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第1回意匠制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成16年9月15日(水曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:
    大渕委員長、岡崎委員、勝尾委員、菅井委員、茶園委員、平野委員、牧野委員、水谷委員、光主委員、峯委員、森山委員、山本(為信)委員代理(高木氏)、山本(建太郎)委員
  4. 議題:意匠制度の見直しに関する検討の視点

開会

花木制度改正審議室長

それでは、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第1回意匠制度小委員会を開催させていただきます。
おくれましたが、私は事務局を務めさせていただいております特許庁総務課制度改正審議室長の花木と申します。よろしくお願いいたします。
本小委員会でございますが、本年7月に産業構造審議会知的財産政策部会委員各位に当小委員会の設置について書面にて御審議いただいており、設置が決定されているところでございます。
委員長につきましては、同審議会の運営規程によりまして、部会長が指名するものとされております。本小委員会につきましては、中山信弘部会長から東京大学大学院法学政治学研究科教授の大渕哲也委員を御推薦いただいております。また、大渕委員御本人にも御内諾いただいているところでありますので、大渕委員にお願いいたしたく存じます。

委員長挨拶

花木制度改正審議室長

それでは、大渕委員長、一言御挨拶をお願いいたします。

大渕委員長

おはようございます。
この意匠制度小委員会の司会進行役を仰せつかりました東京大学の大渕でございます。
この委員会のテーマであります意匠制度というのは今さら申すまでもございませんが、工業所有権(産業財産権)の制度の重要な一角を占めるものであります。そして、意匠の対象となりますデザインにつきましては、特に近時、独創性の高いデザインによる製品の高付加価値化や差別化が極めて重要となってきておりますし、また企業ブランド戦略の観点からはデザイン戦略が非常に重要となってきているところでございます。
このような大きな流れの中で意匠制度につきましても大きな期待が寄せられてきているところでございまして、このような背景が本委員会における意匠制度のあり方についての検討の出発点となるものと考えられます。
そして、「知的財産推進計画2004」におきましても「魅力あるデザインを創造し、より価値の高い製品を提供する環境を整備するため、意匠制度の全般的な在り方について広範に検討し、2005年度までに結果を得る」とされているところであります。
このような格別の重要性を有します意匠制度に関しましては、何といっても意匠権によるデザインの的確な法的保護という点が最も重要な点でありまして、これにより意匠権者による権利の積極的な行使・活用というものが可能となるものであります。
そして、このような目的を実現するためには、意匠法のみならず、知的財産法全体、さらには我が国法体系全体をも視野に入れた上での検討というものが必要なってくるわけであります。そしてまた、潜在的なものも含めました真のユーザーニーズの正しい把握というものが在るべき制度に向けての検討の大前提となることはいうまでもございません。
今申し上げましたような非常に重要な意匠制度につきまして、真に在るべき姿を考えてまいりますには、ここにお集まりの関係各界の様々なバックグラウンドや専門的知見をお持ちの委員の先生方の色々な視点からの徹底的な議論というものが不可欠となってくるものかと存じます。
限られた審議の時間の中ではございますが、できる限り色々な視点からの掘り下げた徹底的な御議論をいただいて、意匠に関するよりよい制度の立法的提言を目指してまいりたいと存じます。
このような議論のスムーズな進行のために司会役として微力ながら努力してまいりたいと存じます。
簡単ではございますが、以上をもちまして私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

どうもありがとうございました。
それでは、以降の議事の進行を大渕委員長にお願いいたします。

大渕委員長

はい、承知いたしました。

委員紹介

大渕委員長

本日は第1回の委員会でございますので、事務局から委員の先生方の御紹介をお願いいたします。

花木制度改正審議室長

それでは、御紹介させていただきます。
お手元に委員名簿と座席表もお配りさせていただいているところですので、適宜御参照いただければと思います。
まず、日本知的財産協会常務理事、株式会社神戸製鋼所技術開発本部知的財産部部長の岡崎秀正委員でございます。

岡崎委員

岡崎と申します。よろしくお願いします。

花木制度改正審議室長

続きまして、日経BP社日経デザイン編集長の勝尾岳彦委員でございます。

勝尾委員

勝尾です。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

社団法人自動車工業会知的財産部会部会長、本田技研工業株式会社知的財産部企画室室長の菅井孝委員でございます。

菅井委員

菅井です。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

大阪大学大学院高等司法研究科教授の茶園成樹委員でございます。

茶園委員

茶園でございます。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

日本デザイン事業協同組合理事長、株式会社平野デザイン設計代表取締役社長の平野哲行委員でございます。

平野委員

平野です。よろしくお願いします。

花木制度改正審議室長

ユアサハラ法律特許事務所、弁護士、弁理士、元東京高等裁判所判事でいらっしゃいます牧野利秋委員でございます。

牧野委員

牧野です。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

水谷法律特許事務所、弁護士、弁理士でいらっしゃいます水谷直樹委員でございます。

水谷委員

水谷でございます。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会委員長、株式会社東芝知的財産部デジタル著作権担当部長の光主清範委員でございます。

光主委員

光主です。よろしくお願いします。

花木制度改正審議室長

日本弁理士会執行補佐役、前副会長の峯唯夫委員でございます。

峯委員

峯でございます。よろしくお願いします。

花木制度改正審議室長

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科教授の森山明子委員でございます。

森山委員

森山でございます。よろしくお願いいたします。

花木制度改正審議室長

山本光学株式会社代表取締役社長の山本為信委員は本日所用で御欠席でございますが、代理で同社の高木様に御出席いただいております。

山本委員(代理 高木氏)

高木です。よろしくお願いします。本日は、社長の方が欠席いたしまして申しわけございません。よろしくお願いします。

花木制度改正審議室長

京都工芸繊維大学工芸学部教授の山本建太郎委員でございます。

山本委員

山本でございます。よろしくお願いします。
以上でございます。

大渕委員長

ありがとうございました。
皆様よろしくお願いいたします。

特許庁長官挨拶

大渕委員長

議事に入ります前に小川長官の方から一言御挨拶をお願いいたします。

小川特許庁長官

皆さん、おはようございます。特許庁長官の小川でございます。今年の6月22日着任いたしました。よろしくお願い申し上げます。
委員の皆様におかれましては、まず御多用中のところ、今回こういった御審議に参加いただきましてまことにありがとうございます。
本日は、意匠制度小委員会の初会合ということで一言御挨拶を申し上げたいと思います。
我が国の知的財産戦略は、一昨年の知的財産戦略会議、それから同会議で取りまとめられました大綱――私、当時内閣官房内閣審議官でそれを担当させていただいておりましたが、それらを契機といたしまして政府部内で具体的な検討が進められまして、着実に成果が上がりつつある状況であろうかと思います。
特許庁におきましても、昨年の産業構造審議会の知的財産政策部会におきました検討を踏まえまして、特許審査の迅速化、あるいは職務発明制度の見直し、こういったものを図るための特許法等の改正をさきの通常国会に提出しまして、今年の5月に成立したところでございます。
一方、知的財産は、特許権、実用新案権といった技術面の保護だけではありませんで、多くの技術が成熟化し、技術開発競争のみでは世界市場で大きな競争力を発揮することはなかなか難しくなっているという状況がございます。そうした中でデザインを活用して、魅力的なブランドイメージを確立していくことが各企業にとっては成長のかぎではないかというふうになってきているわけでございます。
また、中国やアジア諸国の各企業が価格だけではなくて、品質面におきましても競争力を高めつつある中で、我が国企業がそのデザインによります製品の高付加価値化、あるいは製品の差別化といったことを図っていくことが不可欠になってきていると思います。我が国産業の競争力を強化するために独創的なデザインの保護や活用をいかに図るかという観点・視点に立ちまして、望ましい意匠制度を再構築する必要があるのではないかと考えているわけでございます。
こうした状況を踏まえ、今般こうして小委員会を設置いたしまして、意匠制度の見直しについて検討をお願いすることにいたしました。また、これとあわせまして、並行しまして私ども特許庁といたしましては、延べ60社以上の企業やデザイナーの方々からいろんな形での意匠制度について御意見、御指摘を頂戴しているところでございます。それらも紹介しながら御議論いただきたいと思いますが、そういった御指摘を踏まえながら、意匠制度をユーザーにとってより使いやすい制度にしていくということ。それから、企業によってデザインの創造がより一層進む、あるいはより一層利活用が進む。それを通じて国際競争力の強化が積極的に図られる。それらを後押しするような制度にしていきたいと考えているわけでございます。
本委員会におきましては、デザインをめぐる最近の動向、あるいは国際的な各国の制度の動向につきまして色々御議論いただきまして、それらも踏まえまして、諸外国をリードするような、新しい世紀にふさわしい意匠制度のあり方について活発な御議論をいただきたいと考えております。
委員の皆様におかれましては、非常に御多忙の先生ばかりでございます。まことに恐縮でございますが、私どもに21世紀にふさわしい意匠制度をつくり上げるためのお力をお貸しいただくべくよろしくお願いしたいと思います。
簡単でございますが、私の挨拶させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

大渕委員長

ありがとうございました。

委員会の公開について

大渕委員長

さて、具体的な審議に先立ちまして、本委員会の公開について皆様の御同意を得ておきたいと存じます。
御案内のとおり、産業構造審議会は、その運営規程によりまして部会や小委員会を含めて原則公開となっております。本委員会におきましては、会議後に配布資料、議事要旨、さらに議事録を発言者を掲載して特許庁ホームページに掲載したいと思います。
また、委員各位の率直、かつ自由な意見交換を確保するため、会議自体の傍聴は受け入れないこととさせていただきたいと存じます。
いかがでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

大渕委員長

それでは、異議ないということで、このようにさせていただきます。ありがとうございました。

配布資料の確認等

大渕委員長

それでは、まず資料を事務局で御用意されていますので確認をお願いいたします。

花木制度改正審議室長

それでは、まず配布資料の確認をさせていただきます。お手元にクリップどめで資料をお配りしているところでございますが、まず一番表に議事次第と配布資料ということで書いてございます。
配布資料の一番最初でございますが、めくっていただいたところに小委員会の委員名簿がつけてございます。
資料の方は資料1といたしまして横長の折り込みの資料がございます。
その後に資料2といたしまして、「デザインと意匠制度に係る検討の視点」と題した資料がございます。
その次に資料3といたしまして、「戦略的デザイン活用の重要性について」。
以上が主な資料でございます。その後ろに参考資料が4点ついているかと思います。不足等ございますかどうか、御確認いただければと思います。
それから、御発言に際しましては、お手元にマイクがございますので、スイッチを入れるとマイクが入るようになっております。若干音量が低いのですが、その場合はマイクを近づけて御使用いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

大渕委員長

よろしいでしょうか。

戦略的デザイン活用の重要性について

大渕委員長

では、早速議題に入らせていただきます。
初めに、「戦略的デザイン活用の重要性について」ということで、製造産業局デザイン・人間生活システム政策室より御説明を行っていただきます。よろしくお願いいたします。

三浦デザイン・人間生活システム政策室長

今御紹介いただきました、非常に長い名前でございます経済産業省製造産業局デザイン・人間生活システム政策室長の、三浦と申します。本日はよろしくお願いいたします。座っての御説明で失礼させていただきます。
私どもから、ただいま御紹介がありましたとおり「戦略的デザイン活用の重要性について」ということで、資料番号としましては3の御説明をさせていただきたいと思います。
内容といたしましては、「現在のデザイン政策」「デザインの導入の成功事例」「戦略的デザイン活用研究会について」ということでございまして、本日お集まりの皆様にはもう既に御説明するまでもない内容かもしれませんが、第1回目ということでお時間を頂戴いたしまして私の方から御説明させていただきたいと存じます。
本日御検討をお願いしておりますデザインの戦略的活用に向けた意匠制度の検討に関しまして、意匠権等の権利保護の強化につきましては、ちょっと先走りになって恐縮でございますが、資料3の10ページ、右下のページですと6ページに戦略的デザイン活用研究会、こちらの方は戦デ研という言い方をしておりますが、戦デ研で御検討いただきました意匠権の類似の範囲、意匠権の効力の範囲の拡大、こちらはナンバー24――提言自体は40いただいておりまして、そのうちのナンバー24ということでございまして、意匠権の保護対象範囲の拡大など、こちらナンバー25などの御提言をいただいたところでございます。
資料の14ページ、右下のページですと8ページにいただきました提言を一覧にしてございますが、左下の「意匠権等の権利保護の強化」のところが、いただいた御提言でございます。
戦デ研は有識者の方々からいただいた御提言でございますが、私どもといたしましても、デザインを活用したブランド構築は、産業競争力強化の観点からも、とても重要なものと考えておりまして、そのためにもぜひ意匠権等の権利保護の強化も含めまして、デザインの戦略的活用に向けた意匠制度につきまして、高い知見を活かされた御検討をお願いしたいと存じます。
それでは、資料の説明に入らせていただきます。時間も限られておりまして駆け足の御説明となって恐縮でございますが、1ページ目をお開きいただきたいと思います。
まず1ページ目の下の方、先ほど申しました3つが書いてございますが、その中のまず「現在のデザイン政策について」というところを御説明させていただきます。
1枚おめくりいただきますと、「デザイン政策に関する最近の決定事項」。デザイン政策をめぐりまして最近どのような政府としての意思決定がなされたかをまとめてございます。
まず最初が「知的財産計画2004」ということでございまして、こちらは内閣官房の方に知的財産戦略本部というのがございまして、内閣官房としての意思決定として決められたものでございます。そちらの方の第1章の3の(8)の「魅力あるデザインの創造を推進する」ということで3つ書かれております。1つ目が、セミナー、シンポジウム等のイベントを開催。2つ目が、デザインマネジメント人材育成に必要なカリキュラム、教材等の開発、教育実験等の実施。3つ目が、人体寸法を初めとする人間特性に関する基盤整備でございます。
さらに、こちらの知的財産推進計画では、第3章にもデザイン関係がうたわれておりまして、4の(2)、「知的財産を活用して地域を振興する」という中の1つといたしまして、商品デザインの開発を促進するための方策を検討というようなことがうたわれております。
続きまして、下の箱の方でございますが、こちらは「新産業創造戦略」と書いてございますが、こちらは経済産業省として決定いたしまして、次の行に出ております経済財政諮問会議、こちらは小泉内閣で非常に重要視されております会議でございますが、こちらの方に提出させていただいたものでございます。
こちらの第2章に「新産業創出のためのアクションプラン」というのがございまして、そこの中に、「デザイン業を活性化する」ということで「デザイン保護法制の見直し」、まさに本日皆様に高い知見からの御検討をお願いしておりますものでございまして、2つ目としまして、「人体寸法・形状データベースの整備」がございます。
また、第3章の「重点政策」というところにも書かれておりまして、「ブランドの確立とデザインの戦略的活用」ということで、一番下の方の「ブランドの確立や、デザインの戦略的活用を支援する」で3つ、「デザインやブランドに係る知的財産権の保護を強化する」「地域ブランド確立支援のための制度を整備する」「デザインの企画・開発を支援する」を謳わせていただいております。
続いて、順次御説明させていただきます。3ページ目といいますか、上の方の箱でございます。こちらは「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」ということで、こちらは新聞、マスコミ等ですと「骨太の方針」というような言われ方をしておりますものでございまして、こちらも閣議決定でございます。
そちらの第2部の3の(1)に「新産業創造戦略の推進」ということで、下から2行目になりますが、こちらの方でも「デザインの保護強化と地域ブランドの確立支援」ということがうたわれております。
また、下の箱でございますが、こちらは経済産業省、私どもが実施・協力支援する主なデザイン政策でして、まず実施の方でございますが、1から6まで、まず1が「戦略的デザイン活用研究会」、こちらは後ほどお時間をいただいて御説明いたします。2が「人材育成」、3が「知的財産関連」ということで、こちらの冒頭に意匠法を書かせていただいております。4が「デザインに関する取引慣行の是正」、5が「中小企業対策」、JAPANブランド育成支援事業などでございます。6が「ユニバーサルデザイン関連」でございます。7以下が協力支援になりますが、まず7として「選定・表彰制度の支援」ということで、グッドデザイン賞等がございます。8が「国際交流事業の支援」、9が「デザインの普及・啓発活動への後援等」ということで、デザイン&ビジネスフォーラム、デザイン月間などの取り組みでございます。
続きまして、「デザイン導入の成功事例について」ということで、こちらももう皆様よく御存じのものばかりでございますが、共通の御認識を持っていただくということで私の方から御説明をさせていただくということになろうかと思います。
まず1といたしまして、「自動車メーカーにおけるデザイン・マネジメント」ということで、写真を見るとどちらのメーカーかおわかりいただけるかと思いますが、「販売不振により極めて厳しい経営状況にあった大手自動車メーカーA社は、1999年就任した現社長の下、「デザイン重視の車作り」の経営戦略を打ち出し、商品・開発部門の一部署であったデザイン本部を独立部門とするともに、その長にデザイナーを起用して、同社で初めてのデザイナー出身の役員とするなど、社内におけるデザイン部門の地位を高めた。
トップ主導でデザイン重視の経営を徹底したことにより、社内のデザイン部門が活性化し、消費者の嗜好に合致したデザインの自動車を生み出した。」ちょっと飛びまして、「また、製品のみならず、商品が消費者に届くまでの全ての過程にデザイナーがかかわり、一貫したデザイン・マネジメントを行っている」という状況にございます。
続きまして、5ページに移らせていただきます。5ページの上の方でございますが、こちらは「デザインを活用した特徴ある製品開発」ということで、「大手玩具メーカーB社は、大手出版社、プロダクトデザイナーと共同で企画・デザイン・製造・販売において、市場に応じた家電、AV機器などの製品開発を実施し、2003年12月より製品の販売を開始した。B社は、第一次中期経営計画で「玩具を中核としたライフエンタテイメント企業をめざす」こととしており、ものづくりの過程において消費者の気持ちや豊かな生活を創造しながら、対応することとした。特に生活密着度が高く、大きな市場である「家電製品」の分野では、プロダクトデザイナーによる優れたデザインを活用し、B社ならではの遊び心のある「ライフエンタテイメント商品」を提案することにより、新しい市場の創造を目指している」ということでございます。
事例の最後でございます。3「デザインを戦略のコアとした商品開発」ということで、「調理利器メーカーC社は、刀身とハンドルが一体化した、オールステンレス製の画期的デザインを持つキッチン・ナイフを創造しており」まして――こちらは工業デザイナーの方がデザインを担当なさっているそうですが、「美しさと機能性、使いやすさを兼ね備えたユニークなブランドとして、国内外の料理家・シェフにも支持され」ておりまして、ちょっと飛ばしまして、下2行ですが、「国内でグッドデザイン賞を受賞している他、オランダのコックギルドなどからデザインに関する複数の受賞実績をあげ」ております。
まことに駆け足で恐縮でございますが、最後の「戦略的デザイン活用研究会について」に移らせていただきます。
こちらの方、まず1で「デザインを取り巻く企業認識と政策の変遷」ということで、過去と現在を対比しております。
過去は、政策の目的としまして国内企業の模倣防止でしたのが、現在は産業競争力強化。
デザイン政策対象も、過去は商品の外形でしたが、現在は商品コンセプト、新しい価値観、商品の外形、顧客との様々な接点における統一したデザインというような形になっております。
デザインについての企業の認識も、過去は個別商品のデザインの重視、それが現在では顧客と様々な接点でデザインの一貫性、統一性を重視している、ということになります。
最後になりますが、ブランドへの影響は、過去にはほとんど考慮されていないようでしたが、現在はデザインよるブランド確立を重視というような形で、企業の認識と政策も変遷しているということでございます。
1としまして、7ページの上の方になりますが、「戦略的デザイン活用が必要な背景」といたしまして、3つございます。まず国内の背景でございますが、「厳しい経済情勢」、「技術開発については政策支援が充実している」、「不十分な戦略的デザイン活用」ということであります。一方、欧州の状況といたしましては、「積極的な戦略的デザイン活用」。一方、中国・韓国でございますが、「戦略的デザイン活用への意識が向上」、「価格面・品質面の競争力の向上」ということで、これらを全て踏まえますと「産業競争力強化のために戦略的デザイン活用が必要」というような状況になっております。
3といたしまして、「戦略的デザイン活用研究会」ということで書かせていただいておりますが、こちらは今御説明したような状況を踏まえましたもので、まず研究会の目的といたしましては、デザイン政策をビジネス戦略に明確に位置づけまして、「国内需要の増大、製造業の競争力強化に重点を置いたデザインの創造・活用による高付加価値化、差別化を図っていくために必要な企業努力とデザイン政策へのあり方について検討を行う」というものがございまして、産学の有識者の方により構成されました研究会を、平成15年2月から5月まで、計6回開催させていただきまして、今後取り組むべきデザイン政策のあり方について議論していただきました。
その結果が、先ほど先走りで申しました、「40の提言」、「デザインはブランド確立への近道-デザイン政策ルネッサンス-【競争力強化に向けた40の提言】」でございます。こちらが平成15年6月に出されております。
次、先ほどちらっとごらんいただきました「40の提言」の一覧で、左下の方、「意匠権等の権利保護の強化」ということでございまして、その下の箱でございますが、「意匠権等の権利保護の強化」、この小委員会で御検討の対象となりますもの、上から4つ、24、25、26、27のものでございます。
意匠法は御存じのとおり、115年に及ぶ長い歴史をお持ちで、時代の要請に応じて変化を遂げてきましたが、戦デ研では、製造業の競争力の強化のために意匠権を積極的に活用し、権利を活用するという観点から、意匠法の活用について御提言をいただいたというものでございます。
最後になりますが、4として「戦略的デザイン活用研究会2004」といたしまして、こちら、先ほど平成15年6月にまとめられたと申しましたが、研究会の報告がまとめられてから1年が経過したことを契機にいたしまして、進捗状況を確認し、今後の方向性について検討を行うということで、前回の委員の方に基本的にお集まりいただきまして、企業からお入りいただきました委員の方が人事異動なされた際には後任者の方に来ていただきまして、本年6月24日、経済産業省において開催いたしました。
そこでの主な御意見といたしましては、「中小企業の施行事例を収集・分析し指標化に向けた取組を行うべき」「国がデザイン等知的財産の保護・活用を国家戦略として積極的に取り組む必要がある」「高等教育は勿論のこと、より若い世代のデザイン教育を推進する必要がある」「デザイナーを志す学生に知的財産権の重要性を教える機会が必要」と、このような御意見をいただきました。
大変雑駁、かつ駆け足となりましたが、私からの御説明は以上でございます。

大渕委員長

詳細な御説明をありがとうございました。
ただいまの御説明に関する御質問等がございましたらお願いいたします。
どなたかございませんか。
それでは、ありがとうございました。

意匠制度の見直しに関する検討の視点

大渕委員長

次に、本日の本題でございます「意匠制度の見直しに関する検討の視点」について議論を行いたいと思います。
まず事務局より御説明をお願いいたします。

花木制度改正審議室長

それでは、特許庁の方から説明をさせていただきます。
資料でございますが、資料1と資料2、それから参考資料の1と2を適宜御参照いただければと思います。それぞれの資料の関係ですが、資料1は横長の図になっておりまして、全体の位置づけをプロットしたものでございます。個別の論点については詳しくは資料2の方に書いてありますので、資料2を説明しながら最後に資料1に戻って、全体、資料2で詳しく申し上げたことは実は資料1の中ではこういう位置づけができるのではないかという順番で御説明させていただきたいと思います。
また、参考資料の方は、参考資料2が特に後ろの10ページ以降に現在の意匠制度の件数ですとか、内訳といったような統計的なデータが入っておりますので、そういう観点から見ていただければと思います。
本日の審議に先立ちまして、特許庁の事務方の方で大体60社ぐらい、現在の意匠制度ユーザーの企業、デザイナー、あるいは権利を利用・活用されるような方のところを回りましてヒアリングをさせていただきました。それの項目をまとめたのが参考資料1でございます。これは非常に多様な意見があったものですから、それを何らの形で我々の方で組み立ててみたものというのが本日の本題の資料でございます。
それでは、資料2に基づいて説明させていただきたいと思います。
まず資料2、「デザインと意匠制度に係る検討の視点」ということでございます。
検討事項ですが、先ほど製造産業局の方からお話がありましたように、デザインの保護というのがこれからの日本経済、日本企業が活力を持っていくために非常に重要である。そのために意匠制度というものが非常に期待されていて、特に国際的な制度間競争といいますか、そういう観点からもよりよい意匠制度を構築することが日本産業の活性化のために非常に重要であるということであろうかと思います。それに対して現在の意匠制度が十分その期待を果たすものになっているのかどうかという点について御議論いただきたい。そのための説明であるということかと思います。
具体的な部分といたしましては、まず1において、それではまず現在の企業活動においてデザインがどう位置づけられているかということでございます。
一言で申し上げますと、この(1)のところなんですが、現在のデザイン活動、若干断定的な表現になっているのですけれども、傾向といたしまして、比較的従来は日本企業は多品種の製品開発を右肩上がりの拡大・拡販志向のもとで行ってきた。その中としては企業での相違というのが余り見られない中で、比較的横並び的な製品開発で、デザインについてもコスト・時間の投下が限定される中で、独創的なデザインというよりは横並び的なデザインが多かったのではないかということが書いてございます。
最近のトピックスといたしまして、特に韓国や中国におけるデザイン力の向上ということで、非常に競争が厳しくなってきている。その中でブランドの確立というのが非常に重要になってきているのではないかということでございます。
したがって、(3)でございますが、2ページのところですけれども、意匠制度に引き直してみたときに、従来のように細分化された狭い意匠権によって、いわば業界内における製品開発の秩序形成に資するという、そういう1つの役割を果たしてきたということが言えるかと思うんですが、さらに進んで付加価値の源泉となるような独創性の高いデザインを適正に保護するような意匠制度というのが重要ではないだろうかということでございます。
また、中段のところでございますが、デザインは視覚的な要素が多く、特に模倣の対象になりやすいという特性があるかと思います。したがいまして、模倣品の阻止・排除というのも意匠制度の重要な役割ではないか。それに対して現在十分な機能を果たしているのかどうか。それは実効性という部分と早期の保護ができているかどうかということでございます。
知財戦略大綱、それから推進計画、先ほど御説明がありましたように、そういう観点も踏まえて検討するようにということで本日お願いしているものでございます。
それから、企業における現状ということですが、実際の出願等の状況でございますが、この枠囲いの中に書いてあることを申し上げますと、企業の多くは現在の意匠制度を安心して製品開発に資本を投下し、企業活動を継続するための材料として利用されているという面が非常に強いのではないか。1つの製品をつくるためにも金型等非常に大きな投資が要る場合も多いわけでございますので、それに先立って権利をきちんと確保しておきたいということはわかるわけでございますが、一方でアパレルですとか、玩具ですとか、本来デザイン活動が重要な分野というのは点数が非常に多いということ、さらに製品のライフサイクルが短いということで、現実問題として意匠制度というのが出願のコストがかかる、登録のコストがかかるということで、若干低調になっているのではないかということでございます。
また、特許や実用新案については審査に時間がかかるとか、そういう面もありますので、そういう部分をいわば代替補完する意味で意匠権を活用していらっしゃるという面も非常にあるのではないかということでございます。
具体的には(1)のところですが、めくっていただいて3ページのところに物品分野別出願件数割合ということで統計がございますけれども、下のD、L、Hといった住宅設備、土木関係、あるいは電気電子関係というのが比較的多い割合を占めているのではないか。上の方の軽工業品的なもの、あるいは具体的に申し上げますとEの趣味娯楽品とか、あるいはBの衣類といったようなものは比較的少ないということをかいているわけでございます。
また、(2)ですが、先ほど申し上げましたようにアパレルとか玩具関係、「他方」というところですね。3パラ目に書いてあるのですけれども、玩具分野の中でC社、ヒアリングした中では製品開発件数が例えば年間2000件なんだけれども、実際に意匠出願しているのは数十件程度にとどまっているということで、製品開発件数が多いほど1つの製品当たりの売上高というのはどうしても小さくなりますということで、そういうものが現在の意匠制度が1つ1つの製品ごとに出願しなくてはいけないというのがハードルになっているのではないかということでございます。
また、(3)のところですが、現在は逆に住宅とか土木とか電気電子についてどうして活用しているのかということですが、こちらは先ほど申し上げましたように、安心材料になる。事前にそれなりのしっかりした権利を持つことで安心して企業活動投資ができるということでございます。
それから、(4)でございますが、これも現在の出願の分析ですけれども、比較的上位を占めているのは電気電子関係でございますが、これをさらに具体的に見ていきますと、基本的電子素子とか、回転電気機械とか色々書いてあるのですけれども、要すればデザインが購買の直接のインセンティブになるような製品ではない。むしろその製品の本来の機能から必要になるような、本質的に機能的な点に要素を持つような形態というのが出願されているものが多いということでございます。
特に期間との関係で見ますと、5ページのグラフでございますけれども、意匠権、現在最長15年ということなのですが、実際に15年維持された意匠権というのはどんなものかということを見てみますと、そういうような電気電子関係の比較的機能に特性を持つような製品が多いのではないかと。
したがいまして、最後のパラグラフですが、本来意匠法によって保護されるべき――保護されるべきというと若干断定的になっているのですが、そういうデザインを重視した製品というよりはむしろ特許や実用の代替的な活用のされ方になっているのではないかということの理由としてこういうことを挙げさせていただいております。
以上が企業一般でございますが、特に中小企業、あるいはデザインを創造する部分を担っていらっしゃるデザイナーにおける意匠利用はどうなっているのかということでございます。
5ページの枠囲いですが、一言で言いますと、非常に件数が少なくなっているということでございます。理由としては、出願にかかる準備が大変であるとか、あるいは登録料がかかるといったことではないかと。また、実際に登録に当たって先行意匠調査というのをやらないと結果的に却下される可能性が高くなるわけですが、そういうサービスが十分整備されていない。特に大企業のように自分のところでそういうのが調べられるところに比べて、中小企業はそういう基盤がないので、比較的利用が低調になっているのではないかということを書いてございます。
具体的には6ページのところですが、まず全体の中での中小企業の割合ということですが、このグラフの上の黒い部分というか、濃い部分が中小企業でございまして、非常に少ない。企業数だけでいいますと99%が中小企業であるということを考えると、非常に少ないということが言えるかと思います。
一因といたしましてヒアリングで一番指摘されるのが登録料の負担が大きい。特許等に比べれば安いとはいえ、1件に審査の手数料が1万6000円かかっている。さらに意匠権を登録して、保持し続けるための年負担金がかかりますので、毎年下記に書いてあるような金額ということで、15年維持した場合には30万円以上かかるということですね。年間何千件も生産している企業にとっては現実的な金額なのかどうかということでございます。特に中小企業という観点で見ますと、特許については特許法上減免制度があるのですけれども、意匠法についてはそういうものが今ないということで、その点も議論の対象になるのかどうかということでございます。
それから、(3)でございますが、外部サービスの未整備。先ほど申し上げましたようなそういう部分が整備されていない。データベースにしろ何にしろないということでございます。
(4)ですが、デザイナーの観点でございます。デザイナーの方も随分ヒアリングをさせていただいたのですが、なかなか現実は意匠権を取得してやっているというようなことは余りない。デザインというのが本来現在の企業活動においては企業とのすり合わせの中で、お互いの対話の中でできている。それに対して意匠権というのがどちらかと言うと個人の創作という観点を非常に重視しているということで、実際のデザイン業の実務と意匠権という権利の制度設計にちょっとずれがあるのではないかということでございます。現実には、したがって、民事上の契約で対応している。守秘義務契約とかですね。そういう意見が多くございました。
それから、4ですが、意匠審査の現状ということでございます。
審査につきましては最近では随分迅速化されておりまして、数年前、2年以上かかっていたものが現在は7.7カ月ということで非常に早くなっているということでございます。
審査の中身につきましては、この枠囲いに書いてあるとおり、類否の判断において類似の範囲が狭いという御意見がかなりございました。したがいまして、独創的なデザインが十分評価されていない。自分の意匠が多少の改変を加えた程度でまた別途登録されているという声が非常に多かったということでございます。
それが結果でございますが、審査過程における出願人と審査官とのやり取りというのが基本的にないということもありますので、審査官の判断が本当に正しいのかどうか、あるいはプロセスに対する若干不信感というような声もあったところでございます。
具体的にはまずスピード化ということにつきましては、現在御承知のようにバッチ処理をしておりまして、きたものから順番ということではなくて、あらかじめ審査計画を立てて、出願がある程度たまってから審査をしているということでございます。これは迅速化のためにやっているわけでございますが、それで相当迅速化されたとはいえ、現在もバッチを待たなくてはいけないということで、平均的に7.7カ月かかっているということでございます。
それから、類似の範囲の狭さということですが、「企業から」ということで、2段落目でございますけれども、類似の範囲が非常に狭いと。したがって、独創的なデザインを開発して意匠登録を受けたとしても、多少改変された程度ですぐに登録されているということを何とかすべきではないか。先ほどの戦略的デザイン活用研究会報告書の中でもこの点についてはかなり御意見があったというふうに受けとめております。
それから、審査制度につきましても不透明性という言葉で若干あれですが、拒絶理由通知に審査官の判断理由が記載されていなということもあって、なぜ拒絶されたのかということについてわかりにくい。意見書が書きにくい。これは運用の問題かもしれませんが、そういう意見がかなりございました。
逆に即時に登録された場合もそれでいいといえばいいんですが、どうしてなのかという前提、プロセスというのが理解できないということがあるかと思います。
それから、(4)でございますが、これも審査の問題かもしれませんけれども、蓄積がされにくいということで、分析判断がされにくいということ、予見可能性が比較的低いのではないかということがございました。
その次に8ページの5でございますが、意匠権をどう使っているかということでございます。枠囲いの中でございますが、要は類否の判断というのが客観的とはいいながらもどこまで似ているのかというのが非常にわかりづらい面もどうしてもありますので、予見可能性が低いということで、せっかく意匠権を取っていても、他社が類似したデザインを実施してもその権利行使が非常にしにくい。勝てるがとうかわからない中でコストをかけてわざわざ意匠権を訴えるというメリットが非常に薄い。現実問題としましては、したがいまして、現在意匠権の侵害訴訟というのが年間20件程度ということで、非常に少ないわけでございまして、4万件以上登録して、20件しか使っていないと0.05%というか、そういうことで少ないということでございます。そうすると、実効性があるのかどうかということ、先ほどのコストとの問題とも関係するのかもしれませんけれども、論点があるかどうかということでございます。
(1)につきましては、法律上はこの23条で業として専有するということで、私権であるということではっきり書いてあるわけですが、また、権利の範囲も直接類似の範囲に及ぶということになっているのですが、では、類似というのがどこまでなのかということが明らかにならない。司法でやってみないとわからないということでございます。
また、水際におきましても輸入差し止めができるというのが意匠権の非常に強力な権利であるという評価がある一方、ここに書いてございますように、類似の範囲に該当する可能性があっても負けるかもしれないということで、同一に近いものについてしか逆にできないという御意見もございました。
次に9ページでございますが、費用対効果ということでございます。これも手続の負担がどうしても特許権に関して行使するような場合とほとんど同じようにコストがかかるということで、意匠権に係る製品の場合はその負担が非常に大きい場合が多いのではないかということでございます。この点、特に中小企業ですとか個人のデザイナーにとってはなかなか自分で権利を実現するというのが難しいということでございます。
それから、(3)でございますが、これも先ほどとちょっとダブっているところもあるのですが、データベースが余りないということと、それから弁護士、弁理士の先生方も意匠権をやっていらっしゃる先生というのは必ずしも多くない。特に地方にいった場合に非常に少ないという御指摘がございました。
最後に(4)ですが、意匠権の流動性の低さということで、法律上物権ということで登録もできる、権利移転もできる、対抗要件も定めているということで非常に強い権利を与えているのでございますが、実際に物権として意匠権を転々流通させるとか、実施権を付与するとかということが非常に少ない。あえて物権という構成をしているにもかかわらず、それが余り使われていないということでございます。
そのあと、ここには書いてないのですが、他の問題として国際的な側面というのも1つあるのかなと思っておりまして、どう使っているかということですが、日本での出願を基礎に特に海外に出願しているというような使い方もあるかと思います。
以上のようなことでございまして、細かいところから入りましたけれど、以上をもとに資料1をつくりましたので、これをもとに本日は御議論いただきまして、この中でどれが重要な論点なのか、他に重要な論点はないのか、意匠制度を見直すに当たってどういう価値に重点を置いてやっていくべきかということを御議論いただければと思います。
まず一番上の目標ですが、先ほど来御説明してございますように、ブランド確立と産業力強化のためにデザインを重視していく必要がある。そのための意匠権ということでございます。
2は、現状に係るユーザーからの指摘とうことですが、今申し上げましたように、出願の段階では企業として見ますと非常に偏りがある。全体多く開発してもなかなか出願はしていない。出願の意味としては防衛的な権利。投資を確実に回収するために、あるいはこれから金型をつくるときにちゃんと権利として保護されていることを確認したいという、そういう趣旨が多い。
それから、特許・実用の代替、あるいは先ほど最後に申し上げましたような国際的な出願、例えば海外において特許権を得るのに時間がかかるので、とりあえず意匠権を取っておきたい。その根拠として日本に出願しておいて、優先権を主張したいといった点です。デザイン保護というよりは別の目的による出願というのが多いのではないかということです。
それから、中小企業を特に切り出して書いておりますのは、特に少ないということで、コストの問題、サービスの問題があるのではないかということでございます。
また、デザインにつきましては、そもそもデザインの現在のデザイン活動と意匠権というのでミスマッチという点もあるのではないかということでございます。
審査・審判の段階になりますと、こちらの方は独創性、類否判断ということで、類似の範囲の狭さという点をどう考えるのか。それから、判断根拠の明確性ということで、先ほどの問題。判断の一貫性も同じような問題があるのではないということでございます。
それから、最後の権利行使の段階につきまして、審査の段階の類否判断と司法における段階の類否判断。これはやむを得ない面もあるのですが、異なる可能性が高いということを考えると、予見可能性が低いという限界がある。それから、コストが非常にかかる。その割にメリットが薄いのではないか。周辺的なサービスが未整備ではないか。実際に権利行使の中で、水際での差し止めという形以外での権利行使というのがほとんど見られないのではないかということでございます。
したがいまして、以上をまとめますと3の評価ということですが、結果的にということなのかどうかわかりませんが、意匠の登録の出願の件数は近年4万件。若干減りつつございます。そういうことがデザイン保護のために意匠権活用といったときに現状のままでいいのかどうかという問題になってくるかと思います。
特にすそ野が狭いということでアパレル、玩具等について利用が本来あり得るはずなのに、低迷している。
中小企業やデザイナーといった潜在的なユーザーの方が使われていないのはなぜなのかということでございます。
それから、出願している企業にとって十分満足されているのかどうかいうのが2番目の丸でございまして、安心材料として防衛的な権利として取っている。それはそれで1つの意味があるとしながらも、それで十分なのかどうかということでございます。
それから、審査の段階でございますが、現在の審査に満足があるのかどうか、特に類否の判断、類似性の判断という点でございます。
最後に,2番目の丸と同じような話ですけれども、権利保護手段として積極的な活用という面が薄いのではないかということでございます。
めくっていただきまして、論点ということですね。本日御議論いただきたいことでございますが、デザイン保護のために意匠権を積極的に活用していくためにどういうことが大事なのか、その中のプライオリティーは何なのかということを御議論いただければと思っております。
事務局の方のたたき台といたしまして、1つは期間を短くということが大事なのかどうか。ただ、これにつきましては、現在ファーストアクション7.7カ月、セカンドアクションでも12.5カ月ということでございます。これをさらに短くする必要があるのかどうかということでございます。
2番目にコストが大事なのかどうか。コストについてはトータルで15年間30万円というのか高いのかどうか。何よりもコストが大事だというこであれば、それに応じた制度設計が必要なのではないかということでございます。
3番目に、そういう問題ではなくて、類似の範囲が大事なのかどうか。独創的なデザインをより強い保護するような制度、お金がかかってもいいからそちらの方を目指すべきなのかどうかということでございます。
4番目は同じような話ですが、類似範囲について、範囲というよりはむしろ明確化をするべきではないかということでございます。こちら、審査で幾ら明確化しても実際の権利行使は司法の段階になりますので、若干の限界があるということでございます。
5番目につきましては、質の問題というか――質というのは何なのかという論点はあるかと思うんですけれとも、ここでは一貫性や正確性、どの審査官に当たるかによるぶれというか、そういうのがなくなるということが大事なのかどうか。
6番目でございますが、権利行使の範囲の拡大や容易化が重要なのかどうか。こうなってきますと、弁理士の先生方、あるいは弁理士、弁護士の先生方、あるいは基盤的なサービス、特にデータベースといったところを充実するのが重要なのかどうかということでございます。
7番目は同じような議論でございます。
以上のような中でどういう点を重視して意匠制度のあるべき方向を目指すのか、さらに、ここでは書いてございませんが、長官の御挨拶にもございましたように、国際的な制度間競争ということで、あるいは国際的な整合性ということで、現在でもタイ、ベトナムとの間では審査協力ということで日本の審査結果をきちっと尊重してもらうということになっているのですが、そういう国際的な分野というのも論点としてあり得るのではないかと思います。
以上、御説明させていただきました。どうもありがとうございました。

自由討議

大渕委員長

非常に丁寧で、かつわかりやすい御説明をありがとうございました。
それでは、今の説明を踏まえまして議論に入りたいと思います。まず、今事務局の方から御説明のありました点につきまして、御質問等ございましたら、お伺いいたします。どの点でも結構です。

峯委員

弁理士の峯と申します。
ここに4として論点が挙がっておりますけれども、今回のテーマとしてこの論点を中心にスタートするという趣旨でございましょうか。
といいますのは、例えば保護範囲の拡大というような論点がここには書いてございませんけれども、その辺はどのようにお考えでしょうか。

花木制度改正審議室長

この論点をもとにスタートというよりは、これはあくまで論点として事務局で準備したものでございますので、ここ以外にもっと重要な論点があるいうことであれば、むしろぜひ出していただきたいと思っています。保護範囲の拡大につきましては我々の理解としては3の類似範囲の拡大という部分ではないかと思ったんですが、それとは違うということかどうか、御指摘をいただければありがたく思います。

峯委員

表現が悪かったかもしれません。具体的には保護の対象の拡大。例えば画像デザイン等々の話です。この点を含めて、意匠の定義の見直しというものは議題に入るのかどうなのか、その辺、お話しいただけますでしょうか。

花木制度改正審議室長

意匠の定義につきましてももちろん御議論いただきたいと思っております。我々の資料の中でも、済みません、私がちょっと飛ばしてしまったところに入っているのだと思うのですが、現在の意匠制度、必ずしも保護範囲が十分かどうかということですね。この審議会に先立ちます1年前に委託調査で実は研究をやっておりまして、その中でもそういう御指摘があったかと思いますので、1つの論点として入れていきたいと思います。はっきり書いてなかったのは我々の方の落としていたところで、あえて落としているつもりは全くありません。

森山委員

質問、よろしいでしょうか。あるいは御説明いただいて、私が聞き漏らしたのかもしれませんが、出願が4万件程度で、漸減、わずかずつ低下傾向にあるという御説明でしたが、膨大な行政コストをかけた登録率についてはどのような推移になっていて、今どの水準か教えていただたけますか。

花木制度改正審議室長

登録意匠の件数でございますが、お手元にはグラフしかないので、グラフで申し上げますと、10ページに出願登録件数の推移ということで、まず出願につきましては11ページの上のところで、日本というところですね。日本は四角の部分なのですが、数年前4万件で推移しておりました。――済みません。参考資料2の11ページでございます。参考資料2の「意匠制度の概要」という資料があるかと思います。そちらの10ページ、11ページにグラフがございまして、出願件数につきましては、11ページの上のところ、世界各国の出願件数ということでございます。見ていただいたとおり、中国は急速に伸びているということでございます。日本はこの四角の分でございますが、年間4万件程度でございます。97年に4万件を割りまして、最新2002年は3万7230件でございます。
登録はこの下のところでございますが、日本の場合は7割から8割が登録されているということで、件数で申し上げますと、2002年の場合は3万7000件のうち3万1503件の登録ということでございます。

大渕委員長

よろしいでしょうか。

森山委員

ありがとうございました。

大渕委員長

ご質問等につき、他にどなたかございませんか。
それでは、先ほど詳細な御説明がありまして、今後検討していくべき論点のたたき台というか、リストということで、資料1の4の論点というところで必要なものを挙げておられますが、このあたりを中心といたしまして、他の箇所でも結構でございますが、この中で、例えばどの点を重視する、どの点はさほど重要ではないのではないかとか、あるいはこの点は加えた方がいいのではないかといった点を御議論いただければと思いますが、どの点でも結構ですので、今申し上げたような点についての御意見をお願いいたします。

平野委員

平野です。
私、経済同友会のメンバーなんですが、経済同友会の中でも魅力のある日本の再生と総合戦略を考える委員会というのをつくって、私、そこの委員をやらされていますが、各企業のトップマネジャー、経営者の方々がやっとデザインというのが経営戦略の中に使われるということができるんだなというのを少し勉強し始めたのかなという段階なんですね。企業の中でデザインの位置づけというのがやはりまだまだ温度差はありますが、いろんなところで最後のフィニッシュと思われているところが非常に多いんですね。
もう1つ、その中でいろんな意味でA社はデザインに非常にお金をかけていますという話をされる経営者の方もいらっしゃるのですが、それがまだ経営戦略に結びつかない。技術戦略は経営戦略と結びついているんだが、デザイン戦略というのは結びついていないという意見が非常にまだ多い。
その中で1つこの意匠制度との関係の中の意見として出てきたのが、技術というのは特許という、ある意味で非常に力の強い法律の中でやっていけるんだが、デザインにお金かけても結局まねされるよねという意見が出てきています。これはだまだデザインと経営戦略というのをこれからもっと勉強し、何かしていかなければいけないなという話をしている中の話なんで、まだ少し生な話かもしれませんが、そんなような状況があります。
これは経済行為、国のこういう骨太の政策も含めてデザインという言葉がやっと今出てきているという状況と、経済界もデザインというのも少し目覚めているという状況の中での、この制度を変えると何が経済行為の中で非常に役に立つのかという、ちょっとそういう観点、もちろん法律的な話も含めて皆さんで御審議されるということだと思いますし、私もその中に入りたいと思っていますが、先ほど小川長官がおっしゃっていた国際競争、要する日本の再生というようなところの大きな観点と今の企業の戦略というところの中でデザインの位置づけと意匠制度というのがどういうふうにリンケージするのかみたいなところが私は論点の中でエッセンスとしてあったらいいかなというふうに思います。
以上です。

大渕委員長

他にどなたか……。
では、光主委員、お願いします。

光主委員

JEITAというか、日本電子情報技術産業協会、要するに電気メーカーが主体に集まっている団体ですけれど、その中の皆さんの意見を確認して色々検討してきまして、こういう制度改正があるということで御意見を色々聞いてきまして、最終的には意匠権の強化については前向きに賛成であるということは、業界としては一応言っています。
ただし、今現在意匠の問題で、この論点で3と4が挙がっていますけれど、基本的にはこの点がやはり業界としては物すごく懸念している点であるというこでございます。

大渕委員長

3と4というのは論点の(1)の34ということですね。

光主委員

そうです。
特に現在の審査、類似の幅が物すごく狭いのではないかという議論がやはり一番最初に出てきます。権利の幅というのは審査の経緯をみて権利をやりますから、そういう意味で審査の過程において類似判断が狭くなると、権利行使というのがだんだん解釈は狭くなってくる。産業界としてはそういうふうな考え方を持っています。
もう1つは、新規の商品については意匠権の幅を広く見るとか、古い商品については狭く見ると、こんな勝手なことが言えるかどうかわかりませんけれど、そういう1つの臨機応変の考え方も審査の過程であるのではないだろうかという意見も出ております。
そういう意味では審査のポイントの明確化という点も大きなポイントなのかなと思っております。
以上です。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。
では、茶園委員の方が先に手を挙げられたような感じですので。

茶園委員

意匠権、ないしは意匠制度をどうするかという点から色々な論点を挙げておられるのですけれども、保護対象であるデザインにつきましては、これは言うまでもないことですが、意匠法以外にも様々な保護法があります。そのため、問題としてはどのようにデザインの創作を奨励するか、あるいはデザインを保護するかとか、デザインを積極的に活用するにはどうすべきか、といった点から考えた方がわかりやすいのではないかと思います。そういう点から見ますと、意匠法というのは登録制度によってデザインを保護するという制度ですから、登録制度以外の保護制度と比較してどうあるべきかということが問われることになると思います。とりわけ論点の1とか、期間の短縮化に関しましては、現在例えば不正競争防止法2条1項3号で何ら手続を要することなく保護を与えるという制度がある。そういう他の保護制度との関係において、さらに登録制度の下で期間を短縮化させるということが必要なのかどうかという点が検討されるべきではないかと思います。
わざわざ登録をさせて保護を与えるということになると、期間の短縮よりも、もちろん期間は短縮すればするほど望ましいと思うのですけれども、手続を踏ませた上で保護を与えるのですから、より明確な、あるいは強力な保護を与える、といったことが一番重要なのではないか。
先ほど光主委員がおっしゃいましたように、類似という概念が余り明確ではない、予測可能性がつかないということであるのであれば、明確にしないと、登録をわざわざさせても余り意味がないということにもなりかねませんので、そこのところあたりが一番重要な論点ではないかと考えております。
以上です。

大渕委員長

それでは、引き続きまして、岡崎委員、お願いいたします。

岡崎委員

時間的な観点という意味で挙がっているのは1だと思います。FA期間が7.7カ月、SA期間が12.5カ月、これが長いか短いかということでございますけれど、先ほどの物品分野で出願件数が多い産業分野と、少ない産業分野がありますが、これはひとえにそれらの産業分野によって長いか短いか色々違うと思います。
日本知的財産協会の場合、多くの企業が加盟しておりますけれど、意匠委員会の多数の意見におきましてはこれぐらいの期間は妥当であり、1つ要望をいえばFA期間を6カ月ぐらいに短縮していただければ大体満足ではないかと思います。
それから、救済策として早期審査制度がございますので、とりわけ期間を短くすべきというような産業分野につきましてはその制度でリカバリーできるのではないかと思います。
むしろ時間的な観点では、企業の場合、デザインを試行錯誤しながら完成までこぎつける過程において、本意匠を出しまして、関連意匠を出していくという手だてをするわけですけれど、今の制度では本意匠と関連意匠を同日付で出願しなければなりません。デザインの創作活動から見ましたら、デザインを一旦決めて、ニーズに応じてマイナーチェンジしていくわけですけれど、そのときにマイナーチェンジしたデザインがみずからの本意匠の出願で拒絶されるので、デザインのトータル的な保護が阻害されるというような不都合を感じる局面がございます。そういう意味でデザインのトータル的な保護という観点から本意匠、関連意匠、類似意匠を時間軸的にもう少し保護を厚くできないかというのが1点です。
もう1つは時間軸の後ろの方ですけれど、いわゆる企業の場合、ブランド戦略の中にデザインを組み込んでいこうとしましたときに、企業のブランド化したデザインが15年という期間で十分なのかどうかというところも1つの問題点としてあるのではないかと思います。企業のブランド化したデザインにつきましては、例えば欧州では25年の延長制度というのがありますけれど、ブランド保護の一環としてデザインブランディングを保護するためにさらなる期間延長というのが可能なのかどうかという点も課題として考えていきたいと考えております。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。
どうぞ、森山委員。

森山委員

先ほど登録件数等、登録の率について伺いました。
参考資料2にさっきお示ししたものによれば、これはタイムラグが年度にありますので、まさにこれを主張したいわけではないのですけれど、出願が4万弱で、登録が4万件という、ほとんど無審査寄託制度に近づいているのではないかと。この年度に関しては。2002年については8割というふうに伺いました。
そうしますと、60人ほどの審査官で拒絶査定されるものは年間1000件ですから、お1人100件程度。そのことが1点であります。
それから、外国からの出願は極めて少ないというデータもお示しいただいております。
それらを考えますと、ここの論点の1、2、3等で挙がっていますのは、もちろん今の現行の審査制度を維持するという観点でございますが、長官、それから審議室長が冒頭に御説明されましたように。デザインに関して世界をリードする保護制度というものはどういうものということを、室長は口頭でございましたが、第8番目にぜひそれを明示していただきたいというのが私の希望であります。
その他にも言及されたものが多々ございまして、アパレル、玩具はなぜ少ないのか。もちろん大きな問題として類似の範囲が不明確ではないか。類似の範囲はだれが審査しても完全に明確であるいうことを保証するものは何もない。そのときに、類似範囲を明確にするのは一体全体審査官であるべきなのか、業界の有識者、あるいは業界団体であるべきなのかということも含めて8番目に世界をリードするデザインに関する制度とはどういうものか、ちょっと期間が短うございますけれども、ぜひここの上に、口頭ではなくて、論点にお加えいただきたいというのが私の希望であります。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。
牧野委員、お願いいたします。

牧野委員

この4の論点に挙げられているところを拝見すると、まず現行意匠制度を前提としての論点のように思われるのですね。森山委員がおっしゃったように、新しいデザイン戦略によって経済の活性化に資するという観点から見ますと、もう少し制度改革という方向性を論点として打ち出していただいた方がいいのではないか。そのためには意匠の定義の問題もございましょうし、意匠権の権利範囲の拡大あるいは明確化というために、一体どういう観点から意匠を見るのかの問題もあります。この点は、類似範囲の明確化ということで取り上げておられるのだろうと思いますが、デザイン活動の成果として生ずる意匠をどの段階で保護すべきかという観点からしますと、本来、意匠法の目的は意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することにあるのですから、意匠の創作の保護という観点は欠かせないと思います。その意味からすると、創作性の保護という観点があまりこの論点に入っていないように思われます。やはりデザイナーの方々は自分が創作したところが正当に評価されて、それがすぐれたデザインとして活用されるというところを保護してほしいというふうに思っていらっしゃるのではないかと思うのですけれども、そのあたりはこの論点のどこで議論すればいいのかちょっとわからなかったものですから、お聞きしたいと思います。

花木制度改正審議室長

資料で十分書けていないころもあるかと思います。制度の議論ももちろん、まさに現在の制度を前提にしてということもあるかもしれませんし、それに限らないで、牧野先生がおっしゃるような創作性の保護というのも十分重視した新しい制度という、森山先生が御指摘のような制度もあるかと思います。
具体的に制度論につきましては、今日直ちに入るというよりは、むしろその前提として何が大事なのかということを御議論いただいた上で、それを踏まえてどのような制度があり得るのかという議論を改めて次回、あるいは次々回あたりで幾つか選択肢をお示しして、それが本日御議論いただいた観点からどういうメリットがあるのか、どの制度はどちらのメリットがあるのかという具体的な議論に入っていけたらと思っております。
したがいまして、本日具体的な御提案があればもちろんおっしゃっていたけたれば、それを踏まえて次回の資料をつくりますが、どちらかというと、それに先立つ意匠権はどうあるべきという御議論を中心にやっていただけたらと思います。
森山先生の論点に追加というのは追加させていただきたいと思います。

大渕委員長

どうぞ。

峯委員

峯でございます。
今、花木審議室長の方から今日は権利等々を中心としてというお話がありましたけれども、権利等々を検討する前提として、まず意匠法の守備範囲を決めようと。意匠法がどこまでカバーしていくべきなのか。先ほど技術的な形態が意匠に流れてきている。これを是とするのか、否とするのか。また、アパレルその他利用が少ないといいますけれども、これは今の意匠法が彼らのニーズに合っていないということなんだろうと思いますが、それがどうしてなのか。単に審査が遅いからだけなのか、コストがかかるからだけなのか。その辺の分析、それを庁の方にお願いしたいと思います。
意匠法がどこまで保護すべきか、あるいは業界がどこまで保護してほしいと期待しているのか、そういうところをベースにしつつ、また平野委員から話があったような、デザイン保護というのをどういうふうに考えていくのか。あるいは類似ということを考えるにしても、意匠法はデザインをどうとらえているのか。これを考えないと、類似の決め方、これが出てこないわけですね。現在類似の範囲が非常に揺れている。なぜ揺れているのか。1つの原因としては、意匠法が図面にあらわされた形状としての意匠、これをどういう観点から保護しているのか。そこのところの統一的な理解がなされていない。そこに大きな原因があるのではないかと思います。
ですから、意匠法というのは物の色・形だけ保護するのか、それともそれが生まれてきたゆえんとしてのある意味コンセプト的なところ、これまでもカバーしていくのか。あるいは技術的な形態についてはどう考えるのか。そういうような意匠の枠組み論、それをまず初めにやっておかないと、制度論の細かい具体的な議論、これは進まないのではないかと思います。よろしくお願いいたします。

大渕委員長

水谷委員、どうそ。

水谷委員

今の峯委員のお話とも関連しますし、それからこれまでいろんな委員から類似範囲の拡大というようなお話がございました。それにも関連するのですけれども、本日、庁からの御説明をいただいたときに、現実の意匠の出願のマジョリティーを占めている部分というのは電気電子機械であったり、土木建築用品であると。こういったものは、ありていに言うと、購入者の立場でデザインが購入のインセンティブになっているわけではないと。そういう製品の分野の意匠出願が、結果としてマジョリティーを占めていると。こういう説明がございました。
デザインが、購入のインセンティブになっていないということは、逆に出願する方の立場から言えば、例えば、特定の製品について、特許で保護を図っていたけれども、存続期間が満了してしまったので、その後は、意匠を出して意匠で保護を図っているというような、技術を間接的に意匠で代替して保護してもらうという、意匠制度が本来意図していたところとは、別の活用の仕方が現実に非常に多いということではないかと思います。
例えば、建築現場で使用される床材表面に凹凸をつけるようなエンボスなどがございますけれども、凹凸のつけ方如何で、床材の強度が変わってくる強化に資する。そのような形状が結構意匠で登録されておりますので、恐らくそういうものを念頭に置いておられるのではないかと思います。
それで、そういう機能に基礎を置くようなデザインが意匠出願の多数を占め、また意匠登録の多数を占めていることになると、そういったものについて、あまり広い保護範囲を与えなくても、見方によってはそれほど不合理とは言えないのではないかという見方があり得るのだろうと思います。
他方で、意匠法の本来の目的といいますか、デザインが購入のインセンティブになるような製品、それは自動車であるとか、家具であるとか、雑貨であるとかアパレルだとか色々あるのだろうと思いますけれども、こういうデザインで勝負して、デザインが売上高を左右するようなそういう製品についての意匠、これらについて、類似範囲をより過大していくかということであると、これは皆さんおっしゃるように合理性があると思われますし、類似範囲の拡大を図っていかなければならないのだろうと思うわけですね。
そうなりますと、峯委員からも指摘がございましたけれども、技術に基礎を置くような意匠、そうではない、本来の意匠、どの辺のところにポイントを置いて考えていくのかというのが、非常に重要なのではないかと思われます。
これは審査基準の問題でもあるかと思うんですが、ある程度――今日は余り個別論には入らないということですが、―デザインを主眼とした意匠とか、そうではない意匠とか、ある程度類型を考えて類似範囲を見ていただくというようなことが可能なのかどうかということを、ちょっとお話を伺っていて感じたのですね。
というのは、ちょっと隣の方の領域になりますけれど、著作権法という法律があって、著作権法でも、保護範囲をどうするかという議論は長年ございます。その場合に、著作権法は著作物を保護しておりますが、コンピュータプログラムも著作物ですし、小説や絵画や音楽も著作物です。著作権法の世界ですと、プログラムのような機能に基礎を置いた著作権物の保護範囲というのはそれ程広くないという印象を持っております。これは判例でも比較的はっきりしております。それに対して、絵画や小説というような分野の著作物は、比較的広い範囲の保護を認めております。これは表現の自由度が広いとか、狭いとかということを理由にして、そういう区分けをしておりますけれども、そうだとすると、意匠の世界でも、先ほど申し上げしましたように、技術に基礎を置くような意匠とか、アパレルのような本来の意匠といったらいいのでしょうか、そういうものによって少し保護範囲を変えるとか、審査基準の基準を変えるとか、そういう柔軟な対応をしていくことが、あるいは、もう既にしているのかどうか存じませんけれども、そういう発想があるのかどうかということも、少し検討対象にしていただけたらと思います。
以上です。

原田意匠制度企画室長

分野別の基準なんですけれども、はっきり言って分野別の基準というのは各分野でつくっているわけではないのですけれども、その分野の特性に応じた審査はやっているという現状だと思います。機能的な部分が多いようなものは割とちょっとした細部の違いというものを非常に重要視するというよう形で非常に狭い類否判断になっているかもわからないのですけれども、よりデザインのアプローチが大きいような分野については割と広めの類否解釈というのを実務の面ではやっているというのが現状だと思いますけれど、それを1つの分野ごとの基準とかいう形で現在は公表はしておりません。

大渕委員長

茶園委員、どうぞ。

茶園委員

御検討いただきたいことなのですけれども、先ほど戦略的デザイン活用の重要性に関する御報告をいただきまして、そこではデザインをブランド確立の手段として捉えられていました。先ほどの検討の視点においてもそういうことが含まれていたと思うのですけれども、デザインをブランド確立の手段として用いるというのは理解できないではないのですけれども、では、デザインをそのようなものとして見るということであるのか。そもそもブランド確立とデザインの関係が必ずしも十分に理解できない点があります。つまり、デザインによってブランド確立をして、確立したブランドを意匠権で保護しようとするということを考えようということなのかという点です。そういうことを考えるとすると、商標法との関係もかかわってきて、先ほど岡崎委員がおっしゃったように、保護期間はもっと長く、15年以上必要なのかという点が問題になると思います。また、結局、意匠法の守備範囲というところに関わってくると思うのですけれども、今後登録意匠制度をブランドとの関係で見るとか、意匠をブランドとの関係で見るという、そういった視点を持つべきだということであるのであれば、具体的にそれはどういう意味を持って、意匠の保護にどのような影響を与えるのかということを御議論いただきたいと思っております。
以上です。

大渕委員長

それでは、菅井委員の方が先に手を挙げられていたので、先にお願いいたします。

菅井委員

自動車工業会ということで、先ほども幾人かの委員の方から触れていただいていますので、重複するところは割愛しますが、業界の中でいきますと、非常に高額で、かつ、先ほど意匠が購入の動機づけという意味でいくと、技術開発力も大変なのですが、売れる、売れないというものを左右するところについては非常に大事なところにデザインというものを位置づけているわけです。そういった商品を扱っている中で2つほど問題として抱えています。
1つは、独創的なデザインを大事にするということと、それが非常に長い期間、企業のコーポレートのブランドとして長く継続していきたいという部分、これは創作者が同一の場合と外部からアタックされる場合と分けて考えていかないと整理がつかない。先ほどの類似性の判断という部分も当然各社さんがそれぞれ独自につくったものに対しては、自社のラインは多少変えても守りたい。ただし、他社からはアタックされたくない。当然他社から類似のものが登録されていくというのは、自社と外部というのは何とか区別できないものだろうかということは非常に大きなニーズとして出ています。
これはまた市場の中に流通するのが完成車だけではない。部品のマーケットが非常に大きい。この場合も実は部品の意匠を出すときに今非常に苦労しているわけです。アジアも含めていきますと、部品のマーケットは模倣品を含めて、日本も同じですけれども、非常にこれが出てくる。これを守るすべが現在の法律の中でいきますと、非常に難しい制度になっています。先ほどもちょっと言っていただきましたが、開発期間が長い中で完成車も変わっていく。あるいは部品単位も少しずつ変わっていく。マーケットの方にも流通する。こういったところを何とか取り入れていただかないと、真の創作者のラインというのはやっぱり守りたい。これは世界のカーメーカーはどこも一緒だと私は思います。
もう1点、非常にわがまなんですけれども、各委員からもいろんな意見が出ておりますけれども、先ほど言ったように、例えばカーメーカーですと、ベンツのブランドの意匠はだれが見てもベンツだと。何代変わってもベンツである。私どもでいきますと、カブみたいな、もう20数年来つくっているわけですけれども、本当は意匠権を欲しいんですね。そういったものと、物品によっては非常にライフサイクルが短いものがある。これは何とか1つの法律の中でなかなか難しいのかもしれないですけれども、先ほどの類似の範囲も権利者としては大きくしたい。ただし、似たようなのはコンペチターとしてはやはり出していきたい。自分がコンペチターとして出していくケースもございます。これはいつも相反するものだと思うんですね。
そういうところは少し柔軟な制度――先ほど期間の問題という話をしまして、それから類似性も自分の意匠のラインだけは守らせてくださいと。多少類似でも、自分の意匠で似た意匠が拒絶されるというのはなかなかんしどい。先ほどから言いましたように。そういったころ、少し柔軟な制度ということを考えていただけるとありがたいかなと。
その2点をぜひ検討の中に加えていただけれるとありがたいと考えております。

大渕委員長

先ほど手を挙げておられた勝尾委員、お願いいたします。

勝尾委員

皆さんの意見を拝聴していて、まずデザインという言葉自体の使い方というか、定義の仕方はかなり幅が広いなと思うんですね。
それと関連して、意匠をどうとらえていくかということはまずあるのではないかと思います。技術に基礎を置く意匠という御発言があったのですけとれも、多分デザインというのは技術と外形というものが不可分なところで成立しているので、とらえ方をもうちょっと狭く、外形だけにとらえるのか、それとも先ほど三浦さんから御説明のありました資料の中にもありますけれども、過去は商品の外形だったと。現在は商品コンセプトとか外形とか顧客との様々な接点における統一したデザインというものを考えていこうというふうに変わっているという資料がありますけれども、多分現実としては企業はそういうふうに動いてきている中で、意匠法自体のあり方も、峯先生からもお話がありましたように、意匠の定義をどうするか。画面のデザインというと、多分画面のグラフィカルユーザーインターフェイスの形だけではなくて、そこと機能が不可分にくっついてくると思うんですね。そのあたりを整理しておいた方が議論がやりやすいのかなと思います。
それから、無審査でやるのか、審査というところを維持するのかというのも含めて、十分に議論しなければいけないなと思うのと、あと、アパレル、玩具のところは非常に登録件数が少ないということで、そこにこの制度が持っている問題が一番集約されているのかと思います。だから、ここの委員会にその業界の委員の方が入っていらっしゃいませんけれども、例えばヒアリングをもう1度していただいて、どういうところに問題を感じていらっしゃるのかというのをまとめて、次のところで資料を出していただければなと思います。
以上です。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。
次回以降、色々と具体的に議論が進められていくこととなるかと思いますが、本日は第1回目ですので、フリーな立場ないし感覚から、今後議論すべき点等につきまして御議論いただければと思います。先ほど事務局の方から論点のリストということでたたき台が示されておりますが、これにつきまして、せっかくの機会ですので、こういうものも盛り込んだ方がいいのではないという点等につきましてどなたかございませんでしょうか。

峯委員

峯でございます。
先ほど根底的なお話をさせていただきましたけれども、表層的な話としては類似が不明確だという話、これを補完するための出願の仕方という点にも検討点があろうかと思います。例えば現在1意匠1出願ということで、1つの願書に1つの図面という形で固定されています。こういうふうに固定すべき必然性は多分ないのだろうと。意匠の定義から意匠というのは1つの形態なんだというふうに一義的に言っていますけれど、そうではない考え方もあり得ようと。具体的に言えば、1つの願書に複数の、同一のコンセプトに基づいた創作形態、これを描く。そういうような出願をすることによって類似の幅が視覚的に見えてくる。こういう手法もあろうかと。あるいは強い権利という意味合いで考えますと、クレーム制度。デザインの保護を請求する請求内容を文書で書いていく。これがどこまで可能なのか。ちょっと弁理士会としても検証中ですけれども、そういうような観点というものもあり得ないかということを考えておりますので、テーマとしていただければと思います。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。

山本(建)委員

山本です。今大学におりますので、その立場から少し発言をさせていただきたいんですけれども、今回の意匠制度見直しに関する検討の資料1の視点の第1目標はブランド確立と産業競争力、国際産業競争力だと思うんですけれども、そのためデザイン政策として意匠制度を見直そうということなんですけれども、そう言ってしまうと、多分これは論点にはならないのかもしれませんけれども、昨今国立大学も大学法人化されまして、ますます産官学による新しい企業であるとか、新商品開発であるとか、ものづくりの体制が大学を中心にして、特に地場産業、零細企業をまとめるような形で、1つの企業母体が確立というか、芽生えているという状態なんですね。
その中で、かつて特許面では技術シーズをたくさん持っている大学では特許をたくさん取って事業化しておりますけれども、最近では今年になってから文系による産官学連携ということがかなり推進されてまいりまして、デザインに対して地元の企業からのニーズが大学に向けられてきておりまして、デザインサービスファンクションを持っている大学は、かなりの企業と一緒にデザインを開発している。つまりそこで意匠権なり、知的財産権が多数発生しつつあるというのが割と最近のものづくりの世界での動きの1つではないかと思います。
そういった新しい動きで、それが国際競争力になるか、新しいベンチャー企業としてこれからの時代を担っていく、産業に育っていくかわかりませんが、私も実際に関西の企業さんからうちの大学にもデザイン科があるので、地域共同研究センターを通じていろんな話が舞い込んできます。デザインの依頼がきます。デザイン事務所ではありませんので、教育的な共同研究をして、教育的な効果があるものに対してはお引き受けするようなことにはしておりますけれど、皆さんこぞって、中小企業、大きな企業さんでも新規事業を起こしたいとか、全く新しいネットワークで物をつくっていきたというような新しい動きがあるんですね。そのときに必ず出てくるのがデザインによって何とかしてほしいということと、ブランドをつくりたいという、この2つが言葉として非常に流通しておりまして、先行してくるんですね。こちらの方がどぎまぎするような状態で、お話を逆にお聞きすることになってしまうのですけれども、そんなに簡単にブランドも確立できるわけでもありません、独創的なデザインもすぐできるわけでもありませんけれども、そんな中で一番気になるのが、先行意匠についてお調べになりましかとこちらから質問したときに、そういう一般的なやらないといけないことを御存じない方が余りにも多くいらっしゃるんですね。これは特許なのか、実新なのか、意匠なのか、著作権なのか、その辺も全くわからずに、先行意匠を調べないとどういうことになってくるかということもわからないし、ここでもう既に出願権利保護というふうな話になっていますけれども、そこに至らない部分が私の近辺で問題になっておりまして、ある意味では意匠制度の外部サービスの充実であるとか、もう少わかりやすく制度を啓蒙していくというんでしょうか、そういうわかりやすい言い方になってしまうのかもしれませんけれども、1つはそういう新しい創造の動きが大学を中心として起きつつあるという中で、知財が色々発生しておりまして、大学でも色々研究会をやっておりますけれども、意匠制度そのものについて特化した研究会とかありませんで、その辺ももう少し全国的にどういう状況になりつつあるかということを把握して、議論させていただければと思います。

大渕委員長

他にどなたかございませんでしょうか。

菅井委員

先ほど細かい話なのでと思いましたけれども、検討の課題の中の一部としてぜひ入れていただきたいということで、図面のあらわし方ですね。これは類否判断をする際の基礎なものですから、ここをもうちょっと明確にできる手法なり、あるいは省略しても構わんみたいなところを少し検討の中入れていただきたいということが1つと、それから先ほどいろんな表現方法があるのではないかというお話もありましたけれども、物品性、実は自動車関係のものというのは、先ほどの部品以外に、例えばおもちゃですとか、そういったものにも実は権利を取らざるを得なくなります。そうすると、後から出てくるものは、先ほどのように拒絶になってくる。実際の車の意匠でおもちゃの意匠というのは拒絶されてしまうことも出てくるわけです。あるいは唯一自動車関係のメーカーですと、ほとんど完成車のデザインはライセンスしないということだと思いますが、特許、実用新案はライセンスしますが、意匠は守る。ただし、おもちゃみたいな世界ですとか、そういったところへの流通というのはあるわけで、そういった物品の枠をもう少し、例えば出願を減らすという意味からしても、自由な物品を指定できるような出し方もあるのではないか。そういったことも検討の中に加えていただけるともう少し全体ボリュームの話ですとか、審査も楽になるのではないかなという気もいたしますし、そういったことも加えていただければと思います。

大渕委員長

山本委員――山本委員は2人おられますが、本日欠席の方の山本委員の代理の方、御発言を御遠慮されているかもしれませんので、何かございましたら。

山本(為)委員(代理 高木氏)

私は中小企業の立場での特許、意匠の出願も担当していますが、資料1で中小企業という欄を見させていただいたのですけれど、出願件数の低迷、これは事務コストや登録料の負担が正直申しまして大きい。ただ、これは厳密に言いまして、外国出願を含めてという意味での出願費用、登録費用が大きいということで、外国出願につきましては昨今模倣品の問題もございます。当社でも対策に色々悩んでおります。模倣品というのは以前から、例えば中国とか韓国から模倣品がございましたけれども、以前はそういった国の商品というのはレベルがそれほど大したことなくて、模倣品であっても消費者は違うものだと認識しておりましたが、最近そういった国々の技術が上がっておりまして、模倣品もレベルがかなり上がっている。直接的にそういった問題が中小企業でもかかっておりまして、その対策について外国意匠出願も必要だと考えています。アジアの国においては、特許出願――当社の場合、重要なものは特許も意匠も出願しているのですけれども、アジアの国によっては特許は出願してもなかなか登録にならない。ファーストアクションさえもなかなか出てこないという国がございまして、とりあえずそれらの国の相手に対して何らか手を打つという意味で意匠、そういった国でも無審査もあり、意匠は比較的早期に登録になりやすい。そういう意味で意匠の外国出願は非常に重要であると思っております。
ですから、中小企業においても意匠の外国出願というのはそういう理由で重要になってきますので、外国出願を含めての御検討をお願いしたいと思っております。

大渕委員長

ありがとうございました。
他にどなたかございませんか。

平野委員

私、本来で言えばデザイナーの立場というか、組合の理事長としての意見を言わせていただければ、資料1のデザイナーと書いてあるところで、デザイナーと製造者のすり合わせの中で製品が開発されることが多く、デザインのみの独立した権利化する場面が生じにくいと書いてあるのですが、確かにそれもあるかもしれませんが、やっと昨年度政策室の方と一緒に下請支払い遅延防止法という法律の中にデザインを入れていただきました。で、やっと契約をしなければいけないという意識が製造者と我々の中で芽生え始めたというところなので、これから多分意匠とか、特許もそうだと思いますが、権利に関してやっとデザイン業も行使ができる下地ができたかなというところなのものですから、まさに意匠法その他によって、例えばロイヤリティーの契約ですとか、本当に自分の権利に対して対価は何を払ってもらうかとか、あとはいろんな案を提出しますが、その中のどの部分を相手に譲渡したのかとか、これがやっと我々の中でも勉強が始まったのかなというところだと思いますので、ぜひそういう意味ではデザイナーに使いやすいということも考えていただいたり、今みたいな他の法律との関係とか、そういう部分を御審議いただければ非常にありがたいなと思います。
それと先ほど話があったと思いますが、デザインというのが著作権の中で本当に認められるのかどうかですね。これは結構8団体というデザイン団体――我々は組合ですが、職能団体がありますが、その中でも多分論議している部分なんですね。要するに著作権というのと意匠権というのがどういうふうにしていいのか。我々わかりませんというのがまだ答えかもしれませんが、そんなのも先ほどの水谷委員がおっしゃっていた関係の中で我々も整理できていないというようなところだと思っております。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。
岡崎委員、どうぞ。

岡崎委員

4に意匠審査における類似範囲の明確化とございます。意匠以外に特許などでは審査官の拒絶理由の内容、それから出願人のそれに対する意見書などが権利範囲の解釈に役立つ1つの参考情報になっております。意匠におきましても審査における判断根拠を明確にしていただくということは類似の解釈に非常に役立つと思います。
これは私どもから庁の方にお聞きしたいのですけれど、この判断根拠を明確にする上で、庁としてどの程度までできるのか、あるいはそれをする上でどういうところが問題なのかをお聞かせ願えればありがたいと思います。

原田意匠制度企画室長

拒絶理由通知ですが、今は引例の書誌事項しか提示していないのですけれども、これは意匠課において、もう少し理由を詳細に書かなければいけないのではないかというのを検討していまして、まだすぐにどうなるかということはできないのですけれども、運用の中で拒絶理由をもう少し詳細に書くやり方を今勉強中でございます。
一方、登録になったものについては、御存じだと思いますけれども、参考文献という形で意匠公報に掲載することを意匠課の運用の中では進めておりまして、公報を見るとたくさんついているものあると思いますが、それについても、まだどういうものを参考文献とするとか、最低1つつけるとか、そういうようなところは強制的にはやっていません。その辺について、審査のスピードと業務負担との兼ね合い、バランスを考えてもう少し努力できるところはやろうというような段階です。

大渕委員長

他にどなたかございませんか。
本日は第1回ということで、幅広く色々な観点から貴重な御意見を多数頂戴いたしましたが、これを踏まえて今後の資料等の作成にも生かしていただければと思います。
それでは、時間も押してまいりましたが、この際特に何か今の点に関係してでも、その他の点でも結構ですが、何か御発言等がございましたらお伺いいたしますが……。

次回日程等について

大渕委員長

それでは、最後に今後の審議会の日程等について事務局から事務連絡をお願いいたします。

花木制度改正審議室長

本審議会でございますが、冒頭御説明ございましたように、意匠制度について知財推進計画の中で2005年度のうちに結論を得るということになっております。したがいまして、そのスケジュールに合わせて意匠制度の大枠について議論をお願いしたいと思っております。
当面でございますが、次回は10月15日14時から第2回ということでございます。本日いただきました意見、それからさらにこの点を整理すべき、あるいはこういった業界の意見を集約して提示すべきという御意見がございましたので、整理をさせていただきまして、そういうものを踏まえて議論のスコープをはっきり出させていただきたいと思っております。
具体的な内容につきましては、そういうことを決めた上で具体的な審査制度の大枠の部分から入っていくということでお願いしたい思っております。
また、本日の説明の中では申し上げませんでしたけれども、茶園先生からお話がございましたように、不正競争防止法と密接に関連する部分もあるかと思います。不正競争防止法につきましては、現在同じ経済産業省の中で2条1項条3号のデッドコピー規制の部分について見直しをするという議論もあるかと思います。こちらの方は非常に密接にリンクする問題でもありますので、早目の段階で御議論をお願いしたいと思っております。
3回目以降につきましては、まだ日程がセットされておりません。現在お伺いしているところかと思いますが、調整いたしまして、なるべく早目に予定を入れるようにさせていただきたい思っております。
以上でございます。

閉会

大渕委員長

それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第1回意匠制度小委員会を閉会させていただきます。
本日はお忙しいところ御参集いただき、かつ、熱のこもった御議論をいただきましてありがとうございました。

[更新日 2004年10月18日]

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