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第6回紛争処理小委員会 議事録

特許庁総務部総務課
制度改正審議室

  1. 日時:平成14年10月25日(金曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:大渕小委員長、中山委員、秋元委員、蘆立委員、斎藤委員、作田委員、佐藤委員、竹田委員、中西委員、牧野委員、松尾委員、丸島委員、諸石委員、山下委員
  4. 議題:
    • 紛争処理小委員会報告書(案)
    • 審決取消訴訟係属中の訂正審判の在り方
    • 実用新案法、意匠法及び商標法における紛争処理制度の在り方
議事録

大渕委員長

まだお見えでない方もいらっしゃるようでありますけれども、定刻でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第6回紛争処理委員会を開催いたします。
本日も、御多忙の中、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。

大渕委員長

それでは、早速、議事に入らせていただきます。
まず、本日の議題であります「紛争処理小委員会報告書(案)について」、「審決取消訴訟係属中の訂正審判の在り方」、「実用新案法、意匠法及び商標法の紛争処理制度の在り方」、この3点につき事務局から御説明をお願いいたします。

木村制度改正審議室長

まず、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。本日の配付資料でございますが、クリップをはずしていただきまして、3点ございます。一番上が、本小委員会のとりまとめの結果である「報告書(案)」でございます。それから、資料2に「審決取消訴訟係属中の訂正審判の在り方(検討用資料)」というものがございます。それから、資料3で「実用新案法、意匠法、商標法における紛争処理制度の在り方」ということで、以上3点、間違いがないかどうか御確認いただければと思います。
それでは、内容の御説明に入らせていただきます。3点一括して御説明した方がよろしいかと思いますので、そうさせていただきます。
まず、紛争処理小委員会の報告書でございます。おかげさまで、非常に大部なものになりましたけれども、ここまで「案」という形でまとめさせていただくことができました。
目次を開いていただきますと、1ページでございますが、全体は3章立てと参考資料になっております。第1章は概況編でございまして、現在の状況を分析しておるものでございます。第2章、制度改正の具体的方向のところが本小委員会のメインボディーになるものでございまして、4節構成をとらせていただいております。第1節で、特許の有効性に関する審判制度等の在り方ということで、異議と無効の一本化等々の議論、審判制度そのものの議論をで行っております。第2節は、審決取消訴訟・訂正審判の在り方ということでございます。第3節で、侵害訴訟との関係を論じておりまして、第4節に判定とADRの関係につきまして論じております。最終的に第3章、検討のまとめということで、取り組むべき課題として、直ちに取り組むべきもの、引き続き検討すべき課題ということで、分けて整理してございます。
以上のような構成になっておりまして、本編が5ページ以降でございます。第1章は、いずれにしても概況編でございますので、説明は割愛させていただきたいと思います。
第2章、制度改正の具体的方向でございます。特許の有効性に関する審判制度等の在り方について、簡素化、合理化、迅速化といったさまざまな観点から御議論いただいたわけでございます。時間もございませんので、結論の部分だけ簡単にかいつまんで御紹介していきたいと思います。
20ページから21ページにかけてでございますけれども、制度改正の具体的方向ということで、基本的には現在、権利の有効性については、異議申立て、無効審判の2つの制度が併存している状況でございます。その2制度を併存させているメリットは確かにあるわけでございますが、昨今、弊害の方が目立つようになってきているのではないか。特許権者の対応負担が非常に著しい、あるいは審理の長期化をもたらしておるという問題があります。それから、当事者の関与を強めたいという要請にも、異議申立制度は十分こたえられないという状況があるわけでございます。
方向性については、二制度の統合・一本化というもの、それから、それぞれを残しながら制度を改善するという対応があるわけでございます。21ページでございますが、この際、異議申立て、無効制度の両制度を統合・一本化するのが適切ではないかということで、ここではまとめさせていただいております。その際、当然その両制度、それぞれ制度の趣旨の力点が違うわけでございますので、双方の機能が新しい制度においてもきちんと引き継がれるようにということで、ここではまとめてございます。
それから、新無効審判制度の基本骨格でございますけれども、22ページ以降にまとめてございます。その結論部分が、29ページに飛びますが、小委員会における意見ということでまとめさせていただいております。一本化する新たな制度がいかなる構造を持つかということですが、まず丸1請求人適格でございます。オプションとしては、利害関係人とする、あるいは、何人もとするというのが大きな2つでございますけれども、対世効の問題、あるいは異議申立てに対する要請を包摂すべきであるということを勘案すると、請求人適格は何人にも認めるということが適切ではないかと考えております。
それから、審理構造でございますけれども、これは大きく分けて、現行異議の形態であります査定系、それから、無効審判の形態であります当事者系がございますけれども、当事者対立構造を基本とするというのが、当事者の納得のいく結論が得られやすい、あるいは訴訟資料の豊富化といったメリットがございますので、それをここで採用してはどうかという結論にしてございます。
それから、請求理由でございますけれども、公益的理由に加えて、「権利帰属」まで争えるようにするというのがここでの結論でございます。ただし、権利帰属については、請求人適格は利害関係人を制限するという形でいかがか、というまとめにしてございます。
それから、請求時期でございますが、これは無制限ということで考えております。
そのほかにも、特許権者の対応負担の軽減措置、やはり、何人もできるということでございますので、制度濫用の懸念もあり得なくはないということで、請求の理由が非常に不十分なものについては、排除する手だてを講じてはどうかというような御指摘もございまた。
それから、31ページ、審理方式でございます。口頭審理と書面審理の双方の形態があるわけでございますが、あえて決める必要もないのではないかという御指摘もございましたし、口頭審理は審理充実の点で有用であるという指摘もあったということで、柔軟にそこは対応させていただきたいことでまとめてございます。
それから、情報提供制度についても、異議申立制度の趣旨である見直し機能を補完するものとして導入するということも検討したわけでございますけれども、それについては、さらなるニーズの調査等踏まえて検討してはどうかというまとめをしてございます。
それから、32ページ以降が攻撃・防御の機会の最適化ということで、理由・証拠の追加の制限をどの程度緩和するかあるいはしないかということでございます。結論の部分は37ページでございます。本件については、議論はしていただきましたけれども、この案でぜひいこうということで、議論が必ずしも収れんしているような印象はないのかもしれません。ただ、平成10年の法改正で審理期間が非常に短縮したというメリットはあるので、それ自身は肯定的に評価しつつ、その中でどのような弾力化が可能かということだと考えております。
38ページの下半分ぐらいでございますが、全体としては、現行の無効審判における平成10年法改正の趣旨を基本としつつ、無効理由・証拠等の追加を真に認めるべき事案、例えば、強力な証拠が後ほど見つかった場合とか、訂正に対する応答として補強証拠を出す必要がある場合とかあると思いますけれども、そういう場合についてのみ例外的に許容するということで、その方法は審判官の基本的には裁量でやるのがいいのではないかということで、ここではまとめをさせていただいております。
ただ、やり方としては現在、職権探知に基づく無効理由通知の規定がございますが、真に認めるべき場合は、必ず職権無効理由通知を打つと、そういう運用とする考え方もございます。他方、当事者からの申し出に基づきまして、一定の要件で審判官が新たな無効理由・証拠の採否を決定するというような考え方もあると思います。それぞれメリット、デメリットがあると思いますので、ここについては、いずれにしても、どのような事案についてそれを認めていくべきかということも含めて、判断基準を明確化していくことをまとめとして置いてございます。
それから、39ページ以降が紛争の蒸し返しの防止でございまして、これは同一の請求人が再度の無効審判請求を行う場合は、事実、証拠が異なる請求であっても、一定の場合には制限してはどうかという議論でございますが、41ページでございますが、事務局サイドから御提示申し上げた案につきましては御支持が得られませんでしたので、これについては消極的な方向、慎重な方向でのまとめにしてございます。
それから、42ページにかけてが職権探知の在り方でございます。これは基本的には、現行の制度・実務と同様というまとめにしてございます。
それから、審判における非公開規定の拡充でございます。これについては当日のフロアでは御議論がございませんで、44ページのまとめとしては、特段の意見はなかったということでございます。いずれにしても、訴訟の方では、営業秘密の非公開化について検討が開始されておりますので、それと軌を一にする形で審判制度についても引き続き検討し、必要な措置を今後講ずることを考えてはどうかということでまとめてございます。
それから、迅速・的確な審理の確保ということで幾つか御指摘いただきました。口頭審理を1回に限定する運用が見られるとか、審判官の暫定的心証が示されにくい、そういう問題が指摘されておりまして、実務のあり方をあわせて早急に検討するということで、まとめさせていただいております。
それから、45ページ以降が第2節でございます。審決取消訴訟の在り方等についてのパートでございます。第1項が審決取消訴訟の構造でございます。まず訴訟当事者でございますが、新しい制度、無効審判と呼ぶかどうかはともかくとして、当事者系の制度として考えておりますので、その後の出訴段階においても、基本的には当事者系の構造とするということで、46ページにまとめております。
それから、特許庁の関与でございますけれども、特許庁が法令解釈であるとか、あるいは職権探知に基づく無効理由を通知したような場合、それが争点になるような場合は、訴訟関与を認める道を設けるべきではないか。あるいは、審理の充実の観点から、特許庁が積極的に関与していく局面もあっていいんではないかということで御議論させていただきました。
結論については、51ページでございますが、基本的には当事者間の公平性の問題、当事者系の審理構造の基本理念であるとか、あるいは、置くにしても訴訟参加という強いものではなくて、求意見・意見陳述ということでいいのではないかという御指摘がございましたので、基本的には訴訟参加のような形をとらずに、求意見・意見陳述制度という形で訴訟に関与する方向性があるのではないかというとりまとめにしてございます。
それから、52ページ以降が訂正審判の在り方ということで、いわゆる「キャッチボール」の問題でございます。これについては幾つもフロー図の形で案を出させていただきまして、かえって皆様方の混乱を招いてしまった面があると思います。
結論については、64ページ以降で、とりあえずここでは幾つか案を出したわけでございますけれども、C-1案は、比較的単純な構造でございまして、図が58ページにございますけれども、差し戻しを裁判所が行って無効審判に戻るという形態でございます。これが一番多数の御支持をその場で集めた感がございます。他方、C-2案、D-2案。D-2案は、裁判所が主として訂正後の特許についても審理し得るというような案でございますが、それについてもそれぞれ一部の御支持があったわけでございます。
65ページにかけては、C-1案を基本とすべきではないかということでまとめさせていただいておりますが、これについては十分議論が収れんしておらないこともございますので、改めて後で、資料2の説明の中で御説明を申し上げたいと思っております。
それから、65ページ、66ページにかけては裁判所との関係について、特に裁判所自らが訂正後の特許についても有効性を真に判断することは可能かどうかということ。それをどこまで特許庁と裁判所との間の役割分担の中で今後認めていくかについても、さらに検討すべきであるという御指摘もございましたので、それについても触れさせていただいております。
それから、侵害訴訟と審判の連絡体制の在り方ということで、これはキルビー判決を契機にした侵害訴訟における無効判断との調整の問題でございます。若干、そもそも論をしたようなところもございすけれども、74ページ以降に具体的検討とそれに対する結論をまとめてございます。基本的にはプロセスの問題、要は侵害訴訟と審判のいずれかを優先的に審理する。例えば必要的中止規定を置くとか、あるいは、75ページでございますが、中身を共有する。すなわち情報の共有でございます。裁判所サイドからの求意見制度、特許庁に対する求意見制度であるとか、特許庁サイドからの侵害訴訟中での当事者の主張・立証情報の入手といったことについて御議論いただいたわけでございます。
結論を申し上げますと、76ページでございますが、必要的中止というものは、むしろ置くべきではない、弊害の方が大きいのではないかという御議論だったと思います。
それから、77ページで、情報共有については、鑑定嘱託とか求意見、いろいろなものがあるのだけれども、必ずしも完全な答えではないので引き続き慎重に考えてはどうかという御意見が多かったように思います。
それから、主張・立証情報の入手につきましては、その在り方としては必要なことだと思いますので、その在り方をきちっと詰めていくべきではないかというまとめ方にさせていただいております。
それから、裁判所での無効判断が可能でございますので、判断の相違が出るのでないか、有効性範囲をどこまで判断するべきか、例えば、すべての無効理由について訴訟中でも判断できるようにするということもコメントとしていただいておりますので、それについても78ページにかけて併記させていただいて、必要に応じてさらに検討するということでまとめさせていただいております。
それから、最後に判定でございます。79ページ以降でございますが、これについてはADRとの関係で議論する必要がそもそもあるのかないのかということもございますし、そもそもパブリック・サービスとしてこのようなものを提供すること自身の適切さについても、るる御意見があったわけでございます。
結論を申し上げますと、86ページでございますが、基本的にはなお慎重に検討することは必要であるものの、判定は廃止すべきであるという意見が多数を占めたわけでございます。他方ADR全体につきまして、さまざまなところで御指摘もあり議論も進んでおりますので、それを踏まえながら、さらに帰趨について検討していくことでいかがかというまとめ方にしております。
87ページ以降は検討のまとめでございまして、第1節が、直ちに取り組むべき課題。例えば法改正事項では、次期通常国会を念頭に置いて法案を提出してまいる、それに伴う関係の制度整備も行っていくという段取りで考えておるものが第1節に書いてございます。最大のものは異議申立てと無効審判の統合・一本化でございます。具体的には、その骨格についても先ほど御説明した内容のことを書いてございます。
88ページは、審決取消訴訟における訴訟当事者、特許庁の関与。求意見・意見陳述を認めるということであれば、そういう形にしてはどうか。
それから、訂正審判の在り方というところがキャッチボールでございます。ここではC-1案というのが当日の御議論では一番支持があったものですから、それを前提にした書きぶりになっておりますが、御議論を改めていただければと思っております。
それから、運用による対応というところで、攻撃・防御の機会の最適化をとりあえずこちらの方に入れております。職権無効理由通知を機動的に活用することをベースにした案としてここに入れさせていただいておりますけれども、これも議論があればいただければと思います。
それから、根拠不十分な請求の排除であるとか、迅速・的確な審理のための運用改善も運用で法改正と軌を一にして議論していく課題かなということでまとめております。
それから、侵害訴訟で無効審判との連携体制、審査・審理の一層の充実ということで、ここで、特許性を欠く発明に対して特許が付与されることを回避すべきであるという御指摘を幾つもいただきましたので、それについてもまとめております。
それから、90ページに、引き続き検討すべき課題ということでまとめておりまして、侵害訴訟と審判との調整・連携、全体の問題、侵害訴訟と審判の関係、判定、営業秘密の非公開化の問題、裁判所の審理範囲の拡大といったところが引き続き検討すべき課題。どこで検討するのかということを必ずしも明示しておらないものもございますけれども、検討課題として挙げさせていただきました。これについても後ほど御議論いただければと思っております。
それから、駆け足で恐縮ですが、資料2に移りまして審決取消訴訟係属中の訂正審判の在り方でございます。今までに具体的な御支持があった案は、まずA案でございます。思い出していただきますと、訂正請求はもう遮断してしまって、それで終わりという案でございます。それが一番簡明であるという御意見ももちろんあるわけでございますが、それについては、一方で非常に強い反対が出ていることも考えあわせると、恐らく何らかのコンセンサスに向けて収れんすべき可能性がある案は、C-1、C-2、それから一部御支持がございましたD-2かなと思っております。
個別にいろいろと御意見を伺った際にも、D-2とC-2の変形のような案の御提示があったりしましたので、事務局として、たたき台でございますが、C-3を今回新たに御用意させていただいて、とりあえず3案出させていただきました。御議論していただければありがたいと思っております。対比する上で意味があるのは、恐らくC-1とC-3になると思いますので、それを中心に御説明したいと思います。
本文の方は、具体的な最終的な報告書へのはめ込みも考えて書いたものでございます。とりあえず後ろのポンチ絵を見ていただくのが一番手っ取り早いかと思います。4ページぐらいめくっていただきますと横長の紙がございます。
まず、C-1でございますが、これは従来御説明してきた案でございまして、訴訟提起から一定期間に限り、裁判所に対して、特許庁に訂正を請求するために、事件を特許庁に差し戻してくれということを申し立てていただくことを想定しております。そういう申し立てを、裁判所が受けるわけでございますけれども、その場合は原則、差し戻し判決を行うことになろうかと思います。
ただ、訂正が認容される蓋然性が低い、濫用的な申し立てといいますか、一見、明らかに無効理由を除去するようなものでない場合は、恐らく裁判所が事件を差し戻さずに、訂正前の特許について審理を続行することになります。申し立てが却下されてしまうと基本的には、上訴の問題等を考えあわせると、訂正の機会が相当程度失われることになるわけでございます。案としてはかなりシンプルなものでございます。
それから、C-2でございますが、これはそれに対して訂正のルートもあわせて付加した案でございまして、これが一番複雑でございます。一見、非常にオプションが多いのですけれども、極めて複雑でございまして、裁判所がかなり微妙な判断、例えば無効審判に戻すのか訂正審判に戻すのかということ、それも実体審理を余り十分にできない段階で行う必要があるということになるわけでございます。
新たなC-3案、たたき台でございますが、お示ししております。これは審決取消訴訟の提起から一定期間に限り、訂正の審判の請求をしていただく。これは裁判所への申し立てという形態をとらずに、特許庁にしていただければいいと考えております。その場合、特許庁からも裁判所に、訂正審判請求があったということを御連絡申し上げることになるのではないかと思います。
裁判所は、特許庁による審理を経ることが必要と判断した場合は、いつでも差し戻しを、これは職権になると思いますが、することができるということで考えておりまして、特許庁は、差し戻しがあった場合は、無効審判中で訂正の審理を行うことになるわけでございます。その際、既に訂正審判が係属している場合は、何らかの調整の規定を置かなければいけないことになると思います。
仮に、特許庁による訂正審判の結果を待って、その訂正された特許の有効性について訴訟中で判断することができるという御判断を裁判所がされる場合は、それもできるという案になっております。この場合は差し戻しをする必要がないわけでございます。
そうなりますと、いずれにしても当事者、特許権者の側にすると、訂正審判請求は一定期間内であれば必ずできるわけでございますので、訂正の機会はまず確保されるということでございます。
それぞれの案の長所、短所のようなものを後ろに比較一覧表で書いております。C-1と3をとりあえず対比していただければよろしいかと思います。まず制度の複雑さ、全体の複雑さという意味で言うと、C-1、C-3は、例えばC-2に比較すると非常にシンプルである。
それから、事件処理の複雑さは、裁判所のコントロールという観点から見る場合、C-1は事件処理の流れが一本にまとまっているので簡明ではある。そういう意味で言うとC-3は特許庁との連絡が必要になるわけでございます。その点が一つある。
それから、訂正の機会の保障でございますが、C-1の場合は、裁判所に対して差し戻しを求める権利があるわけでございますが、その申し立てが認容されない場合は、訂正の機会が事実上失われるわけでございます。訂正の機会を拒絶されたことに対する不服申立ては、その次の箱に書いてございますけれども、これは最高裁判所に上訴等することになりますので、極めて制限されることになる。
他方、C-3の場合は、訂正審判請求というのは、法定期間内にこれは制限させていただきたいと思いますが、その期間内であれば常に可能であるということでございます。その場合必ず裁判所がその審理を中止されるかどうかについては、保障はございませんが、これは現行もそうなっているということで、特に後退しているわけではございません。
それから、裁判所に訂正の申し立てというような法律構成をとっておりませんので、申し立ての却下とか不服申し立てといった問題は、ここでは起こらないわけでございます。
それから、当事者の意思に反する差し戻しという、これはどの程度議論する実益があるのかどうかあれでございますけれども、C-3は可能性としては、当事者の意思にかかわりなく事件が差し戻される可能性は一応あり得るわけでございます。
それから、キャッチボールへの対処は、現行の裁判実務、大径角型鋼管事件の判決を踏襲した形で考えますと、C-1案は、訂正審判ルートがございませんので、訂正確定後の自動取消しというのは発生しないわけでございます。
他方、C-3でございますと、基本的に訂正審判ルートがございますので、訂正が確定した後、さらにそれは裁判所の手に余るということであれば、そこで取り消される可能性はもちろん払拭することはできないわけでございますが、基本的には難しいものは無効審判に差し戻されるということだろうと思いますので、トータルでは事案に応じた迅速かつ柔軟な対応が可能になるのではないかと考えております。
それから、裁判所の審理範囲の拡張への対応というのがございまして、基本的にC-1案というのは、訂正後の特許の有効性を自ら裁判所が御判断される余地はございませんので、そういう意味で言うと審理範囲の拡張には対応できないといいますか、無関係であると思います。
C-3でございますが、これは審理範囲の拡張、裁判所の充実に応じた段階的な対応が可能になるのではないかと考えております。これにつきましては、正直申し上げて議論が錯綜しておるところでございますので、今週も御議論いただければと思っております。
それから、最後の資料3を簡単に御説明したいと思います。
産業財産権の関係での他の三法横並び論等について御審議いただきたいのですけれども、まず実用新案法でございます。これについては、そもそも異議申立てが現在制度としてございませんので、一本化論はないわけでございます。今回新しい、例えば無効審判制度に特許が移行する場合に、それに制度の内容を平仄として合わせるかどうかということでございます。これについては実用新案についても、1ページの下の方でございますが、対世効があるということ、あるいは実務の混乱を回避する観点からも、例えば請求人適格については、何人もとするように、改正することはいかがかなということでございます。
そのほか、権利帰属に関する無効理由などにつきましても、冒認とか共同出願違反といったことについては、請求人適格は利害関係人に限定するということで、これも特許と同じ扱いにしてはいかがかなと考えております。
それから、審決取消訴訟の構造についても、基本的には求意見の部分であるとか、侵害訴訟と審判との間の連絡体制であるとかこういうものも、特に特許権の取り扱いと異ならせる積極的な理由は何もないのではないかという考え方で、ここでは書かさせていただいております。
それから、意匠でございます。これについても異議申立てはございませんので、一本化論は問題にならないわけでございます。対世効を基本的な意味では、特許と共通するような性質を持っておりますので、請求人適格の考え方、権利帰属についての無効理由については、利害関係人に限定するところについて、特許と基本的には足並みをそろえていけばいかがかなということで考えております。
それから、飛びまして6ページの商標でございますが、商標については、異議申立てと無効審判制度の両制度が併存しているという点では特許法と同じでございます。他方、状況が違うのは、ユーザーの方からは、今までのところ異議申立人の審理への積極的関与を求める要請は特にいただいていないわけでございます。また、紛争解決の長期化を著しくもたらしているという御批判も余りないのかなと。むしろ商標法は商標の誤認混同を避けるということで、需要者の利益の保護を図るということでございまして、簡便な異議申立制度によって、できるだけ早期に瑕疵ある商標権が取り消されることが望ましいんじゃないかという御指摘もかなり根強いものがございます。
証拠の内容の複雑等を見ても、査定系構造の異議申立てでも十分審理することが可能な場合も多いので、これらの要素を慎重に今後検討していくことは必要でございますが、今回の改正にあわせて商標法も一本化することは見送らさせていただいた方がいいのではないかというとりまとめにしております。
無効審判に関して、求意見・意見陳述を認めるかとか、侵害訴訟との関係とか判定等については、特許法にあわせた改正を行うことはあり得るのかなということでございます。キャッチボールについては、訂正というのはない、基本的には特許だけの問題ということで整理しております。
以上、3点駆け足で御説明申し上げまして、雑駁な説明で申しわけありません。

大渕委員長

数多くの論点につきまして、詳細でかつわかりやすい説明をどうもありがとうございました。
それでは、今事務局の方から御説明のありました3点、すなわち委員会報告書(案)、訂正審判の在り方、実用新案法、意匠法及び商標法の点について、以下御議論いただくわけですが、この3つの論点を一遍に御議論いただくと議論が混乱する恐れがありますので、議論を整理する観点から、一番いろいろと細かい話の出てきそうな審決取消訴訟係属中の訂正審判の在り方という、今回追加ペーパー資料2で出された点についてまず最初に御議論いただければと思います。要するにこのペーパーは、従前のC-1、C-2にC-3という新しい案を付加して対照表をつくられたということで、特許庁の方でいろいろ知恵をひねられて新しいC-3案という力作を出されたということかと思いますが、これにつきまして御議論いただければと思います。

秋元委員

先ほどの御説明でもありましたように、もともとこの制度を考える場合に、迅速な審理、一回的解決、もう一つは信頼性のある的確な判断というものがあるかと思います。私どもこの委員会で何回も述べさせていただきましたが、スピードと的確な判断は両輪になっている。どうしても先端技術とか、ライフサイエンスとか、そういう分野においては非常に学問的に錯綜しているようなところもありますし、議論もいろいろ分かれている。そうすると訂正の機会がまるっきりないのは非常に困ったものだということで、前の委員会のときにも、製薬協、JBAでは、いわゆるC-1案とD-2案が錯綜していた。ただ、それについても十分満足できるものではなくて、D-2案であれば今度は当事者系が入るようにしていただきたいと、そういうことをたしか述べたかと思います。
そういうことで非常に先端技術のところではいろいろな問題が起こる、訂正ができないということは多々問題が起こる可能性がございますので、私どもとしては、もともとC-3案に近いようなことを提案させていただいたと思っておりますので、若干技術的な問題でC-1と比べてメリット、デメリットもあるかもしれませんが、的確な信頼性のある判断から考えると、C-3案を前向きに御審議いただきたいと思っております。

大渕委員長

どうぞ。

丸島委員

私も今C-1は全く同じように考えているのですが、ただ、C-3でも、場合により訴訟続行も可能という、裁判所の判断で続行できることができるとなっていますね。これが非常に理解できないというか、訂正審判が起きながら訴訟も実行される。これが許されている以上同じじゃないかという感じがするのです。
もっとシンプルにして、これは裁判所の権限の問題で難しいのかもしれませんが、C-1で必ず戻るようになぜできないのだろうか。一定期間ということは、短い間ですから事実上裁判所も審理していないわけですね。そういう状態において、訂正の申し立てがあったらなぜ自動的にというか、差し戻しできないのだろうか。そこで裁判所の判断で続行するのもあるという、そこで非常に不安が出てくるわけです。ですから、続行しないでというか、訂正を認めないで裁判所が判断してしまう。その余地が非常に不安感を与えるわけですから、それをないような仕組みをC-1でできないのでしょうか。私はそれを提案したいと思っております。

山下委員

結局これを考える際に、どういう方法をとるにせよ、実質的に決め手にしなければいけないのは、まず無効審決が出た後に、とにかく訂正を求めて、特許庁による判断を得る権利を保障しなければいけないかどうかということがあると思うのです。今おっしゃったのは、その前提として、無効にする審決が出た後に必ず1回は特許庁によってその訂正が認められるかどうかともかく、それについて判断を受ける特許権者の地位を保障しようということが前提です。
そうであるならば、今丸島委員がおっしゃったように、もう差し戻しの申し立てがあったら自動的に差し戻すというのがいいことになると思います。もっとそれを徹底すれば、これは私が前のときに申し上げたのですけど、一種の3択案なのです。無効審決が出て、一定期間だけは待ちます。その間に訂正を申し立てるか、無効審決の取り消しを求めるか、あきらめるか、3つのどれかを決めなさい。それまでは審決は確定しませんということになって。結局それは、今おっしゃったC-1案から自動的に差し戻すことになるというのと結果的に同じになるのです。だから、どういう方法をとるにせよ、必ず1回は特許庁の判断、訂正についての判断を仰ぐ権利を認めるということになれば、今出ている案はどれもだめなのですね。どれも結果的には特許庁の判断がなされないままに無効になってしまう可能性が残っていることになると思います。
前回私が、いいキャッチボールと悪いキャッチボールがあると言ったときは、むしろそういうのを残さなければいけないから、キャッチボールという制度が必要になるのではないかと申し上げたのです。そういうことは一切いけないのだと、今ユーザーの側からおっしゃっていた、やはり訂正というのは非常に大事なことだから、無効審決が出た後、訂正の機会は確保してほしいのだということを最大限尊重すれば、今出ている案はみんなだめになるのです。いずれもこれは裁判所の裁量によるにせよ、そういう機会がないままに無効にしてしまう余地を残している方法なのです。それをどう見るか。私は、それは残った方がいいんではないかと思っておりましたし、どう思っているのだと言われれば、今でも思っているものですから、そういう方法にするのがいいんではないか。あとは、どちらの方がよりいいかというだけのことであって、そんなに違わないのではないかと思っているのです。
今おっしゃったのは根本的な問題だと思うのです。とにかく無効審決が出た後、一度は訂正について特許庁の判断を仰ぎたい、それを保障すべきだということになれば、この案は全部だめだということになると思います。しかしそれは、今よりも訂正についての権利をより強く保護することになるのです。そういうぐあいにする必要があるのかどうか。現在でも、現実に保障はされてないのです。訂正を申し立てられたとしても、裁判所がこれはだめだとどんどん進めて、無効判決を出してしまう。しかもそのときには、無効の判決に対して、訂正の申し立てがなされているからということを理由に上告することはできないと思うのです。だから、今よりも訂正についての権利を強くしろというのが今おっしゃったことになると思うのです。それがいいのであるならばこの案はいずれもだめで、新しい案を考えなければいけないということになると思います。

大渕委員長

どうぞ。

小林審判企画室長

若干補足説明をさせていただきます。丸島委員が御指摘の話は、まさに山下委員が最後に御指摘になりましたように現在でも実は生じている問題です。現在は訂正審判のルートしかないわけですが、訂正審判を請求しても、訴訟は止まらないで続行しているケースは確かにございます。ただ、今回はそもそも出訴後に訂正について請求なり申し立てをする期間は限られるという考え方を取るわけですので、C-3案ですと非常に早い段階で訂正審判の請求が起きるわけです。
現在、訂正審判をして、訂正審判の結果が出る前に訴訟が続行して、訴訟でもって無効審決が確定してしまうという事例は、実は訂正審判が非常に遅く請求された場合なのです。すなわち、高裁での審理がほとんど終わりかけたころに訂正審判を請求する。そうすると当然、裁判所は迅速性の要請等もありまして、そのまま訴訟を続行する。そうすると訴訟での無効審決の確定の方が先に来てしまうということがあり得るわけです。C-3案でもほかの案でも同じですけれども、出訴されてから一定期間内、早い時期に訂正審判がなされるわけですから、実際には訂正審判の確定よりも先に無効審決の確定が裁判で行われることは事実上ないという状況になるのではないかと思います。それから、その構造自体は今でもある問題だということを重ねて御説明したいと思います。

丸島委員

現在より訂正審判の権利を強く認めることになるということは、あってもいいんではないかと私は思っているのです。現在でも訂正審判というのができないわけではない。その複雑な関係からトータルで長くなっているということですから、それを短くしようということと、1回で当事者に十分議論を尽くさせるという観点からしたら、裁判所にもロードをかけてないし、権利者のメリットにもなるわけですね。そういう意味で、C-1で自動的に落としていただくというのは、双方にとって非常にいい案ではないかと私は思っているのです。
だから、現行よりも権利を与えるというのはどの段階――段階で見ればそうかもしれませんが、訂正審判というのはできますよね。訂正審判というのはあるわけですね。広い意味で権利を強く認めているわけでもないと思うのです。ですから、制限的にある一定期間だけにやりなさいというのは、随分制約されているわけですね。その間、裁判所はロードを全然かけてないと私は思うのです。ですから、もう一度特許庁に戻って、大事な技術について当事者に争わせるというのは、これが将来的な二度争わせることのない大事なやりとりだと思っているのです。いかがでしょうか。

大渕委員長

どうぞ。

作田委員

C-1案についての質問なのですが、C-1案は訂正審判なしと書いてございまして、これは裁判所に対して訂正要求をする。そうするとC-1案は、審決取消訴訟係属中の訂正審判という現行のやり方はやめて、こういうやり方にしようという理解でよろしいのですね。
それから、C-2案、3案ですけれども、C-1案と大きく違うのは、訂正審判なしとありという点だと思うのです。実務的に迅速性という面から質問いたしますが、C-2案、C-3案になったときに、訂正審判の審判官は、無効審決ないしはその上の無効審判の再開に担当する審判官とは別の人がやるのですか。それは時間的な問題もあろうかと思いますけれども、私はC-1案で、今までせっかく審理をやった審判官が、C-2案、C-3案で保障されない確率の方が高くなるのではないかという疑問なのです。

小林審判企画室長

もちろん、どの事件がどのタイミングで起きるかによって審判合議体の構成が多少違うことはあり得ると思いますけれども、一般論としては、当然同じ特許についての事件ですと、基本的には同じ部門の同じ合議体ということが多いかと思います。それからもう一点、C-3案は、結局これは訂正審判が起きたときに差し戻しの無効審判が同時係属することがございまして、その場合には訂正審判と差し戻しの無効審判を合わせたような形で、工夫の余地があるかと思いますが、審理することになるかと思いますので、その場合に限って言えば、当然のことながら訂正の中身の審理と訂正された特許の有効性の判断は同じ合議体がやることになろうかと思います。

大渕委員長

どうぞ。

竹田委員

先ほど小林企画室長が言われたことの中で、必ずしもそうではないと思ったことを1点申し上げますと、訂正が確かに審決取消訴訟が係属している段階になされれば、裁判所が審理を進めれば、訂正の可否について特許庁の判断が間に合わなくなるということは、わかりますけれども、今の制度ですと、訂正を申し立てた場合に、さらに別個の無効審判手続が特許庁に係属していれば、その手続内で訂正の可否が審理されることになりますから、その無効理由の存否との関係で口頭審理を行うということになれば、どうしたって長くかかるので、訂正の申立が早めに出されたとしても、無効審判請求が継続している限りはなかなか簡単に訂正が出ない。これは私自身もそういう経験をしましたけれども、そういう状況になることがあるので、必ずしも訂正を遅くするからいけないのだというわけにはいかないということが一つです。
それから、C案について問題なのは、結局これは裁判所が原則として差し戻すのですが、例外的には、蓋然性が低いかどうかということは裁判所が判断するわけですから、技術専門官庁としての特許庁の判断ではなしに、裁判所の判断で訂正の申し立てが却下される。却下された場合に不服申立てをどうするかということは一つの問題点なのですが、そのことは本文には何も書いていないで、最後の対比表のところを見ると、「最高裁への上訴等によらざるを得ず、極めて制限される」とあるわけですね。
そうすると訂正の可否について、上告理由にこれは訂正でされるべきものだと言っても、今の上告理由で通るわけがないと私は思うのです。そうすると実際上は、この場合には裁判所が訂正の申し立ての判断を裁判所がすることは、現行制度の中でいいのかどうかという問題も一つあると思います。果たしてどこまで現在の裁判所でそれを期待していいのかという問題があります。それ以上に、そこで判断されて訂正申し立てが却下されると、実質的にその訂正は本来、特許庁に出せば通るべきものであると当事者が考えたとしても、もはや争う余地がなくなる。そこに私は前々から、C-1が非常に問題があるということを申し上げているわけで。
それならいっそのこと一定の期間に限って、訂正の申し立てが出たら、それは必ず差し戻しにしてしまうのか、あるいは中止してその後の訂正の結果を待つ。訂正の結果を待って訂正されれば、それについて新たな審理をするのかとか、そういう方法を考えた方がよほど問題点が少ない。
私はもっと突き詰めて、A案で行った上で、ユーザーサイドで問題にされる、それでは訂正の機会がないという点は、現行の付与後異議でやっている取消事由通知のように、無効審決をする前に必ず特許庁が権利者側に、この無効申立ての理由によって無効とされる蓋然性が高いということを通知して、それに対して防御権の行使として権利者側で訂正すべきだと考えたら訂正する。それを特許庁に判断してもらって、その判断の当否は結局審決取消訴訟で結論とともに裁判所で判断する。この方がよほどユーザーのために私はいいと思っているのです。
ともかく、審決後に訂正できないということに反対の強い意思をユーザーサイドで持っているとすれば、ユーザーニーズにこたえなければならないと思いますけれども、そうであるとするならばC-1案でいくのが本当にいいと言えるのか、そこのところはよくユーザーの方は考えた方がいいんではないかと私は思います。
以上です。

大渕委員長

今御発言のあった点の後半部分は、最初はC案とおっしゃっていたようですが、よく聞き取れなかったのですが、主にC-1案を念頭に置いたということですか。

竹田委員

そうです。

大渕委員長

C-3だと、むしろそういう申し立て云々の却下のところは問題にならないという説明になっているわけで、C-1案については不服申立て等の難があるのではないかと、そういう御趣旨ですね。

丸島委員

同じことを申し上げますが、C案のままでいいと私は言っているのではなくて、そういう不安を解消するために、C案を改正していただいて、裁判所が自動的に差し戻すという内容にしていただきたいという意味で申し上げているのです。

大渕委員長

どうぞ。

作田委員

今、竹田委員がおっしゃった点について、ユーザーはどうかということになりますと、本来的には無効審決の方で、裁判所へ行く前にそういうことができれば、願ったりかなったりであると私は思います。ただ、前回の議論を通して申し上げますと、それではあまりにも量的な面等、様々な面で大変であることから、C-1案がそれに近いような形で出てきているのではないかと思っております。したがいまして、C-1案から丸3を取ってしまえば、実質的にはさっき竹田委員がおっしゃったようなことと同じになる。訂正について審理する件数もかなり絞られてくるのかなと理解しております。

大渕委員長

どうぞ。

中西委員

ユーザーの立場からすると私も丸島委員の意見に賛成でございまして、訂正の機会を逆に強化してほしい。中小企業の立場からすると。というような意見を持っております。だから、自動的に差し戻しという方法は、ユーザーからとると有利ではないかなと思っています。

大渕委員長

ほかに御意見は。
今、訂正の機会強化のところが出ておりますが、先ほどたしか冒頭に御発言のあった方からは、ユーザーの観点から、スピードと訂正の機会の保障とバランスが重要だという御発言もありましたが、その観点はいかがでしょうか。

秋元委員

ちょっと補足させていただきますが、このC-1から3があるから私もC-3がいいと言ったことで、基本的には丸島さんが言われる、以前に訂正の機会を設けてくれというのが基本でございますから、先ほど丸島委員が言われたC-1でいくのか、竹田委員が言われたA案をそういうふうに考えるのか、これはまたここで議論していただきたいのですが、とにかく先端技術の場合には、別に裁判所を疑うわけではございませんが、そこで訂正の機会がなくなってしまう。予告しかないということは非常に困るというのが私の基本的な考え方でございます。

大渕委員長

それと訂正の機会があるかないかという観点からすると、このC-1については法的に非常にはっきりしておりまして、差し戻したら無効審判で訂正請求の機会があるのですが、それをしない限りは、一切ありません。それに対してC-3の場合ですと、もちろん法的には、差し戻された場合でも、そのまま訴訟段階で審理が進む場合でも、訂正の機会は法的に保障されている。あとは先ほどちょっと出ていました、タイミングというか時間的な関係で実際上という点はありますけれども、法的には訂正の機会はどっちの段階でも、差し戻した方でも、続行する方でも与えられているわけです。

丸島委員

まだC-1そのものにこだわっていらっしゃるのですけど、だから、C-1を訂正していただきたいとお願いしているのと、C-3でちょっと懸念するのは、確かに訂正は保障されるのですが、裁判所がそのまま走れば、やはりだめと。それが1つと。もう一つは、訂正確定までというのは、無効審判とどうドッキングするのかわかりませんが、権利者と特許庁との対応だけであって、当事者が訂正に対して参加できない。これが時間的ロスだと私は思うのです。そういう意味で当事者が一度に議論、訂正の内容について合議ができるような案としては、C-3はやはり時間がかかると思うのです。そういう意味で、C-1の方がいきなり無効審判で両当事者がそこに参加できるという点で、C-1の方が望ましいと私は思っているのです。

小林審判企画室長

C-3案の場合には、差し戻しが起きたときには、もともと出ていた訂正審判は差し戻しの無効審判の中に吸収されたような形になりますので、その限りにおいては当事者間での議論はできることになろうかと思います。もちろん、御指摘のように訂正審判しか起こされなくて差し戻しが起きなかった場合には、現行の訂正審判のように査定系になろうかと思いますが、そのケースがどのぐらいあるかということになるんだろうと思います。その点で言いますと、C-1案にしてもC-3案にしても、どの程度に差し戻しの頻度が高いのか低いのかというところあたりに事実上の問題は行くのかなという気がするのです。

大渕委員長

どうぞ。

佐藤委員

私はC-1案の中で、裁判所から自動的に差し戻す形が一番シンプルでよろしいんじゃないかと思います。確かに意図的に訂正申立てをして、その事件を長引かせようという問題を排除する意味では、裁判所に1回判断していただくことも考えられるのですけれども、ただその判断のところが、最終的には上訴しなければならないということであると、逆に認められなかった場合の権利者側の不利益が余りにも大き過ぎる。ある意味でその部分を、もし意図的な遅延のための訂正のようなものは審判で早く処理してしまうということでも解決できる話なので、そういう意味では余り裁判所の方に判断の余地を与えないで、差し戻されてそれで審判で一体としてやるというのが一番シンプルでよろしいんじゃないかと思っております。

大渕委員長

どうぞ。

山下委員

事件を担当する裁判官として言いますと、全くユーザーの側でおっしゃったとおりでして、これが一番簡単でさっぱりしているのです。裁判所は頭を使わずに済みますし。ただ、今お聞きしてちょっと気になったのは、大体発言されている方が、権利者の側の立場で考えておられるのではないかと思います。権利を行使される側の立場での発想がないんじゃないかというのを私は懸念したのです。これはもちろん全体から見れば例外的な場合になるのでしょうが、結局、一種の乱用的な訂正申立てがあることを考えておかなければいけない。それに対する対処をどうするかというので、確かにおっしゃったとおり、特許庁の方で理想的に、すぐに結論が出せる事態が確保されていれば、これは余りここで議論する必要はないと思うのです。早い段階でとにかく訂正を申し立てられる。サッと裁判所は返す。そこでサッと特許庁で判断できるとなったら、そんなにここで難しいことをやらなくたっていいですし、本来はそうあるべきだろうと思っているのです。
ただ、本当にそうできるのかどうかということについては、私はどうもよくわからない。そうすると、そういうことに対して何か対処する道が幾らか残っていた方がいいのではないかという頭がどうしてもあるのです。それで私は、C-1案の3のところがあるのがいいんではないだろうかということを申し上げたのです。
ですから、もしも本当にそういうことは考えなくてよろしいのだという前提にすれば、おっしゃったとおり、この中で言えばC-1案の中から3を取ってしまえばよろしい。もっと言えば、裁判所に来る前にやっておいてもらえばよろしい。何も裁判所が返すことはない。行ったり来たりすることはないのです。もう一遍申します。くどいようですけど、提訴期間と訂正申立て期間を同じにすればいいのです。その間に訂正を申し立てるか、提訴するかを決めなさい。あるいは、あきらめて無効と甘受するか決めなさい。三択です。これが一番単純明快なのですね。だから、それでよろしいということであれば、ユーザーの側で権利を行使する側に立っても、攻める側に立っても、守る側に立っても、それが一番いいんだということならば裁判所としては大いにそれに賛成ですね。もうこんな楽なことはない。

丸島委員

今の御発言に対してそのままお返しする意味ではないのですけれども、権利者の側に立った場合というのは、侵害訴訟をやっていた場合のことをおっしゃっているのだと思うのですが、その場合私どもは、侵害訴訟は裁判所で攻撃・防御一体でやっていただきたいと言っているわけですが、このルートには乗らないと思うのです。ですから、今裁判官がおっしゃったように、まさに攻撃・防御は侵害訴訟の中でやっていただいた方が私はいいと思っています。でも、それは私の言っている一番いい理想の形だと思って申し上げているんでね。

山下委員

今の問題は、また問題が別になると思いますので。それはとりあえず、裁判所は侵害訴訟では一定の範囲内でしか有効、無効については判断できないということを私は前提にして申し上げています。だから、もしもそれも全部やるのだということになると、それはまた話が変わってくると思います。おっしゃるとおりです。

大渕委員長

どうぞ。

中山部会長

私は基本的には裁判所を信頼すべきだと考えています。ある程度裁判所に対して裁量を認めなければうまくいかないとおもいます。これは訂正のこの問題だけではなくてキルビーにおいても同じでして、裁判所で無効と判断できるものは無効にしてしまおうということだと思うのです。
別に日本だけではなくて、世界の裁判所はやっています。別に技術裁判官のないところだってやっています。どっちみち最終的には裁判所に行くわけですし、裁判官ができるのだと確信を持ったものは、やはりそれで進めた方が手続としては早く終わる。特に濫用的なものに対しては、そうしないことには私は対処できないのではないかと思います。

大渕委員長

どうぞ。

牧野委員

私は本来予告審決的なものをいれることを前提としてA案の賛成者なのですが、それでは特許庁の負担が重すぎて、かえって全体の処理が遅くなるという懸念は理解できます。また、C-1案で訂正請求があると必要的に差し戻すというのなら、それは山下判事が3択法とおっしゃったように、裁判所に来るまでにいずれをとるのかの決断をしてもらえということになるだろうと思うのです。
なお、C案が審決取消訴訟の提起後に訂正請求を認めるというのは、無効審決が出た段階で審決取消訴訟までしないであきらめる人もあり、あきらめないで審決取消訴訟を提起する人もある。このあきらめない人についてのみ訂正の機会を与えるというスクリーニング効果をねらっておられるんだろうと思うのです。それはそれなりの理由があるだろうと思います。そうするとC-1の申し立て却下の問題という非常に処理しにくい問題を解消したC-3案というのは、次善の策として採用すべきであると私は思っております。

大渕委員長

研究者の立場から申し上げさせていただきますと、今まで御議論に出てました割とポリシーなことと少し毛色が違ってわかりにくいと思われる方もおられるかもしれませんけれども、我々の目から見ますと、要するに審議取消訴訟というのは行政訴訟の一つの取消訴訟なので、何を判断しているかというと、行政処分である審決の違法性の一般が訴訟物と言われているわけで、それがあるかどうかを判断して、違法だったら取り消しますよ。要するに何をしているかというと、この審決を取り消すんですか、取り消さないんですかという、これは我が国の行政訴訟の基本的な形なんですけれども、そういう観点からすると、大原則は行政処分に瑕疵(違法性)――瑕疵というのは法律の要件を満たしていない、あるいは手続違背だということがあれば取り消しというのが大原則なわけですが、今回出ている差し戻しというのはそれに対する例外でありまして、本来は中身が違法であるから取り消すというのが大原則なところを、それだけだと中身の判断が非常に裁判所で困難な場合には、一定の場合には例外的に、裁判所で判断するのが困難な場合に、これはドイツの行政裁判所法113条の3項に例がありますけれども、そういう困難がある場合に例外的に取り消して、差し戻しという言葉がいいかどうか別として、行政庁の方に改めて判断させるということでありまして、我々の理解だと差し戻しというのは、本来は例外的なものであります。
そもそも、現行法上、例として挙がっているのも独禁法という英米法的なものであって、大陸法的な我が国の法制の中では、非常に特殊な世界を構成しているわけですが、それでも要件はかなり厳しいもので認めているわけです。C-3のように例外的に、一定の場合に限って差し戻しを認めるというのであれば、今の体系の中で、ドイツの先ほど挙げました行政裁判所法の113条の3項と同じような発想のものと考えられますが、全件差し戻しと言われますと、もともと審決を取り消すかどうかの訴訟で、それを判断するために全件差し戻しのために取り消すというのも、我々法律家の目から見ると理解が困難です。審決を取り消すかどうかを判断する訴訟で、その判断のために全部取り消しますというのは、基本構造として我々の感覚に合いにくいところがある点は御指摘させていただければと存じます。

丸島委員

今のお話は理解できるのですけれども、ただ、ここで訂正したいということに対しては、まだ行政庁は判断していないわけですね。訂正内容については行政庁は判断してないわけですね。ですから、それを裁判所は、行政庁の判断の適否を裁判所が判断するのだというふうにおっしゃられた、訂正の内容については判断していないわけでしょう。

大渕委員長

いや、今申し上げたのは、あくまでその時点での審決というのは無効審決なので、それの適否(違法性一般)が訴訟物です。

木村制度改正審議室長

C-3案ですと、恐らく御懸念の点はほとんど払拭されているのではないかと我々としては考えているのです。だから、今大渕委員長がおっしゃられたように、全件を差し戻しということだと、ある意味では法的構成が難しい。我々もこの後、例えば法制局にいろいろ説明するわけですが、法的な論点が余り詰まってないといくら望ましい案だとしてもそれは実際できないことになってしまいますので。おっしゃることは非常にわかるのですけれども。そこでC-1案で実際に差し戻しがなされなかったときの不具合いを最大限是正すると、C-3案のようになってくるのではないかというのが我々がお示しているところではあるのです。おまけに裁判所の裁量といいますか、基本的には裁判所への信頼を基礎にしないと話がおかしくなっていくところもございますので、その辺を総合的に勘案して、もちろんこれはたたき台でございますけれども、C-3案を御提示させていただいているという状況です。

丸島委員

御説明を伺っている範囲では非常に理解もできるのですけれども、よく出ている、裁判所のやれる範囲だったらやるよというこの幅が、どのくらいかというのがわからないわけですね。その不安定要素がC-3でも、裁判所が継続する場合もあるわけですから。訂正審判は確かに特許庁で受け付けてくれた。だけど並行して進行するというのはあり得るわけですね。この幅がどんどん裁判所の方で広がっていったら、訂正する意味がないじゃないですか。

木村制度改正審議室長

ですから、それは今もそうです。

丸島委員

ですから、今がそうというのは、今がそうだからそれ以上直さないという話はおかしいと思うのです。今は欠陥として残っているものを直していただきたいとお願いしているわけですから。今がこうだから今以上に直すのはおかしいという議論もないと私は思っているのです。

木村制度改正審議室長

実際、訂正機会は一定期間内に制限される状況に仮になるとすると、早めに訂正請求、訂正審判請求が出て、その訂正、審決で、通常3カ月程度で終わりますので、その段階で裁判所で改めて両当事者が争い得る余地があるということだと思うのです。

丸島委員

ですから、複雑性を残すよりは本当にシンプルにして、安心してこの道に行くのだというのがわかるように、権利者が選べるというのが一番私はシンプルでいいと思うのです。要するにわからないのです。みんなファクターがいろいろかかっていて、そのファクターの大きさによって、どっちが主流になっていくかわからない。こういう不安定な背景のもとに大事な攻防戦をやるというのは、当事者にとってみれば非常に負担だと思うのです。ですから、もっとシンプルでわかりやすい仕組みにしていただいた方が私はいいと思っています。

木村制度改正審議室長

C-1案をベースに、すべて全件差し戻しということについては、ユーザーサイドからの御意見としては傾聴に値すると思うのですけれども、それを法的にそのままできるかどうかということも含めてここで保障せよということであれば、それはちょっとお受けいたしかねるところはございます。やはり先ほど大渕委員長の方から御指摘のあった点も、法的な論点としてはかなりあると思うのです。それが1つ。
それから、C-3案でいけば、基本的に訂正機会が法的に保障されない論点というのは、ほとんど払拭されているのではないかと考えます。
あと、いわゆる予告審決的なお考えもあるわけでございますが、これについては先ほど牧野委員の方から御指摘のあったことについては、それはそのとおりでございます。基本的には裁判所に行くということで、一定のスクリーニング効果というと非常に裁判所に対して失礼な物言いになるのかもしれませんが、そういうものもございます。逆に全件、予告審決的なものを出すべきだということであれば、それは全体の審理の遅延とかさまざまな弊害がまたそこで出てくることは明らかだと思いますので、我々としてそういうことをここでお受けすることはいたしかねるということでございます。

大渕委員長

どうぞ。

小林審判企画室長

2点ほど説明したいのですけれども、1つは今の予告審決に関連したことなのですが、先ほどスクリーニングという言葉が出ましたが、実態面から見ると必ずしもそういうことではなくて、仮に特許庁の審判の中で、いかに証拠の追加機会、あるいは訂正請求の機会を担保したとしても、やはりこういうことは起きるんだろうと思うのです。というのは、いろいろユーザーからヒアリングをしていますと、確かに審決が出た後に初めて訂正すればよかったということが分かるケースがあるということも言われていますけれども、他方で、そうではなくてあえて訂正しない、すなわちカードを切らない行動をされる企業もかなりの数おられるのです。要は無効審決が出るだろうという予測がある程度ついていても、そこでは訂正しない。特許も、訂正は軽々しくできないわけです。権利を放棄してしまうことになりますので。
したがって、とことんまで争うという者は、やはり審判でいかに機会があろうとも訂正しないわけです。それは出訴して争っていただくしかないわけです。では、そのカードを審判段階で切らなかったことに対するペナルティーとして、出訴した後は一切訂正ができないとしても良いのかという議論になるわけですが、それはユーザー側からみれば、とても耐えられないということになるでしょう。特許の保護という観点からは多分、酷だという話になるでしょうから、したがって、出訴後の訂正の機会は何らかの形で確保すべきだということになるのだと思うのです。
私が申し上げたいことは、幾ら予告審決制度、これ自身運用上の問題があって、小数の者に対処するために全件に対してそういうことをやると、あまりの審理負担になって特許庁として受けられないという事情はあるのですけれども、仮にそういうことをやったとしても、やはり審決後の出訴後における訂正の機会は求められるだろうと思うのです。ですから、出訴後の訂正のことはいずれにしろ考えなければならないというのが1点あると思います。
それから、2点目は、今ここでは訂正に起因するキャッチボールのことだけを考えていますので、裁判所から全件差し戻すべきだとかそうすべきでないとかという議論があるのですが、審決取消訴訟の基本型は、訂正がない審決取消訴訟なのです。出訴後に訂正審判請求がされるのは20数%です。今はどんどん増えていますが、それでもそのぐらいです。3分の1に満たないと思います。ほとんど7割以上のケースは、訂正の問題なしに審決が違法かどうかだけが争われる出訴なのです。そこで差し戻しが起こることはあり得ないのです。なぜかと言えば、そもそも裁判所が審決の違法性についての判断権限があって判断していて、現に適正な判断をされているわけですから、それは起こらない。
次の問題は、その3分の1以下の訂正が起きたときに、それを裁判所が審理できるのかどうか、あるいは裁判所に審理していただくということでユーザーが良いと思うのかどうかという問題だろうと思うのです。だとすると、そこのところですべての訂正について、裁判所は審理できないのだろうという前提で本当に話を考えていいのかどうかということだろうと思うのです。
他方、C-1案をとるにしろC-3案をとるにしろ、裁判所に訂正に関する審理をお願いすることになります。C-1案であれば、訂正の機会が全く認められないという結果にはなりうるのですが、いずれにしても訂正が濫用的なものなので却下という判断権、すなわち訂正の内容についての判断権を裁判所に託すことになります。C-3案でいけば、差し戻しをしない、すなわち自分で訂正審判の後で訴訟審理するか、ないしは訂正審判を待たずにどんどん審理するという意味で、その訂正の内容をある程度判断するという判断権を認めることになります。
ですから、C-1案にしろC-3案にしろ、審決取消訴訟全体の中の一部分でしかない訂正審判が起きたケースにおいて、さらにその一部分でしかない部分を裁判所に委ねるかどうかという問題だろうと思うのです。そう考えると、全体から見たときに、すべての訂正を特許庁でやらなければならないということになるのかどうかという点を考えていただければと思うのです。

大渕委員長

今の点にも関連するんですが、先ほど丸島委員が、続行される場合とか、範囲がはっきりしないのが懸念されるという御発言をされたんですけれども、我々というか法律家的観点からすると、もちろん訴訟というのはこういう特許関係訴訟だけではなくていろんな訴訟が世の中たくさんあるわけですが、一般的に裁判所としては機械的にしかすることができなくて、何か一定のことがあったら必ず差し戻しなさいとか、一定のことをしなさいというのは、昔の民訴では割と裁判官に対する不信があって、そういう時代があったやに聞いておりますが、現代というか19世紀、20世紀以降の民訴としては、割と裁判所の方で事案に応じていろんな形の訴訟運営、訴訟進行していくことが基本型だと思います。ほかの訴訟を見ている目から見ると、特許だけそういう形を許さずに、一定の場合には一定のことをしなさいというのも、整合性の観点からいかがかなという気が研究者的にするのが1点です。
あと研究者的なコメントになりますが、比較法的に見ても、御案内のとおり、例えば異議と無効とで違いますが、EPO関係だと、いわゆる審決というか抗告でのクレーム訂正の場合どうなるかというのでたくさん決定例が出ておりますが、そういうものを見ても、あとイギリスのものなどを見ても、クレームが訂正するために全件、特許庁というか「第一審」部に機械的に戻さなければいけないという制度にはなっておりませんで、かなりの程度「第二審」というか、EPOとの関係では裁判所と見るかどうかというのはまた争いがあるかと思いますが、いわゆる「第二審」で判断した上で、自判したり裁量的に差し戻したりしていることが一般的だと思います。そういう観点からも研究者的には、完全に一律に全部差し戻してしまうというのは、先ほどの行政法的な問題に加えて比較法的にも、いかがかなという気がいたします。
どうぞ。

諸石委員

C-1案から丸3を取ったら、実質は先ほど山下委員がおっしゃった3択案なのですね。3択案だけれども、そこでスクリーニングをかけようと。手続を重くしてその件数を減らそうというのがこのC-1案の丸3を取ったものであって。そうするとそれが比較法的にも行政訴訟の性格から言ってもちょっと合いにくくなってくる。これはそのとおりだろうと思います。これはC-1案から丸3を取るというのは、実質は3択案なのですね。そこをちょっと政策的にその手続を入れてみたために合いにくくなってきたということで、そこで工夫されたのがC-3案なのだろうと思うのです。結局それによって訂正の機会を失われるのが、よっぽど訴訟遅延が明らかである場合に限られるのだと思えばそれでいいし、多分運用の中でそういうことになっていくのではないかと思うのです。

大渕委員長

どうぞ。

佐藤委員

私も今おっしゃられたとおりで、1案がどうしても自動差し戻ししてしまうための不具合いを、このC案は何とかリカバリーしようということと、裁判所にある程度の権限を認めることで柔軟な対応ができるというところがC-3案の苦労されているところだろうと思うのです。ただ、1点としては今御指摘があったように、意図的な遅延のようなものだけを却下するみたいな、ある程度はっきりした線が出ていれば、当事者として遂行する側は予測ができるのですが、そうでないと先ほどから丸島委員が御心配のように、どっちのルートでどんなふうに訴訟が展開されるかという予測性がしにくいというところが出てくるのではないかと思いますので、その辺の手合わせがきちんとできれば、私はC-3案でもいいのかなと思っております。

竹田委員

私の理解が悪いのかもしれませんけれども、C-3案についてお聞きしたいのですが、この丸2の、裁判所は、特許庁による審理を経ることが必要と判断した場合は、差し戻すことができる。それから、また別に訴訟を続行していって、訂正の結果を待って中止することもできるわけですね。それから、訴訟を継続していくこともできるというので、その点は3択なんですね。特許庁による審理を経ることが必要と判断した場合は、一体どういう場合を言っているのか私はよく理解できないのと、それから、これは申し立てがなされるようになっていませんので、裁判所はどういうことで訂正の申し立てがあったことをキャッチしてやるのか。それは当事者が何も言わなくても、どこかから情報提供を受けてそういうことをやるのかその辺のところがわからないのと、結局今出ているどちらの方向に行くのかがはっきりしないというのは、どういう場合に裁判所が差し戻しするのかということが、これだけだと見えてこないのではないかという感じがするのですが、そこはどうでしょうか。審理を経ることが必要と判断した場合というのは、一体どんなことを考えておられるのか、ちょっと説明していただけませんか。

木村制度改正審議室長

審理を経ることが必要と判断する場合の一番典型的なものは、減縮です。すべての減縮かどうかというのはあれだと思いますけれども、減縮によって無効理由が取り下げられることが、かなり蓋然性が高い場合とか、そこの判断が非常に微妙な場合などが想定されるケースではないかと思います。もちろん誤記の訂正は、大径角型鋼管事件の判決も射程の外に置いている可能性もあると思いますし、そういうものは差し戻し不要でしょう。それから、一見して、基本的には訂正の結果から大きく結論に影響しないことがわかる場合は、あえて差し戻しをしないという判断になるのではないかと思います。
それから、基本的には訂正審判請求がある場合には、特許庁から、これは実務的には詰める必要があると思いますが、裁判所に必ず御連絡するようにいたします。それから、当事者が実際に裁判所に対して、通常は訂正審判請求をするということをおっしゃられるケースが大体だと思うので、その場合はそれで裁判所がその判断の中で差し戻しをされることになるのではないかと思っております。

大渕委員長

どうぞ。

松尾委員

理論的でないことを申し上げるのでちょっと申し上げにくいのですが、特許庁の審理の場合は、書面審理、書面をとにかく出すと。書面をお互いに出すということで進められていくことが多いわけですが、裁判所になると、これは当事者が出て行って裁判官を前にして議論したり説明したりするわけですから、私は選択肢があるから不安だということはなくて、当事者が十二分にわかっていることだと思います。
それから、私も長い間こういう審決取消しなどをやっておりますし、その間で訂正審判、訂正を起こすことがありますけれども、その間に裁判所にそれを起こしましたということを言わなかった経験もありませんし、また相手方の場合もそうです。だから、そんなに心配する必要はないなと。これは経験上でしか言えないことですけれども、そう思っておりまして、C-3というのはこれでよろしいんじゃないかと思っております。

山下委員

ちょっとお尋ねしたいのですけれども、C-3ですと、差し戻さない限り訂正は査定系でやるのですね。

木村制度改正審議室長

そうです。

山下委員

そうすると丸島委員がいつも言っておられます、両方が議論を尽くさないというのがよくないんじゃないかという点に対応するためには、無効審判の申立人の方が差し戻してくれと裁判所に言って、裁判所がもっともだと思えば、じゃあ差し戻しましょう、一緒にやってください、こういうことになるということでしょうか。

木村制度改正審議室長

はい。

山下委員

なかなか巧妙な方法ですね。これもまた極めて実務的なことを申し上げて恐縮なのですが、C-1とC-3を比べますと、C-1のこれは3をとらないこのままのね。C-3というのは非常に実務的なのですね。C-1というのは早い段階で裁判官は判断しなければいけないのですね。そのまま続けるのか、差し戻すのか。これは正直なところちょっとしんどいかもしれないのです。どうしても、どちらかに決めろと言われると。始まったばかりですから。そんなことについても、C-3というのはそういう点では柔軟に対応できるのです。やりながら、これはやっぱりだめに決まっているわということで続けていくこともできる。それから、これはちょっとそうはいかんなとなったらその段階で差し戻すことができるわけですね。これはいろいろ考えてある案だなという気がしましたね。だから、丸島委員のように、とにかく当事者でやれとなったら、裁判所にがんがん言って、差し戻せ差し戻せと言ってやれば、裁判所はかなりの場合に、それはもっともだということで差し戻して。そうすれば裁判所から事件が一つなくなりますし。そうすれば双方の当事者がそこで議論を尽くすことも、実際上はかなり確保できるのではないかという気がします。

大渕委員長

どうぞ。

諸石委員

C-3の差し戻しの要件が、特許庁による審理を経ることが必要と判断した場合ということで、積極的に必要性を認定してそこで差し戻す。理論的にはそうなるのかもしれませんが、そうするとどこまでのという心配が出てくるので。これは逆に言うと審理遅延的なマイナス、あるいは出してみてもだめだというのがはっきりわかるような、そういう申し立て自体が余り意味がないと判断した場合以外は差し戻すのだと。そこの要件を逆に、差し戻さない場合が限定的であるという書き方がもしできれば、今議論になっているような不安が少し整理できるのではないかと思うのです。

丸島委員

先ほどの御意見の中に、裁判所に行っていれば方向はわかるよということがあったのですが、どっちの方行に行くのは行っていればわかると思うのですが、私の言いたかったのは内容なのです。どっちの方向に行くかによって実態が変わるだろう。それを最初からわかってないというのが不安だということを申し上げたのです。裁判所へ通っていればわかるだろうと、そんなことをわからないと申し上げたわけではありません。
それと、今の裁判所へ片方の当事者が申し立てれば、裁判所も差し戻してくれると。くれるという確約があれば、同じになるのではないかと思うのです。(笑声)だから、そういうお話のときは戻しますというけど、実際のときに戻さなかったらどうなのですかというところは保障がないのです。ですから、言って戻したって、戻してくれたら戻ったというのはわかりますけれども、最初に戻るのか戻らないのかわからないと、そういう不安があることにはかわらないと思うのです。それでも、学問的にはこの方が正しいというのでこっちの方に行くのだというのは、何か学問で仕事しているのではないと思うのです。私としては学問はわかりませんけど、逆に言ったら、実務的にもっとすっきりした形になぜできないのかなと。学問が支配する必要はないと思うのです。

大渕委員長

どうぞ。

作田委員

C-3案について2点ばかり申し上げますが、一定期間に限り訂正審判を請求ということになって、その後差し戻しかどうかの判決が出る。この差し戻しかどうかというのは今どなたか委員がおっしゃったように、裁判所は書面審理ではなくて口頭審理だから、裁判所へ行けばよいという論理をとりますと、特許庁による審理を経る必要があるかないかの判断、すなわち差し戻し判決は、時系列的には相当遅れる(例えば、訂正審判の訂正確定間際に差し戻し判決が出る可能性も考えられる)のではないかと危惧されます。
それで、C-1案については、シンプル・イズ・ベストという観点からいくと、細かい話かもしれませんが、訂正審判を請求するには、また、審判請求書を別事件として起こさなければいけない。無効審判の再開という格好で訂正請求ということの方が極めてシンプルでいいのかなと思うわけです。いろいろ意見をお聞かせいただいても、認容の蓋然性というのが我々としてはどうも予測がつかないという気がします。これはほかの事件とも同じようなことがあるかと思うのですが、今大渕委員長がおっしゃった、ほかの事件と比べてどうのこうのというお話については、私は特許の専門性、特殊性、すなわち権利の範囲の文言が議論されるというふうに特殊専門的な裁判ととらえております。
ミスユースというか濫用的な故意の遅延というのは、この訂正内容の蓋然性という判断ではなくて、別の制裁規定とか、裁判所ルールみたいな制裁規定、サンクションオーダーみたいなものが一般的に用意できるのではないかという気がします。結論から申し上げますと、いろいろお聞きしても、判断のファクターが我々ユーザーサイドからの予測可能性を考えると、C-1案の方がシンプルでいいと思っております。

大渕委員長

きょうは先ほど申し上げましたとおり論点が3つありまして、時間も押してまいりましたので、この点につきましては、こちらの認識としては、理論上、実務上の観点からC-3の支持が多いんじゃないかと理解していますけれども、C-1の方についても非常に御懸念が表明されているところでありますので、その点を含めて事務局の方でまたペーパー等準備するということで、次の論点に進ませていただきたいと思います。

竹田委員

済みません、1点だけですが、報告書の書き方ですけれども、結論的にどういうふうに処理されるかは別として、A案について、57ページのところでは、「当事者が提出した無効理由については、特許庁がその主張を受け入れるか否か審決のときまでわからない場合がある。したがって」となっているのですが、そうではないということを再三申し上げているので、そういうことはそういう考えもあるということだけはぜひ報告書に残していただきたい。そうでないと私が一生懸命言っていることが全く無視されることになりますので、その点だけ注文しておきます。

大渕委員長

それでは、時間の関係もありますので、次の論点でありますこの報告書(案)で、訂正審判関係は今別途独立した御議論をいただいたわけですが、それ以外の部分につきまして御議論いただければと存じます。

佐藤委員

この報告書の中の31ページに、私がこの委員会で提案しました「付与後の情報提供制度」について報告が書かれております。この点について結論的には、さらなるニーズの調査等を踏まえて検討することが必要ではないかという結論になっておりますが、我々弁理士会側としては、いろいろ検討した結果では、異議申立てがなくなって簡易な手続がないという観点から考えると、こういう「付与後の情報提供制度」を採用すべきではないかという意見が多数を占めておりますので、御検討いただきたいということでございます。
それからもう一点は、65ページに予備的請求の制度について、これも委員会で私が提案させていただいた件でございますが、ここにまとめられている結論としては、1つの答えとして、口頭審理の実務においては、必要に応じて訂正請求の文案について両当事者間で議論をする機会を与える運用が図られておりということで、実務上容認されているということで、特別制度化する必要はないのではないかという結論だろうと思います。この点については我々の理解としては、必ずしも一定した形で運用されているという理解はしておりません。したがって、もしこういう形で運用でやられるということであれば、それを明確に外にお示しいただきたいということをお願いしたいと思います。それからもう一点、89ページ、迅速・的確な審理のための運用改善についてですが、この中では、当事者の応答期間の合理化という項目が挙がっております。これ自体については異存ございませんが、これが参考資料の96ページ、応答期間の合理化の中に、「内外差の撤廃」という表現で記載されております。確かに現在、在外者については6カ月、3カ月プラス延長期間3カ月ということで、6カ月間はいかにも長いというふうな御指摘だろうと思いますが、実際に実務をやっている立場から言うと、在外者との間の往復の書簡において翻訳の時間というのは非常に負担が多くかかっております。したがって、内外を一律に短くしてしまうということではなくて、一律にするとしても、実際の実務上支障のない範囲の期間を考えていただきたいということを申し上げたいと思います。
以上です。

大渕委員長

どうぞ。

丸島委員

44ページですが、(4)の小委員会における意見のところで、営業秘密の非公開化についての検討が指示されている状況を踏まえれば……。特段の意見は出されなかったというふうに書いてあるのですが、私の認識では、当たり前、こうしてほしいということで表現されているので、特に強調でお願いしなかったのですが、まとめ方としてはもうちょっと積極的な意味で、非公開化を検討するように表現していただきたいと思います。

大渕委員長

私の方からで、恐縮なんですが、無効審判における理由・証拠の追加の関係で、38ページの下の方の最後のフルパラグラフですが、結論的にはA案が、職権探知主義に基づく無効理由通知の規定を基礎とする案、それから、当事者からの申出に基づき、一定の要件のもとに、審判官が新たな無効理由・証拠の採否を決定する案と両論併記になっているんですが、私の考えとしては、特に無効審判制度というか新たな審判制度が、当事者主義的な基本構造を持っている点からしても、余り職権主義を中心に置くよりは、Bのような当事者的な形の方がその基本構造により符合しているのではないかという点と、それから、比較法的に見ても、Aのように職権探知のみで新たな追加を封じているというのは余り見ないように思いますので、Bの方が適当ではないかと考えております。
どうぞ。

木村制度改正審議室長

今の大渕小委員長の御指摘に関して補足でございますが、B案をとるというのは、確かに一本化後の無効審判について当事者系の手続を今回採用するということで、当事者の納得を得やすいプロセスが一つつくられるということでございます。ただ、131条2項で現在、平成10年改正の結果、要旨変更を禁止するということで、理由・証拠の追加を厳しく制限している。その規定そのものは、必然的に何らかの形の手直しが必要になると思います。また、仮にそれでまとめるべしということでございますと、後ろの方にある検討のまとめというところで、運用による対応というふうに88ページは整理しているのですが、それも必然的に位置づけを変えることになろうかと思っております。審理期間の問題とか、あるいは訂正機会をこの場合どういうふうに付与していくのかというような、その制度的な工夫が別途必要になると思います。

大渕委員長

ほかに何かございませんか。
特になければ時間の関係もございますので、第3の論点であります実用新案法、意匠法、商標法における紛争処理制度の在り方の点について御議論をお願いします。

松尾委員

初めに実用新案ですけれども、権利に対世的効力があるから、だから無効審判の場合に何人もというふうに理論的には結びついていかないのだろうと思います。現在、特許法の場合には異議申立てがあるために、それを変更するので無効審判全体について、何人もということになったわけですけれども、実用新案についてはそういう必要性がないわけで、また、現在の制度では困るという声も聞いてないわけですから、私は特許法にあわせて変更しなくてもいいだろうと思っております。
また、意匠法については、意匠はとにかく模倣されやすいということで、異議申立制度がないわけですが、逆に模倣されやすいのですから、もっと付与された権利を保護している方向に制度を持って行かなければいけないはずなのに、ここで対世効があるから、何人もということになりますと、ただでも強くない意匠権がまた不安定な状況に置かれることになりますので、意匠についても特にそういう声があるわけではありませんから、今改めて無効審判に、何人もというのを入れなくていいだろうと思います。
それから、商標法については、これは当初、付与後異議になったときには大分批判もあったようですけれども、今は異議申立てと無効審判の制度はうまく併存しているようですし、商標についてはいろいろな登録を認めない事由がありまして、その中では簡単にというか、短い時間で処理できる問題もたくさんありますので、異議申立てを廃止することなく、異議申立てと審判制度を今のとおり、そのまま継続していったらどうかと思います。
以上です。

大渕委員長

どうぞ。

中山部会長

必要性という観点はよくわかりませんけれども、理論的に言えば、むしろ対世効はあるというところから、何人もということが私は出てくるのだと思っております。実は現行法ができるときの審議会も、恐らく新規性、進歩性の問題については、何人もできると考えていたように読めるのです。その後裁判所の解釈によって、民訴的な考え方が入ってきましたけれども、私はやはり請求人適格に関しては、特許・実用新案・意匠は合わせるべきではないかと思います。

松尾委員

私は実は実用新案については、セットして特許法と共通していますので、それは今余り必要性ないと思っていますけれども、理論的に特許法と合わせる方がいいということであれば、私は合わせた方がいいと思います。しかし意匠については、何かやはり意匠権をもう少し育てたいという気持ちが私は非常に強いので、権利の効力が不安定に、いつでもだれでも無効審判を起こせるということではなく、これは登録されている件数も少ないことですし、何とかせめて今のとおり、何人でもということはないままにしておいた方がいいのではないかと思います。それだけです。

中山部会長

意匠権を育てたいという点は全く同意見ですけれども、請求人適格の問題とすべきかどうかというのは疑問でして、請求人適格としては特許と同じではないか。客体の相違による違いは、もっと違うところで出すべきではないかという気はするのですけれども。

大渕委員長

ほかに御意見ございませんか。

佐藤委員

私としては実用新案、意匠までは特許法と同じように、何人もという形で、今回と同じような統一された制度になることでよろしいのではないかと思います。さらに商標はそれとまた全然違う世界でございますので、またニーズから言っても、現状両方とも求められているということで、これは現状のままということでよろしいのではないかと考えております。

丸島委員

私もこの資料3のとおりで結構だと思います。

大渕委員長

それでは、基本的には事務局案というか、資料3に支持が集まっていたということで、時間の関係もございますので次に移らせていただきます。
今まで本日の3点につき御議論いただいたわけですが、特にこの際何か御発言されたい方がおられましたら。
それでは、特にほかに御発言もないようですので、本日の議事は以上にしたいと思います。
それで、本報告書(案)につきましては、先ほどの訂正審判の点ですが、事務局の方で用意されるということで、さらに検討すべき点が認められますので、本日の議論を踏まえた上で、事務局でそれを用意の上各委員に改めて御確認いただき、その後パブリックコメントの募集を開始するという手続に入りたいと思います。このように取り計らうことで御異議ございませんでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

大渕委員長

ありがとうございました。以上のような手続で取り進めさせていただきます。

大渕委員長

それでは次に、事務局の方から今後の予定について説明をお願いします。

木村制度改正審議室長

今後の取り進め方でございますけれども、この報告書(案)については、本日の御指摘、それから訂正審判の関係について御議論を踏まえまして、修正を施したいと思っております。その結果につきましては、各委員の皆様方にお送り申し上げて、それで御確認いただいて、ファイナルにできればさせていただきたいと思っております。
その段階で、11月のできるだけ早いタイミングになると思いますけれども、パブリックコメントの募集を、概ね1カ月程度でございますが、開始させていただいて、これは経済産業省、特許庁のホームページ、公報紙、関連の専門雑誌等に掲載していただくようなことを通じて募集したいと思っております。
そのパブリックコメントのとりまとめの後、さらに報告書に修正を施すべき点がございましたらそれについてはやらせていただいて、大幅な修正がある場合はまた個別にお諮りすることもあると思いますが、そうでなければ具体的な文言の修正については、できましたら小委員長に御一任いただければありがたいと思っております。修正後の報告書はまた事務局から各委員の方に御連絡させていただきます。
それから、最終的にパブリックコメントが募集されまして、その結果を反映したものは報告書の公表という段取りになるわけでございますが、知的財産政策部会の方に報告する必要性がございますので、それは1月下旬になると思いますが、そこで報告させていただく段取りで取り進めさせていただきたいと思っております。
以上でございます。

大渕委員長

ありがとうございました。
それでは最後に、本日、太田特許庁長官が出張により御欠席のため、小野特許技監からごあいさつをいただきたいと存じます。

小野特許技監

太田長官は所用のため欠席でございますので、かわってごあいさつさせていただきます。
本紛争処理委員会は、知的財産戦略会議等の各フォーラムから、知的財産に係る紛争の早期解決、あるいは一回的解決の意見、提言がなされる中で、特許庁での紛争処理手続としての審判制度、訴訟と審判との関係等について抜本的な見直しを図る必要があるとの認識に立ち、本年5月に産業構造審議会知的財産部会の下に設置されました。
以降6回にわたりまして集中的に御議論いただいた結果、本日、大変内容の充実した報告書(案)としてまとめられることになりました。大渕委員長を中心とし、中山部会長をはじめ各委員の皆様の闊達な御議論に対し、心より感謝申し上げます。本日、長官は所用にて出席しておりませんけれども、長官ともども皆様に感謝を述べさせていただきます。
21世紀の産業競争力の源泉である知的財産が適切に保護され、経済活力、発展に活用されるためには、知的財産制度における知的紛争処理機能の整備を一層進めることが必要であると考えております。このためには、一次的に権利の有効性判断を行う専門行政機関である特許庁の担う紛争処理制度を十分に整備していくことが重要でございます。
今回は、異議申立制度及び無効制度を中心として、権利の有効性を判断する新しい審判制度の在り方、審決取消訴訟の在り方、侵害訴訟と審判との関係、さらには判定の在り方に至るまで、特許庁で行われる紛争処理機能全般について総点検していただき、制度改正の方向性について具体的な御提案をいただきました。直ちに取り組むべき御提案については、来年の通常国会への改正法案の提出を目指し、早急に具体案の検討に入りたいと思っております。
また、御提案の中には、現行の審判制度において運用で実行可能なものがあり、これらについては早急に対応していきたいと思っております。特に無効審判において、現在進行しております口頭審理の活用、改善、計画審理等を今後も引き続き行っていくことにより、審判の一層の充実を図っていきたいと思っております。現在、訴訟全体について、法制審議会民事・人事訴訟部会や司法制度改革推進本部における知的財産訴訟検討会など、さまざまなフォーラムにおいて検討が進められております。
先般出された「知的財産戦略大綱」に提言される、知的財産立国を実現するためには、これら各フォーラムとも連携を密にし、時代の要請に応じた生きた知的財産制度として経済社会の発展に資するよう、特許庁としても努めてまいりたいと思っております。委員の皆様におかれましては、今後とも御指導、御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
最後に、改めて精力的に御審議いただきましたことに対して、心より感謝申し上げて私のごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

大渕委員長

ありがとうございました。
それでは次に、私の方からも一言だけごあいさつ申し上げます。
まず、委員の先生方には、御多忙中にもかかわらず6回にわたる本小委員会におきまして精力的に御審議いただき、まことにありがとうございました。本委員会の趣旨、目的やその重要性については、先ほど小野特許技監の方から詳細に御説明があったとおりでありまして、特に私の方から申し上げることもございません。
産業財産権、今までは工業所有権と言っていたものですが、この制度の要とも申すべき審判、訴訟制度についてのいろいろな大きな改正事項について、いろいろなバックグランドの委員の先生方から熱の込もった御議論をいただき、本日無事審議を終えることができました。
また、特許庁の担当の方々には、本小委員会の事務局として、本日もそうですが、膨大な量のペーパーの準備、説明等で大活躍をいただきまして、まことにありがとうございました。今後は、本小委員会での審議結果に基づいた法案化の作業の段階となります。限られた時間の中で本当に大変な作業になるかと思いますが、我が国のよりよい審判、訴訟制度のための法案化作業をよろしくお願いいたします。
それでは、簡単でございますが、これをもちまして私のあいさつとさせていただきます。皆様、御協力、本当にありがとうございました。
それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第6回紛争処理小委員会を閉会させていただきます。長時間にわたり御審議いただきまして、まことにありがとうございました。

[更新日 2002年12月10日]

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