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第4回医療行為WG 議事録

特許庁総務部総務課
制度改正審議室

  1. 日時:平成15年4月2日(水曜日) 10時00分~11時30分
  2. 場所:特許庁庁舎 特別会議室
  3. 出席者:相澤委員、宇都木委員、大野委員、片山委員、熊谷委員、澤委員、竹田委員、津國委員、長井委員、古川委員
  4. 議題:医療関連行為に関する特許法上の取扱いについて(案)
議事録

相澤座長

若干早いようですが、皆様御揃いのようなので始めさせて頂きます。本日は御多忙の中、御参集頂きまして誠にありがとうございます。早速議事に入らせて頂きます。それではまず本日の議題であります「医療関連行為に関する特許法上の取扱いについて(案)」を事務局より説明させて頂きたいと思います。

木村制度改正審議室長

それではまず配付資料の確認をさせて頂きたいと思います。本日の配付資料ですが、資料1、これは委員の先生方の名簿です。資料2、これは後ほど御説明申し上げます「特許法上の取扱いについて(案)」ということで、本日、ワーキンググループの取りまとめ案としてのたたき台としてお示ししているものです。参考資料集が付いていまして、参考資料の1、これが特許法の関連規定の抜粋。参考の2として、現行の審査基準ですが、それが付いています。過不足等ございませんでしょうか。
それでは資料に沿いまして御説明したいと思います。まず冒頭、この場をお借りしまして、事務局の不手際により前回のワーキンググループ、準備しておりましたが、急遽、延期させて頂いたということについて、改めてお詫びを申し上げたいと思います。
資料の2を御覧頂けますでしょうか。これまでの3回にわたる審議、各委員の先生方とのやり取りを踏まえ、事務局の方で、コンセンサスを何らかの形でお作り頂く上での原案として作成したものです。それでは資料に沿って御説明を申し上げます。まず、1でございます。医療関連発明への特許付与を巡る状況ということで、これまでの経緯、現状についてまとめております。(1)ですが、再生医療等関連技術に対する特許付与の要請ということで、これは昨年7月に知的財産戦略会議が「知的財産戦略大綱」をまとめられたわけですが、そこで具体的に指摘を受けているわけです。中身としては、近年進展の著しい再生医療及び遺伝子治療関連技術については、特許法における取扱いを明確化すべく、2002年度中に法改正及び審査基準改訂の必要性について検討し、結論を得るということになっております。これを受け、昨年の10月以降、法改正及び審査基準改訂の必要性について検討すべく、本ワーキンググループが設置されたということで、この部分はイントロダクションになるわけです。
現在、医療関連の発明についてどういう特許が付与され、あるいは付与されていないかということについて(2)でまとめております。まず、医療機器、医薬品について、それ自体「物の発明」、あるいはそれらを生産する方法が「方法の発明」として特許付与の対象となり得るということは御承知のとおりです。それに対し、「人間を手術、治療又は診断する行為」については、特許付与の対象としない運用を行っているわけです。具体的には、現在の特許審査基準において、「人間を手術、治療又は診断する行為」は「産業上利用することができる発明」には該当しないという整理に基づいて、特許付与の対象から除外しております。この背景ですが、基本的に医学研究は、やはり研究開発競争にはなじみにくいのではないかという政策的な理由、あるいは、医療行為の場合は、特に緊急性が高いということもあって、実施に当たって特許権者の許諾を求めなければならないというのは不当ではないかという人道的な理由などが言われておりまして、また、やはりヒトを対象とする医学研究は最終的に被験者の協力なしには行い得ないものであって、研究者には非常に高度な倫理性、すなわち、医療倫理、あるいは研究開発上の倫理というのが要求されるという特性を有するというのが背景として考えられるわけです。
過去、例えば昭和40年代の審査実務の頃まで遡りますと、人体を構成の必須条件とする発明は、産業上利用することができるものとは認められないということで、そういう拒絶の仕方をしていた時代もありまして、この頃は頭髪のパーマネント方法のようなものであっても、利用可能性を否定するという整理になっていたわけです。その後、昭和50年代になり、人体を構成の必須条件とする発明という要件を維持したまま、診断方法、治療方法等の発明は産業上利用することができる発明ではないということで改め、さすがに頭髪のパーマネント方法といったようなものについては特許付与の対象として認めるという運用に変わっておりますし、平成5年の審査基準の改訂の時に、人体を構成要件とするという旨の記述は削除されて現在に至っているということです。
審査基準では、いわゆる典型的な人間を手術、治療又は診断する方法以外であっても、「人間から採取したものを処理する方法」のうち、「採取したものを採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法」、いわゆる自家のものについては、その処理方法等について、独立したものとして観念することができなかったということがあったんだろうと思いますが、「人間を手術、治療又は診断する行為」に該当するということで、特許付与の対象とはならないという運用になっております。この基準に従いますと、例としては、人工透析方法については特許付与の対象から除外をされますし、今回典型的に議論になっております皮膚の培養方法、細胞の処理方法等についても、自家の場合については同様に特許付与の対象から除外するということになるわけです。この結果、同じような方法であっても、他家の場合には特許付与が認められ、自家の場合は認められないという運用になるわけです。これらが現在の特許付与の現状であるということで整理をさせて頂いております。
(3)ですが、医療関連行為発明に対する特許付与を求める要請が起こっているということでまとめています。まず、研究開発の促進、産業振興の観点ということで書いておりますが、再生医療あるいは遺伝子治療の関連技術の中には、皮膚の培養方法あるいは細胞の処理方法等、医師のみならず、医師の免許をお持ちでない方もできる、そういう行為があると。医療現場を離れて受託事業の確立といった新産業として成長が見込まれているような分野があるけれども、これらについて自家の場合に該当すれば、たとえその方法の中に採取方法や接種方法が含まれていない場合でも医療関連行為として、現在は特許性が認められないということになるわけで、これはやはり当該分野、特に外での産業が見込まれる、産業性が認められるような分野について、やはり事業化の促進、あるいは新たにそういう新技術に基づく医療製品にアクセスすることを容易にするといった観点から、こういう技術を特許権によって保護してほしいという要請が様々な方から寄せられているということです。
3ページですが、法制上の観点ということでまとめています。これの一つの大きな、エポックになっておりますのが、東京高等裁判所の昨年4月の判決です。この判決では特許庁が勝訴をしているわけですが、具体的な理由の中で、医療行為を含め一般的にいえば、「産業」の意味を狭く解さなければならない理由というのは本来的にはない。現行特許法の解釈の中で医療行為自体も産業上利用することのできる発明に該当するという原告の主張は傾聴に値する、ということを指摘されているわけでございます。他方、医薬や医療機器と医療行為そのものとの間には、特許性の有無を検討する上で、見過ごすことのできない重大な相違があるということで、判示事項の中身を見ますと、やはりお医者様にとってその能力を最大限発揮すべき局面に置かれた時、やはり方法の特許というのが障害になるという可能性があり、これは、医薬品とか医療機器について特許が認められているということとは性質上同じではないのではないかという指摘がその中に含まれているわけです。何れにしても医師に特許権侵害の責任を追及されることになるのではないかと恐れさせるような状況に追い込む特許制度というのは、適切ではないという指摘を受けているわけです。
丸3ですが、政府の各フォーラムにおける指摘ということでまとめております。一つは、バイオテクノロジー戦略大綱でありまして、ここで医療関連技術(再生医療など)ということで、それの特許法における取扱いの明確化について検討し、早急に結論を得るべきであるということを指摘されております。総合科学技術会議の「知的財産戦略について」、昨年12月にお出しになられたものですが、「自家を含む生物由来製品の加工・処理・生産等に係る発明等、先端医療技術に係る発明」は特許されるべき発明であり、直ちに審査基準の改訂と、法改正の準備ということで、具体的な措置が講じられるべきであるというまとめになっております。これの前提として、昨年の6月ですが、中間まとめというのが公表されておりまして、この中ではやはり生物由来製品の生産等が医師以外の方によって担われる傾向があると。こういう環境変化の中で、生物由来製品の加工・処理・生産に係る医療関連発明について特許化を図るべきではないかという御指摘になっているということです。
4ページです。医療関連行為発明の特許付与に関する諸外国の状況ということで、諸外国でどういう取扱いになっているかということです。まず、TRIPS協定ですが、これは、各加盟国は、新規性、進歩性、産業上利用可能性のあるすべての技術分野の発明に対して特許を付与すべきということを原則にしております。他方、「人又は動物の治療のための診断方法、治療方法及び外科的方法」は、この原則によらず、特許の対象からは除外できるということが明文で規定されております。加盟国は特許権者に対して一定の排他権を付与するということで、いわゆる普通の特許権をきちんと与えるべきだということなんですが、第三者の正当な利益を考慮し、限定的な例外、権利行使の例外のことだと思いますが、「を定めることも出来る。」という書きぶりになっているということです。
欧州ですが、EPC、欧州特許条約によると、従来は治療方法、診断方法のような医療行為に関する発明は産業上利用可能ではないということを、我が国においては解釈でやっておりますが、欧州の場合は明文で規定をしているわけです。他方、2000年になり、TRIPS協定との整合性を高めるということからこの規定を改め、治療方法、診断方法等の医療行為を産業上利用可能か否かではなくて、不特許事由に該当するのだということを正面から明記するということに方針を変更しておりますが、結論においては変更されていないということかと思います。但し、医療関連行為発明のうち、皮膚の培養方法、細胞の処理方法のようなものについては医療行為とは解されない。従って特許権を付与されるという運用になっていると承知しております。
英国、ドイツ、フランスにおいても、基本的には同様の取扱いになっているものと承知しておりまして、特にフランスなどを見ますと、人間又は動物の身体について、処置方法ということで書いており、動物に対するものについても不特許という状況であるようです。
他方、米国ですが、アメリカの特許法には不特許事由に関する規定というのは存在しておりません。従って、医療関連行為発明に関する特許出願というのは新規性、進歩性といった特許要件を審査され、拒絶理由がなければ特許権が付与されるということです。他方、1993年に白内障の手術方法について特許権を有していた医師が特許権侵害によって別の医者及び病院を訴えるという事件が発生し、それを契機に特許法が改正され、原則として医師等の医療行為には特許権の効力は及ばないという改正、いわゆる川下規制と呼んでおりますが、そういうものを導入しております。但し、その場合でもバイオテクノロジー特許などについては、やはりそういう例外が及ばないと言いますか、それが特許侵害となる態様で実施された場合には、やはり差止・損害賠償の請求権が及ぶということになっています。但し、96年改正法が適用される場面で表面化した具体的な紛争事例というのは、私どもとしては必ずしも承知をしていないということで、これは過去のワーキンググループにおいても御紹介申し上げたとおりです。以上が、今までのまとめ、現状についてのまとめということになります。
6ページですが、再生医療に係る処理方法の取扱いということで、一節を当てさせて頂いております。今まで申し上げてきたとおり、人間から採取したもの、例えば細胞、皮膚といったものを原材料として医薬品や医療機器、例えば培養皮膚シートを製造する方法については、現在、製造された医療機器を他者に移植する場合、すなわち他家であるか、あるいは同じ者に戻すか、すなわち自家であるかによって特許付与の有無を区別しているわけです。これは後者が「採取したものを採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法」に該当し、結果として「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当してしまうということで、従って今まではこれについても医療行為全体の中での不可分一体性と言いますか、そういうものを観念して、自家については拒絶をしてきたという運用があるわけです。下にポンチ絵がありますが、人体がありまして、そこから切除したり摘出したりする方法、これが当然お医者様でないと行い得ない行為ですので、これは医行為であろうということです。皮膚等の培養というものも、独立してそれが観念できないということであれば、当然、医行為の一部をなすものだと思いますが、これを医師以外の方が実施可能になっている状況が生まれてきているというのが現状認識です。更にその後、人体への移植ということになりますと、それも基本的にはお医者様しか行い得ない医行為ということになろうかと思います。今回、焦点として考えておりますのは、真ん中の大きく書いた部分であり、ここに光を当てて、この部分について何らかの特許性を認めるかどうかという議論になるわけです。
絵の下のところですが、こういった行為が医療現場を離れ、企業において行われるようになりつつある現状を考えますと、少なくともこれらの技術は、これらの技術と言うのは皮膚等の培養方法のことですが、産業上利用可能であるということで解釈ができるのではないかと考えてはいかがでしょうかということです。他方、これについて、安全性が担保されることが非常に重要であるという御指摘を頂いております。人間から採取したものを原材料として医薬品、あるいは医療機器、培養皮膚シートというのもこれらに該当するわけですが、そういうものを製造する方法は、自家か他家かを問わず薬事法上の製造方法に該当すると認識をしております。そのため、こうした医薬品や医療機器を市販するため業として製造するには、当然薬事法に基づく承認を得ることが義務づけられる。当然、違反には罰則が課せられるということになるわけで、言い換えるとこうした製造方法を実施するに当たっては薬事法に基づき安全性を確保されていることが、医療現場を離れた産業上の利用可能性を裏付けるものになっているのではないかとも考えられるわけです。従って、こうした製造方法について、特許付与の対象とすることは安全性の担保等の観点から慎重な検討を要すべきという要請に対しても、そういう要請も満たすものではないかと理解をしているわけです。
7ページですが、今回、議論の中では医療関連行為一般についての取扱いについても議論がなされたわけです。他方、本問題について、現時点では特に以下の点について議論が尽くされたとは言えない状況ではないかということで書いております。まず一つが安全性の担保の問題。これについては、特許付与の対象とするのであれば、やはりその前提として当該分野の安全性というのが確保されているべきであるという御指摘。それから、ある方法について特許を認めると、その方法に何らかの、国がお墨付きを出したというような認識が広まることによって安全性まで認められたかのように受け取られるのではないかという懸念もありました。他方、医療関連行為の安全性は特許法以外によって担保されるべきではないかということで、確かに現在、原則として特許の審査の中で安全性それ自体についての審査をしているというわけではありませんので、それは薬事法なり別の法体系なりによって担保されればいいのではないかという御指摘もあったわけです。
(2)で、医療研究に関する特殊性という書き方にしておりますが、ヘルシンキ宣言にもあるように、このヘルシンキ宣言と申しますのは、被験者に対する配慮が科学的あるいは社会的利益よりも優先されなければならないといった、まさに倫理に関する宣言だと思います。そういうものにもあるように、医療というのは、やはり患者、被験者の方と医師との両方で行っていくものであるので、その成果が医師または特定の企業の専有物であるといった考えには違和感があるという御指摘。他方、近年は大学にもTLOができて、若い研究者を中心に積極的に特許化に関与するという傾向も出てきているので、従来のいわゆる医学研究は競争にはなじまないということだけでは、そういう世の中ではなくなってきているのではないかという御指摘も当然あるわけです。他方、ある治療法に関して、臨床試験に向けた患者の承諾、あるいは倫理委員会の審査といったものが必要になるわけですが、正規の手続きをきちんと踏んでそれに時間が要しているという段階で、第三者が必ずしもそういう手続きをきちんと踏まずに試験を行って、その成果を得て、同じような発明に到達した場合には、日本の特許法は先願主義を取っておりますので、その第三者が先願となれば第三者に特許が付与されてしまうと。こういうのはやはり問題があるのではないか。研究開発プロセス上の倫理の問題と言いますか、そういう御指摘もあるわけです。
(3)ですが、現実のニーズを踏まえた政策的必要性ということです。医療関連行為に用いられる医薬品、医療機器の発明に対して特許付与が認められているというのが現状で、医療関連行為一般の方法についてもやはりニーズはあるんだということで、これらについも特許付与を認めるべきではないかという御指摘がありました。やはり特許が認められることにより、資金回収が容易になる。やはり自らの研究開発成果を守ることができるわけですので、それによって投資もでき、回収もできると。そのことにより、投資リスクが軽減されるのではないかという御指摘がありました。他方、方法の発明に関して、医療一般に関し、特許が付与されなければ直ちに事業遂行に支障を来すというような具体的な事例は必ずしもまだ顕著ではないのではないかという御指摘。あるいは権利行使において間接侵害規定のみが適用可能な特許付与の在り方。これは若干説明を要すると思いますが、仮に川下規制のようなものを設けて効力除外規定を置くといたします。アメリカ型の特許制度というものを想定しているわけですが、そのような場合は、基本的には直接実施する方というのは、その責めを負わないことになりますが、間接侵害ということで、そういうものを幇助するような格好になった企業の方には、その侵害として責任が及ぶという体系になりかねないということで、これはやはり特許法の精神に反しているのではないかというお考えもあろうかと思います。こういう議論が今まで、この他にもいろいろとありますが要約しまして、こういう状況になっているということを踏まえますと、医療行為一般を特許対象とするということの是非については政策的な必要性、現実的な影響等について議論の積み重ねが必要であるということで、現段階で合意を形成するには至らなかったということでまとめさせて頂いております。
最後のページですが、特許権の行使制限規定を置くことの是非ということです。過去のワーキンググループにおいては、やや法制度論的な議論が先行してしまったようなところがありました関係で、川上規制、川下規制といった議論にかなりの時間を費やしたことは事実ですが、しかしながら3で述べましたように、現時点において、医療関連行為一般について、これを特許付与の対象とすることについて合意を形成するに至らなかったということにかんがみますと、この点についても今回結論を得ることとせず、再生医療に係る今後の運用状況を見ながら、その必要性、行使制限規制を置くことの是非についても判断をしてはどうかということでまとめさせて頂いております。
5としまして、最後に、具体的な措置です。いずれにしても、今回仮に何らかの取りまとめをして頂くということになりますと、それを踏まえて、私ども特許庁としては、相応の措置を講じていく必要があります。具体的には、現在の特許審査基準において、「採取したものを採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法は、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当する」という整理にして一般的に特許付与の対象からは除外をしておりますが、このうち「人間に由来するものを原料又は材料として医薬品又は医療機器、例と致しましては培養皮膚シートや人工骨といったものを製造する方法」については、同一人に治療のために戻すことを前提とするのであっても特許付与の対象とするようそれを明示するということで速やかに基準の改訂を行うべきではないかということを提言の内容として書いております。なお、医療関連行為に関する特許法上の取扱いについては、まずこういう基準改定による出願動向、あるいは研究開発活動への影響等について、今後とも注視をしていくことが適切ではないかということでまとめさせて頂いております。以上です。

相澤座長

それでは、ただ今、事務局から説明のありました「医療関連行為に関する特許法上の取扱いについて(案)」につきまして御討議頂きたいと思います。どなたからでもどうぞ。熊谷委員どうぞ。

熊谷委員

今回の取りまとめが現段階のWGにおける最大限のコンセンサスであることに間違いないかと思います。ただ、あくまで個人的な見解ですが、今回のWGは議事録が各委員の名前も含めてすべて公開されておりますので、WGにおける議論は、今回の取りまとめに加え、議事録からも方向性が示されていることが大きな意味を持つのではないかと思います。
それともう一点。やはり国際調和ということを考えた時に、アメリカの制度は違うと致しましても、やはりヨーロッパの制度には、注視していく必要があるのではないかと思います。それで、取りまとめにまとめておられるように、ヨーロッパではまだ条約が発効していないのですが現在、産業上の利用可能性なしとして運用している各国も当然条約の改正が発効されれば、国内法も改正されるということは明らかであると思います。以前このWGでもお話ししたと思いますが、EPCの25年間の運用なり、異議決定や審決の動向を見れば柔軟かつ、相当弾力性のある運用がされていると思います。それは今後審査基準を検討して頂く時、御検討頂ければと思います。今朝の新聞にも記事がございまして、どのような内容の基準にして、それをどのように適用していくのかについては、以前、竹田委員もおっしゃったことですが、速やかに審査基準の改訂をなさるということですが、いつからそれが適用されるのかについては産業界も非常に大きな関心を持っています。結論として、今回の取りまとめが現段階におけるコンセンサスであると思います。

相澤座長

ありがとうございました。古川委員どうぞ。

古川委員

今の熊谷委員の御発言にも関連するのですが、現在の、一番の最小レベルのコンセンサスがここに出ているわけでありまして、確かに第2回の後半半分ぐらいと、第3回のワーキンググループについては、ここに書かれたまとめの3と4について事実上話し合われたわけですね。そこは結局、結論としては全く飛んでしまったということで、確かにホームページを御覧になった一般の方々にはどういった議論がされたかということは伝わるのですが、ここで、審査基準を改訂するとしても、今後また数年のうちに医療技術というのはどんどん革新されるのですね。そのうちに、おそらく次の問題というのが徐々に出てくると思いますので、それと平行して、今回これだけの議論があったというのは、まだやはり我々としては尽くすべき議論があるのではないかと考えていると。今後とも検討が必要であるぐらいの積極的な継続的検討の必要性というのを明示して頂きたいという気が致します。最初の目的として、法的手続として何をやるかということもあったわけですが、結局それをやらないわけです。運用をどこまで流動的にするか、そういった解決ではなくて、やはりある程度の法手当を目指して、この問題を継続的に審議していくべきだろうというように考えています。

相澤座長

ありがとうございました。大野委員どうぞ。

大野委員

取りまとめを拝見して、医療関連特許の特許対象範囲というのは広がったという意味では、私ども産業界から要請してきたことが一つ実現したということではいいかと思います。ただ実際には、私ども医療機器業界として先端医療分野での医療関連行為発明を特許対象として認めてほしいというのが一つの意見だったのですが、今回の取りまとめで見る限り、これは再生医療と一部の遺伝子治療の分野しか、特許対象にならないのではないかという気が致します。そういう意味では今のお二方の御意見と一緒ですが、必ずしも十分とは言えない。一歩前進ではあるが十分とは言えないのではないかというふうに思います。
それともう一つは、医療行為の実体の中身はいろいろ変化してきているという、技術進歩との関係がこれで十分反映されるのだろうかという懸念がございます。今後もそういう意味で、医師自身が直接関与する部分、医療技術者その他の専門家が関与する部分など、とくに先端医療分野では医療の実体がいろいろ変化してきているという事実をよく踏まえた対応が今後とも必要ではないかというふうに思う次第です。
それからもう一つ。今回提起された問題の中で、産業界からの意見ではなしに、司法の方から出された疑問が一つあるかと思うのですが、何ページ目でしたか、法制上の観点として出されているものの中に、「医療行為も含め一般的にいえば、「産業」の意味を狭く解さなければならない理由は本来的にはなく」という指摘がございます。それで原告の主張は傾聴に値するということを言っておりますので、これは現行審査基準のベースを問われたということかと思うのですが、そのベースを問われていること自体は、今回の取りまとめにより、審査基準を改訂しても基本的に問題として残っているのではないかと。そういう意味では、この問題については宿題として残されていると考えていいのではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。

木村制度改正審議室長

幾つか御指摘を頂いたのですが、まず熊谷委員がおっしゃられました審査基準を今後どういうふうに運用するのかということについて、産業界が関心を持っているということなんですが、仮に本日取りまとめができるということでしたら、この後の段取りとしましては、最後にまた御説明を申し上げたいと思いますが、基本的にはこれについてパブリック・コメントを募集し、且つ特許制度小委員会に報告をさせて頂いた上で、審査基準は速やかに改訂をしたいというふうに考えております。時期的には、まだ何月何日というようなことは当然申し上げられないと思いますが、今夏頃を目処に何らかの形で新しい運用というものができるのではないかというふうに考えているところです。古川委員から御指摘がありました点、それから大野委員からも御指摘を頂いた点。今回の議論というのは必ずしも、前進は前進かもしれないけれども、完全なものではないのではないかということですが、私どもとしましては、3、4に書かせて頂いた線で、やはり基本的なところの大きな価値と言いますか、そういうものの御見解の幅というのがかなり大きいという認識を受けておりまして、やはりこれは事務局、私どもの反省でもあるのですが、やや制度論的なところに議論を収斂させ過ぎたようなところがあったのかなというふうに思わなくもありません。やはり安全性の問題、あるいは医療倫理の問題、逆に言えば特許性を認めていって、そのことによって特許法の1条に書かれているような産業振興というのが、どのような形で果たされるのかというような原点に立ち返った検討というのが何らかの場で行われるということがありませんと、ただ闇雲に議論を続ければいつかは結論が出るということでもないのかなという印象を、率直に言って持っているということです。他方、もちろん、ニーズが現に存在しておりまして、その分についてきちんと対応をしていかなければならないということは、まさにおっしゃるとおりですので、それについては私どもとして最大限、努力をし、安定した運用になるということを心掛けていきたいというふうに思いますし、その運用の状況を引き続き注視をして頂ければありがたいなというふうに思っております。

相澤座長

竹田委員どうぞ、それから宇都木委員お願いします。

竹田委員

今回の取りまとめについて、大まかに言えばこういう線で、このワーキンググループの報告書をまとめて、現状から見れば必要性の点では一歩前進できたということで、それはそれなりに評価できると私も思っています。3人の委員さんが発言されたように、ここでの議論は今までの議事録等を通じて見ても当然にお分かり頂ける議論の流れとか方向があると思うのですが、それを踏まえて言えば、やはり今後も医療行為発明一般についてどうするのかということは検討していかなければならないと思います。ただ、検討に当たって、私も一番最初の第1回の委員会から申し上げておりますが、果たして医療・治療方法発明全体について特許性を認めることにおいて、特許法1条の産業の発達に果たしてそれが貢献するようなものとして特許性を認めていくことができるのかどうか等に含めて、3で今回の報告書に書かれているようなことについては更に議論を尽くしていくべきだと思っています。ただ、ここで審査基準を改訂して、再生医療とか遺伝子治療について特許性を認めることについて、私は全く異論はありませんし、それはそれで前向きの解決として評価しているわけですが、ただ、法改正をやらない場合の一番の問題点は、やはりその特許が認められて、医師の治療行為に対して権利行使がなされた場合だろうと。その点については法的な手当を現段階ではなされていないわけです。たぶん、日本の司法がその場合にどう対処するかという問題は起こると思いますが、違法性の阻却に関する議論等を使って、医師の治療行為等が妨げられないような法的解釈も考えていくのではないかと思いますが、法的な裏付けがないという点で問題を残すことになると思います。ですからその点については、できるだけ、可及的速やかに対応がどうしても必要なところだと思います。そういう意味では、一番最後のまとめのところですが、最後の1センテンスで、なお、医療関連行為に関する特許法上の取扱いについては出願動向とか研究開発活動への影響等について、今後も注視していく必要がある、ということにはもう一つ、それによって取得された特許権の行使がどのような形態において行われていくのかということについても十分な注視が必要だという視点は入れた方がいいのではないか、そのように思います。以上です。

相澤座長

ありがとうございました。宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

私も全体は、いろいろな意見を大変よく入れてくださったいい報告だと思っておりますが、一つ、今の時点でこういうことを申し上げてあれなんですが、他家移植の場合については、これは明らかに製品として市販されますから、ここの文章はそのまま適用になるのですが、自家移植の場合は市場に出ませんし、現在のところ、厚生省の規制が十分にというより、要するにやはり、かかっていない場面なんですね。6ページのところで、安全性が確保されたという認識だと先程御説明をなさったのですが、もっと私が早い時期でこういうことを申し上げるべきだったと思うのですが、これは先程の熊谷委員の、いつからこれが行使されるのかという問題とも絡むのかと思うのですが、具体的に言えば、自家移植のために、今明らかに医療機関と外のところで培養がなされて、また医療機関に戻されて患者さんにというところがあるわけですが、そこのところに何らかの形で安全性が確保される状況が整っているということを条件にしてこの答申というのを作って頂くことはできないでしょうか。

古川委員

宇都木先生にちょっと、現実の実状について言いますと、結局、自家移植の場合に培養する過程を、外で繋いだ産業上の形にこれを製品化して販売していく。この場合には必ず薬事法の規制がかかるわけです。薬事法上の製造承認、あるいは認可を取った場合でなければ薬事法違反として刑罰も付いてくる。今、そういう規定になっております。一方、医師が自分の監視下でやる場合、これは具体的な、相当な安全方法を示して、施設内知見審査委員会の審査を経ています。それで大学の研究の一環として終わっている。今でも非常に安全性の低い、確認されていない医療法が移植医療にせよ、エイズの治療にせよ従来行われている。これは大学の倫理委員会において厳正な審査を経ております。一方、業者、第三者から提供されるような臨床行為というものについては、薬事法の規定を適用するというのが今現在の厚生労働省の考え方であります。国内の業者から提供されるものを用いる研究は、薬事法上のスタディとすると。そういう運用をとっておりますので、これは安全性を確保されるというわけであります。他方は医師の倫理性によって、大学あるいは研究機関の倫理性によって一応、安全性が担保されている。これを問うならば、また厚生省が医師一般の医療行為について、新たな安全性の倫理基準を作らない限りは無理ですね。特許が関与する、産業上あるいは医師以外のものが提供する、あるいはそういったものに関わる過程というのは必ず薬事法上の審査を経るようになっている、そういう運用になっていると思いますけれども。

相澤座長

ありがとうございます。片山委員どうぞ。

片山委員

今朝の新聞の論調も関係するのですが、この安全性の問題が新聞に出ていたと思うのです。私自身として、やや残念なのは、安全性の問題と特許性の問題とは我々の目から見ると確然と区別がされる話で、安全性の担保というのは、基本的には医療一般の問題として、例えばここにも書いてあるとおり薬事法の問題だと思うんです。特許云々とは全く無関係に医師がいろいろな治療方法をトライされる、患者に対して、医師が全責任を持ってやられるということで、我々の目から見ると特許とは全く別の世界ではないか、そこは既に解決されている問題ではないかという感じが私自身はしております。その点について、この委員会で踏み込むことが不十分であったということであれば極めて残念だという気がします。一方、理屈の上では非常にはっきりした話のように思えますので、このレポートとして、安全性の担保というのを3.のところで最初のポイントとして挙げるのは違和感がありました。医療研究に関する特質性、現実のニーズというものが重要なポイントで、安全性は参考事項や、注記のような形で扱われるべきものかなという気がしております。ただ、一般の方あるいは医師の世界で、それが誤解をされている現実があるということもおそらく現実なのでしょうから、逆に発表される際の取扱いについては、そこは切り離された世界なんだということを是非強調して頂いてマスコミの方に理解を頂ければと思います。

宇都木委員

今おっしゃったとおり特許と安全性の問題は全く違うレベルの問題だということを私もある程度は理解しているつもりなんですが、ただ現実に、安全性の方の現在の状況、今古川委員が御説明なさったことはかなり不正確だと私は思っておりますので、そこの点についてはもう少しきちんと捉えておかないといけないです。もちろん厚生省の行為について、あるいは安全性について特許庁が責任を持てと言っても持てるわけはないということは分かっておりますから、ただ、現実の動きを見てみますと、日本の中での安全性についてのシステムがきちんとしていないということを前提にするというか、今おっしゃったように注にするというのも一つの、あるいは手なのかもしれません。考え方としては。注にする以上、むしろ条件のような形にすることはしやすくなるのかもしれません。ですが、例えば企業で細胞培養ということが特許化されれば、企業は企業活動がどんどん広がっていくことを前提に特許化する、それを目的として特許化するわけでしょうから、広がっていくということを当然考えなければならないわけですが、その際、先程古川委員が臨床研究という形できちんと捉えるということをおっしゃっておられて、これは私、考え方だと思っておりますので、そういうことであればそれはいいのですが、これが特許化されてしまった場合には臨床研究の段階でなくなっていくと思うんです。ですので、そういう今後の動きを考えていくと、やはりどうも、どこかで特許庁のすることではないんだけれども、日本の中で安全性が確保されることを前提としてそれが企業活動に移っていっていいんだというような論理というのを作れませんですかね。

古川委員

余りお互いに言い合うべきではないですが、私の御説明したことは別に不正確ではなくて、先生が不正確だと思われるのはなぜかというと、規制すべき薬事法違反を厚生労働省が規制していないからなんですね。法的には規制が行われているのに、摘発が行われないものですから、事実としてやっているということをおっしゃって不正確とおっしゃったんだと思います。薬事法上の適用上は規制されているんですね。だからそこは薬事法で安全性を確保すべきと考えているんです、法の趣旨は。一応法体系はあるんだけれども事実上どこまで規制できるかというと、それは官僚の方々の努力によっておりますので、我々にはどうしようもないところだと思いますね。また医師一般の診療行為についての臨床研究ということは御理解頂いて、特許制度上にすると問題があるという御発言でしたと思いますけれども、実は特許というのは臨床研究になるずっと以前にたくさん積み上げられてしまっているのが現状なんですね。医薬品の臨床試験一つ始まるのでも何十、何百という特許があって初めて成り立っていて、臨床研究に持ってくる段階で既にかなりの特許が成立しているものがようやく臨床研究にのってくるというのが事実上でございます。安全性と特許を関連づけて考えるというのは非常に問題があると思います。

相澤座長

宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

製造物として市場に出るという場合にはもちろん薬事法がかかるわけですが、今はそうでない段階の事柄を問題にしているわけで、これはやはり、少なくとも今の薬事法はかからないのですよ。だからこそ問題になっているわけです。この論議をここでやってもしょうがないし、これは要するに確認をして頂くべき事柄。

相澤座長

澤委員どうぞ。

澤委員

よくこの議論に出て、安全性と特許は全然関係ありませんよ、議論の筋道が違いますよと言われる。特許学者は、別の次元の話として整理したいのでしょうが、実際昭和44年の最高裁の裁決でもフランスエネルジーアトミック社の核技術を日本の特許に持ってくる時に、安全性が理由で棄却になった例というのもある。特許と安全性が、これは別な議論だというのは、ぼくはちょっと違うんじゃないかと。その意味で、宇都木先生、すごく同じ意見なんですけれども。やはり薬事法は業として行う時、先生おっしゃるように、業として行う時だけの規制なので、実質は、新しい医療を始める時は大学の倫理委員会がその見解を非常に問われるところになっている。それで今、文科省の方でも大学の倫理委員会の組成をどうしたらいいのかということを、今議論しているところです。あともう一つ、今回のまとめの中にもちょっと、誤解されて使われているのがあるのですが、ヘルシンキ宣言、ありますね。ヘルシンキ宣言というのは、これは今、古川委員もおっしゃった臨床研究をする時の医療者全ての心構えを書いたことなんですね。2000年の10月に改訂されていまして、これはアメリカ医師会もヨーロッパ医師会も全部賛成したやつなんですけれども、ヒューマン・サブジェクトということをもう一回再定義しようと。この新しいヘルシンキ宣言というのは、人の組織、血液までも含めて全部貴重な個人情報を含めた、「人」だとして、きちんとした配慮をして行うようにしようと。産業上利用する方、いろいろ研究員おられますけれども、これもやはり人の、これはただの部品だというふうに考えないで、あるいは材料だというふうに考えないで、あくまでも人の一部なのだということをきちんと明確に記憶して臨床研究に当たろうではないかという、全国、全世界の、これは医者としての良心を示したものであります。もし宇都木委員がそういうことを心配されるのであれば、ヘルシンキ宣言に関して、明確にこの報告書内に言及していると、私は思うんです。ヘルシンキ宣言というのは医者と患者さんだけではなく、医療者全てするべきだと、臨床研究やる時の研究者もポスドクも、看護士も、臨床検査技師も学生も全部守らなければいけない基本理念なんですね。今、文科省や厚労省のほとんどの臨床研究規範の一番最初によくこれが引用されるのは、医者ばかりではなくていろいろな研究者が、やはり人、ヒューマン・サブジェクトを使うようになってきたという現状を捉えている。せっかく本報告書でヘルシンキ宣言に言及しているのであれば、その精神に則りということをきちんとここで謳う。その謳う相手は医者であり、あるいは医者を補助する研究者の方々全部を含むということなので、そういったことを謳い、やはり現段階では施設内倫理委員会の判断、その安全性に対する判断ですね。それに今のところ任せるしかないのではないか。もちろんそこで何かしら重大な副作用なり、治療効果に疑問があれば、まず研究者同士のピア・レビューが働く。患者さんの意識というのは非常に高いので、メディアなり何なりというのも、そういった治療が行われている時には結構シビアに見ますので、いわば社会の判断に委ねる。業として行われない自家移植の場合は、事実上法的規制はない。逆に、施設内倫理委員会が高い見解を要求されることになると思うのですが。

相澤座長

長井委員どうぞ。

長井委員

今の片山委員の意見賛成です。そのあとに出ました議論で、自家移植の場合の安全性の担保が現状の薬事法でできているかできないのかということは、特許法の今回の問題ではないのです。しかし、もしそこに疑問があるなら、安全性について、この委員会の報告書で尚書きでもいいから、触れるべきである。安全性の担保の現状が足りないのだったらそれを更に確保するということは必要なことだと思います。しかし、今の話の中で私が理解できないのは、自家移植の時に安全性の担保が今の薬事法に基づく厚生行政で確保されているのかどうかという点について、いろいろな意見が出てきて、現状はどうなのかということです。教えてください。

相澤座長

大野委員どうぞ。

大野委員

只今の問題について、今回改正薬事法の中の生物由来製品に関する新しい規制が設けられて、現在私自身が医療機器業界の中でそのワーキンググループの主査をしておりますので、そういった経験から簡単にお答え致しますと、要はこういった生物由来製品の中には、自家の細胞とか組織をいろいろ加工処理したものも、他家のものも、薬事法の規制の対象として同じように含まれております。ただし、自家と他家ではリスクレベルが異なるということで、生物由来製品の中でも感染等のリスクが高い、公衆衛生上特別の配慮が必要なものについては特定生物由来製品という形で、使用した患者さんをあとで全部トレースバック出来るような仕組みを作るというところまで今回規制されています。自家の場合は自分の細胞や組織を使うわけですので、感染症のリスクというのは処理・加工の途中でコンタミでも起きない限りは基本的には安全であるということで、リスクレベルを1段下げて通常の生物由来製品という扱いになっています。そういったものを扱うものは、業としてやる場合には全て薬事法の規制の対象になります。但し大学で先生がやられる場合、お医者さんがやられる場合に、全部自分で、直接手を下しておやりになる場合には、薬事法の対象にはなりませんので、これは大学の倫理委員会等、要するに医師としての、あるいは医療従事者としての職業的な倫理そのものに基づいて判断して頂くよりほかに患者さんの安全性の担保のしようがないということではないかと思います。その辺については先程、澤委員からもヘルシンキ宣言についての話がございましたが、ヘルシンキ宣言というのは法律ではございませんので、いわば倫理綱領みたいなものであります。但し、これをもう少し行政レベルできちんとしたものにしようということで、このヘルシンキ宣言に基づいた、臨床研究そのものについての指針が、今、厚生労働省の方で作成されているというふうに聞いております。日本でもそういう形で、本来ヘルシンキ宣言があれば、例えば日本医師会なり何なりが、それをきちんと自分の会員なり何なりまで徹底するということでやられたら、それはそれでその部分についてはカバーされるかと思うのですが、そのカバーする範囲がかなり広いものであり、患者さん、あるいは先端医療における被験者の立場になる人たちの、人間の尊厳の問題とか、プライバシーの問題とか、人権の問題とか、そういったことを考えたものにならないといけませんので、はっきり言って特許制度でカバーできる範囲をはるかに超えているというふうに私は思いますし、性格的にも違うものであるというふうに、私は認識しております。ちょっと直接のお答えから外れたところもございますが、以上です。

相澤座長

高倉厚生労働省経済課長。どうぞ。

高倉厚生労働省経済課長

私、厚生労働省の者でございますけれども、薬事法の問題等を見ますので、よろしければちょっと、よろしいですか。私自身の部局ではございませんけれども、厚生労働省の医薬局に行きまして所管、運用をしております。内容につきましては、ただ今大野委員から御紹介を頂いたとおりでございます。途中の御議論の中で、別の方から摘発不足云々という御批判ございましたが、今回、昨年、薬事法改正致しまして、特定生物由来製品については特に厳格なシステム、そしてまた、そこまでいかない生物由来製品というものにつきましても従来と比べますとはるかにレベルを上げた規制が法律上措置して、近く施行予定ということでございます。そういう施行後における新法に照らして、業としてやっていながら薬事法上の手続きをとってもらうというような不法な事例がございましたら個別具体的に私どもの所管部局の方に情報提供して頂ければ当然ながら厳正な対応をするところでございますということを申し述べさせて頂きたいと思います。また、もう一点、大野委員の方から後半で御紹介頂きました臨床研究の指針の方につきましては、現在の段階では、案についてのパブリック・コメントの手続は終了致しまして、それを踏まえた最終的な告示案の作成作業を進めている、こういう状況にあることも御参考までに述べさせて頂きます。ありがとうございました。

相澤座長

ありがとうございました。長井委員どうぞ、それから宇都木委員お願いします。

長井委員

今の御説明でよく分かりました。自家移植の場合に薬事法の規制によって安全性の担保は十分なされているということであれば、この報告書でこれ以上書く、その文を入れる必要はないと思いますし、問題もないと思います。ただ、先程言いましたように私の意見は、今の議論の話の確認をまず、したかったことと、疑問はやはり、片山委員の言われた特許法の話と安全性の話は基本的になじまない。ただ、それについて、そうではないという御意見の方もおられますが、今ここで言われている問題は、特許化の問題であって、特許法の問題なので、その問題を触れないわけにいかないと思います。しかし、それがメインに来るという、報告書の3の一番最初の理由として挙がるというところは、いささか順番が違うのかなという意味で片山委員の意見に賛成ということです。

相澤座長

ありがとうございました。宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

しつこくなって申し訳ない。最後だって言ったのですが。今、厚生省の方から御説明がありまして、あるいはそうなのかもしれないと私も今思っておりますが、実は私は担当部署に確認をしておりまして、この問題、うまく捉えられないでいるということを聞いておりますので、是非その点は確認をしておいて頂きたいと思います。それだけにしておきます。

相澤座長

古川委員どうぞ、それから竹田委員お願いします。

古川委員

事実として同じような、事案で1件、やる前に差し止めが厚生労働省の方から来たのがあります。事例を私は知っているというだけの話ですが。

相澤座長

竹田委員どうぞ。

竹田委員

特許性と安全性の議論をするとなれば、それは片山委員のおっしゃったとおりであって、それについて私は異論ありません。ただ、この医療行為発明一般について特許性を認めるについての議論で、最初から言っていることは、今まで認められなかった医療行為発明一般について特許性を認めるには、特許制度はそもそも特許法第1条が規定している、それが産業の発達に寄与するということの目的から来ているのだから、今まで認めてきたかったものを認める場合は、確か特許法では32条で公序良俗、それから公衆の衛生を害するおそれがある発明は特許性はありませんと規定していますので、安全性の問題もそこまでいけばこれでシャットアウトされることは間違いないわけですが。ただ、そういう視点からだけでなくて、医療行為一般の発明に特許性を認めるかどうかを産業の発達に寄与するかどうかという視点で見ていくのには、やはりある程度幅広い視点から検討する必要があるのではないかと思います。ですからこの3で言っていることは、明文でここには書いてありませんけれども、この医療行為発明を今後特許性を認めていく上で、特許法1条の本来の趣旨に従って考えた場合にどういう問題があるかということの視点について十分な検討がなされるべきである。そのような視点から見た場合には、安全性も含めたこういう問題があるという形で問題を処理して頂くならば、ここでされている議論も使用できるのではないかというふうに思いますので、一言申し上げたかったわけです。

座長

熊谷委員どうぞ。

熊谷委員

安全性の議論については、これ以上申し上げても仕方がないのかと思うのですが、個人的には、やはり産業上の利用可能性、有用性をどう捉えていくのかということが、審査基準で明確になることと思います。また、特許出願がある以上、開示条件の問題ということにもなると思いますので、一般の分野における有用性なり、開示条件の問題をこの分野でどのように運用していくかという問題になるのではないかと思います。その時はやはり、私も不勉強ですが、ヨーロッパの経験なり実例というものもある程度参考になると思いますし、医療の分野における安全性というものを決してないがしろにしていいということではなく、ある程度配慮することは産業上の利用可能性、有用性、開示要件によって考慮することはできるのではないかと思います。

相澤座長

ありがとうございました。何か他に御意見ございませんか。宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

特許のことが全然分からないのですが、例えば生体実験をして、ある人の片腕を切り落として、実験をしたところ非常に、止血について大変有用な技術ないしは薬が発見されたというような場合、それが、彼が犯罪で、明確に逮捕されていても特許という点では全く問題ないですか。現実にそういう申請がなされたらどうなんでしょう。

木村制度改正審議室長

現在の運用と言いますか、今回の運用も前提にする限り、おそらく手術方法とか治療方法そのものに該当するということになりますので、少なくともこの報告書の結論に準拠する限りにおいては不特許ということになると思います。非常にそれは形式的なお答えですが、基本的に特許の審査の中で、研究開発のプロセスそのものについて、直接目配りをするような体系というのは必ずしも用意はしていないということだと思います。ただ、どう考えても、それは倫理と言いますか、そういうものに反しているということが一見明らかなようなものにつきましては、32条、先程御紹介あったかもしれませんけれども、公序良俗ないしは公衆衛生の観点から拒絶ということはあり得るのかもしれないとは思います。ただちょっと、やや趣旨が違うということかもしれません。安全性の問題につきましてはいろいろ御議論頂いて、私どもとしては厚生省さんからの御説明もございましたし、大野委員、長井委員等の御指摘あるいは片山委員等の御指摘もございましたとおり、基本的に特許法の中で安全性の担保そのものについて引き受けると申しますか、そういう、体系にはなっていないということは事実だと思います。ただ、先程、澤委員からも御指摘頂きましたように確かに原子力の判決、これ、最高裁まで上がった昭和30年代あるいは40年代頃の判決ですけれども、その中では確かに安全性の議論というのはなされていて、発明の本質的な要素として、やはり安全性というようなものがクレーム上明記をされているようなものにつきましては、当然そこがまさに発明の本質でございますので、それについて審査をするということはあり得ると思いますし、一見明らかに不安全と言いますか、そういうようなものであれば、それは32条の対象になってくるというような場合もあり得るとは思います。基本的に今回の整理の考え方は薬事法の規制が前提となって、業として、業としてというのはちょっと言い方は不正確かもしれませんけれども、製造する行為があって、そういうものにつきましては、業として製造することができるということが、別途、薬事法の安全性で裏付けられているということがあり、これを土台に産業性というものが認められるので、今回29条の「産業上利用可能である」というところの解釈を変更するに至るという結論が得られるのではないか、という考え方を私どもとしてはしている。若干トートロジーなのかもしれませんけれども、特許法で安全性を直接引き受けるということは難しいのですが、安全性が別途確認されるということが類型的に、あるエリアについて言えるということが産業性の裏付けになっているのではないかということで、御理解を頂ければありがたいなというふうに思っております。

相澤座長

津国委員どうぞ。

津国委員

先程、熊谷先生の方からヨーロッパのプラクティスのお話があったのですけれども、今回このような形でまとめて頂いて、法改正を行わないで、審査基準の改訂によって遺伝子治療だとか、再生医療の、体外に取り出してまた再び戻すような方法、これが認められるようになるようなんですが、私自身としては安全性の問題は特許法の枠外だと基本的には考えているのですが、これは医薬品が認められる時にもその問題があったわけで、確か、かつてプラクティスでは、長井委員もおっしゃったと思うのですけれども、医薬品が認められた当初、明細書の中に必ず毒性データを書きなさいということで、安全性を担保していた時代があったと思うんです。今は、それはなくなりましたけれども。ところで、このような新しいプラクティスが実際に行われるようになると明細書の書き方はどうなるのでしょうか?同様のヨーロッパのプラクティスで、明細書の書き方というのがどのようになっているのか、ちょっと熊谷先生にお聞きしたかったのでございますが。

熊谷委員

2つの観点があり、保護範囲の拡大により、ヨーロッパと同じになるか否かがまず問題になると思うのですが、拡大する部分がもし一緒だとしたらヨーロッパの事例が参考になるのではないかということです。いろいろな観点からの検討が必要ではないかということです。

相澤座長

基準室長どうぞ。

相田審査基準室長

先程の毒性試験のデータを例えばヨーロッパとかアメリカの特許庁で求めているかどうかということですが、少なくとも現時点では、特許要件の判断材料の一つとして毒性のデータを提出させている先進国はないと思います。

相澤座長

いかがでございましょうか。何か補足しておくことありますか。長井委員どうぞ。

長井委員

今までの議論と違う観点ですが、報告書の7ぺージの(3)の最初のポツで、医療関連行為が一般の方法に関してもニーズがあるということで、書かれている。、これについて、先端医療の中で再生医療とか遺伝子治療というのは製薬企業と直接絡んでいる部分は少ないのですが、前から言っておりますように薬の使い方の特許化は製薬企業と非常に絡んでいる部分があると。そこで,薬の使い方に関する特許化もこのニーズの中に入っているのかどうかというのを確認したい。

相澤座長

木村室長どうぞ。

木村制度改正審議室長

ここは一つの意見として記述をしてございますので、そのように解釈して頂いても結構です。

相澤座長

いかがでございましょうか。古川委員どうぞ。

古川委員

室長にちょっと。今の投与方法というのは本当に医療行為なんですけれども、そうするとどうやって投与するかという、そのノウハウですよね。という意味で長井さんがおっしゃったんだと思いますけれども、それは当然、医療行為なんですが、その部分にも医療関連行為一般ということでこれをお含めになっているということですね。もし今の御意見を反映させるなら医療行為及び医療関連行為一般というような表現になるのではないかという気が致しますけれども。

相澤座長

木村室長どうぞ。

木村制度改正審議室長

医療関連行為という、この言葉の使い方は必ずしも正確ではないのかもしれませんけれども、基本的には医療行為一般を含めて医療関連行為という用語は使わせて頂いておりますので。

古川委員

そのことは明示して頂きたいのですが。

木村制度改正審議室長

取り敢えず2ページの(2)の一番最後のところに、複数の行為類型が包含されるが簡略化のため「医療関連行為」とするというふうに書かせて頂いておりますけれども、より正確を期するようにしようかとは思います。2ページの(3)の直前でございます。最も広い意味で使われている……。

古川委員

ありがとうございます。申し訳ございません。ただ、これは診療行為ですね。これは医師法上の医行為だと思いますけれども、まず間違いなく。だから関連行為というよりは医療行為と書いた方がいいのではないですかね、定義としては。人を手術、治療又は診断する行為ですよね。

木村制度改正審議室長

2ページ。

古川委員

そうです。ただ、一応言っておきますと、これは全部医行為です。医者しかやりませんので。この3つの行為は。

木村制度改正審議室長

手術、治療または診断行為ですよね。

古川委員

そうですね。

木村制度改正審議室長

だからここで申し上げているのは審査基準の上で、今回、純粋な医行為ではなく、医療現場の外でもやれるもの、一種の見なし医療行為になっていると。

古川委員

現状はですね。

木村制度改正審議室長

こういうことを含めてここでは医療関連行為ということで総称して。

古川委員

なるほど、分かりました。

相澤座長

その点については、注記でも付けて明確にして頂くことを含めて検討してください。まだ御意見あればおっしゃって頂いて差し支えないのですが。
基本的には、今回のこの委員会のマンデートは、昨年の知的財産戦略会議等によって再生医療等についての特許上の取扱いについてこれを明確にするということでございました。これに対しまして審査基準の改訂でこれに答えるということにつきましては、今日の御議論を踏まえましても皆様方の最大公約数としてのコンセンサスが得られたというふうな御理解をしてよろしゅうございましょうか。
澤先生、いかがでございますか。よろしゅうございますか。
それではそういう方向でこれからの作業を進めさせて頂きたいと思いますが、他に何か御意見ございましょうか。それではこれからの手続につきまして木村審議室長、お願いします。

木村制度改正審議室長

まず、本日いろいろと御指摘を頂きましたので、議論を踏まえまして、内容上の修正を座長とさせて頂いた上で、各委員に再度この原案をお送りさせて頂いて、御確認をして頂くというプロセスを経たいと思います。それは早急にやらせて頂きます。その後、パブリック・コメントの募集をしなければなりませんので、それを特許庁のホームページ上で1カ月程度の期間を設けまして、やりたいと思っております。時期としては、この原案の修正が必要になりますので、それとの関係で時期は必ずしも定かではありませんが、出来ましたら4月の中・下旬を目途に、ほぼ1カ月の期間をおきまして、パブリック・コメントの募集をすることになるわけです。その結果、更に大幅な修正が必要だという結論に至る場合は、再度、委員の先生方に対しましてその趣旨と具体的な案文等につきまして御相談を個別にさせて頂くということになろうかと思っております。仮に修正が必要ないということでしたら、その案をもちまして、そのまま本ワーキンググループのとりまとめとして特許制度小委員会の方に報告をさせて頂くということにしたいと思っております。最速で考えますと、特許制度小委員会、6月3日に予定をされているようですので、それに間に合うようなタイミングでやれればそうしたいというふうに思っております。以上です。

相澤座長

ありがとうございました。この手続について何か御意見ございますか。宇都木委員どうぞ。

宇都木委員

パブリック・コメントで修正する必要があるかどうかというのは、そちらで御判断なさるということですか?

木村制度改正審議室長

はい。座長と相談した上で。ただ、パブリック・コメントの内容につきましては別途連絡させて頂きたいと思います。

相澤座長

パブリック・コメントにつきましてはよろしいですね。今の手続を確認致しますと、今日の分に御議論を踏まえまして、今日提出しました案につきまして修正した上、再度、皆様方に御確認をした上でパブリック・コメントに付すということですけれどもよろしゅうございますか。ではそのようにとりはからせて頂きたいと思います。最後に小野技監から御挨拶お願い致したいと思います。

小野特許技監

特許技監の小野でございます。昨年10月以来、4回のワーキンググループを開催致しまして、各委員におかれましてはこれまで審議に、積極的に御協力頂き、厚く御礼申し上げます。知的財産大綱や総合科学技術会議の専門調査会取りまとめなどで指摘されておりましたように、再生医療を中心とした先端医療分野に関しまして、審査基準におきまして自家を含めて特許性を認める方向でワーキンググループの論議がまとまりましたことを大変感謝しております。今回、医療の特許問題に関しまして、安全性や医療倫理などを含めまして従来の特許制度とは異質な、非常に重たい問題が多く指摘されておりますが、まずは再生医療等につきまして的確に運用し、その状況を見極めていくことが肝要であると考えております。今後は本ワーキンググループの結論について特許制度小委員会の御了解を得られ次第、速やかに審査基準を改訂し、審査体制を整備してこの分野の審査を着実に進めていきたいと思っております。このことによりまして、我が国の再生医療等を中心とした研究開発が一層促進されまして、ベンチャーの育成等、産業の発達に繋がり、結果として患者の方々に広くその成果の及ぶことを強く期待しております。本当にどうもありがとうございました。

相澤座長

どうもありがとうございました。お忙しいところ、4回にわたりましてワーキンググループにお越し頂きましてありがとうございます。座長の座回しがまずく、いろいろ御不快な点もあったかと思いますが、どうぞ御容赦頂きたいと思います。では以上を持ちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第4回医療ワーキンググループを閉会させて頂きます。どうもありがとうございました。

――了――

[更新日 2003年4月23日]

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