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特許庁総務部総務課
工業所有権制度改正審議室
大渕委員長 |
定刻となりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会の第5回紛争処理委員会を開催いたします。 |
大渕委員長 |
それでは、まず本日の議題であります侵害訴訟と無効審判との関係、それから判定制度の在り方につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。 |
木村制度改正審議室長 |
それでは、まず配付資料の確認をさせていただきます。 |
大渕委員長 |
詳細な御説明、ありがとうございました。 |
大渕委員長 |
それでは、今、御説明のありました侵害訴訟と無効審判との関係、それから判定制度の在り方というこの2つの論点について自由に御討議いただきたいと思いますが、論点が非常に違っておりますので、分けて、まずこの資料1の侵害訴訟と無効審判との関係につきまして、御質問、御意見等をお願いいたします。 |
竹田委員 |
前半の部分について、3点ばかり意見を述べさせていただきます。 |
木村制度改正審議室長 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
木村制度改正審議室長 |
まず2点目にいただきました竹田先生のコメントでございますけれども、済みません、ちょっと言葉足らずだと思いますけれども、あくまでも中止の申し出がなされた場合で、裁判所が必要と判断した場合、訴訟を中止しているとそこはお読みいただければと思います。「原則中止している」というのが言葉として非常に強いのかなということだと思いますし、これについては実態を再度、精査をしたいと思います。 |
作田委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
作田委員 |
今の竹田先生の話と若干オーバーラップするかもしれませんけれども、まずいわゆる提言として書いてあることに関してですが、そもそもこの議論は紛争の一回的解決ということからスタートしておりまして、今まで知財研-知的財産研究所、あるいは経済産業省での阿部委員会等々において相当議論をされて、いわゆるキルビーを超えて侵害訴訟における有効性の判断をするかしないかという議論がなされ、産業界としては侵害訴訟、つまり裁判所で有効性の判断もしてほしいと要望をしてまいったわけでございます。しかしこの議論は司法制度改革でやるべきであるということで、本小委員会では取り上げないのであれば、この提言に書いてあるような改正を司法制度改革と分離した形でやっていくというのはいかがなものかというのが1点でございます。 |
小林審判企画室長 |
最後の点だけちょっと釈明をさせていただきますと、まさに作田委員がおっしゃったような問題意識でペーパを書いたつもりでございます。例えば8ページの注1を見ていただきますと、無効審判と侵害訴訟における有効、無効の判断、これが別のフォーラムで起きているがゆえにこういう問題が起きるというのがここで書いた問題意識の背景でございまして、作田委員が御指摘の点は理解した上で書かせていただいたつもりでおります。またそうした問題が良いことだという立場では書いたつもりはございません。 |
丸島委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
前回の件にも多少関係するのですが、先ほど、竹田先生がおっしゃった行政と司法の間の特許に関する有効性、無効性の判断は、私は一致してほしいという考えでは竹田先生と全く同じなのですね。これは権利を尊重するという立場からして、それの食い違いがあって当たり前だということになると、権利を尊重する側からして判断しにくくてしょうがないと私は思うのです。前回でもそういう意味で、審決取消訴訟でも当事者系だとはおっしゃっていても、職権の問題が入っている。だから、裁判所で特許庁も参加して、とにかく考え方を合わせるように特許庁も入ったらいいのではないかという考えで私は申し上げたのですけれども、いずれにしても、有効性、無効の判断というのは余り食い違うというのは好ましくない。審査を厳しくやるとかやらないとかという問題ではなくて、判断が一致することが大事だと私は思うのですね。しいて言えば、方向性を一致した判断をしてくれるのが企業にとっては予見性が一番高まるわけです。それが崩れるようだったら、知的財産管理が非常にしにくくて困るというのが大前提でございます。 |
松尾委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
松尾委員 |
無効審判と侵害訴訟をできれば一回的に解決した方がいいと思いますが、やはり被告物件との関係の場合と、それから離れた一般的な公知事実との関係で権利が無効かどうかというのとは争点が違う場合もあると思います。そして、そこで私はこの前の訂正審判と、審決取消訴訟ではありませんけれども、同じように、無効審判と侵害訴訟が同時に起きた場合には、恐らくこれもまた侵害訴訟の種類によって無効審判における主張と全く同じ主張を侵害訴訟でできるとは限らないと思います。それで、無効事由が明らかであるから権利濫用だという主張が当事者から、被告の方から裁判所に提起された場合、裁判所はそれを見て判断して、これは自分の方で判断できない、非常に難しいから特許庁の方の無効審判でやってほしいということであれば中止をしてそちらを進める、そうでなければ裁判所が侵害事件を判断する場合に、どうしても特許権の内容、範囲とかそういうものをすべて解釈しなければいけませんから、むしろ原則は裁判所の方でやってもらいたいし、裁判所はできるはずであろうと私は考えます。 |
中山部会長 |
1つ質問してもよろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
中山部会長 |
この問題が司法制度改革推進本部で議論されるか、あるいはどのように議論されるか私はまだ聞いておりませんけれども、いずれにいたしましても、向こうは法律家が当然多数を占めることになると思いますので、こちらがもし仮に何か言うとしても、こういう気持ちだと言うだけでは話にならないので、もっと法的に詰めてなければなりません。今事務局が出したペーパーも一致させることが好ましくないとは書いていないので、無理に一致させることはむしろよくないということが書いてあるだけです。恐らくこれは審判と侵害訴訟は先ほどから話が出ているとおり、職権主義と当事者主義の違いがあって、必ずしも同じことが審理されるとは限らない、別のことが争われているかもしれませんし、いろいろな理由で異なったフォーラムになっているわけで、さっき作田委員がおっしゃったように、主張が違てもしかたがないのですね。違った主張をしても別にサンクションはないわけでして、したがって、異なった判断もあり得るわけです。これをもし無理に一致させようとしますと、前回も言いましたとおり、審判をなくす、全部裁判でやる、特許の無効などということはない、裁判で効力が認められない、この当事者間では認められないということになる。昔のアメリカのようになる以外に手はないわけでして、やはり審判を残して、かつ侵害訴訟も残すということになりますと、それはどこかで矛盾は出てくる可能性がある。無理に一致させることはできないが、なるべく一致させるようにいろいろ、先ほども、何ページですか、情報の共有とか何とかいっぱい書いてありますけれども、こういう小手先でやらざるを得ない。もし一本化させる、審判を廃止する以外に何か結論の一致というものを見るというふうに持っていくとすれば、その方法は一体どうしたらいいのか。現在のところ方法はないということだろうと私は思うのですけれども。 |
丸島委員 |
よろしいでしょうか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
中山先生に方法がないとおっしゃられると私など申し上げる資格が全然なくなってしまうのですけれども、(笑声)申し上げたのがちょっと誤解されたのかもしれませんけれども、原則は、考え方は一致するべきだと、有効性、無効性の問題ですよ。侵害か非侵害は、これは裁判所の問題で、私は事件、事件で食い違ってしかるべきだと思っておりますけれども、有効性について、例えば同じ証拠が出ているのに片方では有効、片方では無効という判断が出ることが当然というのはおかしいという意味で申し上げたのですね。ですから、主張が違っていて判断が違う、これはあり得るでしょう。そこまで一致させるべきだということは当然申し上げていないつもりなのです。問題は、侵害訴訟で裁判所で有効性を争うときに、キルビー判決で明白な場合は争える、むしろ争えるというより裁判所がそこしか判断しないということが当事者にとっては非常に不便だと私は思っているのですね。全部やっていただいた方が、そこで有効性、無効性の抗弁が裁判所の侵害訴訟の中で1回でできるのではないでしょうか、それがなぜいけないのかということなのですね。 |
中山部会長 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
中山部会長 |
先ほど言いましたように一方が職権主義で一方が当事者主義をとっていると、完全に同じ証拠で同じ主張という保証はないわけですし、場合によっては当事者が違うということもあり得る、審判を残しておく以上はあり得るわけですね。したがって、できる限りそれは同じ証拠で一致すれば好ましいのですけれども、そういう保証はない。そういう保証を法的につくるためには先ほどのような方法しかないだろうということを申し上げているわけです。一致させるようにいろいろ細かい先ほど言った情報の共有等々をやることはもちろん必要だしと思うのですけれども、一致させなければいけないということになりますとこれは日本の訴訟体系全体をいじくらなければいけないということになるだろうと思います。 |
山下委員 |
ちょっとよろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
山下委員 |
済みません。 |
丸島委員 |
よろしいでしょうか。 |
大渕委員長 |
関連しているのですね、どうぞ。 |
丸島委員 |
そうおっしゃるだろうと思って申し上げていたので1つも驚いておりません。(笑声)ただ、この間も新聞に出ていましたように、違う件ですけれども、訴訟指揮と言いますか、早くするためにと、裁判所はいろいろ頭を、知恵を使って当事者の行動を制約するような方向をいろいろとられているわけですね。今のお話の中でも、有効性の争いで次から次へと証拠が出るという、そういうことを必ずしも全部許さなければいかんという仕組みでもないと私は思うのですね。ですから、大変だ、大変だとおっしゃるけれども、そんなに大変なことはなかろうと。現在の人員でどうかわかりませんけれども、体制強化すればできないはずはないだろうと。専門員制度の改革の話もあることですし、特許庁の審判との連動もあるだろうと私は思っているのですね。ですから、人的補強をすれば可能性はあると思っていますので、余り頭からだめだとおっしゃらないで、御検討いただきたく、よろしくお願いしたいと思うのですが。 |
竹田委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
はい。 |
竹田委員 |
中山部会長が言われた意味での、それなら制度設計はどうあるべきかというのは、私自身の意見は第2回の委員会で制度設計はこうあるべきだという私案を提出してありますので、まあお読みになったか、あるいは読まれていないとしたらその点をまた皆さんで御検討いただければと思います。必要があれば幾らでも質疑応答いたしますけれども、それはきょうの本論ではありませんからそれはやめにいたしまして、先ほど3点言ったうちの第1点について言ったことは、最初に発言しましたように、その2つの行政審判と民事訴訟という制度的違いは重々承知した上で、この結論をことさら一致させることなく、そうすることはむしろ適切ではないと書いてあることについて、この表現はいささかどうだろうかということを申し上げているわけですね。つまり、法的安定性の面から言えば、できるだけそういう判断の一致するような制度に持っていく、あるいはそれは規定の上で、あるいは運用の上でそう努めるのがやはり我々この知的財産訴訟制度に関わる者の1つの仕事だと思いますので、そのことからすればこの表現ではいささか適切ではないのではないでしょうかということを申し上げているのだということだけは御理解ください。 |
秋元委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
秋元委員 |
いろいろな御意見が出て、私、お聞きしたのですが、侵害、被侵害というのは司法の問題で裁判所であろうし、明白な無効理由もこれは裁判所でいいと思うのですが、要は有効か無効かというのはサイエンスの問題だと思うのです。要するに、法律の問題というよりも、それが本当に有効であるか無効であるかという判断を一番よく出来るところがして、早く的確にしていただければいい問題であって、先ほど検事さんが言われたように、裁判所と特許庁の方と余り齟齬がないということは、これは非常に歓迎されるべきことでございますけれども、一方、すべて裁判所に持ってくると非常に大変だということもあります。そういうことを踏まえて、やはり的確に早くサイエンスとして有効か無効か判断できる、そういうことを考えると、裁判所というよりも、裁判所が必要と認めればやはり特許庁の方でそういう手当をすべきではないかと私は思います。 |
佐藤委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
佐藤委員 |
この問題は、今、審判と訴訟という関係で同時並行の問題をどう調整するかという次元の議論になってきていますけれども、基本的には無効審判と侵害訴訟が併存したときに、無効審判の審議が早く決着がつけば、訴訟には完全に有効に機能するのだろうと思うのです。したがって、この問題をこの次元だけで考えるのではなくて、もともとの無効審判をいかに効率的に的確に、迅速にやるかということを前提としてこの議論は考えないと、このフェーズだけ取り上げて議論しても私は始まらないのではないかと思います。そういう意味で、この審議会の議論というのは、異議と無効審判を一体化するというところから始まったわけですけれども、その辺の制度設計、訂正審判との関係、その辺のところがうまく迅速にいかないと、ここら辺のフェーズの問題がもろに効いてきてしまうという話だろうと思います。 |
丸島委員 |
ちょっとよろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
今のお話の中で、早くすればすべて解決するようには思えないのですね。無効審判が提起されて、それを早く審決を出せば解決できるというふうなお話のように受けたのですが、いつ提起するかという問題が解決されていないと、結果的には審決そのものを早く出しても解決できないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 |
佐藤委員 |
その問題は実際にこれは争いごとですので、攻める方も守る方も自分の都合のいいような争い方をするわけで、理想的な展開というのはあり得ないと考えた方がいいと思います。そういう意味では、幾ら制度設計をうまくやっても利用する方がそれを邪道に使う限りはいろいろな問題が起こるということだろうと思います。そういう意味では、制度設計なり運用でカバーできるというのは、やはり限界があるのではないかと思います。ただ、問題はやはりどうやったらより迅速に、より的確に結論を早く出せるかということを制度的に、運用的に担保するという仕組みをどう構築するかということであって、十全的にすべての問題をクリアできるような制度設計というのは、私は難しいのではないかと思います。 |
松尾委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
松尾委員 |
これはここで議論すべきことではないかもしれませんけれども、特許権に無効審判が起きたときには原簿に記載されますから、どういう無効審判が起こされているかというのは第三者にわかります。もちろん、当事者であれば特許庁でどうなっているかというのはすぐ記録閲覧の申請をすると思います。ところが、裁判所の方になりますと、無効審判の無効事由があるという主張をしているようだということがわかっても、裁判所の訴訟記録というのは簡単に、謄写したりとかということは制限されています。それで私は何かむだをしないようにということであるならば、無効の事由に関する部分の訴訟記録の閲覧謄写を許すといった便利がないと非常にやりにくい。せっかく民訴の改革推進本部と連携できるのであれば、そういうところの特別な措置でも考えていただきたいと思います。 |
大渕委員長 |
特にほかにこの論点につきまして御質問、御意見等ございませんか。 |
牧野委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
牧野委員 |
無効審判と侵害訴訟での無効判断を別々の判断機関がするという制度のもとでその判断に矛盾が生ずる場合があることは制度上やむを得ないという理解はそのとおりだろうと思います。ただ、現実の問題として、先ほど山下判事がおっしゃったように、無効理由の存在が明らかな場合という判断枠組みの中で裁判所が特許の無効の判断をする限り、現実問題としてはそれほど両者の判断に食い違いが生ずることは本来は少ないはずだろうと思います。そうしますと、少ないとしてもなお生じ得るかもしれない判断の矛盾を避けるためにはどうしたらいいかというのがここの議論だろうと思います。 |
松尾委員 |
いいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
松尾委員 |
今の牧野委員の御発言にちょっと付加させていただきたいのですが、10ページのところにあります求意見とか鑑定嘱託ですね。これは当事者が意見の結果に対して意見を言う、そういう機会を与えられる制度にすべきだろうと思います。その下のところにある現在、裁判所の調査官を活用して判断していると、こういうふうに書いてあるのですが、これは全くそのとおりなのですが、これに対しては当事者や、弁護士はこぞって、代理人はこぞって反対しております。理由に陰で何をされているのか、どんな意見を言われているかもさっぱりわからない、こういう調査官制度は廃止すべきであるというのを非常に強く言っておりますので、そのことは御記憶いただきたいと思います。 |
竹田委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
竹田委員 |
今、松尾委員の言われた調査官制度については、私は高裁で15年間、調査官と一緒に仕事をしてきて、決して、弁護士の意見ではそれに対する批判がいろいろあることと、それからもう少し情報開示的なものを進めなればならないという点は私も感じておりますが、基本的に調査官制度は私は非常にすぐれた制度だと思っています。 |
丸島委員 |
ちょっとよろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
情報共有に関連して、今、鑑定ということのお話が出たのですが、ちょっと教えていただきたいのですが、当事者が裁判所で主張している、裁判官が明白かどうか疑問を持つ。それを特許庁に鑑定を求めましょうと、特許庁が判定をして、それは有効性がないと判断した場合のまずは効果なのですが、これは対世効を持つのでしょうか、もたない、当事者だけ。ということになると、主張の範囲での判断をしているだけですね。そうすると、被告の方から有効性ということで、侵害訴訟の中でほかに争う余地というのはまだ持っているわけですね。そうすると、その点で特許庁が例えば、これは有効性がないと判断しても決着はつかないですね。結局、明白だという範囲で当事者がというか、被告の方が特に裁判所で主張している範疇だとしますと、その限りにおいて裁判所が特許庁に明白かどうか疑問があるから判断してほしいと鑑定を頼んだとしても、前提が明白性の主張の範囲のことしか抗弁していないわけですから、無効審判をしようと考えている被告が、明白性の抗弁を先にやったとすればその範囲でとどまるはずですね。そうすると、また無効審判が後で起こるということですね。こういうことで、鑑定を頼んでも余り意味がないように思うのですよ。 |
牧野委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
牧野委員 |
明白性の範囲でしか言わないとおっしゃるところですけれども、被告としては自分が考えている特許無効事由というのは、有力なものは裁判所でも同じように主張するだろうと思います。そして、それについての主張・立証がお互いにされて、裁判所がそのときに、これが特許庁としては無効という判断を出せるのかということでありますと、もちろんそれが無効という判断を特許庁で出せるという鑑定意見が出ますと、それは裁判所の心証としては裁判所で主張されている無効事由が後の無効審決で確実に無効とされる心証を得たということになるはずですから、明白性の要件は備わるということになります。ですから、後出しをどんどんされるというようなことに対しては、訴訟指揮権を発動して、無効理由は全部ある段階で出して、もうそれ以上は主張させないとかによって措置ができます。もっとも、あとで無効審判をまた別に起こすということに対しては、これはもうどうしようもないことだろうと思います。 |
丸島委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
はい。 |
丸島委員 |
たびたびでまことに申しわけないのですが、そうすると、明白性というのは進歩性の判断まで当然含んでいるという前提ですね。 |
牧野委員 |
はい。 |
丸島委員 |
そうですか。そうすると、言葉は「明白性」と言うけれども、すべて包含しているということなのですね。 |
牧野委員 |
裁判所も本当に進歩性がほとんどないような、無効理由が明らかな場合は、権利濫用として請求を棄却しております。 |
丸島委員 |
そうすると、余計矛盾するような気がしてしょうがないのですね。そうすると、なぜ全部やると言わないで、その中で「明白性」とこう言っているのかなと、こういうのが……。 |
松尾委員 |
明白なときに権利濫用だというだけのことでしょう。 |
丸島委員 |
ですから、御都合主義だと私は思っているのですよ。だから、御都合のいいときだけ判断するけれども、都合が悪ければ判断しない、別のところでやっていらっしゃいというのはどうでしょうかと。 |
松尾委員 |
お願いします。 |
大渕委員長 |
山下委員、どうぞ。 |
山下委員 |
まさしく御都合主義なのです。(笑声)私は御都合主義が一番いいと思っているのです。つまり、特許庁と裁判所で役割を分担しながら、しかしなるべく早く解決するというのは、今のキルビー判決が出て以来の状態というのは、運用さえよければ理想的な状態だと私は思っているのです。なぜかというと、裁判所にはできることとできないことがある。できないことがあるということに重点を置いたのがキルビー以前の状態なのですね。そういったって、それを前提にしても裁判所にだってできることがあるでしょうということで、それを実現するようにしたのがキルビーだったと思うのですね。だから、せっかくそうなったのだから、裁判所は自分ができることはやらせていただきますと。だから、それは無効審判で特許庁まで行っていらっしゃいなどということは、この事件では言わなくて済むというときにはやりますね。だけども、それをまた自分の方でやろうと思ったらどうなるかわからないということになったら、早く解決しようにもできない。だから、そういうときにはこれは特許庁に行ってやってきてください。その方が結局早いですと。そういう点で、そこのところを見ればまさしく御都合主義で、御都合主義を最大限に活用したのがキルビー以後の今の裁判所の状態で、だから非常にいい状態に今向かっているのではないかと思っているのです、審理が早くなった。 |
丸島委員 |
裁く方にとっては非常に便利だと思いますけれども、裁かれる方にとっても非常に便利だとお考えでしょうか。 |
山下委員 |
全くそのとおりで、要するにあるべき判決がなるべく早く出るというのがいいというのが、裁判官から見てもそうなるのが望みですから、そういった点で今は特許庁と裁判所との役割分担、裁判所の限界ということを前提に置いた場合には、運用さえよければ非常にいい制度だと思っています。 |
松尾委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
では、どうぞ。 |
松尾委員 |
済みません、当たり前のことを言うのですけれども、ぜひそういう簡単に、権利濫用ということで片づけられないように、特許庁は裁判所でどういうふうに判断するだろうとか、どうなるだろうとかということは余り気にしないで、特許性についての審理を十分にやっていただきたいと思います。今は早く、迅速の方が先に行って、ちょっと審理が粗雑になっているのではないかという印象を受けますので、そこをぜひきちんとお願いしたいと思います。 |
大渕委員長 |
それでは、特にほかになければ、時間の関係もございますので、本日の2番目の論点であります判定制度の在り方について、御議論いただければと思います。 |
丸島委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
私はこの中の案とちょっと違うのですが、判定制度をADRに活用するとしたら、民間ADRの中の判断を受け持つというのがいいのではないかという気がするのですね。当事者にとって一番大事なのは侵害するのかしないのか、有効か、無効かという判断をある程度公的機関にお願いしたいという気持ちは非常に強いと思うのですね。ですから、侵害するかしないか、あるいは有効、無効という問題について判定を活用するというのが一番うまく動くのではないのかなと個人的には思いますが。 |
竹田委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
竹田委員 |
丸島委員のおっしゃった意味、私、もう一つよくわからなかったのですが、民間型ADRで特許庁の審判官の判定をするのですか。 |
丸島委員 |
そうです。 |
竹田委員 |
そういうことですか。そうすると、どういう手続でそれができることになるのでしょうか。 |
丸島委員 |
できるかできないかわからないのですが、民間、例えば仲裁機関があったとしますね。そこへお願いして、そこですべてやらなくても、そこから特許庁に対して判断を依頼するということはいかがなのでしょうか、それは制度的にできないのでしょうか。 |
松尾委員 |
どうして直接やらないのですか、特許庁で。(笑声) |
丸島委員 |
特許庁。 |
松尾委員 |
ええ。 |
丸島委員 |
先ほど言ったようにADRのすべての機能を、今、判定制度が持っていないと言うからです。ただ、侵害しているかどうかというだけの問題でしょう。技術的範囲の判断だけしかしておりませんという説明でしたから、ADRというすべての問題を解決できないでしょうと。特許庁の中にADRのすべての機能を持っていくように判定制度を拡大するのも1つの方法だと思いますが、そうすると民間ADRの活用という方向性から反して、特許庁が民間のADRを食ってしまうのではないかという御説明が先ほどありましたね。ですから、そういう公的機関でのADRということの推奨になってしまうので、それはまずかろうということで私は折衷案をとったつもりで申し上げたのです。ですから、民間ADRの中に、当事者が一番気にする判断の部分、すなわち侵害するかしないかを判定で、それからどういう条件でお互いが解決したらいいかというのは、そのADRの中でやっていただいたらいいのではないでしょうか。 |
木村制度改正審議室長 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
木村制度改正審議室長 |
済みません、今、多分おっしゃられているのは、今の判定制度というのは、恐らくそこで得られた技術的範囲についての評価があって、それを当事者の方がどういうふうに用いるかということは全く皆さん方の任意に任されていて、判定の結果を踏まえてで仮に示談をされるかもしれないし、和解をされるかもしれないし、あるいは侵害訴訟に出てくるかもしれない。あるいは、ADRに行くかもしれないという状況だと思うのです。したがって、今、恐らく丸島委員がおっしゃられているのは、判定は必ず両当事者がADRをその後使いますという合意がある場合だけ受け取るようにという、そういう仕組みなのかなとは理解したのですけれども、そういうことでよろしいですか。 |
丸島委員 |
いえ、そうではなくて、そもそも活用が余りされていないのはなぜなのかというところですね。恐らくADRに携わっている先生方の能力というのは皆さんすばらしいと私は思うのですよ。だけれども、余り活用できないということは、当事者の気持ちの問題だと私は思っているのです。ですから、ある程度裁判所なりですよ、裁判所でやるというのは一番いいのですけれども、裁判所外でと言うから、そうすると特許庁みたいな公的機関で判断をしていただくという要素をADRの中に盛り込んだらどうでしょうかということを申し上げているのです。ですから、それに拘束されなければいかんとか、そういうことはどちらでもいいのですね。だって、ADRの最終判断に拘束されるのか、されないのかということだって別にあるわけでしょう。されるとなると、さらに慎重になるわけですね。それだったら裁判所へ行った方がいいなと思うかもしれない。ですから、その辺を当事者の心情をよく理解しないと、なかなかこの仕組みははやらないと私は思うのですよ。理屈だけではなくて、裁判はふえるけれども、ADRはふえないというのはそこにあると私は思っているのですね。 |
斎藤委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
斎藤委員 |
判定をADRの中に組み込んで、しかもそれに従うかどうか、当事者の選択というか、それを認めるということになると、さらにそこから無効審判が起こったり、そういうことで、結局早期の解決にはならないので、そうすると判定の方に限られた特許庁のリソースを投入するよりは、無効審判なり、その前段階の審査の方に投入して、正式の方の判断が早く、かつ正確に出るという方向にすべきではないかと思います。 |
丸島委員 |
よろしいでしょうか。 |
大渕委員長 |
はい、どうぞ。 |
丸島委員 |
私が申し上げたのは、早期に解決するということはほとんど考えていないのです。裁判外の解決をふやした方がいいのではないかという前提で申し上げたつもりなのです。前提が、拘束されるとか何とか、そうした方が早く決着がつくでしょうというのだったら、そういう仕組みをつくればよろしいのです。利用しないだけです、それだけなのです。利用しない仕組みをつくるのか、決着はしないけれども、利用してもらえる仕組みをつくるのかという、そのやっている間で満足すればそれで終わるのですよ。要は満足するような判断が出るかどうかなのですね。おわかりでしょうけれども、単なる普通の金銭ではない、いろいろな問題が絡んでいるわけです。ですから、私は判定でやるというのは非常に難しいなと基本的には思っているのです。ですから、それを早く決着させるためにADRの仕組みというのを強制的につくったとしても、当事者は利用しないだけだと思いますよ。 |
小林審判企画室長 |
反論というわけではなくて、むしろ若干御参考までにということで発言させていただきます。丸島委員のおっしゃったことの変形例かもしれないのですが、今でも判定の請求をして、その結果を得た後に、当事者は何がしかの形でその結果を使っているのだろうと思います。この点につきましては、松尾先生からも、第1回会合だったでしょうか、判定結果についてどういう利用がなされているか追々調べたらどうかというような御提言がありましたので、まだ完全には集計はしていないのですけれども、過去2年ほどの間に決定が出た判定の請求者に対してアンケートをさせていただきました。やはり答えにくかったらしくて、回答率は非常に低いのですけれども、回答結果を見ますと、侵害警告の資料として相手方に提示をするとか、あるいはライセンス交渉の相手に提示をするとかいう利用形態が非常に多くて、それ以外の使い方はそれほどなされていないような状況でして、ましてや民間ADR機関にその結果を持ち込んで、そこから拘束力のある手続を開始するというような使われ方は実際にはされていないようでございます。こういう状況を見ますとそこには、判定結果を民間ADRで使わないそれなりの理由があるのだろうと思います。 |
佐藤委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
佐藤委員 |
日本弁理士会と日弁連は仲裁センターをやっているわけですが、これがなかなか活性化しないというか、再利用していただけないということについてセンター側の方と話をしてみたのですけれども、現実問題として、判定がいかにも安すぎる、値段的に全然バランスしない、これがまず大きな1つの理由のようです。やはり民間でADRをやろうとすると、自前のお金でやらなければいけない。そうすると、自前でやるためにはある程度のフィーをいただかないとできない。そうなってくるとやはりハードルが高くなって、小さな事件でADRに向いているような事件であっても、なかなか利用してもらえないという点が1つございます。 |
丸島委員 |
ちょっとよろしいでしょうか。 |
大渕委員長 |
はい、どうぞ。 |
丸島委員 |
費用の面が重視されるとは私は思わないのですね。例えば、中国でADRというか、仲裁の件数が非常に多いと言われましたけれども、あれはなぜ多いかと言うと、強制的に契約の中に仲裁規定を設けさせられているのですね。そこでやりなさいと、そういう強制が前提にあるから仲裁の件数が非常に多いのですね。ですから、とにかくこの規定、民間で活性化してできるのは私も一番いいと思っていますけれども、企業側がどういうことでお願いするかという、この気持ちをやはり本当に考えていただかないと、仲裁する側の人の都合でこの仕組みをつくっても絶対にだめだと思うのです。 |
竹田委員 |
ちょっとよろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
竹田委員 |
判定が紛争解決機能として一定の役割を今まで果たしてきたことは私もそれなりに認めますし、積極的に判定制度をなくすことに意味があるということを思っているわけではありませんけれども、判定制度について審判官の人たちとも何度も意見交換もしたこともありますが、判定制度の機能的な限界というのは、佐藤委員も今おっしゃいましたけれども、侵害物件の特定の問題、技術的範囲にどこまで踏み込めるか、特許の有効性との関わりをどうするかとか、非常な限界があるわけですね。だから、どうしてもその判断をいわゆる裁判所の侵害論のような形では示すことができない。そういう限界の中でこの制度を運用するということは、最近のように、特に技術的範囲の解釈にいろいろな多様な問題が入ってくるとかなり難しいところがあるという点をやはり考えていかなければならないと思うのです。 |
松尾委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
松尾委員 |
丸島委員が費用の問題ではないのではなかろうかと言われましたけれども、現実には、やはり費用というのは非常に重要ではなかろうかと思います。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
いつも誤解されて、表面だけで反論されるのですけれども、(笑声)本質をちょっと見ていただきたいと思うのですよ。本当におかしいと思うのですね。皆さん、表面の言葉だけで反論される。やりたかったらどうぞやっていただきたいのですけれども、私は費用を高いのを好む人はいないと思います。原則は安い方がいいと思っていると思いますよ。だけど、特許庁の判定の費用と競争しているのですかということなのです。そんなことではないでしょうと。特許庁の判定費用が安いから、今の仲裁が妨害になっていますと、そういうことではないでしょうということなのですよ。 |
松尾委員 |
私はそんな妨害になっているなんて全然言っていませんよ。 |
丸島委員 |
だったら、何をおっしゃっているのですか、判定が5万円で、仲裁だと1人何百万かかるからとおっしゃるのはどういう関係でおっしゃっているのですか。 |
松尾委員 |
私が言いたいのは、全体をセンターで受け入れることができるかどうかというのは、仲裁ですと合意が要るのですね。そういう合意というのがなかなかできないのです。それでまた一方では日本の仲裁法というのは明治ですか、何十年という古い法律であり、現在根本から検討が行われているような状況で、制度設計するにしても、制度設計する場合には器の機構をつくらなければいけない。そうすると、そこでは費用の問題も当然できてくるということであって、その要素の1つに費用はどうしても避けられませんということですよ。 |
丸島委員 |
そうでしょうね。ですから、そうおっしゃるなら、弁護士さんの費用は200万かかります、さらに判断をしようとしたら大変でもう1人追加しなければならない、600万かかりますと言ったときに、そこに判定制度を取り込めば5万円足せばいいのですから、費用は削減できるではないですか。そういう活用の仕方をしたら、クライアントは喜ぶと思いますよ。私はそういう趣旨で申し上げたのですよ。みんな民間の専門家だけで全部判断していこうと、これは信頼性の問題と、費用の面もあるでしょう。むしろその中に特許庁の判定を組み込んだ方がずっと安上がりで済むではないですか、信頼性も上がるではないですかと。 |
木村制度改正審議室長 |
特許庁の判定制度は確かに、今は4万円で運用しているのですけれども、それ自身別に実費をいただいているわけではなくて、政策的な料金設定になっている。ですから、それが妥当かどうかということについては、論点としては、当然それはほかの出願人の方、審査請求料なり、あるいは特許の維持料からお金としては回っているという、そういう側面があることは事実でございまして、したがって、4万円というのをアプリオリに前提にして判定制度というものを云々するということは必ずしも我々として常に適切かどうかというのは、そこは評価が分かれるところではないかという気はいたします。 |
中西委員 |
はい。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
中西委員 |
私は丸島委員の言っていることはよく理解できるのですね。なぜ使わないのか。というのは、やはり判定の精度に不安があるという、もう一言に尽きると思うのですよ、今のまま行きますとね。だから、その辺をやはり充実しないといけない。費用の問題というのは、その次に来る問題だと思っています。 |
佐藤委員 |
よろしいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
佐藤委員 |
今、実は大阪地裁で、民事調停で特許権侵害の調停をやっています。民事調停が今まで非常に少なかったと言われているのですけれども、何で今回それがそういう方向になったかというと、やはり裁判所が関与しているという安心感は1つあります。そういう意味では、今、丸島委員がおっしゃるように、民・民だけの調停よりは、裁判所なり、何らかの公的機関が入るということに対しての信頼感というのは、やはり企業側なりには確かにあると私も実感しております。したがって、その点が今の民間だけの仲裁という形がなかなか受け入れにくくなっているという環境でもあるということも現実にあるだろうと理解しております。そういう意味で、一挙に民・民だけの仲裁で利用が上がるかという点については、確かにそういう傾向があると思います。 |
丸島委員 |
よろしいでしょうか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
私が思うのは、本質の問題になっているのだろうと思うのですね。それは企業間の争いという前提で置いた場合、民・民で解決してもらわなくても自分たちでできるという前提があって、それでできないものを民・民に頼むというような状況ではないだろうというのがまず1つあると思うのですね。ですから、頼むとしたらやはり公的機関が介在しない限り頼む意味がないだろうという感じがするのです。ですから、お願いする人というのはむしろもっと違う立場の人ではないのかなという感じがするのですね。 |
山下委員 |
いいですか。 |
大渕委員長 |
はい。 |
山下委員 |
この判定制度について、実は私は余り深く考えたことはなかったのですけれども、ほかのことを考えなければ、純粋に民間で、あるいは一企業で、特許庁という専門官庁がある特許についてどういう判断を下してくれるかということがわかるというのは非常に価値のあることだと思うのですね。それからさらには、純粋に民間の、例えば仲裁機関なら仲裁機関で何かやろうとしているときに、特許庁の判断を知りたい、あるいはそういう方法があればそれを判定で取り込むということも考えられましょうし、それから、これは恐らく現在でもできるのではないかと思うのですけれども、例えば調停ですね。調停で裁判所の、これは公的な機関としてやるわけです。そのときに特許庁の方に判定という格好になるのか、あるいは鑑定ということになるのか、いずれにしてもそういう形で、特許庁という専門官庁の意見を聞いて、それを取り入れるというようなことは考えられるだろうと思うのです。 |
大渕委員長 |
ほかにどなたか御意見、御質問等ございませんか。 |
牧野委員 |
質問させてください。 |
大渕委員長 |
はい。 |
牧野委員 |
今、東京地裁や大阪地裁は知財事件の専門調停を行っておりますが、そういう手続を利用するお気持ちが企業の方はおありなのかというのをちょっとお聞きしたいのです。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
秋元委員 |
私どもは使う気は一切ございません。ただ、特殊な契約がありまして、争いたくないという場合には契約上で、日本の場合は使いませんけれども、例えばスイス法に準拠してやるというような、そういう契約はいたしますけれども、日本のものを使うということは今までありませんでしたし、これからもないと思います。 |
丸島委員 |
契約上の問題として、日本を使うチャンスがないということはまことに残念だと思うのですけれども、結局は外国の裁判所を主に、何と言いますかね、仲裁地として選ばされてしまっているということもあるのだろうと思うのですね。そういう意味で、これからは日本でということも契約上考えなければいけないと思うのですけれども、力関係で決まることなので、自分が理想だと思ってもなかなかできないという事情が今まであったと思うのですね。 |
牧野委員 |
はい。 |
丸島委員 |
私はお金で解決するものだったら、それが一番いいと思っているのですよ。それに従えないというのは、ライセンスを出せない、判決をもらわないという、要するに事業をとめたいというときの訴訟だろうと思っているのですね。お金で解決するならそれでできるはずだと思っているのです。私は逆に言うと、そこまで行って調停をいただくぐらいだったら、事前に交渉でやった方がいいのではないかとも思っていますけれども、裁判所の手を煩わさないとできないというのも情けないなとは思っているのです。だから、判断いただくならとことん判決がほしいものだけ裁判をやればいいのではないかという趣旨からしますと、調停はのめないのかもしれませんが、お金だけで解決する訴訟というのは結構あるように思うのですね。そういうものは調停をのんでしかるべきではないかと私は思います。 |
秋元委員 |
ちょっと誤解があるので一言付け加えさせていただきますと、私どもは何も外国で負けたからやるという意味ではなくて、第三の地域でやるということであって、スイスでやるというのはそこが中立というか、両方に属さないからやるということでございます。 |
松尾委員 |
ちょっといいですか。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
松尾委員 |
質問ですが、このごろはあちこちで、いろいろなところで民間ADRの活用ということを言われているのですが、皆さんの、特に企業の方などの御発言を伺っていると、全然活用したくないような感じなので、(笑声)一体そういうADRの活用という話がどこから出てくるのか、ちょっと私はそれを教えていただきたいと思います。 |
秋元委員 |
1つは、かなり手間が、やはり裁判と同じぐらいかかります。金額の多寡というのは多少安いかもしれませんが、間接的な経費も含めるとそんなにも安くない。和解であれば裁判上でもできますから、やはりそういう手間暇を考えればそういうふうにしていく。それから、さっき言いましたように、あとは第三国での仲裁ということを使うというふうにしております。 |
丸島委員 |
私も聞きたかったのです、今の先生のお話。先ほど申し上げたのは、何かそういうことをやれば裁判の軽減になるのではないかということですごく伝わっているわけですね。だけども、本当にそうなるのでしょうかと私は疑問を持っているからあえてこう申し上げているのですね。私は企業から出た話では絶対にないと思うのです。(笑声)ですから、企業から出て、企業を攻められるのだったら責任をとりますけれども、企業でそういうことは、私は今まで1回も発言したことはないのですね。ですから、どこで出たのか私も知らないのですが、問題は、民間ADRが方策だけ考えれば活性化していって、裁判の方がずっと適正に動くのですと、余り裁判官を増員しなくても大丈夫なのですというような感覚を植え付けるために出てしまっているのではないかというので、裁判所から出ているのですか。(笑声)これは冗談ですよ、申しわけない。 |
丸島委員 |
扱う人の能力とか何とかの問題ではなくて、非常に難しいと思っているのですね。 |
丸島委員 |
そうなのですね。ですから、それを余り活性化するということをバーッと打ち上げて、本当に効果が出るのかなという疑問は持っています、はっきり言って。 |
大渕委員長 |
そろそろ時間も押してまいりましたけれども、最後に本日の議題について、何か特に御発言されたいということはございますでしょうか……。 |
木村制度改正審議室長 |
次回の小委員会でございますけれども、10月25日金曜日、午前10時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願い申し上げます。 |
大渕委員長 |
それでは、以上をもちまして、第5回紛争処理小委員会を閉会させていただきます。 |
太田特許庁長官 |
どうもありがとうございました。 |
――了――
[更新日 2002年10月29日]
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