいさつをお願いいたします。

大森特許技監

特許技監の大森でございます。お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回の議論の中心が審判制度であることもありまして、重ねてごあいさつを申し上げます。
現在、知的財産紛争をめぐる環境は、損害賠償額の高額化、司法制度改革の進展等によりまして大きく変化してきております。紛争処理制度の一つである審判制度におきましても、このような変化に応じて合理的な制度へ変革することが求められていると思います。審判制度は、特許庁のもっている専門的な能力を活用して、紛争を公正、迅速かつ的確に解決するために設けられている制度でございます。我が国における知的財産紛争処理機能を強化するためには、審判制度の目的を初めといたしまして制度の総合的な見直しを図ることが必要であるというふうに考えております。
審判制度は、特許権の生死を決する極めて重要な制度でございます。この改革につきまして、各界からさまざまなご意見、ご要望をいただいております。特許庁としても、今取り組むべき緊急性の高い極めて重要なテーマであると思っております。本委員会では、我が国の知財関係、紛争処理機能の強化に向けていかなる制度設計が望ましいのか、自由活発なご議論を賜りまして、21世紀にふさわしい審判制度をつくり出すべく、皆様のお力添えをお願いする次第でございます。
簡単でございますけれども、私の挨拶とさせていただきます。

大渕委員長

ありがとうございました。
さて、具体的な審議に先立ちまして、本委員会の公開について皆様のご同意を得ておきたいと存じます。ご存じかとは思いますが、産業構造審議会は、その運営規定によって、部会や小委員会を含め原則公開となっておりますが、本委員会におきましては、委員各位の率直かつ自由な意見交換を確保するという趣旨から、会議自体は非公開として、会議後に配付資料、議事要旨、議事録を特許庁ホームページに掲載させていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
それでは、異議なしということで、ありがとうございました。
それでは、早速議題に入らせていただきます。
議題は、特許権等に係る紛争処理の現状と課題ということでありますが、この点につきまして事務局からご説明をお願いいたします。

【事務局より資料1、資料2についての説明の後に討議】

大渕委員長

ただいまのご説明に関しまして、ご意見やあるいはご質問がありましたらお願いいたします。どうぞ。

松尾委員

私、トレースしてないのでわからないのですが、アルゼ事件なのですが、今一般に無効審判を起こしますと、131条で請求の要旨を変更するものは認められないということで、証拠の追加もほとんど認められていませんね。それに対し、先ほどのアルゼ事件の無効審判ですと、職権で特許庁が証拠を出したようです。当事者が出すものは非常に今厳しくて認められないことと職権との関係がどうもよく理解できないのですが、ちょっと説明していただけませんでしょうか。

小林審判企画室長

アルゼ事件のこの個別のケースにつきましては、確かに職権の無効理由通知を発しております。実はこれ、簡単のために1本だけ絵ではかいてあるんですが、別の無効審判請求も出ておりまして、その中で、担当しております審判の合議体が、提出された証拠同士を組み合わせて無効の理由が構成できるのではないかということで、職権の無効理由通知を発しまして今当事者の応答を待っている状況です。
松尾先生がご質問の職権審理の範囲をどう考えるかというのは、特許法上は申し立てられない理由についても審理ができるというふうに書いてあるだけでして、どこまでの範囲であれば職権審理ができるか、あるいはできないかということが決められているわけではございません。ただ、運用としましては、その審判請求の中で出された証拠の組み合わせを変えるとか、あるいは直ちに特許庁に明らかな証拠を採用するとか、あるいは証拠は同じだけれども論理構成を変えるとか、そういったことにとどまるのが通常でございます。
ただ、職権の探知を働かせているその範囲と、無効審判請求人が証拠の追加あるいは理由の追加ができる範囲とのバランスの観点からいいますと、確かに今の平成10年の改正法―、運用を念のために裏打ちするような改正だったと思いますけれどもーの、高裁の判決に従う形でそれを明定した今の条文からみますと、確かにバランスが少し配慮がされていないという形にはなっているかと思います。ですから、結果的には無効審判請求人は証拠の追加あるいは理由の追加ができないけれども、職権探知の方については法律上制限は書いていない。運用的にも、多少広くなっているという形になっているかと思います。

松尾委員

それでそのご説明はわかりますけれども、例えば非常に有効な証拠で、請求の趣旨と直結するようなものでも後で出そうとすると、今はだめですね。そうだったらば、それを特許庁が職権で取り上げれば、もう一つ無効審判を起こさなくてもいいと思うんですけれども、今は特許庁が、もう一つ無効審判を起こしてくださいということで、何か無効審判の数が増えていると思うんです。そういうのがどうもよくわからないところなのですが。

小林審判企画室長

まさに今の論点がこの検討事項の一つに入っているかと思います。一つの事件についての迅速性だけを重んじるのであれば、証拠の追加、理由の追加というのは一切認めないというのもあり得るんだけれども、片や今、松尾委員ご指摘になったように、一つの紛争を解決するために複数の事件がばらばらに出たり、何回でも事件が請求されるというのは、かえって紛争全体の一回的解決の観点からいうとデメリットになっているのではないかという指摘が、まさに近年非常に強くなってきておりますので、今のご指摘の点については、まさにこの委員会でご検討いただくことになろうかと思います。

松尾委員

わかりました。もう一つお伺いしたいんですが、判定なんですが、判定の数が増えてますね。判定の結果がどういうふうに利用されているのかというような調査はなされているのでしょうか。

小林審判企画室長

判定の結果が完全に当事者の間だけで使われている場合には、実は調査のしようがないのでそこまではわからないんですけれども、ごく最近、5月号の「知財管理」だったかと思いますが、日本知的財産協会の特許第二委員会のメンバーの方々が、判定の決定書―これは特許庁の審判部が出すんですが、これはきちんと分析ができます-それから、片や同じ特許権について提起された侵害訴訟の判決―これもまた別途分析ができますを比較して、かなり詳細に定量的あるいは定性的に調査した結果がもう既に公表されております。
それをみますと、追跡調査した100数十件だったかと思いますけれども、そのうちで侵害訴訟も同時期に提起されて判決が出たものが8件あったそうです。120件のうち8件ですから、それ以外の大部分は侵害訴訟を経ずに、当事者同士の間で何らかの形で利用されたりされなかったりしたんだろうと思いますが、そこのところは実はよくわからないんです。しかし、少なくともその8件に関する限りは、高裁まで控訴されたレベルまで全部比較すると、判定の結果と侵害訴訟の判決の結果が完全に一致していたそうです。たまたま8件という母数が少ないので、それをもってどうこうということはいえませんが、少なくとも120件のうちの8件ぐらいのオーダーで侵害訴訟との関連で判定の結果を使った事実があるということです。それから、それ以外の110数件については、当事者同士の間でどのように使われたかは今のところ追跡調査することはできないというふうな形になっています。

松尾委員

わかりました。

作田委員

今の広実室長のご説明の中で、いろいろなフォーラムあるいは研究会で紛争処理に関していろいろなことが検討されているということのご説明があったんですけれども、この検討課題で審判のあり方というのを検討するに当たりまして、これは司法の方の話で一回的解決をどうするかによって無効審判の位置づけというものが大きく変わってこようかと思うんですけれども、この小委員会では、どっちのスタンスで、並行して一回的解決も含めて検討するのか、あるいはそれが司法の方で取り上げる取り上げないにかかわらず審判制度を変えようよというふうなスタンスで検討するのか、その辺はどういうふうに考えればよろしいのでしょうか。

広実審議室長

全体の枠組み論の中で審判制度のあるべき姿というのは決まるのではないかというご指摘だと思いますが、基本的に、完全に審判をやめて裁判所にすべて一本化するという立論をとらない限り、一方で事件が起こった場合、そこで1カ所で判断してもらいたいというニーズがあるとは思います。ただ、二元論としての制度の中で、一つ一つの制度、特に審判制度について最適かつ合理的な制度をつくるというニーズは当然あるので、まずそこを重点的に検討したいと考えております。その上で、侵害訴訟が起こった場合に、その侵害裁判所で一体どこまで判断権限が及ぶかという議論があり、その範囲を広げる、現状のままとする等いろいろ選択肢があると思うんですが、仮にその範囲が変わったとしても、こちらの審判制度の本体自体はそう大きく影響を受けないと。仮に何か影響があるのであれば、そこは修正で対応できるのじゃないかと、そういう考え方で、審判自体の在るべき姿をまずというふうに考えております。

作田委員

先ほどご紹介あったように、知財戦略会議の大綱ないしはアクションアイテムというものが出てくると。それから、産業競争力と知的財産を考える研究会からも最終報告書というのが出てくると。この小委員会のスケジュールをみますと、10月中旬に報告書の取りまとめと、こうあるんですけれども、この小委員会としては、例えば審判制度についてこういう方向で、いつの国会で制度を改正しようよというところまでいくのか。今までの研究会とか――実は私も知財研での研究会にも出させていただいたんですけれども、これも報告書で終わりなんでしょうか。それとも、どういうふうなことになるのでしょうか。

広実審議室長

審判制度につきましては、今回この小委員会でご報告いただいたものを受けて、来年の法改正につなげたいと考えています。

竹田委員

今の作田委員の発言に関連してですけれども、先ほどから出ているようにいろいろな委員会等で、特に侵害訴訟と審判制度の関係については議論や提言がなされている段階ですが、その中に出てくる将来のビジョンとしては、今の裁判所と特許庁との権限配分の上ででき上がっている特許訴訟制度そのものを根本から考え直そうという意見も含んで議論がなされていると思うんですね。今、広実審議室長は審判制度そのもの、それは名前はどういう形でどの程度残るかは別として、その制度そのものを根本的に廃止するかどうかはある程度ペンディングだとしても、裁判所自体で特許の無効を判断しようという考え方も示されていると思うんです。だから、そこのところの考え、それはもうないものという前提で、先ほどのご発言だとこの審理を進めるように理解できるんですけど、必ずしもそこはそうではないと思います。
だから、当面の問題として、異議申し立て制度や審判制度との関連も含めて、審判制度を見直さなければならないということは私も重々理解しますし、そのためのこの審議会であるし、その必要性は大いにわかるわけですが、ただ、将来のビジョンというものがどうなっていくかということは、これは今の段階ですぐに結論が出ていない状況だということを踏まえながら、やはりそれへの対応も視野に入れたところでこの委員会での制度のあり方の検討をしていくということは必要なのではないかと思いますので、一言申し上げました。

広実審議室長

私ども、そういう方向で考えております。

丸島委員

今の件に関連してなんですが、先ほどのご説明の中で、戦略会議で大綱ができて、その中に今の侵害訴訟と裁判所の関係の問題が取り上げられた後、いろいろな省庁が関係するので別のところで検討されるというご説明があったように思うんですが、それは具体的にはどういうふうに想定されているのでしょうか。

広実審議室長

別のところではなく、要は場所、検討の方向がまだ決まってないということです。可能性としては、ここで検討せよといわれれば、ここで検討してもいいし、別のところといえば別のところにもなるんですが、それは戦略会議の議論で今後流れができてくるのじゃないかと思っております。

丸島委員

研究会の報告書をみますと、スケジュール的には今の侵害訴訟と無効の抗弁の関係は5年という、そういう長期スケジュールで書かれておるわけですね。この審判の方は2003年と書いてあったと思うんですね。スケジュールが随分食い違っているので、お考えになっているのは、これはこれとして独立でとにかく検討は進めて、結論を出してしまって、別の方向で何か決まったら、再度それを前提にこちらも見直そうと、こそういうお考えで進まれるのでしょうか。それとも、どこかで融合されるのでしょうか。

広実審議室長

来年法案をと考えておりますのは、あくまで審判制度と審決取消訴訟についてであります。侵害事件を扱う裁判所でどこまで判断できるかというのは、裁判所の体制論も含めてまさに戦略会議の議論で方向性が決まってくるとは思うんですが、仮にその議論がどういう方向になっても、審判制度についてなくすという結論をとらない限りは、必ず最適な合理的な制度の姿を追求することは必要だと思っております。ある意味で特許制度の根幹的な制度として、継続性を持ったものとして検討していただくことは可能なのじゃないかと思っています。

丸島委員

そういう結論になる可能性もあると思うんですが、あるお方は、無効審判制度はなくなるということもおっしゃってますし、どういう結論になるかわからないと思うんですけれども。
それと、無効の抗弁の関係で、じゃほかの無効審判が起きたときはどうするかって、調整機構も随分絡んでいるように思うんですね。そういうことはどこでなされるのかなと。別途やるというのなら、それでも時系列的にはわかるような気がするんですが、一緒に絡めてやるチャンスがあるのか、全く時系列にこれはこれとして一回決めてしまって、再度見直しという形で考えていればいいのか、その辺のところはいかがなんでしょう。

広実審議室長

こちらのスケジュールが極めて明確なのに対して、戦略会議の方は、この資料にもありますように、今まさに起草委員会等でご議論されているところです。当然ながら両制度が関連するのは間違いないので、そこはシンクロナイズさせてやった方が合理的な部分は、当然私どもとしても戦略会議の方にそういうふうにお願いしたいと思っております。

大渕委員長

それでは、先ほどのご説明及びご質問に対する回答等も含めた以上のお話を踏まえつつ、先ほどの縦長の紙にあります本小委員会における検討事項(案)というものについてご議論いただきたいと思います。本日は、この小委員会の第1回でございますので、その目的は、今後検討すべき法的論点の大枠を漏れなくご指摘いただくとともに、検討の方向性についてもご議論いただくことを考えておりますので、以上の2点を中心として活発なご討議をお願いしたいと思います。今申しました検討事項(案)というのは、配布資料1の13ページ以降のことでございます。
ご意見がなければ、とりあえず、ここに書かれているものにつきましてのご質問などでも結構でございますが。どなたかございませんか。

丸島委員

先ほどに関係するんですが、4番の「侵害訴訟と無効審判との関係について」というタイトルからすると、そのことを検討するようにも読めるんですが、中身を拝見しますと、連係プレーをどうするかということが主に書かれていて、今話題になっているところは対象にしていらっしゃらないわけですね。ですから、この検討すべきというのは、いつ――例えば戦略会議で決まったら検討しますよとか、何か検討の対象にはっきりと入れていただいた方がいいのじゃないかと思うんですが、いかがでございましょうか。

広実審議室長

多分戦略会議でやっている一元化の姿について明確な姿がまだなくて、皆さんいろいろな意見をお持ちだと思うんですが、要は裁判所と審判部の融合だとかそういう議論になると、もう明らかにこの小委員会で議論するというのは困難なので、もっと大きな枠組みでやらないといけないだろうと考えます。
他方、一元化というものを交通整理論的にとらえて、例えばアメリカでやっているように蒸し返し防止ののための主張制限をするというようなやり方、こういうやり方であれば、別に大きな枠組みを変更しなくても、特許法等の改正で対応できる問題も多分あると思うんですね。我々の方としては、まずプラクティカルにできる範囲の調整というのは考えてみたらいいじゃないかと、そこにあえて枠を示す必要はないだろうと思っています。
そういう意味で、この議論をするときにも工夫しながら事務局でも考えていきたいと思います。現行の体制下でもできることというのは、かなり大きなことから小さなことまであるので、そこは大きく構えて議論していきたいと思っております。

丸島委員

ありがとうございました。

大渕委員長

いろいろ、今回のというか、基本的には来年の法改正に向けての検討事項という、そういう時間的等の制約の中で、そういう枠組みの中で検討すべき論点ということで、この1.2.3.4.5.まで挙げておられるんですが、この点につきまして何かご意見あるいはご質問等はございませんか。
それでは、今までご発言のなかった方で、視点として、先ほど私のあいさつでも申しましたけれども、いろいろな方からのご意見を伺うという観点から、ユーザーの方から検討事項(案)につきまして、ご意見、ご感想を伺えればと存じますが。
諸石委員、お願いいたします。

諸石委員

ここにあります検討事項は当面の問題すべて網羅していただいているので、これで検討の枠組みとしては結構かと思います。また、当然もっと広い範囲にわたったら、いろいろと意見はそれぞれあるわけでございますが、それを全部やり出すとちょっと収拾がつかないので、今回のこの目的からすれば、これで結構かと思っております。

丸島委員

先ほどから申し上げておりますので、今回の検討に入るかどうかは別にしましても、大きな意味での審判と訴訟との関係というのを、もうちょっと本質的なところから見直していただきたいという、そういう御ご意見はいろいろな場面で出させていただいていますので、そういう視点をベースにしながら、ぜひこの審判の問題も議論させていただきたいなと思っております。

秋元委員

ユーザーの立場ということらしいんですが、先ほどの一回的解決あるいは将来裁判制度と審判制度をどうするか、これらは研究会の報告書では3~5年ということですが、私自身はもっともっと時間がかかるのではないかと思います。そういう意味では、当面はこれらの検討課題を中心にして議論していただいて結構なんですが、ただ私どものところから若干いわせていただきますれば、議論の中でいわゆる迅速性を求めるあるいは強い権利を取るということはよろしいんですが、これらと同時に、的確な判断ということを非常に大事に考えていただきたいと。なぜならば私どもの業界というのは、いわゆるクロスライセンスとかそういうことがありませんので、一旦たん権利が確定してしまうと非常に難しい問題が起こる。そういう観点から、さらに専門委員とかそういうところもやはり審判と同じく合議制というものを取り入れていただきたい。それはこの会議の中で議論していただく問題ですが、的確性、安定性という観点から常に合議制というものを考えていただきたい。
さらには、日本の裁判官もいろいろな判決の中で充分に説明をすべきというか、自分自身の具体的な意見を述べるべきなんですが、従来余り、判決の要旨の中には書いてありますけれども、陪審の方も含めていろいろな意見がはっきり出てこないというように思われます。例えばアメリカの場合等を考えますと、そういうものがきちっとディスクローズされているわけなので、その辺でどういう議論がなされるかというような問題についても、できればどこかで議論していただきたいなというふうに考えております。

中西委員

検討するテーマについては、私はこれでほとんど網羅されていると、こういうふうに思っています。ただ、全体的に力がない企業が、紛争処理に対して、こういうような法律制度はきちっとできても、じゃ果たしてどういう例えば入り口からこの制度にたどり着くかという、まだそういう入り口のところが企業側に残っているわけですね。そうしますと、弁理士、弁護士会がこの制度の選択のフレキシビリティー、これをもう少しユーザー側に知っていただく必要があるだろう。枠組みのあれとはちょっと違うんですけど、そこへたどり着くまでどうするか。だから、普通のあれですと、国定とかいろいろ専門のがありますね、こういう制度もひとつ中立なところで、選択肢というのももしかすると必要になるのじゃないだろうか。これからこういう紛争処理というのは増えてきますので。そうしますと、ますますそういう必要性が出てくるであろうというふうに私は考えています。
以上です。

作田委員

意見は今もう大分出てきましたので、意見というよりも質問なんですけど、横長の資料の3枚目になりますか、3.のところに審判・訴訟手続の全体図というのがございますね。これ、ユーザーから聞くのも変な話なんですけれども、上の方からいきまして査定不服審判というのが2万件と。同じ縦系列が有効性についての争いというふうにみますと、2万件と。それから、異議申し立て4,000件、無効審判283件、侵害訴訟153件。異議申し立ての無効審判というのは、件数が1けた以上違っていますよね。これはむしろユーザーサイドから利用しやすいかしやすくないかという意見を申し述べなくちゃいけないのかもしれませんけれども、今後この併存とかどっち寄りにするんだということを考えるときに、この数字の差というのは、歴然とした事実としてものすごく僕は大きいと思うんですけれども、特許庁はどういうふうにお考えでしょうか。

小林審判企画室長

確かに異議申し立てと無効審判、ちょうど1けたぐらい数が違います。異議申し立ては、制度発足当初はこれよりもかなり多くて7,000件ほどあったんですけれども、その後、減少しています。いろいろな事情があるんだと思いますが、ユーザーからの声を聞きますと、使いにくいというふうな声も実はあります。それには幾つかの理由があるんだと思いますけれども、一ついわれていますのは、このペーパーの中でも指摘させていただいてますが、異議申立人の関与の度合いが薄いという、査定系だということとの関係だと思います。
もう一つは、ここ1~2年で申しますと、特許の登録率が下がっています。全体的に特許庁の審査・審判部挙げて審査の適格性ということをユーザーからかなりいわれているということもございまして、そういったニーズにこたえる形で特許率及び特許の登録件数、これが低くなっているということもございまして、そのはね返りということもあって異議申し立ての件数が減っている部分があります。ただ、いずれにしましても、依然として4,000件程度の数字があるのが異議申し立てです。
他方で、無効審判は確かに300件弱の数字なんですけれども、これはもともと無効審判が、侵害訴訟が起きたときとか、あるいは侵害訴訟が起きないまでも当事者間で特許についての争いが起きた局面で利用される制度であるという説明もされ、実際にそういうふうに利用されているということもあってこのぐらいの数字になっているのだろうと思います。ちなみに、侵害訴訟が現実に起きた場合に無効審判が請求される率というのは、ほぼ半数です。これは特許に関してでございますが、侵害訴訟が起きますと、その半分ぐらいについては、今のところ無効審判が請求されるという構図になっています。
片や、無効審判が請求されたもののうちの4割ぐらいが侵害訴訟関係でございます。残りの6割は侵害訴訟が直接起きているわけではないのですけれども、侵害訴訟直前のライセンス交渉をやったりという状況か、あるいはいわゆる事前予防的といいましょうか、ビジネスを展開する上でその特許についての有効性に疑義をもって、その特許を無効にしようというふうなビジネスニーズが生じたときに使われているんだろうと思います。これが6割ぐらいという構造になっております。いずれにしましても、無効審判の方は、現実に特許の有効性について特許権が設定されたかなり後の時期で争いが起きて、そういう局面で使われているということから300件程度の数字になっているのだろうと思います。
異議申し立てと無効審判をどういうふうなそれぞれの制度にしていくのか、あるいはむしろ一本化といいますか、別の形でかもしれませんが、簡素化あるいは合理化した形で一つの審判制度をつくっていくという方向にしていくのかは、今後の小委員会での議論なのですけれども、いずれにしましても、異議申し立てと無効審判の特徴というのはそれぞれある。異議申し立てと無効審判に共通している部分もあるわけですね。結局、目的として達成しなければいけないのは、いかにして合理的に特許の有効性についての判断をして、当事者間での争いを解決していくかというところに尽きるわけですので、その観点から検討していった結果、あり得べき異議申し立て制度のあり方とあり得べき無効審判のあり方をみると、ほぼ同じシステムになるということも当然考えられるだろうと思います。
そのときに、件数はそれほど大きな要素ではないというふうに考えております。なぜかといいますと、無効審判は、いわゆる当事者の対立構造といいますか、インターパーティスという当事者対立の構造をもっているんですけれども、片方で、これは行政審判ですので職権審理がございます。職権審理があるので、必ず判断する特許庁が職権で審理をすることになりますので、実はここでいう当事者対立構造は査定系構造を含んでいるというふうな構造になっています。したがって手続的な面からみても4,000件というのは、実は300件の方で吸収できるというふうな構造になっているという気がします。

作田委員

この異議申し立てというのは、96年の付与後異議に変わったときにずっと減っているんですか。付与後異議になって、異議は減っているんですね。

小林審判企画室長

はい、減っています。

作田委員

5.ですね、付与後異議になって付与前の異議よりも極端に減っています?

小林審判企画室長

付与前と比べても、付与後の異議の数の方が少ない形になっています。

作田委員

付与後異議になったときに、無効審判というのは変わらないんですか。

小林審判企画室長

そのときにはほとんど変わってないですね。

斎藤委員

今の点に若干関連しますが、異議申し立てと無効審判の関係あるいは判定については、裁判との関係を一応切り離して、自足的にというか、方向づけができる面が大きいと思います。そうしますと、最適な人的、物的な資源の配分という観点から合理的な役割分担を考えるべきで、特に異議申し立てに関しては、付与前異議の場合は非常に明確なものがあったわけですが、付与後となりますと、ユーザーの方々が付与後でなお異議申し立ての方にいっているとすれば、その合理性といいますか、それを的確に把握した上で判断すべきことではないかと思います。判定についてはもっとそういう要素があって、民間ADRを育成した方が、より特許庁として、もっと中核的な専門技術判断の行政審判の方に集中できるというようなことが出てくるのであれば、そういった資料なり判断要素を出していただければと思います。
もう一点、司法制度改革も含めて、改革の中でいろいろなフォーラムがあるので従前のことは忘れ去られてしまうというのがありますけれども、たしか行政改革会議あるいはそれを受けた行政改革基本法の中では、行政審判機能の拡充なり強化について引き続き検討するというのがあったはずでございまして、それとの関係いっても、やはり特許庁が専門技術判断として集中的にリソースを投入すべきところはどこであってということを位置づける必要があるのではないかと考えた次第です。

秋元委員

ちょっと1つ教えていただきたいんですが、裁判の迅速化とか一体的解決というところの一つの原因になっているのはキャッチボール現象だと思うんですけれども、実際にこのキャッチボール現象というのはどの程度起こっていて、どういう分野で起こっているかというのは、何か資料ございますでしょうか。あるいは非常にふえつつあるというか。

小林審判企画室長

分野ではございませんが、配付資料の横長の7ページをみていただきますと、訂正審判のことが書かれています。右下にグラフがございます。99年、2000年、2001年と急増していることがおわかりかと思います。実はこの急増部分のほとんどが、審決取消訴訟が係属している間に起こされた訂正審判の請求によるものでございます。ですから、大まかにいいますと今220件ぐらいですが、99年当時の100件との差の部分は審決取消訴訟が係属している間に起こされた訂正審判というふうにみていいと思います。審決取消訴訟の係属中に訂正審判が起こされますと、訂正が認められない場合は別ですが、認められますと、ほぼ100%キャッチボールが起こるというふうにみていいかと思います。分野別には、今手元に統計がございませんけれども、また別の機会に提供させていただきたいと思います。

丸島委員

先ほど作田さんの質問の中での、異議の件数と無効審判の関係ですね、無効審判が随分少ないじゃないかという印象。前にどっかの資料でおつくりいただいた中で、特に電機業界が無効審判件数は非常に少なかったと思うんですね。これは、私は業界の契約に依存しているんだと思うんですよ。異議まではお互いにやろうと。だけど、登録になったら、争ったらライセンス特許から外すよという契約がほとんどされているんですね。ですから、ライセンスを受けているものはあえて争う必要がないということで、争ってないんですよ。それが相当影響しているんだろうと思うんですね。ですから、もしその業界がライセンス関係がないとしたら、無効審判はもっと増えているだろうと私は予想します。

松尾委員

この異議申し立ての件数ですけれども、付与後異議と付与前の登録前の異議のときとでは、成立の件数が違っているんじゃないかと、勘ですけれども。そこら辺をみていただきたいと思います、資料をお願いしたいと思います。

広実審議室長

では、今度用意します。

佐藤委員

無効審判の中の無効理由を分けるかどうかという議論が前あったかと思うんですが、今回はそのテーマは余り検討するご意思はないということでしょうか。

広実審議室長

外しているわけじゃなくて、新しい制度の中で検討していく課題の一つだと思っています。

佐藤委員

制度設計の中で、関連があればそれも取り上げるという視点でおられるということですね。

広実審議室長

はい、そうです。

佐藤委員

わかりました。

及川特許庁長官

先ほど、審判と訴訟の関係ですとか付与後異議と無効の関係といろいろご質問いただいておりますけれども、ちょっとピントがずれたことを私申し上げるかもしれないんですが、査定系の審判が2万件もあるというのは、多分日本だけの非常にある意味では異常な現象だろうと思います。これをどう位置づけるかという点でも、日本におきます審判の位置づけ、審査との関係も踏まえまして、できればご議論をいただいた方がいいのではないかというふうに思います。
ご案内のとおり、審査官の数が極めて足りない現実の中で、2万件の件数を審判官に割かなければいけないというのが特許庁の現実でございまして、それも踏まえて、秋元さんのおっしゃるような最も的確でありかつ迅速な審査あるいは審判というものを考えた場合、まさに人的アロケーション、日本の特許庁におけるあり方は、裁判までのパースペクティブを入れてどうあるべきかという点も実は私の最大の関心でございまして、その辺も踏まえてできればご議論を今後いただければというふうに思います。よろしくお願いを申し上げます。

作田委員

今の長官のお話で、2万件の拒絶査定、不服審判という。我々ユーザーからみますと、付与前と付与後というのはものすごく大きな違いがございまして、付与前というのは、いわゆる特許請求範囲の記載の広さというものに非常に関係してくるわけですね。だから、純粋に対公知例との関係ではなくて、できるだけ広い権利が欲しいということになってまいります。それに関連しまして、この当委員会とは別に、現在の補正の制限が緩和されれば、もっとこの拒絶査定、不服審判というのも、僕は減ってくるのじゃないかと。これは確かな証拠はありませんけれども、ユーザーとしては、クレームの請求範囲の問題でございますので、その辺は密接に補正の制限に私は関係があるのじゃないかなというふうに思っております。

中西委員

全国いろいろと回ってきますと、プロパテントの時代ということでだんだん、中小企業といいますか企業の大小じゃないんですが、そういうところにもこの理解度が深まってきまして、いずれにしても、我々が例えばこのテーマについていろいろな情報を集めまして、この新規性、特許性はどうなんだという、そこで判断、スクリーニングするわけですね。それで、高まると同時に、やはりそういうことが21世紀の経営資源だよということもどんどん進展していくので、やはり早く出してしまわなきゃということで、そのスクリーニング、自分たちでできるあらかじめの調査をしないで出す件数が最近、私の耳に入っているのは増えているような気がする。そうなってきますと、こういうところにもかなり影響を与えているのじゃないかなというふうに、これも実際の数字をつかんだわけじゃないんですけど、話の中からありありとこういうことがある。
それから、ある企業においては、やはり何件申請したんだと、こういうこともいろいろな企業の中の制度見直しの中であるように感じています。だから、それがこういう数字になってくるのじゃないかなというふうに、その一端ではなかろうかと思っています。

佐藤委員

この委員会は紛争処理小委員会という名称がついているものですから、もう当然査定系は入らないということで名称がついているのかと思ったら、長官から査定系のお話が出て、私もまさに査定系の審判の方もぜひ見直すべきだろうというふうに思っておりますので、この委員会がもし議論する場でなければ、また別な場を設けていただくなりしてぜひやっていただくべきだろうというふうに思います。

竹田委員

長官のいわれたことについて、私の考えが長官の問題提起に合うかどうかわかりませんけれども、審査の問題についていえば、これは審査制度そのものを見直すべきかという問題と、審査制度は現状のままの方がむしろいいんだけれども、それでは2万件ものこういう請求が出てくるのを何とかするのにはどうしたらいいかということの問題と2つあると思うんですが、前段の問題というのは、先ほどから出ている補正の問題等もあろうかと思いますが、私は基本的には、やはり特許権を初めとして知的財産権というのは排他的、独占的権利なんだから、それについての審査というのはきちっと厳格にやられるべきだと。
ただ同時に、迅速にという要請があるわけですから、その解決のためにどうしたらいいかというのが、制度的な工夫がある程度必要かもしれませんけれども、基本的にはその原則を曲げるわけにはいかないとすれば、あとは審査官の増員とか審査のもっと補充的な制度の拡充とか、そういうようなところに向かざるを得ないので、総合科学技術会議でも、審査官の増員ということが一番緊急の課題じゃないかというふうに提言しているんですけれども、2つの方向での議論はあろうかと思います。
ただ、多分この委員会でその問題をいろいろ取り上げて議論することになれば、審査が現状でいいのかどうかなんていうような大変な議論になろうかと思いますので、とてもこの委員会ではやり切れないのではないかと思いますが、そういうことについての問題意識は、ユーザーの方々も我々のような実務家もみんなもっている問題だと。それは、この制度にかかわる者がみんなで考えていくべき問題だと思っていますので、一言申し上げました。

丸島委員

なぜ審決取消訴訟が多いんだというのは、特許庁でユーザーフレンドリーということを標語に挙げているんですが、私は、ユーザーフレンドリーじゃないからだと思っています。こういう表現を使うのは非常に失礼かもしれませんが、先ほどちょっとお話ありましたように、一件一件の仕事を効率化しようとして、そういう動きがすごく強くとられているんですね。ですから、拒絶査定にするところまでは効率がいいと。これは出願人が満足するはずがないので、そのはけ口はその後へいくのが当たり前なんですね。ですから、私はもうちょっとユーザーフレンドリーで、審査の段階で本当に対応できるようなことをやっていただくのが、トータル的には早くなるのではないか。これは審判も同じです。すべてがそうだと思うんです。
ですから、先ほど作田さんおっしゃった補正の制限なんて、まさにそうですね。行き場がなくなって、分割やってみたり余分なことをみんなやっているんです。ですから、そういうある意味で解決しようとしたことが、ほかに悪影響をすごく及ぼしているんですね。そういうのを全部トータル的に見直さないと、本当にいい姿にはいかないのじゃないかということで、もう一度ユーザーフレンドリーになることをトータルでお考えいただきたいと私は思います。

及川特許庁長官

いろいろご批判等あろうかと思いますが、私の問題意識の背後には、やはり世界の特許庁、大きなところが今流動的になっている中で、審判、裁判も動きつつあるという感じがございます。特に先ほど広実室長からも話がありましたけど、EU特許ができるとどういう形のものになっていくのかなというのがありますし、特にEPOは今まで審決で終わりという非常にシンプルな形でありますし、特に審決にいかなかった。ただし、その分、50カ月以上もかける審査でじっくりとユーザーフレンドリーにやってたということだと思います。一方、我々は確かに急げ急げというのが背後にありますし、それはある意味では審査から始まって裁判で決するまで、間のトータルの期間を短くしろというのが、恐らくプロパテント政策の大きな命題でありますから、私が申し上げたかったのは、審査から始まって最後裁判までいくようなときに、どの程度の数がどういう形でいっているのかという実態を踏まえたときに、この2万件とかいう数字を日本の極めてユニークな特徴として、もし丸島さんおっしゃるように、我々の特許庁の審査におけるパフォーマンスが余りよろしくないというのであれば、それは直すのは比較的簡単だと思いますけれども、制度面とかあるいは日本の皆様方の出願のあり方等にもある一種のユニークなものがあるのであれば、それを生かすか、あるいは是正するか、その辺を踏まえないと、制度だけいじっても的確な制度設計にならないのではないかという問題意識があるものですから、日本的なプロパテントに合った、かつ日本の司法制度等の中で合ったやり方というのはいかなるものなのかという比較がある程度必要ではないかというふうに思っているものですから、あえて申し上げました。
ただ、おっしゃるとおり、これを全部やり出したら大変なことになりますので、そこはぜひ大渕委員長に整理をしていただきたい。申しわけございませんけれども、少し広げ過ぎたかもしれませんけれども、問題意識を共有していただければという点で申し上げました。ありがとうございました。

大渕委員長

それでは、時刻も過ぎましたので、本日の小委員会はこれくらいにしたいと思います。
各位より、本日のテーマの特許権等に係る紛争処理の現状と課題につきいろいろご指摘いただきましたが、この点は一旦事務局の方でいろいろと整理をさせていただいた上で、次回以降、具体的な論点として審議させていただきたいと存じます。
それでは、今後のスケジュールについて事務局の方からご説明をお願いいたします。

広実審議室長

資料3に今後の検討スケジュールを書いております。9月の初めまでスケジュールを決めさせていただいております。また、5回目以降も、必要に応じ早期にスケジュールを確定させたいと思います。

大渕委員長

それでは、以上をもちまして小委員会の第1回を閉会させていただきたいと存じます。
本日は、お忙しい中、長時間ご審議いただきまして、どうもありがとうございました。次回につきましては、先ほどご説明がありましたとおり、6月27日ですのでよろしくお願いいたします。
それでは、本日はどうもありがとうございました。

-了-

[更新日 2002年6月19日]

お問い合わせ

特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室
電話:03-3581-1101 内線2118
FAX:03-3501-0624
e-mail:PA0A00@jpo.go.jp