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特許庁総務部総務課
制度改正審議室
大渕委員長 |
まだお見えでない方もいらっしゃるようでありますけれども、定刻でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第6回紛争処理委員会を開催いたします。 |
大渕委員長 |
それでは、早速、議事に入らせていただきます。 |
木村制度改正審議室長 |
まず、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。本日の配付資料でございますが、クリップをはずしていただきまして、3点ございます。一番上が、本小委員会のとりまとめの結果である「報告書(案)」でございます。それから、資料2に「審決取消訴訟係属中の訂正審判の在り方(検討用資料)」というものがございます。それから、資料3で「実用新案法、意匠法、商標法における紛争処理制度の在り方」ということで、以上3点、間違いがないかどうか御確認いただければと思います。 |
大渕委員長 |
数多くの論点につきまして、詳細でかつわかりやすい説明をどうもありがとうございました。 |
秋元委員 |
先ほどの御説明でもありましたように、もともとこの制度を考える場合に、迅速な審理、一回的解決、もう一つは信頼性のある的確な判断というものがあるかと思います。私どもこの委員会で何回も述べさせていただきましたが、スピードと的確な判断は両輪になっている。どうしても先端技術とか、ライフサイエンスとか、そういう分野においては非常に学問的に錯綜しているようなところもありますし、議論もいろいろ分かれている。そうすると訂正の機会がまるっきりないのは非常に困ったものだということで、前の委員会のときにも、製薬協、JBAでは、いわゆるC-1案とD-2案が錯綜していた。ただ、それについても十分満足できるものではなくて、D-2案であれば今度は当事者系が入るようにしていただきたいと、そういうことをたしか述べたかと思います。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
私も今C-1は全く同じように考えているのですが、ただ、C-3でも、場合により訴訟続行も可能という、裁判所の判断で続行できることができるとなっていますね。これが非常に理解できないというか、訂正審判が起きながら訴訟も実行される。これが許されている以上同じじゃないかという感じがするのです。 |
山下委員 |
結局これを考える際に、どういう方法をとるにせよ、実質的に決め手にしなければいけないのは、まず無効審決が出た後に、とにかく訂正を求めて、特許庁による判断を得る権利を保障しなければいけないかどうかということがあると思うのです。今おっしゃったのは、その前提として、無効にする審決が出た後に必ず1回は特許庁によってその訂正が認められるかどうかともかく、それについて判断を受ける特許権者の地位を保障しようということが前提です。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
小林審判企画室長 |
若干補足説明をさせていただきます。丸島委員が御指摘の話は、まさに山下委員が最後に御指摘になりましたように現在でも実は生じている問題です。現在は訂正審判のルートしかないわけですが、訂正審判を請求しても、訴訟は止まらないで続行しているケースは確かにございます。ただ、今回はそもそも出訴後に訂正について請求なり申し立てをする期間は限られるという考え方を取るわけですので、C-3案ですと非常に早い段階で訂正審判の請求が起きるわけです。 |
丸島委員 |
現在より訂正審判の権利を強く認めることになるということは、あってもいいんではないかと私は思っているのです。現在でも訂正審判というのができないわけではない。その複雑な関係からトータルで長くなっているということですから、それを短くしようということと、1回で当事者に十分議論を尽くさせるという観点からしたら、裁判所にもロードをかけてないし、権利者のメリットにもなるわけですね。そういう意味で、C-1で自動的に落としていただくというのは、双方にとって非常にいい案ではないかと私は思っているのです。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
作田委員 |
C-1案についての質問なのですが、C-1案は訂正審判なしと書いてございまして、これは裁判所に対して訂正要求をする。そうするとC-1案は、審決取消訴訟係属中の訂正審判という現行のやり方はやめて、こういうやり方にしようという理解でよろしいのですね。 |
小林審判企画室長 |
もちろん、どの事件がどのタイミングで起きるかによって審判合議体の構成が多少違うことはあり得ると思いますけれども、一般論としては、当然同じ特許についての事件ですと、基本的には同じ部門の同じ合議体ということが多いかと思います。それからもう一点、C-3案は、結局これは訂正審判が起きたときに差し戻しの無効審判が同時係属することがございまして、その場合には訂正審判と差し戻しの無効審判を合わせたような形で、工夫の余地があるかと思いますが、審理することになるかと思いますので、その場合に限って言えば、当然のことながら訂正の中身の審理と訂正された特許の有効性の判断は同じ合議体がやることになろうかと思います。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
竹田委員 |
先ほど小林企画室長が言われたことの中で、必ずしもそうではないと思ったことを1点申し上げますと、訂正が確かに審決取消訴訟が係属している段階になされれば、裁判所が審理を進めれば、訂正の可否について特許庁の判断が間に合わなくなるということは、わかりますけれども、今の制度ですと、訂正を申し立てた場合に、さらに別個の無効審判手続が特許庁に係属していれば、その手続内で訂正の可否が審理されることになりますから、その無効理由の存否との関係で口頭審理を行うということになれば、どうしたって長くかかるので、訂正の申立が早めに出されたとしても、無効審判請求が継続している限りはなかなか簡単に訂正が出ない。これは私自身もそういう経験をしましたけれども、そういう状況になることがあるので、必ずしも訂正を遅くするからいけないのだというわけにはいかないということが一つです。 |
大渕委員長 |
今御発言のあった点の後半部分は、最初はC案とおっしゃっていたようですが、よく聞き取れなかったのですが、主にC-1案を念頭に置いたということですか。 |
竹田委員 |
そうです。 |
大渕委員長 |
C-3だと、むしろそういう申し立て云々の却下のところは問題にならないという説明になっているわけで、C-1案については不服申立て等の難があるのではないかと、そういう御趣旨ですね。 |
丸島委員 |
同じことを申し上げますが、C案のままでいいと私は言っているのではなくて、そういう不安を解消するために、C案を改正していただいて、裁判所が自動的に差し戻すという内容にしていただきたいという意味で申し上げているのです。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
作田委員 |
今、竹田委員がおっしゃった点について、ユーザーはどうかということになりますと、本来的には無効審決の方で、裁判所へ行く前にそういうことができれば、願ったりかなったりであると私は思います。ただ、前回の議論を通して申し上げますと、それではあまりにも量的な面等、様々な面で大変であることから、C-1案がそれに近いような形で出てきているのではないかと思っております。したがいまして、C-1案から |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
中西委員 |
ユーザーの立場からすると私も丸島委員の意見に賛成でございまして、訂正の機会を逆に強化してほしい。中小企業の立場からすると。というような意見を持っております。だから、自動的に差し戻しという方法は、ユーザーからとると有利ではないかなと思っています。 |
大渕委員長 |
ほかに御意見は。 |
秋元委員 |
ちょっと補足させていただきますが、このC-1から3があるから私もC-3がいいと言ったことで、基本的には丸島さんが言われる、以前に訂正の機会を設けてくれというのが基本でございますから、先ほど丸島委員が言われたC-1でいくのか、竹田委員が言われたA案をそういうふうに考えるのか、これはまたここで議論していただきたいのですが、とにかく先端技術の場合には、別に裁判所を疑うわけではございませんが、そこで訂正の機会がなくなってしまう。予告しかないということは非常に困るというのが私の基本的な考え方でございます。 |
大渕委員長 |
それと訂正の機会があるかないかという観点からすると、このC-1については法的に非常にはっきりしておりまして、差し戻したら無効審判で訂正請求の機会があるのですが、それをしない限りは、一切ありません。それに対してC-3の場合ですと、もちろん法的には、差し戻された場合でも、そのまま訴訟段階で審理が進む場合でも、訂正の機会は法的に保障されている。あとは先ほどちょっと出ていました、タイミングというか時間的な関係で実際上という点はありますけれども、法的には訂正の機会はどっちの段階でも、差し戻した方でも、続行する方でも与えられているわけです。 |
丸島委員 |
まだC-1そのものにこだわっていらっしゃるのですけど、だから、C-1を訂正していただきたいとお願いしているのと、C-3でちょっと懸念するのは、確かに訂正は保障されるのですが、裁判所がそのまま走れば、やはりだめと。それが1つと。もう一つは、訂正確定までというのは、無効審判とどうドッキングするのかわかりませんが、権利者と特許庁との対応だけであって、当事者が訂正に対して参加できない。これが時間的ロスだと私は思うのです。そういう意味で当事者が一度に議論、訂正の内容について合議ができるような案としては、C-3はやはり時間がかかると思うのです。そういう意味で、C-1の方がいきなり無効審判で両当事者がそこに参加できるという点で、C-1の方が望ましいと私は思っているのです。 |
小林審判企画室長 |
C-3案の場合には、差し戻しが起きたときには、もともと出ていた訂正審判は差し戻しの無効審判の中に吸収されたような形になりますので、その限りにおいては当事者間での議論はできることになろうかと思います。もちろん、御指摘のように訂正審判しか起こされなくて差し戻しが起きなかった場合には、現行の訂正審判のように査定系になろうかと思いますが、そのケースがどのぐらいあるかということになるんだろうと思います。その点で言いますと、C-1案にしてもC-3案にしても、どの程度に差し戻しの頻度が高いのか低いのかというところあたりに事実上の問題は行くのかなという気がするのです。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
佐藤委員 |
私はC-1案の中で、裁判所から自動的に差し戻す形が一番シンプルでよろしいんじゃないかと思います。確かに意図的に訂正申立てをして、その事件を長引かせようという問題を排除する意味では、裁判所に1回判断していただくことも考えられるのですけれども、ただその判断のところが、最終的には上訴しなければならないということであると、逆に認められなかった場合の権利者側の不利益が余りにも大き過ぎる。ある意味でその部分を、もし意図的な遅延のための訂正のようなものは審判で早く処理してしまうということでも解決できる話なので、そういう意味では余り裁判所の方に判断の余地を与えないで、差し戻されてそれで審判で一体としてやるというのが一番シンプルでよろしいんじゃないかと思っております。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
山下委員 |
事件を担当する裁判官として言いますと、全くユーザーの側でおっしゃったとおりでして、これが一番簡単でさっぱりしているのです。裁判所は頭を使わずに済みますし。ただ、今お聞きしてちょっと気になったのは、大体発言されている方が、権利者の側の立場で考えておられるのではないかと思います。権利を行使される側の立場での発想がないんじゃないかというのを私は懸念したのです。これはもちろん全体から見れば例外的な場合になるのでしょうが、結局、一種の乱用的な訂正申立てがあることを考えておかなければいけない。それに対する対処をどうするかというので、確かにおっしゃったとおり、特許庁の方で理想的に、すぐに結論が出せる事態が確保されていれば、これは余りここで議論する必要はないと思うのです。早い段階でとにかく訂正を申し立てられる。サッと裁判所は返す。そこでサッと特許庁で判断できるとなったら、そんなにここで難しいことをやらなくたっていいですし、本来はそうあるべきだろうと思っているのです。 |
丸島委員 |
今の御発言に対してそのままお返しする意味ではないのですけれども、権利者の側に立った場合というのは、侵害訴訟をやっていた場合のことをおっしゃっているのだと思うのですが、その場合私どもは、侵害訴訟は裁判所で攻撃・防御一体でやっていただきたいと言っているわけですが、このルートには乗らないと思うのです。ですから、今裁判官がおっしゃったように、まさに攻撃・防御は侵害訴訟の中でやっていただいた方が私はいいと思っています。でも、それは私の言っている一番いい理想の形だと思って申し上げているんでね。 |
山下委員 |
今の問題は、また問題が別になると思いますので。それはとりあえず、裁判所は侵害訴訟では一定の範囲内でしか有効、無効については判断できないということを私は前提にして申し上げています。だから、もしもそれも全部やるのだということになると、それはまた話が変わってくると思います。おっしゃるとおりです。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
中山部会長 |
私は基本的には裁判所を信頼すべきだと考えています。ある程度裁判所に対して裁量を認めなければうまくいかないとおもいます。これは訂正のこの問題だけではなくてキルビーにおいても同じでして、裁判所で無効と判断できるものは無効にしてしまおうということだと思うのです。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
牧野委員 |
私は本来予告審決的なものをいれることを前提としてA案の賛成者なのですが、それでは特許庁の負担が重すぎて、かえって全体の処理が遅くなるという懸念は理解できます。また、C-1案で訂正請求があると必要的に差し戻すというのなら、それは山下判事が3択法とおっしゃったように、裁判所に来るまでにいずれをとるのかの決断をしてもらえということになるだろうと思うのです。 |
大渕委員長 |
研究者の立場から申し上げさせていただきますと、今まで御議論に出てました割とポリシーなことと少し毛色が違ってわかりにくいと思われる方もおられるかもしれませんけれども、我々の目から見ますと、要するに審議取消訴訟というのは行政訴訟の一つの取消訴訟なので、何を判断しているかというと、行政処分である審決の違法性の一般が訴訟物と言われているわけで、それがあるかどうかを判断して、違法だったら取り消しますよ。要するに何をしているかというと、この審決を取り消すんですか、取り消さないんですかという、これは我が国の行政訴訟の基本的な形なんですけれども、そういう観点からすると、大原則は行政処分に瑕疵(違法性)――瑕疵というのは法律の要件を満たしていない、あるいは手続違背だということがあれば取り消しというのが大原則なわけですが、今回出ている差し戻しというのはそれに対する例外でありまして、本来は中身が違法であるから取り消すというのが大原則なところを、それだけだと中身の判断が非常に裁判所で困難な場合には、一定の場合には例外的に、裁判所で判断するのが困難な場合に、これはドイツの行政裁判所法113条の3項に例がありますけれども、そういう困難がある場合に例外的に取り消して、差し戻しという言葉がいいかどうか別として、行政庁の方に改めて判断させるということでありまして、我々の理解だと差し戻しというのは、本来は例外的なものであります。 |
丸島委員 |
今のお話は理解できるのですけれども、ただ、ここで訂正したいということに対しては、まだ行政庁は判断していないわけですね。訂正内容については行政庁は判断してないわけですね。ですから、それを裁判所は、行政庁の判断の適否を裁判所が判断するのだというふうにおっしゃられた、訂正の内容については判断していないわけでしょう。 |
大渕委員長 |
いや、今申し上げたのは、あくまでその時点での審決というのは無効審決なので、それの適否(違法性一般)が訴訟物です。 |
木村制度改正審議室長 |
C-3案ですと、恐らく御懸念の点はほとんど払拭されているのではないかと我々としては考えているのです。だから、今大渕委員長がおっしゃられたように、全件を差し戻しということだと、ある意味では法的構成が難しい。我々もこの後、例えば法制局にいろいろ説明するわけですが、法的な論点が余り詰まってないといくら望ましい案だとしてもそれは実際できないことになってしまいますので。おっしゃることは非常にわかるのですけれども。そこでC-1案で実際に差し戻しがなされなかったときの不具合いを最大限是正すると、C-3案のようになってくるのではないかというのが我々がお示しているところではあるのです。おまけに裁判所の裁量といいますか、基本的には裁判所への信頼を基礎にしないと話がおかしくなっていくところもございますので、その辺を総合的に勘案して、もちろんこれはたたき台でございますけれども、C-3案を御提示させていただいているという状況です。 |
丸島委員 |
御説明を伺っている範囲では非常に理解もできるのですけれども、よく出ている、裁判所のやれる範囲だったらやるよというこの幅が、どのくらいかというのがわからないわけですね。その不安定要素がC-3でも、裁判所が継続する場合もあるわけですから。訂正審判は確かに特許庁で受け付けてくれた。だけど並行して進行するというのはあり得るわけですね。この幅がどんどん裁判所の方で広がっていったら、訂正する意味がないじゃないですか。 |
木村制度改正審議室長 |
ですから、それは今もそうです。 |
丸島委員 |
ですから、今がそうというのは、今がそうだからそれ以上直さないという話はおかしいと思うのです。今は欠陥として残っているものを直していただきたいとお願いしているわけですから。今がこうだから今以上に直すのはおかしいという議論もないと私は思っているのです。 |
木村制度改正審議室長 |
実際、訂正機会は一定期間内に制限される状況に仮になるとすると、早めに訂正請求、訂正審判請求が出て、その訂正、審決で、通常3カ月程度で終わりますので、その段階で裁判所で改めて両当事者が争い得る余地があるということだと思うのです。 |
丸島委員 |
ですから、複雑性を残すよりは本当にシンプルにして、安心してこの道に行くのだというのがわかるように、権利者が選べるというのが一番私はシンプルでいいと思うのです。要するにわからないのです。みんなファクターがいろいろかかっていて、そのファクターの大きさによって、どっちが主流になっていくかわからない。こういう不安定な背景のもとに大事な攻防戦をやるというのは、当事者にとってみれば非常に負担だと思うのです。ですから、もっとシンプルでわかりやすい仕組みにしていただいた方が私はいいと思っています。 |
木村制度改正審議室長 |
C-1案をベースに、すべて全件差し戻しということについては、ユーザーサイドからの御意見としては傾聴に値すると思うのですけれども、それを法的にそのままできるかどうかということも含めてここで保障せよということであれば、それはちょっとお受けいたしかねるところはございます。やはり先ほど大渕委員長の方から御指摘のあった点も、法的な論点としてはかなりあると思うのです。それが1つ。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
小林審判企画室長 |
2点ほど説明したいのですけれども、1つは今の予告審決に関連したことなのですが、先ほどスクリーニングという言葉が出ましたが、実態面から見ると必ずしもそういうことではなくて、仮に特許庁の審判の中で、いかに証拠の追加機会、あるいは訂正請求の機会を担保したとしても、やはりこういうことは起きるんだろうと思うのです。というのは、いろいろユーザーからヒアリングをしていますと、確かに審決が出た後に初めて訂正すればよかったということが分かるケースがあるということも言われていますけれども、他方で、そうではなくてあえて訂正しない、すなわちカードを切らない行動をされる企業もかなりの数おられるのです。要は無効審決が出るだろうという予測がある程度ついていても、そこでは訂正しない。特許も、訂正は軽々しくできないわけです。権利を放棄してしまうことになりますので。 |
大渕委員長 |
今の点にも関連するんですが、先ほど丸島委員が、続行される場合とか、範囲がはっきりしないのが懸念されるという御発言をされたんですけれども、我々というか法律家的観点からすると、もちろん訴訟というのはこういう特許関係訴訟だけではなくていろんな訴訟が世の中たくさんあるわけですが、一般的に裁判所としては機械的にしかすることができなくて、何か一定のことがあったら必ず差し戻しなさいとか、一定のことをしなさいというのは、昔の民訴では割と裁判官に対する不信があって、そういう時代があったやに聞いておりますが、現代というか19世紀、20世紀以降の民訴としては、割と裁判所の方で事案に応じていろんな形の訴訟運営、訴訟進行していくことが基本型だと思います。ほかの訴訟を見ている目から見ると、特許だけそういう形を許さずに、一定の場合には一定のことをしなさいというのも、整合性の観点からいかがかなという気が研究者的にするのが1点です。 |
諸石委員 |
C-1案から |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
佐藤委員 |
私も今おっしゃられたとおりで、1案がどうしても自動差し戻ししてしまうための不具合いを、このC案は何とかリカバリーしようということと、裁判所にある程度の権限を認めることで柔軟な対応ができるというところがC-3案の苦労されているところだろうと思うのです。ただ、1点としては今御指摘があったように、意図的な遅延のようなものだけを却下するみたいな、ある程度はっきりした線が出ていれば、当事者として遂行する側は予測ができるのですが、そうでないと先ほどから丸島委員が御心配のように、どっちのルートでどんなふうに訴訟が展開されるかという予測性がしにくいというところが出てくるのではないかと思いますので、その辺の手合わせがきちんとできれば、私はC-3案でもいいのかなと思っております。 |
竹田委員 |
私の理解が悪いのかもしれませんけれども、C-3案についてお聞きしたいのですが、この |
木村制度改正審議室長 |
審理を経ることが必要と判断する場合の一番典型的なものは、減縮です。すべての減縮かどうかというのはあれだと思いますけれども、減縮によって無効理由が取り下げられることが、かなり蓋然性が高い場合とか、そこの判断が非常に微妙な場合などが想定されるケースではないかと思います。もちろん誤記の訂正は、大径角型鋼管事件の判決も射程の外に置いている可能性もあると思いますし、そういうものは差し戻し不要でしょう。それから、一見して、基本的には訂正の結果から大きく結論に影響しないことがわかる場合は、あえて差し戻しをしないという判断になるのではないかと思います。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
松尾委員 |
理論的でないことを申し上げるのでちょっと申し上げにくいのですが、特許庁の審理の場合は、書面審理、書面をとにかく出すと。書面をお互いに出すということで進められていくことが多いわけですが、裁判所になると、これは当事者が出て行って裁判官を前にして議論したり説明したりするわけですから、私は選択肢があるから不安だということはなくて、当事者が十二分にわかっていることだと思います。 |
山下委員 |
ちょっとお尋ねしたいのですけれども、C-3ですと、差し戻さない限り訂正は査定系でやるのですね。 |
木村制度改正審議室長 |
そうです。 |
山下委員 |
そうすると丸島委員がいつも言っておられます、両方が議論を尽くさないというのがよくないんじゃないかという点に対応するためには、無効審判の申立人の方が差し戻してくれと裁判所に言って、裁判所がもっともだと思えば、じゃあ差し戻しましょう、一緒にやってください、こういうことになるということでしょうか。 |
木村制度改正審議室長 |
はい。 |
山下委員 |
なかなか巧妙な方法ですね。これもまた極めて実務的なことを申し上げて恐縮なのですが、C-1とC-3を比べますと、C-1のこれは3をとらないこのままのね。C-3というのは非常に実務的なのですね。C-1というのは早い段階で裁判官は判断しなければいけないのですね。そのまま続けるのか、差し戻すのか。これは正直なところちょっとしんどいかもしれないのです。どうしても、どちらかに決めろと言われると。始まったばかりですから。そんなことについても、C-3というのはそういう点では柔軟に対応できるのです。やりながら、これはやっぱりだめに決まっているわということで続けていくこともできる。それから、これはちょっとそうはいかんなとなったらその段階で差し戻すことができるわけですね。これはいろいろ考えてある案だなという気がしましたね。だから、丸島委員のように、とにかく当事者でやれとなったら、裁判所にがんがん言って、差し戻せ差し戻せと言ってやれば、裁判所はかなりの場合に、それはもっともだということで差し戻して。そうすれば裁判所から事件が一つなくなりますし。そうすれば双方の当事者がそこで議論を尽くすことも、実際上はかなり確保できるのではないかという気がします。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
諸石委員 |
C-3の差し戻しの要件が、特許庁による審理を経ることが必要と判断した場合ということで、積極的に必要性を認定してそこで差し戻す。理論的にはそうなるのかもしれませんが、そうするとどこまでのという心配が出てくるので。これは逆に言うと審理遅延的なマイナス、あるいは出してみてもだめだというのがはっきりわかるような、そういう申し立て自体が余り意味がないと判断した場合以外は差し戻すのだと。そこの要件を逆に、差し戻さない場合が限定的であるという書き方がもしできれば、今議論になっているような不安が少し整理できるのではないかと思うのです。 |
丸島委員 |
先ほどの御意見の中に、裁判所に行っていれば方向はわかるよということがあったのですが、どっちの方行に行くのは行っていればわかると思うのですが、私の言いたかったのは内容なのです。どっちの方向に行くかによって実態が変わるだろう。それを最初からわかってないというのが不安だということを申し上げたのです。裁判所へ通っていればわかるだろうと、そんなことをわからないと申し上げたわけではありません。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
作田委員 |
C-3案について2点ばかり申し上げますが、一定期間に限り訂正審判を請求ということになって、その後差し戻しかどうかの判決が出る。この差し戻しかどうかというのは今どなたか委員がおっしゃったように、裁判所は書面審理ではなくて口頭審理だから、裁判所へ行けばよいという論理をとりますと、特許庁による審理を経る必要があるかないかの判断、すなわち差し戻し判決は、時系列的には相当遅れる(例えば、訂正審判の訂正確定間際に差し戻し判決が出る可能性も考えられる)のではないかと危惧されます。 |
大渕委員長 |
きょうは先ほど申し上げましたとおり論点が3つありまして、時間も押してまいりましたので、この点につきましては、こちらの認識としては、理論上、実務上の観点からC-3の支持が多いんじゃないかと理解していますけれども、C-1の方についても非常に御懸念が表明されているところでありますので、その点を含めて事務局の方でまたペーパー等準備するということで、次の論点に進ませていただきたいと思います。 |
竹田委員 |
済みません、1点だけですが、報告書の書き方ですけれども、結論的にどういうふうに処理されるかは別として、A案について、57ページのところでは、「当事者が提出した無効理由については、特許庁がその主張を受け入れるか否か審決のときまでわからない場合がある。したがって」となっているのですが、そうではないということを再三申し上げているので、そういうことはそういう考えもあるということだけはぜひ報告書に残していただきたい。そうでないと私が一生懸命言っていることが全く無視されることになりますので、その点だけ注文しておきます。 |
大渕委員長 |
それでは、時間の関係もありますので、次の論点でありますこの報告書(案)で、訂正審判関係は今別途独立した御議論をいただいたわけですが、それ以外の部分につきまして御議論いただければと存じます。 |
佐藤委員 |
この報告書の中の31ページに、私がこの委員会で提案しました「付与後の情報提供制度」について報告が書かれております。この点について結論的には、さらなるニーズの調査等を踏まえて検討することが必要ではないかという結論になっておりますが、我々弁理士会側としては、いろいろ検討した結果では、異議申立てがなくなって簡易な手続がないという観点から考えると、こういう「付与後の情報提供制度」を採用すべきではないかという意見が多数を占めておりますので、御検討いただきたいということでございます。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
丸島委員 |
44ページですが、(4)の小委員会における意見のところで、営業秘密の非公開化についての検討が指示されている状況を踏まえれば……。特段の意見は出されなかったというふうに書いてあるのですが、私の認識では、当たり前、こうしてほしいということで表現されているので、特に強調でお願いしなかったのですが、まとめ方としてはもうちょっと積極的な意味で、非公開化を検討するように表現していただきたいと思います。 |
大渕委員長 |
私の方からで、恐縮なんですが、無効審判における理由・証拠の追加の関係で、38ページの下の方の最後のフルパラグラフですが、結論的にはA案が、職権探知主義に基づく無効理由通知の規定を基礎とする案、それから、当事者からの申出に基づき、一定の要件のもとに、審判官が新たな無効理由・証拠の採否を決定する案と両論併記になっているんですが、私の考えとしては、特に無効審判制度というか新たな審判制度が、当事者主義的な基本構造を持っている点からしても、余り職権主義を中心に置くよりは、Bのような当事者的な形の方がその基本構造により符合しているのではないかという点と、それから、比較法的に見ても、Aのように職権探知のみで新たな追加を封じているというのは余り見ないように思いますので、Bの方が適当ではないかと考えております。 |
木村制度改正審議室長 |
今の大渕小委員長の御指摘に関して補足でございますが、B案をとるというのは、確かに一本化後の無効審判について当事者系の手続を今回採用するということで、当事者の納得を得やすいプロセスが一つつくられるということでございます。ただ、131条2項で現在、平成10年改正の結果、要旨変更を禁止するということで、理由・証拠の追加を厳しく制限している。その規定そのものは、必然的に何らかの形の手直しが必要になると思います。また、仮にそれでまとめるべしということでございますと、後ろの方にある検討のまとめというところで、運用による対応というふうに88ページは整理しているのですが、それも必然的に位置づけを変えることになろうかと思っております。審理期間の問題とか、あるいは訂正機会をこの場合どういうふうに付与していくのかというような、その制度的な工夫が別途必要になると思います。 |
大渕委員長 |
ほかに何かございませんか。 |
松尾委員 |
初めに実用新案ですけれども、権利に対世的効力があるから、だから無効審判の場合に何人もというふうに理論的には結びついていかないのだろうと思います。現在、特許法の場合には異議申立てがあるために、それを変更するので無効審判全体について、何人もということになったわけですけれども、実用新案についてはそういう必要性がないわけで、また、現在の制度では困るという声も聞いてないわけですから、私は特許法にあわせて変更しなくてもいいだろうと思っております。 |
大渕委員長 |
どうぞ。 |
中山部会長 |
必要性という観点はよくわかりませんけれども、理論的に言えば、むしろ対世効はあるというところから、何人もということが私は出てくるのだと思っております。実は現行法ができるときの審議会も、恐らく新規性、進歩性の問題については、何人もできると考えていたように読めるのです。その後裁判所の解釈によって、民訴的な考え方が入ってきましたけれども、私はやはり請求人適格に関しては、特許・実用新案・意匠は合わせるべきではないかと思います。 |
松尾委員 |
私は実は実用新案については、セットして特許法と共通していますので、それは今余り必要性ないと思っていますけれども、理論的に特許法と合わせる方がいいということであれば、私は合わせた方がいいと思います。しかし意匠については、何かやはり意匠権をもう少し育てたいという気持ちが私は非常に強いので、権利の効力が不安定に、いつでもだれでも無効審判を起こせるということではなく、これは登録されている件数も少ないことですし、何とかせめて今のとおり、何人でもということはないままにしておいた方がいいのではないかと思います。それだけです。 |
中山部会長 |
意匠権を育てたいという点は全く同意見ですけれども、請求人適格の問題とすべきかどうかというのは疑問でして、請求人適格としては特許と同じではないか。客体の相違による違いは、もっと違うところで出すべきではないかという気はするのですけれども。 |
大渕委員長 |
ほかに御意見ございませんか。 |
佐藤委員 |
私としては実用新案、意匠までは特許法と同じように、何人もという形で、今回と同じような統一された制度になることでよろしいのではないかと思います。さらに商標はそれとまた全然違う世界でございますので、またニーズから言っても、現状両方とも求められているということで、これは現状のままということでよろしいのではないかと考えております。 |
丸島委員 |
私もこの資料3のとおりで結構だと思います。 |
大渕委員長 |
それでは、基本的には事務局案というか、資料3に支持が集まっていたということで、時間の関係もございますので次に移らせていただきます。 |
大渕委員長 |
ありがとうございました。以上のような手続で取り進めさせていただきます。 |
大渕委員長 |
それでは次に、事務局の方から今後の予定について説明をお願いします。 |
木村制度改正審議室長 |
今後の取り進め方でございますけれども、この報告書(案)については、本日の御指摘、それから訂正審判の関係について御議論を踏まえまして、修正を施したいと思っております。その結果につきましては、各委員の皆様方にお送り申し上げて、それで御確認いただいて、ファイナルにできればさせていただきたいと思っております。 |
大渕委員長 |
ありがとうございました。 |
小野特許技監 |
太田長官は所用のため欠席でございますので、かわってごあいさつさせていただきます。 |
大渕委員長 |
ありがとうございました。 |
[更新日 2002年12月10日]
お問い合わせ |
特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室 |