第5回紛争処理小委員会について
平成14年10月2日
経済産業省特許庁
9月30日(月曜日)15時~17時に産業構造審議会知的財産政策部会第5回紛争処理小委員会(委員長:大渕哲也 東京大学先端科学技術研究センター教授)が開催された。
1.審議内容
(1)事務局説明
配布資料に沿って、[1]侵害訴訟と無効審判との関係について、及び[2]判定制度のあり方について事務局から説明した。
(2)自由討議
事務局説明に続いて自由討議を行ったところ、委員の主な意見は以下のとおり。
(侵害訴訟と無効審判との関係について)
- 侵害訴訟と無効審判では職権主義と当事者主義の違いもあり、両制度が並存する以上、侵害訴訟と無効審判の間で判断の相違が生じることは避けられない。
- ユーザーとしては、法的安定性を高め、権利行使、知的財産管理を行いやすくするために、侵害訴訟と無効審判の判断が可能な限り一致することが望ましい。
- 当事者が侵害訴訟と無効審判との間で矛盾したクレーム解釈の主張をすることが許されるような状況は、ユーザーからみて問題である。
- 侵害訴訟と無効審判で有効性の判断が異なった例は2件しかないという現状で、その相違は、現実的にはそれほど大きな問題ではないのではないか。
- 必要的中止規定の導入案が提示されているが、侵害訴訟の中止は、裁判所の判断で決定すべき。必要的中止規定の導入は却って、侵害訴訟の遅滞を招くことになる。
- 制度改正により、無効審判を迅速化することができれば、二制度が並存することから生じる問題の大部分を回避することができると考える。
- 特許の有効性の判断が迅速・適確に行われることが最も重要と考える。そのためには最も迅速・的確なフォーラムで審理できるように制度設計することが適切。
- 鑑定の嘱託等により裁判所と特許庁が情報共有を行えば、判断の相違の発生を少なくすることができる。求意見制度については、どの程度の意見を求めることとするのか検討が必要。
- 情報共有は、当事者による主張の範囲内で行われるに過ぎず、後に別途無効審判が請求される可能性もあり、問題の解決にならない。効率性の点からも疑問。
- 無効理由が存在することが明かな場合に限らず、全ての無効理由について訴訟で判断できるようになることが望まれる。
- 現在の侵害訴訟では、無効理由が存在することが明かな場合に限り有効性の判断を行っているため、訴訟期間は短縮してきている。全てのケースについて有効性の判断を行うと、審理期間が長期化することが予想される。
(判定のあり方について)
- ADRについては、侵害の有無の判断を公的機関で行うことに意義がある。民間のADR機関ではどうしても中立性の点から信頼性が乏しい。民間ADRが利用されない原因はこの点にあり、現状では、その活性化は難しいと考える。
- 民間ADR機関の判断の信頼性を確保するため、侵害の有無、有効性の判断の部分については特許庁に委ねることが可能となる制度にすれば、民間ADR機関の利用が増えるのではないか。
- 特許庁の有限な人的リソースは、本来業務である審査・審判に振り向けるべきではないか。
- 民間ADRが育たないことの一因として、判断の信頼性の他に判定の請求費用が安価過ぎることがある。民間ADRには財政的手当も必要。
- 判定機能の拡大が困難であればむしろ判定制度を廃止して、裁判所の判断に委ねることとする方がユーザにとっては有益。
2.次回の審議予定
第6回紛争処理小委員会は、10月25日(金曜日)15時00分~17時00分に開催する予定。
[更新日 2002年10月4日]
お問い合わせ
|
特許庁総務部総務課制度改正審議室
電話:03-3581-1101 内線2118
Fax:03-3501-0624
E-mail:PA0A00@jpo.go.jp
|