大渕委員長
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定刻となりましたので、ただいまから、産業構造審議会知的財産政策部会第7回意匠制度小委員会を開催いたします。
初めに、この10月に事務局の一部に異動がございまして、今回、ご出席いただいておりますので、事務局よりご紹介いただきたいと思います。
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田川審議室長
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それでは、本日出席の新幹部職員を紹介させていただきます。
まず、守屋特許技監。
高倉特許審査第四部長。
篁審判部長。
以上、3名がそれぞれ交代して新たに事務局となっております。
以上でございます。
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大渕委員長
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ありがとうございました。
さて、前々回と前回の2回にわたりまして、意匠制度の在り方ということで、意匠制度の検討項目の全般についてご審議いただき、皆様からご意見を頂戴いたしました。本日はこれまでの検討項目のうち、意匠制度の枠組みの在り方、すなわち無審査登録制度の導入によるダブルトラック化というテーマを除く項目について、これまでの論点整理を行うべくご審議していただければと思います。
それでは、まず事務局より配布資料の確認をお願いいたします。
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田川審議室長
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配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は、議事次第、配布資料一覧、委員名簿。
資料1として「意匠制度の在り方(論点整理)」でございます。
参考資料1として「画面デザイン保護の各国比較表」。
以上でございます。
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大渕委員長
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よろしいでしょうか。
それでは早速議題に入らせていただきます。まず、「意匠制度の在り方(論点整理)」というペーパーの前半部分につきまして、事務局よりご説明を行っていただきます。お願いいたします。
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田川審議室長
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それでは、意匠制度の在り方の前半部分である意匠権の効力範囲の拡大、意匠権の強化の2項目について説明いたします。
まず、意匠権の効力範囲の拡大です。
第1点として、権利侵害行為への「譲渡等を目的とした所持」の追加です。
問題の所在としては、模倣品の取締に際しては、譲渡の事実を立証することが困難な場合が多く、個々の譲渡の場面のみを侵害行為として押さえるのでは十分でなく、譲渡等を目的として所持する行為を侵害行為として規定する必要があるという指摘がございます。
本委員会において、意匠権の侵害行為として、「譲渡等を目的とした所持」を規定することについて御検討いただきました。出ました御意見としては、「譲渡等を目的とした所持」を実施行為として規定する場合には、間接侵害規定についても併せて検討すべきとの御指摘があったところです。
対応の方向として、「譲渡等を目的とした所持」は、商標法でも規定されているところですが、間接侵害、すなわち予備的な侵害行為であるということで位置づけられております。したがって、「譲渡等を目的とした所持」を間接侵害(みなし侵害)として規定することが適当ではないかと考えられるところです。
ちなみに2ページにまいりまして、諸外国の規定の例ですが、イギリス、ドイツ、フランスにおいて、侵害品について、譲渡等を目的とする所持が権利侵害行為として規定されているところです。
続きまして第2の点として、権利侵害行為への「輸出」の追加です。
まず問題の所在ですが、模倣品の流通・販売が組織化・国際化をしている状況において、侵害品の海外への流出は容易に我が国へ環流し得る状況になっており、模倣品の国境を越えた循環を未然に防ぐことが重要になっていることから、我が国としても、各国が模倣品・海賊版の輸出及び通過を規制すること等を内容とする「模倣品・海賊版拡散防止条約」の実現を目指しているところです。本年7月に行われたサミットG8会合においても、小泉総理が「知的財産権侵害の拡散防止に向けた国際的な約束をまとめていくべき」と提唱を行ったところです。
また、諸外国においても意匠権の効力範囲として「輸出」を規定している国が多く、模倣品対策の強化の観点及び諸外国との国際的な調和の観点から輸出を追加することについて考慮する必要があるのではないか。
本委員会において、「輸出」、「通過」を規定することについて検討をいただいたところです。これまでの議論では、「通過」については、パリ条約との関係での整理が必要ではないかという観点、規制の実効性にも疑問があり、慎重に検討すべきではないかという意見があったところです。また、「輸出」については、「輸出」を実施行為として規定する場合には、間接侵害行為(みなし侵害行為)についても併せて検討すべきとの意見をいただいたところです。
対応の方向として、意匠の実施行為に「輸出」を追加し、自己の支配下で荷主(生産者、貿易商社等)が国内から国外に商品を送り出す行為そのものを意匠権侵害として規定することではどうかと考えています。
現行法の考え方については、「輸出」について2つの考え方があります。「輸出」を所有権の移転、譲渡の形として考えた場合、こうした行為が国内で行われている場合には「譲渡」に該当し、実施行為及び使用行為に「輸出」が該当すると考えられるところです。一方、「輸出」を、内国貨物を外国に向けて送り出すという関税法に定義されているような事実行為として捉えた場合、こうした行為は現行法の実施行為には該当しないと理解されていまして、学説等においては、「輸出」について、これが譲渡で読めるか読めないかは必ずしも定かになっておりません。
こうした状況を踏まえ、模倣品対策に万全を期するという観点からは、「輸出」を規定する必要があるのではないか。経済がグローバル化し、インターネットを利用したボーダレスな取引が活発化する中で、我が国から国外へ意匠権侵害品を送り出すことにより、例えば個人輸入等の形態を擬装することにより、それが環流するといったおそれも否定できないといったおそれの蓋然性が高まっているということです。
したがって、意匠の実施行為に「輸出」を追加することにより、自己の支配下で荷主(生産者、貿易商社等)が国内から海外へ商品を送り出す行為そのものをきちんと意匠権侵害として規定する必要があるのではないか。
続きまして属地主義との関係ですが、属地主義の観点から輸出を規定することは問題があるのではないかという考え方があり得るわけです。しかしながら、「輸出」とは、国外に向けた商品の搬送として国内で行われる行為であり、海外における譲渡や取引等の行為に対してそのものを直接我が国の意匠権で規定しようということではございません。むしろ、国内の意匠権の効力については、各国の立法政策に委ねられているものであります。
〈参考〉にございますように、諸外国においても、輸出を意匠権のもとで侵害行為として規定している例として、欧州、ドイツ、英国においても登録意匠については意匠法上の侵害行為としており、諸外国においても意匠権の侵害行為として「輸出」を規定している国、税関等においても取締まりの対象としている国があり、各国の立法政策に委ねられているものではないかと考えるところです。
輸出を規定する場合の留意点として4点挙げております。
まず「輸出の申出」という行為を侵害行為とするかどうか。現行法は、「譲渡若しくは貸渡しの申出」について、これはTRIPS協定に基づいて規定しているものですが、これを意匠の実施として規定しております。ここでいう「譲渡若しくは貸渡しの申出」とは、カタログ等による勧誘、パンフレットの配布、物品の展示を含む概念であると解されているところです。こうしたものを踏まえ、「輸出」について、「輸出」の申出を実施行為の1つとして規定するという考え方がありますが、「輸出」について、例えば物品の展示、カタログによる勧誘等という行為、これを観念することは、実際にはそれほどリアリティのあるものではないのではないかということで、あえて「輸出」の申出を規定する必要性は低いのではないかと考えています。
続きまして間接侵害との関係です。
現行法では「業」として、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為を侵害としています。しかしながら、意匠権侵害物品の製造にのみ用いられる物自体が我が国に一旦輸出された後、環流される場合、まず業として輸入する行為に該当しないケースは想定しにくい。例えば個人輸入を擬装するような形で入ってくるケースが想定をしにくいこともあり、そこについては輸入の差し止め等により十分対応可能ではないか。
また、製造のみに用いられる物の輸出を侵害行為とすることになりますと、結果的に海外における製造行為を我が国の意匠権で規制する。そういった観点については、属地主義との関係から慎重に検討が必要ではないかということです。
続いて、「譲渡等を目的とした所持」との関係です。
「譲渡等を目的とした所持」は、譲渡又は貸渡しの予備的な行為として位置づけられるものであり、いまだ実施行為が行われていない段階であっても侵害という結果が発生する蓋然性が高いものを間接侵害として規定しているところです。このため、実施行為に輸出を規定する場合には、「譲渡等を目的とした所持」と併せて「輸出を目的とした所持」も間接侵害とすることが適切ではないか。例えば、輸出を目的に非常に大量なものが集積している状態は規制すべき必要があるのではないかということです。
損害賠償額の推定について、現行法39条第1項で、物品の数量に単位数量当たりの利益額を掛け算して推定する規定を設けているところです。これは侵害物品の「譲渡」だけではなく、「貸渡し」等による損害額についても算定ルールが妥当する場合にはこの考え方を参考とした損害賠償額の算定が可能と考えられているところです。
「輸出」に関する損害額については、輸出行為そのものによる損害を算定することが必要であり、例えば、輸出権者が輸出によって海外市場で販売した場合に得られた利益を想定してこの算定ルールを適用することになりますと、海外での利益について損害を意匠権で規定することから、属地主義との関係では少し問題があるのではないかと考えられるところです。
そのほか、通過については、国際的な動向や実効性の確保等の観点から慎重に検討を行うことが必要ではないかということです。
続きまして8ページですが、第3の項目として、関税における部品の取り外しです。
問題の所在としては、現行の関税法において、意匠権を侵害する物品に該当するかどうかという認定手続がとられた侵害疑義物品については、輸入者が通関前に加工等を行うことで、侵害の部分を除去するといった手続が可能となっています。こうしたことから、輸入者が通関前に意匠権の侵害疑義物品から部品等を取り外し、意匠権を侵害しない物品(非侵害物品)とて通関し、その後に市場に流通している修理部品等を付加することにより復元する、いわば脱法行為が可能になっているのではないかという指摘があります。本委員会での検討ですが、意匠権の間接侵害行為として意匠権の侵害物品に容易に回復可能である状態の物品を十分な知識を有しながら製造又は輸入等をする行為を規定すべきか検討をいただいたところです。この委員会においては「十分な知識を有する」という内容を明確にすべきではないかという御意見をいただいたところです。
対応の方向としては、まず現行法の意匠法第37条において、意匠権者は自己の意匠権を侵害するおそれのある者に対し侵害の予防を請求することが可能とされており、このため、輸入者が通関前に意匠権侵害疑義物品から部品等を取り外す場合であっても、輸入者が通関後に再び部品等を付加して意匠権侵害物品を製造、譲渡するおそれがある場合には、当然輸入の差し止めや廃棄請求を行うことができると考えられます。
また、平成16年4月からは、水際における意匠権侵害疑義物品の認定手続について、輸入者の氏名等が意匠権者に通知されることとなっており、仮にこうした脱法行為により通関後に再び物品等を付加して意匠権侵害物品が製造、譲渡された場合は意匠権の侵害行為として差し止めることができる。手続的にもそういったことが比較的容易になっているのではないか。
一方、侵害物品を容易に回復可能である状態にした物品について輸入等をする行為を規定した場合、国内での未完成の物品、部品等の製造についても、同じように要件を満たせば意匠権侵害となることから、国内での製造、販売に関する行為が規制をされる必要性が生まれるということです。こうしたことを実態をもう少し精査をした上で検討を行うことが必要ではないかと考えられます。
9ページ目は、意匠権の類似範囲の拡大です。
問題の所在として、意匠権の類似の範囲は、狭く解釈される場合があるといった問題があります。登録意匠あるいは類似意匠として保護される範囲がしたがって十分ではないのではないかとの指摘があります。また、その判断手法、基準が明確でなく、そうしたことが積極的な意匠権の行使や活用につながっていないという指摘もあるところです。
検討の内容ですが、本委員会では、意匠の登録要件、意匠権の効力範囲に係る類似について、より広く解釈できるように類否の判断の視点を一般需要者とするべき、意匠法等の改正により明確化することについて検討いただいたところです。本委員会においては、諸外国の法制を参考に、類似概念、類似の規定そのものを見直すことも検討し得るのではないかというご意見、または類似概念の考え方については、もともと意匠の創作には一定の幅があるという考え方と、あえて創作の幅として登録意匠の範囲の周囲に規定した考え方があるということです。一般需要者の視点を基準として規定しても、最終的には同じ問題が残るのではないかという御意見があったところです。
対応の方向としては、類似概念の視点をより明確化するために、最高裁の判例、これは意匠の類否判断を一般需要者とするという判断が下されたものですが、それを前提として、意匠の類似範囲の視点が一般需要者であることを何らかの形で確認することが適切ではないかと考えているところです。
留意点として、類似概念の維持ですが、現行法においては、意匠に関して類似の概念により一定の幅を持たせたものとして保護を行うという考え方が定着しており、例えば海外にございますような実質同一という概念を取り入れるよりは引き続き類似概念を維持することが適切ではないかと考えられるところです。
審査判断の明確化でございますが、審査基準の見直しを行い、新規性、先後願に関する類否判断については、拒絶理由通知に、その拒絶のもととなった引例、出願意匠の評価等を踏まえた共通点、差異点の認定、一般需要者による意匠の視点を踏まえた出願意匠の特徴点、こういったところを簡潔かつ具体的に記載するという運用を既に始めたところですが、そうしたところをきちんとやっていくということでございます。そのほか審査判断の材料とした関連する参考意匠を添付して審査判断の明確化を行うことが適切ではないかと考えられるところです。
10ページ目、類否判断の主体の明確化です。
これは一般需要者の視点を明確にすることについての留意点ですが、一般に当業者、創作者は専門家として細かい視点で意匠を評価をすることから、意匠の類否も非常に細かく微細なものになっていく傾向があります。このため類否判断の主体を一般需要者の視点とすることにより、仔細な差異を評価する傾向にある当業者の視点を排除し、一定程度広い類否判断を行う傾向にある需要者の視点から、類否判断を広く解釈することが可能になるのではないかと考えられるところです。
第5のテーマとして意匠権の物品間の転用までの拡張です。
問題の所在ですが、市場で成功した商品のデザインを他の商品に模倣するという事例があるわけです。意匠の類似は同一又は類似する物品間で判断されるため、現行の意匠権は類似する物品までしか及ばないということで、十分に対応・対抗できないのではないかという問題意識です。
検討の内容として、本委員会においては、意匠権の効力範囲として登録意匠の形態を、登録意匠に係る物品と非類似の物品に転用する行為を規定することに検討いただいたところです。また、登録意匠への依拠性や登録意匠の周知性を要件とすることについて検討いただいたところです。
対応の方向として、意匠法では、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発展に寄与することを目的としており、このために創作された意匠を独占的に製造、使用、譲渡等する権利を財産権としてその権利者に付与する制度です。
一方、市場で成功した商品のデザインを他の物品に転用する行為は、第三者がこうしたデザインを模倣することにより、市場における評価や信用を利用しようとするものであると考えられるわけです。
このため、意匠法において、依拠性や周知性を要件としつつデザインの転用行為を保護対象にすることは、意匠の創作という現在前提にしている知的創作活動の保護を超えて、そのデザインの信用、評価を保護するということで意匠法の制度趣旨に整合しないと考えられるところでございます。さらに実際的な問題としては、転用行為を意匠権の権利範囲として保護した場合、本来は何ら関連性もない物品の業界間で、不測の権利行使が行われことになると、産業の発展に寄与するという意匠法の目的とも若干整合しないと考えられるところです。
したがって、意匠法における権利範囲を非類似物品まで拡大することについては慎重な検討が必要であると考えられるところです。
なお、不正競争防止法による保護も実際のところ可能かと考えられ、他人の著名な商標等の表示、これを自己の商品等表示として使用することが不正競争行為とされており、商品等表示には商品のデザインといった外観も含まれるといった解釈です。このため、市場で成功した商品のデザインを他物品に転用する場合であっても、それが商品等表示として使用されている場合には、不正競争防止法の保護の対象になるものと考えられます。
続いて意匠権の強化です。
まず、第1点として、意匠権の存続期間の延長です。
問題の所在として、優れたデザインの長寿命商品(ロングライフ商品)や、リバイバルブームによって再度商品化されるものについては、長期間にわたり付加価値の源泉となっています。現在の設定登録の日から15年と規定されておる存続期間について、より長い保護が求められているところです。
検討内容ですが、まず、意匠の特質ですが、まず発明自体については、あまり長期間の独占権を与えることなると、技術開発、技術の向上を阻害することに対し、意匠の場合にはそういった懸念、弊害はより小さいものと考えられます。
こうした問題意識のもとに、意匠権の存続期間について、設定登録から15年を設定登録から20年に延長することについて検討を行ったところです。
本委員会においては、実際にデザインに対する関心は30年程度持続されることがあり、できるだけ長い保護期間が望ましいというご意見。また、料金の体系について、存続期間を延長する場合には、コスト低減の観点から料金体系をどうするかという検討もすべきという御意見があったところです。
対応の方向として、意匠権の存続期間について、現行の登録日から15年を20年に延長することを考えております。
まず留意点として、権利の存続期間の考え方ですが、先ほど申したように、意匠の場合には発明と違い、存続期間を長くすることによる社会的な影響は比較的小さいと考えられるところです。一方で出願人間の公平性、第三者との関係を考慮する必要があるところです。こうした観点から、権利の存続期間を20年以上とした場合には、改正法の施行前にされた出願と施行後にされた出願で大幅に異なることになるのではないかということから、現行法の権利期間の保護を受ける出願人との比較衡量、そういったところを考える必要があるのではないか。
2点目として、既登録意匠に係る権利の存続期間です。
改正法の施行前に出願された登録意匠について、存続期間の延長を認めるとすると、存続期間満了による権利消滅と併せて、実施の準備をしていた第三者に不測の影響があり、既登録意匠に係る権利の存続期間は延長しないことが適当ではないかと考えられるところです。なお、平成16年に実用新案登録の延長を行った場合にも、施行以後の出願から権利期間を延ばしているところです。
一方で、もう一つ、権利期間の関係では、平成6年の特許法改正の例がございます。これについてはTRIPS協定を遵守するための権利期間の変更、「出願公告の日から15年」とあったところを「出願日から20年」と変更したところです。しかし、この際はTRIPS協定において、改正法の施行前に出願された特許についても、これは協定上、協定が定めた保護を付与すべきであるとされたところによるものです。
続きまして刑事罰の強化です。
問題の所在として、近年の意匠権については認定損害額が高額化している実態がございます。意匠権の侵害に対する抑止力を高めるために意匠権に係る刑事罰を厳格化することが必要ではないか。また、多くの事件では執行猶予付きの懲役刑が科され罰金刑は科されないことから、経済的な制裁に欠けるのではないかという御指摘もあるところです。
検討の内容として、本委員会では、意匠権の侵害罪を3年以下の懲役又は300万円以下の罰金から5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に引き上げ、さらに懲役刑と罰金刑の併科を導入することについて検討いただいたところです。また、両罰規定の法人重課については、法人に対する経済的制裁ですが、現行法の1億円から1億5,000万円に引き上げることについて検討を行ったところです。
対応の方向は、意匠権侵害に係る刑事罰の量刑については、特許権、商標権に係る刑事罰と比べ低く設定されているところです。しかしながらデザインの重要性が高まる中で、1つの例ですが、意匠権の損害賠償請求に係る損害額も、これも商標権に係る損害額を上回る程度まで高額化していることからすると、そこに差を設ける必要はないのでないか。
こうしたことから、刑事罰の強化により抑止力を高める必要性、他の産業財産権との均衡の観点から、意匠権の侵害罪に対する刑事罰を5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に引き上げることが適切ではないかということです。
第2点として、懲役刑と罰金刑の併科です。
これについては先ほど申し上げたとおり、執行猶予付きの悪質な場合でも、執行猶予付きで経済的な制裁がないことから、そうしたことから抑止力を高めるために併科とすべきではないかということです。また、著作権法が平成16年、不正競争防止法についても、平成17年に懲役刑と罰金刑の併科が導入されたところであり、こうしたことを踏まえる必要があると考えております。
法人重課については、意匠法における現行の1億円以下の罰金額、これは平成10年の特許法の一部改正法において、法人重課の規定を導入するとともに設定されたものです。産業財産権各法における侵害罪の罰金刑を前提に、法人と自然人の資力格差に鑑みて定められているところです。
また、不正競争防止法の法人重課が3億円とされており、また商標権の侵害罪についても、引き上げが検討されているところですので、先ほど1億5,000万円ということを申し上げましたけれども、全体としてのバランスの観点から3億円以下の罰金に引き上げることが適切ではないかと考えられるところです。
以上であります。
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大渕委員長
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丁寧なご説明をありがとうございました。
それでは、今、ご説明のあった範囲としては、1ページのI.の意匠権の効力範囲の拡大の1.の権利侵害行為への「譲渡等を目的とした所持」の追加以下、かなり広範囲に及んでおりますので、一度にまとめてご議論いただくよりは各項目に分けた方がスムーズな議論が可能となると思いますので、それぞれの項目に分けてご議論いただければと思います。
まず、1ページにありますI.1.権利侵害行為への「譲渡等を目的とした所持」の追加、この点について、ご質問、ご意見をお願いいたします。これは要するに1.(3)検討の方向のところにありますとおり、「譲渡等を目的とした所持」について、商標法と同様に、間接侵害ないしはみなし侵害として規定することが適切ではないかという方向性が示されておりますが、このテーマについていかがでしょうか。どなたかございませんか。
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菅井委員
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基本的には賛成の立場でございますので、今、新たな問題になっている1つにネットオークションがございます。これは個人であったり、個人を装ったりと言われているのですが、中身はなかなか定かではない。その規制に何か動かなければいけないのではないかという話が業界の中で出ておりあそこに出てくるものはあくまでも譲渡目的である。なかなか譲渡を目的にした人にまで行き着かないというのが今の取り締まる際の非常に大きなネックになっておりまして、1つの譲渡目的は非常に有効ではないかということでぜひとも導入していただきたいという意見です。
以上です。
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大渕委員長
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ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。勝尾委員代理、お願いします。
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勝尾委員代理(下川氏)
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譲渡目的の所持とした場合、先ほどネットオークションの場合に、サイトだけ自分たちでつくって、実際に持っているのは外国のある業者が持っていて、自分は注文を受けてそこに発注すると外国から送ってくるというようなケースもありますよね。だから、それは所持と言えるのか、言えないのか。ただ、ホームページというか、オークションに出品をただしているということなので、そのあたりはどうなんでしょうか。
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田川審議室長
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この場合、想定しておりますのは国内で所持をしているということでございます。今、委員ご指摘の海外の事業者が所持をしている場合には、これは直接的にはこの規定による牽制作用はないと思います。しかし、それらは若干個人輸入等の問題はございますけれども、業として行うのであれば、輸入する段階でそこは押さえられるという理解だと考えております。
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勝尾委員代理(下川氏)
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わかりました。
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大渕委員長
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ほかにございませんでしょうか。
それでは、項目も多数ございますので、また適宜必要に応じて戻ることにいたしまして、次に2.権利侵害行為への「輸出」の追加ということであります。これは意匠制度小委員会だけでなくて、特許制度小委員会で特許法の関係、商標制度小委員会で商標法の関係でも議論されているところであります。実は私は、特許制度小委員会にも委員として参加しておりまして、その際に事務局には、現行法で輸出が実施行為に含められていない理由がわかりましたらご調査くださいということと、ペーパーでは特許権の関係で海外の各法制についてご紹介されていますが、含める国と含めない国とがある理由についてもご調査くださいということをお願いしておりまして、それについては現在調査中と伺っております。
もう一つは、輸出が実施行為として含められますと、差し止めの方は輸出の差し止めということになるのでしょうが、損害賠償をどう把握するかという問題が出てきまして、特許制度小委員会のときには、損害賠償がこの輸出に関連する海外市場分を含むのか、それとも国内市場分だけであるのかという点についての見解もお尋ねしておりました。それに対する応答としてこの7ページにある39条関係のところを今回ペーパーとしてご用意されており、要するに海外分も含めるのは属地主義の観点から適切ではないということのようであります。これは39条の関係で書かれていますが、多分39条を使わずに民法709条だけで請求するときも同様の趣旨ではないかと思いますが、これはなかなか難しく、いろいろ複雑な問題なのですが、このペーパーで非常に簡潔にまとめていただいております。このような輸出の点についてどなたからでもご質問、ご意見をお願いいたします。
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菅井委員
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これも賛成の立場でご意見申し上げますと、日本発という行為そのものは、実際には当業界の中でいくとそれほど深刻な問題ではないという認識をしております。ただし、現実に中国ですとか、そういう国々に輸出を押さえろという話をさんざんやっております。これはIIPPFと官民合同の中でも声高らかに言っているはずでございまして、そういう意味では、言っている国が輸出に規制がないということ自体が、じゃあ、あんたの国どうなのよという話になりかねないという意見を持っておりまして、ぜひ入れるべきだと考えます。難しい判断が確かに多々あるかと思いますけれども、また日本から出ていくケースは非常に少ないという認識のもとに発言をさせていただきます。
それと同じ意味からしますと、通過が最後にあるのですが、一緒に構わないでしょうか。
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大渕委員長
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はい、どうぞ。
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菅井委員
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実は焦点は模造品になるわけですけれども、出所がわからない模造品がたくさんございます。これはいろんな国を経由し、それも1国、2国ではなくて、非常に出所がわからないような模倣品の通過が現実にございます。そういう意味では何らかの処置によって、日本経由だけは少なくともとめられないものかなと考えております。これも日本経由の実績を把握しているわけではございませんので、必ずしも今被害があるかというと、そういうことではございません。やはり規制の甘い国にそれが集中する事になり、それが日本国であってはならないと思います。
以上です。
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大渕委員長
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ありがとうございました。ほかにどなたかございませんか。峯委員、どうぞ。
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峯委員
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今の菅井委員のお話に関連しますけれども、菅井委員のご意見は、海外に対して日本における侵害品になるようなもの、これの輸出をとめてくれという要請と承ったのですけれども、もしその理解が正しければ、輸出仕向け国において侵害になるということが1つ要件として入ってきやしないかと思いますが、その辺いかがでございましょうか。
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大渕委員長
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どなたがお答えになりますか。
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田川審議室長
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輸出仕向け国での侵害ということも考えられる、それにつきましては、輸出貿易管理令等によって措置をするという体系もございますが、ここで議論しておりますのは、日本で侵害物品が日本に再度返ってくる危険性があるということからすると、意匠法の中でも実際に輸出をされる行為、これをとめるべきではないかという議論でございまして、実態を考えますと、いろんな要件をつけるという議論はあるのだと思いますが、実際に我が国の侵害物品を外に出すこと自体、これを禁止すべきではないかと考えているところでございます。
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峯委員
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なぜ、こだわるかといいますと、この議論の初めの段階で、輸出を規制するに当たって、その保護法益は何なのかという議論がございました。今回のペーパーですと、そこのところについて明確な説明がないように思われるのですけれども、その点をどう整理されたのか、ご説明いただければと思います。
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田川審議室長
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ここで法益として考えておりますのは、まず侵害物品が、例えば日本から輸出をされて、それがいろんな擬装することによって日本に返ってくる可能性があると。そこをきちんと押さえなければならないのではないかというところがございます。したがいまして、そういう観点では、法益としては、そういった環流であるとか、環流の危険をできるだけ減らすといったところが特に大きな法益ではないかと考えております。
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大渕委員長
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今言われたのは、要するに、海外というよりは国内のことだということですか。保護法益としては。
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田川審議室長
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はい。
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大渕委員長
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先ほどユーザー関係の方からご発言がございましたが、ほかにも産業界関係の方から意見を出していただいた方が今後の議論の参考になるかと思いますので、ほかの方はこの点いかがでしょうか。茶園委員、どうぞ。
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茶園委員
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輸出を含めることに関して、その目的は環流防止や、輸出ということを擬装して国内で流通することを未然に防止することに求めておられますが、対象となる商品として念頭に置かれているのは、本当の模倣品といいますか、権利者とは一切関係のない、商標権が発生しているどこの国についても侵害品である商品ではないかと思うのですけれども、仕向け国の権利との関係で、特にOEMの場合のように、仕向け国では適法である商品、つまり、日本で製造し、それを輸出する商品で、日本では侵害と評価を与えることができても、輸出仕向け国においては適法である商品をどう考えるかが問題となると思います。恐らくここでのご提案は、その場合も含めるものではないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
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貴田審議企画班長
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属地主義の観点からいきますと、相手国・輸出先国で権利がある、なしにかかわらず、輸出先が絶対に出ないという場合であった場合は、これで押さえるということが必ずしも適切ではないと解釈される場合はあろうかと思いますけれども、絶対出ていかないのだというところの立証をするのは実際にはかなり難しいのではないかと思います。
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大渕委員長
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今の点に関連してでも、ほかの点でも、結構ですが、この輸出関係についてはいかがでしょうか。
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岡崎委員
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日本の企業としまして、ますますグローバル化していますので、輸出という行為を意匠の実施行為に入れるのは知的財産協会としても賛成でございます。そういう問題物件が出たときにどこでとめるかですけれど、製造段階でとめられる場合もありますし、最後の段階でないととめられないようなケースも出ています。最後の段階というのは、日本国においては輸出の段階というふうに理解しています。発見したときにとめられるという手段があれば、1つ意匠権の効力は増したかなという感じがします。そういう意味で、輸出というのは実施行為と入れてもいいのではないかと考えております。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。
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水谷委員
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いろんな方のご意見伺っていて理解できるところと理解できない部分があるのですけれども、知的財産権ですから、当然属地主義ということが働いてきて、我が国の保護法益がどのように損なわれるかということとの関係で、輸出行為を実施行為に入れるかどうかを決めていくというのが、本来の筋論だろうと思います。
その場合に、ここに書いていらっしゃるのは、どの程度の頻度でそれが生じるかということがございますけれども、一旦輸出されたものが我が国に環流してくると。そのときに、例えば個人輸入のような形態をとると、そこに実施行為を発見することができなくて、事実上環流が野放しになるということのようでございます。仮にこのようなことが、もし唯一の理由であるとすると、単純に輸出するといっても、我が国に環流してくる蓋然性の非常に高い製品もありましょうし、製品の性質上、これはどう見ても日本には戻ってこないと。とりあえず日本国内では侵害品だけれども、一旦外へ出てしまえば戻ってこないものもあるかと思います。
そうなりますと、例えば輸出の差し止めを求めるというときにおいても、実質的な利益衡量のようなことをいたしますと、環流の蓋然性がどのぐらい高いかというようなことを見ながら、この場合は輸出を止めようとか、この場合は別に野放しにしてもいいのではないかとか、実質的に考えるとそういう判断もあり得るかと思えるわけですね。そういう意味で、投網をかけるように、全部輸出行為を実施行為の中に入れて押さえてしまうというのは国内に環流してくるときに実質的な利益の侵害が起こるというふうにもし考えた場合には、すべての輸出行為、この場合、意匠権の侵害物品の輸出ですけれども、一律に侵害行為のカテゴリーの中に入れてしまっていいのかどうか、このあたり、私も個人的にはどうなんだろうかというところがあるのですが、逆にその辺、事務局のお考えを聞かせていただければと思います。
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田川審議室長
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ご趣旨はもう少しいろんなカテゴリーに分けることによって、こういうものであれば禁止すべきだけど、こういうものはいいのではないかと、そういうご趣旨だと理解をいたしましたが、実際のところ、そういったカテゴリー分けはなかなか難しいのではないか。我が国で、法益という観点で、譲渡で読めるのではないかという議論はあまりにも意識した議論になっておるのですけれども、侵害物品が国内に最終的に出て行く段階をとめなければならないケースも実際にはあると思いますので、そういったところでは、こういうケースについてのみ輸出を措置するのは実際のところは難しいのではないかと考えております。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。
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牧野委員
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諸外国における意匠権侵害の輸出規制というところを見ますと、欧州、英国(登録意匠につき)、ドイツは輸出を侵害として規制している。その保護法益というのは、このペーパーで書かれているのと同じでしょうか、それともさらにほかの理由があるのか、教えていただきたい。
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田川審議室長
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現在、輸出を諸外国は規定しておりますけれども、その国について、どういう法益を念頭に置いて規定しているのか、今調査中でございます。そういう中で、例えば国内に横流しをされるとか、環流する可能性が高いとか、特にヨーロッパの場合には地続きであるといったところが1つ背景になっているのではないかと考えております。そこにつきましては、今現在精査中ですが、そういう観点では侵害物品が非常に流通をするといったところを背景にした考え方であると理解しております。
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水谷委員
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今の関係で1つだけご質問なのですが、欧州の場合も、ご承知のとおり、コミュニティデザインに移行しておりますので、いわゆる欧州域内での国境を超える流通について、今おっしゃったような問題は多分起きてこなくて、欧州域と非欧州域との間の商品のやりとりにその問題が多分出てくるのかと思うのです。その場合においても、今おっしゃったことは基本的に変わらないという理解でよろしいのでしょうか。
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田川審議室長
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現在、欧州が規定をしておりますのは、あくまで域外ということで、今おっしゃられたとおりです。どういう考え方かというのはいろんなドキュメントを今当たっているところでございまして、また、そこは整理したいと思っております。
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茶園委員
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この輸出の問題に関しては、属地主義との関係が書かれていますけれども、属地主義の考え方については様々な解釈があり得ますが、属地主義を理由として、輸出はこのように考えるべきであるとかいったことにはならなくて、あくまで輸出がその当該国の国内行為だという前提のもとでは、どうすべきかは当該国の裁量に委ねられるものではないかと思います。
その判断の際に、輸出という、国際取引と関わりのある行為について、国家が何らかの規制を施すことによって、国際的な商品流通をあまりにも阻害することになる場合には、属地主義の趣旨との関係から慎重に検討すべきことになるでしょうが、輸出の規制が属地主義に反するとかいった問題はまず起こらなくて、国家の政策論になるのではないかと思います。
その上で、ここで書かれていますように、輸出は国外に出る行為なのだから、あまり国家とは関係ないのではないかというのは言えると思うのですけれども、その一方、あまりにも模倣品があふれ、その対応が強く求められているという現状を考慮しますと、ある種、無理といいますか、必ずしも明確な保護法益が見当たらないような行為についても押さえる必要性があるかもしれないというようには思います。先ほど水谷委員がおっしゃったように、そこで切り分けるというのは恐らく難しいのではないかと思いまして、認めるか、認めないか、どちらか選択するしかないのではないかかと思います。
もう一点、間接侵害については、これも輸出を含めること、含めないこと、のいずれかの選択があり得て、完成品といいますか、侵害物品については輸出も侵害行為ということにするのであれば、間接侵害も同様に取り扱うというのも、それほどおかしいことではないと思いますが、これも現状の問題として、それほど環流が起こっておらず、実際上の必要性がそれほど強くないということであれば、間接侵害まで含める必要はないでしょう。現状がそういうことであれば、輸出は実施行為の中に入れることがあり得ても間接侵害は含めないというのも適切な政策判断かと思います。
以上です。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。
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水谷委員
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再三で恐縮ですが、先ほど私が申し上げたことは、言い換えますと、このような場合は環流の蓋然性が高いから輸出を認めるべきではないとか、あるいはこの場合は認めてもいいのではないかという個別論というより、そういうまだら模様であるときに輸出を一律に規制すると過剰規制になる場合がないかというような趣旨で伺ったつもりです。むしろ私自身も、こうすべきだということまでのはっきりした考えを持って申し上げているわけではないのですが、先ほど茶園委員がおっしゃったようにといいますか、環流があるということだけを唯一の根拠にして、輸出全体を押さえるのはバランスの点でどうなのだろうかという感じを、個人的には思っています。それでも立法するという方向で考えるのだったら、国内侵害品を輸出する行為それ自体について規制する必要があるのだと。それは、もちろん環流する場合があるというのも1つの根拠だと思うのですけれども、それを唯一の根拠にするのではなくて、輸出行為自体を、それが戻ってくるかどうかの問題とはとりあえず切り離した形で、何らかの規制の合理的な根拠を提示できるのかどうかというような方向で整理していくべきではないかという感じを持っております。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。またいろいろとご負担をおかけするつもりは全くないのですが、現行の我が国の法律でも、例えば不正競争防止法とか、種苗法というのは輸出も実施行為に相当するようなものに入っているので、そちらのあたりも何ゆえそちらの方は入っているのかというのも調べていただくと、参考になるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、先ほど申し上げましたとおり、非常にテーマが多いものですから、また、必要に応じて戻るか、ないしは次回にまた資料を整えていただいて継続することにしまして、次のテーマであります8ページ3.税関における部品の取り外しというテーマに移ってまいりたいと思います。どなたからでもご質問、ご意見をお願いいたします。
特になければ、また必要に応じて戻っていただくことにいたしまして、次に、9ページ4.意匠の類似の範囲の拡大、この点についてはいかがでしょうか。時間の関係もありますので、3.税関における部品の取り外しと4.意匠の類似の範囲の拡大、5.意匠権の物品間の転用までの拡張、この3つのテーマ併せて議論を行いたいと思いますが、どの点についてでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
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峯委員
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類似の範囲なのですけれども、ここで一般需要者の視点ということをどこかで決めようというご提案ということですけれども、一般需要者を基準としたから広くなるというご説明の根拠はおありなのでしょうか。
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田川審議室長
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10ページ目にございますように、視点、そこは相対的なものではあると思いますが、当業者、創作者、いわゆる専門家としての評価よりは一般需要者の視点の方が当然細部まで立ち入って判断するということではないと思いますので、まず、判断の視点をきちんとさせる。そういたしますと、一般需要者の視点の方がより広くなる。それを審査基準等にどう反映をさせていくか、こういう話ではないかと思っております。
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峯委員
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といいましたのは、今、いみじくも審査基準とおっしゃいましたけれども、今の審査基準は基本的には需要者の視点ということが前提となっているわけですよね。その中で審査されていて、今、狭いねというお話が出ている。そうすると需要者ということを、どこか法律に何かもぐらせるということをしたときにどういうふうに変わってくるのかという新しい世界がイメージできにくい。そこでちょっとご質問させていただいた次第です。
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瓜本意匠課長
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直接的なお答えになるかどうかは難しいのですが、実務の観点から申し上げますと、一応最高裁の判決に「一般需要者」とされている観点から、基本線、この方向で実務も行っていると思っております。したがって、法律に書いていただくにせよ、審査基準に明記するにせよ、基本的には確認的な改正ないしは改訂になるのかなというふうに考えておりますが、ただ、皆さんのこういったご意見があるということでございますので、そういった状況を踏まえて確認的な改正ではあっても、今後実務に関して検討していきたいというのがお答えになろうかと思います。
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峯委員
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今、確認的というお話いただきました。ただ、1点留意いただきたいのが、この最高裁判決、ここにおいてしばしば需要者混同説を採用しているというふうに理解されている面があるわけですけれども、実際には一般需要者を基準としてという話はしているけれども、混同説に立脚しているというところまでは踏み切れていないというふうに読める判決だと思うわけなので、そこのところは法改正並びにその後の運用等々において留意いただければと思います。
それから併せて関連するのですが、11ページにあります転用の話なのですけれども、転用をどうするかという話は別としましても、11ページの下から7行目ぐらいですか、「こうしたことから、意匠法における権利範囲を非類似の物品にまで拡大することについては慎重な検討が必要であると考えられる」という文言があります。ここのところ「非類似の物品」という言葉なのですけれども、現行法において意匠の類似、これを制約する要素として物品の類否というものは法律上はないんですよね。ですから、これを採用する、採用しないにしても、将来残るレポートとして、もしこういう表現が残ると、意匠の類似というものが物品が同一又は類似であることが前提になる、物品の類否というものが意匠の類否を左右するのだということの1つの論拠になりかねません。確かに判決例では使っていますけれども、この表現は再考いただければと思います。
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大渕委員長
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ほかに、いかがでしょうか。
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菅井委員
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先ほど庁の方から、類似の範囲の話については、明確なユーザーとして、一般需要者とすることによって類似範囲が大幅に変わってしまうという話がございましたが、類似範囲が大幅に変わる事は非常に使いづらくなり、むしろ確認的な明文化を望んでおります。そういう意味では、審査基準の明確化をして、より公開性を何とか高めていただくという方が、一般需要者も我々も共有化できるのではないかといった方向で、基本的には確認であれば問題ないであろうと思っております。
もう一つ、今お話が出た転用の話ですけれども、ユーザーの立場からすると、自分の意思によらずに拡大されることが良いのかとの観点で、我々の業界ですと、そんなに大きく拡大されるというよりは、できれば権利者の意思が反映される制度であって欲しいと考えます。これは例えば複数の物品を指定するような形であれば、権利者が意図しているということが明確にできればいいと考えております。今はそれぞれの物品に意匠出願するという形になっていますけれども、できれば複数指定させてもらえば簡単に済むという程度で、権利者の意図を優先でいいのではないかと思っております。
以上です。
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大渕委員長
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ほかにございませんか。それでは、また適宜必要に応じて戻っていただくことにいたしまして、次に12ページにありますII.1.意匠権の存続期間の延長というテーマの議論に移ってまいりたいと思います。どなたからでも、ご質問、ご意見をお願いいたします。
要するに対応の方向としましては、(3)にありますとおり、現行の「登録日から15年」を「登録日から20年」に延長するということが対応の方向で示されているところですが、これにつきまして、賛成、反対、その他、ご意見いただければと思います。菅井委員、どうぞ。
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菅井委員
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皆さんの意見が少ないようなので一言発言させて頂きます。ユーザーとしては、長ければ長い方がいいということですが、これもすべての意匠について20年以上欲しいという事ではなく、欧州、あるいは更新制度を取り入れて長く認めるところあるわけですけれども、更新制度を含めていただいても構わないので、欧州とのハーモも含めまして、25年というのも非常に魅力的だというのが正直なところです。その際にすべての意匠権が自動的にというそこまでは不要で、数少ない意匠は非常に長く使っていくということがありますので、それにその様な商品に長く意匠権があると大変に助かると思っております。そういう意味からすると、更新制度も含めてもっと長くほしいというのが正直なところでございます。25年以上はあまり根拠がございませんので、それ以上は言いませんが業界の意見としてございました。
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大渕委員長
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ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
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岡崎委員
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同じ意見でございますけれど、やはり企業の商品の中にブランド化していくものがあるわけです。それは長く使えば使うほどブランドとしてその企業のイメージが出てくると思います。そういう意味では、今、菅井委員がおっしゃいましたとおり、長ければ長いほどいいということで、20年+5年、何でもかんでもということではございませんけれども、実施してブランド化していくものについては、さらに5年の延長という制度もありがたいと思っております。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。それでは、本日テーマが非常に盛りだくさんなので、先を急いで恐縮ですが、次に14ページ2.刑事罰の強化というテーマについてはいかがでしょうか。どなたかございませんか、牧野委員どうぞ。
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牧野委員
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特に異論はありません。
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大渕委員長
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ほかの方はいかがでしょうか。
それでは、以上で前半部分の議論が終わりまして、次に後半部分であります画面デザインへの保護対象の拡大、意匠登録手続の在り方の2項目についての議論に移りたいと思います。まず事務局よりご説明をお願いいたします。
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田川審議室長
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それでは、本日のテーマの後半部分につきましてご説明いたします。まず、第1点が、画面デザインへの保護対象の拡大でございます。問題の所在といたしましては、ご承知のところでございますが、情報化、技術革新の背景として、情報家電、情報機器といった分野に画面上に表示される様々なインターフェースを組み込んだ製品が開発されるという実態がございます。こうした画面デザインの創作が製品のデザイン要素として重要なものになっているということです。従来であれば、スイッチ、つまみといったような物理的な部品が使われていたものを電子的なインターフェースに置き換えて、画面デザインと機器が一体となって機能を発揮する製品が一般化しています。
一方で、現行の意匠制度においては、一定の要件を満たす画面デザインのみが限定的に保護されているということでありまして、製品の質的、あるいは社会の変化に対して新たに創作される画面デザインが適切に保護されていないという指摘があるところです。
本委員会におきましては、画面デザインの中で、前回、操作性を有する画面デザインを物品として捉え、意匠法における保護対象を拡大することについて検討をいただいたわけです。具体的には操作性を有する一画面を物品と同様にみなして、その操作部分、これを新たな保護対象とする案をお示しをしたところです。議論の中では画面デザインの保護の必要性、保護される範囲、または物品の定義との関係など、こういったところが不明確ではないかというご意見。画面デザインに係る意匠権への抵触を調査するのが短期間ではなかなか難しいということで、創作活動に対する影響といった懸念も出たところです。一方で、操作性や機能性の有無にかかわらずデザイナーの製品として流通している画面デザインの実態がありますので、そういった画面上のデザインをもっと保護すべきというご意見もいただいたところです。また、操作画面を要件として示した案について不明確性の問題ですが、解釈によって保護対象の特定は十分可能であることから、保護の実効性という観点からも適切ではないかというご意見をいただいたところです。さらに、画面デザインの保護に当たって操作性の要件を課す場合には、具体的に何が保護対象になるか、そういったところを明確に詳細な説明が必要ではないかというご意見をいただいております。
対応の方向でございます。
その前に、現行法における取り扱いですが、1980年代に液晶等の表示部を有する家電製品が広がったことを受けまして、物品の表示部に表示される図形等に関する意匠の審査基準を作成、公表し、その後、この審査基準の考え方を願書、または図面の作成方法として具体化した「液晶表示等に関するガイドライン」を平成5年に公表しております。そのほか、平成10年の意匠法改正による部分意匠制度の導入に合わせまして、平成14年2月には、このガイドラインを改訂したところです。
このガイドラインにおいては、物品の表示部に表示される画面デザインがその物品の成立性に照らして不可欠であり、その物品自体が有する表示機能のみから表示されており、変化の対応が一定の範囲に特定しているといった要件を満たすものが保護対象というふうになっているところでございます。
このため、現在の保護の対象は、 初期画面などの、物品の成立性に照らして不可欠な画面デザイン、 物品自体の表示部に表示される画面デザインのみが保護対象とされているところでございます。
従来の保護対象、下に図示、いくつかの例を挙げております。例えば携帯電話の表示画面に映し出される初期画面であるとか、デジタルカメラの最初の表示画面、そういったもののみが対象になっているところであります。
諸外国の画面デザインの保護の在り方ですが、2つの考え方がございます。
まず、物品性を離れた保護として欧州の例ですが、欧州共同体規則におきましては、製品の全体、又は一部の外観が保護対象とされているということで、その製品の概念の中には、グラフィック・シンボルを含むと定義されております。したがって、グラフィック・ユーザー・インターフェースやアイコンから構成される画面デザインが保護の対象になるという、それだけではございませんで、2次元のデザイン全般が「物品性」というものから離れて「製品」として保護対象となっているところでございます。
しかしながら、こうした2次元のデザインが画面デザインに応用された場合の問題として、画面デザインを使用するソフトウエアそのものに影響が及ぶことになるという点がございます。すなわち1つのソフトウエアに用いられる画面デザイン、これは非常に多数のものが存在し得るところであります。それらの画面の1つが意匠権侵害である場合にソフトウエア全体が侵害を構成する可能性があるわけです。また、その1つの画面デザインを表示できないように、ソフトウエアを修正する場合には、ソフトウエアそのものだけでなく、関連するOSであるとか、ミドルウェアのそういったものとのインターフェース、そういったところを含めて膨大な手間、費用を要するケースがあり得ます。
こうしたことから、物品性を離れて、ソフトウエア等の無体物を構成する画面デザインを広く保護対象にした場合には、保護によるメリットとソフトウエアの特殊性から生ずるデメリット、このバランスを慎重に検討しなければならないということであります。
次に(イ)物品性を基本とした保護、これはアメリカの例です。
米国意匠特許法においては、製造物品のための装飾的デザインが保護対象とされているところでありまして、画面に表示されるデザインも物品(表示画面)に具現化されていれば、その意匠権の保護対象ということになるわけです。したがって、あくまでも物品性を前提としつつ「コンピュータ表示画面上のアイコン」といった物品を認めるといった物品を前提とした解釈・運用が弾力的に行われているところであります。
こうした場合の問題ですが、保護対象が無限定に拡大すると。要するにどこが対象になるか明確性に欠けるという観点に加え、意匠権を実際に行使する場合に何を差し止めの対象とするか、こういったところも明らかでないという問題がございます。ちなみにアメリカにおいては、実際の紛争事例が存在しないことから、今後こうした点がどのように扱われるかというのは今後の運用等に委ねられているところです。
こうしたことを背景として、我が国の画面デザインの保護については、機器等の物品の一部を構成する画面デザインを対象とすることにより、保護される直接の対象が機器等の物品であることを明確にする。かつ当該物品の部分として画面デザインを保護するという2つの点をきちんと押さえることが必要ではないかと考えているところです。
一方、こうした機器等の一部を構成する画面デザインについては、現行法においても、先ほど申し上げたとおり、部分的な保護がなされているところです。しかしながら、近年の画面デザインの活用が非常に多様になっていることから、初期画面にとどまらず様々なデザインをさらに保護すべきではないかということです。また、機器と接続された汎用途の表示部に表示されるものも増加しているということですので、こうしたもの、つまり初期画面にとどまらず、また、他の機器と接続をされて表示されるようなケース、こういったものも意匠法による保護対象とすることが必要ではないかという考え方です。
ちなみに、新たに保護対象となる画面デザインですが、家電や情報機器等の分野で非常にインターフェースとしてのデザインが重要になっていることがございますので、今申し上げたような物品の一部の機能を実現するための表示部に表示される画面デザインを物品の部分として保護するということです。
下にございますように、新たな保護対象として、点線の上にございますのは、初期画面を超えたような、そういったものを対象にする。あるいはDVDの録画再生機、これが外部の機器に接続されているようなケース、あるいはビデオ機、写真プリンター、そういった外部の汎用機器に接続されるようなケース、こういったものを含めていこうということであります。
一方、保護の対象とならない画面デザインでありますが、財産権の対象として、その範囲が客観的に特定されていることが必要ではないかと考えられるところでございまして、市場で流通する有体物を基礎として物品のまとまり、あるいは客観的な対象の特定が必要となるということです。
こうした観点から、パソコンのような多機能を前提とした機器に内蔵される画面デザイン、あるいは汎用途の表示機器に表示される画面デザインは、物品を把握する観点からいたしますと、その基礎となる物品が特定できないということで、保護の明確化を図るという観点からは適切ではないのではないかということです。
したがって、パソコンにインストールされたアプリケーションの画面、インターネットを通じて表示される画面、又は、汎用途の表示機器に表示される映画の映像等は保護対象とすることは不適切ではないかという考え方です。
ちなみに意匠の定義の問題がございます。現在の製品概念からしますと、画面デザインを利用することにより、機能性の拡張に伴い、そういったものが拡大していることからいたしますと、意匠法の物品概念も拡大しているという解釈も可能でございまして、その場合、物品性の概念の拡大解釈を運用で認めることもありますが、その場合には対象領域が不明確になるということでございます。
したがって、新たな保護を拡充する範囲については、一定程度の限定的な解釈、明確化が可能となるように、意匠の定義をきちんと手当てすべきではないかと考えています。留意点として、意匠に係る物品の記載内容につては、画面デザインの登録手続の問題ですが、画面デザインを物品の部分として保護するということでございまして、部分意匠の手続を踏襲することを考えております。
第2の留意点として権利侵害の問題です。
意匠権者は、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品を業として製造し、使用し、譲渡、貸し渡しといった行為について、停止又は予防を請求することができることになっています。
画面デザインを物品の部分として保護することからしますと、現行の部分意匠制度における意匠権の権利行使と同様の考え方でよいのではないかと考えております。すなわち画面デザインに関する意匠権侵害行為としては、意匠権者の許可を得ずに当該画面デザインを部分とする登録意匠、又はこれに類似する意匠に係る物品を業として製造、使用、譲渡等をする行為が該当するということではないかということです。したがって、例えばDVD再生機器に関する画面デザインの場合には、DVD再生機器を業として製造、使用、譲渡する行為が意匠権侵害になるということです。
また、画面デザインが物品そのものの表示部に表示されていないというケースですが、接続されている汎用の表示部に表示されている場合については、その表示機器を業として製造、使用、譲渡する行為が侵害になるということではなく、「意匠に係る物品」、すなわち画面デザインを構成するソフトウエアが内蔵されているもの、これ自体の製造等が禁止をされると考えております。
続きまして、意匠登録手続の在り方です。
関連意匠、部分意匠の保護の在り方の見直し、秘密意匠制度の見直し、新規性喪失の例外規定の見直しの4点でございます。
まず、関連意匠制度の見直しですが、問題の所在として、後日のバリエーションの追加という実態がございますけれども、現在の意匠法では、後日の改良意匠については登録ができないことになっております。
本委員会でご検討いただいた内容としては、後日に出願された改良意匠についても、本意匠の審査係属中であれば、関連意匠として登録できるようにするということについて検討いただいたところです。
委員会でのご議論として、実態としては2年又は4年のタイミングでデザインの変更を加える場合があるということで、そういたしますと、審査係属中を超えて、4年程度、存続期間中すべてについて後日の改良意匠の保護を可能にすべきであるというご意見がございました。また、関連意匠により一部のデザインを模倣する者への牽制効果、税関における差し止め等を容易にするという効果があるという御指摘があったところです。一方、類似意匠制度が平成10年に廃止されたところです。こうした経緯を踏まえると、新規性の例外を認めてまで後日の改良出願の保護を認めることになりますと、以前の混乱を復活させることになるのではないか。また、模倣品の差し止めを容易にする観点では、鑑定等を利用することも可能ではないかという御指摘があったところです。
対応の方向として、現行制度で同日出願のみを許容しております関連意匠制度について、本意匠の公報発行までの期間であれば、後日の出願による登録を認めるという時期的な緩和を検討したいと考えております。
留意点として、出願の時期的制限については、本意匠の審査係属中という考え方もあるわけですが、この手続については、出願人に予期できないという事実によりまして期間が満了するということで、謄本送達からアクションを起こして、公報発行までという予見性を高める必要があるのでないかということです。こうした場合には、実際に謄本の送達から時間的余裕があるということで、準備期間を一定程度確保することができるのではないかということです。
2点目に、後日出願を認めるという考え方ですが、関連意匠の出願を認める期間の設定については、出願人の後日出願の必要性、第三者への影響をバランスをとって考える必要があるということです。この点について、公報発行以降であっても、新規性の例外として数年間、権利存続中については認めるというご意見があるところでありますが、本意匠の出願と関連意匠の中間に介在する他人の出願意匠、あるいは公知意匠の存在により、権利関係等が錯綜することも考えられます。
また、おのおのが抵触関係に立つということで非常に不安定化するということがあるかと考えております。また、結果的に本意匠の権利範囲を拡張する効果がこの後日出願によってあるわけですが、公報の発行により登録意匠に係る効力範囲を確定、周知し、それによって権利侵害の予測可能性を確保する機能が低下するということで、第三者の監視負担が増加することもございます。そういう観点からは、現行制度と同様に、先願の例外として位置づけることが適当ではないか。
また、意匠権の類似範囲については、現在、意匠権の効力は類似範囲まで及ぶことに意匠法23条で規定されているところです。本意匠と類似関係に立つ限りにおいては、改良意匠もその意匠権の効力が及ぶというのが原則です。
一方、意匠権の効力範囲である類似範囲について、一概に判断するのが難しい場合もあることから、マイナー・チェンジを行ったものについて、それが類似範囲に含まれるかどうか、それが明らかでない。それが関連意匠制度をできるだけ長い期間出願をできるようにというご要望の趣旨と考えておりますが、例えば模倣品の関係で言いますと、税関における手続として特許庁長官に対する意見照会制度を可能にする制度が導入されております。また、国内における模倣品対策の場面においては、判定制度を活用することも考えられるところから、こういったことを利用することによって対応可能ではないかと考えられるところです。
続きまして、部品及び部分意匠の保護の在り方でございます。
デザイン開発において、先に製品全体の外観デザインが完成した後に個々の構成部が詳細に決定されるということです。現在の意匠法では先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠については保護されていないというご指摘があるところです。
検討の内容として、出願が先願の登録公報発行前であっても、同一の出願人であれば登録を認めるということについて検討をいただいたところです。ご議論としては、出願が先願の登録公報発行前であって、同一創作人によるものである場合も含めるか否かという観点については、権利関係の錯綜を避ける趣旨から含めるべきではないというご意見があったところです。また、全体意匠からの分割についても検討が必要ではないかというご意見かあったところです。
対応の方向としては、先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠について、先願の出願の翌日から公報発行までの期間であれば、同一出願人の場合に登録を認めるという対応の方向を考えているところです。
留意点として分割制度ですが、現在意匠法第10条の2で分割という規定があります。これは一意匠一出願の要件に違反する出願について、これを分割する。その場合に新たな意匠登録出願をもとの意匠登録出願をしたときに遡及するという規定でございます。一方、一意匠一出願の要件を満たす意匠登録出願を分割して、構成部品の意匠又は部分意匠を分割出願した場合には、出願日が遡及することにより、先後願関係が過度に複雑化するといった懸念がございます。こうしたことから、現在ではこうした分割は適法な手続となかなかできないということで、新たにした意匠登録出願は分割のあったときにしたものと取り扱っています。
一方で、部分意匠の出願を緩和するといった方向ですと、分割とほぼ同じような効果が得られることから、部品等に係るデザインの適切な保護を図ることが可能ということですので、分割については、今回特段の変更を加える必要がないのではないかと考えております。
第3として、秘密意匠制度の見直しです。
これについては、秘密を請求する時期について現在は出願日に限られています。これが実際に審査が早くなったことから、意匠公報が早く発行されることにより、販売戦略等に支障が出るといったご指摘があるところです。
これについては、対応の方向として、意匠登録出願と同時に行うとこととされておる秘密意匠の請求を第1年分の登録料の納付時まで行うことを可能にしてはどうかということです。これにより、出願人への登録査定の謄本が送達された後にも秘密意匠の請求の機会が設けられるのではないかということです。
最後ですが、新規性喪失の例外規定の見直しです。
現在では、この規定の適用を受けるためには、出願から14日以内にその事実を証明する書面を提出しなければならないということですが、この期間が不十分であるというご指摘があるところです。
この委員会において、新規性の喪失の例外規定の適用を受けることができるという証明書類の提出期限を現行の14日から30日以内ということで延長することについて検討いただいたところです。
御議論として、新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)そのものについて、現行の6カ月を1年に延長すること。あるいは証明書の提出義務の緩和も検討すべきではないかというご意見があったところです。
対応の方向としては、出願人の準備期間を確保しつつ、特許庁における審査処理を迅速的確に遂行することから、出願の日から14日以内を30日以内にするのが適当ではないかと考えられるところです。
留意点ですが、新規性喪失の例外期間の延長については、現在の意匠審査が大体7カ月で、これをグレースピリオドを1年延長した場合には、その期間に他人の意匠登録が行われることもあり、権利の錯綜化の懸念があるところです。
また、新規性喪失の例外に係る書面の提出ですが、仮にこれを事前に求めない、拒絶理由通知、あるいは無効審判請求がなされたときにすることにいたしますと、十分な証拠が得られないといったこともあり、これを緩和するのは適当ではないと考えられるところでございます。
以上です。
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大渕委員長
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ありがとうございました。
それでは、まず、17ページにありますIII.画面デザインへの保護対象の拡大、この点について議論を進めてまいりたいと思います。
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田川審議室長
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画面デザインにつきまして、各国の比較、日本の現状につきましてまとめましたのが参考資料1でございます。これについては、日本の現状、新たな保護対象となる部分。各国の比較をまとめております。参照いただければと思います。
以上でございます。
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大渕委員長
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ありがとうございました。それでは、今のご説明を踏まえまして、まず、III.画面デザインへの保護対象の拡大という論点についてどなたからでも結構ですので、ご質問、ご意見をお願いいたします。
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光主委員
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今回のご提案は前回と大分違うものですから、ちょっとびっくりしているのですけど、これだったら前向きに産業界は賛成の方向ではないかという意見があります。従来と変わらない物品の表示部に表示される図形等の一部として表現するというか、ここでいう当該物品の部分として画面デザインを保護するという考え方、これについては従来と変わりありませんので、これをもう少し初期画面とかの、例えばここは誤解を招くような表現が若干あるので、「汎用画面」という言い方されているのですが、これは21ページの図で、真ん中のこのイメージを言われているのかなということだと思うのですが、文章を読みますと、「物品自体の表示部に表示される画面デザイン以外にも、外部の汎用途の表示機器に表示される画面デザインを保護対象とするものとする」と、ここだけを読むと、汎用機そのものの画面全部保護しちゃうように若干とれますので、そこは明確に書いていただいた方がいいのかなと若干思うのですが、趣旨としてはこういう方向で、JEITAとしては前向きに賛成の方向であるということでございます。
以上でございます。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。
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平野委員
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一歩というよりも半歩前進したのかなという気はしていますが、基本的に、一番私が思うのは、我々デザイナーの立場から言うと、実際に画面そのものだけというのと、アイコンというのは製品であるというのは、我々はそこのところは思っています。ただし、意匠法の中で物品にという、物品の定義のところをそういうふうにはっきりされるので、それはあればいいのではないかと理解するというふうに思います。よろしいでしょうか、それで。
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大渕委員長
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いかがでしょうか。
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平野委員
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もう一つ、あと、今後、諸外国の動向というのは、例えば欧州が一番厳しいというのか、2次画面というか、二次元デザインというか、画面のデザインに関して幅広く考えているのだと思うんですが、万が一、日本の産業界がこの法律で一方的にやられるようなことがあると困るなと私は思っているところです。要するに海外とのバランスはある程度持っていて、積極的に意匠法の改正が日本の産業界にとっていい方向になってくれたらというのは常に思うところなので、何かいつも先にやられるような感じがしているのは、こういう2次画面とかグラフィックデザインのところがやられてしまうというところがあるので、なるたけ日本発の固有のノウハウが外に出て行くために保護されるような方法は今後も、時代性というのですか、ニーズによって、しょっちゅう検討されることもあってもいいのではないか。しょっちゅうと言わないにしても、随時的確に検討されるというこのは要望としてあります。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。岡崎委員、どうぞ。
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岡崎委員
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確認でございますけれど、1つの製品に、例えば百何十の画面がある場合、その1つが意匠権に抵触すれば、その製品がとまる。すなわち差し止めがなされると、理解してよろしいですか。
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貴田審議企画班長
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実際に製品をとめられるか、あるいは画面を削除するかという執行の方法はいろいろとあると思いますけれども、画面が侵害だということであれば、ここの差し止めての対象物品というのはあくまで機器本体の物品と理解していただければと思います。
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大渕委員長
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茶園委員、どうぞ。
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茶園委員
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恐らく保護が拡大し過ぎるという問題があるということで、こういう切り分けをされたと思うのですけれども、技術のことはよくわからないのですが、DVD録画再生というのは、DVD録画再生専用機のみならずそれ以外の汎用機器でもできる場合があるのではないでしょうか。現在はなくても、今後の技術の進歩によってそのような場合が起こるのではないかと思います。その場合に、同じ画面が使われても、DVD録画再生機で出てくれば、それは意匠で、無断であれば意匠権侵害になり、他方、パソコン上で出てくれば、それは意匠ではないから、意匠権侵害にはならないという結論になるのではないかと思うのですけれども、そういう結論になるとすると、何か非常に不自然な感じがします。少なくとも現在においては、それほどそういうことが起こらないということであれば、保護が拡大し過ぎない範囲で保護を与えるための切り分けとして、それは十分適正だと思うのですけれども、現在もそういう状態があるとか、あるいは近い将来そういう状態があるということになると、一般的には大変分かりにくい状態になるのではないかと思うのですけれども、そういう点はいかがでしょうか。
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貴田審議企画班長
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おっしゃるような物品が違った場合、一方が保護対象になって片方はならないというような事態は生じ得るかと思うんですけれども、もしそういう実態があれば、そういうものに対応して今後も検討していくことが必要だと思いますが、現状において、ハードで用いられるような画面デザインをソフトでも使えるようにしているとか、そういう共通化というのがどの程度実態としてあるのかということを考えたときに、現在の見方としては、物が違えば違うのだというのが適切な状態なのではないかというのが事務局の考え方です。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。
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牧野委員
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質問でもよろしいでしょうか。
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大渕委員長
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牧野委員、どうぞ。
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牧野委員
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22ページの真ん中より少し下の の意匠の定義のところですけれども、「このため、新たに保護を拡充する範囲について、一定程度の限定的な解釈が可能となるよう、物品の概念について意匠の定義において規定することが適切であると考えられる」というのは、ここは法律を改正されるという趣旨ですよね。そうすると物品の概念について、意匠の定義をどのように改正されるのか、ちょっとそのイメージがわかないものですから教えていただければありがたい。
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貴田審議企画班長
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実際に条文にどのように書くかというのは今後の作業だと思っておりまして、今現時点で具体的な条文案をご提示できるわけではないのですけれども、現行の解釈からすると、一応現行法のままでも読める可能性があるのではないかと思っております。ただ、そこのところは拡大解釈にならないよう、一定程度の枠をはめた方がいいのではないか、そういう考え方もあり得るかなということでございまして、個別の条文の書き方については、また、ある程度イメージができた段階でご相談をしていくということかと思います。
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牧野委員
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おっしゃる趣旨はわかりました。ただ、先ほど平野委員もおっしゃっておられたように、今回の画面デザインの保護の方向は本当に半歩前進と言っていい程度のものだろうと思いますが、前進するために、御提案の「対応の方向」でいこうということ自体については特に反対はいたしません。ただ、すぐにまた改正が必要になるような事態が起こらないように、今の物品の概念についての定義の仕方も、ある程度解釈の余裕があるような形の方が将来のためによろしいのではないか、そういうふうに思います。
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大渕委員長
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ほかにいかがでしょうか。
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山本(建)委員
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すごくディテールな質問をさせていただきたいと思うのですけれども、初期画面以外の画像も審査対象とすると、今回、特に新たな保護対象として画面だけが目の前にあらわれていて、いわゆるハードウエアとしての操作ボタン等とかが画面の周辺にない場合、恐らく画面の中の何か動きや光や、何か矢印が動いたりすることによってコントロール・操作をしていくと思うのですけれども、そうなった場合に初期画面以外の画面が、立ちあらわれてくる瞬間にいろんな工夫が多分デザイン的に入ってくると思うんですね。静止画面と静止画面の間に出てくる動きの連続の画面みたいなものなんですけど、そこがかなりデザインのおもしろ味や感覚的な美的な印象を大きく与えていくような要素にもなってくるかと思うんですね。そのあたりについてはどのように考えていけばよろしいのか、教えていただければと思います。
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貴田審議企画班長
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形態的な動きに関しましては、現在の意匠法で画面デザインを保護する際にも、形態的な動きの前後で関連性が必要だということになっておりまして、そこの要件は、何を登録しているかということを明確にするという観点から引き続き維持することが必要だろうと思います。したがいまして、関連性を保持する範囲内であれば保護対象になりますし、それを超えてしまうと別々の画面として個別に意匠権をとることが必要になってこようかと思います。
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山本(建)委員
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ありがとうございました。
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大渕委員長
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それでは、本日、後に審議会がある関係で、3時40分での終了の厳守ということで時間的制約がございますので、最後にIV.意匠登録手続の在り方として、4つテーマがございますが、一括してご議論いただければと思います。どの点でも結構ですのでよろしくお願いいたします。菅井委員、どうぞ。
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菅井委員
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前回よりも関連意匠制度の見直しというところで、係属中から登録発行までということで、若干の期間延長が出願の期限として延びたということではございます。しかし残念ながら現時点においても、まだ期間的には不足であるということで申し述べさせていただきます。基本は前回主張と変わらず模倣品対策、デザインによるブランド力強化に重きを置かれて現在の意匠制度の在り方を見直しされていると考えております。
そういう観点でいきますと、実施する意匠を何とかして保護していただきたい。理由は前回も申しましたので、公報発行による牽制力、水際での観点を申しましたので重複は省略します。3点目としては、これも前回ちょっと申しましたけれども、むしろ日本の拒絶理由が途上国で引用され、争いに悪影響を与えてしまうという観点がございます。
更にもう一点追加させて頂きますと、先ほどもちょっと申し述べましたけれども、ネットオークションの問題が非常にクローズアップされてきております。これはなかなか出品者が法律で保護されておりまして、だれが出品しているのか、業者なのか、個人なのかといったような情報が免責によって特定できない状況です。ただ、唯一特定できるのは侵害が明確であるケースは可能性がございます。しかしこれが類似範囲に及んだときは、当事者間で短時間での侵害判断はまず無理です。更に7日間というネット公開期間でございますので、7日間の間に侵害の特定、判定制度、こういったものでは結論は出ないということで、判定結果や鑑定が出るころにはもう出品が終わっているというような状態もございます。そういう意味では、端的に言いますと、模倣品の問題、水際での対策、こういったネットオークション等には実施する意匠の登録を何とかして確保していきたい。そのためにはキープコンセプトというのは、今の時間では出し切れないというのが正直なところでございます。今回類似意匠制度のときの、以前の混乱の復活というようなお話がございますけれども、次回に向けて混乱をなくすには、私どもの判断としましては、資料にも触れられている意匠の拡張説と確認説、ここの混乱が非常に大きいのではないかと認識をし、基本的に拡張という考え方は要らないとの見解でございます。言うなれば、裁判の判例にしたがって確認説で十分であり、また、独自効力も含めてそういう意味では要らないと考えております。そういった観点においても、なおかつ以前の混乱ということがまた再現されるのかどうかということもご提案させていただきたいと思います。また、意匠権の類似範囲の中に、意見照会あるいは判定制度で十分ではないかというお話がありますけれども、ここで類似範囲を確定できるのであれば、なぜ実施意匠の登録がだめなのか。私はここで結論を出せるのであれば、それを登録しておくことがどうして今回の改正の中に認められないであろうかということをぜひご検討いただきたい。
長くなりますけれども、この15年間の自工会実績において、類似意匠制度は大体2割くらい、活用の実績がございました。関連意匠になりますと、5%以下でございまして、言うなればその差は意匠で守れない実施の商品が実際に出ているということで、ぜひこれらも守れる制度をご検討いただきたいということでございます。
以上です。
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大渕委員長
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ほかにございませんでしょうか。1.2.3.4.の4点ございますが、まだ、あとお一人ぐらいは時間的余裕があるのではないかと思いますので、遠慮なさらずにどうぞ。いかがでしょうか。どなたかございませんか。茶園委員、どうぞ。
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茶園委員
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ここに書いてないことなのですけれども、先ほどの類似範囲の明確化に関して、特許庁では審査基準を検討されて適正に運用されていくことになると思うのですけれども、明確化のためには、その判断に関する情報が広く共有されて、議論されることが望ましいのではないかと思います。
現在は、審決は登録された意匠についてのみしか公開されてないと思うのですけれども、できましたら、類似範囲の明確化に資すると思いますので、すべての審決が公開されて、一般的に議論に対象となるとすることができないか、ご検討いただきたいと思います。
以上です。
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大渕委員長
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ありがとうございました。ほかにございませんか。
それでは、最後の画面デザインへの保護対象の拡大、登録意匠手続の在り方のこの2つのテーマにつきましては、これぐらいにしまして、本日の議論全体につきまして、何かご発言等ございましたらお伺いいたします。ございませんでしょうか。
それでは時間もなくなってまいりましたので、本日の小委員会はこのくらいにいたしたいと思います。
最後になりましたが、今後のスケジュールについて事務局からご説明をお願いいたします。
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田川審議室長
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今後のスケジュールでございますが、次回は12月5日(月曜日)14時から、次々回は12月20日(火曜日)13時30分から、そして年明けの1月30日(月曜日)13時30分から開催をそれぞれ予定をいたしております。
以上でございます。
また、本日この後に別の審議会で使うことになっておりますので、皆様方、ご協力よろしくお願いいたします。
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大渕委員長
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それでは以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第7回意匠制度小委員会を閉会させていただきます。本日も熱心なご議論をありがとうございました。
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