相澤座長
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ただいまから、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第2回医療行為ワーキンググループを開催いたします。
本日は、ご多忙の中ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。前回の冒頭にご紹介できなかった委員の方のご紹介をお願いいたします。
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木村制度改正審議室長
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前回ご欠席されました委員の方で、本日初めてご出席いただいた委員の方のご紹介をいたします。
阿部・井窪・片山法律事務所、弁護士、弁理士であられます片山英二委員でいらっしゃいます。また、本日は、特許制度小委員会委員長の後藤委員長にもご出席をいただいております。
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相澤座長
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それでは、早速議事に入らせていただきます。
まず、本日の議題であります特許法における医療関連行為発明の取り扱いの方向性について、事務局より説明していただきたいと思います。
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木村制度改正審議室長
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それでは、ご説明申し上げます。
まず、配付資料の確認をさせていただきたく存じます。本日は、事務局作成の資料といたしまして2点、資料1「医療関連行為発明の特許法における取扱いの在り方」、それから資料2「日米欧における医療関連行為発明の特許法上の取扱いについて」という2点をお配りしています。また、長井委員から別途、資料のご提出がございましたので、本日あわせて配付させていただいております。資料そのものは4点になろうかと思います。それに事務局の2点が加わるということでございます。過不足等ございませんでしょうか。
それでは、まず最初に資料1、「取り扱いのあり方」につきまして、私の方から説明をさせていただきたいと思います。まず、前回の議論のまとめということで、非常にラフなスケッチでございますけれども、前回1回ご議論いただきまして、医師法上の概念であるところの医行為と、それから医行為ではないけれども医療関連行為といえるというものは一応あるのではないか。それから、その中で医行為そのものに方法の特許の権利行使、典型的には権利者に無断で当該方法を使用した場合に、差し止め請求等が認められるわけでございますけれども、それを認めるべきとのご意見はほとんどなかったという理解でございます。
一方、医行為以外の医療関連行為につきましては、方法の特許の権利行使を認めてもいい場合があるのではないかと。しかし現行の特許法の運用ではこれが制限されているのではないかということで、そういうご意見もあったわけでございます。
議論を進めていく一つの前提といたしまして、とりあえず医行為、それから医行為以外の医療関連行為ということで、大きく2つに分けさせていただいております。
医行為そのものは、前回、厚生労働省からのご説明もあったとおり、かなりそれ自身、相対的な概念ではあるように思いますけれども、基本的には、医行為とは「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼす虞のある行為」あるいは「医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは、生理上危険ある程度に達している行為」ということで、定性的ではございますけれども、定義をしております。
医行為には、前回これもご説明あったとおりでございますけれども、医師が常にみずから行わなければならないほど高度に危険な行為(絶対的医行為)、それから医師または歯科医師の指示、指導監督のもとに看護師等が行い得る行為(相対的医行為)ということで、ここでは医師のほか看護師といった一種の身分、医療従事者というのでしょうか、それで区切る形で想定してございますけれども、そういうものがあるわけでございます。前回の議論との関係ではこれらに対して直接特許権の権利行使を認めるべきであるというご意見は、おおむねなかったのではないかと承知しております。
それから の「医行為以外の医療関連行為」でございますけれども、医師が行う場合もございますし、医師以外の方も行い得ると。ここで、医師以外ということで書いてございますけれども、相対的行為の場合もございますので、医師、看護師等の免許をおもちでない、医療従事者でない方も行うことが可能であるということであって、医療と何らかの関連を有する行為を指しております。
とりあえずそういうものであるということを、この紙のベースでは整理した上で、このあとご議論いただければと思っております。
それで2ページでございますけれども、では「医行為ではない医療関連行為」というのはどういうものがあるのかということでございます。個々のケースを個別に論じ始めますと切りがございませんので、ある程度概念的、類型的に分類をしてみたわけでございます。もちろん、これ以外にも考えられる行為というのがあるのかも知れません。その辺は別途改めてご指摘いただければと思っておりますが、とりあえず私どもが想定したものでございますと、まず1つは「医行為と連続的に行われる行為」でございます。
例えば、典型的にいわれておりますけれども、皮膚などを患者から切除して、これを培養して拡大し、拡大したものを同じ患者に移植するような場合。切除と移植は医行為、それも絶対的医行為になるということだと思いますが、その中間段階で行われる培養そのものは医行為ではないのではないか。このような行為について、現行の特許法の運用では治療方法に含まれるということで、前回ご説明いたしましたとおり、特許法29条で、産業上利用可能でないということで、治療方法はすべて特許を付与しないという扱いになっておりますので、それとの関係で、特許の対象にならないわけでございます。
先ほどの1.で行いました分類に関して申し上げれば、切除と移植の部分というのは医師の資格なしにはもちろんできない行為である一方で、多分、培養の部分は医師の資格の有無を問わずにできるということで、念のため議論するとこういうことになるということでございます。
それから(2)でございますけれども、技術的な内容は同じでありますけれども、施す相手の方などに応じて医行為となったり医行為に当たらないとされたりする行為というのがあるのかもしれない。1つは、さまざまな人間に適用可能な画期的な痩身方法があったといたします。これが緊急にやせなくてはいけないような患者さんに対してその行為を適用する場合は医師のみが行える治療行為となるでしょうし、逆に健常人に対してダイエットとして処方する場合は、これは医行為ではないということもあり得るということでございます。
この場合、現行の運用でも、客体で切り分けるクレームの書き方というのもあるのかもしれませんけれども、実際には、その双方を含めた全体が医行為として解釈されて、特許権が付与されないという運用になるのではないかと考えられます。
それから3ページ目でございますけれども、医行為を実施するために必要な物(医薬品・医療機器)を製造、あるいは提供する行為でございます。実際、医行為を実施するために用いられる医薬品、あるいは医療機器につきましては、現在も既に特許権の対象になっております。
したがいまして、他者、例えば事業者の方が、生産、あるいは使用・譲渡が特許権者に無断で行うということになった場合は、それは差し止め等をすることが可能であるわけでございます。
他方、ゲノム創薬等の技術を用いた研究成果として、ある医薬品を例えば、これ自身はもう既に既知のものになっているということで想定していただければよろしいのですけれども、それをある複雑な投与方法で用いる場合、従来の投与方法で用いた場合に比べて顕著な効果を示すことが明らかになったと仮にいたしますと、その医薬品自身は既に新規性がない、従来から使われておるものであって、新たに特許を取得することはできない。他方、当該投与方法には進歩性、新規性があるわけでございますけれども、医行為であるがゆえに特許権が取得できないということになるわけでございます。
そのため、医師による当該方法の実施のために、他者が、既知ではありますけれども、有用な医薬品を提供する行為につきましても、いわゆる間接侵害というものでございますけれども、差し止め等の制限ができないわけでございます。もちろん、医行為そのものに効力を及ぼすべきではないというのがおおむねの結論であるといたしますと、医行為、あるいは医師の行為そのものに効力が及ばないということにしても、それに対して、既知の医薬品や医療機器を提供する行為そのものがやはり特許権侵害になり得るのではないかという考え方でございます。
それから3.でございますけれども、「医行為とそれ以外の医療関連行為の特許法における取扱いの在り方」ということで、これはかなりまだ粗い議論でございまして、非常に大きく場合分けをしております。この中にさまざまなバリエーションがあるということはご理解いただいた上でお読みいただければありがたいのですが、大きく分けまして2通りのやり方、ないしはこれの組み合わせというものがあると思います。
特許法で権利を調整する段階といいますのは、まず、権利をそもそも付与するか否か、それを考える場合と、権利を付与するのだけれども、具体的な権利行使の範囲を制限する段階というのがございまして、便宜的に、前者をここでは川上規制、後者を川下規制と呼ばせていただいております。
川上規制の具体的な方法といたしましては、権利を付与すべきでないものを、具体的に法律でございますとか審査基準に明記していくということでございます。特許法32条という条文がございます。9ページでございますけれども、「特許を受けることができない発明」という条文がございまして、前回もご説明したかもしれませんけれども、「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第29条の規定にかかわらず――ですから、産業上利用可能であるということであっても――特許を受けることができない」ということでございます。
従来は、ここに医薬品の特許でございますとか、あるいは原子核分裂の特許であるとか、あるいは嗜好品の特許であるとか、いろいろ書いてあったのですけれども、それは順次廃止になりまして、今はこれだけが残っているということでございます。
32条、このルートで川上規制を行いますと、いずれにしても権利がそもそもこういうものに付与されないということになるわけでございます。
他方、もう一つの方法はいわゆる川下規制でございます。4ページにお戻りいただきますと、具体的には、権利を取得した場合であっても、特定の場合においてはその権利を行使することができないということを法律で定めるということがあり得るわけでございまして、これは特許法の69条が参考になります。先ほどの9ページに同じ参照条文をつけてございますけれども、現在、「特許権の効力が及ばない範囲」ということで、試験又は研究のためにする特許発明の実施、それから単に日本国内を通過するものとか、そういうものとともに、3項において二以上の医薬を混合することにより製造されるべき医薬の発明、それに係る方法の発明というものは「医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない」ということになっております。これは、実は32条で、従来、医薬品の発明については不特許にしていたのをやめましたけれども、そのときに69条の3項を新設したという経緯がございます。
4ページでございますけれども、それではそれぞれの規制の方法論につきまして、どういう利点ないし留意点があるのであろうかということにつきましてご説明したいと思います。
まず川上規制でございます。一つの特色は、不特許事由として明示的に定めるため、審査の段階において出願された方法の発明について、特許が付与されるか否かということがわかるわけでございまして、権利行使が認められるか否かというのがわかるということでございます。
それから医行為に当たるその方法の発明について係る出願については、直ちに不特許ということでございますので、特許庁の事情を申し上げると、新規性、進歩性など、他の特許の要件について審査を行う必要がないわけでございまして、審査負担は相対的には低いということがいえるわけでございます。
他方、不特許にするその範囲でございますとか、あるいは概念というのはある程度明確になっておりませんと、法的安定性が非常に害されるというご意見はあろうかと思います。
医師法上の概念であります医行為は法令に明確な定義が必ずしもございませんで、5ページですけれども、厚生労働省から示される回答の蓄積によって、その都度明確化されていくというのが実態だろうと思います。医学は当然、日進月歩でございますので、その基準も変化をするため、あらかじめ審査基準として、こういうものが不特許事由に該当するのであるということを明示的、かつ網羅的に書くというのはかなり難しいのではないかというのが1点ございます。
それから仮に医行為という言葉を離れて独自の用語を特許法で使うということも当然可能なわけでございますけれども、それ自身、医行為という言葉を使う場合と多分同じ問題がございますし、それから医行為との相対的な距離感と申しますか、狭い、広い、あるいは医行為の範囲が変化した場合に、そちらをどう解釈するかといった問題が当然出てくるということでございます。
それから特許権が保護対象としておりますのは物とか方法の技術的思想でございまして、要はどなたが特許を使われるのかというような、そういう行為の主体につきましては、特許権の内容を構成しておりません。したがいまして、ある主体で仮に医行為となったり医行為に当たらなかったりするというような切り分けを行う必要があるということであれば、それはかなり不特許というルートを使って切り分けるのが難しいのではないかという難問がございます。
それから権利付与がいずれにしてもなされないことになりますので、先ほど2.の(3)のところでご説明申し上げましたいわゆる間接侵害的な行為につきましては、差し止めを求めることができないわけでございます。
それから川下規制にまいりまして、6ページでございます。審査の段階では特に規制をしないというものが川下規制でございますので、医行為そのものについても特許が付与されるわけでございます。そうして取得された特許につきましては、その具体的な実施は、医師及びその指示を受けた看護師等が行われる場合には権利の行使を認めないということでございます。医師等以外の者が実施される場合にのみ権利行使が可能となるような、そういう条文を置くということがあり得るわけでございます。
手法といたしましては大きく分けて2つあると思っております。1つは、先ほどご説明申し上げた特許法の69条でございまして、これは書きぶりについてはさまざまなバリエーションがあると思いますけれども、医師等が医行為を実施する場合に、方法の特許の権利行使の対象外とするというやり方が1つございます。この場合は、特許そのものは付与されるわけでございますので、実際それが特許権の侵害を構成しているかどうか、つまり、69条で免責されるかどうかということにつきましては司法判断になろうかと思います。
それから(b)でございますけれども、医師等が医行為を実施される場合、その行為に対して通常実施権を認めるという規定を置くというやり方もあろうかと思います。
「利点・留意点」というところでございますけれども、相対的には、基本的に個々の行為ごとに行使対象、権利の行使ができるかどうかが判断されるということになるわけでございます。
例えば画期的な痩身方法のようなものが開発された場合、その方法の特許は成立するわけでございまして、これは医師の方ですとか歯科医師の方が医行為としてなされるような場合には、その特許の権利行使ができないということでございます。そういう意味でいうと、特許権で保護される範囲というのは広いと考えることもできると思います。
それから個別具体の事例ごとにそれが医行為として行われるか否かで判断するということになります。したがいまして、審査の段階で医行為かどうかということを余り考えずに審査することはできるわけでございます。
それから、これも政策的な、産業振興的なメリットということにつながるのかもしれませんけれども、医薬品、医療機器についての、例えば特許がなくても、医行為を行う者に、それに必要な医薬品、医療機器を提供する行為、間接侵害でございますけれども、そういう者への差し止めというのは可能になる。医行為そのものには適用除外、効力除外ということになりますけれども、その幇助といいますか、間接侵害については対象になり得るということでございます。
他方、当然、すべての医療関連行為について新規性、進歩性を含めた特許要件を判断する必要があるわけでございまして、現在、特許庁はそういう審査体制を整備できておりませんので、その審査負担の問題というのはかなり、これ自身、顕著な問題であるということでございます。
それから川下規制で行う場合は、特許権が一たん成立するわけでございます。実際はほとんど懸念としてはないのかもしれませんし、現実に今までもそういう例はなかったと思いますけれども、実際、特許の実施料を請求しようと警告をしてくる、お医者様に対しても警告してくるという方が万々が一にもいらっしゃるかもしれないということを考えると、これ自体はあまり法的な議論ではございませんけれども、デメリットなのかもしれない。
他方、逆にいうと、今までそういう事例が現実にございませんでしたし、それから医行為を行う医師に対して方法の特許を行使できないということが法文上明らかになれば、そのようなことを挑むことはまず起こり得ないのではないかということもいえるわけでございます。
それから7ページ、(b)の方法につきましては、ここでは余り論じておりませんけれども、特許権者に相当の対価を受ける権利が存在するのかどうか。つまり、通常実施権は常に付与されるということでございますので、そういうことで、特許権者はそれに対して実施権を与えるわけですから、それに対する対価を受ける権利があるのかどうかというのは一つの論点になるのかもしれません。
ただ、人道的観点とここには書いてございますけれども、さまざまな政策判断の問題といたしまして、こういうものを認めるべきではないのではないかという考え方は当然あり得るということでございます。
以上整理いたしますと、「まとめ」のところでございますけれども、これも非常に大ざっぱな分類であるということでございまして、法文の細かいところの書き方によって狭い広いというのは当然出てくるわけでございますけれども、通常の医行為に対して、川上規制、川下規制、どちらのルートをとっても、これは権利行使はないであろうと。それから医行為以外の医療関連行為につきましては、2.の(1)のような行為、これは例えば皮膚の培養のようなものでございますけれども、それは川上規制、川下規制どちらをとっても○になるということでございます。
ただし、(注)のところに書いたように、医師の行為に対しては権利行使は当然できないということになるわけでございます。
それから医行為以外の医療関連行為につきましては、川上規制でいきますと、これは例えば画期的な痩身方法のようなものを考えていただければ結構ですが、川上規制の場合は×、それから川下規制では○ということですが、医師等の行為に対しては権利行使ができないということになります。
それから幇助的行為につきましても同じでございまして、川上規制の場合は特許権の対象になりません。権利行使ができないということでございますけれども、川下規制であれば○ということになるわけでございます。
ということで、非常にこれ自身、大ざっぱな分類でございますので、具体的な実態、事例、あるいは特許権による保護を認めるべき範囲、その手法といったものはさまざまでございますので、その辺をご議論いただいて、より我々が制度を考えていく上での参考にさせていただければと思っております。
それでは、2点目の資料に基づきまして、特許庁特許審査第1部審査基準室、相田室長から説明をさせていただきます。
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相田審査基準室長
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それでは、私の方から資料2に基づきまして、日米欧における医療関連行為発明の特許法上の取り扱いにつきまして、ご説明をさせていただきます。
1.の「はじめに」のところにございますように、ここでは、医療関連技術が進歩しており、対照的な制度を有します欧州と米国の制度運用等を比較しながら、日本の現状についてみていきたいと思います。最初に、医療関連行為発明の特許法上の取り扱い、続きまして、審査体制等について順次ご説明いたします。
まず2.の「特許法上の取り扱い」でございますが、枠内にもございますように、現在、医療関連行為発明は、日本及び欧州では特許対象とはされておりません。一方、米国では特許の対象としつつも、医師等の行為に対する権利行使を認めていないと宣言しているという状況にございます。
以下、資料に沿ってご説明いたします。
まず1番目、日本でございますが、前回のワーキンググループでもご紹介いたしましたが、医療関連行為発明、これは特許法29条第1項柱書に規定されております「産業上利用できる発明に該当しない」という解釈をいたしておりまして、現状では、運用上特許を付与しておりません。
それから2番目の欧州、欧州特許条約及びそのもとでの運用でございますが、欧州特許条約では52条で特許可能な発明について規定されておりまして、この52条で治療方法であるとか診断方法についての発明は産業上利用できる発明には該当しないと明確に規定されております。
欧州特許条約につきましては2000年に条約改正がございまして、TRIPS協定、知的財産権の貿易的側面に関する協定でございますが、このTRIPS協定との整合性を高めるために、53条、これは特許事由を定めている条文でありますけれども、そちらの方に改めて不特許事由として規定されております。
ただ、この条約は発効までにはすべての加盟国の批准が必要だということで、実際の発効までには数年かかると見込まれております。いずれにいたしましても、特許にならないという結論では同じということになります。
なお、この欧州特許条約の改正の契機になりましたTRIPS協定でありますけれども、このTRIPS協定の27条の3項には、「医療行為は産業上利用できる発明であるとしても、不特許事由として特許対象から除外することができる」という規定になってございます。
続きまして3番目の米国でありますけれども、米国特許法には不特許事由を定める規定はございません。新規で有用な方法、物などが特許の対象となりまして、したがいまして、医療行為でありましても、特許要件、例えば新規性であるとか実施可能要件について審査されまして、拒絶の理由がなければ特許になります。
また、米国では1996年の法改正前は、医療関連行為発明の特許であっても、差止請求権などの特許権の行使が認められるという法制度になっておりました。このような状況にあったわけでございますけれども、1993年に、Pallin事件といいまして、白内障の手術方法の特許権をもっておりましたPallinさんという医師がほかの医師と病院を特許権侵害で訴えるという事件が起こりまして、これを契機にいろいろな議論が巻き起こりまして、1996年、法改正がなされております。
ポイントは、 、 、 に書いてございますが、この法改正では、「特許権に基づく排他権は原則どおり存在する」という前提は変更せずに、しかしながら、医師等の医療行為は差止・損害賠償の対象から外しまして、さらに、その例外としてバイオテクノロジー特許などにつきましては、医師の医療行為であっても、差止・損害賠償請求権が及ぶという法律構成とされております。
続きまして3番目の「審査体制」でございますが、まずは枠内のポイントでございますが、結論から申し上げますと、米国や欧州での状況をみますと、次のようなことがいえるのではないかと思います。まず、米国の体制を参考にした場合は、医療関連行為発明の特許性を審査するための審査資料の整備、それから専門知識を有する審査官等の確保・養成が必要になるであろうということ。それからもう一つ、欧州の体制を参考にした場合には、医療関連行為発明を特許対象外とする場合であっても、技術の進展に対応して審査基準等を整備するということをいたしまして、審査体制の整備が必要になるだろうということでございます。
以下、ペーパーに沿いまして説明いたします。
まず、担当している審査室の部署数、それから審査官数でございますが、まず日本の場合でございますけれども、日本では出願された案件の審査を担当する部署、これは国際特許分類、インターナショナル・パテント・クラシフィケーションというのがございまして、この国際特許分類を基礎に作成されておりますFI(File Index)という技術分類に基づいて決定されます。医療関連行為発明に関する主な分類は、FIでいいますと、A61ということになります。これは医学、獣医学、衛生学などを網羅している分類でございます。一般に、発明には物に関する発明と方法に関する発明とがあるわけでございますが、実際には両者が関連しているということがございます。
例えば特殊な手術を行うためのレーザーメスに関する発明の場合、新しいレーザーメスと、その使い方、これが特許請求されるということがございます。このような場合にどうしているかということですが、発明の特徴が物、この場合でいいますとレーザーメスにある場合には、物の案件を審査する部署が審査を担当するという仕組みで担当部署を決めております。方法のみに特徴を有する案件につきましては、このA61の分類のうち、その方法に最も適切な分類を担当する部署、これが審査を担当するという仕組みになってございます。
それでは、具体的に幾つぐらいの部署が関係していて、その担当審査官は何名ぐらいいるかということでございますけれども、日本の場合には、医療機器分野の多くの出願を担当しております特許審査第二部福祉・サービス機器、それからその一部を担当しております特許審査第三部医療という部署がこの医療関連行為発明の担当部署ということになります。そして、この分類を担当している審査官数は合わせて約15名ということになっております。
続きまして欧州特許庁でございますが、欧州特許庁も、日本と同様、国際特許分類、インターナショナル・パテント・クラシフィケーションを基礎に作成されておりますECLA(ヨーロピアン・クラシフィケーション)といわれている技術分類に基づいて担当部署が決められます。日本とほぼ同様でございまして、医療関連行為発明に関する分類はECLA分類のA61が該当いたします。この医療関連行為発明の審査を担当する部署数でございますけれども、欧州特許庁では5部屋、審査官数は合計35名と聞いております。
それから米国の場合でございますが、日本や欧州が国際特許分類という分類を基礎としているわけでございますけれども、米国では全く体系の異なる米国特許分類、USクラシフィケーションという技術分類を使って担当部署が決められております。米国特許庁への照会によれば、医療機器分野の担当部署の審査官数は約130名とのことでございます。そのうちでも医療行為関連発明に関係してくる方法のみに特徴を有する案件、これは外科的処置に関する米国特許分類128というところと、600、というところが対応しているということのようですけれども、このような案件は、医療機器等を担当する部署の中で、義足などの補綴分野の担当部署、アメリカではArt Unitといってますが、それが担当しているということでございまして、このArt Unitには15名ほどの審査官がおるということでございます。
それから次の(2)の「サーチツール」でございますが、新規性や進歩性などの特許要件を審査するためには、特許文献であるとか学術文献、それから専門雑誌などに掲載されました先行技術をいろいろなサーチツールを使って調査することが必要になってくるわけでございますけれども、これは医療関連行為発明でも同じでございます。特許文献につきましては、全分野を収録いたしました検索システムが整備されておりまして、主要国の外国特許文献も閲覧可能となっております。このような状況は日米欧で共通でございます。
一方、特許文献以外のものにつきましては、日米欧ともに医学分野の代表的な学術文献データベースでありますMEDLINEを使用しております。そのほか、日米欧ともそれぞれ、先行文献にアクセスできるようにいろいろ努力しているということでございます。
続いて(3)の「審査基準」に移りたいと思いますが、前回のワーキンググループでもご紹介いたしましたように、日本では、人間を手術、治療、または診断する方法及びこれらのための予備的処置方法、これは産業上利用することができる発明には該当しないとされておりまして、審査基準が用意されております。
それから欧州でございますが、欧州におきましても審査ガイドラインが整備されておりまして、治療方法等は特許を受けることができないとされております。欧州特許庁におきましては多くの審決がございまして、これが蓄積されると審査ガイドラインに反映するという形で改定がなされております。日本の場合は、審決、判決が非常に少ないということもございまして、平成5年に審査基準の改訂がなされましたけれども、それ以降はそのままでございます。
米国でありますが、米国でも審査ガイドラインが定められているわけでございますけれども、医療関連行為発明、特別なものは用意されてないということでございます。ただ、例外的に、医薬品の発明で問題になることが多い有用性、ユーティリティに関して若干の説明があるということでございます。
続きまして(4)の「案件数、出願人、権利者」に関する情報でございますが、前回のワーキンググループで、案件数、出願人、権利者等の情報があると非常に有用だというご意見があったと思いますが、結論から申し上げますと、医療関連行為発明について、案件数、出願人、権利者等について有効なデータを取得することができませんでした。
いろいろな理由があるかと思いますけれども、1つは、医療関連行為発明だけを切り出した統計がないということ。分類はあるのですが、その分類というのは、一般に医療機器であるとか医薬品と共通であるために、なかなか分離が難しい。それから専門用語をキーワードとして検索するということも理論的には可能なのですが、数が非常に膨大で、なかなか短期間のうちには調査ができないという事情がございまして、意味のある統計が作成できませんでした。
ただ、6ページに移りますが、米国特許庁に照会したところでは、医療関連行為の方法、例えば医療機器の使用方法などでありますが、方法のみを含む発明の出願、これは年間約600件あるということでございます。このうち手術方法を担当しておりますArt Unitが扱う案件は年間約75件程度だということでございました。
最後に4.「医療関連行為発明を特許対象とすることによるメリット・デメリット」に関する具体的な事例でございます。前回のワーキンググループで米国、欧州におけるそれぞれの体制の中で、メリット、デメリットに関する具体的な事例があると非常によろしいというご意見がありまして、短い期間ではありましたけれども、調査いたしました。結論から申し上げますと、調査した範囲では、余り参考になりそうな具体的な事例はありませんでした。
また欧州では、2000年の条約改正時に、医療行為につきまして、米国と同様に扱うことが検討されたわけでございますけれども、結局、この方向での改正はなされませんでした。以下、資料に沿いまして少しご説明したいと思います。
まず(1)の米国でありますけれども、米国では、医療関連行為発明といたしまして、たくさん特許されているわけでございますが、その多くは医師でなければ行うことができない行為に関するものと考えられます。しかしながら、このようなものに特許が付与されたことによって、研究開発活動、あるいは商業活動に有益だったということを示した具体例は発見されませんでした。
紛争事例といたしましては、トリプル・マーカーという出産前検診に用いられる検査方法につきまして、この特許に基づいて同様の試験方法を実施している医師らに実施料を請求したという事件がありまして、1997年に訴訟が提起されております。ただ、この特許は1989年に発行されたものでありまして、さきの1996年改正法は改正前に発行された特許には適用されませんので、現行法のもとでの事例として余り適当でないかもしれません。
最後に欧州でございますが、欧州では2000年に欧州特許条約の改正が行われたわけですが、これはかなり広範囲な改正でございまして、この改正の議論の中には医療行為に関する発明を特許の対象とすべきではないかという議論も含まれていたようでございます。しかしながら、これには欧州特許庁での特殊な事情があったようでございます。ちょっとわかりにくいのですが、少し詳細にご説明いたしますと、欧州特許庁の運用のもとでは、例えば今まで知られていた化合物について初めて医薬用途を見つけたという場合、「その用途に使用する化合物」という形で特許権を取得することができます。しかしながら、その後に別の医薬用途を見つけたとしても、「その別の用途に使用する化合物」という形では特許権を取得できないということになっております。
しかしながら、そうかといいまして、「化合物の医薬としての使用方法」という形にいたしますと、今度は医療行為になってしまって特許権が取得できないという事情がございました。このような事情があったものですから、治療方法等も特許の対象とすればその問題が解決されるということで、治療方法等も特許の対象にしてほしいという要請が出てきたものと思われます。
ただ、これにつきましては、2番目以降に、別の新たな医薬用途を見つけた場合についても、「その用途に使用する化合物」、すなわち物として特許請求することができるという規定が条約に盛り込まれました関係で、治療方法等を特許の対象にすべしとする主張は理由がなくなって、結局は、医療行為等を適用の対象にするという法改正はなされなかったわけでございます。
最後に、後の方に米国特許の請求の範囲と、それから代表図面を添付してございます。サンプルを12例ほど挙げさせていただきました。サンプルがないとイメージがわきにくいと思いますので、参考までに添付させていただいた次第です。
以上で、私の説明を終わります。
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相澤座長
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ありがとうございました。
それでは、長井委員より配付資料がございます。長井委員、ご説明いただけますか。
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長井委員
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先ほどの改正審議室長の木村さんの話で、私の話す内容は概略出ていますが、結論からいいますと、川上規制と川下規制があり、我々の提案は川下規制だということでございます。それで、今回資料として配付いたしましたものは、総合学術会議知的財産戦略専門調査会の「中間まとめ」について製薬協とバイオインダストリー協会の合同で4つの提案をしています。そのうちの一つに今回の治療方法に関する部分があります。その部分についての要約と抜粋を本日配付しました。説明資料としては文章ものと絵のものとの各2枚になります。
それで、説明としては、先程の木村さんお話とほとんど変わりません。先ず、「医療行為の特許保護の現状」については、先程の木村さんの話で、医療行為のうち、現状では全部ではなくて、その一部しか保護されてない。即ち、一部がまだ特許で保護されてない状態にあるというのが現状です。また、医師の行為について、調剤行為の一部について免責がありますが、全体についてのものではないということです。即ち、明確な免責はなく、かなり制度的なひずみがあるのではないかということです。我々の現状認識は以上の通りです。次に、制度整備の必要性については、基本的には配付した文章に書いたとおりです。要するに医療行為自体ではなくて、医療行為に伴う周辺のビジネスを含めた医療現場で使われている技術、今後使われる技術が特許で十分保護されてないということです。その医療行為に関わる技術の分野で、その技術の飛躍的な発展を我が国で図るためには、その保護を我が国で充分図ることが必要ではないかということでございます。
その次に我々の提言内容ですが、これは3つあります。配付資料の絵があると思いますので、それを見ていただきたい。ポンチ絵に示しましたように、特許保護領域の現状は、真ん中の医療行為という部分がすっぽり、手術、治療、診断という部分が産業上の利用可能性なしということで抜けているということです。それ以外の医薬自体、あるいは医療器具、用途限定した用途限定物での特定の用途の医薬等については特許保護の対象になってます。医療行為は特許保護にになってない。特許保護対象から抜けているこれを医療行為に係る技術発明を含む医療行為全体を特許保護の対象にしてほしいというのが提言です。ポンチ絵右の方の真ん中の部分がみんななくなるということでございます。
具体的には、医療行為の発明を特許法上で、産業上利用できるものとして扱うようにすると、即ち、産業上できる発明に当たらないとする現行の特許法の運用を廃止するということが提言の1番目でございます。
それから提言の2番目が、医師の医療行為に特許権の制約を及ばないようにするということでございます。これは医療行為の発明に係る特許権の効力については、医師による医療行為が当該特許権の直接的制約を受けることがないように制限を設けることが望ましいということです即ち、特許権の効力は医師による医療行為に及ばないということを法律で定めるというのが提言の2番目です。
それから提言の3番目として、医療行為の実施に必要な物や役務を業として医師に提供する者には特許権の効力は及ぶということです。具体的には、特許された医療行為の発明に関して、そこに書きました2つのものについては、直接侵害ではないけれども、当該侵害の侵害者とみなすという間接侵害の適用でできるのではないかということです。
具体的には、特許された医療行為の発明に関し、その一部の工程を医師と分担して業として実施する者は共同不法行為、あるいは間接侵害ということです。それから特許された医療行為発明の実施に使用するものを、当該実施に使用することを目的に、または当該実施に使用されることを知りながら、業として製造、販売する者を間接侵害とすることです。これは最近の間接侵害の規定で、「知りながら」の要件の該当するということで、この2つについては特許権の効力が及ぶようにするということでございます。
今簡単に説明しましたが、これは先ほどの特許庁の木村さんの説明の川下規制そのものなのです。我々としても、川上規制、あるいは川下規制、両方検討しました。川上規制の問題点というのは、特許庁さんが本日配付した資料中に載っております。基本的には、先ず、医療行為が法令上明確化されてないことです。その具体的な範囲が明示的に定めることが困難だということです。医行為の範囲、これが一番問題で、これが明確でないと、医療行為に関連する特許権の権利の範囲が確定してないということとなり、特許権の効力範囲がいつもこの定義によって変動するということが大きな問題となることです。
それからもう一つは、これも特許庁さんの本日配付した資料に書いてありますが、医療行為に関連する周辺の事業です。具体的にいえば、医療行為をする者に器具や薬剤を提供する予備的、あるいは幇助的な行為について差し止めはできないことです。そこには権利が及ばないということであれば、その部分についての産業の発達、医行為に密接に関連する産業の発達ということが図れないのではないかということです。そのところに特許法による保護はないということも川上規制の大きな問題ということです。
一方、川下規制については、具体的な内容としては、先程の特許庁の説明した案でいえば、(a)の69条の改正ということです。なお、(b)の通常実施権を新設するというところは、私ども、特に議論しておりませんでよくわかりません。この委員会の特許庁さんの説明でもご推奨の案ではないとするこのが私の印象です。
そこで、一応69条の(a)案を考えた場合に、特別なデメリットがないのではないかと思います。
即ち特許庁さんのご説明で今回挙げられているデメリットとしては、特許庁さんサイドの審査における審査の負担が大変ですよという問題が1つです。もう1つは、権利行使についての、医師に直接権利行為をするような場合があり得るかもしれないということです。しかし、先程の特許庁さんの説明によれば現実的にはこの可能性はほとんどないであろうということであるので特別なデメリットはないということになります。
一方、特許庁さんサイドの問題は、確かに先程のご説明でも、審査体制について、今までにないものを導入しなくてはいけない。色々な文献も調べなくてはいけない。審査官も勉強しなくてはいけない。これはあると思います。それはなかなか大変なことだと思います。しかし、時代が流れているわけですから、時代とともに審査を担当する特許庁の対応も変わっていくというのは当然です。民間であれば、例えばバイオの技術が入れば、バイオの技術をやらないと生き残っていけないということで、選択と集中をしたり、リストラしたり、当たり前ですが、重点志向でバイオ技術導入を推進して行くということなのです。特許庁さんもなかなか大変だと思いますが、これは時代の流れにあわせた特許庁の対応ということで必然的に起こる問題だと考えられます。
これは別にこの医療技術の分野に限らないで、技術が進歩すると、それにあわせた発明が生まれてくるわけです。それを審査する特許庁がその変化に対応していかなくてはいけない。それが今まで特許対象でなかった医療分野が比較的新しい分野であり、その技術の進歩が著しくなるからこれに関連する発明が生まれてくるわけです。特許庁が対応しなくてはならない必然性はあるわけです。我々民間からみると、川下規制のデメリットは特許庁に頑張っていただけば大きな問題にはならないのではないかということですので川下規制ということで是非ご検討いただいたらどうかなということでございます。
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相澤座長
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どうもありがとうございました。
それでは、審議室長、基準室長の説明、それから長井委員のご意見を含めまして、皆様方のご意見、ご質問をいただきたいと思います。
古川委員、どうぞ。
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古川委員
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一番最初に、前回の議事録、今ちょっと所持してないので申し上げられないのですが、ほとんどなかった医行為について特許権利行使を認めるということは、一応私は一つの可能性としてはここで考えてみるべきではないかということはご提言申し上げたのですが、そのことは実は余り時間がなくて皆さんの意見が出そろわなかったと考えております。
それが、まず第1点いいたいことなのですけれども、ただ、現状としましてできること、これをすぐに権利行使を認めるということになりますと、これは現実的ではないということは私自身、理解しております。ですので、その代替というか、川下規制については、私はこれに全面的に賛成なのでございますが、川下規制の、長井委員から今、(a)の方法、法文上に医療、診療行為については権利行使対象外とするという規定を設けた方がいいのではないかと。こういう提案についてはちょっと私は問題があると考えておりまして、今後の世の中の動き等を勘案して、やはりこれは医療の中にある程度の部分で市場性が入ってくるという将来像があり得るわけでありますので、そういったことから、法文上にそういった規定を設けるよりは、もう少し社会の動きをみて、そこで変えてもいいのではないか。
すなわち、私自身は、前回申し上げたのですが、我が国の診療保険制度等を前提にすれば、この(b)という方法に相当の対価を認めるべきかどうかということは別にしまして、これで通常実施権を付与するということで、これに対する対価をどうするかということについては今後の議論に待つということが非常によくできた規定ではないかと思いました。あるいは、(a)(b)、こちらを法文上には設けないで、やはり川下規制の運用に任せて、今後の社会の流れ等において新たにこの規制の仕方を考えていくという方法も1つあるのではないかという提言をしたいと思います。
そして、1つ、完全に誤解のないようにという意味で、同じことですが、7ページの下にきれいに表をおつけになりましたが、川下規制で、別に医行為を×でなくて○でも同じなのですね。ただし、診療行為として行う場合には、「医師等の行為に対しては」というのは非常に言い方が不明確でございまして、医師が他の者ができる処置をする場合もかなりございますので、これには「医師等が診療行為として行う場合には」と書いていただいて、それで、川下規制全部○にして、(注)を全部につければ同じことなのですね、いっていることは。その方が、この川上と川下の類型ははっきりするのではないかということを感じました。
特に医療サイドからもう一つだけ付言させていただきますと、2.の(3)のような行為というのがこれから中心になって開発されていくだろうと考えられるのですね。ですので、バイオテクノロジーが一番有効であるのは、恐らくここの部分だと私自身は考えております。非常に治療に密接に関連してくるのですね。ですので、ここに特許権を認めないと、実質的な産業の保護ということには余り役立ってこないのではないかということが非常に危惧されるわけです。
以上でございます。
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相澤座長
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ありがとうございました。木村さん、今の点について何か。
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木村制度改正審議室長
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まず第一に、我々としては、具体的にはどのような行為について、それが特許で保護されるべきなのかどうかということについて、この場を通じて何らかのコンセンサスがあればありがたいということでございます。多分、通常実施権でいくというのは、ここでは川下ということで分類してございますけれども、やり方としては若干異質なやり方なのかもしれないという気もしてまして、仮にそれが、特に対価が必要であるということまでになりますと、これはかなり大きな政策判断になるという気はしております。
仮に効力除外ということで何らかの範囲というものを切り取っていくということになるといたしましても、効力除外であろうと、不特許でも同じことかもしれませんけれども、医行為のとらえ方、あるいは主体としての医師でありますとか看護師でありますとか医療従事者でありますとか、あるいは場所的な概念としての、例えば病院とか、いろんな切り口があると思いますので、法文の書き方というのは必ずしも一様ではないといいますか、さまざまなバリエーションがあるとは思っております。それに先立つご議論として、どのような行為が具体的に特許で保護対象となるべきであるかということについてのコンセンサスができていけば非常にありがたいなということでございます。
それから、先ほど古川委員のご指摘でございましたように、(a)(b)をどちらもやらずに運用に任せるというのは、要は、29条の柱書で拒絶しているという運用だけをやめて、それを要するに特許対象とするということだけやればよいのではないかというご趣旨ですか。
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古川委員
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それで済むという考え方ですけれども。その方が、後に変えるときに変えやすいと思うので。そういう理由です。
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木村制度改正審議室長
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その場合はただ、逆にいうと、医行為につきましても、直接特許対象となることがもうかなりあからさまにはなるということでしょうね。
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古川委員
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ただ、実質的にその判断をしなければいいわけですので、それは恐らく、裁判所においても担保されると考えています。
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木村制度改正審議室長
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ただ、それは事実上、拒絶をする法的な理由が、逆にいうとないわけでございますよね。やはり新規性、進歩性を満たす……
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古川委員
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ただ、これは別に明確な規定があるわけではないのですよ。明確になぜそこに特許権を認めてはいけないかという理由があるわけではないですね。ですので、明確な理由がないという意味では同じだと思いますね。ほとんど、あとの付録の2の方に書いてありますけれども、実際上は皆無だろうとか、そういう表現を現に特許庁もお使いになっている。これはだから、そういう事例がまず社会的に起こらないということはないと考えていいと思います。
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相澤座長
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よろしいですか。
もう一点、古川委員から、医行為に対する権利については認めるべきという意見はほとんどないという書き方について、意見集約は行われていないのではないかというご質問があったのですが、この点はいかがでしょうか。
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木村制度改正審議室長
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最後に古川委員がおっしゃられたとおり、前回の議事録を振り返ってみましても、確かに医行為そのものにも権利行使を認めて、それを、まさにここでいうところの(b)案になるのかどうかわかりませんけれども、実施権を付与するというやり方でやるというのが一案であるというご指摘があったことは我々としても理解しております。ほとんどというのは一応そういうニュアンスを込めたつもりでございます。申しわけありません。
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相澤座長
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ありがとうございます。熊谷委員、どうぞ。
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熊谷委員
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3点ほどお話ししたいと思います。
ひとつは、前回、竹田委員からもお話があったと思いますが、特許制度そもそもの目的である、研究成果の公開とか、研究成果の公開による技術の進歩の促進の観点から、医療行為についてどのように考えていくのかということが今回はまだ不充分であるような気が致します。もちろん、学会発表や論文発表によって技術が公開されるということもあるかと思いますが、それだけで本当にインセンティブになり今後の研究開発の促進というのがあるのかと思います。
長井委員の資料にもあったと思いますが、そのような観点からの検討が必要ではないかというのがひとつです。
ふたつめは、長井委員もおっしゃったと思いますが、川上規制と川下規制のメリット、デメリットの整理は資料のとおりだと思いますが、やはり対応可能なものと対応が非常に困難というか、不可能なものがあるのではないかと思います。これらのメリット、デメリットのマグニチュードが多分あるのではないでしょうか。資料では、横並びにメリット、デメリットとされていますが、回避できるものと回避しようのないものという形での整理が必要なのかなというのがふたつめです。
最後は、古川委員のお話とも共通するかもしれませんが、資料の2.の(1)(2)(3)の分け方ですが、2.の(1)が現在、日本では認められてないということでしたが、私も不勉強ですが、ヨーロッパでは、2.の(1)のカテゴリーのものが認められているのではないかと思います。ですから、この部分は日本が一番厳しいのではないかと思いますし、米国の事例でも、バイオテクノロジカル・インベンションの事例は結構あると思います。2.の(1)のカテゴリーがすべてそれに該当するとはいいませんけれども、そのような事例は結構あると思いますし、過去の幾つかの事例もあると思いますので、デュアルユースというのでしょうか、医療行為としても使えたり、そうでない場合に使えるケースや、バイオテクノロジー関連の発明で、それが医師によって医行為としても行われるようなものは結構あり、それらについての今後の研究開発をどのように考えていくのかということが今回議論をする上では重要ではないかと思います。その意味では、個人的にはやはり川上規制よりも川下規制の方が、望ましいのではないかと思います。
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相澤座長
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ありがとうございました。木村さん、何かありますか。
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木村制度改正審議室長
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公開による技術の進歩ということをもうちょっと正面からとらえてはどうかということについては、全くおっしゃるとおりだと思います。それについても、ここでどういう最終的な判断になるかわかりませんけれども、一つの考慮要素ではないかと思います。
それから、確かにメリット、デメリットというのを、もちろんこれに尽きているかどうかということもございますし、字の大きさは皆同じでございますけれども、マグニチュードの違いというのはあるということもおっしゃるとおりですので、皆様方にこれを取捨選択の中でまさにご議論していただければありがたいということでございます。
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相田審査基準室長
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ただいま、熊谷委員の方からご指摘がありましたように、確かに欧州の方では、審決の蓄積もございまして、日本の現行の審査基準に比べれば弾力性のある運用がなされていると理解できると思います。
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相澤座長
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竹田委員、どうぞ。
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竹田委員
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第1回の委員会のときに、この特許問題、特に治療方法発明について特許性を認めるかどうかの問題をクリアーするのには、1つには、29条1項柱書の産業上利用できる発明に当たるかどうかという。それから第2に、特許法第1条の規定の趣旨に沿う発明として保護すべきものかどうかということを申し上げたと思います。
この点についてもう少し詳しく私の意見を申し上げますと、これは東京高裁の第6民事部の平成14年の4月11日の判決ですがか、治療方法発明は産業上利用できる発明だという見解に十分な説得力あるとした上で、結局、医師が安心して治療行為を行うためには、69条のような規定による規制が必要なので、その規定を欠く現行特許法においては、治療方法発明を特許性を認めることはできないと判断しているわけですね。
ここでいっていることの内容を裏読みすれば、まさに69条のような規定を設ければ、その治療方法発明は保護するべきだということをいっていることであって、裁判所の考え方は、高裁の判決ありますけれども、そこまで来ているわけで、その意味では、特許庁の審査基準を今の段階でそのまま維持するのはもはや困難な状況になっているということがいえるだろうと思います。
その前提に立った上で、さらに、きょうの資料1でいっている医行為が多くの場合そうだろうと思いますが、それについて特許性を認めるのは本当に特許法の規定の趣旨に沿うのかというのは、1条が発明の保護、利用を図ることによって発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とするということを規定しているわけで、その点をこの問題に当てはめて考えれば、やはりそういう医行為に関する発明を川下規制というか、特許性を認めるという方向で対処するというためには、その発明を認めることによって技術の進歩という、つまりは国民の健康、生命の維持・増進に役に立つということが必要だと思うわけです。そのような視点から、本当に医行為発明というものを特許性を認めていくかどうかを検討されるべきであって、その点についての議論が、今熊谷委員もいわれたように、私はちょっと欠けているのではないかと。
先ほどの長井委員等のご説明の中で私が1つ納得しがたいのは、例えば特定の医薬を用いて行う治療方法、あるいは特定の医療機器を用いて行う治療方法の特許性を認めた場合に、結局、間接侵害とか共同不法行為によって、その侵害に対し、これは医行為そのものは医師法の規定によって、結局は医師でなければできないわけですから、そのような特許を認めた場合に、侵害として権利行使する場面というのは、そういう場面になってくるとすれば、それは医薬そのものの特許性を認め、医療機器についての特許性は認められているわけですから、それで保護されれば十分ではないかと。
というよりも、このような発明を、特許性を認めることによって、すぐれた医療技術をもった医師等が積極的に特許、これは出願人はだれになるかは別としても、発明者のある医師がそういう形で積極的に特許出願をするということで、先ほどいったような目的にかなうのであれば、これは特許性を認めて、この際、川下規制をどうするかを考えるべきではなかろうかと思います。
それからもう一つの問題は特許庁の審査体制の問題で、これは先ほどの基準室長のご説明にもありましたとおり、現在の状況でそれに対応できるような状況があるとは私も思いません。ただ、やはり技術の進歩というものは常に社会の発展とともに起きてくることですから、それが本当に必要であれば、特許庁はそれに必要な審査体制を整えるべきであって、それが現在できてないから特許性を認められないという方向にいくわけにはいかない問題だろうと思います。
その点を解決するためには、例えば川下規制でいった場合でも、なお施行期間については相当の猶予をする。つまり、普通は、仮にこの点が法案となって来年の通常国会に提出されれば、平成16年の1月1日施行ということが多いわけですけれども、もっと猶予期間を設けて、例えば3年とか、可能ならば5年でも猶予期間を設けて、その間に審査体制を整えるべきことで、それを理由に特許性を認めないというわけにはいかないだろうと思います。
そうすると一番問題なのは、やはり特許法1条が規定する、特許法が特許を保護する目的に沿うような発明として、これが保護すべきものかどうかという視点からの検討が一番必要で、その点について、本当に私が先ほどいっているようなことで、特許出願が行われるのであれば、私はこの問題は肯定的に考えるべきだろうと。しかし、そうならないのであれば、やはりそれは特許することの必要性も目的もないということになるわけですから、それは特許を受けることのできない発明として32条に規定するのが妥当であろうと、私はそう思っています。
なお、川下規制の場合に、(a)案、(b)案出てますが、69条で規制する除外、効力及ばないとするのが一番いいと思いますが、仮に通常実施権を認めるという規定を設けるのであれば、私は相当の対価を認めるというのには絶対反対で、むしろ法定の通常実施権にして、かつ、相当の対価の支払い義務は医師が治療行為を行う場合には及ばないとする方がいいと思ってます。
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相澤座長
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木村さん、何かありますか。
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木村制度改正審議室長
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余り事務局からあれこれ申し上げるのもどうかと思いますけれども、29条の、確かに高裁判決に示されているようなことというのは我々も十分、もちろん承知しております。確かに産業上利用可能な発明というところの解釈に関して、あの判決で特許庁が仮に敗訴していればどういうことになったかということを考えると、やはり何らかの立法的手当てのようなものは早晩必要になるような気はしております。
それで、特許法の趣旨ということで、1条の目的等について勘案する必要も当然あると思います。ただ、抽象論としては発明を特許性があるということで認めて、それが公開されることによって技術の進歩、それで国民の生命であるとか健康であるとか、そういうものの増進が図られるということは非常に望ましいことだと言えると思いますが、実際にどうなるかについては、これはただビジネスにおける一種のビヘイビアによるところがあると思います。
ですから、逆にいうと、実際それで産業が振興されるかどうかということについては、それは多分そういうことになるだろうと推測しておりますし、先ほど長井委員から御紹介いただいたような紙も出てきていると我々としては受け取っておりますので、したがって、にべもなく医療関連行為について特許性がないという判断を特許庁としてするということはできないという理解はしております。
ただ、恐らく、完全に医行為を丸裸で認めていくということになりますと、それには大きな弊害が伴うのではないかというふうにも当然思うので、そこについて、69条がいいのか、あるいは32条ということで不特許にするか――32条で不特許にするというのは、より強度な政策判断として、これは特許を認めるべきでないという、国としてそういう政策判断をするということになると思いますので、それがいいのか、そこについてはさまざまな考え方があるような気がいたしております。
すみません。ちょっとお答えになってないかもしれませんが。
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相澤座長
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宇都木委員、どうぞ。
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宇都木委員
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今、竹田先生もおっしゃったこと、前回はたしか菅沼委員が少しその点について強くおっしゃって、きょうお休みでいらっしゃいますが、私も、結論的にいうと、69条をいじるということになるかなという気がしてしまうのですが、ただ、私としては、今竹田先生がおっしゃったことについて、自分自身としてもうすこし納得をしたいという気はいたします。今のところまだちょっと十分には納得できないという気がいたしますので、ヨーロッパとアメリカについて調べてくださったことをもう少し続けてくださるとありがたいという気はいたします。なかなか難しそうだとは思うのですが。
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相澤座長
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いかがでしょう。
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木村制度改正審議室長
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可能な限り継続したいと思います。
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相澤座長
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事務局で、努力してください。お願いします。古川委員、どうぞ。
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古川委員
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今の竹田委員のご発言で、確かに現状において、この委員会、ワーキンググループに命じられたことといいますと、やはり医行為について取り扱いを明示しろというのは、私もこれについては最初に議論が十分でないと申し上げたのは、何らかの方向性をやはり答えなければいけないという趣旨でございました。
おっしゃるとおりだと思うのですが、1つ、対価についてのことで若干ご説明させていただきます。認めるべきでないというのは、そういう考え方が一般的であるというのは私も存じておりまして、現にそれによって、医師が経済的な観点から、診療行為、技術を発揮できないという事態に陥った場合には非常に困ることになるわけですね。
実質上の運営をちょっといわせていただきますと、実際上の現在の我々の運営というのは、特殊な行為でない限り、ほとんどの場合、保険適用が実はついてしまうのですね。保険医の療養担当の関連ですので、我々が診療していて、診療報酬的なことについて、実は実際上やっていて心配するということはほとんどないのですね。保険の適用だけを考えているわけですので。
それが、現状でいいますと、高い方が医療機関というのはインセンティブありますね。もちろんやった方が収益上がりますので。そういう事情になっていると、これは逆にいうと、国民経済的な観点から考えなければいけませんけれども、現場にいる医師にとっては余り関係がないと。ですので、もし法定実施権ということでお定めになるというご提案、私も事実上それが一番いいと考えているわけですが、その場合に、対価を否定するかどうかということについてはここで明確化するのではなくて、他の政策判断に任せるべきではないかという気がしております。
そして、ゲノム、あるいはバイオテクノロジーの保護による国民の健康の増進ということについてはまだわからないというのが現実です。しかしながら、再生医療及び遺伝子治療の採用によって、従来の治療方法が画期的に変わるという大きな期待が医師の、特に我々専門職の間にあるのは事実でありまして、それは従来の考え方とは全く疾患のとらえ方の本質的な理解が違うというところに根差しているわけであります。私自身は今の医学の常識的な考え方をもつ者として、バイオベンチャーにおける産業保護が国民の健康増進に役立たないというふうには考えられないと思っております。
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相澤座長
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ありがとうございました。澤委員、次、宇都木委員、お願いします。
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澤委員
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川下規制をするにしても、この治療方法の発明が国民にとって安全なものなのかどうなのかということは非常に大切であり、社会的関心も高い。ある程度安全性をクリアーしているかどうかというのを見極めないと、それこそ公序良俗に反するのではないかと思うのですけれども、新しい医療の安全性というのは、今、例えばBTを含めても遺伝子治療にしてもそうですけれども、今の現状というのは、まず最初に施設の中の倫理委員会を通して、5例ぐらい、橋渡し研究、臨床研究をします。
それで一まず安全性確認された時点で、今度は高度先進医療という施設申請をしまして、ここで幾つかやって、完全に安全性が確立されてから、いわゆる保険医療、一般医療になってくる訳です。新しい医療というのはまだ保険医療のところまではとってもいってないわけですけれども、そういう現場の段階でもなかなか、この医療が安全なのかどうかという判断は非常に手続の要る、また専門家が何人かかってもなかなかわからない、必ずもろ刃の剣ですから、それを川下規制で全部特許庁がおやりになるというのは、審査体制というよりも、その判断そのものが非常に難しいのではないか特に治療ということはそうなのだということをおわかりいただきたいと思います。
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相澤座長
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木村さん、それについて何か。
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木村制度改正審議室長
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特許庁で恐らく特許性について判断させていただくということになった場合、確かにおっしゃるとおり、全く安全でない、安全性が確保される見通しが全くないというものであれば、現在でも不特許事由になっております「公序良俗」にひっかかる可能性はもちろんあると思いますし、また、やはり当該発明の実施可能性という要件も当然ございますので、それとの関係でも進歩性でありますとか、それが当業者にとって理解可能なものになっているかということを判断するということになると思います。
しかしながら、当該医療行為の安全性を、厚生労働省などがご判断なさるようなレベルで特許庁で判断するということは事実上難しいといいますか、そういうことは恐らく行わないだろうし、行うべきではない。現に医薬品につきましても、現在、特許をしておりますけれども、当然それは厚生労働省の個別具体的な許可とはとりあえず異質の行政処分ということにしております。
他方、恐らく澤委員のご指摘のところは、さまざまな治療方法というのが開発されてくるのだけれども、それが実際現場で使えるようになるかどうかというのは、やはり相当の事例の蓄積であるとか、あるいは安全なのかどうかということを余程見極めないとなかなか使えないので、例えば川下規制ということで特許で一種独占的に保護されるようなことになると、それは実際、臨床例の蓄積と申すのがよろしいのでしょうか、そういうことにならないのではないかと。そういうご懸念があるというような気もいたして、私はむしろここではそのように理解させていただきました。
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相澤座長
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安全性の問題については医薬品の場合と同一であるということでございまして、試験研究については現に69条で除外されているということでございます。
宇都木委員、どうぞ。
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宇都木委員
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今のことに関連してですが、方法というのは、方法自体は現在の厚生省の関連の承認制度の中ではちょっと取り扱われていない領域ではありますね。方法にもいろいろな事柄があるのですが、薬の間隔とか使い方ということについては、取り扱われる可能性は、特に今、医師主導の臨床治験という制度を導入することで入ってこようかと思いますが、純粋な方法となるとなかなか取り扱われないのではないかと思いますことが1点と……
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古川委員
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その点に関連もするのですけれども、もうすぐ厚生労働省が規制をつくろうとしているのですね。まずそれは第1点が医師主導でやるいわゆる治験、薬事法の第14条3項にある治験ですね。これにつきましては、医師がやる主導のものを認めるが、これはどういうことかというと、医師が今まで医薬品メーカーとか医療器具メーカーから提供を受けて、勝手にパイロット的にやっていたスタディがずっとあったのですね。初めに。先ほど5例ぐらいやってみるというご紹介がありましたけれども、それについて一般的な、GCPという薬事法上の基準を載せていこうと、全部厳密に縛っていこうという考え方、これが1つなのですね。
それから、年内、もうほとんど実は案ができているのですが、最初の、今の方法の部分ですね。これについても一般的な医師が医療機関においてやる規定をつくる。もう学内の倫理委員会だけに任せておくことはしないというのが今の厚生労働省の方針で、この辺はまだ明確には出てきてませんが、年内中にほぼ案が決まって、来年の早々には出されるという話は内々に聞いております。
ですから、そうしますと、一般的に新しい方法が非常に危険である。危険であるからどうか、それをやった医療機関の倫理性に問題があるのであって、それを特許を付与するかどうかと結びつけて考えるというのはちょっともともと考え方が違うのではないかという気がするのですね。もともとそんな危険な治療行為をやるべきではないと。そういう判断をするのが研究としてやる医療の当然の常識でありまして、それだから、特許を認めるからそれがふえていくというおそれが、危険性があるといった議論はちょっと結びつかないのではないかなという気がします。
それから第2点は、今申し上げましたように、いずれにしても、今規制をかけてくる方向でございますので、それから今委員長からご紹介ありましたように、試験研究においてやる場合にはこれは関係ありませんので、それによって医学の発展が阻害されるということもないと、もろもろの法令上は考えることが可能だと思っております。
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相澤座長
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宇都木委員、どうぞ。
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宇都木委員
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医師主導のガイドラインというのを私も関与してまして、後者でいわれたのは恐らく臨床研究のガイドラインのことをいわれたのでしょう。
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古川委員
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臨床研究一般のやつですね。
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宇都木委員
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私もその委員でございますが、これは非常にラフなガイドラインが出るだけ、行動準則が示されるだけで、その遵守の管理に公主体がかかわるという種類のものではないので、治験とは全く性質が違ってしまいます。
また、最後に古川委員のいうこと、私もそのとおりだと思うのですが、ただ、恐らく現在の中である行為に特許が認められたということになると、今までなかった事柄ですから、これは少なくとも社会全体としては実質的に何らかの公的な安全性についての承認がなされたという動きをしてしまうおそれは非常にあるとは思うのですね。二つは理論的に全くは違うことはわかり切っているのですが、そこのところを何かきちんとさせるシステムが必要だと思います。
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相澤座長
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大野委員、どうぞ。
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大野委員
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最初に、今の、方法を特許された場合に、それが1つは薬事法の対象にならないのではないかという宇都木委員のご疑問だと思いますが、これは研究でやっている限りは薬事法も安全性について法的に規制するということはできませんが、あくまでも医療、医学に従事している研究者の人たちがみずからの職業上の責任として、これは当然、担保すべき事柄であろうかと思います。
ただし、これが一たん業となりますと、それは方法であっても薬事法上の規制の対象になりまして、そこでは安全性、例えばそこで使われているプロセスの安全性とか、そこで扱われるものの品質確保、安全性確保についてはきちんとしたバリデーションがなされた上で、初めて業として行える、認可されるという性質のものでございますので、その点は私は心配はないと思います。
それで、本来、安全性について、それを一義的に特許法の中で、特許制度の中で担保すべき問題かと。これはちょっと性格が本来違うのではないかなと私は理解しております。
もう一つ、これは私自身の意見といいますか、私自身は医療機器業界から今出ておりますが、医療機器業界としてまだ統一されたものではございませんが、今この問題についていろいろ検討を進めておりますが、その状況についてちょっとお話し申し上げたいと思います。私ども医療機器業界としては、この医療行為に関する特許を付与することは医療分野の研究及び医療技術の開発の進展を促進する効果をもつであろうと。特に先端医療の分野でそういった効果が大きいであろうと。そういう意味で、米国と同様に、医療における診断とか治療方法の発明は、そういう意味で先端医療分野では、新規技術思想の創作としてやはり特許を認めるべきである、あるいは認めてもよいだろうという意見が多いのです。
ただし、その場合に、これは今までもいろいろご意見が出てますので細かいことは繰り返しませんが、やはり医師が患者に対して選択し得る医療行為が特許の存在のために制約を受けることがないように、これは制度上の配慮が必要であろうと。ですから、医師の行為には特許の効力が及ばないとする米国の方式か、あるいは通常実施権を付与されているという、法的に付与するという、そういういろんなやり方があるかと思いますが、それは制度上配慮すべきことであろうと思います。
ただ、これをやった場合に、医療行為特許に関して、私ども業界の中では2つの問題が今指摘されておりまして、1つは特許の実効性の問題、これも先ほど言及された方がいらっしゃいますが、医師が医療行為特許を使用したとしても、直接侵害者として訴えることができないということになります。通常実施権がライセンスされているということでありましたら、少なくとも経済的な面についてはメリットあるわけですが、いずれにしろ特許権者は、先ほどご説明ありました資料の1か2に対して権利行使できるだけでございまして、そうしますと、特許を付与する意味、または特許を出す意味が小さいのではないかという問題点が1つございます。
それからもう一つは、前回のワーキンググループで、間接侵害の問題については別途意見を申し上げたいということをいいましたが、これも、先ほど竹田委員からご指摘あったかと思いますが、今度、近く法改正によって間接侵害の定義の幅が広がります。そういう意味で、医療行為の方法特許が認められるようになりますと、従来から製造・販売されているような医療機器が方法特許に使われているということを知っていて、そのまま製造・販売を継続すれば間接侵害になるということがございまして、医師が直接侵害した場合に差し止め請求や損害賠償を求められないとしますと、間接侵害の訴訟が増大するのではないか。これは企業にとって防御の負担が増大する可能性がある。間接侵害特許に対する備えを非常に大きくしなければいけませんし、実際に訴えられればそれに対する対応が必要である。そういうことがもし起こるのであれば、これはこういう医療技術とか物の進歩、研究開発を逆に、促進するよりもマイナスになる可能性もあるということでございます。
それからもう一点、産業界といたしましても、新しい制度に対してはやはり準備するための期間が必要だろうと。そういったものを発明として奨励し、どんどん出せるような体制を整え、それから先行技術の調査等についても、産業界も産業界なりに、やはりそれなりの準備体制をもたないといけないのではないかということでございます。
それから実際にこういった制度を改正する場合に、これはもう業界としての注文でございますけれども、その変更というのはきちんと明文化されて、あいまいな解釈を許さないようなものであってほしいと。そういう意味で、今回法改正によって行える間接侵害の範囲というのが実際どうなるのか。もう少しこれは業界の中の意見として、例えば細分化されたガイドライン等を設けられないかといった要望もございます。
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相澤座長
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片山委員、どうぞ。
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片山委員
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少し大きな観点で、こういう医療の新しい、進歩させるもののコストをだれが世の中で負担していたかというような、あるいは今後だれが負担していくべきかというような目で考えますと、今までは、例えば医薬品の開発というのは製薬メーカーが非常に大きなコストを負担して、リスクも負担して開発してきた。そのかなりの部分は実は、皆さんご存じのとおり、臨床試験をどういうふうに組んで、どういうふうにやっていくかにありました。フェーズ2、3になりますと非常に大きなコストが要るのはご存じのとおりなわけですね。
それをひるがえって考えてみますと、発明の本質はひょっとすると、種を見つけた方にもあるかもしれないけれども、製薬メーカーが本当に自分でやるのは動物実験までですので、本当に人間できくかどうかというのはひょっとすると、医療機関の側に本来は発明の本質があるのではないかという見方もできるのではないかと思うのです。
特にそういう構造でみますと、具体的に既知物質、例えば特許はもう既に切れてしまっている、だけど、これは何か非常にいい薬効があるかもしれないというようなものを開発していくインセンティブというのは、製薬企業にとっては恐らくはかなり薄れるはずなわけです。物質特許としてはとれず、あるいは医薬特許が成立すればいいですけれども、かなり利益の減殺というのはありまして、そうだとすると、医療機関側がそれをコストをかけて進歩させていくという、そういうものを構造的にはむしろ医療機関側が担うべき話なのではないか、担っていい話なのではないかと思うのです。したがって、今回こういう制度を変えようということは非常に意味があるように私自身は思います。
最後の、それでは、医師が、そういうふうにコストを負担する、リスクを負担するというような場合に、その見返りというのは十分あるのかということになります。先ほどの通常実施権の話のあたりに来るわけですけれども、それは現在のイメージとしてはもう一つピンと来ないところがありますが、将来の医療産業というものを考えますと、真剣な問題だろうと思います。
ある企業グループが、現在ではこれはありませんけれども、ある系列の医療機関を所有している。そこでは新しい医療方法を一生懸命研究開発している、というような時代が来るとすれば、果たしてリスクをとる場合の見返りとして、今議論している制度が十分であるのかどうかということになります。とはいっても、現状なかなかまだそういう産業自体が発達しているとも考えられないわけです。しかし、そのままほうっておいてよいのかといいますと、やはりそこは何らかの措置をとるべきだと思います。長い目でみるとどうかわかりませんが、とりあえずコンセンサスがとれるところで特許を認めていったらいいのではないかという意見に対しては、私は最終的には賛成です。
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相澤座長
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ありがとうございました。竹田委員、どうぞ。
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竹田委員
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今の片山委員がいわれたことの最後の点に関連するのですが、私も、相澤座長と一緒に総合科学技術会議の知的財産戦略の専門調査会に出てますが、そこで出した報告書の中でも触れているように、ともかく現段階で、まず、再生治療とか遺伝子治療についてはこのままの状態にしておけないでしょう。そういう意味では、2段階ということも十分考えられると思うのですね。2段階をいわば私が先ほどいったような施行の期日の問題として考えるか、それとも、そういう再生治療や遺伝子治療以外のものについては、それは特許性を現段階では認めないという方向でいくかだと思うのです。
ただ、後者のような方法をとるということは、法技術的にもかなり困難な問題を伴うと思いますし、それを別としても、今の状況を将来的に展望すれば、それをそのままふたをしてしまっていいものかと思いますので、これは2段階的な施行というか、一応の立法論としての方針を出しておいて段階的に考えると。そういうようなお考えは審議室なり特許庁側にないのかどうかをちょっと伺いたいと思うのです。
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木村制度改正審議室長
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その辺も議論の結果といいますか、コンセンサスが得られるのであれば、それはもちろん考えてよろしいかと思います。
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相澤座長
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先ほどの大野委員のご質問の点について何かコメントありますか。間接侵害に対する質問が出ていたのですが。
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木村制度改正審議室長
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間接侵害について、どのようなケースが間接侵害になるかということのガイドラインを示せということだと思いましたが、事実上、間接侵害であるかどうかというのは、特許庁が基本的に判断するというよりも、基本的には裁判所の判断に一義的には委ねられるべきもので、そこでの判例の積み重ねである意味ではもたらされるものだと現時点では理解しております。
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相澤座長
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古川委員、どうぞ。
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古川委員
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(b)の通常実施権という話、それにすると、実施権を認めると、2.の(3)のような行為が規定できないのではないかというようなご発言が大野委員からあったように、ちょっと聞き違いかもしれませんが。ただ、総合的にお二人の今の、片山委員、それから竹田委員のお話を勘案して考えますと、やはりこの規定の仕方だと思うのですね。あとはガイドラインの出し方で、将来の経済の動きを見据えた、あるいは医療費抑制という公的な財源による医療というものがどうなってくるか、ちょっと不安なところが現在ございますので、そこにどういった形で国民医療が提供されるようになるのか。民間の財産を使ってくるのか。
その場合に、新しい先行技術のあるべき負担の仕方がどういったものかということを考えますと、まず段階的に考えていこうという方針でも、それはもちろん一理、非常にある見解だと思いますし、それから医薬品、あるいは医療サイドが今までの医薬品企業一辺倒にかわって多少のリスクを置くとなりますと、経済的な裏づけが今ないですので、これではできないのですね。
ですから、そういう意味では、特許権等によってこれを担保していただく必要があろうと考えられるわけですね。ですので、将来的なことを考えた、ある程度段階的というか、動きを見据えたような規定をやはりここでひとつ、当座の段階としては再生医療、バイオを認めていこうという動きでいいと思うのですが、そこから先のことがやはり非常に重要になってくる。特に今から技術が非常に伸びてくる時代ですので、私は今現在予想している以上に世情が変わってくるのではないかと。その場合に、今回の規定によっていたずらにまた法改正がおくれることになってはいけないのではないかと、そういう懸念がございます。
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相澤座長
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津國委員、どうぞ。
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津國委員
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私、現場で弁理士として発明者の方々に会って明細書を書いている立場から申し上げますと、特に大学等の再生医療工学に携わっている研究者からの発明をみてみますと、やはりこういう医療行為等についてぜひ特許を認めていただきたいという声が非常に強うございます。その他、医薬の関連の会社のユーザー、クライアントの方からもそういう声が多うございます。
再生医療工学関係は、方法が先か、物かという問題もあると思いますが、そういう方法自体に特許性を認めることによって、それに用いる装置とか材料とか、そういったものについても付随して発明が出てくるように思います。ですから、そういう意味では、産業の発達に寄与するものではないかなと思っております。
それから実効性については、間接侵害規定が緩やかに適用されるということで、そういう意味では、実効性もかなりあるのではないかなと思います。
訴訟がふえるという問題は、別にこの分野ばかりではなくて全体として(笑声)、間接侵害規定が緩やかになったわけですから、特にここを強調する必要はないかと思います。
それから私どもの弁理士会でもこの議論をしておりますけれども、やはり全体としては、認めて川下で規制していくということで、通常実施権の問題については、特に私ども議論しておりませんが、それをやると非常に制度的に難しくなるのではないかと。レイト等ですね。そういった問題を感じますね。
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相澤座長
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大野委員、どうぞ。
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大野委員
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先ほど、間接侵害の場合に、医療機器に限るかどうか、医薬品もそうかどうかわかりませんが、お医者さんの方がそういう権利行使の対象から外されると、間接侵害の当事者というのは、いうならば物を提供している、あるいはサービスを提供している企業サイドがまず一方的にそれを負わなくてはいけなくなると。
従来、ほかの業界ですと、例えば私ども化学工業界も属していたわけですが、化学工業界では、物を提供するときに、物を提供することによって方法特許に触れるという間接侵害が起こった場合には、直接侵害している方と間接侵害とある程度利益が共通する部分もあって、いろんな点での対応をとりやすいのですが、今回の場合に、お医者さんの方は一方的に、最初から侵害者とはならない、あるいは権利行使の対象にならないということになりますと、その辺のバランスがほかの業界とは多少違ってくるのではないかという懸念を抱いております。
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相澤座長
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長井委員、何かご意見ございますか。
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長井委員
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他の業界と違うということは、確かにそのとおりかもしれません。ただ、間接侵害について、例えば米国では、先ほど竹田委員からのお話にも出てましたが、薬の用途というのは新しい用途を見つけると用途特許がとれます。それが2番目、3番目の用途になりますと、今現在、米国では治療方法という形でとれるわけです。Aという薬のある疾患の治療方法と云うことです。治療方法の権利の直接の実施者は医師になるわけです。ところが、製薬企業はそういう治療方法の用途特許を米国でたくさん所持しています。それで企業間では通常の用途特許と同じようにこの治療方法の特許で権利行使しております。そのときに医師は相手にしておりません。アメリカでは、法律で石の行為は免責されています。
このことは、医薬品業界で間接侵害と直接侵害と現実的に何も区別されないで米国では運用されていることを意味しています。即ち、製薬企業では、日米同じように活動していますので、間接侵害だから急に何かが変わるというイメージは全然もっておりません。むしろ今回の間接侵害の規制で要件が緩和されて、より行使しやすくなったと思っています。我が国で直接侵害と同様に権利行使できるというので、行使する側とされる側と立場が違うのですけれども、今どちらかといえばする側でいっております。日本の医薬業界は、そんな大きくないので、権利行使されることも多いわけです。今は一応業界としてはする側の立場です。今後、医薬品業界は発展していくと、当然、我が国でも間接侵害についての権利行使問題が生じてくると思います。
ただ、そのときに業界による違いはあるかもしれませんが、現在の医薬品業界では問題なく受け入れられるとの認識です。しかし、先程の大野さんの話でこの問題も、先端医療というか、この治療技術が医薬分野ではない、機械とかそのほかの分野、大野さんの医療材器分野も関連しているので、その分野にはそういう認識がなかったと云うことになります。そこの分野には新しい考えが入るということで、そういう衝撃はあるのかもしれないなという認識はもちました。
それからもう一つ、先程の竹田委員のお話の中で、薬の使い方ということについての特許があったときに、それを用途特許として認めて、あるいは間接侵害でやるということよりも、医薬自体の特許の保護で充分で、この様な用途特許を保護する必要性が乏しいのではないかという発言がありました。この点について発言します。その薬の使い方という特許という意味は、新しい薬の用途のという話ではなくて、例えば、もう10年も前に使っている薬がある。それを投与の仕方を変えるとか、例えば10日間投与して、次にBという薬をまた10日間投与する。そうすると相乗的によくなるとか、組み合わせたり、投与間隔をあけたり、そういうところに発明がある。その薬の使い方が医薬品自体の特許では直接保護、現在はされておりません。
それを、薬の使い方とか使用の仕方とかに工夫があって、それが非常に今までにない新しい、特別な効果がある。そういうときだけ特許を出願するわけです。普通のときは出願するわけではありません。そういうときにそれに携わった製薬会社、あるいは医師が発明として特許庁に出願して権利をとる。そのときに、権利として特許庁に認めてもらって、権利の行使は医師ではなくて、それに携わった製薬会社等を間接侵害で行使できるようにするという意味でございます。
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相澤座長
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今の点についてどうぞ。
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竹田委員
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私、今、長井委員のおっしゃったような意味で著しい効果を生ずるような治療方法が、、もう十分公知の、周知の医療機器を使って行われた場合でも、今までにないそういう新規な治療方法ですばらしい効果を上げるようなものだけが本当に特許されるのならば、それはそれで意味あると思っておりますが、本当にそうかなというのは、つまり、もっと、治療方法としては、こんなものと思うようなものでも、今までなかった治療方法で、それである程度の効果があったら発明が認められると、それが間接侵害になっていくということになったらちょっとたまらないのではないかという趣旨で申し上げたので、本当に長井委員がおっしゃったようなことで行われるのであれば、私もその点はそれでいいと思います。
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古川委員
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先ほどリスクのバランスということで、医師が権利行使の免除を受けて、医薬品企業等が共同してやる場合に間接侵害に当たるというお話で、医師等はもともと、患者さんに対して治療を適切に行うということが本来の趣旨でありまして、それを業務によって対価を、患者さんから報酬をいただいているという形になるわけですね。医薬品企業というのはもともと会社ですので、最終的には営利を上げていくことが会社の目的とされているわけですので、そうしますと、ある程度の経済的なリスク、あるいは特許権に関する調査等もやはり、私自身は当然、医薬品企業の方がしょっていただくと。だから、提供すべきものかどうかという判断もやはり医薬品企業の方で行っていただくべきではないかという、現状においてはそういう認識はまだ変えられないと思っております。これは医療行為においても、本当に営業性というものが公認される事態になれば変わってくると考えております。
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相澤座長
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宇都木委員、どうぞ。
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宇都木委員
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今もっぱら侵害行為が行われた後のお話をされているのですが、私は侵害行為が行われる前の診療の場面ということばかりを考えているのです。私、よくわからないのですが、きょうの資料1の3ページの下の方に、「差し止めを行うことが可能」という図が出ているわけですが、もしこういうことが可能であったとすると、お医者さんとしては、自分の目の前にいる患者に最善の治療をしたいと。しかし、こちらは特許権がかかるので高くなると、そういうふうに考えてよろしいのですか。
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宇都木委員
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の下の図のところで、右側の四角いところに、「差し止め等を行うことが可能」になると。ある種の行為について。
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木村制度改正審議室長
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3ページのポンチ絵がちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、基本的には、医師の方が最善の治療を施していただくということそのものは、それ自身、差し止めの対象にはならないという理解をしております。もちろんそれに対しても差し止めができるという法制度もあり得るとは思いますけれども、少なくともそれでこの場でコンセンサス得られることは全くないと思いますので、そういう意味でいうと、仮に69条のようなルートで川下で規制した場合、少なくとも医師の方が差し止めの対象になるということはないです。
ただ、実際問題、その医師の方が最善の治療を行うために必要な薬剤、器具をどうやって調達するのかということになると、それは特許権者から調達をしていただくというのが基本形にはなろうと。そうでないと、共同不法行為というふうに、この長井委員からお出しになられた紙にも書いてございますけれども、それになる可能性はあって、もちろんその場合も医師は無答責になるわけですけれども、供給した方は特許権侵害が問われるということになる。
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宇都木委員
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そうすると、医師は患者の前でそういう説明をしなければならないことになるのですね?
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木村制度改正審議室長
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それはちょっとまた別の問題かもしれませんけれども、現実にはそういう場面も……。
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宇都木委員
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そういうことなのですね。そういうことをちょっと理解しておきたくて……。
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相澤座長
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古川委員、どうぞ。
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古川委員
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宇都木先生、その点が、現在、我々自身は、薬事法、あるいは療養担当規則においても、禁じられているのですね。新規治療法自体が。物を受けて試行することでしょう。新しい物。だから、そこのところには業として提供を受けてやると、それはもちろん共犯に問われますので、現時点でやはりできないのですね。
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宇都木委員
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新規ではなくなるわけですね。全く新規のものではない、市場には出ているものになりますね。
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古川委員
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その場合は、薬価がついておりますので、薬価にのっとって支払われることになると思います。だから、医師自体は何の心配もないわけですよ。
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宇都木委員
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医師自体はというより、薬価の中にそれが入り込んでくるという形で、患者の側としては選択が生じてしまうという、そういうことでしょう。
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古川委員
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現時点でも、患者の自己負担というのにはいろんな方法で差異が生じておりますが、だから、我々は抗ガン剤をやりますかやりませんかという選択は患者さんに委ねております。で、自己負担分が幾らぐらいになりますかというのは現時点でもやはりあるわけですね。多少の自己負担分が生じるのは。それだけお金を支払うのは嫌だという方にはやらない場合もありますし、これは現時点においても広く医療に妥当することでありまして。自己負担分のことをいうと。
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宇都木委員
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そういうことならば、結局、そういう度合いが少し強くなると思っていいわけですね。
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古川委員
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度合いが強くなるという観点はないと思いますが、現時点で、これは国策によると思うのですね。一律無償にしろということになれば、それをとってくれるかどうかは特許の問題でなくて、厚生労働省の考え方、国としての方針になりますので、今自己負担がどんどん上がっているという現状は関係ないと思いますけれども。ここでの議論とは。
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相澤座長
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時間になりましたので、本日の委員会はこれぐらいにしたい。ただいまの宇都木委員のご質問の件につきましては、次回までに整理をしてご返事をしたいと思います。よろしゅうございますか。
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宇都木委員
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先ほどの澤先生のお話しになったことですが、医師の行為については規制は全くないという点では、もう一度繰り返しておきます。大野委員が先程薬事法上のこととしていわれたことは、企業の立場からのお話でしかないのです。したがいまして、安全性の問題というのはやはり残っていると。
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相澤座長
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今の点についていいますと、特許法は、排他権を与えるということが原則でございまして、当該行為をすることについて何らの合法性も与えるものではないということでございます。安全性に関して、これは医薬品でも同様でございますか、何ら触れるものではないのです。
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澤委員
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そうではなくて、いわゆる研究は特許を与えられないでしょう。今は特許を与えられないですね、臨床研究に対しては。治療というのは、臨床研究に安全性が加わって初めて治療になるのです。今、全世界的にそうですよ。それは共通認識ですね。だから僕は、先端医療技術と特許過程というすごく矛盾した2つの存在を今日の議論の中で感じてしまうわけですよ。
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相澤座長
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今先生がおっしゃったことにつきましては、もう時間が押しておりますので、もしよろしければ、先生からご意見を事務局の方にいただきまして、それにつきまして次回答えさせていただくという形でいかがでございましょうか。
活発なご意見、ありがとうございました。本日議論しました特許法における医療関連行為発明の取り扱いの方向性につきまして、ご指摘いただいた点につきましては、一たん事務局で整理させていただきました上で、次回以降さらに具体的に議論していくこととさせていただきたいと思います。宇都木委員、澤委員のご意見についても同様でございます。
それから、次回のワーキンググループにつきまして事務局よりご説明させていただきます。
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木村制度改正審議室長
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次回のワーキンググループの日程でございますけれども、12月5日、14時からの開催を予定しております。よろしくお願い申し上げます。
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相澤座長
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では、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第2回医療行為ワーキンググループを閉会させていただきます。
本日は長時間ご審議いただきまして、どうもありがとうございました。
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